説明

高密度低エネルギープラズマ気相エピタキシーの装置及びその方法

本発明は、プラズマ気相エピタキシーのための低エネルギー高密度プラズマ発生装置を含んでなる化合物半導体層の高速エピタキシャル成長のための装置及び方法である。上記方法は、堆積チャンバーにおいて1つ又は複数の金属蒸気を非金属元素と結合させるステップを含む。するとガスが高密度低エネルギープラズマ存在下で非常に活性化される。それと同時に、半導体層を基板上に形成するために金属蒸気は非常に活性化されたガスと反応され、反応生成物はプラズマにさらされた支持部と連通する加熱された基板上に堆積される。上記方法は炭素を一切含まず、10nm/sまでの成長率で、1000℃以下の基板温度の大面積シリコン基板に窒化物半導体をエピタキシャル成長するために特に適する。上記方法は、炭素を含むガスも水素を発生するガスも必要とせず、有毒性のキャリア又は反応ガスを用いないため、環境に優しい方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2006年2月28日に出願された米国暫定特許出願第60/657,208号を優先権主張としたPCT出願であり、その内容は参照することにより本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、エピタキシー成長法及びコーティング装置の分野に関するものである。より詳細には、気相又は気体の状態から直接物質を堆積させることによって単結晶を形成するエピタキシャル形成のための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
III−V族化合物半導体窒化ガリウム(GaN)とそのアルミニウム(Al)及びインジウム(In)の合金は、高周波及び高出力のどちらの電子的使用においても理想的な物質である(参照することにより本件に組み込まれるBrown et al.によるSolid−State El.46,1535(2002)を例として参照)。また、これらの物質は、短波長発光ダイオード及びレーザーの使用にも適する(参照することにより本件に組み込まれるNakamuraによるAnnu.Rev Mater.Sci.28,125(1998);NakamuraによるScience 281,956(1998);及びSmith et al.によるJ.Appl.Phys.95,8247(2004)を例として参照)。
【0004】
しかし、上記物質の主な欠点の一つは、バルク形態に成長する上で必要となる高温及び高圧という厳しい状況下に置かれるため、大きな単結晶ができないことである。大きなGaN基板を合成する唯一の方法は、厚い自立GaN層をサファイアや炭化ケイ素(SiC)等の支持基板上に成長させ、のちに基板を取り除くというヘテロエピタキシー法のみである。基板を取り除く工程を行わずに処理を行う装置においては、より薄いヘテロエピタキシャルIII−V窒化層を用いることも可能である。
【0005】
GaNのヘテロエピタキシャル成長に用いられる全ての技術において共通する問題は、成長層において初期に存在する高転位密度である。この問題は、GaNやサファイア、炭化ケイ素及びシリコン等の使用可能な基板物質の格子定数が異なることに起因する(参照することにより本件に組み込まれるDadger et al.によるPhys.Stat.Sol.(c)0,1583(2003)を例として参照)。ミスフィット転位が高密度であると、ヘテロエピタキシャルGaN層は貫通転位(TD)においても高密度を有する傾向があり、それが活性層を貫通するたびにデバイス性能を低下させる。TD密度をデバイス製造における許容範囲内の数値に抑えるために、様々な形態のバッファ層成長やマスク使用及びマスク不使用の場合における横方向成長等の多くの方法が考案された(参照することにより本件に組み込まれるDavis et al.によるProc.IEEE 90,993(2002)を例として参照)。
【0006】
エピタキシャルIII−V族窒化層を成長させるために用いられる主な方法は、ハイドライド気相エピタキシー(HVPE)、有機金属気相成長法(MOCVD)及び分子線エピタキシー(MBE)である。HVPEでは原料として純金属が用いられ、気体ハロゲンとして反応領域に輸送され、一般的にはNH3等の窒素含有気体と反応され、通常1000℃以上に加熱された基板上にエピタキシャル層を形成する。HVPEには、最高で100μm/hにまで至る非常に高い成長率を有するという利点がある(参照することにより本件に組み込まれるNikolaev et al.による米国特許第6,472,300を例として参照)。その高い成長率から、HVPEは数十ミクロンの厚さの層を成長させるために主に用いられ、とりわけ、後のMOCVD又はMBE工程で使用される基板となる自立層の生成に用いられる。
【0007】
しかし、HVPEを用いるとシャープな界面の低率及び制御が比較的得られにくく、異なる反応炉の領域間において基板の機械的な動作が必要となる場合もある(参照することにより本件に組み込まれるTsvetkov et al.による米国特許第6706119号を例として参照)。さらに、反応帯の領域において水素ガスが存在すると、特に例えばマグネシウム不純物等によって高p型ドーピングを得るためには、不活性ガス雰囲気において基板にアニールを施すことが必要となる(参照することにより本件に組み込まれるNikolaev et al.による米国特許第6472300号を例として参照)。
【0008】
MOCVD(又は「有機金属気相エピタキシー」の略称であるMOVPE)は、有機金属前駆体を、例えば窒化物成長の場合にはアンモニア等の、アニオンを含有するその他の反応ガスと共に用いるCVD技術である。高価な前駆ガスを必要とし、たった数μm/hという比較的低い成長率しか有さない点は、MOCVDの大きな不利点である。さらに、GaNヘテロエピタキシーにおいて、通常バッファ層は、1000℃以上の温度下で活性層が積層する前に、低い基板温度でサファイア、SiC又はSi上に成長されなければならない(参照することにより本件に組み込まれるPeczalski et al.による米国特許第6818061号を例として参照)。しかしながら、MOCVDはデバイス製造に適した活性層構造を成長させるために最もよく用いられる技術である(参照することにより本件に組み込まれるWang et al.によるAppl.Phys.Lett.74,3531(1999)及びNakamuraによるScience 281,956(1998)を例として参照)。
【0009】
一般的な基板とGaNとの熱膨張係数における大差は、堆積時の高い基板温度と相まって、クラック(亀裂)のないエピタキシャル層を形成する上で大きな障害となる。クラックの回避には、かなり複雑な層間構成が必要になると推測される(参照することで本件に組み込まれるBlasing et al.によるAppl.Phys.Lett.81,2722(2002)を例として参照)。HVPE及びMOCVDは、共に大気圧又は多少減圧された条件下でも作用する成長技術である。層の均一性はほとんどのところ、反応炉の形状及びガスフローによって決まる。
【0010】
