説明

高官能性の高分枝化又は超分枝化されたポリリジンの製造及び使用

【課題】保護基操作及びカルボキシル基の活性化を省略することができ、かつ先行技術から公知である分子量よりも高い分子量を達成することのできる、ポリリジンの簡単な製造法を提供する。
【解決手段】変ポリリジンを利用可能なアミノ基及び/又はカルボキシル基が少なくとも部分的に更に変性されて、特定の触媒の存在で反応させることとにより、架橋されていない超分枝化されたポリリジンの製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の高官能性の高分枝化又は超分枝化されたポリリジン、該ポリリジンの製造法並びに該ポリリジンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
研究において、また工業においても、デンドリマー及び超分枝化されたポリペプチドの重要性はますます高まっている。生物医学的適用において、例えば新規の多抗原性ペプチド(MAPs)の開発において、磁気共鳴映像法のための造影剤の担体プラットフォームとして、又は遺伝子導入体としての潜在的な適用が存在する。
【0003】
完全な対称構造を有する樹枝状ポリマー、いわゆるデンドリマーは、中心分子から出発してそれぞれ2個又はそれ以上の二価又は多価のモノマーと、全ての既に結合されたモノマーとの、制御された段階的な結合によって製造することができる。この場合には、全ての結合工程でモノマー末端基の数(ひいては、結合数)が増加し、樹木状の構造を有するポリマーが得られ、理想的な場合には、枝がそれぞれモノマー単位とちょうど同一の数を有する球状の構造を有するポリマーが得られる。前記の完全な構造に基づき、ポリマー特性は好ましいものであり、例えば意外なことに、球表面上の官能基の数が多いため、低い粘度及び高い反応性が認められる。しかしながら、全ての結合工程で保護基が導入されかつ再度除去されなければならず、かつ精製操作が必要であることによって製造が複雑化されるため、デンドリマーは通常実験室規模でのみ製造される。
【0004】
それに対して、あまり完全でない構造を有する樹枝状ポリマー、いわゆる超分枝化されたポリマー又は"hyperbranched polymers"は、大工業的方法を用いて製造することができる。この超分枝化されたポリマーは、完全な樹枝状構造の他に、線状のポリマー鎖及び不均一なポリマー分枝をも有するが、しかしこのことは、完全なデンドリマーのポリマー特性と比較してポリマー特性を実質的に劣化させるものではない。
【0005】
超分枝化されたポリマーはいわゆるAB2ルートで製造することができる。1個の反応性基Aと2個の反応性基Bとを有する三官能価モノマーは、AB2分子と呼称される。前記基A及びBが相互に反応性である場合、分子内反応によって超分枝化されたポリマーを生成させることができる。
【0006】
デンドリマーの、及び超分枝化されたポリマーの定義に関しては、P.J. Flory, J. Am. Chem. Soc. 1952, 74, 2718及びH. Frey et al., Chemistry - A European Journal, 2000, 6, No. 14, 2499も参照されたい。
【0007】
「超分枝化された」とは、本発明に関連して、枝分かれ度(Degree of Branching, DB)が10〜99.9%、有利に20〜99%、特に有利に20〜95%であることと解釈される。
【0008】
「デンドリマーの」とは、本発明に関連して、この枝分かれ度が99.9〜100%であることと解釈される。
【0009】
枝分かれ度は以下:
DB[%]=100×(T+Z)/(T+Z+L)
として定義されており、この場合、Tは、末端のモノマー単位の平均数を意味し、Zは、枝分かれされたモノマー単位の平均数を意味し、Lは、線状モノマー単位の平均数を意味する。「枝分かれ度」の定義に関しては、H. Frey et al., Acta Polym. 1997, 48, 30も参照されたい。
【0010】
超分枝化されたポリペプチドとは、本発明の範囲内で、構造的にも分子的にも均一でないアミノ酸から構成された、架橋されていない高分子であると解釈される。超分枝化されたポリペプチドは、一方では、デンドリマーと同様に中心分子から出発して、但し枝の均一でない鎖長を伴って構成されていてよい。前記の超分枝化されたポリペプチドは、他方では、線状に、官能性の側基を伴って構成されていてもよいし、この両極端の組合せとして、線状であってかつ分枝した分子部分を有していてもよい。
【0011】
超分枝化されたポリリジンの合成に関して、3つの原則的な方法が公知である:
方法1は、求核性開始剤を用いた、ε−保護されたL−リジン−N−カルボキシ無水物(NCAs)の開環重合に基づくものであり、
方法2ではL−リジン*2HClのカルボキシル基上で活性化された誘導体を用い、
方法3はL−リジンの直接熱重合を含む。
【0012】
方法1、ε−保護されたL−リジン−N−カルボキシ無水物の開環重合に基づく超分枝化されたL−リジン−ポリマー:
超分枝化されたポリ(L−リジン)はKlokらにより記載されている(WO2003/064452及びMacro-molecules 2002, 35, 8718-8723)。直交的にNε保護されたブトキシカルボニル−L−リジン(Boc−リジン;=一時的な保護基)及びε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン(Z−リジン;=永続的な保護基)NCAsは、開始剤としての脂肪族アミン(例えばヘキシルアミン)を用いて開環重合された。一時的な保護基はトリフルオロ酢酸(TFA)を用いて除去され、かつ遊離アミノ基を他の開始剤として新規の重合に利用することができた。最終工程において、Z保護基は臭化水素/酢酸(HBr/AcOH)を用いて分解された。
【0013】
更に、超分枝化されたポリ(L−リジン)はRodriguez-Hernandezらによって記載されている(Biomacromolecules 2003, 4, 249-258)。Nε−トリフルオロアセチル−L−リジン−NCA(TFA−Lys−NCA)とZ−リジン−NCAとからの混合物を脂肪族アミンを用いて開環重合させた。別個のカップリング工程において、Nα,Nε−ジ(9−フルオレニルメトキシカルボニル)−L−リジン(Nα,Nε−ジFmoc Lys)を分枝点として導入した。DMF中でピペリジンを用いて脱保護することにより、TFA−Lys−NCA及びZ−Lys−NCAの開環重合を可能にする2個の新規のアミン基が生じた。前記反応サイクルを数回繰り返した。構造的に類似した超分枝化されたブロックコポリマーは、Birchallらによっても記載されている(Chem. Commun. 1998, 1335-1336)。α−アミノ酸−NCAsは脂肪族アミンを用いて開環重合された。N,N’−ジ(ベンジルオキシカルボニル)L−リジン p−ニトロフェニルエステルが分枝点として導入され、該分枝点は、H2/Pd/Cを用いた脱保護後に、アミノ酸−NCAsの更なる開環のための2個の遊離アミン基を有していた。前記反応サイクルを数回繰り返した。
【0014】
全ての前記反応操作の欠点は、保護基を必要とすることであり、これは反応を本質的に困難にする。
【0015】
方法2、カルボキシル基上で活性化されたL−リジン*2HClの誘導体に基づく超分枝化されたL−リジン−ポリマー。
【0016】
超分枝化されたポリリジンは、ワンポット合成でカルボキシル基の活性化下にN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いて製造された。NHS活性化されたL−リジン*2HClはジメチルスルホキシド(DMSO)中で触媒量のジメチルアミノピリジン(DMAP)と3当量のジイソプロピルエチルアミン(DIEA)の添加下に23時間撹拌され、ポリマーはエチルアセテート中で沈殿した。前記ポリマーはMw=5100の分子量を有していた。同一の試薬を用いた場合、「擬段階」重合において、繰り返しモノマーを添加して、Mw=8640の分子量が達成された。更に、モノマーをコア分子としてのトリス(2−アミノエチル)アミン上でもグラフト重合させた。これに関してはT. L. Menz und T. Chapman, Polym. Prep. 2003, 44(2), 842-743も参照されたい。
【0017】
Menzにより開示された反応操作の欠点は、カルボキシル官能基が特別な試薬により活性化されねばならず、これが反応操作を複雑化させている点である。
【0018】
方法3、アミノ酸混合物の熱共重合:
遊離リジンの熱重合は公知であり、種々の反応条件下で実施された。
【0019】
Plaquet及び共同研究者(Biochimie 1975, 57 1395-1396)は、L−リジンを、水溶液中で105℃で10週間までの期間にわたり、又は8時間にわたる165℃への加熱により、重合させた。前記反応は触媒なしで実施され、かつ収率は例外なく72.5%未満と極めて低かった。
【0020】
Harada(Bull. Chem. Soc. Japan 1959, 32, 1007-1008)は、L−リジンを180〜230℃で30分〜2時間、窒素雰囲気下で重合させた。180℃未満での反応の場合には、単にラクタムの形成のみが報告されているに過ぎない。分子量又は構造に関しては何ら報告されていない。得られたホモポリマーは明らかなゲル含分を有する。リジン塩酸塩の単独重合は達成されなかった(第1008頁、左欄下)。
【0021】
Rohlfing及び共同研究者(Archives of Biochemistry and Biophysics 1969, 130, 441-448)は、L−リジン(遊離塩基)を窒素雰囲気下で186〜192℃で重合させた。3600Daまで及びそれを上回る分子量が達成された。ここで、分枝化されたフラクションも推測された(これに関しては比較試験11を参照されたい)。Rohlfingらにより記載された>100000の分子量は、比較試験においては認められなかった。
【0022】
WO00/71600には、圧力装置中でのL−リジン一水和物の縮合が記載されている。得られたホモポリマーの分子量はわずかである。遊離リジン塩基の縮合は、架橋された縮合生成物をもたらし、かつ触媒なしでか又は鉱酸又はその塩により触媒されて実施される。塩酸塩は反応の前に1当量の塩基を用いて遊離塩基へと変換されねばならず、この遊離塩基はその後WO00/71600の記載に従って変換されることができる。
【0023】
Foxら(BioSystems 1976, 8, 40-44)は、195℃での熱重合のための出発モノマーとして、L−リジンの他にL−リジン*HClも使用した。この場合、170℃の反応温度でL−リジンを使用した場合、環式ラクタムが得られた。L−リジン*HClは単にオルトリン酸の添加下で195℃で反応させることができた。この場合に得られた分子量はわずかであった(比較試験12を参照されたい)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】WO2003/064452
