説明

高導電性、透明性及び耐湿性を有するポリチオフェン系導電性高分子組成物、並びにこれを利用した高分子膜

本発明は高導電性、透明性、耐湿性及び耐久性を有するポリチオフェン系導電性高分子組成物、並びにこれを利用した高分子膜に関する。特に、ポリチオフェン系導電性高分子水溶液、アルコール系有機溶媒、アミド系有機溶媒または非プロトン性高極性溶媒、メラミン樹脂、及びポリエステル、ポリウレタン樹脂及びアルコキシシランの中から選択された結合剤を一定成分比で混合した水溶液を含むポリチオフェン系導電性高分子組成物に関する。これを利用して製造された膜は1kΩ/m以下の高導電性と、95%以上の高透明性を有するため、静電気防止用フィルム、接続式パネル用フィルム、上・下部電極用フィルム、無機電界発光素子(EL)用フィルム及びディスプレー電極用フィルムとして適用される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[従来技術]
導電性高分子として広く利用されているものには、ポリアニリン(PAN)、ポリピロル(PPy)及びポリチオフェン(PT)がある。これらは重合が容易であり、優れた導電性と熱的安定性及び酸化安定性を有するため、広く研究されている物質である。
【0002】
これらの電気的特性を応用して、導電性高分子は2次電池の電極、電磁波遮蔽用素材、柔軟性を有する電極、静電気防止用素材、腐食防止用コーティング剤などの用途として提案されている。しかしながら、加工性の困難、熱的安定性、大気安定性、耐湿性及び価格などの問題により未だ商業化することができない実情である。しかしながら、最近では電磁波の遮蔽に関する規格強化により、ほこり付着防止及び静電気防止用コーティング材と合わせて、電磁波遮蔽用コーティング材としての可能性により注目を受け始めている。
【0003】
特に、導電性高分子がブラウン管のガラス表面用導電性コーティング材として注目を受け始めたのは、米国特許第5,035,926号及び米国特許第5,391,472号に開示されているように、ポリチオフェン系導電性高分子であるポリエチレンジオキシチオフェン(PEDT)が注目を受け始めてからである。このような導電性高分子はポリアニリン系、ポリピロール系及びポリチオフェン系などの別の導電性高分子に比べて優れた透明度を有している。
【0004】
従来のポリエチレンジオキシチオフェンを製造するために、ポリスチレンスルホネートのような高分子酸塩をドーピング物質として利用して、導電性を向上させ、水分散が可能なコーティング性溶液を製造した。アルコール溶媒との混合性、加工性が優れており、ブラウン管(CRT)またはプラスチックフィルム表面など多様なコーティング材として適用可能である。
【0005】
このようなポリエチレンジオキシチオフェンの代表的な例としては、バイエル社のバイトロンP(V4、500グレード)がある。しかしながら、ポリエチレンジオキシチオフェン導電性高分子は95%以上の高い透明を達成するためには、低濃度のポリエチレンジオキシチオフェンでコーティングしなければならない。従って、一般的な方法では1kΩ/m以下の伝導度の達成は難しい。更に、シリカゾールを膜の接着力を増加させるために添加する時、アルコキシシラン[RSi(OR](この時、Rはメチル、エチル、プロピルまたはイソプロピル基であり、Rはメチル又はエチル基である)から製造される非導電性シリカゾールの伝導度は更に低下し、1kΩ/m以下の高い導電性膜を製造することは更に難しくなる。従って、低い導電性が要求される静電気防止用コーティング材としてのみ使用されている実情である。更に、バイエル社のバイトロンPは水分散液であり、分子内にSO基を持っているため、高分子膜形成後にも水に非常に脆弱である。それ故に、長期間放置または湿度の高い環境に露出される場合、バイトロンPを利用して製造された高分子膜の電気的特性の変化が著しく、従って、商用化が不可能であった。
【0006】
これと関連して、大韓民国公開特許第2000−10221号にはポリエチレンジオキシチオフェン、アルコール系溶媒、アミド溶媒、ポリエステル系樹脂結合剤を含む導電性高分子組成物が公示されている。大韓民国公開特許第2005−66209号にはポリエチレンジオキシチオフェン、アルコール系溶媒、アミド溶媒及びシランカップリング剤を含有する導電性高拡散フィルムコーティング液組成物が公示されている。
【0007】
