説明

高多孔質ホスト材料を用いるポリマーマトリクスに金属充填剤を均一かつより高度に充填する方法

【課題】多孔質充填剤材料上での伝導性金属コーティングを提供する。
【解決手段】 金属コート充填剤の製造方法において、有機ジオールの溶液を複数の多孔質充填剤粒子と混合して支持混合物を得る工程と、金属塩溶液を前記支持混合物と接触させて反応混合物を形成する工程と、前記反応混合物を50〜200℃の温度範囲内の温度まで加熱する工程とを備える。金属塩溶液中の金属カチオンが有機ジオールによって還元されて金属粒子となり、多孔質充填剤粒子上および充填剤粒子細孔表面上に配置される。次に、金属コート充填剤を単離しても良い。前記金属コート充填剤を含む電気伝導性および/または熱伝導性の物品ならびにそれらの製造方法も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本セクションは、必ずしも先行技術とは限らない本開示に関連する背景情報を提供するものである。本開示は、多孔質充填剤材料上での伝導性金属コーティングに関するものである。本開示は、そのような充填剤材料の製造方法および電気的および/または熱的用途でのそのような材料の使用方法について説明するものである。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本願は、2009年5月4日出願のインド特許出願第1164/MUM/2009号に対する優先権を主張する。前記出願の開示内容全体が、参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
複合材料の電気的および熱的伝導率を高めるには、充填剤をより高い分量で充填する好適な充填剤が必要である。伝導性の物品を製造するのに用いられる代表的な充填材には、金属、金属塩(例:アルミニウム塩類など)、セラミック(例:カルシウム塩類、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、それらの組み合わせなど)および炭素(例:炭素繊維、グラファイト、粒径がナノからミクロメートルの範囲である各種形態のカーボンブラックなど)などがある。電気伝導性の物品および熱伝導性の物品の製造の分野における主たる目的は、最小量の充填剤で望ましい特性値を得ることにある。高い電気伝導性値および熱伝導性値とするには、相対的に高い量の充填剤充填が必要である。充填剤は異なる密度を有することから、分離が生じる(特に、相対的に密度が高いもの)。この点を考慮すると、充填剤の均一な分布は達成が困難である。充填剤の分布が不均一であると、特性の低下および不安定さが生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許公開第2002/0142094号公報
【特許文献2】米国特許公開第2004/0161369号公報
【特許文献3】米国特許公開第2005/0202244号公報
【特許文献4】米国特許公開第2008/0241543号公報
【特許文献5】米国特許第6680081号公報
【特許文献6】米国特許第7361313号公報
【特許文献7】米国特許公開第2006/0075930号公報
【特許文献8】米国特許第5846309号公報
【特許文献9】米国特許第2455666号公報
【特許文献10】米国特許第2501699号公報
【特許文献11】米国特許第2572483号公報
【特許文献12】米国特許第2621160号公報
【特許文献13】米国特許第3097832号公報
【特許文献14】米国特許第4525388号公報
【特許文献15】米国特許第4353741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
射出成形などの加工時に粘度が高くなることを考慮すると、充填の高重点は達成が困難
である。さらに、密度差によって分離が生じて、不均一となる。従来では、銀またはニッケルなどの金属コーティングをガラスビーズやポリスチレン球の表面に施して、充填剤のコストを低下させる。これによって比較的低コストで比較的高い伝導性を得ることが可能であるが、小さい不連続性のために、伝導路が失われることになる。
【0006】
金属とホスト粒子の間の界面での分離のために、金属化充填剤またはキャリア粒子の製造には大きな困難が生じる。充填剤粒子およびそれの上にコーティングされる金属は異なる界面特性を有することから、時間的変化または環境的変化(特には温度変化および加工時に剪断)による変化のため、金属が充填材粒子から分離して、伝導性の低下を生じやすい。
【0007】
粉末粒子−金属分離を防止し、密着した金属コーティングを有する粉末粒子を製造するため、エッチングを施すことで表面に凹凸を導入して表面積を増やすことにおり、金属付着を改善する充填剤粒子を製造することによって、上記の問題を改善する試みを行った当業者がいる。粉末粒子をモノマーシラン、代表的にはγ−アミノプロピルトリエトキシシランなどのシランカップリング剤で処理することによる、金属付着の改善も行われている。粉末粒子をエポキシ樹脂などの有機樹脂で処理して、金属付着を改善することも行われている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本セクションは、本開示の要旨を提供するものであって、本願の全範囲またはそれの全ての特徴の総合的な開示ではない。
1態様において、細孔を有する多孔質充填剤粒子ならびに前記充填剤粒子上および前記内にコーティングされた金属粒子を含む金属コーティングされた充填剤の実施形態が提供される。
【0009】
別の態様において、本技術は、金属コート充填剤の製造に関する方法の実施形態を提供する。ある例示的実施形態では、方法は、支持混合物を得るべく有機ジオールの溶液を複数の多孔質充填剤粒子と混合する工程と、反応混合物を形成すべく金属塩溶液を前記支持混合物と接触させる工程と、前記反応混合物を約50℃〜約200℃の温度範囲内の温度まで加熱する工程とを有する。前記金属塩溶液中の金属カチオンを還元して金属粒子とし、多孔質充填剤粒子上および充填剤粒子細孔表面上に配置する。その方法には、濾過、遠心、沈降の技術などを用いて前記金属コート充填剤を単離する適宜の単離段階があっても良い。
【0010】
本明細書に開示の金属コート充填剤を含む物品および/または本明細書に開示の方法によって製造される物品には、テープ、ポリマーフィルム、ポリマー複合材料、高熱伝導性の射出成形可能な熱可塑性複合材料、高電気伝導性の射出成形可能な熱可塑性複合材料、伝導性接着剤などの電気伝導性物品および/または熱伝導性物品などがあり得る。その物品には、他の高アスペクト比充填剤を有するコーティングされた多孔質粒子が含まれ得る。
【0011】
利用可能なさらに別の分野については、本明細書で提供される説明から明らかになろう。本要旨における説明および具体例は、例示のみを目的としたものであって、本技術の範囲に制限を加えるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】本技術の実施形態に従って製造した銅および銀コートパーライトシリカ質充填剤粒子の走査電子顕微鏡写真(各種倍率での銅コート粒子を有するパーライトの拡大図)。
【図1B】本技術の実施形態に従って製造した銅および銀コートパーライトシリカ質充填剤粒子の走査電子顕微鏡写真(各種倍率での銅コート粒子を有するパーライトの拡大図)。
【図1C】本技術の実施形態に従って製造した銅および銀コートパーライトシリカ質充填剤粒子の走査電子顕微鏡写真(各種倍率での銀コート粒子を有するパーライトの拡大図)。
【図1D】本技術の実施形態に従って製造した銅および銀コートパーライトシリカ質充填剤粒子の走査電子顕微鏡写真(各種倍率での銀コート粒子を有するパーライトの拡大図)。
【図2】本技術の実施形態に従って製造された銅コートパーライトシリカ質充填剤粒子上にコーティングされた銀を示す走査電子顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0013】
留意すべき点として、本明細書に示した図は、ある種の実施形態の説明を目的として、本技術に関するものの中で材料および方法の一般的な特徴を例示するためのものである。これらの図は、いずれか所定の実施形態の特徴を正確に反映したものでなくとも良く、必ずしも本技術の範囲内の具体的な実施形態を定義したり制限するものではない。
【0014】
技術についての下記の説明は、1以上の発明の主題、製造および使用の性質における例示に過ぎず、本願または本願に対する優先権を主張して出願され得る他の出願、あるいは、それら出願から発行される特許で請求される具体的な発明の範囲、利用分野または使用に限定を加えるものではない。下記の定義および非限定的なガイドラインは、本明細書に示した技術の説明を検討する上で考慮すべきものである。
【0015】
本明細書で使用される表題(「背景」および「要旨」など)および副題は、本技術に含まれる主題の整理のみを目的としたものであり、本技術またはそれのいずれかの態様の開示を制限するものではない。特に、「背景」に開示の主題は、新規な技術を含み得るものであり、先行技術の列挙を構成しないものであることができる。「要旨」に開示の主題は、当該技術やそれの実施形態の範囲全体の包括的もしくは完全な開示ではない。本明細書のセクション内での材料についての特定の用途を有するものとしての分類または説明は便宜上行うものであって、その材料が、いずれか所定の組成で用いられる場合に、必ずかつ専ら本明細書におけるそれの分類に従って機能すべきであると推論すべきではない。