【特許文献2】WO00/71600
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】P.J. Flory, J. Am. Chem. Soc. 1952, 74, 2718
【非特許文献2】H. Frey et al., Chemistry - A European Journal, 2000, 6, No. 14, 2499
【非特許文献3】H. Frey et al., Acta Polym. 1997, 48, 30
【非特許文献4】Klokら, Macro-molecules 2002, 35, 8718-8723
【非特許文献5】Rodriguez-Hernandezら, Biomacromolecules 2003, 4, 249-258
【非特許文献6】Birchallら, Chem. Commun. 1998, 1335-1336
【非特許文献7】T. L. Menz und T. Chapman, Polym. Prep. 2003, 44(2), 842-743
【非特許文献8】Plaquet及び共同研究者, Biochimie 1975, 57 1395-1396
【非特許文献9】Harada, Bull. Chem. Soc. Japan 1959, 32, 1007-1008
【非特許文献10】Rohlfing及び共同研究者, Archives of Biochemistry and Biophysics 1969, 130, 441-448
【非特許文献11】Foxら, BioSystems 1976, 8, 40-44
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明の課題は、保護基操作及びカルボキシル基の活性化を省略することができ、かつ先行技術から公知である分子量よりも高い分子量を達成することのできる、ポリリジンの簡単な製造法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0027】
前記課題は、
(A)リジンと少なくとも1種の酸との塩、
(B)場合により少なくとも1種の、リジンとは別のアミノ酸、
(C)場合により少なくとも1種のジカルボン酸又はポリカルボン酸又はその共重合性誘導体、及び
(D)場合により少なくとも1種のジアミン又はポリアミン又はその共重合性誘導体を、
(E)場合により少なくとも1種の溶剤中で
120〜200℃の温度で、
以下:
(F1)3級アミン及びアミジン、
(F2)塩基性アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又は4級アンモニウム塩、及び
(F3)元素周期律表の第IIIA族〜第VIIIA族又は第IB族〜第VB族の金属のアルカノラート、アルカノアート、キレート又は有機金属化合物、
からなる群から選択された少なくとも1種の触媒(F)の存在で反応させることを特徴とする、架橋されていない超分枝化されたポリリジンの製造法により解決された。
【0028】
本発明による方法を用いて、750000Daまで、有利に700000Daまで、特に有利に650000Daまで、極めて特に有利に600000Daまで、特に550000Daまでの重量平均分子量Mwを有する架橋されていない超分枝化されたポリリジンを製造することが可能である。
【0029】
本発明による反応操作により、5000Daを上回る、有利に7500Daを上回る、特に有利に10000Daを上回る、極めて特に有利に12000Daを上回る、特に15000Daを上回る、特に20000Daを上回る、更に有利に25000Daを上回る重量平均分子量Mwを有する架橋されていない超分枝化されたポリリジンを製造することも初めて可能となり、これも同様に本発明の対象である。
【0030】
このような、専ら成分(A)と、場合により成分(B)とから構成された本発明によるポリリジンは、5000Da、有利に6000Daを上回る、特に有利に7000Daを上回る分子量で、50℃で、90質量%を上回る水溶性が優れている。
【0031】
ASTM規格D3418−03に準拠して示差走査熱量測定により測定されたガラス転移温度Tgは、通常−20〜100℃、有利に−10〜80℃、特に有利に0〜60℃である。
【0032】
「架橋されていない」という概念は、本発明によれば、本発明によりリジンと少なくとも1種の酸との塩(A)から得られたポリリジンが、遊離リジン塩基の重合により得られた、重量平均分子量Mwが同一であるポリリジンよりも、わずかな架橋度を有することであると解釈される。
【0033】
これに関する一つの基準は、例えば、ポリリジンのゲル含分の比較、つまり、室温(23℃)で24時間貯蔵した場合に水に不溶性であるポリリジンの含分を試料の全量で除し、100を乗じたものの比較である。
【0034】
本発明によるポリリジンの場合、遊離リジン塩基の重合により得られたポリリジンと比較して、ゲル含分は通常20%以下、有利に10%以下、特に有利に5%以下である。
【0035】
更に、変性されたポリリジンは本発明の対象である。
【0036】
本発明による反応は通常120〜200℃、有利に130〜180℃、特に有利に150〜170℃、極めて特に有利に150〜160℃の温度で実施される。
【0037】
反応が実施される圧力はあまり重要でない。所望の反応温度よりも低い沸点を有する溶剤(E)が使用される場合、所望の反応温度を達成することができるように圧力を印加するのが合理的である。
【0038】
反応時間は所望の分子量に応じて変化し、通常は少なくとも1時間、有利に少なくとも2時間、特に有利に少なくとも4時間、極めて特に有利に少なくとも6時間、特に少なくとも8時間である。通常、反応は72時間以下後、有利に60時間以下後、特に有利に48時間以下後、極めて特に有利に36時間以下後に終結する。
【0039】
通常は、ポリリジンの所望の分子量が高いほど、反応時間を長く選択しなければならない。
【0040】
反応は、連続的に又は好ましくは不連続に実施されることができる。この場合、リジン出発物質を完全に装入してもよいし、ゆっくりと連続的に反応器に添加してもよい。後者の運転方式は「緩慢なモノマー添加(slow monomer addition)」とも呼称される。有利に、反応は、モノマーが完全に装入されかつ反応が逆混合を有する反応器中で実施されるいわゆる「ワンポット方式」で実施される。しかしながら、多段反応器系、例えば撹拌釜カスケード又は管型反応器中での反応操作も考えられる。本発明の有利な他の実施態様において、反応は混練機、押出機、強力ミキサー又はブレード型乾燥機中で実施されてよい。
【0041】
反応は場合により超音波又はマイクロ波放射線を利用して実施されてもよい。
【0042】
ポリマー形成のいずれの段階でそれぞれの反応成分をポリマーに組み込みたいかによって、個々の成分を反応操作の初めに装入することもできるし、段階的に添加することもできる。
【0043】
本発明によれば、リジンは、遊離リジン塩基と、酸、有利に2.2未満のpKa値を有する酸、特に有利に強酸との塩(A)として使用される。
【0044】
酸の例は、酢酸、ギ酸、炭酸、グリコール酸、プロピオン酸又は乳酸である。
【0045】
2.2未満のpKa値を有する酸の例は、例えばリン酸(H3PO4)、亜リン酸(H3PO3)、ピロリン酸(H427)又は硫酸水素イオン(HSO4-)である。
【0046】
強酸の例は、硫酸(H2SO4)、過塩素酸、塩酸、臭化水素酸である。
【0047】
硫酸及び塩酸、特に塩酸は極めて特に有利である。
【0048】
ここで、リジンにおける分子内塩の形成は塩形成とは見なされず、酸はリジンとは別のものでなければならない。
【0049】
更に、リジンの酸を任意の水和物として使用することができる。ここで、本発明によれば、いずれの水和物が使用されるかは重要でない。
【0050】
リジンは2個のアミノ基を有するため、リジンの量に対して、有利に50モル%を上回る、特に有利に50〜200モル%、極めて特に有利に75〜200モル%、特に100〜200モル%の酸を塩形成に使用することができる。
【0051】
場合により、それほど有利でなくとも、リジンのカルボキシ基はエステルとして、例えばC1〜C10−アルキルエステルとして、有利にC1〜C4−アルキルエステルとして存在してもよい。
【0052】
リジンはエナンチオマー的に純粋に、又はラセミ体として、有利にラセミ体として又はL−リジンの形で、特に有利にL−リジンの形で使用することができる。
【0053】
もちろん、L−リジンを別のアミノ酸(B)と共重合させることもできる。ここでは例えばグリシン、アラニン、β−アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、tert.−ロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、プロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、システイン、メチオニン、アルギニン、ヒスチジン、4−アミノ酪酸、シスチン、シトルリン、テアニン、ホモシステイン、4−ヒドロキシプロリン、アリイン又はオルニチンが挙げられる。
【0054】
ここで、アミノ酸(B)は、少なくとも1個の1級又は2級アミノ基と少なくとも1個のカルボキシル基とを有するアミノ酸である。
【0055】
更に、架橋されていない超分枝化されたポリリジンは、カルボン酸(C)又はアミン(D)ともランダム共重合又はブロック共重合することができ、その際、反応混合物中のアミノ基対カルボキシル基の全モル比が3:1〜1:3、有利に3:1〜1:2、特に有利に3:1〜1:1、極めて特に有利に2.5:1〜1.5:1であることに留意しなければならない。
【0056】
前記共重合に適当なジカルボン酸及びポリカルボン酸(C)は、通常少なくとも2個、有利に2〜4個、特に有利に2〜3個、極めて特に有利に2個のカルボキシル基を有する。有利なジカルボン酸及びポリカルボン酸(C)は2〜30個の炭素原子を含有し、かつ脂肪族、脂環式又は芳香族であってよい。
【0057】
ジカルボン酸として例えば以下のものが挙げられる:シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、コルク酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン−α,ω−ジカルボン酸、ドデカン−α,ω−ジカルボン酸、シス−及びトランス−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、シス−及びトランス−シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、シス−及びトランス−シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、シス−及びトランス−シクロペンタン−1,2−ジカルボン酸並びにシス−及びトランス−シクロペンタン−1,3−ジカルボン酸、その際、ジカルボン酸は、以下から選択される1個以上の基により置換されていてよい:
1〜C10−アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec.−ブチル、tert.−ブチル、n−ペンチル、イソ−ペンチル、sec.−ペンチル、ネオ−ペンチル、1,2−ジメチル−プロピル、イソ−アミル、n−ヘキシル、イソ−ヘキシル、sec.−ヘキシル、n−ヘプチル、イソ−ヘプチル、n−オクチル、2−エチル−ヘキシル、n−ノニル又はn−デシル、
3〜C12−シクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル及びシクロドデシル;シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルは有利である、
アルキレン基、例えばメチレン又はエチリデン及び/又は
6〜C14−アリール基、例えばフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、1−アントリル、2−アントリル、9−アントリル、1−フェナントリル、2−フェナントリル、3−フェナントリル、4−フェナントリル及び9−フェナントリル、有利にはフェニル、1−ナフチル及び2−ナフチル、特に有利にはフェニル。
【0058】
置換ジカルボン酸の例としては、以下のものが挙げられる:2−メチルマロン酸、2−エチルマロン酸、2−フェニルマロン酸、2−メチルコハク酸、2−エチルコハク酸、2−フェニルコハク酸、イタコン酸及び3,3−ジメチルグルタル酸。
【0059】
芳香族ジカルボン酸、例えばフタル酸、イソフタル酸又はテレフタル酸も同様に適当である。
【0060】
トリカルボン酸ないしテトラカルボン酸として、例えばトリメシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ブタントリカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸及びシクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸が適当である。
【0061】
成分(C)として、活性化された二重結合、例えばα,β−エチレン系不飽和二重結合を有し、かつ/又はアミノ酸(B)であるジカルボン酸又はポリカルボン酸は排除される。
【0062】
成分(C)として、カルボキシル基以外に他の官能基を有しないジカルボン酸又はポリカルボン酸は有利である。
【0063】
更に、2種以上の前記カルボン酸の混合物を使用することができる。カルボン酸はそれ自体でか又は誘導体の形で使用することができる。そのような誘導体は特に以下のものである:
− 上記カルボン酸の無水物、そのうちでも特にモノマー又はポリマーの形のもの;
− 上記カルボン酸のエステル、例えば
・モノアルキルエステル又はジアルキルエステル、有利にC1〜C4−アルキルエステル、特に有利にモノメチルエステル又はジメチルエステル、又は相応するモノエチルエステル又はジエチルエステル、また、高級アルコール、例えばn−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert.−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノールから誘導されたモノアルキルエステル及びジアルキルエステル、
・モノビニルエステル及びジビニルエステル、並びに
・混合エステル、有利にメチルエチルエステル。
【0064】
カルボン酸と1種以上のその誘導体とからの混合物、又は、1種以上のジカルボン酸の複数の異なる誘導体の混合物を使用することもできる。
【0065】
特に有利に、カルボン酸として、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸又はこれらのモノメチルエステル又はジメチルエステルが使用される。
【0066】
適当なアミン(D)は、通常少なくとも2個、有利に2〜6個、特に有利に2〜4個のアミノ基を有し、通常2〜30個のC原子を有し、かつ脂肪族、脂環式又は芳香族であってよい。アミン(D)は1級及び/又は2級アミノ基を有する。
【0067】
ジアミンとして、有利に式R1−NH−R2−NH−R3のジアミンが挙げられ、ここで、R1及びR3は相互に無関係に、水素、又は、1〜20個のC原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を表す。アルキレン基R2は直鎖であるか、又は環式であってもよい。
【0068】
有利なジアミンは、例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン(1,2−ジアミノプロパン及び1,3−ジアミノプロパン)、N−メチル−エチレンジアミン、ピペラジン、テトラメチレンジアミン(1,4−ジアミノブタン)、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、1,5−ジアミノペンタン、1,3−ジアミノ−2,2−ジエチルプロパン、1,3−ビス(メチルアミノ)−プロパン、ヘキサメチレンジアミン(1,6−ジアミノヘキサン)、ヘプタンジアミン、オクタンジアミン、ノナンジアミン、デカンジアミン、ドデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、トルイレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、フェニレンジアミン、シクロヘキシレンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ジアミノジフェニルスルホン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン、3−(プロピルアミノ)−プロピルアミン、N,N’−ビス−(3−アミノプロピル)−ピペラジン、N,N’−ビス−(3−アミノプロピル)−ピペラジン、イソホロンジアミン(IPDA)、3(ないし4)、8(ないし9)−ビス(アミノメチル)−トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン−異性体混合物、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタメチレンジアミン、2,2,4−又は2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、2−アミノプロピルシクロヘキシルアミン、3(4)−アミノメチル−1−メチルシクロヘキシルアミン、1,4−ジアミノ−4−メチルペンタン、アミン末端基を有するポリオキシアルキレンポリオール(いわゆるジェフアミン(Jeffamine))又はアミン末端基を有するポリテトラメチレングリコールである。
【0069】
ブチレンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トルイレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、フェニレンジアミン、シクロヘキシレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、アミン末端基を有するポリオキシアルキレンポリオール(いわゆるジェフアミン)又はアミン末端基を有するポリテトラメチレングリコールは有利である。
【0070】
3個以上の反応性1級及び/又は2級アミノ基を有する適当なアミンは、例えばトリス(アミノエチル)アミン、トリス(アミノプロピル)アミン、トリス(アミノヘキシル)アミン、トリスアミノヘキサン、4−アミノメチル−1,8−オクタンジアミン、トリスアミノノナン、ビス(アミノエチル)アミン、ビス(アミノプロピル)アミン、ビス(アミノブチル)アミン、ビス(アミノペンチル)アミン、ビス(アミノヘキシル)アミン、N−(2−アミノエチル)プロパンジアミン、メラミン、オリゴマージアミノジフェニルメタン(ポリマー−MDA)、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)ブタンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(3−アミノプロピル)−ブチレンジアミン、三官能性又はより高官能性のアミン末端基を有するポリオキシアルキレンポリオール(いわゆるジェフアミン)、三官能性又はより高官能性のポリエチレンイミン又は三官能性又はより高官能性のポリプロピレンイミンである。
【0071】
3個以上の反応性1級及び/又は2級アミノ基を有する有利なアミンは、トリス(アミノエチル)アミン、トリス(アミノプロピル)アミン、トリス(アミノヘキシル)アミン、トリスアミノヘキサン、4−アミノメチル−1,8−オクタンジアミン、トリスアミノノナン、ビス(アミノエチル)アミン、ビス(アミノプロピル)アミン、ビス(アミノブチル)アミン、ビス(アミノペンチル)アミン、ビス(アミノヘキシル)アミン、N−(2−アミノエチル)プロパンジアミン、メラミン又は三官能性又はより高官能性のアミン末端基を有するポリオキシアルキレンポリオール(いわゆるジェフアミン)である。
【0072】
3個以上の1級アミノ基を有するアミン、例えばトリス(アミノエチル)アミン、トリス(アミノプロピル)アミン、トリス(アミノヘキシル)アミン、トリスアミノヘキサン、4−アミノメチル−1,8−オクタンジアミン、トリスアミノノナン又は三官能性又はより高官能性のアミン末端基を有するポリオキシアルキレンポリオール(いわゆるジェフアミン)は特に有利である。
【0073】
複数のカルボン酸ないしカルボン酸誘導体の混合物、又は複数のアミンの混合物を使用することもできる。この場合、種々のカルボン酸又はアミンの官能価は同じか又は異なっていてよい。
【0074】
リジン(A)と場合により付加的なモノマー(B)〜(D)との反応は、場合により溶剤(E)中で行われてよい。この場合、一般に全ての溶剤、有利に、それぞれの出発物質に対して反応条件下で不活性である溶剤を使用することができる。有利に、有機溶剤、例えばデカン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド又はソルベントナフタ中で作業される。しかしながら、水及び1〜10個の炭素原子を有するアルカノール、特にメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール及び2−エチルヘキサノールも可能であり、かつ更に有利である。
【0075】
本発明による方法の有利な実施態様において、反応は塊状で、つまり溶剤なしで実施される。
【0076】
しかしながら、副次的な量、例えばリジンの塩に対して20質量%まで、有利に15質量%まで、特に有利に10質量%まで、極めて特に有利に5質量%の水が存在していてもよい。
【0077】
反応の際に遊離する水は、蒸留によって、場合により、反応条件下で不活性であるガスを液相の上方に導きながら、反応条件下で不活性であるガスを液相中に導きながら、場合により減圧で分離することができ、そのようにして反応平衡から除去されることができる。それによって反応も促進される。