その一方で、MBEにおける圧力は高真空又は超高真空の範囲であるため、平均自由行程は反応炉の範囲を遥かに凌ぐ。金属は、いわゆるエフュージョンセルにおいて気化され、分子線又は原子線は該セルから加熱された基板の方向に、気相内で散乱することなく進行する。窒化物成長では、活性窒素を生成する窒素源を用いる必要がある。活性化は、通常窒素分子のプラズマ励起によって得ることができる。窒素活性化のために、遠隔の電子サイクロトロン共鳴(ECR)のプラズマ源を用いて窒化ガリウム層をエピタキシャル成長させる装置は、参照することにより本件に組み込まれるMoustakas et al.による米国特許第5633192号に一例として記載されている。通常ガリウムはエフュージョンセルから供給されるため、MBEにおいてはMOCVDで一般的に用いられるような高価な有機金属の前駆体を必要としない。その上、MBEは層構成及び界面の急峻性に対して優れた制御が可能である(参照することにより本件に組み込まれるElsass etal.によるJpn.J.Appl.Phys.39,L1023(2000)を例として参照)。しかし、複雑な装置を要し、約1μm/hという低成長率しか得られないゆえに、半導体へテロ構造の大量生産に適した技術であるとは考えられていない。
【0011】
窒化物半導体の大量生産(参照することにより本件に組み込まれるvon Kanel et al.による米国特許第6454855号を例として参照)に潜在的に適した方法とは、低エネルギープラズマ化学気相成長法(LEPECVD)である。窒素活性化がリモートプラズマ源において生じるプラズマアシストMBEとは対照的に、LEPECVDでは高密度の低エネルギープラズマは基板の表面と直接的に接触する。低エネルギープラズマはDCアーク放電によって生成され、これによって誘起金属前駆体及び窒素が活性化される(参照することにより本件に組み込まれるvon Kanel et al.による米国特許第6918352号を例として参照)。潜在的には、LEPECVDは成長率のダイナミックレンジに対して最適な制御を行うと同時に、HVPEと同様の成長率(数十μm/h)を得ることが可能であるため、優れた界面品質が得られる。さらに、反応前駆体の活性化は、熱的にというよりはむしろプラズマによって得られるので、この方法は低い基板温度でも作用すると推測される。LEPECVDにおいて用いられるDCプラズマ源は、300mmまでの基板に対応可能であることが分かっている(参照することにより本件に組み込まれるvon Kanel et al.によるWO2006/000846を例として参照)。
【0012】
「LEPECVD」という用語はDCアーク放電に関連して作られた造語であるが(参照することにより本件に組み込まれるRosenblad et al.によるSci.Technol.A 16,2785(1998)を例として参照)、エピタキシーに適した低エネルギープラズマを生成する方法はDCアーク放電のみではない。従来技術によると、エピタキシャル成長に適した十分に低いエネルギーのイオンは、電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマ源によってもまた生成される(参照することで本件に組み込まれるHeung−Sik Tae et al.によるAppl.Phys.Lett.64,1021(1994)を例として参照)。大面積基板にプラズマ助長CVDによるエピタキシャル成長を行うのに潜在的に適したECRプラズマ源は、参照することにより本件に組み込まれるKatsuya Watanabeによる米国特許第5580420号に例として記載されている。しかしながら、産業半導体処理においては、多大なECR源がエピタキシーよりもむしろエッチングに使用されており、III−V族窒化物の場合には非常に高いエッチ率が得られる(参照することにより本件に組み込まれるVartuli et al.によるAppl.Phys.Lett.69,1426(1996)を例として参照)。
【0013】
さらにその他の高密度で低エネルギーのプラズマ源としては、誘導結合プラズマ(ICP)源がある。このプラズマ源は、大きなウエハー径のスケーリングがより容易であったり、低価格であったりと、ECR源よりも多くの利点を持つ。ICP源の様々な種類を検討される場合、参照することで本件に組み込まれるHopwoodによるPlasma Source Sci.Technol.1,109(1992)を参照して頂きたい。プラズマ処理のために用いられる最も一般的な改良機器は、プラズマベッセルの周りにコイルが巻かれたヘリカル誘導結合器(カプラ)(参照することにより本件に組み込まれるSteinberg et al.による米国特許第4368092号を例として参照)及び螺旋状の平コイルを用いたスパイラル誘導結合器(参照することにより本件に組み込まれるOgleによる米国特許第4948458号を例として参照)である。スパイラル結合器を基にしたプラズマ源は、より高いプラズマ均一性を有し、より大きな寸法の基板のスケーリングを円滑にする等の利点がある(参照することにより本件に組み込まれるCollison et al.によるJ.Vac.Sci.Technol.A16,100(1998)を例として参照)。
【0014】
通常ICP源は13.56MHzの周波数で稼動されるが、より低い周波数で稼動することによって容量結合が減少し、イオンエネルギーがさらに低くなることが判明した(参照することにより本件に組み込まれるMa et al.による米国特許第5783101号を例として参照)。
【0015】
通常ECR源及びICP源のどちらも、エッチングに用いられる。ICP源を用いてもGaNの非常に高いエッチ率が得られる(参照することにより本件に組み込まれるShul et al.によるAppl.Phys.Lett.69,1119(1996)を例として参照)。しかしながら、半導体品質の物質のエピタキシャル成長にこれらのプラズマ源が用いられることは非常に稀である。近年では、シリコンのイオンプレーティングエピタキシャル成長に、電気的に遮へいされたICP源を使用することが提案されているが、この方法には、堆積チャンバーの中に金属製のコリメータを必要とするという明白な不利点がある(参照することにより本件に組み込まれるJohnsonによる米国特許第6811611号を例として参照)。
【0016】
ICP源は、例えばリモートプラズマが通常使用される熱CVDに用いられるチャンバー等の処理チャンバーを効率的に洗浄するため用いられることも可能である(参照することにより本件に組み込まれるStegerによる米国特許第5788799号を例として参照)。半導体処理では可能な限り粒子汚染を低いレベルに抑える必要があるため、チャンバー洗浄は特に重要である。ICP源等のプラズマ源が具備された処理チャンバーは、効率的な洗浄のために付加的なリモートソース(remote source)を備える必要はもちろんない(参照することにより本件に組み込まれるNemoto et al.による米国特許第6992011号を例として参照)。
【0017】
プラズマ化学気相成長において低エネルギープラズマを生成するためにいかなるプラズマ源が用いられたとしても、III−V族化合物半導体成長に適用されると、MOCVDよりも遥かに広範囲において成長層に炭素混入が生じる可能性が高い。炭素混入は、MOCVDやLEPECVDにおいて上記したように、有機前駆体が使用されることに起因する(参照することにより本件に組み込まれるvon Kanel et al.による米国特許第645855号を例として参照)。意図的ではない炭素取り込みは、LEPECVDにおいて前駆体をクラッキングするために用いられる強度のプラズマによって大幅に高められていると推測され、炭素はドーパントとして作用するため、場合によってはデバイス応用に適用できない程度にまで増大されることもある(参照することにより本件に組み込まれるGreen et al.によるJ.Appl.Phys.95,8456(2004)を例として参照)。