【0016】
本明細書における参考文献の引用は、それらの参考文献が先行技術であり、本明細書に開示の技術の特許性に関連を有することを承認するものではない。背景で引用された参考文献の内容についての説明は、その参考文献の著者が行っている主張の要旨を提供することのみを目的としたものであり、そのような参考文献の内容の正確さに関して承認を与えるものではない。本明細書の「説明」のセクションで引用されている参考文献はいずれも、参照によってそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0017】
説明および具体例は、当該技術の実施形態を示すものであるが、説明のみを目的としたものであり、当該技術の範囲を制限することを意図したものではない。さらに、挙げられた特徴を有する複数の実施形態の列挙は、別の特徴を有する他の実施形態や挙げられた特徴の異なる組み合わせを組み込んだ他の実施形態を排除するものではない。具体例は、本技術の組成物および方法の製造および使用方法を説明することを目的としたものであり、別途明瞭に説明されていない限り、本技術の所定の実施形態について実施や試験が行われたことを示すものではない。
【0018】
本明細書で使用される場合、「好ましい」および「好適には」という用語は、一定の環境下にて、一定の利益を提供する技術の実施形態を指すものである。しかしながら、同一
環境または他の環境下で、他の実施形態が好ましいものとなる可能性もある。さらに、1以上の好ましい実施形態が挙げられている場合、それは、他の実施形態が有用ではないことを示唆するものではなく、当該技術の範囲から他の実施形態を除外することを意図するものではない。
【0019】
本明細書で言及されている場合に、組成パーセントはいずれも、別段の断りがない限り、組成物全体の重量基準である。本明細書で使用される場合、「包含する」、「含む」およびそれらの変形表現は、非限定的であることで、あるリスト中の用語の列挙が本技術の材料、組成物、装置および方法において有用となり得る他の同様のものを除外するものではないことを意図している。同様に、「できる」および「しても良い」という用語およびそれらの変形表現は、非限定的であることで、ある実施形態がある種の要素もしくは特徴を含むことができるか含んでいても良いと言及することが、それらの要素または特徴を含まない本技術の他の実施形態を排除しないことを意図したものである。
【0020】
具体的なパラメータ(温度、分子量、重量パーセントなど)についての値および値の範囲の開示は、本明細書で有用な他の値および値の範囲を排除するものではない。所定のパラメータについて2以上の具体的で例示的な値が、そのパラメータについて特許請求され得る値の範囲についての端点を定義し得ることが想到される。例えば、パラメータXが本明細書において値Aを有するものと例示され、さらには値Zを有するものと例示される場合、パラメータXが約Aから約Zの値の範囲を有し得ることが想到される。同様に、あるパラメータについて2以上の値の範囲が開示されている場合(そのような範囲が枝分かれしているか、重複しているか、別個のものであるかを問わず)、開示の範囲の端点を用いて特許請求され得る値の全ての可能な範囲の組み合わせが含まれることが想到される。例えば、パラメータXが本明細書において1〜10、または2〜9、または3〜8の範囲の値を有すると例示されている場合、パラメータXが1〜9、1〜8、1〜3、1〜2、2〜10、2〜8、2〜3、3〜10および3〜9などの他の値の範囲を有し得ることも想到される。
【0021】
包含、含有または有するなどの非限定的な用語の同義語としての制約のない「含む」という用語を本明細書において用いて、本技術の実施形態を説明および特許請求しているが、実施形態は別途に、「からなる」または「本質的に・・・からなる」などのより限定的な用語を用いて説明することができる。従って、成分、構成要素またはプロセス段階について言及しているいずれの実施形態においても、出願人は具体的に、別の成分、構成要素またはプロセスを除く(「からなる」の場合)、そしてその実施形態の新規な特徴に影響を与える別の成分、構成要素またはプロセスを除く(「本質的に・・・からなる」の場合)、そのような成分、構成要素またはプロセスからなる、または本質的にそれからなる実施形態を想到するものであり、たとえそのような別の成分、構成要素またはプロセスが本願において明瞭に言及されていない場合でもそれが適用される。例えば、要素A、BおよびCについて言及している組成物またはプロセスについての言及は具体的には、当業界で言及され得る要素Dを除くA、BおよびCからなる、そして本質的にそれらからなる実施形態を想到するものであり、たとえ要素Dが本明細書において除外されるものと明瞭に記載されていない場合でもそれが適用される。
【0022】
本技術は、電気伝導用途および/または熱伝導用途における金属粒子でコーティングされたキャリアシステムの効率を上昇および増加させるものである。例えば、本技術の一部の実施形態は、マトリクス全体での金属粒子分布の均一性が改善されたキャリアシステムを提供する。
【0023】
本技術の実施形態は、複数の細孔を有する複数の多孔質充填剤粒子;および前記充填剤粒子上および前記複数の細孔(細孔の内部表面を含む)にコーティングされた複数の金属
粒子を含む金属コート充填剤を提供する。上述のように、本発明の発明者らは、射出成形などの加工時に粘度が高まることを考慮して、充填剤の高充填が達成困難であると認識していた。さらに本発明者らは、密度における差のために分離が生じて不均一性に至ることを認識していた。パーライトなどの高度多孔質材料上またはその内部に金属充填剤(例えば、銅、銀など)をコーティングする等により、本明細書に開示の本技術の実施形態で、これらの両方の問題が克服可能である。
【0024】
本技術の例示的な組成物および方法において有用な金属粒子には、周期表の8〜12族(IUPAC)またはVIIIB、IBおよびIIB族(CAS)の金属粒子などがある。そのような金属には、金、銀、白金、銅、鉄、パラジウム、コバルト、パラジウム、ニッケル、アルミニウム、亜鉛およびそれらの合金などがある。金属塩溶液は、Cu、Cu2+、[Cu(NH2+、Ni2+、Pd2+、Pt2+、Au、Au3+、Zn2+、Ag、Al3+、Cd2+、Fe2+およびFe3+などの金属含有カチオンを含むことができる。金属塩溶液は、上記金属カチオンまたは金属カチオンの単純なアニオン、オキソアニオンおよび有機酸アニオンの一部であるアニオン化学種との組み合わせを含むことができる。金属カチオンは、水溶液または非水溶液の形態であることができる。一部の実施形態において、金属塩を形成するアニオン化学種には、Cl、OH、NO、NO、PO3−、PO3−、HPO2−、HPO、MnO,SO2−、SO2−、CO2−、CrO2−、HCO、CおよびC2−などがあり得る。好適には、そのアニオンは硝酸イオン、酢酸イオンまたはリン酸イオンである。
【0025】
本技術の実施形態は、多孔質充填剤粒子、例えばシリカ質多孔質粒子および/または非シリカ質多孔質粒子を用いることができる。非シリカ質多孔質充填剤粒子には、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、それらの組み合わせなどのセラミックならびに多孔質金属粒子、例えば水酸化アルミニウムなどがあり得る。好適には、多孔質充填剤粒子は多孔質シリカ質粒子である。多孔質充填剤粒子は、粒子表面上および粒子本体の細孔内で金属接触表面を提供するという点で有利である。金属粒子をコーティングするための表面積が増加することで、伝導性マトリクス材料において金属粒子充填量が高くなり、金属粒子の分布均一性が高くなる。多孔質充填剤粒子は、30パーセントより大きい、40パーセントより大きい、50パーセントより大きい、60パーセントより大きい、70パーセントより大きい、80パーセントより大きい、85パーセントより大きい、87パーセントより大きい、90パーセントより大きい、95パーセントより大きい、または99パーセントより大きい最終多孔率を有するシリカ質および非シリカ質鉱物に由来する粒子を含むことができる。多孔質充填剤粒子は、最終多孔率約40〜約99パーセント、または約45〜約99パーセント、または約50〜約99パーセント、または約55〜約99パーセント、または約60〜約99パーセント、または約65〜約99パーセント、または約70〜約99パーセント、または約75〜約99パーセント、または約80〜約99パーセント、または約85〜約99パーセントを有するシリカ質および非シリカ質鉱物に由来の粒子を含むことができる。好適には、多孔質充填剤粒子の多孔率範囲は約80〜約99パーセントである。
【0026】