前述した技術には、1kΩ/m以下の電気的特性を持ちながら、高い透明性、接着力と耐久性を持つ組成物が公示されているが、時間による導電性高分子膜の電気的特性の変化、特に高温及び多湿な環境での電気的特性の変化が甚だしいため、商用化が不可能な状況である。このような短所のため、95%以上の高い透明性にもかかわらず、電磁波遮蔽にて要求される規格(TCO規格)を満足させ、1kΩ/m以下の表面抵抗を実現しながら、高い耐湿性、接着力及び耐久性を同時に達成することはほぼ不可能であった。導電性膜を個人携帯用情報端末機(PDA)、接触式パネルまたは無機電界発光素子(EL)電極及び透明電極フィルムへの適用もまた不可能である。
【0008】
従って、本発明の発明者は高導電性と同時に、高い透明性、耐湿性及び耐久性などの物性を有するポリチオフェン系導電性高分子に対する研究を行った。その結果、ポリチオフェン系導電性高分子水溶液、アルコール系有機溶媒、アミド系有機溶媒または非プロトン性高極性溶媒、メラミン樹脂、及びポリエステル、ポリウレタン樹脂及びアルコキシシランからなる群から選択された特定の結合剤を含有する高分子組成物が、従来の安定剤の使用なく、従来の安定化剤の使用なく、伝導度と透明度が同時に向上され、耐湿性、接着性、耐久性、膜均一性及び液安定性などの物性も向上させることができることを発見することで、本発明を完成するに至った。これは、前記アミド系有機溶媒または非プロトン性高極性溶媒がポリチオフェン系導電性高分子水溶液の高分子の一部を溶かすことによって、ポリチオフェン系導電性高分子間の連結性及び分散性を向上させ、前記メラミン樹脂内のNH基がポリチオフェン系導電性高分子水溶液(バイトロンP)内のSO基と結合し、SO基が水と反応することを防ぐことで、耐湿性の向上及び時間による電気的安定性を付与し、結合剤と透明な基質との接着力及び導電性膜の耐久性を向上させるためである。
【0009】
従って、本発明の目的は、伝導度と透明度を同時に向上させ、耐湿性、接着性、耐久性、膜均一性及び液安定性などの物性を大きく向上させることのできるポリチオフェン系導電性高分子組成物、及びこれを利用した高分子膜を提供することにある。
【0010】
[実施例]
本発明を下記実施例に依拠してより具体的に説明するが、本発明が下記実施例により限定されるわけではない。
【0011】
〔実施例1〜3及び比較例1〜6:アミド系有機溶媒〕
下記表1に表された成分と含量を使用して、PEDT導電性高分子水溶液を激しくかき混ぜた後、約7分間隔でアルコール溶媒、アミド系有機溶媒、メラミン樹脂、結合剤、安定化剤、スリップ及び粘度低下用添加剤を順に添加し、均一になるように約4時間攪拌し、溶液組成物を製造した。
前記混合溶液組成物を透明な基質に塗布した後、125℃のオーブンで約5分間乾燥させてポリチオフェン高分子膜を製造した。乾燥された高分子膜の厚さは5μm以下であった。前記で製造されたポリチオフェン高分子膜の物性を下記のような方法で測定し、その結果を下記表2に表した。
【表1】

【0012】
[物性評価]
(1)伝導度:オームメーター器で表面抵抗を測定(三菱化学、LorestaEP MCP−T360)
(2)透明度:550nmで測定。この時、透明基質の透過度を100%に定め、コーティング後の透過度を表す(ミノルタ社、CM−3500d)
(3)接着力:テーピングテスターで10回テーピングした後、表面抵抗の変化にて評価(日東社製テープ)
<抵抗変化>
〔1〕50Ω/m以下:良好
〔2〕50〜100Ω/m:普通
〔3〕100Ω/m以上:不良
(4)耐湿性:恒温、恒湿気(60℃、90%、10日)で保存した後、表面抵抗の変化にて評価
<抵抗変化>
〔1〕50Ω/m以下:良好
〔2〕50〜100Ω/m:普通
〔3〕100Ω/m以上:不良
(5)液安定性:室温放置時、1週間後の凝集発生可否によって評価
【表2】

【0013】
前記表2に示されるように、メラミン樹脂を使用せず安定剤を使用した比較例1〜6に比べ、本発明によりメラミン樹脂成分を使用した実施例1〜3は、伝導度と透明度が同時に向上されながら、接着力、膜均一性及び液安定性が向上し、特に耐湿性が向上されることを確認することができた。
【0014】
〔実施例4〜8及び比較例7〜9:アミド系有機溶媒〕
前記実施例1と同様に実施するが、下記表3に示された成分で混合溶液組成物を製造した。
前記混合溶液組成物を透明な基質に塗布した後、125℃のオーブンで約5分間乾燥させてポリチオフェン高分子膜を製造した。乾燥された高分子膜の厚さは5μm以下であった。前記で製造されたポリチオフェン高分子膜の物性を下記のような方法で測定し、その結果を下記表4に示した。
