説明

高変換された二酸化塩素の溶液を製造するための錠剤

【課題】高変換された二酸化塩素の溶液を迅速で、安全に製造するための錠剤を提供する。
【解決手段】金属亜塩素酸塩と固体酸源とを含む顆粒状の粒子成分の混合物を含んでなる多孔質固体の形状物であって、圧縮によって形成され、水に浸漬した場合、粉末の形の等量の成分を水に添加した場合よりも多量の二酸化塩素を生成し、その重量濃度が、二酸化塩素と亜塩素酸アニオンの合計に対する比で0.25を超える水溶液を与える。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
溶液中の遊離の分子状二酸化塩素は、微生物と生物の膜状堆積物を制御するのに有効な薬剤である。しかしながら、このような遊離二酸化塩素の溶液を製造する最も普通の方法は、高価で、複雑な薬品発生装置を使用することである(例えば特許文献1を参照のこと)。
【0002】
特許文献2は、有機酸無水物を使用して、亜塩素酸アニオン(chlorite anion)を概ね中性のpHで遊離二酸化塩素に変換することを教示している。亜塩素酸ナトリウムなどの強力な酸化剤を有機物(organic chemical)と合体する結果、起こる火災と爆発の危険もよく知られている。この英国特許の組成物により得られる変換比は低く、亜塩素酸ナトリウムと有機物を組み合わせた組成物に危険がつきものである結果として、この英国特許の組成物はほとんど市場の関心を集めていない。
【0003】
最近、水に浸漬した場合に遊離の分子状二酸化塩素溶液を生成する、粉末化された二酸化塩素前駆体の薬品を収めた膜タイプの素子(device)が記述されている。特許文献3を参照のこと。この膜素子は、二酸化塩素溶液を製造する従来技術の方法よりも優れている一方で、いくつかの欠点を有している。この膜素子は、相対的に高価(膜と組み立てのコストにより)であり、二酸化塩素の送達速度がある用途には遅過ぎることがある。また、この膜素子は水/溶液の表面上に浮く(捕捉された空気または二酸化塩素ガスにより)結果、一部の二酸化塩素が気相に失なわれる。最終的に、この好ましい膜は水に不溶性であり、二酸化塩素の発生反応が完結した後、二酸化塩素溶液から除去される必要があることがある。二酸化塩素溶液から使用済みの膜を除去することは、しばしば不便であると考えられる。
【0004】
また、従来技術は、液体の水と接触した場合、二酸化塩素ガスを発生する材料から構成される錠剤及びブリケット(briguettes)などの固体粉末成形体を含む固体混合物から二酸化塩素溶液を製造する試みも記述している。
【0005】
特許文献4は、可溶性亜塩素酸塩と水と接触した場合に乾燥した組成物が溶解し始めるのに伴い、「脱臭反応」を引き起こす酸性化剤とから構成される、ブリケットを含む乾燥した固体組成物を開示している(1欄,34−38行と2欄,24−27行を参照のこと)。この特許を読んだ場合、この組成物が水と接触した場合に何が生成するかが明らかでない。この物質の二酸化塩素は列挙されず、「溶液」という用語を使用した時のみ、亜塩素酸ナトリウムの水溶液が参照されている(1欄、58行を参照のこと)。このように、ブリケットを水と接触した時にこの発明者が二酸化塩素水溶液を得ることを試みたのか、あるいは実際に得たのかを確認することができない。
【0006】
特許文献5は、なかんずく二酸化塩素前駆体(例えば、亜塩素酸ナトリウム)とコンタクトレンズを消毒する量の二酸化塩素を液体媒体中で生成するのに有効な量で存在する活性化剤成分(例えば、有機酸無水物)を含んでなる錠剤を記述している(3欄,10−16行を参照のこと)。消毒する量という用語は、好ましくは10分間あるいはそれ以下で対数で1桁(one log order)汚染微生物数を低下させる量として定義される(4欄,11−15行を参照のこと)。僅か2ppmの遊離二酸化塩素が15分間で対数で6桁(6 log)の微生物の低減を引き起こすので、この量は極めて少量の遊離二酸化塩素を表す。この特許は、この発明の錠剤を水に溶解した場合に発生する二酸化塩素の量を開示していない。このように、この実施例はすべて、錠剤の試験に安定化された二酸化塩素の水溶液を利用し、水を利用していない。
