説明

高屈折率、耐久性ハードコート

組成物および含芳香族硫黄アクリレートモノマーの開発は、向上したハードコートフィルム、およびハードコートフィルムを含有する向上した光学フィルムをもたらす。フィルムは、ディスプレイシステムに組み込まれた場合、ディスプレイシステムを提供する。官能化ジルコニアナノ粒子と多官能性アクリレート架橋剤と1.58以上の高屈折率含芳香族硫黄アクリレートとの組み合わせは、比較的高い屈折率を有する耐摩耗性ハードコートをもたらす。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
CRTスクリーンなどのディスプレイデバイス用の保護フィルムとしてのフィルムまたはコーティングの開発は、当該技術分野においてよく文書化されている。これらの例として、反射防止コーティング、ハードコート、光学コーティング等が挙げられる。それにもかかわらず、光学用途向けの重合性高指数材料の開発における、更なる改善に対する要求が継続的になされている。例示的用途としては、反射防止コーティング、ハードコート、および他のフィルム材料が挙げられる。多数の重合性フィルムが1.5以下の屈折率を有する。しかしながら、光学的利点のために、1.58以上、およびより好ましくは1.6以上に屈折率を高めることが望ましい改善である。さらに、耐久性で、安価、かつ、それでいて高品質の、比較的高い屈折率を示す反射防止コーティングに対する要請がある。1.58以上の屈折率を有するハードコート組成物の開発は、生産コストの削減、原材料コストの削減を促進すると共に、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの所望の基材上に縁無しハードコートをも提供するであろう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0002】
一実施形態においては、
透光性基材と、この基材に結合されたハードコート層であって、表面改質無機ナノ粒子、少なくとも1種のアクリレート架橋剤、および含芳香族硫黄アクリレートモノマーの反応生成物を含むハードコート層と、
前記ハードコート層と結合された任意選択の低屈折率とを含む(光学)ディスプレイが記載されている。
【0003】
他の実施形態においては、ハードコート組成物であって、樹脂マトリックス中に含芳香族硫黄アクリレートと表面改質ジルコニアナノ粒子とを含み、このハードコートが少なくとも1.58の屈折率を有する、ハードコート組成物が記載されている。
【0004】
他の実施形態においては、ナフタレン基、または2つ以上の芳香族基を含有する含芳香族硫黄アクリレート、アクリレート架橋剤および官能化ジルコニアナノ粒子を含む、コーティング組成物が記載されている。
【0005】
さらに他の実施形態においては、含芳香族硫黄アクリレートモノマーが記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、アクリレートおよび/またはメタクリレート官能性分子を含有する組成物を包含する。従って、「アクリル」は、アクリレートおよび/またはメタクリレート官能性分子の両方を包含するとして定義される。より具体的には、本発明は、含芳香族硫黄アクリレートモノマーを含有する組成物を包含する。「含芳香族硫黄アクリレートモノマー」は、芳香族基に結合した少なくとも1つの二価硫黄原子を有する芳香族官能基を包含するアクリル官能性モノマーとして定義される。
【0007】
本発明の放射線硬化性組成物は、1種以上の高屈折率含芳香族硫黄アクリレートモノマーを包含し、ここで、各モノマーは、例えば1種以上の芳香族構造、ビフェニルまたはナフタレンを含む少なくとも2つの環を含有する。本発明のチオ芳香族アクリレートモノマーは、好ましくはナフタレン基または2つ以上の芳香族基を含有する。あるいは、本発明のチオ芳香族アクリレートモノマーは、1.55以上、およびより好ましくは1.58以上の屈折率を示すであろう。
【0008】
このような単量体分子の、1つの潜在的に有用な(例えば、本願明細書に記載の種々の光学コーティングに組み込まれて、およびディスプレイシステムに適用されて)セットが下記式により記載されている。
【化1】

【0009】
上記に示された例示的分子は、実施例11および12に記載されている。
【0010】
このような高屈折率アリール含硫黄アクリレートモノマー分子の、他の潜在的に有用なセットが下記式により記載されている。
【化2】

式中、R1=H、CH3であり、m、n、p、qは独立して1〜6であり、Arはいずれかの芳香族基である。
【0011】
上記に示された例示的分子は、実施例1に記載されている。実施例1b、1d、および12により、または2番、4番、および11番の構造により記載された分子は、新規であると考えられる高指数含芳香族硫黄アクリレートを例示する。本発明の新規の分子は、ナフタレン含硫黄アクリレート、および、上記ナフタレン構造により定義される多芳香族、多アクリレート含硫黄アクリレート、および直前に記載の多芳香族および多アクリレート構造としてさらに特徴づけられることができる。上述のナフタレン構造および直前に記載の多芳香族および多アクリレート構造が組み込まれた重合性組成物は、これらのタイプの分子が組み込まれた組成物は、本願明細書において示されたデータに見られるように比較的高い屈折率および比較的高い耐久性をも示すので、新規であると考えられる。
【0012】
本願明細書に記載の組成物は、ナノ複合材として特徴づけられ得る。ナノ複合材は、良好に分散されたナノ粒子を含有するポリマーマトリックスとして定義される。ナノ粒子は、200ナノメートルより小さくおよび多くの場合100nmより小さい粒子として定義される。米国特許第5,385,776号明細書は、ポリアミドに組み込まれたナノ複合材の現在の理解を例示しており、参照により本願明細書において援用される。ナノ粒子は、一般に、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物または金属塩化物などの無機粒子である。高指数ナノ粒子の取り込みは、これを取り込む組成物の屈折率を高めることができる。好ましいナノ粒子としては、結晶性ジルコニアが挙げられるが、チタニア、アンチモニー、金属酸化物の混合物、および混合金属酸化物などの他の高指数ナノ粒子も許容されることができる。結晶性ジルコニアを含有する組成物のより大きい屈折率により、結晶性ジルコニアが非晶質ジルコニアを超えて好ましい。官能化シリカナノ粒子が、仕上がりコーティングの追加の強化および耐摩耗性のためにジルコニアベースの組成物に添加され得る。有用なジルコニアの例は、米国特許第6,376,590号明細書に記載のものであり、およびチタニアの例は米国特許第6,432,526号明細書に記載されている。ジルコニア粒子は、例えばナルコ(NALCO)およびビューラー(BUHLER)により供給され得る。官能化ジルコニアの好ましい重量パーセント範囲は25〜75%、およびより好ましくは40〜60%である。所望の場合には、シリカナノ粒子を所与の重量パーセント範囲に全ジルコニアナノ粒子を補足するために用い得る。さらに本発明よれば、比較的小さい割合の比較的大きいが、1ミクロン未満のサイズの粒子が、本発明の組成物に包含され得る。割合が小さいため、比較的高いまたは低い指数のより大きい粒子の使用が包含される。