シリカ質充填剤粒子には、約5〜約90重量パーセントのケイ素、約0.01〜約25重量パーセントのアルミニウム、約0.001〜約10重量パーセントのカリウム、約0.001〜約15重量パーセントのナトリウム、約0.001〜約10重量パーセントの鉄、約0.001〜約5重量パーセントのカルシウム、約0.001〜約5重量パーセントの水素、約0.001〜約5重量パーセントのマグネシウムを含む元素組成を有する粒子を含むシリカなどがある。そのような組成物は代表的には、微量元素をさらに含み、組成物の残りの部分は好適には酸素からなる。シリカ質充填剤粒子は、上記の多孔率を有するいくつかの公知のシリカ質粒子を含むことができる。例示的な例をいくつか挙げると、
パーライト、バーミキュライト、軽石、モンモリロナイトまたはゼオライトなどがある。一部の実施形態では、シリカ質充填剤粒子は、これらの例示的なシリカ質充填剤粒子の混合物を含むことができる。
【0027】
本技術の実施形態で用いることができるパーライトには、一般に火山ガラス(珪鉱および珪質溶岩の急速冷却によって形成される)とも称されるパーライト鉱石(天然ガラスの分類に属する)に由来する膨張パーライトなどがある。パーライト鉱石は、代表的には約72〜75パーセントのSiO、12〜14パーセントのAl、0.5〜2パーセントのFe、3〜5パーセントのNaO、4〜5パーセントのKO、0.4〜1.5パーセントのCaO(重量基準)ならびに低濃度のMgO、TiOおよび他の金属構成要素を含む水和天然ガラスである。パーライト鉱石は、化学的に結合した水の含有量が相対的に高いこと(2〜10重量パーセント)、ガラス質で真珠光沢があること、そして特徴的な同心もしくは弓形のタマネギの皮のような(真珠岩質)割れ目により、他の天然ガラスから区別される。
【0028】
バーミキュライト(MgFe,Al)(Al,Si)10(OH)・4HOは、ある種の玄武岩質鉱物の水和によって形成される。バーミキュライトは、フィロケイ酸塩または層状ケイ酸塩群の鉱物の構成員である。その鉱物の基本的構造は、雲母およびタルクと同一であり、シリカおよびアルミナ四面体の二つの平坦層(四面体層)からなる2:1ケイ酸塩シートであり、それらの層は頂点の酸素原子、ならびにマグネシウム、鉄およびヒドロキシル分子から構成された層(八面体層)で結合している。2:1シート間には、イオン交換可能な層がある。この層は、存在する層間カチオンおよびそれに関連する水和の水の配置に応じて厚さが変わる。
【0029】
軽石は、噴出火山岩の一種であり、非常に高含有量の水およびガス(これらは一緒に揮発分と称される)を伴う溶岩が火口で押し出された時に生じるものである。気泡が溶岩から飛び出す際に、それは泡状になる。この溶岩が冷却し、硬くなると、微小な気泡で満たされた非常に軽い岩石物質が残る。ガスは散逸して高度多孔質ガラスを出て(軽いしは平均多孔率90パーセントを有する)、そのガラスは砕けてより小さい粒子となり得るが、なおも粒子全体に微小孔を保持している。
【0030】
モンモリロナイト(Na;Ca)0.3(Al;Mg)Si10(OH)・nHOは、粘土鉱物群の構成員である。それは代表的には、顕微鏡的または少なくとも非常に小さい板状の雲母結晶を形成している。水分含有率は可変であり、実際のところ、その結晶が水を吸収すると、それは膨潤して、最初の体積の数倍になる。モンモリロナイトは、いくつかの目的に有用な鉱物であり、ベントナイトと称される火山灰の主要な構成要素である。
【0031】
ゼオライトは、構造が詳細にわかっている微孔性結晶固体である。ゼオライトを規定する特徴は、それの骨格が4つの連結された原子ネットワークから構成されているという点である。ゼオライトは、アルミノケイ酸塩鉱物として分類することもでき、微細孔構造(100nmより小さい細孔)を有する。ゼオライトは、ゼオライトの細孔内に吸収された水が加熱によって追い出されることによる高多孔質鉱物である。約175種類の公知のゼオライト骨格が確認されており、40種類を超える天然ゼオライト骨格が鉱物の業界で公知である。ゼオライトは、Na、K、Ca2+、Mg2+およびその他などの非常に多様なカチオンを収容可能な多孔質構造を有する。これらの陽イオンすなわちカチオンは、かなり緩く保持されており、接触溶液中の他のものと容易に交換可能である。比較的一般的な鉱物ゼオライトをいくつか挙げると、方沸石、菱沸石、輝沸石、ソーダフッ石、フィリップサイトおよび束沸石がある。ゼオライト構成員の一つについての鉱物式の例は、NaAlSi10−2HOであり、ソーダフッ石の式である。
【0032】
多孔質充填剤粒子は、掘削鉱石から製造可能であり、広い範囲の粒径で市販されている。本技術の実施形態は、約0.001mm〜約5mmという広範囲の分粒した粒子を利用することができる。本明細書で使用される場合、多孔質充填剤粒子の直径は、d50として参照することができ、そのd50値は累積パーセント粒径中央値としての粒径分布を示すものであり、すなわちd50値、すなわち質量中央値直径未満の直径を有する粒子であり、d50粒径の値は群を正確に1/2ずつに分ける。この値は粒子の微細さを評価するものである。多孔質充填剤粒子のd50の値は、5mm以下、4mm以下、3mm以下、2mm以下、1mm以下、0.5mm以下、0.1mm以下、80μm以下、60μm以下、40μm以下、30μm以下、25μm以下、20μm以下、15μm以下、10μm以下、8μm以下、6μm以下、または3μm以下であることができる。
【0033】
50の値は、1μmという低値であることができ、または0.5μmという低値であることもできる。例えば、膨張パーライトのd50の値は、約1μm〜約5.0mm、例えば約10μm〜約2mm、約50μm〜約1000μm、または約100μm〜約500μmであることができる。
【0034】
一部の実施形態において、多孔質充填剤粒子に関する粒径値は、等価球径として特定することができ、リーズ・アンド・ノースラップから入手可能なリーズ・アンド・ノースラップマイクロトラック(Microtrac)XI00(LNM XI00)を用いるレーザー光粒径分析によって測定される。同様の装置が、日本のホリバからも入手可能である(LA950V2型)。この技術において、粉末、懸濁液および乳濁液での多孔質充填剤粒子の径を、フラウンホーファーまたはミー理論のいずれかの使用に基づいて、レーザー光の回折を用いて測定することができる。各種実施形態において、ミー理論を利用している。本明細書で使用される「平均粒径」または「d50」という用語は、d50値未満の直径を有する粒子の50体積パーセントが存在する粒径を、このようにして測定した値である。各種実施形態において、粒径測定に好ましいサンプル製剤は、懸濁液である。LNM XI00装置は通常、小数二桁まで粒径データを提供し、実施形態の粒径が満足であり、一定の仕様を満たすか否かを決定する場合に切り上げまたは切り捨てを行うか、あるいは実質的に同じ結果を与える他の方法によって行う。
【0035】
本技術の例示的な実施形態では、膨張パーライトは、約1:1〜約1:50、約1:2〜約1:35、または約1:5〜約1:20のアスペクト比を有することができる。アスペクト比は、米国特許第5846309号に記載の実験的に測定された(電子顕微鏡を用いて)表面積データから球面性モデルによって計算することができる。膨張パーライトを製造するためのプロセス条件は、米国特許第2455666号;同2501699号;同2572483号;同2621160号;同3097832号および同4525388に開示されている。
【0036】
金属コート充填剤で用いられ、本技術の実施形態の方法で使用される膨張パーライトは、破砕、粉砕、製粉および篩分けを含む方法によって製造することができる。例えば、パーライト鉱石は、破砕、粉砕および分離して、所定の粒径範囲とすることができる。分離材料は次に、空気中、代表的には膨張炉中にて約870℃〜約1100℃の温度で加熱することができる。膨張パーライトは、従来の破砕、粉砕および製粉技術を用いて製造することができ、従来の分離技術を用いて粒径要件を満足するように分離することができる。一部の実施形態において、多孔質充填剤粒子のかさ密度は、約10キログラム/立方メートル(kg/m)〜約300kg/m、または約10kg/m〜約250kg/m、または約10kg/m〜約200kg/m、または約10kg/m〜約150kg/m、または約10kg/m〜約100kg/mの範囲であることができる。
【0037】
本技術は、多孔質充填剤粒子上に金属粒子をコーティングする改善された方法を提供する。例示的な実施形態において、方法は、有機ジオールの溶液を複数の多孔質充填剤粒子と混合して支持混合物を得る段階;金属塩溶液を前記支持混合物と接触させて反応混合物を形成する段階;および前記反応混合物を約20℃〜約200℃の温度範囲内の温度まで加熱する段階を有することで、前記金属塩溶液中の金属カチオンを還元して金属粒子とし、多孔質充填剤粒子上および充填剤粒子細孔表面上に配置する。一部の実施形態において、その方法には、前記金属コート充填剤を単離する段階があっても良い。
【0038】
ある量の多孔質充填剤粒子、例えば、秤量した量の膨張パーライト(ノルライト(Norlite)(登録商標)N50;密度4.5〜6.6(ポンド/立方フィート)、メッシュサイズ24〜100として市販、そしてケルテク・エナジーズ社から市販のフィリト(Fillite)(登録商標))を、ある量の有機ジオール、例えば温度範囲約150℃〜約200℃内の温度まで加熱したエチレングリコール100ミリリットル(mL)に分散させることで、支持混合物を形成することができる。
