説明

高導電性イオン液体組成物

【課題】 本発明の目的は、コンデンサを長時間高温で使用してもインピーダンス特性が悪化せず、高耐電圧を有するコンデンサ陰極材料を提供することである。
【解決手段】 イオン液体(A)中に、無機微粒子(D)好ましくはアスペクト比が10〜1000であるクレイ−有機カチオン挿入化合物が導電性高分子(C)で被覆されてなる複合体微粒子(B)、好ましくは該無機微粒子(D)の表面で導電性高分子(C)の前駆体モノマー(E)を重合して得られる複合体微粒子(B)が分散してなることを特徴とする高導電性組成物を使用する。導電性高分子(C)はポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、及びポリアニリンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン液体に、無機微粒子が導電性高分子で被覆されてなる複合体微粒子を分散した高導電性組成物に関するものである。さらに詳しくは、コンデンサ陰極材料に有用な、インピーダンス特性、耐熱性、耐電圧に優れる高導電性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器等のデジタル化に伴い、コンデンサについても小型大容量且つ高周波領域でのインピーダンスの低いものが求められている。従来、高周波領域用のコンデンサとしてはプラスチックフィルムコンデンサ、積層セラミックコンデンサがあるがこれらのコンデンサでは形状が大きくなり大容量化が難しい。一方、大容量のコンデンサとしては、アルミニウム乾式電解コンデンサ、又はアルミニウム若しくはタンタル固体電解コンデンサがある。これらの電解コンデンサは、弁作用金属からなる陽極と、その陽極表面に形成された陽極酸化皮膜(誘電体)と、真の陰極を兼ねた電解質が必要である。例えば、アルミニウム乾式電解コンデンサではエッチングを施した陽極、陰極アルミニウム箔をセパレータを介して巻き取り、駆動用電解液をセパレータに含浸して用いている。
【0003】
しかし、アルミニウム乾式電解コンデンサには、電解質の液漏れ、蒸発等に伴う特性劣化という大きな問題がある。液状電解質は、イオン伝導性で比抵抗が大きいため、損失が大きく、インピーダンスの周波数特性が著しく劣るという問題もある。これらの課題を改善するため、電解質を固体化したのがアルミニウム又はタンタル固体電解コンデンサである。固体電解コンデンサの電解質としてはマンガン酸化物、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)塩や、ポリピロール、ポリチオフェン、あるいはポリアニリン等の導電性高分子などがある。
【0004】
しかし、マンガン酸化物を電解質として用いる固体電解コンデンサでは、温度特性及び容量、損失等の経時変化についての課題は改善されるが、マンガン酸化物の比抵抗が高くてインピーダンスの周波数特性が十分であるとは言えない。さらにマンガン酸化物からなる電解質の形成にあたり、複数回の熱分解処理で誘電体酸化皮膜の損傷が起こる。また、TCNQ塩を電解質とする固体電解コンデンサではTCNQを塗布する際に比抵抗上昇が起こる、陽極箔との接着性が弱いといった問題がある。
【0005】
一方、ピロール、チオフェン、あるいはアニリン等のモノマーから化学酸化重合により表面に導電性高分子を形成させる方法では、酸化剤による誘電体酸化皮膜の劣化の影響や、導電性高分子の化成性(誘電体酸化皮膜の欠陥部修復能力)がほとんどないために、定格電圧が35Vを超える電解コンデンサを構成することは困難であり、またこれらを構成した場合においても、エージング処理中や高温試験中に漏れ電流の増大や陽極−陰極間のショートが発生する場合があった。
【0006】
この課題を解決するため、例えば導電性高分子および有機酸オニウム塩からなる電解質を用いる方法が提案されている(特許文献1)。しかしながら、有機酸オニウム塩の混合比率が高く、耐電圧は高くなるが電導度は悪くなり、それはコンデンサのインピーダンス特性を劣化させることとなり好ましくない。
【0007】
また、イオン液体に化成性があることに着目してイオン液体を含む電解質を提案している(特許文献2)。しかしながら、誘電体酸化被膜上に導電性高分子を形成したのちにイオン液体を含浸しているため、導電性高分子に含まれるイオン液体の量が非常に少なく、結果、イオン液体の化成性が悪くなり、結果、耐電圧があまり向上していない。
【0008】
さらに、導電性高分子は高温環境下では絶縁化してしまうという課題があり、結果、耐熱性を必要としない用途にしか使用できない。この課題を解決するため、例えば導電性高分子のドーパンドの分子量を上げる方法が提案されている(特許文献3)。しかしながら、そのようなドーパンドを用いると導電性高分子の電導度が低下することが知られており、それはコンデンサのインピーダンス特性を低下させることになり好ましくない。