【0013】
ナノ粒子の表面改質は、粒子の表面上での特定の分子の反応に関連し、ならびにポリマーマトリックス中における良好な分散性または溶解度、向上したコーティング透明度、および向上したコーティング耐久性の達成に有用である。ナノ粒子の表面改質に関連して、アクリレート官能基がメタクリレート官能基を超えて好ましい。その一方、メタクリレート官能基が非反応性、または非重合性、官能基を超えて好ましい。
【0014】
ナノ粒子はまた、カルボン酸、シランなどの表面改質剤および/または分散剤で処理されて、それらのポリマーマトリックスとの混和性を助け得る。米国特許第6,329,058号明細書は、典型的な表面改質剤を例示する。実質的には、表面改質は粒子凝集を防止して、モノマーおよび樹脂中での粒子の分散を促進し、従って、コーティング配合物の透明度を高めると考えられている。しかも、本発明の混合物は、高指数ナノ粒子を含有し、従って、極薄く、かつ、均一なコーティングの形成を可能とし、これが次いで、UV硬化されて均一な高屈折率層が形成され得る。表面改質はまた、透明度のために必要であり、およびモノマーおよび樹脂中における容易な粒子の分散を補助する。表面改質剤分子は、粒子表面に共有結合し、または吸着することができる官能基を示す。例えば、カルボン酸またはシラン官能基は、粒子表面に共有結合し、または吸着することができ、およびこれらの改質剤の例としては、メトキシエトキシエトキシ酢酸(MEEAA)および商品名「シルクエスト(Silquest)A1230」で市販されているPEG−シランが挙げられる。高屈折率を備えた表面改質剤の使用もまた好ましく、およびナフチル酢酸およびトリメトキシフェニルシランが挙げられる。
【0015】
本発明のナノ粒子はまた、反応性または共重合性表面改質剤によって表面改質され得る。反応性表面改質とは、粒子表面に吸着または共有結合的に結合することができる官能基に追加して、重合を促進する官能基を包含する表面改質剤が使用されることを意味する。本発明のコーティングが重合(または硬化)されるとき、ポリマーマトリックスに共有結合的に結合した粒子を有するナノコンポジットが形成され、従って、硬化コーティングの耐久性が増強される。このような改質剤の例は、好ましいトリメトキシシリルプロピルメタクリレートなどのラジカル重合性基を備えるアクリル酸、メタクリル酸、およびシランである。ナノ粒子の混合物を使用すると、利点を組み合わせて実現し得る。例えば、表面改質ジルコニアが屈折率を高めるために添加され得、その一方で、表面改質シリカが耐久性をさらに増強させるために添加され得る。ナノ粒子が重合性表面改質剤を含有することが好ましいが、しかしながら、表面改質剤の総量の約50%以下が、一定の樹脂中のナノ粒子分散体に添加されることができると共に有用であり得る非官能性改質剤から組成され得る。
【0016】
共重合性表面改質は、官能化粒子の、配合物中における反応性モノマーおよび架橋剤との共重合を可能にする官能基を提供すると考えられている。表面改質ナノ粒子に関連して、アクリレート官能基は、メタクリレート官能基を超えて好ましい。その一方、メタクリレート官能基は、非反応性官能基、または非重合性官能基を超えて好ましい。ナノコンポジットが硬化するにつれて、相当にアクリレート官能基を有する原材料の選択によって、得られるネットワークが高度に架橋される。
【0017】
本発明の組成物は、任意により、少なくとも1種の光開始剤を含む。単一の光開始剤またはそのブレンドが、本発明の種々のフィルムおよび/またはコーティングにおいて使用され得る。普通、光開始剤は、少なくとも部分的に(例えば樹脂の処理温度で)可溶性であり、および重合された後においても実質的に無色である。光開始剤がUV光源に露光された後に実質的に無色となる限りにおいては、光開始剤は有色(例えば黄色)であり得る。
【0018】
好適な光開始剤、および好ましいUV光開始剤としては、モノアシルホスフィンオキシドおよびビスアシルホスフィンオキシドが挙げられる。市販されているモノまたはビスアシルホスフィンオキシド光開始剤としては、BASF(ノースカロライナ州シャーロット(Charlotte、NC))から商品名「ルシリン(Lucirin)TPO」で市販されている、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(trimethylbenzoydiphenylphosphine oxide);さらにBASFから商品名「ルシリン(Lucirin)TPO−L」で市販されている、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート;およびチバスペシャリティケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)から商品名「イルガキュア(Irgacure)819」で市販されている、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシドが挙げられる。他の好適な光開始剤としては、チバスペシャリティケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)から商品名ダラキュア(Daracur)1173で市販されている、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンが挙げられる。他の光開始剤は、商品名「ダロキュア(Darocur)4265」、「イルガキュア(Irgacure)651」、「イルガキュア(Irgacure)1800」、「イルガキュア(Irgacure)369」、「イルガキュア(Irgacure)1700」、および「イルガキュア(Irgacure)907」で市販されている。光開始剤は、一般に約.5〜4phr(樹脂百分率)で樹脂組成物に添加される。色および硬化速度、および他の設計基準に対する要求に応じて、より多くまたはより少量で使用されることができる。
