説明

高密度TCPおよび製造方法

【課題】リードの幅や厚みの変更を伴うことなく、1つの半導体素子に接続できるリードの配線本数を増加できる高密度TCPおよび製造方法を提供する。
【解決手段】フレキシブルなベース基材11と、ベース基材11のデバイスホール15の内部に突出するフライングリード12aを有する導体パターン12と、実装面14aを上向けにしてデバイスホール15に配置する半導体素子14とを備え、半導体素子14の実装面14aの上にバンプ13でフライングリード12aを接続するとともに、半導体素子14の実装面14aのボンディングパット16とベース基材11の上のボンディングパット17とをワイヤーボンディングした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高密度TCP(テープキャリアパッケージ)および製造方法に係り、特に高密度配線を行うことができる電気接続方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のTCP(テープキャリアパッケージ)の製造方法の一例を以下に説明する。図4は、従来の製造方法に係るTCPを示すものであり、図4(a)は上面図、図4(b)は側面図である。図5はテープキャリアに実装する前の状態の半導体素子を示すものであり、図5(a)は上面図、図5(b)は側面図である。
【0003】
図4および図5において、51はフィルム基材、52は導体パターン、52aはフライングリード(インナーリード)、53はバンプ、54は半導体素子、55はデバイスホールを示している。
【0004】
図4に示すように、一般的なテープキャリア(テープ状回路基板)は、フィルム基材51の一方の主面上に導体パターン52を設けたものであり、フィルム基材51の所定位置にデバイスホール55が開口し、導体パターン52はデバイスホール55の内側に突出するインナーリードがフライングリード52aをなす。
【0005】
フィルム基材51はフレキシブルなテープ素材からなり、テープ素材には一般的にポリイミドフィルムが用いられることが多い。また、導体パターン52は銅箔等をフォトグラフィ技術により配線形状に形成することが一般的である。デバイスホール55は半導体素子54より少し大きな貫通穴をなす。
【0006】
図5に示すように、半導体素子4は一方の主面が実装面54aをなし、実装面54aの接続パット部分にバンプ53が設けてある。バンプ53は導電材料からなる突起であり、通常においてバンプ53は金ボールやはんだボール、もしくはメッキによる金属突起で形成する。
【0007】
テープキャリアに半導体素子54を実装する際には、実装面54aを上向け(フェイスアップ)にして半導体素子54をテープキャリアのフィルム基材51の下方よりデバイスホール55に配置し、あるいは実装面54aを下向け(フェイスダウン)にして半導体素子54をテープキャリアのフィルム基材51のデバイスホール55に配置する。
【0008】
そして、熱あるいは超音波を用いてバンプ53を溶融し、半導体素子54とフライングリード52aとを接続し、その後に封止樹脂(図示省略)など半導体素子54の周囲を封止して保護していた。
【0009】
上述したように、従来のTCPはテープキャリアが接続配線のフライングリード52aだけで半導体素子54と接続し、フライングリード52aが半導体素子54を支持している。このため、導体パターン52の幅を極端に細くしたり、導体パターン52の厚みを薄くすると接続強度的に劣ってしまうので、信頼性が確保できなかった。
【0010】
このため、特許文献1に記載するように、強度的に弱いフライングリードをなくし、配線自体の強度を向上させるために、導体パターンのインナーリードはデバイスホールを横切る形状にする必要があった。
【特許文献1】特開平11−40605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、インナーリードがデバイスホールを横切る場合には、一つの半導体素子に配置できるバンプ個数および配線可能なリード本数が半分程度になってしまい、リード本数を増加させる余地がなくなる。
【0012】
すなわち、フライングリードを使用する構成では、半導体素子の左右両側に配置した一対のバンプと左右一対のフライングリードとを一直線上に配置し、フライングリードとバンプを一対一の関係でそれぞれ接続することができる。言い換えると、半導体素子の実装面における直線状領域に一対のバンプと一対のフライングリードを配置することができる。