【0039】
次に、支持混合物分散液を、測定された量(固体または液体の形態で)の金属塩溶液と混合することで、反応混合物を形成する。次に、反応混合物を、約20℃〜約200℃、より好適には約160℃〜約180℃の温度範囲内の温度まで加熱する。適宜に、多孔質充填剤粒子全てを濡らすため、超音波装置を反応混合物と接触して配置させ、120ワットの電力設定で30〜40キロヘルツにて1〜5回パルス照射することができる(例えば、ウルトラソニック システムズ、インド国、バンガロー)。
【0040】
反応混合物を20℃〜約200℃、より好適には約160℃〜約180℃温度範囲内に維持しながら、反応混合物を容器中で撹拌することができる。反応混合物を加熱するのに必要な時間は可変であるが、代表的な加熱期間は通常は1分〜24時間の範囲である。好適には加熱期間は通常は1分〜5時間の範囲であり、より好適には加熱期間は通常は1分〜1時間の範囲である。この例では、反応混合物は、必ずしも単一の一定温度に維持する必要はない。代わりに、一部の実施形態では、反応混合物の温度を単に維持することで、反応混合物および沈澱溶液の温度が期間中に変動する(上昇または下降)か否かとは無関係に、その温度を温度範囲内にとどめるようにする。本明細書で使用される場合、「ある温度範囲内の温度」という表現は、文脈に別段の記載が明瞭に示されていない限り、必ずしもその温度範囲内の単一の一定温度を要求しているわけではない。代わりに、ある温度範囲内の温度」という表現は、やはり前記温度範囲内に留まりながら、上昇または下降可能な変動する温度もしくは可変温度を含むこともできる。
【0041】
反応混合物中の金属カチオンは、有機ジオールによって還元されて、価数ゼロ状態を有する金属粒子となる。大半の金属カチオンが多孔質充填剤粒子上および充填剤粒子細孔表面上で還元されて金属となったら、約15分〜約1時間後に、金属コート充填剤サンプルを取り出すことができる。金属コート充填剤粒子は、洗浄および濾過、遠心および沈降などのいくつかの公知の方法によって液体反応物から単離することができる。金属コート充填剤粒子は、反応混合物、例えば真空源に取り付けられた適切なフィルターを有するブフナー漏斗を用いて、反応混合物から回収することができる。ブフナー漏斗を用いる粒子の実験室的な回収方法には、シャピロの報告(Shapiro J, High-Rate Laboratory Filteration with Buchner Funnels, Science (1961); 133 (3467): 1828-1829)に記載のものな
どがある。一部の実施形態において、第1の(x)寸法が約0.1μm〜約10μmの範囲であり、第2の(x)寸法が約1μm〜約100μmの範囲である針状の高アスペクト比金属粒子を捕捉するのに用いられるフィルターは、ミリポア(Millipore)およびワットマン(Whatman)から市販されている。本技術の実施形態における固体金属粒子は、沈澱混合物からの分離後に、洗浄水の伝導率が20μΩ以下となるまで水で洗浄することができる。適宜に、単離された金属コート充填剤粒子を、小鎖アアルコール
などの有機溶媒で洗浄することができる。次に、その水および/または溶媒を金属粒子から除去することができ、その粒子は乾燥させる。
【0042】
洗浄したら、単離された金属コート充填剤粒子を、約40℃〜約150℃の温度範囲内の温度に設定した乾燥機中で乾燥させ、約1〜約24時間の範囲の期間にわたり、予熱した乾燥機中で乾燥させることができる。金属コート充填剤粒子を含む得られた金属コート充填剤は、そのまま使用可能である。金属粒子でコーティングされたパーライトの代表的な例を図1パネルAおよびBに示してある。図1パネルAからわかるように、パーライトは複数の細孔を有し、パーライト細孔の表面上に銀粒子がコーティングされている。図1パネルCおよびDは、複数金属コートパーライト充填剤粒子の走査顕微鏡写真である。
【0043】
金属塩溶液の濃度は、シリカ質充填剤粒子上にコーティングされた金属粒径に影響する。粒子表面および粒子細孔の表面(本明細書において粒子細孔表面とも称される)上の粒子細孔内など、金属塩溶液で処理し得る表面全体を通じて実質的に均一に分布される相対的に小さい金属粒径を得ることが好ましい。例を挙げると、金属コート充填剤を製造する本発明の方法の実施形態は、約0.01M〜約1Mの範囲内である、反応混合物中の金属塩溶液の最終濃度を用いる。反応混合物範囲中の有機ジオールの最終濃度は、約1M〜約10Mである。一部の実施形態において、有機ジオールの金属塩溶液に対するモル比は、約1〜0.001の範囲であることができる。一部の実施形態において、全体の反応には、酢酸銅4gをグリコール100mLに分散させる段階があっても良い(0.2M)。金属塩溶液の有機ジオールに対する比は、必要とされる金属コート充填剤粒子の量に従って上昇または下降させることができる。
【0044】
充填剤粒子の表面積が増加すると、より高濃度の金属を表面上の分散させることができる。例えば、BET表面積50平方メートル/グラム(m/g)の支持体上に銀を分散させる場合、表面の約67パーセントが、5パーセント銀充填量で、完全に分散した銀の単層によって覆われる。しかし、支持体BET表面積が200m/gである場合、5パーセント銀充填量では、表面の約17パーセントのみが、銀単層によって覆われており、銀充填量が約20パーセントになるまで、約67パーセントの表面被覆には到達しない。本技術の好ましい実施形態において、充填剤粒子のBET表面積は約10m/g〜約2000m/gである。本明細書で使用される場合、「BET表面積」とは、多分子吸着についてのブルナウアー・エメット・テラー(Brunauer、Emmett、Teller)の式を用いることで求めた充填剤粒子の表面積を指す。BET式の使用およびそれの応用についてのさらなる詳細、説明および例に関しては、ショー(Shaw)の編著(Introduction to Colloid and Surface Chemistry ,第2版、D.J. Shaw、出版Burterworth社、1978)を参照する。多孔質充填剤粒子は、約10〜約2000m/gの範囲のBET法を用いて計算される表面積を有することができ、より好適には、多孔質充填剤粒子は、約200〜1500m/g、最適には約300〜約1500m/gの範囲の表面積を有することができる。
【0045】
各種実施形態において、金属塩溶液は好適には、約400重量パーセントの金属/100重量パーセントの多孔質充填剤粒子から約100重量パーセントの金属/100重量パーセントの多孔質充填剤粒子という範囲の多孔質充填剤粒子の金属充填量を生じるだけの有機ジオールの存在下で、金属カチオン濃度を有する。すなわち、多孔質充填剤粒子の総重量に対する最終金属コート充填剤上の金属粒子の総重量は、約4:1〜約1:1の範囲であることができる。多孔質充填剤粒子上の金属粒子の金属充填量は、100重量パーセントの充填剤粒子に対して約100〜約400重量パーセント、または約100〜約300重量パーセント、または約100〜約200重量パーセント、または約100〜約150重量パーセント、または約150〜約400重量パーセント、または約200〜約400重量パーセント、または約250〜約400重量パーセント、または約300〜約40
0重量パーセント、または約350〜約400重量パーセント金属の範囲であることができる。
【0046】
一部の実施形態において、第2の金属(例:銀、腐食しにくい金属など)を、同一もしくは異なる金属で最初にコーティングされた金属コート充填剤上にコーティングすることができる。複数金属コート充填剤の製造方法には、有機ジオールの溶液を第1の金属でコーティングした複数の金属コート充填剤粒子と混合して支持混合物を得る工程と、異なる金属カチオンを有する金属塩溶液を支持混合物とともに金属コート充填剤粒子上にコーティングされた第1の金属に加えて反応混合物を形成する工程と、前記反応混合物を50℃〜200℃の温度範囲内の温度まで加熱することで、金属塩溶液中の金属カチオンが還元されて金属粒子となり、それが金属コート充填剤粒子の表面および細孔表面に配置される工程がある。
【0047】
一部の実施形態において、金属コート充填剤は、水系媒体中の第2の金属でコーティングすることができ、例えば、銅を多孔質充填剤粒子上の堆積させた後に、銅コート充填剤上に銀をコーティングすることができる。その場合、還元剤として酒石酸ナトリウムカリウムを用いて、銅コート充填剤の表面上への硝酸銀から銀の還元を行う。本技術の実施形態に従って製造された銀コート銅粒子を、図2に図示している。
【0048】
本技術の実施形態の金属コート充填剤は、各種の電気伝導用途(例:配線、回路基板、半導体装置製造、無線ICタグ、プリント回路およびフレキシブル回路などに使用される高電気伝導性で射出成形可能な熱可塑性複合材料)および/または熱伝導用途(例:高熱伝導性で射出成形可能な熱可塑性複合材料用途など)で用いることができる。本明細書に開示の金属コート充填剤は、ペースト、射出成形可能な伝導性プラスチック、伝導性グリース、伝導性パテ、伝導性エラストマーなどで用いることができる。
【0049】