【表3】


【表4】

【0015】
前記表4に示されるように、実施例4〜8はメラミン樹脂と結合剤を使用しなかった比較例7と、メラミン樹脂を使用しなかった比較例8〜9に比べ、伝導度と透明度が同時に向上されながら、接着力、膜均一性及び液安定性、特に耐湿性が向上されることを確認することができた。
【0016】
〔実施例9〜12及び比較例10〜12:非プロトン高極性溶媒〕
前記実施例1と同様に実施するが、下記表5に示された成分で混合溶液組成物を製造した。
前記混合溶液組成物を透明な基質に塗布した後、125℃のオーブンで約5分間乾燥させてポリチオフェン高分子膜を製造した。乾燥された高分子膜の厚さは5μmであった。前記で製造されたポリチオフェン高分子膜の物性を下記のような方法で測定し、その結果を下記表6に示した。
【表5】


【表6】

【0017】
前記表6に表されるように、実施例9〜12は、メラミン樹脂と結合剤を使用しなかった比較例10〜11と、メラミン樹脂を使用しなかった比較例12に比べ、伝導度と透明度が同時に向上されながら、接着力、膜均一性及び液安定性、特に耐湿性が向上されることを確認することができた。
【0018】
[発明の詳細な説明]
本発明は、1)ポリチオフェン系導電性高分子水溶液、2)アルコール系有機溶媒、3)アミド系有機溶媒、及び4)メラミン樹脂を含めてからなるポリチオフェン系導電性高分子組成物に関する。
【0019】
また、本発明は、1)ポリチオフェン系導電性高分子水溶液、2)アルコール系有機溶媒、3)アミド系有機溶媒、4)メラミン樹脂、及び5)ポリエステル、ポリウレタン及びアルコキシシランからなる群から選択された結合剤を含めてからなるポリチオフェン系導電性高分子組成物に関する。
【0020】
更に、本発明は、1)ポリチオフェン系導電性高分子水溶液、2)アルコール系有機溶媒、3)非プロトン性高極性溶媒、及び4)メラミン樹脂を含めてからなるポリチオフェン系導電性高分子組成物に関する。
【0021】
更に、本発明は、1)ポリチオフェン系導電性高分子水溶液、2)アルコール系有機溶媒、3)非プロトン性高極性溶媒、4)メラミン樹脂、及び5)ポリエステル、ポリウレタン、アルコキシシランからなる群から選択された結合剤を含めてからなるポリチオフェン系導電性高分子組成物に関する。
【0022】
本発明を詳しく説明すると下記の通りである。
【0023】
本発明はポリチオフェン系導電性高分子水溶液、アルコール系有機溶媒、アミド系有機溶媒または非プロトン系高極性溶媒、メラミン樹脂、及びポリエステル、ポリウレタン樹脂及びアルコキシシランからなる群から選択された特定の結合剤を含有するポリチオフェン系導電性高分子組成物に関する。
【0024】
特に、本発明は、ポリチオフェン系導電性高分子水溶液の高分子の一部を溶かすことで、ポリチオフェン系導電性高分子間の連結性と分散性を向上させるアミド系有機溶媒または非プロトン性高極性溶媒;
メラミン樹脂内のNH基がポリチオフェン系導電性高分子水溶液(バイトロンP)内のSO基と結合することで、SO基が水と結合することを防ぐことによって、耐湿性と時間による電気的安定性を向上させるメラミン樹脂;及び
透明な基質との接着力及び導電性膜の耐久性を向上させるポリエステル、ポリウレタン及びアルコキシシランからなる群から選択された結合剤を含めてからなるポリチオフェン系導電性高分子に関する。
【0025】
このようなポリチオフェン系導電性高分子は、従来のポリチオフェン系導電性高分子間の連結のためのスルホン酸基の安定化剤を使用することなく、伝導度と透明度を向上させ、同時に、耐湿性、接着性、耐久性、膜均一性及び液安定性などの物性を向上させる。
【0026】
本発明によるポリチオフェン系導電性高分子溶液組成物をガラスまたは合成樹脂フィルムのような透明基質上にコーティングすることで、1kΩ/m以下、好ましくは100Ω/m〜1kΩ/m範囲の伝導度、95%、好ましくは95〜99%の透明度を同時に有し、耐湿性、接着性、耐久性、膜均一性及び液安定性を示す膜または層を得ることができる。前記1kΩ/m以下の伝導度は電磁波遮蔽に係り最も厳格なスウェーデン労働者協会が制定したTCO規格を満足させる極めて高い値である。
【0027】
本発明によるポリチオフェン系導電性高分子組成物を構成する成分をより具体的に見てみると、下記の通りである。
【0028】