【0013】
しかし、インナーリードがデバイスホールを横切る場合には、半導体素子の実装面における直線状領域には一個のバンプと一本のインナーリードしか配置することができない。このため、半導体素子に配置できるバンプ個数および配線可能なリード本数が半分程度になる。
【0014】
また、別の課題として、リードを通じた供給可能な電流量はリードの断面積に依拠しているので、半導体素子に大きな電流を流す必要がある場合には、電流量を確保する必要からリードの幅及び厚みの変更は困難であり、結果としてリードの幅及び厚みを変更して配線本数を増加させることはできない。
【0015】
上述した理由により、半導体素子の小型化や配線本数の増加に対応することができず、配線の高密度化が難しくなり、このTCPを採用する商品のコストを下げることができない。
【0016】
本発明は、上記の従来の課題を解決するものであり、リードの幅や厚みの変更を伴うことなく、1つの半導体素子に接続できるリードの配線本数を増加できる高密度TCPおよび製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決するために、本発明の高密度TCPは、フレキシブルなベース基材と、前記ベース基材上に形成し、前記ベース基材のデバイスホール内に突出するフライングリードを有する導体配線と、実装面を上向けにして前記デバイスホールに配置する半導体素子とを備え、前記半導体素子の前記実装面上にバンプでフライングリードを接続するとともに、前記半導体素子の前記実装面上のボンディングパットとベース基材上の接続パットとをワイヤーボンディングしたことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の高密度TCPにおいて、前記半導体素子は、前記実装面の内側領域に前記ワイヤーボンディングのための前記ボンディングパットを有し、前記実装面の外側領域に前記パンプで前記フライングリードとフリップチップ接合する接続端子パットを有することを特徴とする。
【0019】
本発明の高密度TCPの製造方法は、導体配線を形成したフレキシブルなベース基材のデバイスホール内に実装面を上向けにして半導体素子を配置し、前記ベース基材の前記デバイスホール内に突出する前記導体配線のフライングリードと前記半導体素子の実装面上の接続端子パットとをバンプでフリップチップ接合し、前記半導体素子の前記実装面上のボンディングパットと前記ベース基材上の接続パットとをワイヤーボンディングすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、半導体素子の実装面上にバンプでフライングリードを接続するフリップチップ接合と、半導体素子の実装面上のボンディングパットとベース基材上の接続パットとを接続するワイヤーボンディングとを組み合わせることで、限られた開口面積のデバイスホールを通して半導体素子の限られた面積の実装面に対して多くの配線を施すことが可能となる。
【0021】
よって、フライングリードおよびワイヤーボンディングの接続導線は、所定の電気量を確保するのに必要な形状を維持したままで、幅や厚みの変更を伴うことなく、1つの半導体素子に接続できるリードの配線本数を増加させることができ、高信頼性の高密度TCPを実現できる。
【0022】
したがって、その利用用途を格段に増やすことができ、従来の製品に対しても小型化、小チップ化を図ることができ、コストダウンを実現できる。これらの実装技術は特別な生産装置を必要とせず、現存する生産設備を利用することができるため比較的安価に採用することが可能となっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態における高密度TCPの製造方法において、テープ状の配線基板であるテープキャリアに半導体素子を実装した状態を示し、図1(a)は上面図、図1(b)は図1(a)のX−X’線に沿った断面図である。
【0024】
図1において、11はフィルム基材、12は導体パターン、12aはフライングリード(インナーリード)、13はバンプ、14は半導体素子、15はデバイスホール、16は半導体素子上の接続パット、17はフィルム基材上の接続パット、18は接続導線を示している。
【0025】
図1に示すように、テープキャリア(テープ状回路基板)は、ポリイミドフィルム等のフレキシブルなテープ素材からなるフィルム基材11の一方の主面上に導体パターン12を設けたものであり、フィルム基材11の所定位置に半導体素子14より大きい所定形状のデバイスホール15が開口している。フィルム基材11としてはポリイミドフィルムが好適であるが他の絶縁材料からなるテープ基材を用いることも可能である。