【0018】
本発明は、上記で説明したような炭素及び水素混入、高い基板温度、そして低堆積率等の先行技術の欠点を回避することを目的とする。先行技術におけるもう一つの主要な制限は、比較的小さい寸法(製造時で2インチ、サファイア基板で実験したところ最大6インチ)のウエハーを使用することであるが、300mm(又はそれ以上)までシリコンウエハーのスケーリングを大きくすることも本発明の目的の一つとする。
【発明の開示】
【0019】
本発明は、半導体支持基板上に化合物半導体層を迅速にエピタキシャル成長させるための新規の低エネルギープラズマ装置及び方法である。本発明は、堆積処理の最中にも構成物質となる試薬やその濃度を制御可能に変えられるため、多種多様な化合物層の成長に用いることが可能である。該方法の第1ステップにおいて、1つ又は複数の金属が気化され、金属蒸気は装置の堆積チャンバーの中に注入される。気化は、例えば堆積チャンバーの内部と連通するエフュージョンセル又はスパッタターゲットを用いて行うことができる。(例えばガリウム等の)金属蒸気をチャンバー内に注入する際に、非金属性で通常非反応性の非毒性ガス(N2の窒素)が同時にチャンバー内に注入される。これとほぼ同時に行われる第2ステップでは、(例えば電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマ、誘導結合プラズマ(ICP)又はDCアーク放電プラズマ等の)いくつかあるプラズマ発生メカニズムのうちのいずれかを用いて、堆積チャンバー内で高密度低エネルギープラズマが発生、維持される。非金属性気体はプラズマに完全にさらされると非常に活性化し、金属蒸気と反応してプラズマにおいて支持及び加熱された半導体基板上にエピタキシャル半導体層(例えばGaN)を形成する。本発明では有機前駆体の試薬は用いられないため炭素が生じることはなく、大面積のシリコン基板上に半導体層を生成する用途に特に適する。さらに、有毒性のキャリア又は試薬気体を用いない場合には、本発明の方法は環境に非常に優しくもある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、III−V半導体、とりわけGaN、GaAINやGaInN等のIII族窒化物のエピタキシャル成長のための装置及び方法を包含する装置である。本装置は、半導体支持部上へ半導体層をプラズマ気相エピタキシーするための低エネルギー高密度プラズマを生成し、本装置は、高周波電力増幅器、紫・青・白の発光ダイオード及び青色と紫外半導体レーザーに適したヘテロ構造の安価な製造を可能にする。
【0021】
図1を参照すると、装置10は排気管24に接続されたターボ分子ポンプ等の真空ポンプ装置(図示なし)と連通するチャンバー内部21を有する真空堆積チャンバー20を含んでなる。堆積チャンバー20及びポンプ装置は、半導体の超清浄処理に対応するものが選択される。例えば、処理ガスが使用されない場合でも超高真空の効果を有する装置は適合することが分かっている。アルゴン、窒素等の不活性で通常非反応性のガスや処理に適するその他の付加的なガスは、ガス注入口22を介して堆積チャンバー20に供給される。窒素は、N2の構造では通常非反応性ガスである。しかし、本装置のプラズマ場にさらされると、N2窒素は原子構造であるNに変換され、非常に活性化し反応性が強くなる。堆積チャンバー20には誘電体窓28が設けられ、該窓から高周波がスパイラルコイルアセンブリ30によってチャンバー内部21に結合される。スパイラルコイルアセンブリ30は、インピーダンス整合回路網32及び高周波発生器34と接続される。スパイラルコイルから発せられる高周波は、チャンバー20の内部21において高密度低エネルギープラズマを励起する。例えば、ドイツ、ブッパータルのJE Plasma Consult GmbHによる誘導結合プラズマ源ICP−P200は、10-4から10-2mbarの間の圧力範囲で最大1kWの電力で稼動されると、20eV以下のアルゴン及び窒素イオンエネルギーを生むことが分かっている。
【0022】
堆積アセンブリ50は、絶縁体26によって堆積チャンバー20とは電気的に絶縁される。1つ又は複数の基板支持部54は、抵抗ヒーターやランプヒーター等の加熱手段によって裏側から加熱される。基板支持部54は、誘電体窓28の近傍のプラズマ密度が最高値の域から数表皮厚さ(通常5〜20)だけ離れて配置される。本発明では、通常の作動圧において表皮厚さは約1cmとされる。堆積アセンブリ50は、接地されるかもしくは電気的に浮遊した状態で配置される。また、堆積アセンブリ50は、DC自己バイアスを生じさせるべく、DCバイアス電源に接続されるか、インピーダンス整合回路網56を介して高周波発生器58に結合されてもよい。これらの手段は、基板54の電位をプラズマの電位に関連して制御するために行われる。このようにすることで、基板54の表面に対して垂直な電場部成分を、プラズマ36を制御するパラメーターとは独立して制御することが可能となる。このように、基板に衝突するイオンのエネルギーをエピタキシャル成長に最適な条件に調整することが可能となる。
【0023】
さらに、堆積チャンバー20には1つ又は複数の金属蒸気放出部40(開示される具体例におけるエフュージョンセル)が備わり、そこから気化されたガリウム、インジウム、アルミニウム等の金属が蒸気となってチャンバー内部21に注入される。これらの金属に関しては、分子線エピタキシーにおける通常の気化速度よりも早い速度が得られるように、分子線エピタキシー(MBE)で用いられる標準的なエフュージョンセルの温度は容易に調節が可能である。例えば、ガリウムセル温度を200℃上げることで、MBEで通常では毎秒1単分子層であるガリウム・ヒ素の成長率を100倍にするのに適していることが分かっている。MBEと同様に、高速シャッター42は蒸気放出部40からのフラックスを完全に遮断するように制御可能である。
【0024】
エピタキシャル堆積において、誘導コイル30に加えられる高周波電力及びチャンバー20におけるガス圧は、加熱された基板54が低エネルギープラズマに完全にさらされるように選択される。通常、チャンバー20におけるガス圧は10-4mbarから1.0mbarの範囲であり、最も一般的には10-2から10-1mbarの範囲であることが多い。このような条件下で、活性窒素とエフュージョンセル40から放出された金属蒸気は、拡散輸送によってプラズマを移動する。そして窒素と反応された金属原子は、加熱された基板54上にエピタキシャル窒化物層を形成する。
【0025】
次に図2を参照すると、低エネルギープラズマ36にさらされた基板54上の成長膜55がより詳細に示されている。プラズマにおけるイオン密度は、誘電体窓28から基板54へ指数関数的に減少する。例としてプラズマ源「ICP−P200」を使用した場合、10sccmのガスフローで10-1mbarの窒素圧及び1000Wのrf電力を用いると、窒素プラズマにおけるイオン密度は誘電体窓28から約10cm下方に配置された基板で1011cm-3をさらに超過する。約10-1mbar以下の窒素分圧が用いられる場合には、窒素ガスと共にアルゴンを制御された流量でガス注入口22から真空チャンバー20に注入して、ガス圧の総計を例えば約10-1mbarに固定した方がイオンエネルギーを低く保つには都合よい。