先ず、ポリチオフェン系導電性高分子水溶液は通常的に当分野で使用される高分子のいずれかを使用するが、本発明ではポリエチレンジオキシチオフェン(PEDT、特に、バイエル社のバイトロンP)を使用する。PEDTは安定化剤(ドーパント)としてポリスチレンスルホネート(PSS)がドーピングされており、水に良く溶ける性質を示し、熱的安定性及び大気安定性が非常に優れている。更に、分散性を最適化するために、固形分含有量(PEDT及びPSS)が1.0〜1.5重量%の範囲に調整される。前記PEDTは水、アルコールまたは誘電率が大きい溶媒と良く混合され、このような溶媒と希釈して容易にコーティングすることができる。更に、コーティング膜もその他の導電性高分子であるポリアニリンとポリピロールに比べて優れた透明度を示す。
【0029】
このようなポリチオフェン系導電性高分子水溶液は20〜70重量%の量、好ましくは26〜67重量%を使用する。前記使用量が20重量%未満の場合、アミド系有機溶媒及び非プロトン性高極性(AHD)溶媒が多量に使用されるが、1kΩ/m以下の高導電性を達成することが難しい。一方、前記使用量が70重量%を超過すると、着色性導電性高分子の量が増加するため、透過度が、特に長波長帯(550nm以上)で95%以下に減少する。
【0030】
アルコール系有機溶媒として、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール及びブタノールなどの炭素数1〜4個のアルコールが単独または混合されて使用される。特に、前記PEDT導電性高分子の分散性を増加させるために、メタノールを主溶媒として使用することが好ましい。
【0031】
アルコールは10〜75重量%、好ましくはアミド系有機溶媒と混合使用する場合、10〜71重量%、より好ましくは24〜70重量%の量で使用する。非プロトン性高極性溶媒と混合して使用する場合、5〜68重量%、より好ましくは20〜62重量%の量で使用する。前記使用量が10重量%未満の場合、高い導電性は得られるが、コーティング膜の分散性を達成することが難しい。一方、75重量%を超過する場合、伝導度を減少させ、凝集が容易に起きてしまう。
【0032】
アミド系有機溶媒として、ホルムアミド(FA)、N−メチルホルムアミド(NMFA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトアミド(AA)、N−メチルアセトアミド(NMAA)、N−ジメチルアセトアミド(DMA)またはN−メチルピロリドン(NMP)を使用することが好ましい。これらのアミド系有機溶媒は共通的に、分子内アミド基[R(CO)NR](この時、RはH、CH、または−CHCHCH−である)を有する。単独のアミド系溶媒はPEDT導電性高分子の伝導度を増加させ、2つ以上のアミド系有機溶媒を混合して使用するのが、1kΩ/m以下の表面抵抗、並びに95%以上の透明度を達成するために好ましい。前記溶媒の混合比は適当に決定し、好ましい混合比率は2:1である。
【0033】
更に、本発明の非プロトン性高極性溶媒(AHD)としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)またはプロピレンカーボネートを使用することができる。前記非プロトン性高極性溶媒(AHD)とアミド系溶媒は単独で使用することが好ましい。これを混合使用すると、伝導度がわずかだけ増加し、高透明性及び長時間液安定性を達成することができないため、好ましくない。
【0034】
前記非プロトン性高極性溶媒(AHD)を単独で使用する場合、伝導度の大きい増加の達成はない。伝導度を向上させるためには、エチレングリコール(EG)、グリセリン及びソルビトールなどの分散安定剤を使用することが好ましい。前記分散安定剤は、ポリチオフェン系導電性高分子溶液組成物に対して1〜10重量%、好ましくは4〜10重量%の量で使用することが好ましい。前記使用量が4重量%未満の場合、高伝導度を達成することができず、一方、10重量%を超過する場合は、高伝導度を達成することができるが、沸点が高いため高温可塑を行わなければならない。
【0035】
前記アミド系有機溶媒は1〜10重量%範囲、好ましくは3〜7重量%の量で使用し、前記非プロトン性高極性溶媒は1〜10重量%、好ましくは4〜8重量%を使用することが好ましい。前記使用量が下限値未満の場合、高伝導度の達成が難しく、一方、使用量が上限値を超過する場合は、高伝導度は達成するが、沸点が高いアミド系溶媒の一部が増加することにより高温可塑を行わなければならない。高温可塑はPEDT導電性高分子の伝導度を低下させ、基質としてガラスを除いたプラスチックのみを使用する場合、基質自体の変形を引き起こしてしまう。