【0019】
重合性アクリレートマトリックスは、本発明の架橋ポリマー成分の製造に有用である、1種以上の架橋剤を含有するであろう。架橋剤は、モノマー種を架橋することができる広く多様なジ−または多官能部位から選択される。普通、このような架橋への活性点として機能する反応性官能基はエチレン官能基であるが、他の反応性および効果的な架橋性官能基が、本明細書において以下に記載されるように同様に有用である。ポリマーの配合物における架橋剤の使用は、当業者に周知であり、少なくとも2つの反応性官能基を有することがこのような剤に必要であることも同様に当業者に認識されている。
【0020】
架橋剤は、エチレン不飽和モノマーとして形成され得る。エチレン不飽和モノマーは、好ましくは、アクリル酸またはメタクリル酸の二官能性エチレン不飽和エステル、アクリル酸またはメタクリル酸の三官能性エチレン不飽和エステル、アクリル酸またはメタクリル酸の四官能性エチレン不飽和エステル、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される(メタ)アクリル酸の多官能性エチレン不飽和エステルである。これらのうち、(メタ)アクリル酸の三官能性および四官能性エチレン不飽和エステルがより好ましい。
【0021】
特に好ましいエチレン不飽和モノマーは以下の式を有する。
【化3】

式中、R1は水素、ハロゲン、および低級アルキル基からなる群から選択されるメンバーを表し、好ましくは1〜4個の炭素原子を有し、より好ましくは水素またはメチルであり;R2は14〜1000の分子量およびm+nの原子価を有する多価有機基を表し;mはエステル中のアクリル基あるいはメタクリル基またはその両方の数を指す整数を表し、好ましくは2〜9、より好ましくは2〜5であり、ここで、アクリルまたはメタクリルモノマーの混合物が用いられる場合、1.05〜5の平均値を有することが好ましく;nは1〜5の値を有する整数を表し;Yは水素、C1〜C5低級アルキル基およびプロトン性官能基からなる群から選択され、好ましくは−−OH、−−COOH、−−SO3H,−−SO(OH)2、−−PO(OH)2、およびオキサゾリドンからなる群から選択される。多価有機基R2は、窒素、非過酸化酸素、硫黄、またはリン原子を有する、環状または直鎖、分岐、芳香族、脂肪族、または複素環式であることができる。アクリレートエステルモノマーは、20%〜80重量%、より好ましくは30%〜70%でコーティング中において使用される。(メタ)アクリル酸の好適な多官能性エチレン不飽和エステルの例は、多価アルコールのポリアクリル酸エステルまたはポリメタクリル酸エステルであり、例えば、脂肪族ジオールのジアクリル酸エステルおよびジメチルアクリル酸エステル(エチレングリコール、トリエチレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1−エトキシ−2,3−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,6−ヘキサメチレンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,6−シクロヘキサンジメタノールなど)、脂肪族トリオールのトリアクリル酸エステルおよびトリメタクリル酸エステル(グリセリン、1,2,3−プロパントリメタノール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,3,6,−ヘキサントリオール、および1,5,10−デカントリオールなど)、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリアクリル酸(triacylic acid)エステルおよびトリメタクリル酸エステル、脂肪族テトラオールのテトラアクリル酸エステルおよびテトラメタクリル酸エステル(1,2,3,4−ブタンテトロール、1,1,2,2,−テトラメチロールエタン、1,1,3,3,−テトラメチロールプロパン、およびペンタエリスリトールなど)、脂肪族ペンタオールのペンタアクリル酸エステルおよびペンタメタクリル酸エステル(アドニトールなど)、ヘキサノールのヘキサアクリル酸エステルおよびヘキサメタクリル酸エステル(ソルビトールおよびジペンタエリスリトールなど)、芳香族ジオールのジアクリル酸エステルおよびジメタクリル酸エステル(レソルシノール、ピロカテコール、ビスフェノールA、およびフタル酸ビス(2−ヒドロキシエチル)など)、芳香族トリオールのトリメタクリル酸エステル(ピロガロール、フロログルシノール、および2−フェニル−2,2−メチロールエタノールなど)が挙げられる。好ましくは、有利な耐酸性のために、(メタ)アクリル酸の多官能性エチレン不飽和エステルは、(メタ)アクリル酸の非ポリエーテル性多官能性エチレン不飽和エステルである。より好ましくは、(メタ)アクリル酸の多官能性エチレン不飽和エステルは、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジ−ペンタエリスリトールペンタアクリレートおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される。もっとも好ましくは、架橋性モノマーは、ペンタエリスリトールトリアクリレートである。ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)は、数々の供給業者から市販されており、ペンシルバニア州セックストン(Sexton、PA)のサルトマー(Sartomer)の商品名「SR944」;日本国大阪府の大阪有機化学工業株式会社からの商品名「ビスコート(Viscoat)300番」;日本国東京都の東亜合成株式会社からの商品名「アロニックス(Aronix)M−305」;および台湾国高雄のエターナルケミカル社(Eternal Chemical Co.、Ltd.、Kaohsiung、Taiwan)からの商品名「SR351」および東亜合成株式会社からの商品名「アロニックス(Aronix)M−309」が挙げられる。
【0022】