【0078】
反応条件下で不活性であるガスは、例えば希ガス、例えばヘリウム又はアルゴン、窒素、一酸化炭素又は二酸化炭素であってよい。
【0079】
反応を促進させるために、触媒(F)又は触媒混合物が添加される。
【0080】
適当な触媒は、エステル形成又はアミド形成を触媒し、かつ以下:
(F1)3級アミン及びアミジン、
(F2)塩基性アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又は4級アンモニウム塩、及び
(F3)元素周期律表の第IIIA族〜第VIIIA族又は第IB族〜第VB族の金属のアルカノラート、アルカノアート、キレート又は有機金属化合物、
の群から選択される化合物である。
【0081】
3級アミン及びアミジン(F1)は、アミノ基上に遊離水素原子を有しておらず、窒素原子が3つの結合を介して専ら炭素原子と結合されているものである。8.9を上回る、特に有利に10.3を上回るpKb値を有する3級アミン及びアミジンは有利である。極めて特に有利に、3級アミン及びアミジンは反応温度で僅かな揮発性のみを有し、特に反応温度を上回る沸点を有する。
【0082】
第3級アミンの例は、トリオクチルアミン、トリドデシルアミン、トリベンジルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1−メチルピロール、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ピコリン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−メチルモルホリン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチルベンジルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン又は1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンである。アミジンの例は、イミダゾール、例えばN−メチルイミダゾール、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール又は1,2−ジメチルイミダゾールである。
【0083】
塩基性アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又は4級アンモニウム塩(F2)は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属又は4級アンモニウムイオンの列からのカチオンを有する水酸化物、酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、C1〜C10−アルカノラート又はC1〜C10−アルカノアートである。
【0084】
アルカリ金属は有利にLi、Na、K又はCs、特に有利にNa及びKである。アルカリ土類金属は有利にMg及びCaである。4級アンモニウムイオンは4〜32個の炭素原子を有してよく、かつアルキル、シクロアルキル、アリール又はアリールアルキルで、有利にアルキル又はアリールアルキルで、特に有利にアルキルで置換されていてよい。
【0085】
有利なC1〜C10−アルカノラートはC1〜C4−アルカノラートであり、メタノラート、エタノラート、イソプロパノラート及びn−ブタノラートは特に有利であり、メタノラート及びエタノラートは極めて特に有利であり、メタノラートは更に有利である。
【0086】
有利なC1〜C10−アルカノアートはC1〜C4−アルカノアートであり、アセタートが特に有利である。
【0087】
有利な化合物(F2)は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化セシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム又は炭酸セシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム又は酢酸セシウムであり、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが特に有利である。
【0088】
化合物(F3)は元素周期律表の第IIIA族〜第VIIIA族又は第IB族〜第VB族の金属のアルカノラート、アルカノアート、キレート又は有機金属化合物である。
【0089】
アルカノラートは、例えばC1〜C10−アルカノラート、有利にC1〜C4−アルカノラートであり、メタノラート、エタノラート、イソプロパノラート及びn−ブタノラートは特に有利であり、メタノラート及びエタノラートは極めて特に有利であり、メタノラートは更に有利である。
【0090】
アルカノアートは例えばC1〜C20−アルカノアートであり、C1〜C4−アルカノアートは有利であり、アセタートは特に有利である。
【0091】
キレートはこの場合、金属と孤立電子対を有する基とが環を形成する環式化合物である。有利なキレート化剤はアセチルアセトナートである。
【0092】
有機金属化合物は、金属−炭素の直接の結合を有する化合物である。
【0093】
有利な金属は、ホウ素、アルミニウム、錫、亜鉛、チタン、アンチモン、ジルコニウム又はビスマスである。
【0094】
有利な化合物(F3)は、チタンテトラブタノラート、チタンテトライソプロパノラート、ジルコニウムアセチルアセトナート、ジルコニウムテトラブタノラート、錫(II)−n−オクタノアート、錫(II)−2−エチルヘキサノアート、錫(II)ラウラート、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジクロリド、ジブチル錫ジアセタート、ジブチル錫ジラウラート、ジブチル錫ジマレアート、ジオクチル錫ジアセタート、アンチモントリエタノラート又はボロン酸誘導体、例えばピリジンボロン酸である。
【0095】
有利な触媒は、(F1)及び(F2)であり、化合物(F2)が特に有利である。
【0096】
化合物(A)〜(E)は本発明による反応に関して以下の比で相互に反応される:
(B)(A)に対して100モル%まで、有利に0〜75モル%、特に有利に0〜50モル%、極めて特に有利に0〜25モル%、特に0〜15モル%、特に0モル%、
(C)(A)に対して0〜50モル%、有利に0〜30モル%、特に有利に0〜25モル%、極めて特に有利に0〜10モル%、特に0〜5モル%、特に0モル%、
(D)(A)に対して0〜50モル%、有利に0〜30モル%、特に有利に0〜25モル%、極めて特に有利に0〜10モル%、特に0〜5モル%、特に0モル%、
(E)成分(A)〜(D)の合計に対して0〜200質量%、有利に0〜100質量%、特に有利に0〜75質量%、極めて特に有利に0〜50質量%、特に0〜25質量%、特に0質量%、及び
(F1)又は
(F2)リジンと塩を形成する酸に対して110モル%まで、有利に105モル%まで、特に有利に100モル%まで、通常少なくとも80モル%、ないし、
(F3)成分(A)〜(D)の合計に対して0.1〜20モル%、有利に0.1〜15モル%。
【0097】
本発明による方法により製造された高官能性の高分枝化されたポリペプチドは、この反応後に、即ち更なる変性なしに、アミノ基及び/又はカルボキシル基で末端を形成している。前記ポリペプチドは、極性溶剤、例えば水、アルコール、例えばメタノールに良好に溶解し、変性された形の場合にはエタノール、ブタノール、アルコール/水混合物、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、クロロホルム、エチレンカーボナート又はプロピレンカーボナートにも良好に溶解する。
【0098】
本発明の意味における高官能性のポリペプチドとは、少なくとも3個、有利に少なくとも6個、特に少なくとも10個の官能基を有する生成物であると解釈される。官能基の数は原則的に上限は制限されないが、極めて多数の官能基を有する生成物は、望ましくない特性、例えば高い粘度又は劣悪な溶解性を示しかねない。本発明の高官能性のポリペプチドは、一般に200個以下の官能基、有利に100個以下の官能基を有する。ここで、官能基とは、1級、2級又は3級アミノ基又はカルボキシル基であると解釈されるべきである。それに加えて、高官能性の高分枝化されたポリペプチドは、高分枝化されたポリマーの合成に関与しない他の官能基を有してよい(以下を参照されたい)。上記の他の官能基は、1級及び2級アミノ基ないし酸基に加え、更に他の官能基を有するジアミン又はポリアミンないしジカルボン酸又はポリカルボン酸により導入されることができる。
【0099】
他の有利な実施態様において、本発明によるポリペプチドは他の官能基を含有することができる。この場合、官能化は、反応の間に、つまり分子量増成を生じさせる重縮合の間に、又は重縮合反応の終了後に、得られたポリペプチドの後からの官能化により行われることができる。
【0100】
分子量増成の前又は間に、アミノ基及び/又はカルボキシル基の他に他の官能基を有する成分が添加される場合には、ランダムに分布した他の官能基、つまりアミノ基又はカルボキシル基とは異なる官能基を有するポリペプチドが得られる。
【0101】
例えば、重縮合の前又は間に、1級又は2級アミノ基又はカルボキシル基、ヒドロキシル基、メルカプト基、3級アミノ基、エーテル基、尿素基、スルホン酸基、ホスホン酸基、シラン基、シロキサン基、アリール基又は短鎖又は長鎖の、場合により部分的にフッ素化又は過フッ素化された直鎖又は分枝鎖アルキル基を有する成分(G)を添加することができる。
【0102】
官能化のために添加され得るヒドロキシル基含有成分(G)には、例えばエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ブタノールアミン、2−アミノ−1−ブタノール、2−(ブチルアミノ)エタノール、2−(シクロヘキシルアミノ)エタノール、2−(2’−アミノエトキシ)エタノール又はアンモニアの高級アルコキシル化生成物、4−ヒドロキシピペリジン、1−ヒドロキシエチルピペラジン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン又はトリス(ヒドロキシエチル)アミノメタン並びにジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ヒドロキシピバリン酸、乳酸又はグリコール酸が含まれる。
【0103】