【0007】
特許文献6は、水に溶解した直後に二酸化塩素を放出する固体組成物を開示している(1欄,5−7行を参照のこと)。この組成物は、4:1:3の比で存在する亜塩素酸塩、酸化性塩素放出剤及びプロトン供与体を含んでなる(1欄,65−67行を参照のこと)。この組成物から酸化性塩素放出剤を除外した場合、得られた二酸化塩素の最終収率は、3日後であるものの63%であった(実施例5を参照のこと)。更には、そして重要なことには、この特許は錠剤の製造を述べていない(2欄,19−21行を参照のこと)。このように、反応物の粉末化された混合物のみが開示されている。
【0008】
特許文献7は、亜塩素酸ナトリウムと酸活性化剤の組成物を含んでなる錠剤であって、その場合に、この2つの活性成分が一緒に早期に「爆発的な反応」をしない(4欄,53行を参照のこと)ように、すなわち安定な組成物が得られる(4欄,46行から5欄,9行を参照のこと)ように、この組成物が亜塩素酸ナトリウムと酸活性化剤の間の反応防止バリヤを必要とする[すなわち、酸活性化剤と混合するのに先立って反応性保護コートを亜塩素酸ナトリウム上に形成する水溶液中での二酸化塩素の製造を開示している(4欄,61−63行を参照のこと)]錠剤から二酸化塩素溶液を水溶液中で製造することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,009,875号
【特許文献2】英国特許第608,068号
【特許文献3】WO99/24356
【特許文献4】米国特許第2,071,094号
【特許文献5】米国特許第5,324,447号
【特許文献6】米国特許第5,399,288号
【特許文献7】米国特許第5,719,100号
【発明の概要】
【0010】
本発明は、二酸化塩素溶液を製造するための重量物体(massive body)の形の改善された素子(device)を提供する。この新しい素子は、二酸化塩素の高収率の溶液を迅速に提供し、そしてこのような溶液を製造するための従来技術の固体組成物の欠点を克服する。
【0011】
本発明は、水に浸漬した場合に二酸化塩素の溶液を迅速に生成する重量物体を提供する。本発明は、また、重量物体を水中に浸漬した場合に得られる溶液も含む。この明細書で使用されるように、「重量物体」とは、成分を構成する粒子のサイズが重量物体のサイズよりも実質的に小さい顆粒状の粒子成分の混合物を含んでなる固体形状物、好ましくは多孔質固体の形状物の意味である。このような重量物体は、錠剤化、ブリケット化、押出し、燒結、顆粒化などの当該技術において既知の種々の手段により成形されてもよい。このような重量物体を成形する好ましい方法は、錠剤化としても知られている圧縮法である。簡単のために、これ以降錠剤及び錠剤化と呼ぶのは、任意の方法により作製される重量物体を表わすと理解されるべきである。
【0012】
この錠剤は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の亜塩素酸塩、好ましくは亜塩素酸ナトリウムなどの亜塩素酸アニオン源と一つあるいはそれ以上の乾燥した固体酸源から構成される。このような乾燥した固体酸源の例は、硫酸水素ナトリウム(sodium acid sulfate)、硫酸水素カリウム(potassium acid sulfate)、リン酸二水素ナトリウム、及びリン酸二水素カリウムなどの無機酸塩;塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硝酸セリウム、及び硫酸鉄などの強酸のアニオンと弱