ここで、例として、本発明の実施形態の金属コート充填剤などの射出成形可能ポリマー(例:熱可塑性物質など)複合材料を用いることができるいくつかの熱的用途の説明を行う。第1の例として、金属コート充填剤を含む射出成形可能な熱伝導性ポリマー複合材料は、家庭の照明、自動車テールランプ、ディスプレイおよび掲示板などに関連するLEDなどを有する、発光ダイオード(LED)熱管理に用いることができる。LEDは代表的には、75%〜85%の電力を熱にする。しかし、過剰の熱はLED性能に直接影響する。従って、金属コート充填剤を含む射出成形可能な熱伝導性ポリマー複合材料の使用により、操作温度を下げることが可能となり、それによって、LEDの運転寿命が長くなるようにすることができる。この例についてさらに続けると、20ワット/メートル・ケルビンより高い熱伝導率、約60〜120℃の熱的安定性、20℃での5×10−6/K未満の熱膨張係数、およびV0またはV1の保険業者研究所(UL)引火性評点という仕様を満たすように、金属コート充填剤を含む射出成形可能な熱伝導性ポリマー複合材料を構成することができる。
【0050】
金属コート充填剤を含む射出成形可能な熱伝導性ポリマー複合材料の使用の別の例は、ブルーレイ用途のあるDVDピックアップトレー、家庭電化製品、光学記憶装置などにおける熱伝導率および/またはEMI遮蔽に関するものである。DVDピックアップトレーについては、DVDレーザーが高温であるために対流冷却ができないのが普通であり、小型化による空間的な制約もある。この例では、20ワット/メートル・ケルビンより高い熱伝導率、約120℃の熱的安定性、7ギガパスカルのモジュラスおよびV0またはV1のUL引火性評点という仕様を満たすように、金属コート充填剤を含む射出成形可能な熱伝導性ポリマー複合材料を構成することができる。
【0051】
別の応用例は、消費者用途および工業用途、保健医療、家庭電化製品などでの凍結乾燥
または貯氷室用の高熱伝導性プラスチックトレーに関するものである。ガスによる冷却は、そのようなトレーでは効率が悪い可能性があり、そのようなトレーに関連する複雑な部品を射出成形することは比較的困難になる可能性がある。この例では、金属コート充填剤を含む射出成形可能な熱伝導性ポリマー複合材料は、20ワット/メートル・ケルビンより高い熱伝導率、−80℃の熱的安定性、クラスAの表面、良好な耐候性、V0またはV1のUL引火性評点および紫外線安定性という仕様を満足するよう構成することができ、例えば電気/熱伝導性の環境に優しい複合材料を提供することができる。
【0052】
さらに別の応用例は、消費者および工業用途、電気および電子製品用途等での、モーター/コンプレッサー用の熱伝導性プラスチック製カプセル材/カバーに関するものである。代表的には、モーター/コンプレッサー用のカバーは、比較的複雑な部品であるために射出成形するのが困難となり得る。この例では、金属コート充填剤を含む射出成形可能な熱伝導性ポリマー複合材料は、20ワット/メートル・ケルビンより高い熱伝導率、約100℃の熱的安定性、クラスAの表面、良好な耐候性、7ギガパスカルのモジュラスおよびV0またはV1のUL引火性評点という仕様を満たすように構成して、例えば軽量かつ内部の成形を提供することができる。
【0053】
マイクロエレクトロニクス、オプトエレクトロニクスおよびMEMSパッケージ化が、金属コート充填剤を含む射出成形可能な熱伝導性ポリマー複合材料を使用可能な別の応用例である。小型化のために、非常に小型の電子機器の熱管理は、そのような電子機器の性能にとって非常に重要である。この例では、金属コート充填剤を含む射出成形可能な熱伝導性ポリマー複合材料は、20ワット/メートル・ケルビンより高い熱伝導率、約60℃の熱的安定性、200℃で5×10−6/K未満の熱膨張係数およびV0またはV1のUL引火性評点という仕様を満たすように構成することができる。
【0054】
パワーエレクトロニクス(例:航空宇宙、電力およびエネルギー、自動車用途など)が、金属コート充填剤を含む射出成形可能な熱伝導性ポリマー複合材料を使用可能な別の応用例である。高出力装置の熱的管理は、装置損失を最小化または少なくとも低下させる上で比較的重要である。この例では、金属コート充填剤を含む射出成形可能な熱伝導性ポリマー複合材料は、20ワット/メートル・ケルビンより高い熱伝導率、約200℃の熱的安定性、200℃で5×10−6/K未満の熱膨張係数およびV0またはV1のUL引火性評点という仕様を満たすように構成することで、例えば熱的安定性および良好な製造性とともに高い熱伝導率を提供することができる。
【0055】
別の用途は、エレクトロニクス、工業、発電およびエネルギー用途などで使用される射出成形可能な熱交換器(例:直交流熱交換器など)に関するものである。熱交換器は多くの場合、金属射出成形およびレーザー焼結によって製造可能な比較的複雑な金属構造である。この例では、金属コート充填剤を含む射出成形可能な熱伝導性ポリマー複合材料は、20ワット/メートル・ケルビンより高い熱伝導率、約200℃の熱的安定性、耐薬品性、寸法安定性およびV0またはV1のUL引火性評点という仕様を満たすように構成することで、例えば熱的安定性および複雑な形状(例えば、らせん形など)への製造性とともに高い熱伝導率を提供することができる。
【0056】
さらに別の応用例は、エレクトロニクス、工業、電力およびエネルギー用途などで使用される高熱伝導率成形インサートを有するカプセル密閉/カバーを施した動力供給装置に関するものである。金属パネルは比較的重い傾向があり、複雑な部品に製造することが困難である場合が多い。動力供給装置では、分離のために電気絶縁体が必要とされるのが普通である。この例では、金属コート充填剤を含む射出成形可能な熱伝導性ポリマー複合材料は、20ワット/メートル・ケルビンより高い熱伝導率、7ギガパスカルより大きいモジュラスおよびV0またはV1のUL引火性評点という仕様を満たすように構成すること
で、例えば絶縁が行われた大型パネルおよび金属部品を有するインサート成形品を提供することができる。
【0057】
別の熱伝導性の例は、工業および自動車用途での使用などのラジエーター部品に関するものである。金属パネルは重い傾向があり、複雑な部品に製造することが困難である場合が多い。さらに、従来のファン冷却システムは、あまり効率および効果が高くない。この例では、金属コート充填剤を含む射出成形可能な熱伝導性ポリマー複合材料は、20ワット/メートル・ケルビンより高い熱伝導率、7ギガパスカルより大きいモジュラス、耐候性、耐薬品性およびV0またはV1のUL引火性評点という仕様を満たすように構成することで、例えば軽量および高い冷却効率を提供することができる。
【0058】
別の例は、工業および自動車用途での使用などの電気自動車変換キットおよび部品に関するものである。この例では、金属コート充填剤を含む射出成形可能な熱伝導性ポリマー複合材料は、20ワット/メートル・ケルビンより高い熱伝導率、7ギガパスカルより大きいモジュラス、耐候性、クラスA表面、耐薬品性およびV0またはV1のUL引火性評点という仕様を満たすように構成することで、例えばさらなる軽量性、低コストおよび/またはより容易な複雑部品の成形を提供することができる。
【0059】
さらに別の用途は、自動車および工業用途での使用などの熱伝導性ポリマーに基づくディーゼルポンプに関するものである。ディーゼル燃料ポンプは、氷点下の温度での燃料流動を助けるために熱伝導性プラスチック/金属を必要とする場合がある。この例では、金属コート充填剤を含む射出成形可能な熱伝導性ポリマー複合材料は、20ワット/メートル・ケルビンより高い熱伝導率、7ギガパスカルより大きいモジュラス、耐候性、耐薬品性およびV0またはV1のUL引火性評点という仕様を満たすように構成することで、例えば熱伝導性を伴う高い熱的安定性および比較的容易な部品成形性を提供することができる。
【0060】
別の用途は、家庭/オフィスの建造物および構造のつや出しでの放射加熱に関するものである。放射加熱システムは、床/壁を均一に加熱するために熱伝導性複合材料を必要とする場合がある。この例では、金属コート充填剤を含む射出成形可能な熱伝導性ポリマー複合材料は、20ワット/メートル・ケルビンより高い熱伝導率、7ギガパスカルより大きいモジュラス、クラスA表面、耐摩耗性およびV0またはV1のUL引火性評点という仕様を満たすように構成することで、例えば比較的均一な熱伝達を提供することができる。
【0061】
別の例は、電気、エレクトロニクス、電力およびエネルギー用途で使用される放熱板に関するものである。放熱板は、複雑な集積および/またはフレキシブル構造に関連している場合が多い。この例では、金属コート充填剤を含む射出成形可能な熱伝導性ポリマー複合材料は、20ワット/メートル・ケルビンより高い熱伝導率、7ギガパスカルより大きいモジュラス、約40〜100℃の熱的安定性、耐薬品性,およびV0またはV1のUL引火性評点という仕様を満たすように構成することで、例えば射出成形可能な複雑な構造を提供することができる。
【0062】