【特許文献1】特開2003−22938
【特許文献2】再公表特許2005−012599
【特許文献3】特開2006―185973
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上から、現状において導電性高分子に由来するインピーダンス特性を維持したまま、耐熱性、高耐電圧を有する材料は知られていない。本発明はこのような課題を解決し、コンデンサを長時間高温で使用してもインピーダンス特性が悪化せず、高耐電圧を有するコンデンサ陰極材料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は上記問題を解決するため鋭意検討し、本発明に到達した。
本発明は、イオン液体(A)中に、無機微粒子(D)が導電性高分子(C)で被覆されてなる複合体微粒子(B)が分散してなることを特徴とする高導電性組成物、及び該高導電性組成物からなるコンデンサの陰極材料である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の高導電性組成物をコンデンサ用陰極材料として使用すれば、コンデンサを長時間高温で使用してもインピーダンス特性が悪化せず、高耐電圧を有する電解コンデンサを提供できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明で用いるイオン液体(A)は、常温溶融塩とも言われ、アニオン成分とカチオン成分から構成されている。本発明の目的に適当なイオン液体は、例えばWO2005/012599公報に記載の常温溶融塩が挙げられる。通常イオン液体は常温で液体であるものを言うが、本発明で用いるイオン液体(A)は、必ずしも常温付近で液状である必要はなく、例えばコンデンサにおいて、酸化被膜修復時に発生するジュール熱によって液体になるものであれば良い。
【0013】
イオン液体(A)を構成するカチオンとして、例えばイミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオンおよびホスホニウムカチオンが挙げられる。イミダゾリウムカチオンとしては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム等が挙げられる。
【0014】
イオン液体(A)を構成するアニオンとして、例えばAlCl、AlCl等のクロロアルミネートアニオン、BF、PF、F(HF)、等のフッ素系無機アニオン、CFCOO、CFSO(TfO)、(CFSO(TFSI)、(CFSO(TFSM)等のフッ素系有機アニオン、NO;CHCOO等が挙げられる。
【0015】
イオン液体(A)は、上記のカチオン種の1種又は2種以上および上記のアニオン種の1種又は2種以上の組み合わせによるものであってよいが、好ましくは、上記カチオン種とフッ素系有機アニオンとの組み合わせであり、さらに好ましくは、イミダゾリウムカチオン、又はピリジニウムカチオンとフッ素系無機アニオンとの組み合わせであり、特に好ましくはイミダゾリウムカチオン、又はピリジニウムカチオンとBFの組み合わせである。
【0016】
本発明で用いる導電性高分子(C)は、後述する無機微粒子(D)を被覆することで複合体微粒子(B)として存在する。
本発明は複合体微粒子(B)をイオン液体に分散させることを特徴としており、その複合体微粒子(B)を合成する方法として、(1)あらかじめ複合体微粒子(B)を合成した後にイオン液体に分散する方法、(2)イオン液体中で複合体微粒子(B)を合成する方法が挙げられる。
【0017】
導電性高分子(C)は例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリフラン等、及びそれらの誘導体等が挙げられる。誘導体とは導電性高分子(C)の溶剤溶解性やその他物性を調整するためにカルボン酸等の官能基を導入したものをいう。これらの導電性高分子の合成方法としては、化学重合法、電解重合法、有機金属化学的縮重合法が用いられ、特に化学重合法、電解重合法は好ましく用いられる。本発明においては、複合体微粒子(B)を合成する必要があるため化学重合法が特に好ましい。
【0018】
化学重合は、適当な酸化剤の存在下で、例えばアニリン塩酸塩などの導電性高分子(C)の前駆体モノマー(E)を酸化脱水することで重合し合成する方法である。酸化剤としては、過硫酸塩、過酸化水素、あるいは鉄、銅、マンガン等の遷移金属塩が使用できる。化学重合により合成された導電性高分子も、酸化剤のアニオンがドーパントとして重合過程でポリマー中に取り込まれるため、一段階の反応で導電性を有するポリマーを得る事ができる。
【0019】
無機微粒子(D)の表面で導電性高分子(C)の前駆体モノマー(E)を重合する方法は、イオン液体、又は適当な溶媒中(例えば水中)で無機微粒子(D)を分散させた後、前駆体モノマーを混合し、酸化剤を混合して重合すればよい。イオン液体中で重合しない場合は、得られた複合体微粒子(B)をイオン液体中に分散すればよい。イオン液体中に無機微粒子(D)、又は複合体微粒子(B)が分散することが重要であり、分散性を向上させるために分散剤等を適宜用いても良い。