【0026】
導体パターン12は、銅箔等の導電率の高い金属泊をフォトグラフィ技術により配線形状に形成したものであり、デバイスホール15の内側に突出するインナーリードがフライングリード12aをなす。導体パターン12は、半導体素子14との接続に必要であれば全面または部分的に金メッキやスズメッキなどを施してある。
【0027】
半導体素子14は一方の主面をなす実装面14aに、フリップチップ用の接続端子パットの上に配置したバンプ13とワイヤーボンディング用のボンディングパットをなす接続パット16が設けてあり、実装面14aの内側領域に接続パット16を二列状に配置し、実装面14aの左右の外側領域にバンプ13をそれぞれ一列状に配置している。
【0028】
バンプ13は導電材料からなる突起であり、通常においてバンプ13は金ボールやはんだボール、もしくはメッキによる金属突起で形成する。ここでは、バンプ13を半導体素子4に形成しているが、フライングリード12aにバンプ13を形成することも可能である。
【0029】
そして、半導体素子14の実装面14aにおいて外側領域に配置した各バンプ13と対応するフライングリード12aとをそれぞれ接続し、半導体素子14の実装面14aにおいて内側領域に配置したボンディングパット16とテープキャリアのフィルム基材11に配置したボンディングパット17とをワイヤーボンディングにより金、銅等の接続導線18で接続している。
【0030】
したがって、平面的に配置する平板な形状をなす導体パターン12のフライングリード12aを用いるフリップチップと、立体的に配置する線形的な形状をなす接続導線18を用いるワイヤーボンディングとを組み合わせることで、テープキャリアのフィルム基材11に形成する限られた開口面積のデバイスホール15を通して半導体素子14の一方の主面をなす限られた面積の実装面14aに対して多くの配線を施すことが可能となる。よって、フライングリード12aの幅や厚みの変更を伴うことなく、1つの半導体素子に接続できるリードの配線本数を増加させることができ、高密度TCPを実現できる。
【0031】
以下に、本発明の実装技術を用いた高密度TCPの製造方法を説明する。図2および図3は本発明の高密度TCPの製造過程を示す模式図である。
図2(a)に示すように、テープキャリアに半導体素子14を実装する際には、実装面14aを上向け(フェイスアップ)にして半導体素子14をテープキャリアのフィルム基材11の下方よりデバイスホール15に配置し、熱あるいは超音波を用いてバンプ13を溶融し、半導体素子14とフライングリード12aとを接続する。この状態で、接続導線18によるワイヤーボンディングを行なうためには、テープキャリアと半導体素子14とを確実に固定し、かつ半導体素子14の実装面14aにおけるボンディング位置と導体パターン11の上面が150℃程度になるように温める必要がある。しかしながら、リジッド基板やCOF基板では簡単に固定やヒートアップすることできるが、本実施の形態のようにテープキャリアを用いる場合には困難である。
【0032】
このため、図2(b)に示すように、半導体素子14をヒーターブロック19で下側から受け止め、上側からテープ押さえブロック20でテープキャリアを押さえつけて固定する。ヒーターブロック19には半導体素子14を受け止める所定深さの凹部19aが形成してあり、凹部19aの底面が半導体素子14に当接する状態で、ヒーターブロック19の主面がテープキャリアのフィルム基材11の下面に当接する。
【0033】
この状態で半導体素子14とテープキャリアの両方に熱を伝導する。しかし、この状態では、ヒーターブロック19により半導体素子14を下支えできても、半導体素子14を上側から直接にヒーターブロック19へ向けて押さえていないので、半導体素子14が上方へ移動することを確実に阻止することはできず、ワイヤーボンディングに必要な超音波などのパワーを確実に与えることができず、ボンディング接続に困難性がある。
【0034】
このため、図2(c)に示すように、ヒーターブロック19に所定数の吸引孔を設け、吸引孔を通してテープキャリアおよび半導体素子14を真空吸着することで、テープキャリアと半導体素子14との両方を確実にヒーターブロック19に固定する。
【0035】
