説明

高安定性エポキシ樹脂用硬化剤およびエポキシ樹脂組成物

【課題】 本発明は、高い硬化性と極めて高い貯蔵安定性を両立した、優れる一液性エポキシ樹脂組成物および、それを得るための潜在性硬化剤、そして、低温あるいは短時間の硬化条件であっても、高い接続信頼性、封止性が得られる異方導電材料、導電性接着材料、絶縁接着材料、封止材料等を提供することを目的とする。
【解決の手段】 アミンアダクトの重量平均分子量が15000以下であり、アミンアダクトの重量平均分子量と数平均分子量の比として定義される分子量分布が1を超え7以下であって、かつ、アミンアダクトに対して低分子アミン化合物を0.001質量部未満であることを特徴としたエポキシ樹脂用硬化剤をマイクロカプセル化したマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤およびエポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なエポキシ樹脂用硬化剤およびエポキシ樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、低温硬化性に優れるエポキシ樹脂用硬化剤となり、かつエポキシ樹脂との配合が容易であり、また、高温時に極めて高い貯蔵安定性を有したエポキシ樹脂組成物およびそれを用いたエポキシ樹脂系材料に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、その硬化物が、機械的特性、電気的特性、熱的特性、耐薬品性、接着性等の点で優れた性能を有することから、塗料、電気電子用絶縁材料、接着剤等の幅広い用途に利用されている。現在一般に使用されているエポキシ樹脂組成物は、使用時にエポキシ樹脂と硬化剤の二液を混合する、いわゆる二液性のものである。
二液性エポキシ樹脂組成物は室温で硬化しうる反面、エポキシ樹脂と硬化剤を別々に保管し、必要に応じて両者を計量、混合した後、使用する必要があるため、保管や取り扱いが煩雑である。
その上、可使用時間が限られているため、予め大量に混合しておくことができず、配合頻度が多くなり、能率の低下を免れない。
こうした二液性エポキシ樹脂配合品の問題を解決する目的で、これまでいくつかの一液性エポキシ樹脂組成物が提案されてきている。例えば、ジシアンジアミド、BF−アミン錯体、アミン塩、変性イミダゾール化合物等の潜在性硬化剤をエポキシ樹脂に配合したものがある。
【0003】
しかし、これらの潜在性硬化剤は、貯蔵安定性に優れているものは、硬化性が低く、硬化に高温または長時間必要であり、一方、硬化性が高い物は貯蔵安定性が低く、例えば−20℃等の低温で貯蔵する必要がある。例えば、ジシアンジアミドは、配合品の貯蔵安定性は、常温保存の場合に6ヵ月以上であるが、170℃以上の硬化温度が必要であり、この硬化温度を低下させるために、硬化促進剤を併用すると、例えば130℃での硬化が可能であるが、一方、室温での貯蔵安定性が不十分であり、低温での貯蔵を余儀なくされ、高い硬化性と優れた貯蔵安定性を両立し得る組成物が強く求められていた。また、フィルム状成形品や、基材にエポキシ樹脂を含浸した製品を得る場合、溶剤や反応性希釈剤等を含む配合品となる場合が多く、従来の潜在性硬化剤をかかる配合品の硬化剤として用いた場合、貯蔵安定性が極端に下がり、実質的に二液性とする必要がありその改善が求められていた。
【0004】
その要求に対し、数多くの研究がなされ、例えば、特許文献1にイソシアネート化合物の反応物により表面が被覆されたエポキシ樹脂用硬化剤が記載されている。
しかし近年、特に電子機器分野において、回路の高密度化や接続信頼性の向上に対応するため、またモバイル機器の軽量化として耐熱性の低い材料を使用するために、あるいは生産性を大幅に改善する目的で、接続材料の一つとして用いられる一液性エポキシ樹脂組成物に対して、貯蔵安定性を損なわずに、硬化性の一層の向上が強く求められ、従来技術ではその達成は困難であった。
【0005】
【特許文献1】特開平1−70523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、低温硬化性に優れ、極めて高い貯蔵安定性を有するエポキシ樹脂用硬化剤、およびエポキシ樹脂組成物、そして、高温でも極めて貯蔵安定性が高く、低温あるいは短
時間の硬化条件であっても、高い接続信頼性、高い封止性が得られる接着材料、導電材料、絶縁材料、封止材料、コーティング材料、塗料組成物、プリプレグ、構造用接着剤、熱伝導性材料等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定分子量以下のアミンアダクトを特定分子量分布で、かつ低分子アミン化合物を特定量以上含有させないようにしたエポキシ樹脂用硬化剤、および/または、その硬化剤をコアとして用い、硬化剤をマイクロカプセル化したエポキシ樹脂用硬化剤、および/または、そのマイクロカプセル化した硬化剤をエポキシ樹脂と配合したマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤を、好ましくは環状ホウ酸エステル化合物を含有させることによって、上記課題を解決することを見出し、本発明をなすに至った。
【0008】
即ち、本発明は、下記の通りである。
1)アミンアダクト(A)と低分子アミン化合物(B)を主成分とするエポキシ樹脂用硬化剤であって、アミンアダクト(A)の重量平均分子量が200以上15000以下であり、重量平均分子量と数平均分子量の比として定義される分子量分布が1を超えて7以下にあって、かつ、低分子アミン化合物(B)の含有量がアミンダクト(A)100質量部に対して0.000001質量部以上0.001質量部未満であることを特徴とするエポキシ樹脂用硬化剤。
2)25℃で固体状であることを特徴とする上記1)に記載のエポキシ樹脂用硬化剤。
3)アミンアダクト(A)がエポキシ樹脂(a1)とアミン化合物(b1)との反応により得られることを特徴とする上記1)又は2)に記載のエポキシ樹脂用硬化剤。
4)低分子アミン化合物(B)がイミダゾール類であることを特徴とする上記1)〜3)のいずれかに記載のエポキシ樹脂用硬化剤。
【0009】
5)上記1)〜4)のエポキシ樹脂用硬化剤よりなる群より選ばれる少なくとも1種のエポキシ樹脂用硬化剤(C)からなるコアの表面を合成樹脂および/または無機酸化物からなるシェルによって被覆されている構造を持つことを特徴とするマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤。
6)マイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤(D)は、上記1)〜4)のエポキシ樹脂用硬化剤よりなる群より選ばれる少なくとも1種のエポキシ樹脂用硬化剤(C)からなるコアを、イソシアネート化合物(G)と活性水素化合物(H)の反応により得られた皮膜(c1)および/またはエポキシ樹脂用硬化剤(C)とエポキシ樹脂(N)の反応より得られた皮膜(c2)からなるシェルで被覆した、波数1630〜1680cm−1の赤外線を吸収する結合基(x)と波数1680〜1725cm−1の赤外線を吸収する結合基(y)を少なくとも表面に有することを特徴とするマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤。
【0010】
7)エポキシ樹脂(N)の全塩素量が2500ppm以下であることを特徴とする上記6)に記載のマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤。
8)10〜50000重量部のエポキシ樹脂(E)に上記1)〜4)のいずれかに記載のエポキシ樹脂用硬化剤(C)および/または上記5)〜7)のいずれかに記載のマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤(D)を、エポキシ樹脂用硬化剤(C)および/または(D)として100重量部を配合したことを特徴とするマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物。
9)上記8)記載のマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物(F)の全塩素量が2500ppm以下であることを特徴とするマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物。
10)エポキシ樹脂(E)の全塩素量が2500ppm以下であることを特徴とする上
記8)または9)に記載のマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物。
【0011】
11)エポキシ樹脂(E)のジオール末端不純成分が、エポキシ樹脂(E)の基本構造成分の0.001〜30質量%であることを特徴とする上記8)〜10)のいずれかに記載のマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物。
12)さらに、環状ホウ酸エステル化合物(L)を含有することを特徴とする8)〜11)のいずれかに記載のマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物。
13)前記の環状ホウ酸エステル化合物(L)は、2,2’−オキシビス(5,5’−ジメチル−1,3,2−オキサボリナン)である上記12)に記載のエポキシ樹脂組成物。
14)前記の環状ホウ酸エステル化合物(L)の配合量は、エポキシ樹脂(E)100質量部に対して0.001〜10質量部である上記12)または13)に記載のマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物。
【0012】
15)エポキシ樹脂(J)100質量部に対して、前記1)〜11)のいずれかに記載のエポキシ樹脂用硬化剤、マイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤、マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物から選ばれる少なくとも1種を0. 1〜1000質量部含有し、それらを主成分とすることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
16)エポキシ樹脂(J)100質量部に対して、酸無水物類、フェノール類、ヒドラジド類、およびグアニジン類よりなる群より選ばれる少なくとも1種の硬化剤(K)を1〜200質量部と、前記1)〜11)のいずれかに記載のエポキシ樹脂用硬化剤、マイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤、マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物から選ばれる少なくとも1種を、0.1〜200質量部を含有し、それらを主成分とするエポキシ樹脂組成物。
17)さらに、環状ホウ酸エステル化合物(L)を含有することを特徴とする前記15)または16)に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0013】
18)前記の環状ホウ酸エステル化合物(L)は、2,2’−オキシビス(5,5’−ジメチル−1,3,2−オキサボリナン)であることを特徴とする前記15)または16)に記載のエポキシ樹脂組成物。
19)前記の環状ホウ酸エステル化合物(L)の配合量は、エポキシ樹脂(E)100質量部に対して0.001〜10質量部であることを特徴とする前記15)または16)に記載のエポキシ樹脂組成物。
20)前記8)〜19)のいずれかに記載のエポキシ樹脂用硬化剤組成物またはエポキシ樹脂組成物を含有することを特徴とするペースト状組成物。
【0014】
21)前記8)〜19)のいずれかに記載のエポキシ樹脂用硬化剤組成物またはエポキシ樹脂組成物を含有することを特徴とするフィルム状組成物。
22)前記15)〜19)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を含有することを特徴とする接着剤。
23)前記15)〜19)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を含有することを特徴とする接合用ペースト。
24)前記15)〜19)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を含有することを特徴とする接合用フィルム。
25)前記15)〜19)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を含有することを特徴とする導電性材料。
26)前記15)〜19)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を含有することを特徴とする異方導電性材料。
27)前記15)〜19)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を含有することを特徴とする異方導電性フィルム。
【0015】
28)前記15)〜19)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を含有することを特徴とする絶縁性材料。
29)前記15)〜19)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を含有することを特徴とする封止材料。
30)前記15)〜19)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を含有することを特徴とするコーティング用材料。
31)前記15)〜19)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を含有することを特徴とする塗料組成物。
32)前記15)〜19)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を含有することを特徴とするプリプレグ。
33)前記15)〜19)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を含有することを特徴とする熱伝導性材料。
【発明の効果】
【0016】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤およびエポキシ樹脂組成物は、高い硬化性と貯蔵安定性の両立に効果を有するとともに、その硬化物が信頼性、耐水性、電気的特性に優れた特性を発現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明は、アミンアダクト(A)を主成分とし、低分子アミン化合物(B)を特定比率で含有するエポキシ樹脂用硬化剤(C)からなるコアの表面を、シェルで被覆したマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤(D)および、該マイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤(D)をエポキシ樹脂(E)に分散させてマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤としたものである。
【0018】
アミンアダクト(A)の説明を行う。
アミンアダクト(A)は、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、イソシアネート化合物、尿素化合物およびエポキシ樹脂(a1)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物とアミン化合物(b1)とを反応して得られるアミノ基を有する化合物である。アミンアダクト(A)の原料として用いられる、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、イソシアネート化合物、尿素化合物およびエポキシ樹脂(a1)を下記に示す。
カルボン酸化合物としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、ダイマー酸等が挙げられる。
スルホン酸化合物としては、例えば、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられる。
【0019】
イソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、脂肪族トリイソシアネート、ポリイソシアネートを挙げることができる。脂肪族ジイソシアネートの例としては、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。脂環式ジイソシアネートの例としては、イソホロンジイソシアネート、4−4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、1,4−イソシアナトシクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、1,3−ビス(2−イソシアナトプロピル−2イル)−シクロヘキサン等を挙げることができる。芳香族ジイソシアネートの例としては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等を挙げることができる。脂肪族トリイソシアネートの例としては、1,3,6−トリイソシ