【0026】
MOCVDでは基板温度は通常1000℃又はそれ以上であるところ、高密度プラズマ36における反応種の効率的な活性化及び低エネルギーイオンによる基板54への強い衝撃によって、基板温度を大幅に低下させることも可能となる。これによって、通常用いられる基板(サファイア、炭化ケイ素、シリコン)の異なる熱膨張係数による層クラッキングの問題は、大幅に削減されるものと推測される。
【0027】
次に図3を参照すると、プラズマ36を制限し密度及び均一性を増すために、チャンバーにコイル又は永久磁石70が選択的に備えられた真空チャンバー20の一部がより詳細に示されている。これらコイル又は永久磁石によって形成された磁場は、プラズマ形成を補助し、約10-3から10-2テスラのほんの微弱な磁場でも、有益な効果をもたらすのに十分であると考えられる。
【0028】
本発明の好適な具体案では、エピタキシャル窒化物半導体成長において反応ガスを全く使用しない。付加的なセル40aには、マグネシウム、亜鉛及びアクセプタ不純物として作用するその他の類似金属等の好ましくは元素形態で用いられるドーピング種が収容されてもよい。同様に、シリコン等のドナーとして作用するドーパントも付加的なセル40aに収容されてもよい。このような放出部40a(エフュージョンセル)には、ドーパント蒸気の急速且つ完全な遮断を可能にする高速シャッター42も備えられる。300mm、潜在的にはそれ以上のウエハーのスケーリングを可能にするための、基板支持部54の素材の好適な選択肢としてはシリコンが好ましい。しかし、最先端技術において用いられるその他の基板もまた、本発明による新技術において同様に使用可能である。
【0029】
金属気化のためのエフュージョンセルとエピタキシャル層成長に適した高密度低エネルギープラズマを組み合わせることは、いまだかつて提案されていない。この新たな方法を低エネルギープラズマ気相成長法(LEPEVPE)と呼ぶこととする。LEPEVPEは、DCプラズマ放電及び反応ガスの前駆体が用いられるLEPECVDを含め、従来のあらゆる方法と全く異なる条件で稼動される。
【0030】
本発明のある具体案では、内部の高温の金属との熱反応や連結管から堆積チャンバーへの拡散輸送をなくすために、蒸気放出部300の領域は個別に作動される(図6、320参照)。本発明の好適な具体案では、1つの気化された金属につき1つ以上の蒸気放出部40、40a(エフュージョンセル)が用いられる。各セルが異なる温度で稼動できるため、1つのセルから別のセルへ切り替えることによって簡単に成長率やドーピング密度を急激に変更することが可能となる。
【0031】
本発明の別の具体案では、気体として適用されるのが好ましいドーピング元素については、付加的なガス管23を用いてドーピングガスは堆積チャンバーに注入される。n型ドーピングのためのシラン等のドーピングガスは、アルゴン等の非反応性ガスに希釈されることが好ましい。ドーピングのダイナミックレンジは、1つのドーピングガスにつき1つ以上のガス管を用いることで増加可能となる。固体ソースのみがドーピングとして蒸気放出部40aにおいて用いられる好適な具体案では、本発明による方法は水素を用いずに行われる。水素を用いない方法は熱アニールによるドーパント活性化を必要としないため、この具体案は特にpドープされたGaN層に望ましい。また、本件の方法は炭素を含む前駆体ガスを必要としないため、炭素を用いることはない。
【0032】
図1に開示される本発明の好適な具体案において、基板支持部54のアセンブリは上方に向けられている。このような構造によって、半導体処理に通常用いられるもので、ウエハーの処理及び堆積アセンブリ又は基板ホルダ50の設計が容易とする。本発明によると、LEPEVPEは基板支持部54の表面に高密度低エネルギープラズマが直接接触することを特徴とする。よって、基板支持部54の表面は、低エネルギーイオンの激しい衝突を受けることとなり、イオンのエネルギーは基板バイアスを適切に選択することによって調節される。この点、通常ラジカルのみを生成し、基板表面において非常に低いイオン密度を有するリモートプラズマ源を用いたプラズマ処理方法と対照的である。低エネルギーイオンによる激しい基板衝突は、500℃という低い基板温度及び5nm/s以上の非常に高い成長率でデバイス品質半導体層のエピタキシャル成長を行う上で有益であることが分かっている(参照することにより本件に組み込まれるvon Kanel et al.によるAppl.Phys.Lett.80,2922(2002)を例として参照)。本発明によると、LEPEVPEと最先端のウエハー処理器具(図示なし)を組み合わせることで、非常に高いスループットが期待できる。
【0033】
本発明によると、装置10は、特殊処理された単結晶基板54上にエピタキシャルIII−V半導体、特にIII族窒化物を成長させるために用いられてもよい。基板54の可能な表面処理方法には、最先端の化学プレ洗浄(chemical pre−cleans)、その場熱洗浄(in situ thermal cleans)又はプラズマ洗浄と、それに続いて行われるエピタキシャル窒化物半導体成長に適した酸化物、炭化物又は低温窒化物等のエピタキシャルテンプレートのその場形成が含まれる場合もある。
【0034】
次に、図4には本件のエピタキシー装置における装置10が開示されており、成長物質が堆積する基板支持部54が、チャンバー内部21において今度は下方に向けられた基板ホルダ50のテーブルに取り付けられている。この構造は、ウエハー処理システム及び基板ホルダ50の設計がより複雑となる代わりに、粒子汚染にまつわる問題を削減できるという特徴を有する。上記されるように、堆積チャンバー20には、プラズマ形成を補助するコイル又は永久磁石が選択的に具備されてもよく、同様にエフュージョンセル40等が備えられてもよい。
【0035】
次に、図5には本発明の別の具体案が開示されており、堆積チャンバー20における堆積アセンブリ50に取り付けられる基板支持部54は、ここでも下方に向けられている。堆積チャンバー20はプラズマ形成を補助するコイル又は永久磁石が選択的に具備されてもよい(図3を参照)。
【0036】
この具体案において、金属元素蒸気は、スパッタターゲット62を保持する水冷スパッタ源60によってプラズマに供給される。スパッタターゲット60は、同心円状又は環状の形態でIPC源の誘電体窓28の周囲を囲むように配置されることが望ましい。スパッタターゲットは、インピーダンス整合回路64を介して高周波電源66に接続され、これによって電源66は、ICPコイル30に電力供給するための発生器34で用いられる周波数と好適には大幅に異なる周波数で交流電圧を供給する。これによって、2種の電源34と66の間で望ましくない干渉が生じることが軽減される。本発明の別の具体案では、スパッタ源60はDC電源によって電力供給される。約0.2×10−2mbar mの一般的な圧力−距離(pressures−distance)の製品の場合、スパッタ源を用いて電子グレード半導体物質を成長させることが可能なように、基板に達するスパッタ粒子はほぼ完全に熱化されていることが分かっている(参照することにより本件に組み込まれるSutter et al.によるAppl.Phys.Lett.67,3954(1995)を例として参照)。
【0037】
エピタキシャル層の成長より前にスパッタ源60の洗浄を行うために、チャンバー20には可動式のシャッターアセンブリ82が選択的に備えられることも可能であり、シャッター板80が基板54の下方近辺に配置されることによって、プレスパッタの際にスパッタ粒子が基板に達するのを防ぐことができる。