前述の架橋剤の調製および/または必要条件は、米国特許第4,396,476号明細書などの文献に記載されているか、または市販されている。供給者の例としては、ペンシルバニア州エクストン(Exton、Pennsylvania)のサルトマー社(SartomerCo.)、およびジョージア州スミルナ(Smyrna、Georgia)のUCBラドキュア(Radcure)が挙げられる。
【0023】
ジルコニアの好ましい範囲は、組成物全量の約25〜75重量%、およびより好ましくは約40〜60重量%である。そして、樹脂マトリックスは、組成物の全量、または組成物の約75〜25重量%、およびより好ましくは約60〜40重量%を構成することとなる。樹脂中の架橋剤の好ましいレベルは、樹脂の総重量の約20〜80重量%である。樹脂の残量、または樹脂の総重量の約80〜20重量%が含芳香族硫黄アクリレートである。
【0024】
光学フィルムとしてのマットコーティングの使用は、ディスプレイ産業において周知である。マット外観は、「散乱反射」を提供する1〜10マイクロメートルの比較的大きな粒子の使用を通じてグレアを低下させることによりリーダに対する視認性を向上させる。この種類の製品は、いかなるAR関数もまったく伴わずに調製されることができる。しかしながら、フジ(Fuji)、米国特許第6,693,746号明細書に記載のとおり、ハードコート層中または高指数層中への大きな(1〜10ミクロン)粒子の取り込みにより、これらの大きな粒子によって提供されるアンチグレア(AG)特質が反射防止(AR)構造に追加され得る。
【0025】
従って、粒状艶消剤が、任意により、本願明細書において記載の組成物に組み込まれ得る(例えばアンチグレア特性を付与するために)。粒状艶消剤はまた、反射率の低減を防止すると共に、関連するハードコート層との干渉により生じる不均一な色合いを防止する。粒状艶消剤は好ましくは透明で、約90%を超える透過率値を示すべきである。あるいは、またはこれに追加して、ヘーズ値は好ましくは約5%未満、およびより好ましくは約2%未満、および最も好ましくは約1%未満である。
【0026】
艶消剤をハードコーティング層に組み込んでいるが、異なるハードコーティング組成を有する例示的な系が、例えば、米国特許第6,693,746号明細書に記載されている。さらに、例示的なマットフィルムが、ジョージア州セダルタウン(Cedartown、Georgia)のU.S.A.キモトテック(U.S.A.Kimoto Tech)から、商品名「N4D2A」で市販されている。
【0027】
粒状艶消剤の添加量は、層18の厚さに応じて、組成物の総固形分の約0.5および10%の間であり、約2%が好ましい量である。アンチグレア層18は、好ましくは0.5〜10ミクロン、より好ましくは0.8〜7ミクロンの厚さを有し、これは、一般に、光沢ハードコーティングと同一の厚さ範囲にある。
【0028】
粒状艶消剤の平均粒径は、予め定義された最小値および最大値を有し、これは部分的に層の厚さに依存する。しかしながら、一般論では、1.0ミクロン未満の平均粒径は、包含を正当化するに十分な程度のアンチグレアを提供せず、一方、10.0ミクロンを超える平均粒径は、透過イメージの鮮鋭さを低下させる。平均粒径は、従って、コールター手法によって計測された数平均値において、好ましくは約1.0および10.0ミクロンの間、およびより好ましくは1.7および3.5ミクロンの間である。
【0029】
粒状艶消剤としては、無機粒子または樹脂粒子が用いられ、例えば、非晶質シリカ粒子;TiO2粒子;Al23粒子;架橋ポリ(メチルメタクリレート)からなるものなどの架橋アクリルポリマー粒子;架橋ポリスチレン粒子;メラミン樹脂粒子;ベンゾグアナミン樹脂粒子;および架橋ポリシロキサン粒子が挙げられる。生産方法中における、アンチグレア層および/またはハードコート層用コーティング混合物中での粒子の分散安定性および沈殿安定性を考慮すると、樹脂粒子がバインダ材料に高い親和性を有すると共に小さい比重を有するため、樹脂粒子が最も好ましく、および特に架橋ポリスチレン粒子が好ましく用いられる。
【0030】
粒状艶消剤の形状としては、球状で非晶質の粒子を用いることができる。しかしながら、ばらつきのないアンチグレア特性を得るためには、球状粒子が望ましい。2つ以上の種類の粒状材料が組み合わされて用いられてもよい。
【0031】
光学フィルムにおける使用が公知である他の添加剤が、本発明の組成物に包含され得る。例えば、フリーラジカル硬化に有用なUV増感剤、脱酸素剤、および他の成分を当該技術分野において公知であるとおり使用し得る。他の任意選択の添加剤としては、酸化防止剤、UV吸収剤、界面活性剤、他の分散剤、着色剤、顔料、および他の粒子、他の光開始剤、および他の当該技術分野において公知である成分が挙げられる。
【0032】
薄膜フィルムを、ディップコーティング、正回転および逆回転ロールコーティング、線巻ロッドコーティング、およびダイコーティングを含む多様な技術を用いて塗布することができる。ダイコータとしては、とりわけ、ナイフコータ、スロットコータ、スライドコータ、流体ベアリングコータ、スライドカーテンコータ、ドロップダイカーテンコータ、および押出しコータが挙げられる。沢山の種類のダイコータが、エドワードコーエン(Edward Cohen)およびエドガーグトッフ(Edgar Gutoff)著、モダーンコーティングおよび乾燥技術(Modern Coating and Drying Technology)、VCH出版社(VCH Publishers)、ニューヨーク(NY)1992年、ISBN3−527−28246−7、およびグトッフ(Gutoff)およびコーエン(Cohen)、コーティングおよび乾燥欠損:トラブルシューティングオペレーティング問題(Coating and Drying Defects: Troubleshooting Operating Problems)、ウィリーインターサイエンス(Wiley Interscience)、ニューヨーク(NY)ISBN0−471−59810−0などの文献に記載されている。
【0033】
ダイコータとは、一般に第1のダイブロックおよび第2のダイブロックを利用してマニホールドキャビティおよびダイスロットを形成する装置を指す。コーティング液は、圧力下で、マニホールドキャビティを通って流れて、コーティングスロットを出てコーティング材料の帯を形成する。コーティングは、単層としてまたは2つ以上の重畳層として塗布されることができる。通常は、基材は、連続ウェブの形態であることが簡便であるが、基材はまた、一連の独立したシートに形成され得る。