別の用途は、自動車のヘッドランプ/テールランプの反射器または屋内および屋外の照明に関するものである。高出力ランプは多量の熱を発生する可能性があり、金属コートプラスチックはそのような高出力ランプについての熱的ニーズを満足することができない可能性がある。この例では、金属コート充填剤を含む射出成形可能な熱伝導性ポリマー複合材料は、20ワット/メートル・ケルビンより高い熱伝導率、7ギガパスカルより大きいモジュラス、の熱的安定性約150℃、耐候性、およびV0またはV1のUL引火性評点という仕様を満たすように構成することで、例えば比較的急速に冷却する射出成形可能な
構造を提供することができる。
【0063】
次に、金属コート充填剤を含む射出成形可能なポリマー(例:熱可塑性物質など)複合材料を用いることができる電気伝導性用途のいくつかの例について説明を行う。最初の例として、金属コート充填剤を含む射出成形可能な電気伝導性ポリマー複合材料を、エレクトロニクスおよび家庭電化製品などで、基板レベルシールドを提供するのに用いることができる。一部の既存のEMI溶液では、所望の電気伝導率およびEMIシールドおよび/または製造が困難な比較的複雑な部品を達成するための複数の段階が関与する。この例では、金属コート充填剤を含む射出成形可能な電気伝導性ポリマー複合材料を、10シーメンス/センチメートルより大きい電気伝導率、60デシベルを超えるシールド有効性、の熱的安定性約120℃、7ギガパスカルより大きいモジュラスおよびV0またはV1のUL引火性評点という仕様を満足するように構成して、さらなる軽量、射出成形性および現場ガスケット形成の用途を提供することができる。
【0064】
別の応用例は、エレクトロニクス等で使用されるモジュラー・コネクタおよびカバーに関するものである。良好なEMIシールドを得るには、高い電気伝導率が必要とされる。この例では、金属コート充填剤を含む射出成形可能な電気伝導性ポリマー複合材料を、10シーメンス/センチメートルより大きい電気伝導率、60デシベルを超えるシールド有効性、約60〜約120℃での熱的安定性、20℃で5×10−6/K未満の熱膨張係数およびV0またはV1のUL引火性評点という仕様を満足するように構成して、さらなる軽量および射出成形性を提供することができる。
【0065】
さらなる応用例は、パワーエレクトロニクスおよび消耗品エレクトロニクスなどで使用される換気パネルに関するものである。良好なEMIシールドを得るには、高い電気伝導率が必要とされる。従来の換気パネルには、金属メッシュ(固定サイズのもの)およびフレームなどがあり得る。さらに、所望のEMIシールドを得るのに、複数の段階が必要となる場合がある。この例では、金属コート充填剤を含む射出成形可能な電気伝導性ポリマー複合材料を、10シーメンス/センチメートルより大きい電気伝導率、60デシベルを超えるシールド有効性、7ギガパスカルより大きいモジュラス、およびV0またはV1のUL引火性評点という仕様を満足するように構成して、1回成形の軽量部品を製造し、射出成形性を改善し、異なるメッシュの大きさおよび設計を可能とすることができる。
【0066】
別の電気伝導性の用途は、エレクトロニクスおよび家庭電化製品などで使用される、EMI筐体(例:遠隔計測装置カバー、マルチメーターカバー、ガス検知器カバー、光学エンコーダーカバー、スピーカーカバー、ノート型パソコンの筐体など)に関するものである。従来の方法には、所望の電気伝導率およびEMIシールドを達成するために複数の段階を行うのが普通である。この例では、金属コート充填剤を含む射出成形可能な電気伝導性ポリマー複合材料を、10シーメンス/センチメートルより大きい電気伝導率、50デシベルより高いシールド有効性、約120℃での熱的安定性、7ギガパスカルより大きいモジュラス、クラスA表面およびV0またはV1のUL引火性評点という仕様を満足するように構成して、さらなる軽量、複雑な部品の改善された射出成形性および金属のような伝導率を提供することができる。
【0067】
別の応用例は、電力およびエネルギー用途ならびに自動車用途などで使用される、燃料電池バイポーラ板に関するものである。従来の方法は、圧縮成形グラファイトを使用し得るものであり、それが提供する電気伝導率は低い可能性があり、多くの場合方向依存性であり、ないしは機械特性が不十分である。この例では、金属コート充填剤を含む射出成形可能な電気伝導性ポリマー複合材料を、100シーメンス/センチメートルより大きい電気伝導率、約120℃での熱的安定性、7ギガパスカルより大きいモジュラス、耐薬品性,およびV0またはV1のUL引火性評点という仕様を満足するように構成して、非常に
高い電気伝導率、ニーズに基づく特注設計および射出成形性を提供することができる。
【0068】
さらに別の応用例は、電子ディスプレイ、照明、再生可能エネルギーなどで使用される、有機発光ダイオード(OLED)および色素増感太陽電池(DSSC)(例:有機光電池など)用の電気伝導性ポリマー複合材料基板に関するものである。代表的には、電気伝導性ポリマー基板を得るには、複数の段階が必要となり得る。この例では、金属コート充填剤を含む射出成形可能な電気伝導性ポリマー複合材料を、100シーメンス/センチメートルより大きい電気伝導率、V0またはV1のUL引火性評点、可撓性、紫外線安定性および酸素透過性という仕様を満足するように構成して、さらなる軽量および射出成形性を提供することができる。
【0069】
一部の実施形態において、各種基板用のコーティングとして分離された金属コート充填剤を用いることができる。伝導性および/または熱伝導性物品の製造方法には、基板の少なくとも一方の表面上に金属コート充填剤をコーティングする段階が含まれ得る。ある例示的な例では、方法は、金属コート充填剤を製造する段階を含む。金属コート充填剤は、有機ジオールの溶液を複数の多孔質充填剤粒子、例えばシリカ質充填剤粒子と混合して支持混合物を得る段階;金属塩溶液を前記支持混合物と接触させて反応混合物を形成する段階;前記反応混合物を約50℃〜約200℃の温度範囲内の温度まで加熱して、前記金属塩溶液中の金属カチオンの金属粒子への還元を生じさせる段階を有する方法によって製造することができる。そうして製造された金属粒子は、多孔質充填剤粒子上および充填剤粒子細孔表面上に配置されて、金属コート充填剤を形成する。次に、各種の確立された技術を用いて、金属コート充填剤を単離することができる。次に、金属コート充填剤にマトリクス材料を加えることで、ペースト、射出成形可能な伝導性プラスチック、伝導性グリース、伝導性パテ、伝導性エラストマーなどの電気伝導性および/または熱伝導性材料を形成する。
【0070】
一部の実施形態において、マトリクス材料を金属コート充填剤に加えることができる。伝導性材料(例:ペースト、射出成形可能な伝導性プラスチック、伝導性グリース、伝導性パテ、伝導性エラストマーなど)は、葉形状の粒子、針状の高アスペクト比金属粒子、円形の金属粒子およびフレーク状の金属粒子などの1以上の別の充填剤とともに、マトリクス材料を金属コート充填剤と混合することによって製造することもできる。これらの別の充填剤は、本明細書に記載の他のシリカ質および/または非シリカ質粒子、例えばパーライト粒子上にコーティングしても良い。各種実施形態では、例えば射出成形可能なポリマー複合材料において、伝導性充填剤の異なる組み合わせを用いて、所望のレベルの伝導率を得ることができる。
【0071】
次に、電気伝導性および/または熱伝導性材料(例:ペースト、射出成形可能な伝導性プラスチック、伝導性グリース、伝導性パテ、伝導性エラストマーなど)を、基板の少なくとも一方の表面に乗せる(例えば、表面にコーティングする等)ことができる。
【0072】
一部の実施形態では、金属コート充填剤を、結合剤および適宜に溶媒を含むことができるマトリクス材料と混合して伝導性ペースト(または他の材料)を形成することができ、そのペーストを各種基板に乗せたり、コーティングしたりすることができる。本技術の方法実施形態によって製造される金属コート充填剤を用いるコーティングを、多層セラミックコンデンサ、伝導性フィルムおよび伝導性テープの製造で有用な伝導性および非伝導性基板に用いることができる。金属コート充填剤ならびに適宜にマトリクス材料および溶媒を製剤し、光散乱用の光学フィルター、無線ICタグおよびラベルならびに微小電気機械システムなどの各種光学電子機器用の多様な透明および非透明フィルムおよび他の表面に乗せることができる。
【0073】
一部の実施形態では、金属コート充填剤を用いるコーティングを、ガラス、セラミック,およびプラスチックなどの本質的に非伝導性基板とともに用いる。金属コート充填剤を結合剤および適宜に溶媒を含むマトリクス材料と混合する場合、得られる伝導性材料(例:ペーストなど)を、ブラシコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、スピンコーティング、印刷、スパッタリング、化学蒸着およびディップコーティングなどの各種コーティング手法によって伝導性または非伝導性基板上にコーティングすることができる。適宜に、伝導性材料(例:ペーストなど)を、基板の少なくとも一つの表面に乗せたら、伝導性材料を硬化または重合させることができ、次にその物品を約30分〜約4時間の範囲の期間にわたり、少なくとも100℃に設定された乾燥機で乾燥させることができる。
【0074】