アネートメチルヘキサン、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸−2−イソシアナトエチル等を挙げることができる。ポリイソシアネートとしては、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートや上記ジイソシアネート化合物より誘導されるポリイソシアネートが例示される。上記ジイソシアネートより誘導されるポリイソシアネートとしては、イソシアヌレート型ポリイソシアネート、ビュレット型ポリイソシアネート、ウレタン型ポリイソシアネート、アロハネート型ポリイソシアネート、カルボジイミド型ポリイソシアネート等がある。
【0020】
尿素化合物としては、例えば、尿素、メチル尿素、ジメチル尿素、エチル尿素、t −ブチル尿素等が挙げられる。
エポキシ樹脂(a1)としては、モノエポキシ化合物、多価エポキシ化合物のいずれか又はそれらの混合物が用いられる。モノエポキシ化合物としては、ブチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、パラ−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、パラキシリルグリシジルエーテル、グリシジルアセテート、グリシジルブチレート、グリシジルヘキソエート、グリシジルベンゾエート等を挙げることができる。 多価エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA等のビスフェノール類をグリシジル化したビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等のその他の2価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール等のトリスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;1,1,2,2,−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のテトラキスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラック等のノボラック類をグリシジル化したノボラック型エポキシ樹脂等;多価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、グリセリンやポリエチレングリコール等の多価アルコールをグリシジル化した脂肪族エーテル型エポキシ樹脂;p−オキシ安息香酸、β−オキシナフトエ酸等のヒドロキシカルボン酸をグリシジル化したエーテルエステル型エポキシ樹脂;フタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸をグリシジル化したエステル型エポキシ樹脂;4,4−ジアミノジフェニルメタンやm−アミノフェノール等のアミン化合物のグリシジル化物やトリグリシジルイソシアヌレート等のアミン型エポキシ樹脂等のグリシジル型エポキシ樹脂と、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環族エポキサイド等が例示される。
【0021】
アミンアダクト(A)の原料として用いられる、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、イソシアネート化合物、尿素化合物およびエポキシ樹脂(a1)のうち、エポキシ樹脂(a1)が高い硬化性と貯蔵安定性に優れており好ましい。
エポキシ樹脂(a1)としては、エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性を高めることができるので、多価エポキシ化合物が好ましい。多価エポキシ化合物としては、アミン化合物の生産性が圧倒的に高いので、グリシジル型エポキシ樹脂が好ましく、より好ましくは、硬化物の接着性や耐熱性が優れるため多価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂であり、更に好ましくはビスフェノール型エポキシ樹脂である。ビスフェノールAをグリシジル化したエポキシ樹脂とビスフェノールFをグリシジル化したエポキシ樹脂が一層好ましい。ビスフェノールAをグリシジル化したエポキシ樹脂が更に一層好ましい。これらエポキシ樹脂は単独で使用しても併用しても良い。
【0022】
エポキシ樹脂(a1)の全塩素量は、硬化性と貯蔵安定性のバランスの取れたエポキシ樹脂組成物を得るためには、2500ppm以下が好ましい。
より好ましくは2000ppm以下であり、より好ましくは1500ppm以下であり、より好ましくは800ppm以下であり、より好ましくは400ppm以下であり、より好ましくは180ppm以下であり、より好ましくは100ppm以下であり、より好ましくは80ppm以下であり、さらに好ましくは50ppm以下である。
【0023】
本発明において全塩素量とは、化合物中に含まれる有機塩素及び無機塩素の総量のことであり、化合物に対する質量基準の値である。全塩素量は、つぎの方法により測定されて得られる。エポキシ樹脂組成物を、キシレンを用いて、エポキシ樹脂が無くなるまで洗浄と濾過を繰り返す。次にろ液を100℃以下で減圧留去し、エポキシ樹脂を得る。得られたエポキシ樹脂試料1〜10gを滴定量が3〜7mlになるよう精秤し、25mlのエチレングリコールモノブチルエーテルに溶解し、これに1規定KOHのプロピレングリコール溶液25mlを加えて20分間煮沸したのち、硝酸銀水溶液で滴定した滴定量より計算して得られる。
全塩素量が2500ppm以下のエポキシ樹脂(a1)を用いることにより、硬化反応性の高い硬化剤を得ることができる。
【0024】
また、シェル形成反応のコントロールを容易にするためには全塩素量は、0.01ppm以上が好ましい。より好ましくは0.02ppm以上であり、より好ましくは0.05ppm以上であり、より好ましくは0.1ppm以上であり、より好ましくは0.2ppm以上であり、さらに好ましくは0.5ppm以上である。全塩素量が0.1ppm以上であることにより、シェル形成反応が硬化剤表面で効率よく行われ、貯蔵安定性に優れたシェルを得ることができる。硬化剤のたとえば、全塩素量の好ましい範囲は0.1ppm以上200ppm以下であり、より好ましい範囲は0.2ppm以上80ppm以下であり、より好ましい範囲は0.5ppm以上50ppm以下である。
【0025】
全塩素の内、1、2−クロロヒドリン基に含まれる塩素は一般に加水分解性塩素と呼ばれるが、また、アミンアダクトの原料として用いられるエポキシ樹脂中の加水分解性塩素量は、好ましくは50ppm以下、より好ましくは0.01 から20ppm、更に好ましくは、0.05から1 0ppmである。加水分解性塩素は、つぎの方法により測定されて得られる。試料3gを50mlのトルエンに溶解し、これに0.1規定KOHのメタノール溶液20mlを加えて15分間煮沸した後、硝酸銀水溶液で滴定した滴定量より計算して得られる。
加水分解性塩素量が50ppm以下で、高い硬化性と貯蔵安定性の両立に対し有利であり、優れた電気特性を示し好ましい。
これらエポキシ樹脂は単独で使用しても併用しても良い。
【0026】
アミン化合物(b1)としては、少なくとも1 個の一級アミノ基および/または二級アミノ基を有するが三級アミノ基を有さない化合物と、少なくとも1個の三級アミノ基と少なくとも1個の活性水素基を有する化合物が挙げられる。
少なくとも1 個の一級アミノ基および/または二級アミノ基を有するが三級アミノ基を有さない化合物としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、シクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン、アニリン、トルイジン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の三級アミノ基を有さない第一アミン類、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミ
ン、ジシクロヘキシルアミン、ピペリジン、ピペリドン、ジフェニルアミン、フェニルメチルアミン、フェニルエチルアミン等の三級アミノ基を有さない第二アミン類を挙げることができる。
【0027】
少なくとも1個の三級アミノ基と少なくとも1個の活性水素基を有する化合物において、活性水素基としては一級アミノ基、二級アミノ基、水酸基、チオール基、カルボン酸、ヒドラジド基が例示される。
少なくとも1個の三級アミノ基と少なくとも1個の活性水素基を有する化合物としては、例えば、2−ジメチルアミノエタノール、1−メチル−2−ジメチルアミノエタノール、1−フェノキシメチル−2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、1−ブトキシメチル−2−ジメチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−β−ヒドロキシエチルモルホリン等のアミノアルコール類;2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等のアミノフェノール類;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−アミノエチル−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−フェニルイミダゾリン、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−メチルイミダゾリン、2−メチルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、2−エチルイミダゾリン、2−エチル−4−メチルイミダゾリン、2−ベンジルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−(o−トリル)−イミダゾリン、テトラメチレン−ビス−イミダゾリン、1,1,3−トリメチル−1,4−テトラメチレン−ビス−イミダゾリン、1,3,3−トリメチル−1,4−テトラメチレン−ビス−イミダゾリン、1,1,3−トリメチル−1,4−テトラメチレン−ビス−4−メチルイミダゾリン、1,3,3−トリメチル−1,4−テトラメチレン−ビス−4−メチルイミダゾリン、1,2−フェニレン−ビス−イミダゾリン、1,3−フェニレン−ビス−イミダゾリン、1,4−フェニレン−ビス−イミダゾリン、1,4−フェニレン−ビス−4−メチルイミダゾリン等のイミダゾリン類、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジプロピルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、ジプロピルアミノエチルアミン、ジブチルアミノエチルアミン、N−メチルピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、ジエチルアミノエチルピペラジン等の三級アミノアミン類;2−ジメチルアミノエタンチオール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトピリジン、4−メルカプトピリジン等のアミノメルカプタン類;N,N−ジメチルアミノ安息香酸、N,N−ジメチルグリシン、ニコチン酸、イソニコチン酸、ピコリン酸等のアミノカルボン酸類;N,N−ジメチルグリシンヒドラジド、ニコチン酸ヒドラジド、イソニコチン酸ヒドラジド等のアミノヒドラジド類を挙げることができる。
アミン化合物(b1)としては、貯蔵安定性と硬化性のバランスが優れているので、少なくとも1個の三級アミノ基と少なくとも1個の活性水素基を有する化合物が好ましく、イミダゾール類が更に好ましく、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールが一層好ましい。
【0028】
本発明においては、アミンアダクト(A)を特定の分子量以下とし、分子量分布を特定範囲にすることで一液性エポキシ樹脂組成物の高い硬化性を発揮することができる。
即ち、本発明に用いられるアミンアダクト(A)の重量平均分子量が15000以下200以上であり、分子量分布は1を超えて7以下にすることである。ここで重量平均分子
量は、ゲルパーミッションクロマトグラフィー(以下GPCと称す)法を用いてポリスチレン換算で求めた分子量より計算される。分子量分布は重量平均分子量と数平均分子量の比として定義され、同じくGPC法を用いてポリスチレン換算で求めた分子量より計算される。アミンアダクト(A)の重量平均分子量は、200以上で12000以下が好ましく、さらに好ましくは10000以下が好ましく、さらに好ましくは5000以下が好ましく、さらに好ましくは3000以下が好ましく、さらに好ましくは1500以下が好ましく、1000以下にすることが一層好ましい。重量平均分子量が200以下では、カプセル膜の形成を十分施しても貯蔵安定性の低下を免れない。重量平均分子量が15000以上になると、硬化性を損なうようになる。アミンアダクト(A)の分子量分布は1.01以上6.50以下が好ましく、さらに好ましくは1.20以上5.75以下が好ましく、1.30以上5.00以下にすることが一層好ましい。アミンアダクト(A)の重量平均分子量を15000以下とし、分子量分布を1を超えて7以下にすることで、硬化性が高く、かつ貯蔵安定性に優れたエポキシ樹脂組成物が得られる。
【0029】
本発明に用いられるアミンアダクト(A)は、例えばエポキシ樹脂(a1)とアミン化合物(b1)を、エポキシ樹脂(a1)のエポキシ基1当量に対して、アミン化合物(b1)中の活性水素基が好ましくは0.8当量〜10当量(更に好ましくは0.9当量〜5当量、一層好ましくは0.95当量〜4当量)の範囲で、必要に応じて溶剤の存在下において、例えば50〜250℃の温度で0.1〜10時間反応させることで得られる。エポキシ基に対する活性水素基の当量比が0.8以上にすることで分子量分布が7以下のアミンアダクト(A)を得るのに有利であり、当量比が10以下で、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤に含まれる低分子アミン化合物(B)の含量を所望の値にするために行う、未反応のアミン化合物(b1)の回収が経済的にでき、有利である。
【0030】
エポキシ樹脂(a1)とアミン化合物(b1)によりアミンアダクト(A)を得る反応において、必要に応じて用いられる溶剤としては、特別に制限するものではないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ミネラルスピリット、ナフサ等の炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、メタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール等のアルコール類、水等であり、これらの溶剤は併用しても構わない。用いられた溶剤は蒸留等により除去されることが好ましい。
【0031】
本発明に用いられる低分子アミン化合物(B)は、一級、二級および/または三級アミノ基を有する化合物が挙げられる。これらは併用することができる。
一級アミノ基を有する化合物としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、シクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン、アニリン、トルイジン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等を挙げることができる。
二級アミノ基を有する化合物としては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ピペリジン、ピペリドン、ジフェニルアミン、フェニルメチルアミン、フェニルエチルアミン等を挙げることができる。
【0032】
三級アミノ基を有する化合物としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、べンジルジメチルアミン、N,N' −ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、1、8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7、1、5−ジアザビシクロ(4,3,0)−ノネン−5等の三級アミン類;2−ジメチルアミノエタノール、1−メチル−
