説明

高密度織物用染色試験機

【課題】従来の染色試験機において、高密度織物の染色に関して、繊維内部への染色液の浸透が不完全のため、再現性が得られず、カラーマッチングの精度が不正確になることが課題であった。
【解決の手段】本発明の高密度織物用染色試験機は、円筒形ポットをハンマーの軌道のように反復運動させるように構成して、染色液に慣性を付与し、瞬時停止時に円筒形ポットの底板、蓋板に衝突させ、繊維の内部まで染色液を、強制的に浸透させることができ、再現性が得られるようになり、カラーマッチングの精度が正確になり、この課題を解決することができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高密度織物の染色を目的とする染色試験機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、染色試験機は、染色工場でカラーマッチングといわれる工程で使用されるものである。
カラーマッチングとは、10グラム位の試料布を染色し、指定の色相に合致する染料の配合率を決定し、その配合率に従って生産機に使用する染料の量を計量します。
染料の量は、試料布の重さの比率で計量されます。従って試料の繊維内部まで染着されていなければ、表面染着となり再現性が得られません。
【0003】
従来の染色試験機は、複数個の密閉した円筒形ポットに試料布と水および染料を入れ、同心円に回転する機構のもの、あるいは個々に自転、正逆回転する機構のものがある。
これらの機構のものは、試料布を染色液に間欠的に繰り返し浸漬させるようにしたもので、天然繊維あるいは既存の合成繊維の織物については、この機構の染色試験機でも、繊維の内部まで染色液が十分に浸透し、カラーマッチングに支障をきたすことはなかった。
【0004】
しかし、近年、マイクロファイバーが開発され、その繊維は毛髪の百分の一以下の細さで、その織物は高密度織物と称されている。
【0005】
高密度織物を染色する生産機では、主として液流染色機が使用されている。液流染色機は噴射ノズルから染色液を強力な圧力で布に噴射して染色する機構のため、繊維の内部まで染色液が浸透して、良好な染色が得られている。
染色試験機の場合、従来からの染色液に繰り返し浸漬する機構のものでは、ほとんど染色液が繊維の内部まで浸透せず、再現性がなくなり、カラーマッチングの数値が不正確なものになってきた。
高密度織物の染色試験機としては、約10グラムの試料布に染色液を強制的に浸透させる機能をもつ染色試験機が必要になった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
染色試験機の場合、試料布が約10グラムの少量で、かつ密閉のポットの中で染色することが限定されており、この条件下で染色液を強制的に高密度織物を貫通透過させる方法を確立することが課題である。
【0009】
本発明は、このような問題に着目してなされたものであり、その目的とするところは高密度織物に強制的に染色液を浸透させる機構を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記、問題を解決するために、図1に示すように、高密度織物1、染色液2が投入された円筒形ポット3を枠4に保持する。枠4にはポット3を過熱するためのヒーター5と温度センサー6が組み込まれている。
枠4は、軸7に固定されている。軸7にはピニオン8が同心に固定され、上下動するラック9と噛み合うように取り付けられている。
ラック9は、クランクロッド10を経てクランク11に接続され、クランク11の回転によりクランクロッド10を介してラック9を上下動させる。
【0009】
ラック9の上下動により、ピニオン8が回転する。ラック9の上下動のストロークは、ピニオン8が180度から360度の範囲で回転できる長さにする。
円筒形ポット3と軸7とは直交した向きに配設され、その間隔は、この発明の重要な要素になるため、数値を記載することはとはできないが、適切な一定の間隔とする。
円筒形ポット3は軸7に合い向かいに、また直列に複数個とりつけることもできる。
【0009】
図2は、上記の機構による動きの説明図である。、
円筒形ポット3は、クランク機構によるラック9の上下動により、ピニオン8を介して軸7が回転されることにより、軸7を中心にハンマー軌道の反復運動になる。
ピニオン8の歯数とラック9のストロークにより、ピニオン8の回転角度が180度から360度の範囲で反復運動するように設定する。また、反復運動の回数も任意に調節可能とする。
円筒形ポット3のハンマー反復運動を継続しながら、ヒーター5と温度センサー6により、染色液を加熱、温度のコントロールをしながら染色処理を行う。
【0010】
高密度織物1と染色液2は、図2のAの位置では円筒形ポット3の底部3aにある。
円筒形ボット3は、ピニオン8の回転によりハンマー軌道にそってB、C、DからE、の位置で瞬時停止する。
高密度織物1と染色液2は、図2のBの位置ではまだ円筒形ポット3の底部3aにあるが、Cの位置で動きはじめ、Dの位置でハンマー軌道により慣性が付与され加速される。
Eの位置で円筒形ポット3は瞬時停止し、加速された高密度織物1と染色液2は、蓋板3bに衝突する。
この時、染色液は慣性力により高密度織物を強制的に通過し、内部浸透する。
次に、Eの位置からAの位置へ反転、高密度織物1と染色液2は逆方向のハンマー軌道による慣性の付与により底板3aに衝突する。
円筒形ポット3は、360度のハンマー反転、反復運動を繰り返し、高密度織物1の繊維の内部まで染色液2を強制的に浸透させることができる、
【発明の効果】
【0011】
高密度織物の場合、従来の染色試験機では、前述のとおり表面染着になり、再現性が得られず、生産期において染め直しが頻繁に発生し、生産効率が大幅にダウンしていたが、本発明により、繊維の内部まで染色液の浸透を可能にしたことにより、カラーマッチングが正確になり、生産機での染め直しが減少、生産効率も向上する。
【0012】
従来の織物についても、強制的に内部浸透をさせたことにより、いままで以上に再現性が向上し、カラーマッチングの正確性が向上した。
さらに、従来の染色試験機ではできなかった、超低浴比の均染も可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の全体の構造図の一例
【図2】本発明の動作の説明図の一例
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示した機構は、本発明を実施する一例である。
その他、円筒形ポットがハンマー軌道の反復運動になる機構であれば、その形態はどのような方法でも、高密度織物の繊維内部まで染色液を浸透させることは可能です。
【符号の説明】
【0015】
1…高密度織物、2…染色液、3…円筒形ポット、3a…底板、3b…蓋板、4…枠 5…加熱ヒーター、6…温度センサー、7…軸、8…ピニオン、9…ラック、10‥ロッド 11…クランク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
染色試験機による高密度織物の染色において、円筒形ポットをハンマーの軌道のように反復運動させ、染色液に慣性を付与し、強制的に繊維内部まで浸透させるようにしたことを特徴とする高密度織物用染色試験機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−233289(P2012−233289A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112864(P2011−112864)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(593203907)株式会社テクサム技研 (5)
【Fターム(参考)】