好適にはコーティングまたは成形に用いられる可視光から近赤外光の範囲の光源に対して透明性を有する限りにおいて、結合剤(樹脂)としてはいかなる樹脂も使用可能である。一部の実施形態で結合剤として有用な樹脂の例には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂およびラジカル重合可能なオリゴマーおよび高極性および中極性モノマーならびにこれらのコポリマー(硬化剤および/またはラジカル重合開始剤とともに用いても良い)などの硬化性および非硬化性の有機樹脂などがある。
【0075】
高極性モノマーの例には、アクリル酸、イタコン酸、アクリル酸ヒドロキシアルキル類、アクリル酸シアノアルキル類、アクリルアミド類および置換アクリルアミド類などがあり得る。中極性モノマーの例には、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロニトリル、塩化ビニルまたはフタル酸ジアリルなどがある。
【0076】
本技術の実施形態の金属コート充填剤を用いる伝導性材料、ペーストおよびコーティングは、必要に応じて溶媒を含んでいても良い。一部の実施形態では、溶媒には、マトリクス中の結合剤を安定に溶解または分散させる溶媒がある。本技術の実施形態の伝導性材料で用いる上で好適な溶媒の例には、水に加えて、メタノール、エタノール、プロパノール、ヘキサノールおよびエチレングリコールなどのアルコール類;キシレンおよびトルエンなどの芳香族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素;アセトンおよびメチルエチルケトンなどのケトン類;酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどのエステル類;エチレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテル類;およびこれらの混合物などがある。しかし、本技術の実施形態で有用な溶媒はこれらの溶媒に限定されない。一部の実施形態では、本技術の実施形態の電気伝導性材料またはコーティングには、金属コート充填剤が水中に分散している水系分散溶液などがあり得る。
【0077】
例示的な実施形態では、マトリクス成分および金属コート充填剤は、伝導性ペーストの総重量に基づいてそれぞれ約20パーセント〜約95重量パーセントおよび約5パーセント〜約80重量パーセントの量で伝導性ペースト中に存在する。一部の実施形態では、伝導性ペースト中のマトリクス成分の量は、伝導性ペーストの約40パーセント〜約80重量パーセントの範囲であることができる。伝導性ペースト中に存在する金属コート充填剤の量は、伝導性ペーストの約5パーセント〜約60重量パーセントの範囲であることができる。
【0078】
一部の実施形態では、金属コート充填剤を用いる伝導性ペーストは、重合開始剤、架橋剤、光開始剤、顔料、酸化防止剤、紫外線(UV)安定剤、分散剤、消泡剤、増粘剤、可塑剤、粘着付与樹脂、シランカップリング剤、光沢剤などの他の適宜の添加剤を含むこともできる。
【0079】
硬化性結合剤には、フリーラジカル重合、原子移動ラジカル重合、窒素酸化物が介在するラジカル重合、可逆的付加−断片化移動重合、開環重合、開環複分解重合、アニオン重合、カチオン重合または当業者に公知の他のいずれかの方法を介して架橋ネットワークを形成することができる、1以上のアクリレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリジメチルシロキサン樹脂、他の有機官能化ポリシロキサン樹脂ならびにこれらの混合物などがある。好適な硬化性結合剤には、シリコーン樹脂などがあり得るものであり、例えば文献(ケミストリー アンド テクノロジー オブ シリコーン,W.Noll著、アカデミック プレス、1968)に記載の付加硬化性および縮硬化性のマトリクスである。
【0080】
その硬化方法は、当業者に公知のいずれの方法によって行っても良い。硬化は、熱硬化、紫外線硬化、マイクロ波硬化、電子線硬化、フリーラジカル開始剤で開始するフリーラジカル硬化およびこれらの組み合わせなどの方法によって行うことができる。代表的なフリーラジカル開始剤には、例えば有機過酸化物(例:過酸化ベンゾイルなど)、無機過酸化物(例:過酸化水素など)、有機もしくは無機のアゾ化合物(例:2−2’−アゾ−ビス−イソブチリルニトリル)、窒素酸化物(例:TEMPOなど)またはこれらの組み合わせなどがあり得る。
【0081】
一部の実施形態では、伝導性材料(例:コーティング、ペーストなど)および/またはマトリクス材料の硬化は代表的には、約20℃〜約350℃の範囲、より代表的には約50℃〜約320℃の範囲の温度で行う。一部の実施形態では、結合剤は、硬化温度が約10℃〜約200℃になるように選択される。硬化は代表的には、約1気圧〜約5000ポンド圧/平方インチの範囲、より代表的には約1気圧〜約100ポンド/平方インチの範囲の圧力で行う。さらに、硬化は代表的には、代表的には約30秒〜約5時間の範囲、より代表的には約90秒〜約120分の範囲の期間をかけて行うことができる。適宜に、硬化させた伝導性材料、ペーストまたはコーティングを、約0.5時間〜約4時間、好適には約1時間〜約2時間の期間をかけて約100℃〜約150℃の範囲の温度で後硬化させることができる。
【0082】
一部の実施形態では、金属コート充填剤を用いる伝導性ペーストを用いて、導電性テープを製造することもできる。一部の実施形態では、伝導性ペーストを伝導性および非伝導性繊維上にコーティングして、導電性の布様材料を作ることができる。伝導性繊維の例には、ミクロン伝導性繊維、例えばニッケルメッキ炭素繊維、ステンレス繊維、銅繊維、銀繊維、アルミニウム繊維など、またはこれらの組み合わせなどがある。非伝導性繊維には、テフロン(登録商標)、ケブラー(登録商標)、ポリ(エチレンテレフタレート)および織ることでテープや布とすることができる他の耐摩耗性繊維材料などもあり得る。クモの巣状の伝導性繊維を、ナイロン(登録商標)、テフロン(登録商標)、ポリエステルまたは繊維含有量、配向および形状において個別に設計すると非常に高伝導性の可撓性布様材料を生じるいずれか樹脂に基づく可撓性もしくは固体の材料などの材料に対して積層等を行うことができる。そのような布様材料は、個人の衣服ならびにゴムまたはプラスチックなどの他の樹脂材料に埋め込むことができる電気伝導性のテープおよびフィルムで使用することも可能であると考えられる。積層物または布様材料の一部としてクモの巣状導電体としての伝導性繊維を用いる場合、その繊維は、約3ミクロン〜約12ミクロン、代表的には約8ミクロン〜約12ミクロン、または約10ミクロンの直径を有することができ、長さはシームレスであったり重なっていることができる。
【0083】
各種実施形態において、伝導性ペーストを上記の天然または合成繊維から製造される布材料または基板上に直接塗布することができる。伝導性ペースト中のマトリクス材料は、他のフレキシブル基板または固体基板への付着性を与えるよう製造されるポリマーおよび/またはコポリマーを含むように製剤することができる。そのような導電性のテープおよびフィルムは、例えば携帯電話、携帯情報端末、コンピュータ、回路基板、ロジック・ボ
ード、テレビ、ラジオ、兵器および設備の内部および/または外部にある屋内電気器具、医療機器などの電子機器で用いられて、電磁干渉(EMI)シールドおよび接地を提供することができる。伝導性テープは、上記の本技術の1実施形態の伝導性ペーストのコーティングを有して製造することができ、伝導性ペーストは、テープ基材に対して0.01グラム/平方センチメートル(g/cm)〜約5g/cmの量で塗布して、電磁シールドおよび接地を提供し、上記の電気機器および構成要素における熱的保護を提供することができる。
【0084】
(実施例)
(実施例1.銀コート充填剤の製造方法)
ほんの一例として、そして限定を目的とするものではなく、銀コート充填剤の製造方法の1例についての説明を提供する。この方法では、ある量の膨張パーライトであるノルライト(登録商標)N50(NorCal、密度4.5〜6.6ポンド/立方フィート(lbs/ft)(72〜106キログラム/立方メートル(kg/m))、メッシュサイズ24〜100)を、約180℃に予め加熱しておいた還流エチレングリコール(1,2−エタンジオール;CAS番号107−21−1、分子量62.07ダルトン、分光法的等級>99パーセント純度、シグマアルドリッチ)を加えて、支持混合物100ミリリットルを製造する。測定された量の酢酸銀(酢酸の銀塩;CAS番号563−63−3、分子量166.9199.99微量金属基準、シグマアルドリッチ)0.17グラムを超純粋逆浸透水(MilliPore純水)100ミリリットルと混合して、銀塩溶液を作る。その銀塩溶液および支持混合物100ミリリットルを合わせて反応混合物を形成し、超音波処理する。反応混合物は、研究室用超音波発生器(例えば、ブランソン・ウルトラソニックス、ソニフィア(登録商標)S−450A型)を用いて超音波処理して濡れおよびパーライト充填剤粒子の細孔からの空気除去を完全とする(または少なくとも実質的に完全とする)。比較的一定の撹拌下に約50℃〜約180℃の温度範囲内の温度まで反応混合物を加熱し、1時間にわたって約50℃〜約180℃の温度範囲内に維持して、確実に酢酸銀が完全に還元されて、パーライト充填剤粒子の表面上および細孔内でコーティングされた銀金属となるようにする。次に、銀コートされたパーライト充填剤粒子を容器から取り出し、冷水中で反応停止し、水と次にエタノールを用いてブフナー漏斗で2回濾過する。