2−ジメチルアミノエタノール、1−フェノキシメチル−2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、1−ブトキシメチル−2−ジメチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−β−ヒドロキシエチルモルホリン等のアミノアルコール類;2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等のアミノフェノール類;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−アミノエチル−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−フェニルイミダゾリン、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−メチルイミダゾリン、2−メチルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、2−エチルイミダゾリン、2−エチル−4−メチルイミダゾリン、2−ベンジルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−(o−トリル)−イミダゾリン、テトラメチレン−ビス−イミダゾリン、1,1,3−トリメチル−1,4―テトラメチレン−ビス−イミダゾリン、1,3,3−トリメチル−1,4―テトラメチレン−ビス−イミダゾリン、1,1,3−トリメチル−1,4―テトラメチレン−ビス−4−メチルイミダゾリン、1,3,3−トリメチル−1,4―テトラメチレン−ビス−4−メチルイミダゾリン、1,2−フェニレン−ビス−イミダゾリン、1,3−フェニレン−ビス−イミダゾリン、1,4−フェニレン−ビス−イミダゾリン、1,4−フェニレン−ビス−4−メチルイミダゾリン等のイミダゾリン類、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジプロピルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、ジプロピルアミノエチルアミン、ジブチルアミノエチルアミン、N−メチルピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、ジエチルアミノエチルピペラジン等の三級アミノアミン類;2−ジメチルアミノエタンチオール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトピリジン、4−メルカプトピリジン等のアミノメルカプタン類;N,N−ジメチルアミノ安息香酸、N,N−ジメチルグリシン、ニコチン酸、イソニコチン酸、ピコリン酸等のアミノカルボン酸類;N,N−ジメチルグリシンヒドラジド、ニコチン酸ヒドラジド、イソニコチン酸ヒドラジド等のアミノヒドラジド類を挙げることができる。
低分子アミン化合物(B)としては、貯蔵安定性の優れたエポキシ樹脂組成物が得られるため、三級アミノ基を有する化合物が好ましく、イミダゾール類が更に好ましく、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールが一層好ましい。
【0033】
本発明では、アミンアダクト(A)に特定量未満の低分子アミン化合物を含有させることで極めて貯蔵安定性の高いエポキシ樹脂組成物が得られることを見出した。
即ち、本発明において、アミンアダクト(A)100質量部に対する低分子アミン化合物(B)の量は、貯蔵安定性の高いエポキシ樹脂組成物を得るために、0.001質量部未満0.00001質量部以上の範囲である。通常は低分子アミン化合物(B)の含有量を0.001質量部以上、含有させることにより、シェルの形成反応において、緻密なシェルを形成することができ、貯蔵安定性の高いマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤(D)を得ることができる。そのため、低分子アミン化合物(B)の含有量を特定量以上含有させることが必要であると考えられた。しかし、本発明においては、アミンアダクト(A)100質量部に対する低分子アミン化合物(B)の含有量を0.00001質量部以上0.001質量部未満とし、かつ、カプセル膜の形成時に、十分な膜形成を施すことにより、従来よりも極めて高い貯蔵安定性を発揮することができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0034】
低分子アミン化合物(B)は、アミンアダクト(A)の製造後にアミンアダクト(A)に混合しても構わないし、アミンアダクト(A)の製造前および/または製造中に混合しても構わない。また、アミンアダクト(A)の原料であるアミン化合物(b1)の未反応物を低分子アミン化合物(B) として用いても構わない。
エポキシ樹脂用硬化剤(C)の形態としては、25℃で固体状であること、即ち、軟化点が25℃を超えることが好ましい。より好ましくは、軟化点が40℃以上、一層好ましくは軟化点が60℃以上である。25℃で固体状であるエポキシ樹脂用硬化剤(C)を用いることで、貯蔵安定性の高いエポキシ樹脂組成物が得られる。
【0035】
固体状のエポキシ樹脂用硬化剤(C)としては、更に、塊状、顆粒状、粉末状、などが挙げられるが、好ましくは顆粒状または粉末状であり、さらに好ましくは粉末状である。本発明において粉末状とは、特別に制限するものではないが、0.1〜50μmの平均粒径が好ましく、さらに好ましくは0.5〜10μmの平均粒径である。50μm以下にすることで、均質な硬化物を得ることができる。本発明でいう粒径とは、光散乱法で測定されるストークス径を指すものである。また平均粒径は、メディアン径を指すものである。また、その形状は特に制限は無く、球状、不定形いずれでも良く、一液性エポキシ樹脂組成物の低粘度化のためには、球状が好ましい。ここで球状とは、真球は勿論の事、不定形の角が丸みを帯びた形状をも包含する。
【0036】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤(C)の全塩素量は2500ppm以下が好ましい。より好ましくは2000ppm以下であり、より好ましくは1500ppm以下であり、より好ましくは800ppm以下であり、より好ましくは400ppm以下であり、より好ましくは180ppm以下であり、より好ましくは100ppm以下であり、より好ましくは80ppm以下であり、さらに好ましくは50ppm以下である。全塩素量が2500ppm以下で硬化性と貯蔵安定性のバランスの高いエポキシ樹脂組成物を得ることができる。
【0037】
また、シェル形成反応のコントロールを容易にするためにはエポキシ樹脂用硬化剤(C)の全塩素量は、0.01ppm以上が好ましい。より好ましくは0.02ppm以上であり、より好ましくは0.05ppm以上であり、より好ましくは0.1ppm以上であり、より好ましくは0.2ppm以上であり、さらに好ましくは0.5ppm以上である。全塩素量が0.1ppm以上であることにより、シェル形成反応が硬化剤表面で効率よく行われ、貯蔵安定性に優れたシェルを得ることができる。
【0038】
本発明に記載のマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤(D)は、エポキシ樹脂用硬化剤(C)からなるコアの表面を、合成樹脂または無機酸化物からなるシェルによって被覆されている構造を持つものである。これらの中でも膜の安定性と加熱時の破壊しやすさ、および硬化物の均一性の観点から、合成樹脂の方が好ましい。
合成樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ナイロン樹脂、ポリスチレン樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられ、モノまたは多価アルコールとモノまたは多価イソシアネートの付加生成物であるウレタン系樹脂、アミン系硬化剤とエポキシ樹脂との反応生成物、フェノール樹脂が望ましく、中でも膜の安定性と加熱時の破壊しやすさの観点から、アミン系硬化剤とエポキシ樹脂との反応生成物が好ましい。
無機物の例としては、酸化ホウ素、ホウ酸エステル等のホウ素化合物、二酸化珪素、酸化カルシウムが等挙げられ、膜の安定性と加熱時の破壊しやすさの観点から、酸化ホウ素が好ましい。
【0039】
また、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤(C)をコアとして使用する場合は、波数1630〜1680cm−1の赤外線を吸収する結合基(x)と波数1680〜1725cm−1の赤外線を吸収する結合基(y)を少なくともその表面に有するものが、貯蔵安定性と
反応性のバランスの観点から好ましい。
結合基(x)と結合基(y)は、フーリエ変換式赤外分光光度計(FT−IRと称す)を用いて測定することができる。また、結合基(x)およびまたは結合基(y)がエポキシ樹脂用硬化剤(C)の少なくとも表面に有することは、顕微FT−IRを用いて測定することができる。
【0040】
結合基(x)のうち、特に有用なものとして、ウレア結合を挙げることができる。結合基(y)のうち、特に有用なものとして、ビュレット結合を挙げることができる。
このウレア結合、ビュレット結合を有するものは、イソシアネート化合物(G)と活性水素化合物(H)の反応により生成される反応生成物である。結合基(x)の代表であるウレア結合、及び結合基(y)の代表であるビュレット結合を生成するために用いられるイソシアネート化合物(G)としては、1分子中に1個以上のイソシアネート基を有する化合物であればよいが、好ましくは1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物を用いることであり、好ましいイソシアネートとしては、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、低分子トリイソシアネート、ポリイソシアネートを挙げることができる。脂肪族ジイソシアネートの例としては、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。脂環式ジイソシアネートの例としては、イソホロンジイソシアネート、4−4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、1,4−イソシアナトシクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、1,3−ビス(2−イソシアナトプロピル−2イル)−シクロヘキサン等を挙げることができる。芳香族ジイソシアネートの例としては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等を挙げることができる。低分子トリイソシアネートの例としては、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸−2−イソシアナトエチル、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸−1−メチル−2−イソシアネートエチル等の脂肪族トリイソシアネート化合物、トリシクロヘキシルメタントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等の脂環式トリイソシアネート化合物、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート等の芳香族トリイソシアネート化合物等を挙げることができる。ポリイソシアネートとしては、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートや上記ジイソシアネート、低分子トリイソシアネートより誘導されるポリイソシアネートが例示される。上記ジイソシアネート、トリイソシアネートより誘導されるポリイソシアネートとしては、イソシアヌレート型ポリイソシアネート、ビュレット型ポリイソシアネート、ウレタン型ポリイソシアネート、アロハネート型ポリイソシアネート、カルボジイミド型ポリイソシアネート等がある。これらイソシアネート化合物(G)は併用して用いることができる。
【0041】
結合基(x)および(y)の代表であるウレア結合またはビュレット結合を生成させるための活性水素化合物(H)としては、水、1分子中に1個以上の一級および/または二級アミノ基を有する化合物、1分子中に1個以上の水酸基を有する化合物が例示される。これらは併用する事もできる。水、1分子中に1個以上の水酸基を有する化合物が好ましい。1分子中に1個以上の一級および/または二級アミノ基を有する化合物としては、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミンを使用することができる。脂肪族アミンの例としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン等のアルキルアミン。エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレンジアミン。ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のポリアルキレンポリアミン、ポリオキシプロピレ
ンジアミン、ポリオキシエチレンジアミン等のポリオキシアルキレンポリアミン類等を挙げることができる。脂環式アミンの例としては、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン等を挙げることができる。芳香族アミンとしては、アニリン、トルイジン、べンジルアミン、ナフチルアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等を挙げることができる。
【0042】
活性水素化合物(H)として用いられる1分子中に1個以上の水酸基を有する化合物としては、アルコール化合物とフェノール化合物が例示される。アルコール化合物としては、メチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、ドテシルアルコール、ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、アリルアルコール、クロチルアルコール、プロパルギルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、べンジルアルコール、シンナミルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチル等のモノアルコール類、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、水添ビスフェノールA、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類を挙げることができる。また、1分子中に1個以上のエポキシ基を有する化合物と、1分子中に1個以上の水酸基、カルボキシル基、一級または二級アミノ基、メルカプト基を有する化合物との反応により得られる二級水酸基を1分子中に2個以上有する化合物も多価アルコール類として例示される。これらのアルコール化合物においては、第一、第二、または第三アルコールのいずれでもよい。フェノール化合物としては、石炭酸、クレゾール、キシレノール、カルバクロール、モチール、ナフトール等のモノフェノール類、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ピロガロール、フロログルシン等の多価フェノール類を挙げることができる。これら1分子中に1個以上の水酸基を有する化合物としては、多価アルコール類や多価フェノール類等が好ましい。多価アルコール類が更に好ましい。
【0043】
エポキシ樹脂用硬化剤(C)からなるコアの表面において、結合基(x)および結合基(y)は、それぞれ1〜1000meq/kgおよび1〜1000meq/kgの範囲の濃度を有していることが好ましい。ここで言う濃度はエポキシ樹脂用硬化剤(C)に対する値である。結合基(x)の濃度が1meq/kg以上で、機械的剪断力に対して高い耐性を有するカプセル型硬化剤を得るのに有利である。また、1000meq/kg以下で、高い硬化性を得るのに有利である。さらに好ましい結合基(x)の濃度範囲は10〜300meq/kgである。
結合基(y)の濃度が1meq/kg以上で、機械的剪断力に対して高い耐性を有するカプセル型硬化剤を得るのに有利である。また、1000meq/kg以下で、高い硬化性を得るのに有利である。さらに好ましい結合基(y)の範囲は10〜200meq/kgである。
【0044】
また、アミンアダクト(A)と低分子アミン化合物(B)を主成分としてなるエポキシ樹脂用硬化剤(C)からなるコアの表面は、結合基(x)および結合基(y)の他に、波数が1730〜1755cm−1の赤外線を吸収する結合基(z)を有することが好ましい。結合基(z)についても、フーリエ変換式赤外分光光度計(FT−IR)を用いて測定することができる。また、結合基(z)がエポキシ樹脂用硬化剤(C)の少なくとも表面に有することは、顕微FT−IRを用いて測定することができる。
この結合基(z)のうち、特に有用なものは、ウレタン結合である。このウレタン結合