塩基のカチオンを含んでなる塩;水と接触した場合にプロトンを溶液の中に遊離させることができる固体酸、例えばモレキュラーシーブETS−10(米国特許第4,853,202号を参照)の酸イオンで交換された形と塩化ナトリウムの混合物;クエン酸と酒石酸などの有機酸;及びこれらの混合物を含む。好ましくは、この固体酸源は固体無機酸源であり、最も好ましくは重硫酸ナトリウムである。驚くべきことには、本発明の錠剤の使用により亜塩素酸アニオンの二酸化塩素への極めて高い変換率が得られる。このように、粉末形の等重量の錠剤成分を相当する錠剤と同じ容積の水に添加した場合、粉末からよりもずっと多量の二酸化塩素が錠剤により発生する。攪拌速度及び/または水の温度を普通に変動させても、この驚くべき現象に対して僅かしか、あるいは全く影響を及ぼさなかった。このように、本発明の錠剤は、高変換された遊離の分子状二酸化塩素の溶液を迅速に生成することが観察されたが、これは、変換比(二酸化塩素に対する亜塩素酸アニオン)が>0.25であることを意味する。変換比という用語は、この明細書で使用される場合、生成溶液中の遊離二酸化塩素プラス未反応亜塩素酸塩イオン濃度の合計に対する生成溶液中の遊離二酸化塩素の濃度の計算された比を意味する。更には、この二酸化塩素溶液は、安全で、制御された方法で迅速に生成し、そしてこのように生成した二酸化塩素濃度が通常の水道水中の通常の使用レベル(0.5−200重量ppm)である場合には、この溶液は実質的に遊離塩素または遊離次亜亜塩素酸アニオンを含有せず、概ね中性のpH(すなわち、pH5−9)を有する。迅速に生成するという用語により、約8時間未満、好ましくは約2時間未満、そして最も好ましくは約1時間未満で全二酸化塩素の生成が得られることを意味する。
【0013】
本発明の錠剤は、所望ならば、例えば錠剤化工程を助け、製造された錠剤の物理的あるいは外観的な(aesthetic)性能を改善し、そして錠剤の可溶化及び/または得られる二酸化塩素の収率を助けるのに有用である、オプションの追加成分を含有する。このような成分は、限定ではないが、アタパルジャイトなどのクレー(clay)と塩化ナトリウムなどの充填剤;錠剤化及び錠剤金型用潤滑剤;安定化剤;染料;固化防止剤;塩化カルシウム及び塩化マグネシウムなどの充填乾燥剤;膨張性無機クレー、例えばSouthern Clay Products,Inc.から入手し得るラポナイトクレー(Laponite clay)などの空孔形成剤;ジクロロシアヌル酸及びこのナトリウム塩(NaDCC)などのこれらの塩などの塩素生成剤;及びこの配合物中の一つあるいはそれ以上の他成分と反応して、二酸化塩素生成反応が進行すると思われる低溶解性の多孔質骨格構造を生成することができる骨格形成剤を含む。重炭酸ナトリウムなどの発泡剤を少量入れてもよいが、錠剤の崩壊と溶解を加速することにより、これらは亜塩素酸アニオンの二酸化塩素への変換を低減する可能性がある。
【0014】
全般的に、本発明の錠剤は、次の理由により従来技術の膜素子(例えば、WO99/24356を参照)よりも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
錠剤は、市販の装置で錠剤を製造することができ、そして膜の閉鎖容器のコストを必要とせずに機能するために、膜素子よりも通常低コストであり;
二酸化塩素が溶液の中に逃散するのを制限する膜を有しないので、錠剤は、概ね、膜素子よりも高速度で二酸化塩素を生成し;
水に添加した場合に膜素子は時には浮くが、本発明の錠剤は水中に沈み、そのために二酸化塩素を気相に失なうことが殆どなく;そして
一つの好ましい態様においては、本発明の錠剤は水に完全に可溶性であり、製品の二酸化塩素溶液から残渣を除去する必要が避けられる。
【0016】
いかなる操作の理論によっても束縛されるのを望まないが、本発明者らは、本発明の錠剤の使用により得られる二酸化塩素の収率の増進を次のように説明してもよいと考えてい