官能化のために添加され得るメルカプト基含有成分には、例えばシステアミン、メルカプト酢酸又はメルカプトエタノールが含まれる。3級アミノ基で、高分枝化ポリペプチドは例えばジ(アミノエチル)メチルアミン、ジ(アミノプロピル)メチルアミン又はN,N−ジメチルエチレンジアミンの併用により官能化されることができる。エーテル基で、高分枝化されたポリペプチドは、アミン末端基を有するポリエーテルオール(いわゆるジェフアミン)の併用により、又はポリエーテルカルボン酸で官能化されることができる。スルホン酸基又はホスホン酸基で、高分枝化されたポリペプチドは、例えばアミノスルホン酸又はアミノホスホン酸の併用により官能化されることができる。ケイ素含有基で、高分枝化されたポリペプチドは、ヘキサメチルジシラザン、N−(3−トリメチルシリルエチル)エチレンジアミン、3−アミノプロピルトリメチルシロキサン、3−アミノプロピルトリエチルシロキサン、3−イソシアナトプロピルトリメチルシロキサン又は3−イソシアナトプロピルトリエチルシロキサンの併用により官能化されることができる。長鎖アルキル基で、高分枝化されたポリペプチドは、アルキルアミン、アルキルカルボン酸、アルキルスルホン酸又はアルキルイソシアナートの併用により官能化されることができる。
【0104】
更に、ポリペプチドは、アミノ基及びカルボキシル基を有しておらず、アミノ基又はカルボキシル基と反応する、アミノ基又はカルボキシル基とは異なる官能基を有する、わずかな量のモノマー(H)の使用によっても官能化されることができる。ここで例えば、エステル官能基を介してポリペプチドに組み込まれ得る二官能性、三官能性又はより高官能性アルコールが挙げられる。例えば、長鎖アルカンジオールの添加により疎水特性が達成され得るのに対して、ポリエチレンオキシドジオール又はポリエチレンオキシドトリオールはポリペプチドに親水特性を生じさせる。
【0105】
上記の、重縮合の前又は間に導入される、アミノ基又はカルボン酸基とは異なる官能基は、アミノ基又はカルボン酸基の合計に対して一般に0.1〜80モル%の量で、有利に1〜50モル%の量で導入される。
【0106】
本発明の更なる対象は、変性されたポリリジンであり、該ポリリジンは、利用可能なアミノ基及び/又はカルボキシル基が少なくとも部分的に更に変性されており、つまり、変性されたポリリジンの特性を変化させる試薬と反応されている。この場合、特性とは例えば溶解性、分散性、親水性、疎水性及びレオロジーである。
【0107】
ポリリジンの変性は、有利に、上記のようにその製造がリジンと酸との塩の反応に基づく本発明によるポリリジンを用いて行われる。しかしながら、例えば(A)とは別のリジン含有出発物質、例えば遊離リジン塩基の重合又は共重合により製造された、任意に得られたポリリジンの変性も考えられる。
【0108】
このような変性のために使用可能なポリリジンは、1000Daを上回る、有利に1500Daを上回る、特に有利に2000Daを上回る、極めて特に有利に2500Daを上回る、特に3000Daを上回る、特に5000Daを上回る重量平均分子量Mwを有するのが好ましい。有利に、7500Daを上回る、10000Daを上回る、15000Daを上回る、又はその上更に20000Daを上回るMwを有するポリリジンも使用可能である。
【0109】
重量平均分子量Mwに関する上限は本発明の本質ではない。例えば750000Daまで、有利に600000Daまで、特に有利に500000Daまで、極めて特に有利に400000Daまで、特に300000DaまでのMwを有するポリリジンを使用することができる。
【0110】
使用可能なポリリジンは、例えば1級、2級又は3級の遊離又はプロトン化されたアミノ基の含分を、NH2として算出して1〜21.9質量%、有利に3〜18質量%有してよい。
【0111】
使用可能なポリリジンは、例えば遊離又は脱プロトン化された酸基の含分を、COOHとして算出して、0〜30質量%、有利に0〜15質量%有してよい。
【0112】
アミノ基を含有する高官能性の高分枝化されたポリペプチドの後からの官能化は、例えば、酸基、イソシアナート基、ケト基又はアルデヒド基、又は、活性化された二重結合を含み、アミノ基又はカルボキシル基を含まない分子(I)、例えばアクリル系二重結合を含む分子の添加により達成されることができる。例えば、酸基を含有するポリペプチドは、アクリル酸又はマレイン酸又はその誘導体、例えばエステルと反応させ、場合により引き続き加水分解することにより得ることができる。
【0113】
更に、アミノ基を含有する高官能性のポリペプチドは、アルキレンオキシド(J1)、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド又はブチレンオキシドとの反応によって高官能性のポリペプチド−ポリオールに変換することができる。
【0114】
高官能性ポリペプチド中のアミノ基の官能化のためのもう1つの可能性は、アミノ基とラクトン及び/又はラクタムとを、このアミノ基で出発し、末端ヒドロキシ基を有するポリエステル鎖の形成下に少なくとも部分的に反応させることである。例示されるラクタムは、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、N−メチルカプロラクタム及びN−メチルピロリドンである。例示されるラクトンは、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン及びγ−ブチロラクトンである。
【0115】
ポリペプチド/ポリエーテル化合物の製造のもう1つの可能性は、ポリペプチドと単官能性、二官能性又はより高官能性のアミノ基又は酸基を末端に有するポリアルキレンオキシド(J2)、有利にポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド又はポリエチレンプロピレンオキシドとの反応である。
【0116】
プロトン酸との塩形成によって、又はアルキル化試薬(K)、例えばハロゲン化メチル、アルキルトシラート又はジアルキルスルファートを用いたアミノ官能基の4級化によって、高官能性の高分枝化されたポリペプチドを水溶性又は水分散性に調節することができる。
【0117】
塩形成は、本発明による超分枝化されたポリマーのアミノ基を、化学量論的に、又は化学量論的に不足で、長鎖の直鎖又は分枝鎖アルキル基、場合により置換されたシクロアルキル基又は場合により置換されたアリール基を有しかつ一般に石鹸又は界面活性剤として公知である酸性成分又はその塩と混合又は反応させることによっても実施することができる。
【0118】
この種の酸性成分は、有利に少なくとも1個、特に有利にちょうど1個のカルボキシル基、スルホン酸基、スルファート基又はホスホン酸基を有してよい。
【0119】
例えば、超分枝化されたポリマーは、アルキルカルボン酸又はアルケニルカルボン酸、例えばオクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、ヘキサデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸又はそのLi塩、Na塩、K塩、Cs塩、Ca塩又はアンモニウム塩と、アルキルスルホン酸、例えばオクタンスルホン酸、ドデカンスルホン酸、ステアリルスルホン酸又はオレイルスルホン酸又はそのLi塩、Na塩、K塩、Cs塩、Ca塩又はアンモニウム塩と、カンファースルホン酸、シクロドデシルスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−ヘキシルベンゼンスルホナート、4−オクチルベンゼンスルホナート、4−デシルベンゼンスルホナート又は4−ドデシルベンゼンスルホナート又はそのLi塩、Na塩、K塩、Cs塩、Ca塩又はアンモニウム塩と、アルキルスルファートと、例えばn−アルキルスルファート又は2級アルキルスルファートと反応することができる。この場合、例えば液晶特性を有するか又はポリマーのイオン性液体として作用し得るイオン性のポリリジン−界面活性剤−複合体が生じる。
【0120】
この場合、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基は20個まで、有利に6〜20個、特に有利に7〜20個の炭素原子を有してよい。
【0121】
疎水化を達成するために、アミン末端基を有する高官能性の高分枝化されたポリペプチドを、飽和又は不飽和長鎖カルボン酸(L)、アミン基に対して反応性の前記飽和又は不飽和長鎖カルボン酸(L)の誘導体と、又は、脂肪族又は芳香族イソシアナート、ハロゲン化トリアルキルシリル、部分的又は完全にフッ素化されたアルコール、ハロゲン化アルキル、カルボン酸又はアミンと反応させることができる。
【0122】
カルボン酸基を末端に有するポリペプチドは、長鎖アルキルアミン又は長鎖脂肪族モノアルコールとの反応により疎水化することができる。
【0123】
非イオン性の親水化を達成するために、アミン末端基を有する高官能性の高分枝化されたポリペプチドを、更にポリエチレングリコール鎖を含有する脂肪族又は芳香族イソシアナートと反応させることができる。カルボン酸基を末端に有するポリペプチドは、長鎖の有利に単官能性のポリエチレングリコール又はポリエチレングリコールアミン(ジェフアミン)との反応により非イオン性に親水化することができる。
【0124】
両親媒特性を達成するために、高官能性の高分枝化されたポリペプチドを、同時に、疎水性及び親水性の試薬を用いて、例えば単官能性、二官能性又はより高官能性の長鎖脂肪族カルボン酸、アルコール、アミン又はイソシアナートを用いて、及び、同時に、単官能性、二官能性又はより高官能性のポリエチレングリコール鎖を有するアルコール、アミン、酸又はイソシアナートを用いて変性させることもできる。
【0125】
精製のために、特に、製造の際に生じる無機塩の分離のためにも、本発明によるポリマーを例えば極性又は非極性溶剤中に溶解させることができ、その際、塩は溶解せず、濾過によりポリマーと分離することができる。ここで例示的に、エタノールへの未変性ポリリジンの溶解が挙げられ、その際、反応の際に生じる塩化カリウムが沈殿物として析出し、濾別によりポリマー溶液から分離することができた。
【0126】
本発明の対象は更に、定着剤及びチキソトロープ剤、可溶化剤としての、非水溶性化学薬品のための相間移動試薬としての、水溶性化学薬品のための相間移動試薬及び表面変性剤としての、及び印刷インキ、塗料、被覆、接着剤、シーラント、腐食防止剤、注型エラストマー及び発泡物質の製造のための成分としての、本発明による高官能性の高分枝化されたポリペプチドの使用である。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明による変性されたポリリジンの実験系を示す。
【実施例】
【0128】
実施例1:L−リジン*1HClからの縮合生成物、NaOH添加下で真空なしで150℃での反応
L−リジン*HCl(11g、60ミリモル)及び固体NaOH(2.4g、60ミリモル)を乳鉢中で粉砕し、混合物を引き続きシュレンク管中で150℃に加熱した。反応の間に、14、24、38及び48時間後に試料を採取し、水中に溶解させ、溶液を濾過し、分子量をGPC分析により測定した。GPC分析を、反応混合物から直接採取した未処理の試料について、OHpak SB−803 HQ及びSB−804 HQ(Shodex社)からのカラムの組合せを用いて、水溶液中で、炭酸水素ナトリウム0.1モル/lの添加下に、30℃で、0.5ml/分の流量で、標準物質としてポリエチレンオキシドを用いて行った。検出のために、230nmの波長で作動するUV検出器を使用した。
【0129】
【表1】