は、イソシアネート化合物(G)と1分子中に1個以上の水酸基を有する化合物との反応により生成される。ここで用いられるイソシアネート化合物(G)としては、ウレア結合、ビュレット結合を生成するために用いられるイソシアネート化合物(G)が使用できる。
【0045】
結合基(z)の代表であるウレタン結合を生成するために用いられる1分子中に1個以上の水酸基を有する化合物としては、脂肪族飽和アルコール、脂肪族不飽和アルコール、脂肪式アルコール、芳香族アルコール等のアルコール化合物、フェノール化合物を用いることができる。脂肪族アルコールとしては、メチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、ドテシルアルコール、ステアリルアルコール、エイコシルアルコール等のモノアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等の二価アルコール類;グリセリン、トリメチロール、プロパン等の三価アルコール類;ペンタエリスリトール等の四価アルコール類を挙げることができる。脂肪族不飽和アルコールとしては、アリルアルコール、クロチルアルコール、プロパルギルアルコール等を挙げることができる。脂環式アルコールとしては、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。芳香族アルコールとしては、べンジルアルコール、シンナミルアルコール等のモノアルコール類を挙げることができる。これらのアルコールにおいては、第一、第二、または第三アルコールのいずれでもよい。また、1分子中に1個以上のエポキシ基を有する化合物と、1分子中に1個以上の水酸基、カルボキシル基、1級または2級アミノ基、メルカプト基を有する化合物との反応により得られる2級水酸基を1分子中に1個以上有する化合物もアルコール化合物として用いることができる。フェノール化合物としては、石炭酸、クレゾール、キシレノール、カルバクロール、モチール、ナフトール等の一価フェノール、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF等の二価フェノール、ピロガロール、フロログルシン等の三価フェノールを挙げることができる。これら1分子中に1個以上の水酸基を有する化合物として好ましいのは、二価以上の水酸基を有するアルコール化合物またはフェノール化合物である。
【0046】
エポキシ樹脂用硬化剤(C)からなるコアの表面の結合基(z)の好ましい濃度範囲は、1〜200meq/kgである。ここで言う濃度はエポキシ樹脂用硬化剤(C)に対する値である。結合基(z)の濃度が1meq/kg以上で、機械的剪断力に対して高い耐性を有するシェルを形成するのに有利であり、200meq/kg以下で、高い硬化性を得るのに有利である。さらに好ましい結合基(z)の濃度範囲は、5〜100meq/kgである。結合基(x)、結合基(y)および結合基(z)の濃度の定量は、特許文献1に開示された方法で行うことができる。
エポキシ樹脂用硬化剤(C)からなるコアの表面の結合基(x)、結合基(y)および結合基(z)の存在域の合計厚みは、平均層厚で5〜1000nmが好ましい。5nm以上で貯蔵安定性が得られ、1000nm以下で、実用的な硬化性が得られる。ここでいう層の厚みは、透過型電子顕微鏡により測定することができる。特に好ましいエポキシ樹脂硬化剤(C)からなるコア表面の結合基の合計厚みは、平均層厚で10〜100nmである。
【0047】
エポキシ樹脂用硬化剤(C)からなるコアに対する該表面の結合基の比は、質量比で100/1〜100/100である。この範囲において貯蔵安定性と硬化性が両立する。好ましくは100/2〜100/80、より好ましくは100/5〜100/60、一層好
ましくは100/10〜100/50である。
エポキシ樹脂用硬化剤(C)からなるコアの表面に結合基を存在させる方法としては、結合基の成分を溶解し、エポキシ樹脂用硬化剤(C)を分散させた分散媒中で、結合基の成分の溶解度を下げて、エポキシ樹脂用硬化剤(C)の表面に析出させる方法、エポキシ樹脂用硬化剤(C)を分散させた分散媒中で、結合基の形成反応を行い、エポキシ樹脂用硬化剤(C)の表面に結合基を析出させる、あるいはエポキシ樹脂用硬化剤(C)の表面を反応の場として、そこで結合基を生成させる方法等が挙げられる。後者の方法が反応と被覆を同時に行うことができ好ましい。
【0048】
ここで分散媒としては、溶媒、可塑剤、樹脂類等が例示される。また、エポキシ樹脂を分散媒として用いることもできる。
溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ミネラルスピリット、ナフサ等の炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、プロピレングリコールモノメチルエチルエーテルアセテート等のエステル類;メタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール等のアルコール類;水、等が例示される。可塑剤としては、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシシル)等のフタル酸ジエステル系、アジピン酸ジ(2−エチルヘキシシル)等の脂肪族二塩基酸エステル系、リン酸トリクレジル等のリン酸トリエステル系、ポリエチレングリコールエステル等のグリコールエステル系等が例示される。樹脂類としては、シリコーン樹脂類、エポキシ樹脂類、フェノール樹脂類等が例示される。
【0049】
結合基でエポキシ樹脂用硬化剤(C)を被覆する方法において、分散媒として使用できるエポキシ樹脂としては例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA等のビスフェノール類をグリシジル化したビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゼン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等のその他の2価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール等のトリスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;1,1,2,2,−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のテトラキスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラック等のノボラック類をグリシジル化したノボラック型エポキシ樹脂等;多価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、グリセリンやポリエチレングリコール等の多価アルコールをグリシジル化した脂肪族エーテル型エポキシ樹脂;p−オキシ安息香酸、β−オキシナフトエ酸等のヒドロキシカルボン酸をグリシジル化したエーテルエステル型エポキシ樹脂;フタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸をグリシジル化したエステル型エポキシ樹脂;4,4−ジアミノジフェニルメタンやm−アミノフェノール等のアミン化合物のグリシジル化物やトリグリシジルイソシアヌレート等のアミン型エポキシ樹脂等のグリシジル型エポキシ樹脂と、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環族エポキサイド等が例示される。
【0050】
それらの中で、エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性が高いので、グリシジル型エポキシ樹脂が好ましく、より好ましくは、硬化物の接着性や耐熱性が優れるため多価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂であり、更に好ましくはビスフェノール型エポキシ樹脂である。ビスフェノールAをグリシジル化したエポキシ樹脂とビスフェノールFをグリシ
ジル化したエポキシ樹脂が一層好ましい。ビスフェノールAをグリシジル化したエポキシ樹脂が更に一層好ましい。
エポキシ樹脂用硬化剤(C)の表面を反応の場として、そこで結合基を生成させる方法において、イソシアネート化合物(G)と活性水素化合物(H)の反応は、通常0℃〜150℃の温度範囲で、60分〜24時間の反応時間で行われる。
イソシアネート化合物(G)と活性水素化合物(H)との量比は、特に制限は無いが通常、イソシアネート化合物(G)中のイソシアネート基と活性水素化合物(H)中の活性水素との当量比が1:0.1〜1:1000の範囲で用いられる。
【0051】
本発明に記載のマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤(D)のシェルとして、エポキシ樹脂用硬化剤(C)とエポキシ樹脂(N)との反応生成物からなる反応生成物を用いる場合の反応は、通常10℃〜150℃、好ましくは20℃〜100℃の温度範囲で、3〜168時間、好ましくは5時間〜72時間の反応時間で行われ、分散媒中で行なうこともできる。分散媒としては、溶媒、可塑剤等が例示される。また、エポキシ樹脂(N)自体を分散媒として用いることもできる。また、この場合、マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物(F)におけるエポキシ樹脂(E)と、シェル形成反応に用いるエポキシ樹脂(N)は、同じエポキシ樹脂であってもよい。
【0052】
溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ミネラルスピリット、ナフサ等の炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、プロピレングリコールモノメチルエチルエーテルアセテート等のエステル類;メタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール等のアルコール類;水、等が例示される。可塑剤としては、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシシル)等のフタル酸ジエステル系、アジピン酸ジ(2−エチルヘキシシル)等の脂肪族二塩基酸エステル系、リン酸トリクレジル等のリン酸トリエステル系、ポリエチレングリコールエステル等のグリコールエステル系等が例示される。
【0053】
エポキシ樹脂用硬化剤(C)とエポキシ樹脂(N)とを反応させる時の質量比は、特に制限は無いが通常、1:0.001〜1:1000の範囲、好ましくは1:0.01〜1:100の範囲で用いられる。
エポキシ樹脂用硬化剤(C)とエポキシ樹脂(N)との反応生成物からなるシェルでコアを被覆する方法としては、シェル成分を溶解し、エポキシ樹脂用硬化剤(C)を分散させた分散媒中で、シェル成分の溶解度を下げて、エポキシ樹脂用硬化剤(C)の表面にシェルを析出させる方法、エポキシ樹脂用硬化剤(C)を分散させた分散媒中で、シェルの形成反応を行い、エポキシ樹脂用硬化剤(C)の表面にシェルを析出させる方法、またはエポキシ樹脂用硬化剤(C)からなるコアの表面を反応の場として、そこでシェルを生成させる方法等が挙げられる。後2者の方法が反応と被覆を同時に行うことができ好ましい。
また、後者の場合、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤は、本コア中のアミン化合物を使用してもよいし、別途添加しても構わない。
【0054】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤(C)の表面を被覆するシェルの厚みは、平均層厚で5〜1000nmが好ましい。5nm以上で貯蔵安定性が得られ、1000nm以下で、実用的な硬化性が得られる。ここでいう層の厚みは、透過型電子顕微鏡により観察される。特に好ましいシェルの厚みは、平均層厚で50〜700nmである。
本発明のエポキシ樹脂(N)については本発明の目的とする効果を損なわない範囲内において特に制限されない。そのようなエポキシ樹脂(N)の一例を挙げると、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールA
D、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA等のビスフェノール類をグリシジル化したビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェノール、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等のその他の2価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール等のトリスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;1,1,2,2,−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のテトラキスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラック等のノボラック類をグリシジル化したノボラック型エポキシ樹脂等;多価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、グリセリンやポリエチレングリコール等の多価アルコールをグリシジル化した脂肪族エーテル型エポキシ樹脂;p−オキシ安息香酸、β−オキシナフトエ酸等のヒドロキシカルボン酸をグリシジル化したエーテルエステル型エポキシ樹脂;フタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸をグリシジル化したエステル型エポキシ樹脂;4,4−ジアミノジフェニルメタンやm−アミノフェノール等のアミン化合物のグリシジル化物やトリグリシジルイソシアヌレート等のアミン型エポキシ樹脂等のグリシジル型エポキシ樹脂と、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環族エポキサイド等が例示される。
これらエポキシ樹脂は単独で使用しても併用しても良い。
【0055】
本発明のエポキシ樹脂(N)の全塩素量は2500ppm以下が好ましい。より好ましくは2000ppm以下であり、より好ましくは1500ppm以下であり、より好ましくは800ppm以下であり、より好ましくは400ppm以下であり、より好ましくは180ppm以下であり、より好ましくは100ppm以下であり、より好ましくは80ppm以下であり、さらに好ましくは50ppm以下である。全塩素量が2500ppm以下で硬化性と貯蔵安定性のバランスの高いエポキシ樹脂組成物を得ることができる。
【0056】
また、シェル形成反応のコントロールを容易にするためにはエポキシ樹脂(N)の全塩素量は、0.01ppm以上が好ましい。より好ましくは0.02ppm以上であり、より好ましくは0.05ppm以上であり、より好ましくは0.1ppm以上であり、より好ましくは0.2ppm以上であり、さらに好ましくは0.5ppm以上である。全塩素量が0.1ppm以上であることにより、シェル形成反応が硬化剤表面で効率よく行われ、貯蔵安定性に優れたシェルを得ることができる。
【0057】
本発明のマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物(F)は、10〜50000重量部のエポキシ樹脂(E)にエポキシ樹脂用硬化剤(C)および/またはマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤(D)をエポキシ樹脂用硬化剤(C)として100重量部を配合したことを特徴とする。エポキシ樹脂(E)が50000重量部より多いと、硬化性が低下してしまい、10重量部より小さいとマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物の粘度が高まり、作業性が低下する。このような観点から、エポキシ樹脂(E)の配合量は好ましくは、エポキシ樹脂用硬化剤(C)および/またはマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤(D)100重量部に対して100〜5000であり、より好ましくは120〜1000であり、特に好ましくは150〜400であることが望ましい。
【0058】
本発明のマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物(F)の全塩素量は、高い硬化性と貯蔵安定性の両立のためには、2500ppm以下であることが望ましい。
より好ましくは1500ppm以下であり、より好ましくは800ppm以下であり、より好ましくは400ppm以下であり、より好ましくは200ppm以下であり、より好ましくは100ppm以下であり、より好ましくは80ppm以下であり、さらに好ま
しくは50ppm以下である。