る。水が錠剤内の空孔空間に入り、そして空孔空間内に亜塩素酸アニオンの高濃度の酸性溶液を生成する場合に、この錠剤素子は機能する。この酸と亜塩素酸塩(及び存在するかもしれないオプションの成分)は、錠剤の空孔中の高濃度の条件下で反応して、二酸化塩素を迅速に生成し、二酸化塩素は錠剤からバルク溶液の中に拡散する。
【0017】
この錠剤が適切に機能するためには、この化学反応が空孔構造内の高濃度の溶液中で起こることが重要であると考えられる。粉末の形の等量の錠剤成分を水性媒体に迅速に溶解させる場合には、二酸化塩素は殆どあるいは全く生成しない。
【0018】
本発明は、2つの概括的なタイプの錠剤素子を含む。一つのタイプの素子は、水に完全に可溶性である錠剤を含んでなり、そしてこのような錠剤の好ましい配合物は、乾燥し、粉末化された工業用グレードの亜塩素酸ナトリウムと乾燥し、粉末化された酸源、好ましくは重硫酸ナトリウムを含んでなる。塩化マグネシウム及びNaDCCAなどの追加の乾燥し、粉末化された成分を場合によっては添加して、二酸化塩素の収率と生成速度を更に改善してもよい。この乾燥し、粉末化された成分を混合し、そして得られた粉末化された混合物を、実質的に原型を保った錠剤を製造するのに充分な圧力で、通常、約1000−10,000ポンド/平方インチで錠剤金型中で圧縮する。水(液体あるいは蒸気の)への曝露から保護される限り、得られる錠剤は貯蔵時に安定である。この錠剤は、水に浸漬した場合に高変換された遊離二酸化塩素の溶液を迅速に生成する。
【0019】
第2のタイプの素子は、高い比率で水に完全に可溶性でない錠剤を含んでなる。これらは、低溶解性のあるいは緩慢溶解性の多孔質骨格構造を有する(あるいは生成する)ように設計され、この中で二酸化塩素の生成反応が多孔質骨格の溶解に先立って実質的に完結するまで進行してもよい。概ね、この第2のタイプの錠剤は、上述の完全に可溶性の錠剤に比較して大きな比率の亜塩素酸アニオン前駆体薬品を二酸化塩素に変換する。
【0020】
この第2のタイプの錠剤素子に対する好ましい配合物は、乾燥し、粉末化された工業用グレードの亜塩素酸ナトリウム、乾燥し、粉末化された重硫酸ナトリウム及び乾燥し、粉末化された塩化カルシウムを含んでなる。ラポナイトクレーなどの乾燥し、粉末化されたクレーと乾燥し、粉末化されたNaDCCAを場合によっては添加して、二酸化塩素の収率と生成速度を更に改善してもよい。第1のタイプの錠剤のように、この乾燥し、粉末化された成分は混合され、そして得られた粉末化された混合物を、実質的に原型を保った錠剤を製造するのに充分な圧力で、通常、約1000−10,000ポンド/平方インチで錠剤金型中で圧縮する。水(液体あるいは蒸気の)への曝露から保護される限り、得られる錠剤は貯蔵時に安定である。この錠剤は、水に浸漬した場合に高変換された遊離二酸化塩素の溶液を迅速に生成する。
【0021】
この第2のタイプの錠剤は、概ね、第1のタイプの錠剤と比較して亜塩素酸アニオンの二酸化塩素への更に効率的な変換をもたらす。低溶解性の多孔質骨格が二酸化塩素の生成反応に対して好都合な環境を提供して、反応物を実質的に使い尽くすまで進行するために、このことが起こると考えられる。第2のタイプの素子の錠剤中での二酸化塩素の生成は、低溶解性(あるいは緩慢溶解性)の多孔質骨格の空孔空間の好都合な環境内で実質的に起こると考えられる。この骨格の好都合な空孔構造はこの反応時間の間実質的に原型を保った状態であると思われるので、実質的にすべての亜塩素酸アニオンは、この空孔内で好都合な条件下で反応し、二酸化塩素を生成する機会を与えられる。これによって、二酸化塩素への亜塩素酸塩の変換は最大となる。対照的に、第1のタイプの素子は、二酸化塩素の生成と同時にバルク溶液に溶解する。試剤は高濃度の条件(この錠剤の空孔内に存在する条件などの)下でのみ実用的に有用な速度で反応すると考えられるので、二酸化塩素への変換に先立ってバルク溶液の中に溶解する亜塩素酸塩(chlorite)の部分は、バルク溶液の概ね希薄な条件下では実質的に亜塩素酸塩の状態であり、二酸化塩素に変換