【0085】
(実施例2.銅コート充填剤の製造方法)
ほんの他の一例として、そして限定を目的とするものではなく、銅コート充填剤の製造方法の一例についての説明を提供する。この実施例では、銅コートパーライト粒子製造の方法段階には、最初に好適な量の原料を秤量する段階、次にガラス容器中でそれらを混合する段階、および180℃周辺の温度で撹拌する段階がある。パーライトをエチレングリコールと混合する。酢酸塩(例えば、酢酸銀または酢酸銅)などの金属塩をエチレングリコール−パーライト混合物に加える。そのパーライト粒子を超音波撹拌を用いて撹拌して濡れ(およびパーライトの細孔内からの空気の除去)を完全に行う。超音波処理したパーライトおよび金属塩/エチレングリコール混合物を、比較的一定の撹拌下に、約160℃〜約180℃の温度範囲内の温度まで加熱する。次に、製造された金属コート粒子充填剤材料を濾過する。次に、金属コートパーライト粒子を乾燥させる。続いて、酢酸銀塩を用いて銅コートパーライト粒子をコーティングする工程を除いて、上記の段階を繰り返すことで、銅コート金属粒子を銀粒子でコーティングすることができる。
【0086】
実施形態についての上記の説明は、例示および説明を目的として提供したものである。それは全てを網羅するものでもなく、本発明に限定を加えるものでもない。特定の実施形態の個々の要素または特徴は、その特定の実施形態に限定されるものではなく、適用可能な場合、互換的であり、具体的に示したり説明されていない場合であっても、選択される実施形態で用いることが可能である。同一内容を多くの形で変えることも可能である。そ
のような改変は本発明からの逸脱とみなすべきではなく、そのような変更はいずれも本発明の範囲に含まれるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の細孔を有する複数の多孔質充填剤粒子と、
前記多孔質充填剤粒子上および前記複数の細孔内部にコーティングされた複数の金属粒子とを含有する金属コート充填剤。
【請求項2】
前記多孔質充填剤粒子がシリカ質充填剤粒子、非シリカ質充填剤粒子またはこれらの組み合わせを含有すること、および、
前記金属粒子が金、銀、白金、銅、鉄、アルミニウム、パラジウム、ニッケル、コバルト、亜鉛およびこれらの混合物を含有することのうちの少なくとも一方を備える、請求項1に記載の金属コート充填剤。
【請求項3】
前記多孔質充填剤粒子が、5〜90重量パーセントのケイ素、0.01〜25重量パーセントのアルミニウム、0.001〜10重量パーセントのカリウム、0.001〜15重量パーセントのナトリウム、0.001〜10重量パーセントの鉄、0.001〜5重量パーセントのカルシウムおよび0.001〜5重量パーセントのマグネシウムの元素組成を有するシリカ質充填剤粒子を含有すること、および、
前記多孔質充填剤粒子上および前記複数の充填剤粒子細孔表面内部にコーティングされた金属粒子の重量が、前記多孔質充填剤粒子の重量の約100〜400パーセントの範囲にあることのうちの少なくとも一方を備える、請求項1または2に記載の金属コート充填剤。
【請求項4】
前記多孔質充填剤粒子が、
パーライト、バーミキュライト、軽石、モンモリロナイト、ゼオライトまたはこれらの組み合わせからなるシリカ質充填剤粒子と、
セラミック、多孔質金属またはこれらの組み合わせからなる非シリカ質充填剤粒子と、
膨張パーライトとのうちの少なくとも1つを含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属コート充填剤。
【請求項5】
前記多孔質充填剤粒子が、
約5ミクロン〜約5ミリメートルの範囲の粒径分布を有する膨張パーライトと、
40〜99パーセントの範囲の多孔率を有する前記膨張パーライトとのうちの少なくとも一方を含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属コート充填剤。
【請求項6】
前記金属コート充填剤上に第2の金属コーティングをさらに有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属コート充填剤。
【請求項7】
前記第2の金属コーティングが前記金属粒子とは異なる金属である請求項6に記載の金属コート充填剤。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の金属コート充填剤を含む物品、伝導性ペースト、材料または熱伝導性および/または電気伝導性で射出成形可能な熱可塑性複合材料。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の金属コート充填剤および結合剤を含むマトリクス材料を含む材料。
【請求項10】
支持混合物を得るべく、有機ジオールの溶液を複数の多孔質充填剤粒子と混合する工程と、
反応混合物を形成すべく金属塩溶液を前記支持混合物と接触させる工程と、
前記反応混合物を50〜200℃の温度範囲内の温度まで加熱する工程とを備え、前記
加熱する工程によって、前記金属塩溶液中の金属カチオンを還元して金属粒子とし、多孔質充填剤粒子上および充填剤粒子細孔表面上に配置する、金属コート充填剤を製造するための方法。
【請求項11】
有機ジオールの溶液を複数の多孔質充填剤粒子と混合する工程において、20〜200℃の温度範囲内の温度に維持しながら、前記有機ジオールと複数の多孔質充填剤粒子を混合すること、および、
前記金属塩溶液を前記支持混合物と接触させる工程において、50〜200℃の温度範囲内の温度に維持しながら、前記金属塩溶液および前記支持混合物を撹拌すること、および、
前記金属塩溶液を前記支持混合物と接触させる工程において、30〜40キロヘルツで少なくとも20分間にわたり、前記反応混合物を超音波処理する工程をさらに有することのうちの少なくとも1つを備える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第2の支持混合物を得るべく、有機ジオールの溶液を第1の金属でコーティングされた複数の金属コート充填剤粒子と混合する工程と、
第2の反応混合物を形成すべく、第2の金属塩溶液を前記第2の支持混合物と接触させる工程と、
前記第2の金属塩溶液中の金属カチオンを還元して金属粒子とし、金属コート充填剤粒子の表面および細孔表面上に配置するために、前記第2の反応混合物を50〜200℃の温度範囲内の温度まで加熱する工程とをさらに有する請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記金属コート充填剤を単離する工程と、
マトリクス材料を前記金属コート充填剤と混合することによって伝導性ペーストを形成する工程とのうちの少なくとも1つをさらに有する、請求項10〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
伝導性ペーストを形成すべく、マトリクス材料を前記金属コート充填剤と混合する工程と、
前記伝導性ペーストを基板の少なくとも一方の表面に塗布する工程とをさらに有する請求項10〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記多孔質充填剤粒子がパーライト、バーミキュライト、軽石、モンモリロナイト、ゼオライトまたはこれらの組み合わせからなることと、
前記多孔質充填剤粒子が膨張パーライト粒子からなることと、
前記有機ジオールがエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはこれらの組み合わせからなることと、
前記金属カチオンがCu、Cu2+、[Cu(NH2+、Ni2+、Pd2+、Pt2+、Al3+、Ag、Au、Au3+、Zn2+、Cd2+、Fe2+、Fe3+およびこれらの組み合わせからなる群から選択されることと、
前記金属塩溶液が硫酸第二銅、硫酸第一鉄、硫酸コバルト、硫酸ニッケル、酢酸第一鉄、銅−アンモニウム錯体、硝酸銀、酢酸銅、酢酸コバルト、酢酸ニッケルまたはこれらの水和物であることと、
前記多孔質充填剤粒子が5〜90重量パーセントのケイ素、0.01〜25重量パーセントのアルミニウム、0.001〜10重量パーセントのカリウム、0.001〜15重量パーセントのナトリウム、0.001〜10重量パーセントの鉄、0.001〜5重量パーセントのカルシウムおよび0.001〜5重量パーセントのマグネシウムを含有する元素組成を有する請求項10〜14のいずれか1項に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−261040(P2010−261040A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−106541(P2010−106541)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(507358446)レアード テクノロジーズ インコーポレイテッド (9)
【氏名又は名称原語表記】LAIRD TECHNOLOGIES,INC.
【Fターム(参考)】