エポキシ樹脂(E)の全塩素量は、高い硬化性と貯蔵安定性の両立のためには、2500ppm以下であることが望ましい。
より好ましくは1500ppm以下であり、より好ましくは800ppm以下であり、より好ましくは400ppm以下であり、より好ましくは200ppm以下であり、より好ましくは100ppm以下であり、より好ましくは80ppm以下であり、さらに好ましくは50ppm以下である。
【0059】
また、エポキシ樹脂(E)とエポキシ樹脂(N)が同じ場合、シェル形成反応のコントロールを容易にするためには、エポキシ樹脂(E)の全塩素量は、0.01ppm以上が好ましい。より好ましくは0.02ppm以上であり、より好ましくは0.05ppm以上であり、より好ましくは0.1ppm以上であり、より好ましくは0.2ppm以上であり、さらに好ましくは0.5ppm以上である。たとえば、全塩素量の好ましい範囲は0.1ppm以上200ppm以下であり、より好ましい範囲は0.2ppm以上80ppm以下であり、より好ましい範囲は0.5ppm以上50ppm以下である。
【0060】
本発明のマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物(F)を製造する方法として、先に製造されたエポキシ樹脂用硬化剤(C)および/またはマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤(D)を、例えば、三本ロール等を用いてエポキシ樹脂(E)中に分散させる方法や、エポキシ樹脂(E)の中でエポキシ樹脂用硬化剤(C)の被覆反応を行い、硬化剤を得ると同時に、マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤(F)を得る方法等が例示される。後者が、生産性が高く好ましい。
また、本発明のエポキシ樹脂(E)のジオール末端不純成分が、エポキシ樹脂(E)の基本構造成分の0.001〜30質量%であることが望ましい。
【0061】
本発明において、エポキシ樹脂(E)の基本構造成分とは、末端のすべてにエポキシ基が存在する構造を言う。エポキシ樹脂(E)のジオール末端不純成分とは、末端のエポキシ基のうち、すくなくとも1つのエポキシ基が、α−グリコール末端の構造をとるものである。参考とする文献として、エポキシ樹脂技術協会刊行の「総説 エポキシ樹脂 第1巻基礎編I」を挙げる。
エポキシ樹脂(E)の基本構造成分およびジオール末端不純成分の分析方法については、同じくエポキシ樹脂技術協会刊行の「総説 エポキシ樹脂 第1巻基礎編I」において引用されている文献に記載の方法を参考に分析を行う。
【0062】
エポキシ樹脂(E)のジオール末端不純成分についてのエポキシ樹脂(E)基本構造成分に対する比率が30質量%よりも大きいと、硬化物の耐水性が低下することがあり、0.001質量%よりも小さいと、エポキシ樹脂組成物の硬化性が低下してしまうことがある。このような観点からエポキシ樹脂(E)のジオール末端不純成分についてのエポキシ樹脂(E)の基本構造成分に対する比率は好ましくは、0.01〜25質量%であり、より好ましくは0.1〜20質量%であり、特に好ましくは、0.5〜18質量%であり、殊に好ましくは1.2〜15質量%である。
【0063】
本発明のエポキシ樹脂(E)のジオール末端不純成分についてのエポキシ樹脂(E)の基本構造成分に対する比率は実施例の項に記載の方法により求められる。
マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物(F)は全塩素量が2500ppm以下であることが望ましい。全塩素量が低いほど反応性が高まり、また、該エポキシ樹脂組成物を電子材料に使用した場合、信頼性が高いという観点から望ましく、より好ましくは1500ppm、より好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは800ppm以下であり、より好ましくは500ppm、より好ましくは300ppm以下であり、より好ましくは200ppm以下であり、より好ましくは100ppm以下であり、さらに
好ましくは50ppm以下である。本発明において全塩素量とは、化合物中に含まれる有機塩素及び無機塩素の総量のことであり、化合物に対する質量基準の値である。
【0064】
本発明のエポキシ樹脂組成物は室温で液状又は25℃での粘度が1000万mPa・s以下のペースト状が好ましい。粘度が低いほど作業性が高く、容器への付着量を下げて廃棄物の低減が可能であり好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂用硬化剤(C)および/またはマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤(D)、エポキシ樹脂(E)、および環状ホウ酸エステル化合物(L)を含有することが望ましい。
これにより、エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性、特に高温時における貯蔵安定性を向上させることができる。
【0065】
上記環状ホウ酸エステル化合物(L)とは、ホウ酸と脂肪族あるいは芳香族ジオールから得られたホウ素が環式構造に含まれる化合物のことである。そのような環状ホウ酸エステル化合物としては、トリス−o−フェニレンビスボレート、ビス−ジメチルトリメチレンビロボレート、ビス−ジメチルエチレンビロボレート、ビス−ジエチルエチレンビロボレートなどがある。特に2,2’−オキシビス(5,5’−ジメチル−1,3,2−オキサボリナン)が好ましい。
上記環状ホウ酸エステル化合物(L)の含有量としては、エポキシ樹脂(E)100質量部に対して0.001〜10質量部、好ましくは0.01〜2質量部、さらに好ましくは0.05〜0.9質量部である。この範囲で用いることで組成物の高温時の貯蔵安定性に優れた硬化を与え、かつ、本来の短時間硬化性、耐熱性、接着性、接続信頼性を損なわない、優れた硬化物を得ることができる。
【0066】
本発明のマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物(F)は、エポキシ樹脂用硬化剤(C)および/またはマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤(D)とエポキシ樹脂(E)より構成されるが、その機能を低下させない範囲で、その他の成分を含有することができる。その他の成分の含有量は、好ましくは30質量%未満である。
エポキシ樹脂(J)に、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤(C)、マイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤(D)、マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物(F)から選ばれる少なくとも1種を混合して一液性エポキシ樹脂組成物が得られる。
【0067】
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いられるエポキシ樹脂(J)は、平均して1分子当たり2個以上のエポキシ基を有するものであればよく、エポキシ樹脂(E)と同じであってもよい。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA等のビスフェノール類をグリシジル化したビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等のその他の2価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール等のトリスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;1,1,2,2,−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のテトラキスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラック等のノボラック類をグリシジル化したノボラック型エポキシ樹脂等;多価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;グリセリンやポリエチレングリコールのような多価アルコールをグリシジル化した脂肪族エーテル型エポキシ樹脂;p−オキシ安息香酸、β−オキシナフトエ酸のようなヒドロキシカルボン酸をグリシジル化した
エーテルエステル型エポキシ樹脂;フタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸をグリシジル化したエステル型エポキシ樹脂;4,4−ジアミノジフェニルメタンやm−アミノフェノール等のアミン化合物のグリシジル化物やトリグリシジルイソシアヌレート等のアミン型エポキシ樹脂と、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環族エポキサイド等が例示される。
【0068】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤(C)、マイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤(D)、マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物(F)から選ばれる少なくとも1種とエポキシ樹脂(J)との混合比は、硬化性、硬化物の特性の面から決定されるものであるが、好ましくはエポキシ樹脂(J)100質量部に対して、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤(C)および/またはマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤(D)および/またはマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物(F)が0.1〜1000質量部となる量で用いればよい。より好ましくは、0.2〜200質量部、更に好ましくは、0.5〜30質量部である。0.1質量部以上で実用的に満足し得る硬化性能を得ることができ、100質量部以下で、本発明のエポキシ樹脂組成物が偏在することなく、バランスの良い硬化性能を有する硬化剤を与える。
また、本発明に用いられるマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物(F)には、エポキシ樹脂の高分子量体で、自己成膜性を有する一般にフェノキシ樹脂と呼ばれる樹脂をも混合することができる。
【0069】
本発明に用いられるエポキシ樹脂用硬化剤(C)、マイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤(D)、マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物(F)から選ばれる少なくとも1種は、酸無水物類、フェノール類、ヒドラジド類、およびグアニジン類よりなる群より選ばれる少なくとも1種の硬化剤(K)を併用する事ができる。
酸無水物類としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水−3−クロロフタル酸、無水−4−クロロフタル酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水コハク酸、無水メチルコハク酸、無水ジメチルコハク酸、無水ジクロールコハク酸、メチルナジック酸、ドテシルコハク酸、無水クロレンデックク酸、無水マレイン酸等;フェノール類としては、例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック等;ヒドラジン類としては、例えば、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドテレフタル酸ジヒドラジド、p−オキシ安息香酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、フェニルアミノプロピオン酸ヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド等;グアニジン類としては、例えば、ジシアンジアミド、メチルグアニジン、エチルグアニジン、プロピルグアニジン、ブチルグアニジン、ジメチルグアニジン、トリメチルグアニジン、フェニルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トルイルグアニジン等が例示される。
【0070】
硬化剤(K)の中で好ましいのは、グアニジン類および酸無水物類である。さらに好ましくは、ジシアンジアミド、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水メチルナジック酸である。
硬化剤(K)を使用する場合、硬化剤(K)を1〜200質量部に対して、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤(C)および/またはマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤(D)および/またはマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物(F)が0.1〜200質量部となる量で用いるのが好ましい。
この範囲で用いることで硬化性と貯蔵安定性に優れた組成物を与え、耐熱性、耐水性に優れた硬化物を得ることができる。
【0071】
本発明に用いられるマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物(F)には、所望によって、増量剤、補強材、充填材、導電微粒子、顔料、有機溶剤、反応性希釈剤、非反応
性希釈剤、樹脂類、結晶性アルコール、カップリング剤等を添加することができる。充填剤の例としては、例えば、コールタール、ガラス繊維、アスベスト繊維、ほう素繊維、炭素繊維、セルロース、ポリエチレン粉、ポリプロピレン粉、石英紛、鉱物性ケイ酸塩、雲母、アスベスト粉、スレート粉、カオリン、酸化アルミニウム三水和物、水酸化アルミニウム、チョーク粉、石こう、炭酸カルシウム、三酸化アンチモン、ペントン、シリカ、エアロゾル、リトポン、バライト、二酸化チタン、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、フラーレン、酸化鉄、金、銀、アルミニウム粉、鉄粉、ナノサイズの金属結晶、金属間化合物等を挙げることができ、これらはいずれもその用途に応じて有効に用いられる。有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。反応性希釈剤としては、例えば、ブチルグリシジルエーテル、N,N’−グリシジル−o−トルイジン、フェニルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等が挙げられる。非反応性希釈剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルアジベート、石油系溶剤等が挙げられる。樹脂類としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、メラミン樹脂やウレタン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、アルキッド変性エポキシ樹脂等の変性エポキシ樹脂が挙げられる。結晶性アルコールとしては、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ショ糖、トリメチロールプロパンが挙げられる。
【0072】
本発明に用いられるエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂用硬化剤(C)および/またはマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤(D)とエポキシ樹脂(E)と、必要に応じてエポキシ樹脂(J)および硬化剤(K)が主成分である。本発明のエポキシ樹脂組成物は、加熱により硬化することで所望の性能が発現されるが、ここで言う主成分とは、加熱による硬化反応の主体をなす成分であることを意味し、加熱硬化性成分の60%以上である事が好ましい。更に好ましくは70%以上である。
一液性エポキシ樹脂組成物の内、硬化に関与しない成分としては、例えば、増量剤、補強材、充填材、導電材料、顔料、有機溶剤、樹脂類等が挙げられるが、これらの成分は一液性エポキシ樹脂組成物全体に対して0〜90質量%の範囲で使用されるのが好ましい。
【0073】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、接着剤および/または接合用ペースト、接合用フィルムの他に、導電材料、異方導電材料、絶縁材料、封止材、コーティング材、塗料組成物、プリプレグ、熱伝導性材料等として有用である。