されないままである。
【0022】
第2のタイプの錠剤素子の好ましい組成物の低溶解性の多孔質骨格は、硫酸カルシウムなどの低溶解性の塩を含んでなり、場合によってはラポナイトクレーなどのクレーを含んでもよい。この硫酸カルシウムは、好ましくは、例えば、塩化カルシウム成分からのカルシウムカチオンと重硫酸ナトリウム成分に由来する硫酸アニオンの間の反応から生成する。硝酸カルシウムなどの他のカルシウムカチオン源並びに硫酸マグネシウムなどの他の硫酸アニオン源を使用してもよい。好ましいクレーのラポナイトクレーは、入手したままでは不溶性であり、膨張に伴って亀裂とキャビティを形成することにより多孔質骨格の空孔構造を増進させると考えられる膨張性クレーである。化学反応により硫酸カルシウム骨格を系内で(in−situ)形成することは特に有利であり、そしてこのような錠剤からの二酸化塩素の収率は、硫酸カルシウムが初期の粉末配合物の成分である錠剤に比較して著しく良好(公称25%良好)であることを本発明者らは見出した。硫酸カルシウムに追加したクレーの存在は、クレー無しの硫酸カルシウムの使用よりも小さな改善しかもたらさない。
【0023】
低溶解性あるいは緩慢溶解性の多孔質骨格とは、二酸化塩素の生成期間の間生成溶液中で実質的に非溶解の状態である多孔質固体構造の意味である。二酸化塩素を生成する反応時間の間多孔質骨格が全く原型を保ったままであることは必要でない。本発明の一つの局面は、二酸化塩素を溶液の中に放出する、実質的に不溶性の(あるいは緩慢溶解性の)顆粒に崩壊する第2のタイプの錠剤を含む。顆粒のサイズが顆粒の空孔空間内の空孔サイズに対してなお大きく、そのために骨格が顆粒に崩壊するにも拘わらず必要な高濃度の反応条件が空孔空間内に存在すると考えられるために、このことを容認することができる。
【0024】
両方のタイプの錠剤素子においては、錠剤成分の間の早期の化学的相互作用を最少とするために、混合及び錠剤化に先立って粉末化された成分が乾燥していることが好ましい。この明細書で使用する場合、乾燥という用語は、各成分が通常約1%未満のH2Oを含有することを意味する。
【0025】
本発明の錠剤を作製し、試験する一般的な方法
錠剤成形:
この錠剤配合物の個別の化学的成分は使用に先立って乾燥される。各成分の所望の量をプラスチックバイアルの中に注意深く秤り込む。以下の実施例においては、配合は重量パーセント基準で示される。錠剤配合物のすべての成分を収めたバイアルを振とうして、成分を充分に混合する。このバイアルの内容物を適当なサイズの金型(例えば、1g錠剤に対しては13mm直径)の中に空ける。プランジャーを金型中に入れ、実験室用油圧プレスを用いて、内容物をペレットにプレスする。プレスゲージの最大荷重の読みは、特記しない限り2000ポンドであった。平方インチでプランジャー面の面積(通常、1gの錠剤に対して0.206平方インチ)が分かっている場合には、錠剤パンチ上の圧力をポンド/平方インチに転換してもよい。得られる錠剤を金型から取り出し、使用するまで(通常、10分以内)、密封したプラスチックバイアル中に入れる。
【0026】
錠剤性能:
この錠剤を既知量の水道水で充満した容量フラスコまたは容器に入れる。泡と黄色の外観により示されるように二酸化塩素の発生が直ちに開始する。完結するまで錠剤を反応させる。反応の完結は一部、錠剤のタイプとサイズに依存する。通常、反応時間は、1gの錠剤が部分的に不溶性であるならば、2時間あるいはそれ以下であり、1gの錠剤が完全に可溶性であるならば0.5時間である。反応が完結したならば、内容物を混合するためにこのフラスコ/容器を振とうあるいは攪拌する。次に、内容物を分析する。通常、4つの波長を用いて紫外−可視分光法により、二酸化塩素を測定する(平均値を示す)。テキ