【0130】
実施例2:L−リジン*HClからの縮合生成物、KOH添加下で真空なしでの150℃での反応
L−リジン*HCl(11g、60ミリモル)及びKOH(3.3g、60ミリモル)を乳鉢中で粉砕し、混合物をシュレンク管中で150℃に加熱した。反応の間、14、24、38及び48時間後に試料を採取し、水中に溶解させ、濾過し、分子量を実施例1に記載されているように測定した(第2表を参照のこと)。
【0131】
【表2】

【0132】
実施例3:L−リジン*HClからの縮合生成物、NaOH及びジルコニウム(IV)ブタノラート添加下で真空なしで150℃での反応
L−リジン*HCl(11g、60ミリモル)及びNaOH(2.4g、60ミリモル)を乳鉢中で粉砕し、混合物をジルコニウム(IV)ブタノラート(Zr(OBu)4)1mlの添加後にシュレンク管中で150℃に加熱した。反応の間、14、24、38及び48時間後に試料を採取し、水中に溶解させ、濾過し、分子量を実施例1に記載されているようにGPCにより測定した(第3表を参照のこと)。
【0133】
【表3】

【0134】
実施例4:L−リジン*HClからの縮合生成物、KOH及びジルコニウム(IV)ブタノラート添加下で真空なしで150℃での反応
L−リジン*HCl(11g、60ミリモル)及びKOH(3.3g、60ミリモル)を乳鉢中で粉砕し、混合物をジルコニウム(IV)ブタノラート(Zr(OBu)4)1mlの添加後にシュレンク管中で150℃に加熱した。反応の間、14、24、38及び48時間後に試料を採取し、水中に溶解させ、濾過し、分子量を実施例1に記載されているようにGPCにより測定した(第4表を参照のこと)。
【0135】
【表4】

【0136】
実施例5:L−リジン*HClからの縮合生成物、NaOH及びジブチル錫ジラウラート添加下で真空なしで150℃での反応
L−リジン*HCl(11g、60ミリモル)及びNaOH(2.4g、60ミリモル)を乳鉢中で粉砕し、混合物をジブチル錫ジラウラート1mlの添加後にシュレンク管中で150℃に加熱した。反応の間、14、24、38及び48時間後に試料を採取し、水中に溶解させ、濾過し、分子量を実施例1に記載されているようにGPCにより測定した(第5表を参照のこと)。
【0137】
【表5】

【0138】
実施例6:L−リジン*HClからの縮合生成物、NaOH及びトリフェニルホスフィット添加下で真空なしで150℃での反応
L−リジン*HCl(11g、60ミリモル)及びNaOH(2.4g、60ミリモル)を乳鉢中で粉砕し、混合物をトリフェニルホスフィット1mlの添加後にシュレンク管中で150℃に加熱した。反応の間、14、24、38及び48時間後に試料を採取し、水中に溶解させ、濾過し、分子量を実施例1に記載されているようにGPCにより測定した(第6表を参照のこと)。
【0139】
【表6】

【0140】
実施例7:L−リジン*HClからの縮合生成物、NaOH添加下で真空なしで180℃での反応
L−リジン*HCl(5.5g、30ミリモル)及びNaOH(1.2g、30ミリモル)を乳鉢中で粉砕し、混合物をシュレンク管中で180℃に加熱した。24時間後、室温に冷却し、粘性の溶融物を水中に溶解させ、濾過した。実施例1によりGPCによって測定されたポリマーの分子量Mwは20600g/モルであり、多分散度は4.9であった。
【0141】
実施例8:L−リジン*HClからの縮合生成物、NaOHを用いた真空下で150℃での反応
L−リジン*HCl(11g、60ミリモル)及びNaOH(2.4、60ミリモル)を乳鉢中で粉砕し、混合物をシュレンク管中で真空下で150℃に加熱した。反応の間、14、24、38及び48時間後に試料を採取し、水中に溶解させ、濾過し、分子量を実施例1に記載されているようにGPCにより測定した(第8表を参照のこと)。
【0142】
【表7】