接着剤および/または接合用ペースト、接合用フィルムとしては、液状接着剤やフィルム状接着剤、ダイボンディング材等として有用である。フィルム状接着剤の製造方法としては、例えば、特開昭62−141083号や、特開平05−295329号などに記載された方法がある。より具体的には、固形エポキシ樹脂、液状エポキシ樹脂、さらに固形のウレタン樹脂を、50重量%になるようにトルエンに溶解・混合・分散させた溶液を作成する。これに本発明のマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物(F)を溶液に対して30重量%添加・分散させたワニスを調製する。この溶液、例えば厚さ50μmの剥離用ポリエチレンテレフタレート基材にトルエンが乾燥後に厚さ30μmとなるように塗布する。トルエンを乾燥させることにより、常温では不活性であり、加熱することにより潜在性硬化剤の作用により接着性を発揮する、接合用フィルムを得ることができる。
【0074】
導電材料としては導電フィルム、導電ペースト等がある。異方導電材料としては、異方導電性フィルム、異方導電性ペースト等がある。その製造方法としては、例えば、特開平01−113480号に記載された方法がある。より具体的には、例えば、前述の接合用フィルムの製造において、ワニスの調製時に導電材料や異方導電材料を混合・分散して、
剥離用の基材に塗布後、乾燥することにより製造することができる。導電粒子としては半田粒子、ニッケル粒子、ナノサイズの金属結晶、金属の表面を他の金属で被覆した粒子、銅と銀の傾斜粒子等の金属粒子や、例えば、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂等の樹脂粒子に金、ニッケル、銀、銅、半田などの導電性薄膜で被覆を施した粒子等が使用される。一般に導電粒子は1〜20μm程度の球形の微粒子である。フィルムにする場合の基材としては、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン等の基材に塗布後、溶剤を乾燥させる方法等がある。
【0075】
絶縁材料としては、絶縁接着フィルム、絶縁接着ペーストがある。前述の接合用フィルムを用いることで、絶縁材料である絶縁接着フィルムを得ることができる。また、封止材料を用いる他、前述の充填剤のうち、絶縁性の充填剤を配合することで、絶縁接着ペーストを得ることができる。
封止材としては、固形封止材や液状封止材、フィルム状封止材等として有用であり、液状封止材としては、アンダーフィル材、ポッティング材、ダム材等として有用である。封止材の製造方法としては、例えば、特開平5−43661号、特開2002−226675号などにおいて、電気・電子部品の封止・含浸用成形材料としての記載がある。より具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、硬化剤として例えば酸無水物硬化剤として無水メチルヘキサヒドロフタル酸、さらに球状溶融シリカ粉末を加えて均一に混合し、それに本発明で得られたマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物(F)を加え均一に混合し、封止材料を得ることができる。
【0076】
コーティング用材料としては、例えば電子材料のコーティング材、プリント配線版のカバー用のオーバーコート材、プリント基板の層間絶縁用樹脂組成物などがあげられる。コーティング用材料の製造方法としては、例えば、特公平4−6116号や、特開平7−304931号、特開平8−64960号、さらに特開2003−246838などに記載の各種方法がある。より具体的には、充填剤からシリカ等を選定してフィラーとして、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のほかフェノキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂などを配合し、さらに本発明のマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物(F)を配合し、MEKで50%の溶液を調製する。これをポリイミドフィルム上に50μmの厚さでコーティングし、銅箔を重ねて、60〜150℃でラミネートし、当該ラミネートを180〜200℃で加熱硬化させることにより、層間をエポキシ樹脂組成物によりコーティングされた積層板を得ることができる。
【0077】
塗料組成物の製造方法としては、例えば特開平11−323247号、特開2005−113103号などに記載された方法がある。より具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂に、二酸化チタン、タルク等を配合し、混合溶剤としてMIBK/キシレンの1:1混合溶剤を添加、攪拌、混合して主剤とする。これに本発明のマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物(F)を添加、均一に分散させることにより、エポキシ塗料組成物を得ることができる。
【0078】
プリプレグの製造方法としては、例えば、特開平09−71633号、WO98/44017号などに記載された方法のように、エポキシ樹脂組成物を補強基材に含浸し、加熱して得ることができる。なお、含浸させるワニスの溶剤としては、メチルエチルケトン、アセトン、エチルセルソルブ、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどがあげられ、これらの溶剤はプリプレグ中に残存しないことが好ましい。なお、補強基材の種類は特に限定しないが、例えば、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド布、液晶ポリマーなどが例としてあげられる。樹脂組成物分と補強基材の割合も特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜80重量%となるように調製するのが好ましい。
熱伝導性材料の製造方法としては、例えば、特開平06−136244号、特開平10
−237410号、特開2000−3987号などがある。より具体的には、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂、硬化剤としてフェノールノボラック硬化剤、さらに熱伝導フィラーとしてグラファイト粉末を配合して均一に混練する。これに本発明のマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物(F)を配合して熱伝導性樹脂ペーストを得ることができる。
【実施例】
【0079】
本発明を実施例に基づき、更に詳しく説明するが本発明の技術範囲およびその実施態様はこれらに限定されるものではない。実施例及び比較例中の「部」または「%」は特記しない限り質量基準である。
以下に述べる手法により、本実施例および比較例に係る樹脂およびその硬化物の物性評価試験を行った。
(1)エポキシ当量
1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量(g)であり、JIS K−7236に準拠して求めた。
(2)全塩素量
試料1gを25mlのエチレングリコールモノブチルエーテルに溶解し、これに1規定KOHのプロピレングリコール溶液25mlを加えて20分間煮沸したのち、硝酸銀水溶液で滴定した。
【0080】
(3)エポキシ樹脂(N)・(E)およびマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物(F)の全塩素量
エポキシ樹脂またはエポキシ樹脂組成物を、キシレンを用いて、エポキシ樹脂が無くなるまで洗浄と濾過を繰り返す。次にろ液を100℃以下で減圧留去し、エポキシ樹脂を得る。得られたエポキシ樹脂試料1〜10gを滴定量が3〜7mlになるよう精秤し、25mlのエチレングリコールモノブチルエーテルに溶解し、これに1規定KOHのプロピレングリコール溶液25mlを加えて20分間煮沸したのち、硝酸銀水溶液で滴定した。
(4)加水分解性塩素量
試料3gを50mlのトルエンに溶解し、これに0.1規定KOHのメタノール溶液20mlを加えて15分間煮沸した後、硝酸銀水溶液で滴定した。
【0081】
(5)粘度
25℃でBM型粘度計を使用して測定した。
(6)軟化点
JIS K−7234(環球法)に準拠した。
(7)FT−IR測定
日本分光(株)社製FT/IR−410を使用し吸光度を測定した。
(8)重量平均分子量
東ソー(株)製HLC8220GPC(検出器:RI)を用い、カラム:PLgel3μMIXED−E(ポリマーラボラトリー社製)2本、溶離液:ジメチルホルムアミド1%リチウムブロマイド溶液、検量線:ポリスチレンの条件でゲルパーミッションクロマトグラフィーを行い、重量平均分子量を測定した。
【0082】
(9)分子量分布
東ソー(株)製HLC8220GPC(検出器:RI)を用い、カラム:PLgel3μMIXED−E(ポリマーラボラトリー社製)2本、溶離液:ジメチルホルムアミド1%リチウムブロマイド溶液、検量線:ポリスチレンの条件でゲルパーミッションクロマトグラフィーを行い、重量平均分子量を数平均分子量で割った値で分子量分布を示した。
(10)ゲルタイム測定
(株)テイ・エスエンジニアリング社製のキュラストメーターV型を使用し、JIS
K6300に準拠して求めた。
【0083】
(11)エポキシ樹脂(E)の基本構造成分の定量
エポキシ樹脂組成物を、キシレンを用いてエポキシ樹脂が無くなるまで洗浄と濾過を繰り返す。次にろ液を100℃以下で減圧留去し、エポキシ樹脂を得る。
得られたエポキシ樹脂を、以下の方法で分析して定量する。東ソー製高速液体クロマトグラフィ(AS−8021、検出器UV−8020、以下HPLC)で、カラムはミリポア社製のノバパックC−18を使用する。移動相は水/アセトニトリル=70/30〜0/100にグラジェントをかける。尚、検出波長を254nmとした。HPLC分析して両方の末端構造の違いによる分離条件を選定して、分離液について切り替え弁を使用して分取する。分取した分離液をフラクションごとに減圧、留去し残渣をMSで分析する。MSスペクトルにより、基準ピークの質量数に18の差があるもの同士について、18小さいものを基本構造成分と認める。この基本構造成分について、HPLC分析チャート上のピーク強度より、その面積比率でエポキシ樹脂(E)の基本構造成分含有量を求める。
【0084】
(12)エポキシ樹脂(E)のジオール末端不純成分の定量
エポキシ樹脂(E)の基本構造成分の定量と同様にして、分離液をMSで分析する。MSスペクトルにより、基準ピークの質量数に18の差があるもの同士について、18大きいものをジオール末端不純成分と認める。HPLC分析チャート上のジオール末端不純成分ピークの強度を示す面積と、基本構造成分を示すピーク強度の面積比でエポキシ樹脂(E)中の基本構造成分に対する、ジオール末端不純成分の含有量を求める。尚、検出波長を254nmとした。
ここでいうジオール末端不純成分の構造とは、どちらか一方、または両方の末端のエポキシ基が開環して、1,2−グリコールを形成した構造をいう。
【0085】
(13)マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤(F)からのマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤(D)の分離
マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤(F)を、キシレンを用いて、エポキシ樹脂が無くなるまで洗浄と濾過を繰り返す。次に、キシレンが無くなるまでシクロヘキサンで洗浄と濾過を繰り返す。シクロヘキサンを濾別し、50℃以下の温度でシクロヘキサンを完全に除去乾燥する。
【0086】
(14)マイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤(D)からのカプセル膜の分離
マイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤(D)を、メタノールを用いて、エポキシ樹脂用硬化剤が無くなるまで洗浄と濾過を繰り返し、50℃以下の温度でメタノールを完全に除去乾燥する。
(15)一液性エポキシ樹脂組成物の硬化性
実施例または比較例で製造したマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤(F)30部を、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量189g/当量、全塩素量1200ppm:以下エポキシ樹脂(M)と称す)100部と混合、一液性エポキシ樹脂組成物を製造してゲルタイムを測定し、ゲルタイムが30分未満となる温度が90℃未満の場合は◎、90℃を超えて100℃未満の場合は○、100℃を超えて110℃未満の場合は△、110℃を超えて120℃未満の場合は×、120℃を超える場合は××とした。
【0087】
(16)一液性エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性
実施例または比較例で製造したマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤(F)30部をエポキシ樹脂(M)100部と混合、一液性エポキシ樹脂組成物を製造し、50℃で1週間貯蔵し、貯蔵後の粘度を貯蔵前粘度割った値(以下粘度倍率と称す)により貯蔵安定性を評価した。粘度倍率が1.5倍未満を◎、2倍未満を○、2倍以上3倍未満を△、3倍以上を×、貯蔵途中でゲル化したものを××とした。
【0088】
[製造例1]
(アミンアダクト(A−1)の製造)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量185g/当量、全塩素量1900ppm:以下エポキシ樹脂a1−1と称す)1.5当量と、2−メチルイミダゾール1当量(活性水素換算)を、n−ブタノールとトルエンの1/1混合溶媒中(樹脂分50%)、80℃で反応させた。その後減圧下で2−メチルイミダゾール(2MZ)の含有量が5ppm未満になるまで溶剤と共に留去し、25℃で固体状のアミンアダクトA−1を得た。得られたアミンアダクトの重量平均分子量は3800、分子量分布は3.7であった。
【0089】
[製造例2]
(アミンアダクト(A−2)の製造)
以下エポキシ樹脂a1−1を1当量とビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量470g/当量、全塩素量1300ppm:以下エポキシ樹脂a1−2と称す)1当量と、トリエチレンテトラミン2当量を2−プロパノールとキシレンの1/2混合溶媒中(樹脂分50%)、80℃で反応させた。その後、減圧下で溶剤と未反応低分子アミン化合物を留去し、トリエチレンテトラミン(TETA)が10ppm未満になった時点で蒸留を終了し、25℃で固体状のアミンアダクトA−2を得た。得られたアミンアダクトの重量平均分子量は2500、分子量分布は1.9であった。
【0090】
[製造例3]
(アミンアダクト(A−3)の製造)
エポキシ樹脂a1−2を1当量とクレゾールノバラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量215g/当量、全塩素量1500ppm:以下エポキシ樹脂a1−3と称す)0.5当量と、N―メチルピペラジン1.5当量とした以外は製造例2と同様に反応させた後、蒸留留去して25℃で固体状のアミンアダクトA−3を得た。得られたアミンアダクトに含有されるN−メチルピペラジン(NP)は10ppm未満で、アミンアダクトの重量平均分子量は2800、分子量分布は2.1であった。
【0091】
[製造例4]
(アミンアダクト(A−4)の製造)
エポキシ樹脂a1−1を1当量と、2−メチルイミダゾール0.7当量とし、溶剤を製造例1と同様にした以外は製造例2と同様に反応させた後、蒸留留去して25℃で固体状のアミンアダクトA−4を得た。得られたアミンアダクトに含有される2−メチルイミダゾール(2MZ)は10ppm未満で、アミンアダクトの重量平均分子量は4100、分子量分布は3.9であった。
【0092】
[製造例5]
(アミンアダクト(A−5)の製造)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量165g/当量、全塩素量300ppm :以下エポキシ樹脂a1−4と称す)1.5当量と、2−メチルイミダゾール1当量を、製造例4と同様に反応させた後、蒸留留去して25℃で固体状のアミンアダクトA−5を得た。得られたアミンアダクトに含有される2−メチルイミダゾール(2MZ)は10ppm未満で、アミンアダクトの重量平均分子量は3200、分子量分布は3.1であった。
【0093】
[製造例6]
(アミンアダクト(A−6)の製造)
エポキシ樹脂a1−1を2当量と、2−メチルイミダゾール1当量を、製造例4と同様に反応させた後、蒸留留去して25℃で固体状のアミンアダクトA−6を得た。得られた
アミンアダクトに含有される2−メチルイミダゾール(2MZ)は10ppm未満で、アミンアダクトの重量平均分子量は7400、分子量分布は6.2であった。