【0034】
従って、フィルムの厚さは、その用途に応じて.05ミクロンもの薄さから、8ミクロン以上もの厚さに及び得る。当業者に理解されるであろうとおり、フィルム厚は、所望の耐久性特徴と併せて、所望の光反射率/吸光率特徴に応じて異なり得る。
【0035】
多層フィルムを調製する他の公知の技術としては、スピンコーティング、ナイフコーティング等が挙げられる。米国特許第6,737,154号明細書は、多層高分子フィルムを生産する一の手法を例示する。多層フィルム構造を形成する手法は当該技術分野において公知でありおよび従って、さらなる説明は不要である。
【0036】
本発明のさらなる他の態様において、上述の高指数ハードコートは、一般に、フィルム構造中に含まれ、およびより好ましくは反射防止フィルム構造(例えば光学ディスプレイに用いるための)に含まれる。図5および6に示されているとおり、コーティング10(好ましくは反射防止コーティング)は、PETまたはポリカーボネート、または反射防止フィルムにおける基材としての実用性が認められているいずれかの他の材料から形成された基材12を含有する。基材12は、ディスプレイデバイス16、およびまた基材12の外側に配向された並置の層に結合される。任意選択の接着剤14を、樹脂基材12をディスプレイデバイス16に接着的に結合するために用い得る。本発明によれば、高指数ハードコート層18が、基材12に結合および積層されており、これにより、基材12に物理的に接触する外側に配向された層が形成される。さらに他の本発明の態様においては、ハードコート層18はまた、典型的にはAR構造中の個別層を形成しおよび少なくとも1.55およびより好ましくは1.58の比較的高屈折率を有する高指数層としても機能する。屈折率は、1.75以下の範囲であり得る。このように、通常は2つの独立した高指数層およびハードコート層によって達成される耐久性および高指数を、ハードコート層が提供するのであれば、個別の高指数層の必要性が除去される。1.5以下の屈折率を有する薄膜低指数層20が、次いで、任意によりハードコート層18に連結および/または積層される。
【0037】
低指数層20は、当該技術分野において公知であるとおり形成され得る。低指数層は、典型的には、1.5以下の屈折率を有する。典型的には、低指数層の屈折率は1.35〜1.45の範囲である。高指数層および低指数層の屈折率の差は、典型的には少なくとも0.15以上およびより典型的には0.20以上である。米国特許第6,723,423号明細書は、低屈折率層の形成の公知の理解を例示する。例示的低指数層が、低屈折率フルオロポリマー組成物から形成され得、ならびに、コートされ、および紫外光または熱的手段によって硬化されることができる、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)などの多官能性アクリレート(すなわちアクリレート相)と、任意により追加のフッ素化単官能性アクリレートまたは多官能性フッ素化アクリレートとブレンドされた、反応性フッ素樹脂および/またはフルオロエラストマー(すなわち官能性フルオロポリマー相)を包含する相互侵入高分子網目構造(interpenetrating polymer network)または半相互侵入高分子網目構造に由来し得る。アクリレート架橋剤の存在は、組成物に、低屈折率と、ポリエチレンテレフタレート(「PET」)、またはハードコートPETフィルムなどの高指数ポリマー基材への向上した接着性との両方を提供する。低指数コーティング混合物は、好ましくは単量体多官能性アクリレート間の架橋性反応に関与することができる反応性高分子量フルオロポリマーを表している。これは、フルオロポリマー相の架橋性を形成するポリアクリレート相にまで高めて、高指数層および低指数層の間に増強された界面接触を有する共架橋された、相互侵入または半相互高分子網目構造を製造し、これにより耐久性および低屈折率が向上される。
【0038】
本願明細書において記載されたコーティング組成物は、好ましくは、実施例においてさらに詳細に記載した試験法によって測定される好適な耐摩耗性を提供する。耐摩耗性は、典型的には3以下、および好ましくは2以下である。
【0039】
用語「光学ディスプレイ」、または「ディスプレイパネル」は、いずれかの従来の非照明式および特に照明式光学ディスプレイを指すことができ、特に限定されないが、液晶ディスプレイ(「LCD」)、プラズマディスプレイ、正面投射型および背面投射型ディスプレイ、陰極線管(「CRT」)、および標識などのマルチキャラクターマルチラインディスプレイ、ならびに発光ダイオード(「LED」)、信号ランプおよびスイッチなどのシングルキャラクターまたはバイナリディスプレイが挙げられる。このようなディスプレイパネルの露出表面はまた、「レンズ」として称されることもある。本発明は、触れられたり、またはインクペン、マーカおよび他のマーキングデバイス、布巾、紙製品等による接触を受けやすい目視表面を有するディスプレイに特に有用である。
【0040】
本発明のコーティングは、多様な携帯型および非携帯型情報ディスプレイ物品に利用することができる。これらの物品としては、PDA、携帯電話(PDA/携帯電話の組み合わせを包含する)、LCDテレビ(直下式およびエッジライト式)、タッチスクリーン、腕時計、車ナビゲーションシステム、全地球測位システム、測深器、計算機、電子書籍、CDおよびDVD再生機、投影型テレビスクリーン、コンピュータモニタ、ノートブックコンピュータディスプレイ、機器ゲージ、機器パネルカバー、グラフィック表示などの標識等が挙げられる。視認表面は、従来のサイズおよび形状のいずれをも有することができ、ならびに平坦または非平坦であることができるが、フラットパネルディスプレイが好ましい。
【0041】
コーティング組成物またはコートフィルムは、例えばカメラレンズ、メガネレンズ、双眼鏡レンズ、鏡、再帰反射シート、自動車窓、建物窓、列車窓、ボート窓、航空機窓、車両ヘッドランプおよびテールライト、ディスプレイケース、メガネ、道路舗装マーカ(例えば突起)および舗装マーキングテープ、オーバーヘッドプロジェクタ、ステレオキャビネットドア、ステレオカバー、時計カバー、ならびに光学および光磁気記録ディスク等などの多様な他の物品にも利用することができる。
【0042】
ディスプレイパネルの場合には、基材12は透光性であり、光が基材12を透過することができてディスプレイを視認することができることを意味している。透明(例えば光沢)およびマット透光性基材12の両方がディスプレイパネルにおいて用いられる。