【0038】
本発明の好適な具体案では、エピタキシャル窒化物半導体成長において反応ガスは全く用いられない。付加的なスパッタターゲット60aには、アクセプタ不純物として作用するマグネシウム、亜鉛やその類似金属等の元素形態で用いられるのが好ましいドーピング種が含まれる場合もある。同様に、シリコン等のドナーとして作用するドーパントも、付加的なスパッタターゲット60aから供給されてもよい。また別の具体案においては、各ターゲット60の間で二次汚染が生じるのを防ぐために、各スパッタガン62にはシャッター(図示なし)が選択的に備えられてもよい。
【0039】
エピタキシャル成長の間、誘導コイル30に供給される高周波電力及びチャンバー20内のガス圧は、加熱された基板54が低エネルギープラズマに完全にさらされるように選択される。通常、チャンバー20内のガス圧は10-3mbarから10-1mbarの範囲であり、最も一般的には10-2から10-1mbarの範囲である。このような条件下で、活性窒素とスパッタガン62から注入される金属蒸気は拡散輸送によってプラズマを移動し、上記されるように工程は進められる。
【0040】
本発明の別の具体案では、スパッタガン62はエフュージョンセル40と組み合わされてもよく、その場合この2つのソースは誘電体窓28の周囲に対称的に配置される。元素形態の反応物質及びドーパントを気化させるためのエフュージョンセル及びスパッタガンを、エピタキシャル層成長に適した高密度低エネルギープラズマと組み合わせることは、これまで提案されたことはない。本発明の好適な具体案では、1つの気化金属につき1つ以上のスパッタガン62及びエフュージョンセル40が用いられる。それぞれのソースは、金属蒸気の異なるフラックスを運ぶように作動することができ、これにより1つのソースから別のソースに切り替えることによって、成長率又はドーピング密度の急激な変化を容易に可能にする。また別の具体案では、エフュージョンセル40及びスパッタガン62は、電子線気化器(electron beam evaporator)に代替もしくは補完されてもよい。電子線気化器は、エフュージョンセル40では大きなフラックスを得るのが困難な低い蒸気圧の元素を気化させるのに特に適する。
【0041】
次に図6には、本発明の別の具体案が示されており、装置10は熱陰極130、不活性ガス注入口120及び統合されたもしくは個別の陽極110からなるアセンブリを備えたブロードエリア型プラズマ源(broad area plasma source)100を有する。基板に衝突するイオンは約20V以下の電圧であることを踏まえて、陰極130と陽極110の間の電圧差は30V以下であることが望ましい。アークプラズマ140が点火されるプラズマ源100は、堆積チャンバー200に取り付けられる。ロードロック220が備わってなる堆積チャンバー200は、例えばバルブ205を介してチャンバー200と接続されたターボ分子ポンプ210等によって排気され、基板加熱アセンブリ230を含んでなる。窒素等の不活性ガスや水素等の付加的なガスを注入するためのガス管240は、堆積チャンバーに接続される。コイル250によって形成される閉じ込め磁界(confining magnetic field)を変えることによって、プラズマ密度を急激に変化させることもできる。
【0042】
さらに、このチャンバーには、ガリウム、インジウムやアルミニウム等の金属が気化されるエフュージョンセル300が備わってなる。この付加的なエフュージョンセル300には、アクセプタ不純物として作用するマグネシウム、亜鉛や類似金属等の元素形態で用いられるのが好ましいとされるドーピング種が含まれてもよい。エフュージョンセルには、金属蒸気を完全に遮断するためのシャッター310が備わってなる。
【0043】
基板400の加熱されたアセンブリは、プラズマ源においてアーク放電によって生成され、透過性陽極110を通過して堆積チャンバーに広がる低エネルギープラズマに完全にさらされる。アーク放電は、堆積チャンバー200における熱陰極130によって持続され、堆積チャンバーにおいて、最も典型的には10-2mbarの範囲だが、10-4mbarから最低10-1mbarという幅広い範囲の圧力で操作可能である。堆積チャンバー内を移動するプラズマ活性窒素は、金属蒸気と反応して基板400上にエピタキシャル窒化物膜を形成する。
【0044】
通常エフュージョンセルは、例えば分子線エピタキシー装置等における超高真空において金属を気化させるために用いられる。しかし、本件においては、拡散的に輸送が行われる約10-2mbarの典型圧力で生成される高密度低エネルギープラズマに金属蒸気を導入するために用いられる。このように、LEPEVPEはその他の方法とは全く異なる条件下で稼動される方法であるといえる。本発明の具体案の1つでは、内部の加熱された金属と熱反応が生じるのを防ぐと共に、接続管から堆積チャンバーまでの拡散輸送を防ぐように、エフュージョンセル300の領域は差動排気320される。
【0045】
本発明の好適な具体案では、1つの気化金属につき1つ以上のエフュージョンセル300が用いられる。それぞれのセルが異なる温度で稼動されることによって、1つのセルから別のセルに切り替えることで成長率又はドーピング密度を急激に変えることが容易に可能となる。さらに、コイル250によって形成される磁場を変えることによって生じるプラズマ密度の変化によって、成長率のダイナミックレンジをさらに高めることができる。
【0046】
本発明のまた別の具体案では、ガス状で用いられるのが好ましいドーピング元素については、堆積チャンバーに注入される際に付加的なガス管240aが用いられる。例えばn型ドーピングに用いられるシラン等のドーピングガスは、アルゴン等の不活性ガスに希釈されることが好ましい。ドーピングのダイナミックレンジは、1つのドーピングガスにつき1つ以上のガス管を用いることで高めることができる。
【0047】
本発明による方法は、炭素含有の前駆体ガスを全く必要としないため炭素は用いられない。好適な具体案においては水素も使用せずに稼動される。水素を使用しない方法は熱アニールによるドーパントの活性化を必要としないため、この具体案はpドープGaN層にとりわけ望ましい。
【0048】
LEPEVPEはプラズマ活性法であるので、エピ層及び基板の異なる熱膨張係数によって生じる引張応力が、成長温度から冷却される際に望ましくないクラック形成にしばしばつながる競争技術よりも低い基板温度で稼動されることができる。
【0049】
添付A 下記の文書は参照として本件に組み込まれ、本件は下記文献に依存する。
米国特許文献
6472300 10/2002 Nikolaev et al.
6706119 3/2004 Tsvetkov et al.
6818061 11/2004 Peczalski et al.
5633192 5/1997 Moustakas et al.
6454855 9/2002 von Kanel et al.
6918352 7/2005 von Kanel et al.
5580420 12/1996 Watanabe et al.
4368092 1/1983 Steinberg et al.
4948458 8/1990 Ogle
6811611 11/2004 Johnson
5788799 8/1998 Sterger et al.