【0094】
[製造例7]
(アミンアダクト(A−7)の製造)
エポキシ樹脂a1−1を5当量と、2−メチルイミダゾール1当量を、製造例4と同様に反応させた後、蒸留留去して25℃で固体状のアミンアダクトA−7を得た。得られたアミンアダクト100質量部に含有される2−メチルイミダゾール(2MZ)は10ppm未満で、アミンアダクトの重量平均分子量は19000、分子量分布は9.5であった。
【0095】
[製造例8]
(アミンアダクト(A−8)の製造)
エポキシ樹脂a1−1を1当量と、2−メチルイミダゾール2.5当量を、製造例4と同様に反応させた後、蒸留留去して25℃で固体状のアミンアダクトA−8を得た。得られたアミンアダクトに含有される2−メチルイミダゾール(2MZ)は8部で、アミンアダクトの重量平均分子量は1500、分子量分布は1.5であった。
【0096】
[実施例1]
製造例1で得たアミンアダクトA−1((B)成分の2MZ5ppm未満残留)の100質量部を溶融し、これに3ppmの2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)を均一に混合し、室温に冷却後粉砕して、25℃で固体状の平均粒径2.5μmのエポキシ樹脂用硬化剤C−1を得た。200質量部のエポキシ樹脂E−1に、エポキシ樹脂用硬化剤C−1を100質量部、水1.5質量部、トリレンジイソシアネート5質量部を加えて、40℃で攪拌しながら4時間反応を続けた。その後、シェル形成反応を50℃で12時間行い、マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F−1を得た。
【0097】
マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F−1からキシレンを用いてマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤を分離し、FT−IR測定により、結合基(x)、(y)、(z)を有することが確認された。
更に、100部のエポキシ樹脂(M)に、得られたマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F−1を30部配合したときの一液性エポキシ樹脂組成物の硬化性と貯蔵安定性を評価した。得られた結果を表−1に示す。
【0098】
[実施例2〜6]
製造例2〜6で得たアミンアダクトA−2〜6((B)成分の各アミン化合物10ppm残留)を粉砕して、表−1記載のエポキシ樹脂用硬化剤C−2〜6を得た。得られたエポキシ樹脂用硬化剤の特性を表−1に示す。
更に、表−1で示した配合で、実施例1と同様にしてマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F−2〜6を得た。何れも実施例1と同様にして結合基(x)、(y)、(z)を有することを確認し、実施例1と同様にしてマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F−2〜6を硬化剤としたときの一液性エポキシ樹脂組成物の硬化性と貯蔵安定性を評価した。評価結果を表−1に示す。
【0099】
[実施例7]
製造例4で得たアミンアダクトA−4を粉砕して25℃で固体状の平均粒径2.4μmのエポキシ樹脂用硬化剤C−4を得た。得られたエポキシ樹脂用硬化剤C−4を100質量部、水1.5質量部、MR−200を5質量部加えて、40℃で攪拌しながら4時間反応を続けた。その後、環状ホウ酸エステル化合物(L)を0.07部加えて、さらにシェル形成反応を50℃で12時間行い、マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F−7を得
た。製造例4で得たアミンアダクトA−4を粉砕して得られたエポキシ樹脂用硬化剤C−4を用いて、表−1で示した配合で、実施例1と同様にしてマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F−7を得た。実施例1と同様にして結合基(x)、(y)、(z)を有することを確認し、実施例1と同様にしてマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F−7の一液性エポキシ樹脂組成物の硬化性と貯蔵安定性を評価した。評価結果を表−1に示す。
【0100】
[比較例1]
製造例8で得たアミンアダクトA−8を粉砕して、表−1記載のエポキシ樹脂用硬化剤C−7を得た。得られたエポキシ樹脂用硬化剤の特性を表−1に示す。
更に、表−1で示した配合で、実施例1と同様にしてマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F−8を得た。実施例1と同様にしてマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F−8を硬化剤としたときの一液性エポキシ樹脂組成物の硬化性と貯蔵安定性を評価した。評価結果を表−1に示す。
【0101】
[比較例2]
製造例8で得たアミンアダクトA−8を粉砕して得た表−1記載のエポキシ樹脂用硬化剤C−7を用いて、更に表−1で示した配合で、実施例7と同様にしてマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F−9を得た。実施例1と同様にしてマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F−9を硬化剤としたときの一液性エポキシ樹脂組成物の硬化性と貯蔵安定性を評価した。評価結果を表−1に示す。評価した。評価結果を表−1に示す。
【0102】
[比較例3]
製造例7で得たアミンアダクトA−7を粉砕して、表−1記載のエポキシ樹脂用硬化剤C−8を得た。得られたエポキシ樹脂用硬化剤の特性を表−1に示す。
更に、表−1で示した配合で、実施例1と同様にしてマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F−10を得た。実施例1と同様にしてマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F−10を硬化剤としたときの一液性エポキシ樹脂組成物の硬化性と貯蔵安定性を評価した。評価結果を表−1に示す。
【0103】
【表1】

【0104】
[比較例4]
製造例7得たアミンアダクトA−7の100質量部を溶融し、これに2−メチルイミダゾールを均一に混合し2−メチルイミダゾール含有量が10.0部となるようにし、室温に冷却後粉砕して、25℃で固体状の平均粒径3.5μmのエポキシ樹脂用硬化剤C−9を得た。200質量部のエポキシ樹脂E−1に、エポキシ樹脂用硬化剤C−9を100質量部、水2質量部、MR−200を9質量部加えて、40℃で攪拌しながら3時間反応を続けた。その後、シェル形成反応を50℃で8時間行い、エポキシ樹脂用マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F−11を得た。
【0105】
マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F−11からキシレンを用いてマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤を分離し、FT−IR測定により、結合基(x)、(y)、(z)を有することが確認された。
更に、100部のエポキシ樹脂(M)に、得られたマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F−11を30部配合したときの一液性エポキシ樹脂組成物の硬化性と貯蔵安定性を評価した。得られた結果を表−2に示す。
【0106】
[比較例5]
比較例4と同じエポキシ樹脂用硬化剤C−9を用いて、マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F−12を製造する際、実施例7と同様に、環状ホウ酸エステル化合物(L)を0.1部加えて、さらにシェル形成反応を50℃で8時間行い、マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F−12を得た。更に、100部のエポキシ樹脂(M)に、得られたマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F−12を30部配合したときの一液性エポキシ樹脂組成物の硬化性と貯蔵安定性を評価した。得られた結果を表−2に示す。
【0107】
[比較例6]
製造例1で得たアミンアダクトA−1の100質量部を溶融し、これに11.5質量部の2−メチルイミダゾールを均一に混合し、室温に冷却後粉砕して、25℃で固体状の平均粒径2.5μmのエポキシ樹脂用硬化剤C−10を得た。200質量部のエポキシ樹脂E−1に、エポキシ樹脂用硬化剤C−10を100質量部、水2質量部、MR−200を9質量部を加えて、40℃で攪拌しながら3時間反応を続けた。その後、シェル形成反応を50℃で8時間行い、マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F−13を得た。
更に、100部のエポキシ樹脂(M)に、得られたマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F−13を30部配合したときの一液性エポキシ樹脂組成物の硬化性と貯蔵安定性を評価した。得られた結果を表−2に示す。
【0108】
[比較例7]
比較例6と同じエポキシ樹脂用硬化剤C−10を用いて、マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F−14を製造する際、実施例7と同様に、環状ホウ酸エステル化合物(L)を0.15部加えて、さらにシェル形成反応を50℃で8時間行い、マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F−14を得た。更に、100部のエポキシ樹脂(M)に、得られたマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F−14を30部配合したときの一液性エポキシ樹脂組成物の硬化性と貯蔵安定性を評価した。得られた結果を表−2に示す。
【0109】
【表2】

【0110】
[導電性フィルムの作製の実施例]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ製AER−2603)15部、フェノールノボラック樹脂(昭和高分子社製、商品名「BRG−558」)6部、合成ゴム(日本ゼオン社製商品名「ニポール1072」、重量平均分子量30万)4部を、メチルエチルケトンとブチルセロソルブアセテートの1:1(重量比)混合溶剤20部に溶解した
。この溶液に銀粉末74部を混合し、さらに三本ロールにより混練した。これにさらに実施例2で得られたマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F−2を30部加えて、さらに均一に混合させて、導電性接着剤を得た。得られた導電性接着剤を用いて、厚さ40μm のポリプロピレンフィルム上にキャストして、80℃で60分間、乾燥半硬化させ厚さ35μm の導電性接着剤層を有する導電性フィルムを得た。この導電性フィルムを用い、80℃のヒートブロック上でシリコンウェハー裏面に導電性接着剤層を導電性フィルムを転写させた。さらにシリコンウェハーをフルダイシングし、ヒートブロック上でリードフレームに導電性接着剤付半導体チップを、200 ℃、2分間の条件で接着硬化させたところ、チップの導電性の問題がなかった。
【0111】
[導電性ペーストの作製の実施例]
100部のエポキシ樹脂(M)に、実施例1で得られたマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F−1を30部に、平均粒子径が14μm、アスペクト比が11の鱗片状銀粉(徳力化学研究所(株)製)150g及び平均粒子径が10μm、アスペクト比が9の鱗片状ニッケル粉(高純度化学(株)製、商品名「NI110104」)60gを添加し、均一になるまで撹拌後、三本ロールで均一に分散して導電ペーストとした。得られた導電ペーストを、厚さ1.4mmのポリイミドフィルム基板上にスクリーン印刷した後、200℃で1時間、加熱硬化させた。得られた配線板の導電性を測定した結果、導電性ペーストとして有用なものであった。
【0112】
[異方導電性フィルムの作製の実施例]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ製AER6097、エポキシ当量42500g/eq)40重量部、フェノキシ樹脂(東都化成製、YP−50)30重量部を酢酸エチル30部に溶解し、それに、実施例2で得られたマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F−2を30部に、粒径8μmの導電粒子(金メッキを施した架橋ポリスチレン)5部とを加え均一に混合し、一液性エポキシ樹脂組成物を得た。これをポリエステルフィルム上に塗布し、70℃で酢酸エチルを乾燥除去し、異方導電性フィルムを得た。
得られた異方導電性フィルムをICチップと電極間に挟み、200℃のホットプレート上で30kg/cm2、20秒間熱圧着を行った結果、電極間が接合し、導通がとれ、異方導電性材料として有用であった。
【0113】
[異方導電性ペーストの作製の実施例]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ製AER6091、エポキシ当量480g/eq)50重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ製AER2603)50重量部と導電粒子としてミクロパールAu−205(積水化学製、比重2.67)5重量部を混合後、実施例2で得られたマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F−2を30部加えて、さらに均一に混合させて、異方導電性ペーストを得た。得られた異方導電性ペーストを、ITO電極を有する低アルカリガラス上に塗布した。230℃のセラミックツールで、30秒間、2MPaの圧力にて試験用TAB(Tape Automated Bonding)フィルムと圧着し貼り合わせを行った。隣接するITO電極間の抵抗値を測定したところ、異方導電性ペーストとして有用であった。
【0114】
[絶縁性ペーストの作製の実施例]
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ株式会社製、商品名「YL983U」)100重量部、ジシアンジアミドを4重量部、シリカ粉末100重量部、希釈剤としてフェニルグリシジルエーテル10重量部、および有機リン酸エステル(日本化薬社製、商品名「PM−2」)1重量部を十分混合した後、さらに三本ロールで混練する。さらに、そこに実施例2で得られたマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F−2を30部加えて、さらに均一に混合させて、減圧脱泡および遠心脱泡処理を行い、絶縁性ペーストを製造した。得られた絶縁性ペーストを用いて、半導体チップを樹脂基板に200℃で1
時間加熱硬化させて接着したところ、絶縁性ペーストとして有用であった。
【0115】
[絶縁性フィルムの作製の実施例]
フェノキシ樹脂(東都化成株式会社製、商品名「YP−50」)180重量部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200g/eq、日本化薬株式会社製商品名「EOCN−1020−80」)40重量部、球状シリカ(平均粒径:2μm、アドマテック株式会社製、商品名 SE−5101)300重量部、メチルエチルケトン200重量部を調合し均一分散させた後、これに実施例1で得られたマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F−1を250重量部加えてさらに攪拌・混合してエポキシ樹脂組成物を含む溶液を得る。得られた溶液を、離型処理を施したポリエチレンテレフタレート上に、乾燥後の厚さが50μmになるように塗布し、熱風循環式乾燥機の中で加熱乾燥を行い、半導体接着用の絶縁性フィルムを得た。得られた半導体接着用の絶縁性フィルムを5インチのウェハサイズよりも大きく支持基材ごと切断し、バンプ電極付きウェハの電極部側に樹脂フィルムを合わせる。次に離型処理付き支持基材を上に挟み、70℃、1MPa、加圧時間10秒で真空中加熱圧着し接着樹脂付きウェハを得る。続いて、ダイシングソー(DISCO製DAD−2H6M)を用いてスピンドル回転数30,000rpm、カッティングスピード20mm/secで切断分離した個片の接着フィルム付き半導体素子の樹脂剥がれがないことを観察した。得られたフィルムは絶縁性フィルムとして有用なものであった。
【0116】