【0043】
基材12は、ガラスなどの広い多様な非高分子材料のいずれか、または、ポリエチレンテレフタレート(PET);(例えばビスフェノールA)ポリカーボネート;セルロースアセテート;ポリ(メチルメタクリレート);通例種々の光学デバイスで用いられる二軸延伸ポリプロピレンなどのポリオレフィンなどの種々の熱可塑性および架橋高分子材料を含むまたはからなり得る。基材はまた、ポリアミド、ポリイミド、フェノール樹脂、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリルコポリマー、エポキシ樹脂等を含むまたはからなり得る。典型的には、基材は、意図される使用のための所望の光学および機械特性に部分的に基づいて選択されることとなる。このような機械特性としては、典型的には、柔軟性、寸法安定性および耐衝撃性が挙げられるであろう。基材厚さはまた、典型的には、意図される使用に依存する。ほとんどの用途について、約0.5mm未満の基材厚さが好ましく、およびより好ましくは約0.02〜約0.2mmである。自己支持型高分子フィルムが好ましい。高分子材料は、押出し成形および任意選択の押出しフィルムの一軸または二軸配向などによる従来の製膜技術を用いてフィルムに形成されることができる。基材は、基材およびハードコート層の間の接着性を向上させるために処理されることができ、例えば、化学処理、空気または窒素コロナ、プラズマ、火炎、または化学線などのコロナ処理がある。所望の場合には、任意選択の結束層またはプライマーを基材および/またはハードコート層に適用して界面接着性を増加させることができる。種々の透光性光学フィルムが公知であり、特に限定されないが、多層光学フィルム;再帰反射シートおよび輝度上昇フィルムなどの微細構造フィルム;(例えば反射性または吸光性)偏光フィルム;拡散フィルム;ならびに2004年1月29日出願の米国特許出願公開第2004−0184150号明細書に記載のものなどの(例えば二軸)位相差フィルムおよび補償フィルムが挙げられる。
【0044】
上述のものは、米国特許出願公開第2003/0217806号明細書の多層光学フィルム、すなわち、所望の透過および/または反射特性を、少なくとも部分的に異なる屈折率のミクロ層の配置により提供するフィルムである。ミクロ層は異なる屈折率特徴を有し、従って、いくらかの光が、隣接するミクロ層の間の界面で反射される。ミクロ層は、所望の反射または透過特性をフィルム本体に付与するために複数の界面で反射された光が建設的干渉または相殺的干渉するよう、十分に薄い。紫外、可視、または近赤外波長で光を反射するよう設計された光学フィルムについては、各ミクロ層は、一般に、約1μm未満の光学厚さ(すなわち、物理的厚さ×屈折率)を有する。しかしながら、フィルムの外表面の表面薄層、またはミクロ層の束を分離するフィルム内に設けられる保護境界層などのより厚い層もまた含まれることができる。多層光学フィルム本体はまた、積層体中の多層光学フィルムの2つ以上のシートを接着するために1つ以上の厚い接着性層を含むことができる。
【0045】
多層光学フィルム本体の反射および透過特性は、それぞれのミクロ層の屈折率の関数である。各ミクロ層は、少なくともフィルムにおける局在的位置で、面内屈折率nx、ny、およびフィルムの厚さ軸に関連する屈折率nzによって特徴付けられることができる。これらの指数は、互いに直交するx−、y−、およびz−軸に沿って偏光された光についての、対象材料の屈折率を表す。実際には、屈折率は、慎重な材料の選択および処理条件によって制御される。フィルムは、典型的には2つの交互するポリマーA、Bの数十または数百の層を共押出し成形し、その後、任意で、多層押出し物を1つ以上の倍増ダイ(multiplication die)に通過させることにより形成することができ、および次いで、押出し物を延伸させ、そうでなければ配向させて最終的なフィルムを形成する。得られるフィルムは、典型的には、可視または近赤外などの所望のスペクトル範囲に1つ以上の反射帯を提供するよう、その厚さおよび屈折率が調節された、数十または数百の個別のミクロ層から組成される。適切な数の層で高い反射率を実現するために、隣接するミクロ層は、好ましくは少なくとも0.05の、x軸に沿って偏光された光についての屈折率(δnx)差を示す。もし、2つの直交する偏光について高反射率が所望である場合、次いで、隣接するミクロ層はまた、好ましくは少なくとも0.05の、y軸に沿って偏光された光についての屈折率(δny)差を示す。そうでなければ、一の偏光状態の直角入射光を反射しおよび直交する偏光状態の直角入射光を透過する多層スタックを製造するために、屈折率差は0.05未満、および好ましくは約0であることができる。所望の場合には、z軸に沿って偏光された光についての、隣接するミクロ層間の屈折率差(δnz)はまた、斜入射光のp−偏光成分について所望の反射率特性を実現するために調整されることができる。
【0046】
高分子多層光学フィルムの製作に用いられることができる例示的材料は、国際公開第99/36248号パンフレット(ニービン(Neavin)ら)に見出すことができる。望ましくは、少なくとも1つの材料が、大きな絶対値を有する応力光学係数を有するポリマーである。換言すると、ポリマーは、延伸されたときに大きな複屈折(少なくとも約0.05、より好ましくは少なくとも約0.1またはさらには0.2)を発現することが好ましい。多層フィルムの用途に応じて、複屈折は、フィルムの面における2つの直交する方向の間、1つ以上の面内方向とフィルム面に直角な方向との間、またはこれらの組み合わせに発現することができる。非延伸ポリマー層間の等方性屈折率が広く離間した特殊な場合においては、少なくとも1つのポリマーにおける大きい複屈折に対する嗜好性は緩和されることができるが、複屈折は、それでも多くの場合に望ましい。このような特殊な場合は、ミラーフィルム用および、フィルムを2つの直交する面内方向に引く二軸プロセスを用いて形成された偏光子フィルム用のポリマーの選択において発生し得る。さらに、ポリマーは、望ましくは、延伸後も複屈折を維持することができ、従って、所望の光学特性が仕上がりフィルムに付与される。第2のポリマーを多層フィルムの他の層について選択することができ、従って、仕上がりフィルムにおいて、第2のポリマーにおける少なくとも1つの方向の屈折率は、第1のポリマーにおける同方向の屈折率から著しく異なる。簡便さのために、フィルムは、2つの別個のポリマー材料のみを用いて製作されることができ、およびこれらの材料を押出し成形プロセス中に挟み込んで、交互層A、B、A、B等を製造する。しかしながら、2つの別個のポリマー材料のみを挟み込むことは必須ではない。その代わりに、多層光学フィルムの各層は、フィルム中のどこにも見出されない固有の材料またはブレンドから組成されることができる。好ましくは、共押出しされるポリマーは、同一のまたは類似した溶融温度を有する。