この構成により、TAB(Tape Automated Bonding)構造においてフェイスアップでのワイヤーボンディングが可能となる。
次に、図3(a)に示すように、テープキャリアとワイヤーボンディング接続した半導体素子14および接続導線18を樹脂モールドする。なお、樹脂成形金型は図示を省略している。
【0036】
この樹脂モールドに際して、接続導線18を覆い尽くしてしまう量の封止樹脂21を一度にポッティングした場合には、流れる溶融樹脂により加わる圧力と樹脂自信の重みで接続導線18のワイヤー倒れが発生し、ショートが発生する。また、樹脂の重みで半導体素子14のチップ裏面に樹脂が回り込むと、その樹脂が阻害要因となって放熱性能が低化することになる。
【0037】
このため、フルモールドに必要な樹脂量のうち、接続導線18の一部が露出する程度の所定量の封止樹脂21を最初にポッティングし、接続導線18の一部を露出させたままで一旦半硬化の状態にする。
【0038】
接続導線18には半導体素子14の実装面14aの付近において溶融樹脂による圧力が作用するが、半導体素子14との接続部に近いので十分に溶融樹脂による圧力に耐えることができる。また、樹脂量が少ないので封止樹脂21がその自重で半導体素子14のチップ裏面に回り込むことを防止できる。
【0039】
次に、図3(b)に示すように、接続導線18を覆い尽くすのに必要な量の封止樹脂20を半硬化の状態の封止樹脂21の上に補充的にポッティングして接続導線18を覆い、フルモールド状態で樹脂を完全に硬化させる。
【0040】
このとき、接続導線18は半導体素子14の実装面14aの付近が封止樹脂21で保持されているので、溶融樹脂による圧力に耐えることができる。
以上、本発明の高密度TCPの製造方法について説明したが、本発明の技術思想に逸脱しない限り適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態におけるTCPの製造方法に係る高密度TCPを示し、(a)は上面図、(b)は(a)のX−X’線に沿った断面図
【図2】本発明の実施の形態におけるTCPの製造方法を示す模式図
【図3】本発明の実施の形態におけるTCPの製造方法を示す模式図
【図4】従来の製造方法に係るTCPを示し、(a)は上面図、(b)は側面図
【図5】半導体素子を示し、(a)は上面図、(b)は側面図
【符号の説明】
【0042】
11、51 フィルム基材
12、52 導体パターン
12a、52a フライングリード
13、53 バンプ
14、54 半導体素子
14a、54a 実装面
15、55 デバイスホール
16 ボンディングパッド(素子側)
17 ボンディングパッド(基板側)
18 接続導線
19 ヒーターブロック
19a 凹部
20 テープ押さえブロック
21 封止樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルなベース基材と、前記ベース基材上に形成し、前記ベース基材のデバイスホール内に突出するフライングリードを有する導体配線と、実装面を上向けにして前記デバイスホールに配置する半導体素子とを備え、前記半導体素子の前記実装面上にバンプでフライングリードを接続するとともに、前記半導体素子の前記実装面上のボンディングパットとベース基材上の接続パットとをワイヤーボンディングしたことを特徴とする高密度TCP。
【請求項2】
前記半導体素子は、前記実装面の内側領域に前記ワイヤーボンディングのための前記ボンディングパットを有し、前記実装面の外側領域に前記パンプで前記フライングリードとフリップチップ接合する接続端子パットを有することを特徴とする高密度TCP。
【請求項3】
導体配線を形成したフレキシブルなベース基材のデバイスホール内に実装面を上向けにして半導体素子を配置し、前記ベース基材の前記デバイスホール内に突出する前記導体配線のフライングリードと前記半導体素子の実装面上の接続端子パットとをバンプでフリップチップ接合し、前記半導体素子の前記実装面上のボンディングパットと前記ベース基材上の接続パットとをワイヤーボンディングすることを特徴とする高密度TCPの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−231400(P2009−231400A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72708(P2008−72708)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】