【0143】
実施例9:L−リジン*HClからの縮合生成物、NaOH及びジブチル錫ジラウラートを用いた真空下で150℃での反応
撹拌機、内部温度計、ガス供給管、及び、真空接続部と捕集容器とを備えた下降式冷却器を備えた4Lの四ツ口フラスコ中に、塩酸L−リジン1000g、固体の水酸化ナトリウム218g、水100g及びジブチル錫ジラウラート0.3gを添加し、該混合物を撹拌下に内部温度150℃に加熱した。反応時間が5時間経過した後、水を減圧(200ミリバール)下に留去し、その際、大部分の量の水を移した後に、温度をゆっくりと180℃に高め、圧力を10ミリバールに低下させた。8時間後、水240gを留出物として捕集した。
【0144】
高粘性ポリマーを高温で排出させ、冷却プレート上に注ぎ、次いで乳鉢中で微粉砕した。
【0145】
ガラス転移温度を測定したところ、Tg=36.8℃であった。
【0146】
分子量分布の測定のために、固体の生成物を水中に溶解させ、該溶液を濾過し、GPCにより実施例1記載の方法に従って測定した。重量平均分子量Mwは15000g/モルであり、多分散度は5.0であった。
【0147】
比較例10、触媒なしでのL−リジンの縮合(Harada, Bull. Chem. Soc. Japan 1959, 32, 1007-1008の記載と同様)
L−リジンをシュレンク管中で150℃に加熱した。48時間後、生成物を水中に溶解させ、濾過し、分子量を実施例1の記載と同様に測定した。重量平均分子量Mwは2400g/モルであり、多分散度は2.2であった。
【0148】
比較例11、Rohlfingらによる刊行物Arch. Biochem. Biophys. 130, 441 (1969)の記載による比較例
L−リジンをシュレンク管中で窒素雰囲気下で192℃に加熱した。3時間後に測定したところ分子量Mw=7400(多分散度=3.9)であり、8時間後に測定したところMw=15900(多分散度=10)であった。その後、架橋が生じ、24時間後には使用した材料のすでに70%が水に不溶であった。
【0149】
比較例12、Foxらによる刊行物(BioSystems 1976, 8, 40-44, 実施例第40頁、右欄上)の記載による比較例
L−リジン*HClをオルトリン酸(塩酸リジン0.64g当たり1ml)と一緒にシュレンク管中で195℃に加熱した。10時間後、反応生成物を水中に溶解させ、酸をNaOHで中和し、生成物をGPCにより分析した:重量平均分子量Mw=1100、多分散度=3.1。
【0150】
比較例13、Foxらによる刊行物(BioSystems 1976, 8, 40-44)の記載と同様の比較例
L−リジン*HClをオルトリン酸(塩酸リジン3.5g当たり1ml)と一緒にシュレンク管中で195℃に加熱した。10時間後、反応生成物を水中に溶解させ、酸をNaOHで中和し、生成物をGPCにより分析した:重量平均分子量Mw=4300、多分散度=1.07。
【0151】
実施例14:ポリリジンの疎水変性
撹拌機、内部温度計、ガス供給管、及び、真空接続部と捕集容器とを備えた下降式冷却器を備えた1Lの四ツ口フラスコ中に、塩酸L−リジン100g、固体の水酸化ナトリウム21.8g及び水20gを添加し、該混合物を撹拌下に内部温度160℃に加熱した。反応時間が5時間経過した後、水を減圧(200ミリバール)下に留去した。その後、ステアリン酸10gを添加し、温度を180℃に高め、圧力80ミリバールで更に水を分離しながら1時間反応させた。高粘性ポリマーを高温で排出させ、冷却プレート上に注ぎ、次いで乳鉢中で微粉砕した。
【0152】
ガラス転移温度を測定したところ、Tg=29℃であった。
【0153】
分子量分布の測定のために、固体の生成物を水中に溶解させ、該溶液を濾過し、GPCにより実施例1記載の方法に従って測定した。重量平均分子量Mwは7400g/モルであり、多分散度は3.0であった。
【0154】
実施例15:ポリリジンの疎水変性
撹拌機、内部温度計、ガス供給管、及び、真空接続部と捕集容器とを備えた下降式冷却器を備えた1Lの四ツ口フラスコ中に、塩酸L−リジン100g、固体の水酸化ナトリウム21.8g及び水20gを添加し、該混合物を撹拌下に内部温度160℃に加熱した。反応時間が5時間経過した後、水を減圧(200ミリバール)下に留去した。その後、ステアリン酸30gを添加し、温度を180℃に高め、圧力80ミリバールで更に水を分離しながら1時間反応させた。高粘性ポリマーを高温で排出させ、冷却プレート上に注ぎ、次いで乳鉢中で微粉砕した。
【0155】
ガラス転移温度を測定したところ、Tg=36℃であった。
【0156】
分子量分布の測定のために、固体の生成物を水中に溶解させ、該溶液を濾過し、GPCにより実施例1記載の方法に従って測定した。重量平均分子量Mwは24100g/モルであり、多分散度は9.3であった。
【0157】
実施例16:ポリリジンの後からの変性
実施例9による固体のポリリジン1.5gをステアリン酸7.1gと混合し、混合物をシュレンク管中で150℃に加熱した。6時間後、室温に冷却し、混合物をテトラヒドロフラン(THF)中に溶解させ、溶液を濾過した。引き続き、ポリマーをアセトン中で沈殿させ、固形物を濾別し、真空中で60℃で乾燥させた。
【0158】
【化1】

【0159】
実施例17:ポリリジンの後からの変性
実施例9による固体のポリリジン1.5gをオレイン酸6.7gと混合し、混合物をシュレンク管中で150℃に加熱した。6時間後、室温に冷却し、混合物をTHF中に溶解させ、溶液を濾過し、THFを回転蒸発器で60℃で真空中で除去した。
【0160】
【化2】

【0161】
実施例18:ポリリジンの後からの変性
実施例9による固体のポリリジン1.5gをポリエチレングリコール−カルボン酸(平均分子量750g/モル)5.5gと混合し、混合物をシュレンク管中で150℃に加熱した。6時間後、室温に冷却し、混合物を水中にとり、溶液を濾過し、透析用チューブ(MWCO 1000)を用いて低分子成分を除去した。引き続き、水を凍結乾燥プロセスにより除去した。
【0162】
【化3】

【0163】
実施例19:ポリリジンの後からの変性
実施例9による固体のポリリジン7.0gを無水酢酸50ml中に懸濁させ、混合物を6時間還流下に煮沸させた。引き続き、溶剤を回転蒸発器で真空で除去した。収率は定量的であった。
【0164】
【化4】

【0165】
【化5】

【0166】
実施例20:ポリリジンの後からの変性
実施例9による固体のポリリジン1.5gを無水トリフルオロ酢酸10ml中に懸濁させ、混合物を6時間還流下に煮沸させた。引き続き、溶剤を回転蒸発器で40℃で真空中で除去した。引き続き、ポリマーを高真空中で<0.1ミリバールで室温で乾燥させた。
【0167】
実施例21:ポリリジンの後からの変性
実施例9による固体のポリリジン1.5gを25℃で無水塩化メチレン100ml中に懸濁させた。トリエチルアミン0.3mlを添加した後、塩化トリメチルシリル6mlをゆっくりと滴下により添加した。添加後、混合物を6時間撹拌した。引き続き、混合物を水で抽出し、抽出物を捕集し、水を回転蒸発器で真空中で90℃で除去した。変性された生成物の収率は定量的であった。
【0168】
【化6】