【0020】
イオン液体中で化学重合を行なうとイオン性液体のアニオン成分がドーパントとして導電性高分子に取り込まれることが知られており、導電性高分子のドーパント量を増やすことが可能であり、コンデンサを長時間高温で使用してもインピーダンス特性が悪化しないという観点から、イオン液体中で重合を行なうことがより好ましい。
【0021】
また、導電性高分子はドーパントが存在することで導電性を有するが、一般的に高温環境下ではそのドーパントが脱離してしまい絶縁化することが知られている。しかし、本発明者はイオン液体中に存在する導電性高分子は高温環境下においても絶縁化しないことを見出した。この機能により本発明の特徴である耐熱性が得られる。
【0022】
本発明で用いる無機微粒子(D)としては、例えばポリマーの機械的強度向上に慣用的に用いられるナノフィラーが挙げられる。例えば、シリカ(コロイダルシリカ等)の球状微粒子、炭酸カルシウム等の無機結晶体、カーボンファイバー等の繊維形状体、無機層状化合物(D1)であるクレイ等が挙げられる。
【0023】
上記無機微粒子(D)の中でも、特に無機層状化合物(D1)はアスペクト比(形状の長辺の長さと短辺の長さの比)が10〜1000と大きいので、後述する導電性高分子で被覆すれば、本発明の特徴である高導電性が発現し、好ましい。さらなる高導電性を発現させるためには、アスペクト比は100〜1000がさらに好ましく、500〜1000が特に好ましい。
【0024】
無機層状化合物(D1)としては、天然物(D11)、天然物の変性物(D12)及び合成物(D13)のいずれであってもよい。
【0025】
天然物(D11)としては、クレイ、グラファイト、金属カルコゲン化物、金属酸化物、金属オキシハロゲン化物、金属リン酸塩、複水酸化物等が含まれる。
【0026】
この中でもクレイが好ましく、クレイとしては、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト、バーミキュライト、ハロイサイト、タルク、雲母及びマイカ等が挙げられ、この中でもモンモリロナイトが好ましい。
【0027】
天然物の変性物(D12)としては、クレイを有機化合物により変性したもの(有機化クレイ)等が含まれる。有機化クレイとしては、有機陽イオン(有機カチオン)により変性したクレイ−有機カチオン挿入化合物(クレイの陽イオンを有機陽イオンでイオン交換したもの)等が含まれる。
有機化の方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法が使用できる。例えば、層間に陽イオン基を有するクレイを80℃の熱水に分散させ、これに有機カチオンを加え激しく撹拌する。生成した沈殿を濾過、水洗し凍結乾燥することによりクレイ−有機カチオン挿入化合物を得ることができる。(「ナノコンポジットの世界」、中條澄著、工業調査会発行、P.178)
【0028】
有機カチオンとしては、特に限定されないが、好ましくは、アルキル基の炭素数が2〜70であるアルキルアンモニウムイオン(ヘキシルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオン、2−エチルヘキシルアンモニウムイオン、ドデシルアンモニウムイオン、ラウリルアンモニウムイオン、オクタデシルアンモニウムイオン、ステアリルアンモニウムイオン、ジオクチルジメチルアンモニウムイオン、トリオクチルアンモニウムイオン、ジステアリルジメチルアンモニウムイオン、ステアリルベンジルジメチルアンモニウムイオン、ドデカン酸アンモニウムイオン及びラウリルアンモニウムイオン等)等及びこれらの混合物などが挙げられる。
これらのうち、イオン交換性の観点等から、アルキル基の炭素数が12以上の有機陽イオンが好ましい。さらに好ましくは、ジステアリルジメチルアンモニウムイオン、ステアリルベンジルジメチルアンモニウムイオンであり、特に好ましくはステアリルベンジルジメチルアンモニウムイオンである。なお、対になる陰イオンとしては、ハライドアニオン(クロライドアニオン及びブロマイドアニオン等)等が挙げられる。
【0029】
本発明の高導電性組成物は、イオン液体(A)中に複合体微粒子(B)が分散してなる。高導電性組成物の重量に対して、複合体微粒子(B)の重量は好ましくは5重量%〜95重量%、より好ましくは10重量%〜80重量%である。
また、複合体微粒子(B)は、無機微粒子(D)が導電性高分子(C)で被覆されてなる。複合体微粒子(B)の重量に対して、導電性高分子(C)の重量は好ましくは10重量%〜100重量%、より好ましくは50重量%〜100重量%である。
【0030】