ストの「水と廃水の標準的な試験方法(Standard Method for the Examination of Wate and Wastewater)」、第19版(1995)4−57頁と4−58頁に見出されるのと同等の方法を用いて、通常25mlの二酸化塩素溶液の滴定により亜塩素酸塩と塩素を測定する。このテキストは、米国公衆衛生協会(American Public Health Association)、米国水道協会(The American Water Works Association)及び水環境連盟(the Water Environment Federation)により共同で刊行されている。刊行事務局は、米国公衆衛生協会(Washington,DC20005)である。全酸化剤をブリンクマン(Brinkmann)自動滴定システムの重量のある白金電極を備えた716 DMS チトリーノ(Titrino)(ブリンクマン パートNo.6.0415.100)を用いる滴定により測定する。この方法は、ヨウ化物のヨウ素への酸化と引続いてのヨウ素と滴定液のチオ硫酸ナトリウムとの反応に基づく酸媒体中でのヨードメトリー滴定である。通常の方法は次の通りであった。100ミリリットルの二酸化塩素溶液と攪拌棒をビーカー中に入れ、2gのヨウ化カリウム(Reagent Crystals)と10mlの1N硫酸溶液(Mallinckrodt)を攪拌しながら添加した。得られる溶液を0.1Nチオ硫酸塩溶液(Aldrich Chemical Co.)により滴定する。終点はブリンクマン・チトリーノソフトウエアにより自動的に決められる。この終点を使用して、試料中の全酸化剤の濃度を計算する。pH電極を用いて、あるいは「そのままの」の溶液及び/またはほぼ10ppmの二酸化塩素濃度を与えるのに充分な水により希釈された溶液について、元の二酸化塩素溶液のpHを測定する。
【0027】
結果:
下記の実施例においては、特記しない限り上記の方法に従った。配合は乾燥した基準で各成分の重量パーセントで示される。工業用グレードの亜塩素酸ナトリウム(sodium chlorite)を使用した。通常、工業用グレードの亜塩素酸ナトリウムの実際の亜塩素酸ナトリウム含量はほぼ80%であり、残りはほぼ塩化ナトリウム(8.5%)、炭酸ナトリウム(6.1%)及び硫酸ナトリウム(4.5%)である。収率は2つの基準で計算される。第1のものは、錠剤重量基準の二酸化塩素の重量%収率、すなわち、重量%収率=100×(ClO2重量/錠剤重量)である。第2のものは亜塩素酸ナトリウム基準の化学的収率である。この場合には、工業用グレードの亜塩素酸ナトリウムの純度は僅か80%であることを考慮に入れなければならない。このように、化学的%収率=100×(ClO2生成モル)/(NaClO2の錠剤中のモル)。酸反応の亜塩素酸ナトリウムの二酸化塩素への化学量論は、収率を80%に制限する。
【0028】
変換比は、(二酸化塩素重量)/(二酸化塩素重量+亜塩素酸塩重量)として計算される。この溶液の亜塩素酸塩含量を定量しなかったか、あるいは未知である場合には、「最小変換比」を計算する。この比はClO2重量/全酸化剤重量である。全酸化剤は、通常、もっぱら二酸化塩素、亜塩素酸塩及び塩素からなる。錠剤からの溶液の塩素含量は通常、低く、そこでこの最小変換比は変換比の妥当な近似値である。
【実施例】
【0029】
実施例は下記に例示される。
【0030】
実施例1
3つの1グラムの錠剤を次の組成物により作製した。
亜塩素酸ナトリウム 38%
ジクロロイソシアヌル酸,ナトリウム塩 9
重硫酸ナトリウム 35
塩化カルシウム 18
【0031】
この錠剤を3000ポンドの圧力で作製した。各錠剤を3リットルの水道水中に2時間入れ、次の結果を得た。
【0032】
【表1】