[封止材の作製の実施例]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ製AER6091、エポキシ当量480g/eq)50重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ製AER2603)50重量部、硬化剤として無水フタル酸を主成分とするHN−2200(日立化成工業(株)製)を40重量部、平均粒径16μmの球状溶融シリカを80重量部を均一に分散、配合させる。これに実施例1で得られたマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F−1を5重量部加えてエポキシ樹脂組成物を得る。得られたエポキシ樹脂組成物をプリント配線基板上に厚さ60μmになるように1cm角に塗布し、110℃10分、オーブンで加熱して半硬化させた。その後、厚さ370μm、1cm角のシリコンチップを半硬化させたエポキシ樹脂組成物の上に乗せ、荷重を加えてバンプとチップの電極を接触・保持しつつ220℃で1時間、完全硬化処理を行った。得られたエポキシ樹脂組成物からなる封止材は、外観およびチップの導通に問題のない有用なものであった。
【0117】
[コーティング材の作製の実施例]
30部のエポキシ樹脂(M)、フェノキシ樹脂としてYP−50を30部(東都化成製)、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂のメチルエチルケトン溶液(荒川化学工業(株)製、商品名「コンポセランE103」)を50部、これに実施例1で得られたマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F−1を30部加えて、メチルエチルケトンで50重量%に希釈・混合させた溶液を調製した。調製した溶液を、剥離PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(パナック(株)製SG―1)上に、ロールコーターを用いて塗布し、150℃で15分、乾燥、硬化させ、剥離フィルム付き半硬化樹脂(ドライフィルム)膜厚100μmを作製した。これらのドライフィルムを先の銅張り積層板上に120℃で、10分間、6MPaで加熱圧着した後、室温に戻して剥離フィルムを除去し、200℃で2時間硬化させたところ、層間絶縁用のコーティング材として有用なものが得られた。
【0118】
[塗料組成物の作製の実施例]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ製AER6091、エポキシ当量480g/eq)50重量部に、二酸化チタン30重量部、タルク70重量部を配合し、混合溶剤としてMIBK/キシレンの1:1混合溶剤140重量部を添加、攪拌、混合し
て主剤とする。これに実施例1で得られたマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F−1を30重量部添加、均一に分散させることにより、エポキシ塗料組成物として有用なものが得られた。
【0119】
[プリプレグの作製の実施例]
プリプレグの実施例
130℃のオイルバス中のフラスコ内にノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業製のEPICLON N−740)を15部、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(JER製のエピコート4005)を40部、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ製AER2603)30部を溶解・混合し80℃まで冷やす。さらに実施例1で得られたマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物F−1を15部加えて、十分、攪拌して混合する。室温に冷ました前記樹脂組成物を離型紙上にドクターナイフを用いて樹脂目付162g/m2で塗布し、樹脂フィルムとした。次にこの樹脂フィルム上に弾性率24トン/mm2の炭素繊維を12.5本/インチで平織りした三菱レイヨン製CFクロス(型番:TR3110、目付200g/m2)を重ねて樹脂組成物を炭素繊維クロスに含浸させた後、ポリプロピレンフィルムを重ねて表面温度90℃のロール対の間を通して、クロスプリプレグを作製した。樹脂の含有率は45重量%だった。得られたプリプレグを、繊維方向を揃えてさらに積層し、硬化条件150℃×1時間で成形を行い、炭素繊維を補強繊維とするFRP成形体を得ることができ、作製したプリプレグは有用なものであった。
【0120】
[熱伝導性エポキシ樹脂組成物の作製の実施例]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ製AER2603)100部、エポキシ樹脂用硬化剤としてフェノールノボラック樹脂(荒川化学工業(株)製、商品名「タマノル759」)のメチルエチルケトン50%溶液を40重量部、鱗片状グラファイト粉末(ユニオンカーバイト社製の商品名HOPG)15重量部を均一になるまで攪拌後、3本ロールで均一に分散させた。これにさらに、実施例1で得られたマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物F−1を15部加えて、十分、攪拌して混合する。得られた導電ペーストを、用いてCuリードフレーム上に半導体チップ(1.5mm角、厚み0.8mm)をマウントし、かつ、150℃、30分で加熱硬化させて評価用サンプルを得た。得られたサンプルの熱伝導性についてレーザフラッシュ法により測定する。すなわち、測定した熱拡散率α、比熱Cp、密度σから、以下の式、K=α×Cp×σ より熱伝導率Kを求めたところ、Kが5×10−3Cal/cm・sec・℃以上あり、熱伝導性ペーストとして、有用なものであった。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明によれば、低温硬化性と極めて高い貯蔵安定性を両立し、更に電気特性、機械的強度、耐熱性、耐湿性等の性能もバランス良く有する硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物が得られる。本発明のカプセル型硬化剤を用いたエポキシ樹脂組成物は、接着剤、封止材、充填材、絶縁材料、導電材料、プリプレグ、フィルム状接着剤、異方導電性フィルム、異方導電性ペースト、絶縁接着フィルム、絶縁接着ペースト、アンダーフィル材、ポッティング材、ダイボンディング材、導電ペースト、ソルダーレジスト等として優れた性能を発揮する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミンアダクト(A)と低分子アミン化合物(B)を主成分とするエポキシ樹脂用硬化剤であって、アミンアダクト(A)の重量平均分子量が200以上15000以下であり、重量平均分子量と数平均分子量の比として定義される分子量分布が1を超えて7以下にあって、かつ、低分子アミン化合物(B)の含有量がアミンダクト(A)100質量部に対して0.000001質量部以上0.001質量部未満であることを特徴とするエポキシ樹脂用硬化剤。
【請求項2】
25℃で固体状であることを特徴とする請求項1記載のエポキシ樹脂用硬化剤。
【請求項3】
アミンアダクト(A)がエポキシ樹脂(a1)とアミン化合物(b1)との反応により得られることを特徴とする請求項1又は2記載のエポキシ樹脂用硬化剤。
【請求項4】
低分子アミン化合物(B)がイミダゾール類であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂用硬化剤。
【請求項5】
請求項1〜4のエポキシ樹脂用硬化剤よりなる群より選ばれる少なくとも1種のエポキシ樹脂用硬化剤(C)からなるコアの表面を合成樹脂および/または無機酸化物からなるシェルによって被覆されている構造を持つことを特徴とするマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤。
【請求項6】
マイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤(D)は、請求項1〜4のエポキシ樹脂用硬化剤よりなる群より選ばれる少なくとも1種のエポキシ樹脂用硬化剤(C)からなるコアを、イソシアネート化合物(G)と活性水素化合物(H)の反応により得られた皮膜(c1)および/またはエポキシ樹脂用硬化剤(C)とエポキシ樹脂(N)の反応より得られた皮膜(c2)からなるシェルで被覆した、波数1630〜1680cm−1の赤外線を吸収する結合基(x)と波数1680〜1725cm−1の赤外線を吸収する結合基(y)を少なくとも表面に有することを特徴とするマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤。
【請求項7】
エポキシ樹脂(N)の全塩素量が2500ppm以下であることを特徴とする請求項6に記載のマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤。
【請求項8】
10〜50000重量部のエポキシ樹脂(E)に請求項1〜4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂用硬化剤(C)および/または請求項5〜7のいずれか1項に記載のマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤(D)を、エポキシ樹脂用硬化剤(C)および/または(D)として100重量部を配合したことを特徴とするマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物。
【請求項9】
請求項8記載のマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物(F)の全塩素量が2500ppm以下であることを特徴とするマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物。
【請求項10】
エポキシ樹脂(E)の全塩素量が2500ppm以下であることを特徴とする請求項8または9に記載のマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物。
【請求項11】
エポキシ樹脂(E)のジオール末端不純成分が、エポキシ樹脂(E)の基本構造成分の0.001〜30質量%であることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載のマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物。
【請求項12】
さらに、環状ホウ酸エステル化合物(L)を含有することを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載のマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物。
【請求項13】
前記の環状ホウ酸エステル化合物(L)は、2,2’−オキシビス(5,5’−ジメチル−1,3,2−オキサボリナン)である請求項12に記載のマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物。
【請求項14】
前記の環状ホウ酸エステル化合物(L)の配合量は、エポキシ樹脂(E)100質量部に対して0.001〜10質量部である請求項12または13に記載のマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物。
【請求項15】
エポキシ樹脂(J)100質量部に対して、請求項1〜11のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂用硬化剤、マイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤、マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物から選ばれる少なくとも1種を0. 1〜1000質量部含有し、それらを主成分とすることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項16】
エポキシ樹脂(J)100質量部に対して、酸無水物類、フェノール類、ヒドラジド類、およびグアニジン類よりなる群より選ばれる少なくとも1種の硬化剤(K)を1〜200質量部と、請求項1〜11のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂用硬化剤、マイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤、マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物から選ばれる少なくとも1種を、0.1〜200質量部を含有し、それらを主成分とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項17】
さらに、環状ホウ酸エステル化合物(L)を含有することを特徴とする請求項15または16に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項18】
前記の環状ホウ酸エステル化合物(L)は、2,2’−オキシビス(5,5’−ジメチル−1,3,2−オキサボリナン)であることを特徴とする請求項15または16に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項19】
前記の環状ホウ酸エステル化合物(L)の配合量は、エポキシ樹脂(E)100質量部に対して0.001〜10質量部であることを特徴とする請求項15または16に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項20】
請求項8〜19のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂用硬化剤組成物またはエポキシ樹脂組成物を含有することを特徴とするペースト状組成物。
【請求項21】
請求項8〜19のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂用硬化剤組成物またはエポキシ樹脂組成物を含有することを特徴とするフィルム状組成物。
【請求項22】
請求項15〜19のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を含有することを特徴とする接着剤。
【請求項23】
請求項15〜19のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を含有することを特徴とする接合用ペースト。
【請求項24】
請求項15〜19のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を含有することを特徴とする接合用フィルム。
【請求項25】
請求項15〜19のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を含有することを特徴と
する導電性材料。
【請求項26】
請求項15〜19のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を含有することを特徴とする異方導電性材料。
【請求項27】
請求項15〜19のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を含有することを特徴とする異方導電性フィルム。
【請求項28】
請求項15〜19のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を含有することを特徴とする絶縁性材料。
【請求項29】
請求項15〜19のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を含有することを特徴とする封止材料。
【請求項30】
請求項15〜19のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を含有することを特徴とするコーティング用材料。
【請求項31】
請求項15〜19のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を含有することを特徴とする塗料組成物。
【請求項32】
請求項15〜19のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を含有することを特徴とするプリプレグ。
【請求項33】
請求項15〜19のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を含有することを特徴とする熱伝導性材料。

【公開番号】特開2007−91899(P2007−91899A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−283587(P2005−283587)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】