【0169】
実施例22:輸送試薬としての変性されたポリリジン
水1リットル中のコンゴーレッド41.8mgの溶液(6×10-5モル/l)を製造した。前記の染料溶液5mlを、ピペットを用いてゆっくりと、パチンとはめるタイプの蓋付きガラス容器中に入ったクロロホルム5ml中の実施例16からのリジンポリマー50mgの溶液5mlに添加した。2つの相が形成され、その際、染料は上方の水相に存在していた。パチンとはめるタイプの蓋付きガラス容器を閉め、強力に振盪させた。再度相分離した後に、染料は下方のクロロホルム相中に存在していた。
【0170】
実験系を図1に示す:
上方の相は水相であり、下方の相は有機クロロホルム相である。
【0171】
一番左:染料を含有する水−上方、クロロホルム−下方
左から二番目の実験系:染料を含有する水−上方、クロロホルム−下方、ステアリン酸と混合し(10mg/ml)、振盪し、再度相分離させた後のもの。
【0172】
右から二番目の実験系:水、染料、クロロホルム及びステアリン酸で変性されたポリリジン(10mg/ml)、振盪し、再度相分離させた後のもの。
【0173】
一番右:クロロホルム及びステアリン酸で変性されたポリリジン(10mg/ml)。
【0174】
実施例23:ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を用いたポリリジンの錯化
実施例9による高分枝化されたポリリジン1g(8.24ミリモルNH2当量)をMilliQ水30ml中に溶解させ、溶液のpH値を0.1M HClを用いて3.5に調整した。これと並行して、ドデシル硫酸ナトリウム2.38g(SDS、8.26ミリモル)を水100ml中に溶解させ、溶液のpH値を同様に0.1M HClを用いて3.5に調整した。その後、SDS溶液をゆっくりと撹拌下にポリリジンの水溶液中に添加し、その際、反応混合物は混濁し、沈殿物が形成された。混合物を添加の終了後になお更に15分間撹拌し、その後沈殿物を濾別した。フィルター残留物を1−ブタノール50ml中に溶解させ、その後、このブタノール性溶液をゆっくりと水500ml中にpH値3.5で添加した。形成された沈殿物を再度濾別し、pH値が3.5に調節された水2000mlで十分に洗浄した。白黄色の残留物をデシケーター中でP25上で乾燥させた。収率は定量的であり、NH2基に対するポリリジンの負荷度を測定したところ95%であった。
【0175】
【化7】

【0176】
実施例24:オクチル硫酸ナトリウム(SOS)を用いたポリリジンの錯化
実施例23と同様に処理したが、但し、SDS 1.92gの代わりにオクチル硫酸ナトリウム(SOS)を使用した。
【0177】
黄白色の固形物の収率は定量的であり、NH2基に対する負荷度を測定したところ90%であった。
【0178】
【化8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋されていない超分枝化されたポリリジンの製造法において、
(A)リジンと少なくとも1種の酸との塩、
(B)場合により少なくとも1種の、リジンとは別のアミノ酸、
(C)場合により少なくとも1種のジカルボン酸又はポリカルボン酸又はその共重合性誘導体、及び
(D)場合により少なくとも1種のジアミン又はポリアミン又はその共重合性誘導体を、
(E)場合により少なくとも1種の溶剤中で
120〜200℃の温度で、
以下:
(F1)3級アミン及びアミジン、
(F2)塩基性アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又は4級アンモニウム塩、及び
(F3)元素周期律表の第IIIA族〜第VIIIA族又は第IB族〜第VB族の金属のアルカノラート、アルカノアート、キレート又は有機金属化合物、
からなる群から選択された少なくとも1種の触媒(F)の存在下に反応させることを特徴とする、架橋されていない超分枝化されたポリリジンの製造法。
【請求項2】
反応時間が1〜72時間である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
リジンの塩が塩酸塩である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
反応混合物中のアミノ基対カルボキシル基のモル比が3:1〜1:3である、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
量比が以下:
(B)(A)に対して100モル%まで、
(C)(A)に対して0〜50モル%、
(D)(A)に対して0〜50モル%、
(E)成分(A)〜(D)の合計に対して0〜200質量%、及び
(F1)又は
(F2)リジンと塩を形成する酸に対して110モル%まで、有利に105モル%まで、特に有利に100モル%まで、通常少なくとも80モル%、ないし、
(F3)成分(A)〜(D)の合計に対して0.1〜20モル%、
である、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
少なくとももう1つの成分(G)が存在し、該成分(G)が、アミノ基及び/又はカルボキシル基の他に、ヒドロキシル基、メルカプト基、3級アミノ基、エーテル基、尿素基、スルホン酸基、ホスホン酸基、シラン基、シロキサン基、アリール基又は短鎖又は長鎖の、部分的にフッ素化又は過フッ素化されていてもよいアルキル基を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
少なくとももう1つの成分(H)が存在し、該成分(H)が、アミノ基及びカルボキシル基を有しておらず、アミノ基又はカルボキシル基とは異なる官能基を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
少なくとももう1つの成分(I)が存在し、該成分(I)が、酸基、イソシアナート基、ケト基又はアルデヒド基又は活性化された二重結合を含み、アミノ基又はカルボキシル基を含まない、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
得られたポリリジンを更に少なくとも1種のアルキレンオキシド(J1)と反応させる、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
得られたポリリジンを更に、単官能性、二官能性又はより高官能性のアミノ基又は酸基を末端に有するポリアルキレンオキシド(J2)と反応させる、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
得られたポリリジンを更にアルキル化試薬(K)と反応させる、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
得られたポリリジンを更に、飽和又は不飽和長鎖カルボン酸(L)、アミン基に対して反応性の前記飽和又は不飽和長鎖カルボン酸(L)の誘導体、脂肪族又は芳香族イソシアナート、ハロゲン化トリアルキルシリル、部分的又は完全にフッ素化されたアルコール、ハロゲン化アルキル、カルボン酸又はアミンと反応させる、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
(A)リジンと少なくとも1種の酸との塩、
(B)場合により少なくとも1種の、リジンとは別のアミノ酸、
(C)場合により少なくとも1種のジカルボン酸又はポリカルボン酸又はその共重合性誘導体、及び
(D)場合により少なくとも1種のジアミン又はポリアミン又はその共重合性誘導体を、
相互に少なくとも1種の触媒の存在で反応させることにより得られる、架橋されていない超分枝化されたポリリジンにおいて、前記の架橋されていない超分枝化されたポリリジンが10000Daを上回る重量平均分子量Mwを有することを特徴とする、架橋されていない超分枝化されたポリリジン。
【請求項14】
(A)リジンと少なくとも1種の酸との塩、
(B)場合により少なくとも1種の、リジンとは別のアミノ酸、
(C)場合により少なくとも1種のジカルボン酸又はポリカルボン酸又はその共重合性誘導体、及び
(D)場合により少なくとも1種のジアミン又はポリアミン又はその共重合性誘導体を、
相互に少なくとも1種の触媒の存在で反応させることにより得られる、架橋されていない超分枝化されたポリリジンにおいて、反応を180℃未満で実施することを特徴とする、架橋されていない超分枝化されたポリリジン。
【請求項15】
50℃で90質量%を上回る水溶性を有する、請求項13又は14記載の架橋されていない超分枝化されたポリリジン。
【請求項16】
変性されたポリリジンにおいて、任意に得られたポリリジンを、酸基含有化合物、イソシアナート含有化合物、ケト基含有化合物、アルデヒド基含有化合物、活性化された二重結合を含有する化合物、アルキレンオキシド、単官能性、二官能性又はより高官能性のアミノ基又は酸基を末端に有するポリアルキレンオキシド、ラクトン、ラクタム、アルキル化試薬、飽和又は不飽和長鎖カルボン酸、アミン基に対して反応性の飽和又は不飽和長鎖カルボン酸の誘導体、脂肪族又は芳香族イソシアナート、ハロゲン化トリアルキルシリル、ハロゲン化ペルフルオロアルキル及びペルフルオロアルキルカルボン酸を含む群から選択された少なくとももう1種の化合物と反応させることを特徴とする、変性されたポリリジン。
【請求項17】
任意に得られたポリリジンを、少なくとも1種の酸性成分又はその塩と混合又は反応させ、その際、酸性成分が、カルボキシル基、スルホン酸基、スルファート基及びホスホン酸基からなる群から選択された少なくとも1つの酸性基を有し、かつ、それぞれ20個までの炭素原子を有してよい、少なくとも1個の直鎖又は分枝鎖アルキル基、置換されていてもよいシクロアルキル基及び置換されていてもよいアリール基からなる群から選択された少なくとも1個の置換基で置換されている、請求項16記載の変性されたポリリジン。
【請求項18】
定着剤及びチキソトロープ剤、可溶化剤としての、非水溶性化学薬品のための相間移動試薬としての、水溶性化学薬品のための相間移動試薬としての、表面変性剤としての、及び印刷インキ、塗料、被覆、接着剤、シーラント、腐食防止剤、注型エラストマー及び発泡物質の製造のための成分としての、請求項13から17までのいずれか1項記載の高官能性の高分枝化されたポリリジンの使用。

【図1】
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【公開番号】特開2012−255169(P2012−255169A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−189877(P2012−189877)
【出願日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【分割の表示】特願2008−541702(P2008−541702)の分割
【原出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】