【0033】
実施例2
1グラムの錠剤を次の組成物により作製した。
亜塩素酸ナトリウム 37%
ジクロロイソシアヌル酸,ナトリウム塩 15
重硫酸ナトリウム 30
塩化カルシウム 18
【0034】
この錠剤を2000ポンドの圧力で作製した。各錠剤を3リットルの水道水中に2.5時間入れ、次の結果を得た。
【0035】
【表2】

【0036】
実施例3
2つの1グラムの錠剤を次の組成物により作製した。
亜塩素酸ナトリウム 7%
ジクロロイソシアヌル酸,ナトリウム塩 1
重硫酸ナトリウム 12
塩化カルシウム 48
塩化ナトリウム 16
硫酸ナトリウム 16
【0037】
この錠剤を2000ポンドの圧力で作製した。各錠剤を0.5リットルの水道水中に1時間入れ、次の結果を得た。
【0038】
【表3】

【0039】
実施例4
2つの1グラムの錠剤を次の組成物により作製した。
亜塩素酸ナトリウム 7%
ジクロロイソシアヌル酸,ナトリウム塩 1
重硫酸ナトリウム 12
塩化ナトリウム 40
塩化マグネシウム 40
【0040】
この錠剤を2000ポンドの圧力で作製した。各錠剤を0.5リットルの水道水中に0.5時間入れ、次の結果を得た。
【0041】
【表4】

【0042】
実施例5
2つの1グラムの錠剤を次の組成物により作製した。
亜塩素酸ナトリウム 26%
ジクロロイソシアヌル酸,ナトリウム塩 7
重硫酸ナトリウム 26
塩化ナトリウム 20
塩化マグネシウム 21
【0043】
この錠剤を2000ポンドの圧力で作製した。各錠剤を1.0リットルの水道水中に0.25時間入れ、次の結果を得た。
【0044】
【表5】

【0045】
実施例6
1グラムの錠剤を次の組成物により作製した。
亜塩素酸ナトリウム 34%
ジクロロイソシアヌル酸,ナトリウム塩 8
重硫酸ナトリウム 26
塩化ナトリウム 16
塩化マグネシウム 16
【0046】
この錠剤を2000ポンドの圧力で作製した。各錠剤を1.0リットルの水道水中に0.25時間入れ、次の結果を得た。
【0047】
【表6】

【0048】
実施例7
この実施例は、粉末に相対して錠剤を使用することにより、二酸化塩素の発生効力を例示する。次の配合物の2つの1グラムの錠剤を作製した。
亜塩素酸ナトリウム 25%
ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム 8
重硫酸ナトリウム 31
塩化カルシウム 31
ラポナイト 5
【0049】
一方の試料を混合した粉末として残した。2000ポンドの圧力を用いて他方の試料を錠剤にプレスした。かい形スターラーを用いて攪拌された10リットルの水中に各試料を入れた。1.5時間後の結果は、この錠剤からの二酸化塩素の収率が同等の粉末からよりも1桁大きいことを示す。
【0050】
【表7】

【0051】
実施例8
この実験は、硫酸カルシウムをこの錠剤配合物に添加するよりも塩化カルシウムを錠剤中の系内で形成するほうが更に良好であることを示す。
【0052】
6000ポンドの圧力を用いて次の配合物を錠剤に作製した。この錠剤を1リットルの水道水の中に入れた。3時間後、得られた溶液を分析した。
【0053】
【表8】

【0054】
結果:
【0055】
【表9】

【0056】
実施例9
6000ポンドの圧力を用いて、1グラムの錠剤を次の配合物から作製した。
0.167g 工業用亜塩素酸ナトリウム
0.500g 重硫酸ナトリウム
0.330g 塩化ナトリウム
【0057】
この錠剤を1リットルの水道水中に入れ、10分後に分析した(すべての成分は可溶性であった)。
【0058】
結果:
【0059】
【表10】