その他の特許文献
WO2006/000846 1/2006 von Kanel et al.

追加出版物

J.D.Brown et al.,「シリコン(111)基板上の100mmGaNに製造されたAlGaN/GaN HFETs」, Solid-State Electronics, VOl. 46, No. 10 (October 2002) pp. 1535-1539.

S. Nakamura,「InGaNベースのレーザーダイオード」, Annual Reviews on Material Science, Vol. 28 (1998) pp. 125-152.

S. Nakamura,「InGaNベースの青色発光ダイオード及びレーザーダイオードにおける構造不完全性の役割」, Science, Vol. 281 (14 August 1998) pp. 956-961.

G.A.Smith et al.,「ハイドライド気相エピタキシー紫外発光ダイオードからの341nm発光」, Journal of Applied Physics, Vol. 95, No. 12 (15 June 2004) pp. 8247-8251.

R. F. Davis et al.,「窒化ガリウム物質−進歩、現状及び潜在的な障害」, Proceedings of the IEEE, Vol. 90, No. 6 (June 2002) pp. 993-1004.

A. Dadger et al.,「シリコン上での窒化ガリウムの有機金属化学気相エピタキシー」, physica status solidi (c), Vol. 0, No. 6 (September 2003) pp. 1583-1606.

T. Wang et al.,「サファイア基板に成育されたAlGaN−GaNヘテロ構造における104cm2/Vs以上の電子移動性」, Applied Physics Letters, Vol. 74, No. 23 (7 June 1999) pp. 3531-3533.

J. Blasing et al.,「低温AIN中間層による応力低減の原因」, Applied Physics Letters, Vol. 81, No. 15 (7 October 2002) pp. 2722-2724.

C. R. Elsass,「プラズマアシスト分子線エピタキシーによって成長されたAlGaN/GaNヘテロ構造における電子輸送」, Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 39, Part 2, No. 10B (15 October 2000) pp. L1023-1025.

C. Rosenbladet. al.,「低エネルギープラズマ化学気相成長法によるシリコンエピタキシー」, Journal of Vacuum Science and Technology A, Vol. 16, No. 5 (Sept/Oct 1998), pp. 2785-2790.

Heung-Sik Tae et al.,「超高真空電子サイクロトロン共鳴化学気相成長法による低温シリコンホモエピタキシー」, Applied Physics Letters, Vol. 64, No. 8 (21 February 1994) pp. 1021-1023.


C. B. Vartuli et al.,「III‐V族窒化物のICI/Ar電子サイクロトロン共鳴プラズマエッチング」, Applied Physics Letters, Vol. 69, No. 10 (2 September 1996), pp. 1426-1428.

W. Z. Collison et al.,「プラズマモデリング及びラングミュア探針を用いた大ウエハーの低圧誘導結合プラズマエッチングの研究」, Journal of Vacuum Science and Technology A, Vol. 16, No. 1 (Jan/Feb 1998), pp. 100-107.

R. J. Shul et al.,「GaNの誘導結合プラズマエッチング」, Applied Physics Letters, Vol. 69, No. 8 (19 August 1996), pp. 1119-1121.

J. Hopwood,「プラズマ処理に用いられる誘導結合プラズマの検討」, Plasma Source Science and Technology, Vol. 1, No. 2 (May 1992) pp. 109-116.

D. S. Green et. al.,「高周波プラズマアシスト分子線エピタキシーにおけるGaNのCBr4との炭素ドーピング」, Journal of Applied Physics, Vol. 95, No. 12 (15 June 2004) pp.8456-8462.