本発明で用いられる溶剤(F)は、加工性の観点で添加されるものである。本発明の高導電性組成物はイオン液体の組成や複合体微粒子(B)の添加量によって液状態又はゲル状態又は固体状態となる。例えば、アルミ電解コンデンサ用の陰極材料として使用する際には、後述するように酸化被膜に含浸して使用することが望まれているため、加工性等の観点から液状態が好ましい。本発明の高導電性組成物で液状でない場合は、液状化するために溶剤(F)を加えることは性能上問題なく、例えば上記コンデンサに使用する際には溶剤(F)で液状化した後に誘電体に塗布含浸させた後溶剤(F)を揮発させれば良い。本発明で用いる溶剤(F)としてはイオン液体(A)に相溶し、後に揮発させることを考えれば低沸点溶剤が好ましく、沸点が50℃〜149℃である溶媒が使用できる。(F)の具体例としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒が挙げられる。溶剤(F)の添加量は、高導電性組成物の重量に対して好ましくは3〜80重量%、より好ましくは5〜50重量%である。
本発明の高導電性組成物がゲル状態の場合は、必ずしも溶剤(F)を添加する必要はなく、ゲル状態の高導電性組成物を直接酸化被膜に塗布した後、真空下で含浸することで、コンデンサ陰極材料を作製することもできる。
【0031】
本発明の高導電性組成物に、イオン液体(A)に相溶する溶剤(G)を含有することができる。溶剤(G)の沸点は150℃〜300℃である。溶剤(G)の含有量は、高導電性組成物の重量に対して好ましくは3〜50重量%、より好ましくは5〜20重量%である。
溶剤(G)としては以下のものが挙げられる。
【0032】
(1)アルコール類
1価アルコール(ジアセトンアルコール、ベンジルアルコール、アミノアルコール、フルフリルアルコールなど)、2価アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ヘキシレングリコールなど)、3価アルコール(グリセリンなど)、4価以上のアルコール(ヘキシトールなど)など;
【0033】
(2)エーテル類
モノエーテル(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテルなど)など;
【0034】
(3)アミド類
ホルムアミド類(N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなど)、アセトアミド類(N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなど)、プロピオンアミド類(N,N−ジメチルプロピオンアミドなど)、ピロリドン類(N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドンなど)、ヘキサメチルホスホリルアミドなど;
【0035】
(4)オキサゾリジノン類
N−メチル−2−オキサゾリジノン、3,5−ジメチル−2−オキサゾリジノンなど;
【0036】
(5)ラクトン類
γ−ブチロラクトン(以下、GBLと記す。)、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトンなど;
【0037】
(6)ニトリル類
アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、アクリロニトリル、メタクリルニトリル、ベンゾニトリルなど;
【0038】
(7)カーボネート類
エチレンカーボネート、プロピオンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなど;
【0039】
(8)その他の有機溶媒
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、芳香族系溶媒(トルエン、キシレンなど)パラフィン系溶媒(ノルマルパラフィン、イソパラフィンなど)など;
【0040】
上記有機溶媒は、一種または二種以上を併用してもよい。
これらのうち、特に好ましいのは、γ−ブチロラクトン、スルホラン、エチレングリコールである。
【実施例】
【0041】
以下、実施例および比較例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0042】
実施例1
(原料)
イオン液体として1―エチル−3メチルイミダゾリウム・テトラフルオロほう酸塩(アルドリッチ製)を使用した。クレイとしてモンモリロナイト(アスペクト比600、クニミネ工業株式会社製 クニピアF)を使用した。導電性高分子の前駆体モノマーとしてアニリン塩酸塩(和光純薬製)を使用した。重合酸化剤として過硫酸アンモニウム(和光純薬製)を使用した。
(合成)