【0036】
前記PEDT導電性高分子溶液は、耐湿性、基質接着性及び耐久性を増加させるための結合剤として、水溶性またはアルコール可溶性高分子樹脂が含まれる。PEDT導電性高分子溶液自体が水分散液であるため、水溶液状態の樹脂を使用するのが好ましい。しかしながら、PEDT導電性高分子溶液自体が水分散液であり、接着力を向上させるために水溶液状態の結合剤を使用することにより、溶液内のSO基は水と容易に結合するため、耐湿性が脆弱となる。従って、本発明では、強い耐湿性を付与するための必須成分としてメラミン樹脂を使用する。このようなメラミン樹脂は、メラミン樹脂内のNH基がポリチオフェン系導電性高分子水溶液(バイトロンP)内のSO基と結合することで、SO基が水と結合することを防止するため、耐湿性及び時間による電気的安定性を増加させる。
【0037】
前記メラミン樹脂は1〜10重量%、好ましくは1〜8重量%の量で使用する。前記使用量が1重量%未満の場合、導電性膜の耐湿性が不良となる。一方、10重量%を超過する場合は、耐湿性は非常に向上するが、伝導度の向上に限界がある。
【0038】
前記透明基質との接着性と耐久性の向上を誘導する結合剤としては、ポリエステル、ポリウレタン樹脂及びアルコキシシランの中から選択される。より強い接着力を達成させるために、前述した結合剤を混合使用することができる。特に、ポリエチレンテレフタレートフィルムの上にコーティングする時には、基質との接着力向上のためにポリエステル樹脂を使用することがより好ましい。
【0039】
前記結合剤は0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜4重量%の量で使用する。前記使用量が0.1重量%未満の場合、基質との接着力と導電性膜の耐久性が不良となる。一方、前記使用量が5重量%を超過する場合は、伝導度の上昇に限界がある。
【0040】
更に、コーティングされた表面のブロッキング性を防止(またはすべり性を増大)させるために、すべり性の向上及び粘度の低下のために添加剤を更に0.05〜5重量%添加することができる。
【0041】
一方、本発明による高導電性、透明性、耐湿性及び耐久性を有するポリチオフェン導電性高分子溶液組成物は既存の方法で製造する。使用する方法は2つに分けられ、1つは、追加ドーパントなくアミド溶媒とメラミン樹脂を利用し、もう1つは、追加ドーパントなく、非プロトン性高極性溶媒(AHD)溶媒とメラミン樹脂を利用する方法である。
【0042】
従って、製造された溶液組成物を、ブラウン管(TV、コンピュータ)のガラス表面またはキャスティングポリプロピレン(CPP)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリカーボネート及びアクリルパネルなどのような透明基質の表面上にコーティングする。これをオーブン(100〜145℃)で1〜10分間乾燥させ、電磁波遮蔽または電極生成のために、透明性及び導電性を有するポリチオフェン高分子膜を提供する。コーティング工程として、バーコーティング、ロールコーティング、フローコーティング、ディープコーティングまたはスピンコーティングを使用することができ、塗膜の厚さは5μm以下である。
【0043】
従って、前記で製造された静電気防止用高分子膜は、電磁波防止のTCO規格を満足させ、高導電性、透明性、耐湿性及び耐久性が要求される接触式パネル用上・下部電極フィルム、無機EL電極用フィルムのような透明電極フィルムとして応用が可能である。
【0044】
[産業上利用可能性]
以上見てきたように、本発明によるポリチオフェン系導電性高分子溶液組成物を利用して製造した高分子膜は、1kΩ/m以下の伝導度、95%以上の透過度、高い耐湿性及び接着力を要求する接触式パネル用上・下部の電極用フィルム、無機電界発光素子(EL)電極用フィルムのようなディスプレー用透明電極フィルム、TVブラウン管の表面及びコンピュータのモニター画面の電磁波遮蔽層として適用が可能であり、その他のガラス、ポリカーボネートアクリル板、ポリエチレンテレフタレートまたはキャスティングポリプロピレン(CCP)フィルムにも適用が可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ポリチオフェン系導電性高分子水溶液、