【0060】
実施例10
異なるサイズの3つの錠剤を下記に示した通りの単一の配合物から作製した。二酸化塩素の最終濃度が100−200ppmとなるように充分な水道水中にこの錠剤を入れた。二酸化塩素を放出するのに大きな錠剤ほど長い時間がかかるので、反応時間を調節(示すように)して、反応が完結した時にサンプリングを行なうことを確実とした。この錠剤に対する高さ/直径比が実質的に同等となり、錠剤をプレスするのに使用される圧力が力/単位断面積基準でほぼ同等となるように、異なる金型を使用して、この錠剤をプレスした。
【0061】
【表11】

【0062】
結果を下記に示す。
【0063】
【表12】

【0064】
実施例11
異なるサイズの3つの錠剤を下記に示した通りの単一の配合物から作製した。二酸化塩素の最終濃度が100−200ppmとなるように充分な水道水中にこの錠剤を入れた。二酸化塩素を放出するのに大きな錠剤ほど長い時間がかかるので、反応時間を調節した(示すように)。反応が完結した時、すなわち、錠剤が溶解した後にサンプリングを行った。この錠剤に対する高さ/直径比が実質的に同等となり、錠剤をプレスするのに使用される圧力が力/単位断面積基準でほぼ同じになるように、異なる金型を使用して、この錠剤をプレスした。
【0065】
【表13】

【0066】
結果を下記に示す。
【0067】
【表14】

【0068】
実施例12
種々の固体をこの錠剤配合物に添加して、これらの不溶性固体をこの錠剤中に入れるメリットがあるかどうかを決定した。錠剤化圧力は、表記しない限り6000ポンドであった。反応時間は、概ね、錠剤がなお泡(放出ガス)が出ている間とした。この錠剤に対する概括の配合は下記に示される。
【0069】
【表15】

【0070】
1グラムの錠剤を1リットルの水道水中に入れた。結果を下記に示す。
【0071】
【表16】

【0072】
【表17】

【0073】
【表18】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属亜塩素酸塩と固体酸源とを含む顆粒状の粒子成分の混合物を含んでなる多孔質固体の形状物であって、上記多孔質固体の形状物は圧縮によって形成され、上記多孔質固体の形状物が液体の水に添加される場合に二酸化塩素溶液を生成し、上記溶液中の二酸化塩素の重量濃度の二酸化塩素と亜塩素酸アニオンの重量濃度の合計に対する比が0.25よりも大きい多孔質固体の形状物。
【請求項2】
錠剤化、ブリケット化または顆粒化によって形成される請求項1に記載の多孔質固体の形状物。
【請求項3】
顆粒状の粒子成分の混合物を6.9〜69Mpa(1000〜10,000ポンド/平方インチ)の圧力で圧縮して錠剤化される請求項2に記載の多孔質固体の形状物。
【請求項4】
金属亜塩素酸塩が亜塩素酸ナトリウムである請求項1に記載の多孔質固体の形状物。
【請求項5】
水に可溶性である請求項1に記載の多孔質固体の形状物。
【請求項6】
水に完全に溶解しない請求項1に記載の多孔質固体の形状物。
【請求項7】
亜塩素酸ナトリウムと重硫酸ナトリウムを含んでなる請求項5に記載の多孔質固体の形状物。
【請求項8】
塩化マグネシウムとジクロロシアヌル酸のナトリウム塩を追加として含んでなる請求項7に記載の多孔質固体の形状物。
【請求項9】
亜塩素酸ナトリウム、重硫酸ナトリウム及びカルシウムカチオン源を含んでなる請求項6に記載の多孔質固体の形状物。
【請求項10】
膨張性無機クレーを追加として含有する請求項9に記載の多孔質固体の形状物。

【公開番号】特開2009−185043(P2009−185043A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91005(P2009−91005)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【分割の表示】特願2001−556780(P2001−556780)の分割
【原出願日】平成13年1月18日(2001.1.18)
【出願人】(308009565)バスフ・カタリスツ・エルエルシー (10)
【Fターム(参考)】