水309.73gにクレイを16.30g混合した。その後、前駆体モノマー16.30gをあらかじめ水38.04gに溶解させたものを混合した。その後、酸化剤34.57gをあらかじめ水51.86gに溶解させたものを混合し、攪拌下24時間室温下で混合することで導電性高分子が被覆した無機微粒子の水分散体を得た。この水分散体を減圧濾過して無機微粒子を取り出したのち、凍結乾燥を行った。これをイオン液体309.73gに混合した後、TKホモミキサー(特殊機化製)を使用し、回転数12000rpmで25℃で1分間混合し分散することで高導電性組成物(P−1)(25℃での性状は液状)を得た。
【0043】
実施例2
(原料)
実施例1と同じものを使用した。
(合成)
水225.44gにクレイを25.05g混合した。その後、前駆体モノマー25.05gをあらかじめ水58.45gに溶解させたものを混合した。その後、酸化剤53.13gをあらかじめ水79.69gに溶解させたものを混合し、攪拌下24時間室温下で混合することで導電性高分子が被覆した無機微粒子の水分散体を得た。この水分散体を減圧濾過して無機微粒子を取り出したのち、凍結乾燥を行った。これをイオン液体225.44gに混合した後、TKホモミキサー(特殊機化製)を使用し、回転数12000rpmで25℃で1分間混合し分散することで高導電性組成物(P−2)(25℃での性状はゲル状)を得た。
【0044】
実施例3
(原料)
イオン液体として1―エチル−3メチルイミダゾリウム・テトラフルオロほう酸塩(アルドリッチ製)を使用した。クレイとしてクレイ−有機カチオン挿入化合物(アスペクト比700、トーメンプラスティック製 Nanofil 9、カチオン種:ジメチルベンジルアンモニウムカチオン)を使用した。導電性高分子の前駆体モノマーとしてアニリン塩酸塩(和光純薬製)を使用した。重合酸化剤として過硫酸アンモニウム(和光純薬製)を使用した。
(合成)
イオン液体225.44gにクレイを25.05g混合した後、TKホモミキサー(特殊機化製)を使用し、回転数12000rpmで25℃で1分間混合した。その後、前駆体モノマー25.05gをあらかじめメタノール58.45gに溶解させたものを混合した。その後、酸化剤53.13gをあらかじめ水79.69gに溶解させたものを混合し、攪拌下24時間室温下で混合した。メタノール、水を含む導電性高分子を分散したイオン液体(P―1)を得た。イオン液体に含まれる水、メタノールを加熱蒸発させて除去することで高導電性組成物(P−3)(25℃での性状はゲル状)を得た。
【0045】
実施例4
(原料)
前駆体モノマーとして2―チオフェンカルボン酸(和光純薬製)を用いた以外の使用原料は実施例1と同じである。
(合成)
実施例2と同様にして合成を行い高導電性組成物(P−4)(25℃での性状はゲル状)を得た。
【0046】
実施例5
(原料)
前駆体モノマーとして2―チオフェンカルボン酸(和光純薬製)を用いた以外の使用原料は実施例3と同じである。
(合成)
実施例3と同様にして合成を行い高導電性組成物(P−5)(25℃での性状はゲル状)を得た。
【0047】
実施例6
(原料)
前駆体モノマーとしてピロール(和光純薬製)を用いた以外の使用原料は実施例1と同じである。
(合成)
前駆体モノマーをメタノールにあらかじめ溶解させること以外は実施例2と同様にして合成を行い高導電性組成物(P−6)(25℃での性状はゲル状)を得た。
【0048】
実施例7
(原料)
前駆体モノマーとしてピロール(和光純薬製)を用いた以外の使用原料は実施例3と同じである。
(合成)
前駆体モノマーをメタノールにあらかじめ溶解させること以外は実施例3と同様にして合成を行い高導電性組成物(P−7)(25℃での性状はゲル状)を得た。
【0049】
実施例8〜13
(原料)
イオン液体として1−ブチル−4−メチルピリジニウム・テトラフルオロほう酸塩(アルドリッチ製)を使用した。他は、各々実施例2〜7と同じものを使用した。
(合成)
実施例2〜7と各々同様にして合成を行い高導電性組成物(P―8〜13)を得た。P―8〜13の25℃での性状はゲル状であった。
【0050】
(コンデンサの作製)
陽極アルミニウム箔と陰極アルミニウム箔との間にセパレータを介在させて捲回することによりコンデンサ素子を得た。その後、このコンデンサ素子にあらかじめメタノールを添加して50重量%に調整した高導電性組成物(P―2〜13)を含浸させたのち、60℃で1時間加熱することでメタノールを揮発させることで定格電圧50V静電容量220μFのアルミニウム電解コンデンサ素子を得た。高導電性組成物(P―1)については、メタノールを添加せずそのままコンデンサ素子に含浸させることにより、定格電圧50V静電容量220μFのアルミニウム電解コンデンサ素子を得た。このコンデンサ素子を封口部材とともにアルミニウム製の金属ケースに封入した後、カーリング処理により開口部を封止し、アルミニウム電解コンデンサを構成した(サイズ:φ13mm×L10.2mm)。
【0051】
得られたコンデンサの耐電圧、100kHzでの初期インピーダンス、耐熱試験後のインピーダンス、インピーダンスの変化率ΔIを表1に記載した。耐熱試験は125℃の環境下で100時間放置した。