【0047】
適切な屈折率差および適切な層間接着の両方を提供する例示的な2つのポリマーの組み合わせとしては:(1)主に一軸延伸でのプロセスを用いて形成される偏光多層光学フィルムについて、PEN/coPEN、PET/coPET、PEN/sPS、PET/sPS、PEN/イースタール(Eastar)(登録商標)およびPET/イースタール(Eastar)(登録商標)(ここで、「PEN」はポリエチレンナフタレートを指し、「coPEN」はナフタレンジカルボン酸ベースのコポリマーまたはブレンドを指し、「PET」はポリエチレンテレフタレートを指し、「coPET」はテレフタル酸ベースのコポリマーまたはブレンドを指し、「sPS」はシンジオタクチックポリスチレンおよびその誘導体を指し、およびイースタール(Eastar)(登録商標)は、イーストマンケミカル社(Eastman Chemical Co.)から市販されているポリエステルまたはコポリエステル(シクロヘキサンジメチレンジオール単位およびテレフタレート単位を含むと考えられている)である);(2)二軸延伸方法のプロセス条件を操作することにより形成される偏光多層光学フィルムについて、PEN/coPEN、PEN/PET、PEN/PBT、PEN/PETGおよびPEN/PETcoPBT(ここで、「PBT」はポリブチレンテレフタレートを指し、「PETG」は第2のグリコール(通常はシクロヘキサンジメタノール)を使用するPETのコポリマーを指し、および「PETcoPBT」はテレフタル酸またはそのエステルと、エチレングリコールおよび1,4−ブタンジオールの混合物とのコポリエステルを指す);(3)ミラーフィルムについて(着色ミラーフィルムを含む)、PEN/PMMA、coPEN/PMMA、PET/PMMA、PEN/エクデル(Ecdel)(登録商標)、PET/エクデル(Ecdel)(登録商標)、PEN/sPS、PET/sPS、PEN/coPET、PEN/PETG、およびPEN/THV(登録商標)(ここで、「PMMA」はポリメチルメタクリレートを指し、エクデル(Ecdel)(登録商標)は、イーストマンケミカル社(Eastman Chemical Co.)から市販されている熱可塑性ポリエステルまたはコポリエステル(シクロヘキサンジカルボン酸単位、ポリテトラメチレンエーテルグリコール単位、およびシクロヘキサンジメタノール単位を含むと考えられている)であり、およびTHV(登録商標)は3Mカンパニー(3M Company)から市販されているフルオロポリマーである)。
【0048】
好適な多層光学フィルムおよび関連する構造のさらなる詳細は、米国特許第5,882,774号明細書(ジョンザ(Jonza)ら)、および国際公開第95/17303号パンフレット(オーデルカーク(Ouderkirk)ら)および国際公開第99/39224号パンフレット(オーデルカーク(Ouderkirk)ら)に見出すことができる。高分子多層光学フィルムおよびフィルム本体は、それらの光学、機械的、および/または化学的特性のために選択された追加の層およびコーティングを含むことができる。米国特許第6,368,699号明細書(ギルバート(Gilbert)ら)を参照のこと。高分子フィルムおよびフィルム本体もまた、金属または金属酸化物コーティングまたは層などの無機層を含むことができる。
【0049】
種々の永久および脱着可能グレード接着性組成物14が、ディスプレイ表面に物品10が容易に装着されることができるように、基材12の反対側(すなわちハードコート18の反対側)にコートされ得る。典型的には、接着剤14、基材12、およびハードコーティング層18は、接着剤14に付着された剥離層(図示せず)を有するフィルム19として予めパッケージされている。次いで、剥離層は除去され、および接着性層14が、筐体またはディスプレイ16の他の領域に結合されて光学ディスプレイ16を形成する。
【0050】
好適な接着性組成物14としては、テキサス州ウエストホロウのクラトンポリマー(Kraton Polymers、Westhollow、TX)から商品名「クラトン(Kraton)G−1657」で市販されているものなどの(例えば水素化)ブロックコポリマー、ならびに他の(例えば類似の)熱可塑性ゴムが挙げられる。他の例示接着剤としては、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系およびエポキシ系接着剤が挙げられる。好ましい接着剤は、接着剤は経時的にまたは天候に露出されても黄化して光学ディスプレイの視認品質を劣化させないよう、十分に光学品質および光安定性のものである。接着剤は、転写式コーティング、ナイフコーティング、スピンコーティング、ダイコーティング等などの多様な公知のコーティング技術を用いて塗布されることができる。例示的な接着剤が、米国特許出願公開第2003/0012936号明細書に記載されている。数々のこのような接着剤が、ミネソタ州セントポール(St.Paul、MN)の3Mカンパニー(3M Company)から、商品名8141、8142、および8161で市販されている。基材層12は、種々の光学デバイスにおいて通例用いられる、ガラスなどの広い多様な非高分子材料、またはポリエチレンテレフタレート(PET)、ビスフェノールAポリカーボネート、セルローストリアセテート、ポリ(メチルメタクリレート)、および二軸延伸ポリプロピレンなどの高分子材料のいずれかからなり得る。
【0051】
本発明は、例えば光学コーティングおよび、反射防止フィルムを包含するフィルムに主用途が見出されるであろうことが予期される。しかしながら、これらに限定されるものではない。しかも、本発明は、すべての種々の本発明の構成成分の位置異性体および同族体を包含する。さらに本発明の実施形態の上述の記載は、例示のみを目的とすることが理解されるであろう。このように、本願明細書において開示された種々の構造的および操作的機構には、本技術分野の当業者の能力に相応の多数の修正がなされ得るが、そのいずれも添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲から逸脱してはならない。