H. von Kanel,「低エネルギープラズマ化学気相成長法によって成長された変調ドープGe量子井戸における超高正孔移動度」, Applied Physics Letters, Vol. 80, No. 16 (22 April 2002) pp. 2922-2924.

P. Sutter et al.,「スパッタエピタキシャルSi/SiI-xGexヘテロ構造における量子輸送」, Applied Physics Letters, Vol. 67, No. 26 (25 December 1995) pp.3954-3956.
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】誘導結合プラズマ(ICP)源及びエフュージョンセルを備えた低エネルギープラズマ気相エピタキシー(LEPEVPE)装置の概略側面図である。
【図2】低エネルギープラズマにさらされた基板上の成長膜を示した概略図である。
【図3】磁界に閉じ込められたプラズマの概略図である。
【図4】ICP源及びエフュージョンセルを備え、基板が下方に向けられたLEPEVPE装置の改良案の概略図である。
【図5】ICP源及びスパッタ源を備えたLEPEVPE装置の概略側面図である。
【図6】DCプラズマ源及びエフュージョンセルを備えたLEPEVPEの本発明による装置を示した概略図である。
【符号の説明】
【0051】
10 装置
20 堆積チャンバー
21 チャンバー内部
22 ガス注入口
23 ガス管
24 排気管
26 絶縁体
28 誘電体窓
30 コイルアセンブリ
32 インピーダンス整合回路網
34 高周波発生器
36 プラズマ
40 エフュージョンセル
40a 付加的なエフュージョンセル
42 高速シャッター
50 堆積アセンブリ/基板ホルダ
54 基板
55 成長膜
56 インピーダンス整合回路網
58 高周波発生器
60 スパッタ源
62 スパッタターゲット/スパッタガン
64 インピーダンス整合回路
66 電源
80 シャッター板
82 シャッターアセンブリ
100 プラズマ源
110 陽極
120 ガス注入口
130 熱陰極
140 アークプラズマ
200 堆積チャンバー/プラズマチャンバー
205 バルブ
210 ターボ分子線ポンプ
220 ロードロック
230 基板加熱アセンブリ
240 ガス管
240a ガス管
250 コイル
300 蒸気放出部/エフュージョンセル
310 シャッター
320 差動排気部
400 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体エピタキシーに適した低エネルギープラズマ気相エピタキシーのための装置であって、
該装置は堆積領域を包囲する堆積チャンバーと、プラズマ源と、ガス注入口、金属元素及び金属化合物を気化するソースアセンブリ、ドーパント源アセンブリ、基板加熱アセンブリ、任意の陽極を含んでなるガス供給システムと、堆積チャンバー内で磁場を生成する任意のシステムとから構成され、
上記プラズマ源から生成されたプラズマは、上記堆積チャンバーにおいて高密度低エネルギープラズマを生成することが可能であり、上記ガス供給システム、金属及びドーパント源は、上記堆積領域内において構成ガス及び蒸気を適時且つ定量で分布するように配置され、上記基板加熱アセンブリは、所望の温度で所望の期間だけ基板を加熱できるように上記堆積チャンバーにおいて基板ホルダに隣接して配置され、これによって加熱された基板は、基板上でエピタキシャル成長を促進するようにプラズマにさらされることを特徴とする低エネルギープラズマ気相エピタキシーのための装置。
【請求項2】
上記プラズマ源は、電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマ源、誘導結合プラズマ(ICP)源又は低圧アーク放電源等の低エネルギーイオンを供給することが可能なプラズマ源の群から選択される1つであることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
上記金属元素及び金属化合物のソースは、エフュージョンセル、スパッタ源または電子線気化器等の高い蒸気フラックスを供給することが可能な金属元素・金属化合物源の群から選択される1つであることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
上記ドーパント源は、エフュージョンセル、スパッタ源及び電子線気化器等の低いドーパントフラックスを供給することが可能なドーパント源の群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
上記ガス供給システムによって堆積領域に供給されるガスは、アルゴンや窒素等の非毒性且つ不活性のガスの群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
上記堆積チャンバーに供給されるガスは、酸素や有機金属ガス等の反応性ガスの群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
エピタキシャル成長の際に維持される圧力は10-4−1mbarの範囲内から選択されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
上記プラズマ源は、堆積領域において高密度低エネルギープラズマを生成することが可能なECR源であることを特徴とする請求項1及び2に記載の装置。
【請求項9】
上記プラズマ源は、堆積領域において高密度低エネルギープラズマを生成することが可能なICP源であることを特徴とする請求項1及び2に記載の装置。
【請求項10】
上記ICP源は、堆積領域において高密度低エネルギープラズマを生成することが可能なスパイラル誘導結合器であることを特徴とする請求項1、2及び9に記載の装置。
【請求項11】
上記プラズマ源は、1つ又は複数の熱陰極を備えた直流プラズマ源であり、
上記プラズマ源における陰極アセンブリはプラズマに透過性のある陽極と連通し、堆積領域において高密度低エネルギープラズマが形成されることを特徴とする請求項1及び2に記載の装置。
【請求項12】
上記直流プラズマ源はブロードエリア型プラズ源であって、それによりプラズマ抽出領域(plasma extraction region)がシャワーヘッドによって形成され、上記シャワーヘッドは堆積領域において均一なプラズマ密度を形成するように透過性陽極に連通されることを特徴とする請求項1、2及び11に記載の装置。
【請求項13】
上記プラズマによって活性化される不活性又は反応性ガスは、上記堆積領域においてプラズマによって活性化された金属蒸気と反応され、それによってその後の窒化物半導体層エピタキシーに用いられるのに十分な品質のエピタキシャルテンプレート層が加熱された基板に形成されることを特徴とする請求項1、3、5及び6に記載の装置。
【請求項14】
上記プラズマによって活性化された窒化物ガスは、上記堆積領域においてプラズマによって活性化された、ガリウム、インジウム及びアルミニウムからなる金属の群から選択された金属蒸気と反応されることで、加熱された基板にエピタキシャルテンプレート層が形成されることを特徴とする請求項1、3及び5に記載の装置。
【請求項15】
上記ドーパント源は、シリコン、マグネシウム、亜鉛、ベリリウム及びカドミウムから構成される元素群から選択される元素を含むことを特徴とする請求項1及び4に記載の装置。
【請求項16】
上記ドーピング源はエフュージョンセルであることを特徴とする請求項1、4及び15に記載の装置。
【請求項17】
エピタキシャル成長の際に維持される圧力は、10-3〜10-1mbarの範囲で保たれることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項18】
マグネシウム、亜鉛、ベリリウム及びカドミウム等のドーピング金属を気化させるための付加的なエフュージョンセルが備えられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