インピーダンスは、LCRメーター(ZN2353 エヌエフ回路設計ブロック社製)を用いて測定した。耐電圧の測定は、電圧を一定速度で上昇させたとき、漏れ電流が増加しはじめる電圧とした。インピーダンス(I)の変化率(ΔI)は下式で表される。
ΔI=100×(|初期インピーダンス−耐熱試験後のインピーダンス|)/初期インピーダンス
【0052】
比較例1
アルミニウムの酸化皮膜上に電解重合によって導電性高分子を形成することで電解コンデンサを試作し、得られた電解コンデンサに上記イオン性液体を添加してそのコンデンサ特性を測定した。
即ち、陽極リードをつけた縦7mm×横10mmのエッチング処理により表面に細孔を形成したアルミニウム箔(アルミニウムエッチド箔)を、3%アジピン酸アンモニウム水溶液に浸漬し、70℃で印加電圧70Vの条件で陽極酸化を行ない、前記アルミニウム箔の表面に酸化皮膜である誘電体皮膜を形成した。ついで、これを硝酸マンガンの30%水溶液に浸漬し、自然乾燥させたのち、300℃で30分間熱分解処理を行い、誘電体皮膜上にマンガン酸化物層からなる導電層を形成した。
次に、この箔上に電解重合ポリピロール層を形成した。重合に用いた電解液はピロール(0.5M)、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(0.1M)の30%アルコール溶液、および水からなる電解液である。電解重合液中にアルミニウム箔を配置し、重合開始電極を二酸化マンガン導電層に近接させ、重合開始用電極と陰極との間に1.5Vの定電圧を50分間印加して電解重合反応をおこない、電解重合ポリピロール層を前記導電層上に形成した。
これを水洗、乾燥後、イオン性液体である1―エチルー3メチルイミダゾリウム・テトラフルオロほう酸塩(アルドリッチ製)のメタノール溶液に浸漬しその後乾燥してメタノールを除く、という方法でイオン性液体を電解重合ポリピロール層に添加し比較例1の電解質を得た。添加量は導電性高分子の0.5〜5重量%となるようにした。次に、この電解質上にカーボン層、銀ペースト層を設けコンデンサを作製した。この様にして得られたコンデンサの耐電圧、100kHzでのインピーダンス、耐熱試験後のインピーダンスを測定した。
得られたコンデンサの特性を表1に示す。
【0053】
比較例2
比較例1のイオン液体を1−ブチルー4−メチルピリジニウム・テトラフルオロほう酸塩(アルドリッチ製)にした以外は比較例1と同様にしてコンデンサを作製しコンデンサ特性を評価した。
【0054】
【表1】

【0055】
表1から、本発明で得られた高導電性イオン液体組成物は、耐熱試験後でもインピーダンス特性が悪化せず、耐電圧に優れるコンデンサ陰極材料として有用であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の高導電性組成物は、コンデンサ陰極材料等として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン液体(A)中に、無機微粒子(D)が導電性高分子(C)で被覆されてなる複合体微粒子(B)が分散してなることを特徴とする高導電性組成物。
【請求項2】
複合体微粒子(B)が、無機微粒子(D)の表面で導電性高分子(C)の前駆体モノマー(E)を重合して得られる請求項1に記載の高導電性組成物。
【請求項3】
無機微粒子(D)のアスペクト比が10〜1000である請求項1又は2に記載の高導電性組成物。
【請求項4】
無機微粒子(D)がクレイである請求項1〜3のいずれか1項に記載の高導電性組成物。
【請求項5】
無機微粒子(D)がクレイ−有機カチオン挿入化合物である請求項4に記載の高導電性組成物。
【請求項6】
導電性高分子(C)がポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、及びポリアニリンからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜5のいずれか1項に記載の高導電性組成物。
【請求項7】
イオン液体(A)に相溶する溶剤(G)を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の高導電性組成物。
【請求項8】
イオン液体(A)がイミダゾリウム塩である請求項1〜7のいずれか1項に記載の高導電性組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の高導電性組成物からなるコンデンサの陰極材料。

【公開番号】特開2008−177385(P2008−177385A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−9803(P2007−9803)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】