(ii)アルコール系有機溶媒、
(iii)アミド系有機溶媒、及び
(iv)メラミン樹脂
を含めてからなることを特徴とするポリチオフェン系導電性高分子組成物。
【請求項2】
(i)ポリチオフェン系導電性高分子水溶液、
(ii)アルコール系有機溶媒、
(iii)アミド系有機溶媒、
(iv)メラミン樹脂、及び
(v)ポリエステル、ポリウレタン及びアルコキシシランからなる群から選択された結合剤
を含めてからなることを特徴とするポリチオフェン系導電性高分子組成物。
【請求項3】
(i)ポリチオフェン系導電性高分子水溶液、
(ii)アルコール系有機溶媒、
(iii)非プロトン性高極性溶媒、及び
(iv)メラミン樹脂
を含めてからなることを特徴とするポリチオフェン系導電性高分子組成物。
【請求項4】
(i)ポリチオフェン系導電性高分子水溶液、
(ii)アルコール系有機溶媒、
(iii)非プロトン性高極性溶媒、
(iv)メラミン樹脂、及び
(v)ポリエステル、ポリウレタン及びアルコキシシランからなる群から選択された結合剤
を含めてからなることを特徴とするポリチオフェン系導電性高分子組成物。
【請求項5】
(i)ポリチオフェン系導電性高分子水溶液20〜70重量%、
(ii)アルコール系有機溶媒10〜75重量%、
(iii)アミド系有機溶媒1〜10重量%、及び
(iv)メラミン樹脂1〜10重量%
を含めてからなることを特徴とする、請求項1記載のポリチオフェン系導電性高分子組成物。
【請求項6】
(i)ポリチオフェン系導電性高分子水溶液20〜70重量%、
(ii)アルコール系有機溶媒10〜75重量%、
(iii)アミド系有機溶媒1〜10重量%、
(iv)メラミン樹脂1〜10重量%、及び
(v)ポリエステル、ポリウレタン及びアルコキシシランからなる群から選択された結合剤0.1〜5重量%
を含めてからなることを特徴とする、請求項2記載のポリチオフェン系導電性高分子組成物。
【請求項7】
(i)ポリチオフェン系導電性高分子水溶液20〜70重量%、
(ii)アルコール系有機溶媒10〜75重量%、
(iii)非プロトン性高極性溶媒1〜10重量%、及び
(iv)メラミン樹脂1〜10重量%
を含めてからなることを特徴とする、請求項3記載のポリチオフェン系導電性高分子組成物。
【請求項8】
(i)ポリチオフェン系導電性高分子水溶液20〜70重量%、
(ii)アルコール系有機溶媒10〜75重量%、
(iii)非プロトン性高極性溶媒1〜10重量%、
(iv)メラミン樹脂1〜10重量%、及び
(v)ポリエステル、ポリウレタン及びアルコキシシランからなる群から選択された結合剤0.1〜5重量%
を含めてからなることを特徴とする、請求項4記載のポリチオフェン系導電性高分子組成物。
【請求項9】
エチレングリコール、グリセリン及びソルビトールからなる群から選択された分散安定剤を更に含むことを特徴とする、請求項3、4、7及び8のうちいずれか1項に記載のポリチオフェン系導電性高分子組成物。
【請求項10】
前記分散安定剤は1〜10重量%の量で含まれることを特徴とする、請求項9記載のポリチオフェン系導電性高分子組成物。
【請求項11】
前記非プロトン性高極性溶媒はポリプロピレンカーボネートまたはジメチルスルホキシドであることを特徴とする、請求項3、4、7及び8のうちいずれか1項に記載のポリチオフェン系導電性高分子組成物。
【請求項12】
請求項1乃至8のうちいずれか1項の組成物を基質にコーティングして製造することを特徴とする導電性高分子膜。
【請求項13】
前記膜は静電気防止用フィルム、接触式パネル用フィルム、上・下部電極用フィルム、無機電界発光素子(EL)電極用フィルム及びディスプレー電極用フィルムであることを特徴とする、請求項12記載の導電性高分子膜。



【公表番号】特表2009−527590(P2009−527590A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555170(P2008−555170)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【国際出願番号】PCT/KR2007/000891
【国際公開番号】WO2007/097564
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(504004533)エスケーシー カンパニー,リミテッド (10)
【Fターム(参考)】