金属及びドーパント源には、金属及びドーパント蒸気のフラックスを遮断するためのシャッターが備えられることを特徴とする請求項1、3及び4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
上記エフュージョンセルは差動排気されるように装備されることを特徴とする請求項14、5又は6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
1つの気化金属につき1つ以上のエフュージョンセルが備えられ、稼動において金属蒸気の異なるフラックスが得られるように、同一金属に用いられるエフュージョンセルは異なる温度での稼動に適するように適合されることを特徴とする請求項1、4、5又は6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
上記装置は、不活性ガスで希釈されたシラン等のドーピングガスを堆積チャンバーに供給するように適合されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項23】
上記基板に衝突するイオンが約20V以下のエネルギーを有するように、アーク電圧は30V以下であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項24】
上記基板におけるプラズマ密度を急激に変えることができるように、基板位置の磁場強度を変えるための手段が備えられることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項25】
上記基板における平均プラズマ均一性を向上させるように、磁場の方向を周期的に変化させるための手段が備えられることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項26】
上記堆積チャンバーにおける圧力を10-4から10-1mbarの範囲、より好ましくは10-2から10-1mbarの範囲で維持するための手段が備えられることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項27】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の装置を用いて製造された、炭素非含有で最大300mmまでエピタキシャル成長された窒化物半導体層が堆積した基板からなる半導体。
【請求項28】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の装置を用いて製造された水素非含有エピタキシャル窒化物層からなる半導体。
【請求項29】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の装置を用いて製造され、0.1nm/sから10nm/sの範囲の成長率で堆積されたエピタキシャル窒化物層からなる請求項28に記載の半導体。
【請求項30】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の装置を用いて製造され、1nm/sから10nm/sの範囲の成長率で堆積されたエピタキシャル窒化物層からなる請求項28に記載の半導体。
【請求項31】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の装置を用いて製造されたドープエピタキシャル窒化物層からなる請求項28に記載の半導体。
【請求項32】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の装置を用いて製造され、1000℃以下の温度で基板上に堆積されたエピタキシャル窒化物層からなる請求項28に記載の半導体。
【請求項33】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の装置を用いて製造され、800℃以下の温度で基板上に堆積されたエピタキシャル窒化物層からなる請求項28に記載の半導体。
【請求項34】
化合物半導体層の高速エピタキシャル成長のための方法であって、
a.請求項1に記載の装置を用意し、
b.個別のチャンバーにおける熱陰極アセンブリによって持続されるアーク放電によって生成される高密度低エネルギープラズマが維持される堆積チャンバーにおいて1つ又は複数の金属が気化され、
c.化合物半導体層の高速エピタキシャル成長を行うべくプラズマにさらされた加熱基板上に半導体層を形成するために、金属蒸気を非常に活性化された非金属元素のガスと反応させる
というステップからなる方法。
【請求項35】
プラズマ気相エピタキシーのための低エネルギー高密度プラズマ発生装置であって、
プラズマを含有し、プラズマとイオン的に接触すべく半導体基板を支持するように形成されたチャンバー内部を有する真空性の堆積チャンバーと、
上記チャンバー内部においてプラズマを生成及び制御するために堆積チャンバーと連通して配置された低エネルギー高密度プラズマ発生器と、
上記チャンバー内部に少なくとも部分的に包囲され、上記堆積チャンバーと電気的に絶縁されると共に、上記チャンバー内部で生成されたプラズマと直接的にイオン接触を行うように半導体基板を保持する基板支持部と、半導体基板を1100℃まで加熱するように制御可能な熱源とを備えた堆積アセンブリと、
上記チャンバー内部に制御可能にガスを注入するように配置され、上記チャンバー内部におけるガスの圧力及び混合物を規制し、上記チャンバー内部にガスを注入するための注入口を少なくとも1つ備えたガス供給システムと、
上記チャンバー内部からガスを除去するための排気システムと、
上記チャンバー内部に金属蒸気を注入するように配置された少なくとも1つの金属蒸気源と、
上記チャンバー内部にドープ剤を注入するように配置された少なくとも1つのドーパント源とからなる、
気相エピタキシーのための低エネルギー高密度プラズマ装置を提供可能な組み合わせで形成された装置。
【請求項36】
低エネルギー高密度プラズマ気相単結晶エピタキシーのための方法であって、
‐請求項35に記載の装置を用意し、
‐上記装置の堆積チャンバーにおいてガリウム、アルミニウム及びインジウムからなる金属グループから選択された金属蒸気とN2ガスの形態の窒素とを、それぞれの適切な濃度及び圧力で混合し、
‐上記装置の堆積チャンバーにおいて金属蒸気とN2ガスを低エネルギー高密度プラズマにさらし、N2ガスを活性化させ非常に反応性の高い原子N1ガスに変換し、
‐上記プラズマにおいて蒸気金属とN1ガスを反応させ、
‐単結晶窒化物半導体を形成するべく、上記プラズマ内でプラズマに配置された半導体支持基板上に金属窒化物層を形成及びエピタキシーする
というステップからなる方法。
【請求項37】
低エネルギー高密度プラズマ気相単結晶エピタキシーのための方法であって、
‐請求項35に記載された装置を用意し、
‐上記装置の堆積チャンバー内でそれぞれ適切な濃度及び圧力で蒸気状のガリウムとN2の形態の窒素を混合し、
‐上記装置の堆積チャンバー内でガリウム蒸気とN2ガスとを低エネルギー高密度プラズマにさらし、N2ガスを活性化させ非常に反応性の高い原子N1ガスに変換し、
‐上記プラズマにおいて蒸気状のガリウム及び原子N1ガスを反応させ、
‐単結晶窒化物半導体を形成するべく、上記プラズマ内でプラズマに配置された半導体支持基板上に金属窒化物層を形成及びエピタキシーする
というステップからなる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−532306(P2008−532306A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557614(P2007−557614)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【国際出願番号】PCT/IB2006/000421
【国際公開番号】WO2006/097804
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(507284053)
【Fターム(参考)】