【0052】
本発明はさらに、以下の実施例により例示されるが、これにより限定されない。
【実施例】
【0053】
実施例1:
a.アクリル酸2,2−ビス−(ナフタレン−2−イルスルファニルメチル)−プロパン−1,3−ジオール(1)の合成。
1リットル三首丸底フラスコに、機械的攪拌機、コンデンサおよび温度プローブを装着する。このフラスコに、25グラムの2−チオナフタレン、230グラムのジメチルホルムアミド、および20.4グラムの2,2−ビス(ブロモメチル)−1,3−プロパンジオールを投入する。この混合物を、十分に攪拌しながら75℃に加熱する。攪拌されたフラスコに、約1/2時間かけて156mLの2−メチル−2−プロパノール中の1モル濃度のカリウムt−ブトキシドを滴下添加する。添加が完了したら、反応を75℃で約1/2時間保持する。
【0054】
次いで、外部氷浴を用いて反応を約20℃に冷却し、およびフラスコに560グラムの水を、ポット温度を20〜30℃に維持しながら添加する。フラスコに500グラムの酢酸エチルを添加する。よく攪拌し、および相分離させる。上部の有機相を除去し、次いで水性相を300グラムの酢酸エチルで再抽出する。組み合わせた有機相を、300グラムの水および20グラムの高濃度HClの混合物で洗浄する。組み合わせた有機相を、300グラムの水および30グラムの塩化ナトリウムの混合物で洗浄する。ロータリーエバポレータで有機相から溶剤を揮散させる。
【0055】
1400グラムトルエン中で上記の二つの反応から得られた固形分を再結晶させる。生成物を空気乾燥する。回収されたオフホワイトの固形分の収率は48.0グラム(73%)である。生成物は、121〜125℃のmpを有し、および1Hおよび13CNMR分析は、これが所望の生成物(1)であることを立証する。
【化4】

【0056】
b.アクリル酸2−アクリロイルオキシメチル−3−(ナフタレン−2−イルスルファニル)−2−(ナフタレン−2−イルスルファニルメチル)−プロピルエステル(2)の合成。
1リットル三首丸底フラスコに、機械的攪拌機、コンデンサおよび温度プローブを装着する。フラスコに、25グラムの上記中間体(1)を、250グラムのジメチルホルムアミド、14.4グラムのトリエチルアミン、および各0.01グラムのサリチルアルドキシムおよびテトラメチルフェニレンジアミンと共に投入する。この混合物を、十分に攪拌しながら40℃に加熱する。フラスコに、11.8グラムの塩化アクリロイルを、約1/2時間かけて、ポットを約40℃に維持しながら添加する。反応を40℃で1時間保持する。3グラムのトリエチルアミンをフラスコに添加し、次いで2グラムの塩化アクリロイルを滴下添加する。反応を40℃で約1時間保持する。
【0057】
反応を室温に冷却する。フラスコに、430グラムの水、次いで520グラムの酢酸エチルを添加する。5グラムの濃縮HClおよび十分に攪拌し、次いで水性相を相分離する。有機相を、300グラムの水および30グラムの炭酸ナトリウムの混合物で洗浄する。有機相を、300グラムの水および30グラムの塩化ナトリウムの混合物で洗浄する。ロータリーエバポレータで溶剤を揮散させて、静置させると半固体になる不透明の明るい黄色の液体を得る。屈折率は、1.6490である。1Hおよび13CNMR分析は、これが>95%で所望の生成物(2)であることを立証する。所望の生成物2は、3.4ppm(−CH2−S−Napth)、4.2ppm(−CH2−OAcr)、5.8、6.0および6.2ppm(アクリレートオレフィンプロトン)、7.4〜7.5ppmおよび7.7〜7.9ppm(芳香族プロトン)で1H NMR信号(d6−DMSO、TMS)を示した。
【0058】
所望の生成物2は、35.8.ppm(−CH2−S−Napth)、43.3ppm(ペンタエリスリトール−骨格第4級炭素)、64.2ppm(−CH2−OAcr)、164.7ppm(アクリレートカルボニル)、131.2ppm(「4a」第4級炭素、試験的解析)、133.2ppmおよび133.4ppm(硫黄に対してイプソ位の第4級炭素および「8a」第4級炭素;具体的な解析はまだなされていない)および125.8、126.6(1つのナフチル環あたり2C)、126.9、127.0、127.5(1つのナフチル環あたり2C)および128.4ppm(残りの芳香族炭素)で13CNMR信号(d6−DMSO、TMS)を示した。
【化5】

【0059】
c.2,2−ビス−フェニルスルファニルメチル−プロパン−1,3−ジオール(3)の合成:
2−チオナフタレンではなくチオフェノールの化学量論的均等物を用いた以外は、合成を上記のとおり実施した。粗反応混合物を上記のとおり処理して、明るい茶色の油を得た。収率は約100%であった。材料を1Hおよび13C NMRによって分析し、および約60%の所望の中間体(3)であることを見出した。この材料をこのまま引き続くステップで用いた。
【化6】

【0060】
d.アクリル酸2−アクリロイルオキシメチル−3−フェニルスルファニル−2−フェニルスルファニルメチル−プロピルエステル(4)の合成。
中間体(1)ではなく、中間体(3)の化学量論的均等物を用いて合成を上記のとおり実施した。69%収率でアクリレートモノマー生成物を、明るい黄色の油として得た。この材料を1Hおよび13C NMRにより分析し、および約60%で所望の生成物であることを見出した。
【0061】
粗材料(4)の少量のサンプルを、酢酸エチルおよびヘキサンを用いてカラムクロマトグラフィーにより精製し、所望の生成物を回収しおよび溶剤をロータリーエバポレータで除去した。この材料を1Hおよび13CNMRにより分析し、および>95%の所望の生成物(4)であることを見出した。屈折率は、約1.5837と計測された。所望の生成物(4)は、3.2ppm(−CH2−S−Ar)、4.2ppm(−CH2−OAcr)、5.8、6.0、および6.3ppm(アクリレートオレフィンプロトン)および7.2〜7.4ppm(芳香族プロトン)で1HNMR信号(CDCl3、TMS)を示した。
【0062】
所望の生成物(4)は、37.6ppm(−CH2−S−Ar)、43.9ppm(ペンタエリスリトール−骨格第4級炭素)、64.5ppm(−CH2−OAcr)、165.3ppm(アクリレートカルボニル)、136.1ppm(硫黄に対してイプソ位の第4級炭素)、129.0および130.5ppm(硫黄置換に対してオルト−およびメタ−位の芳香族メタン炭素(この各々に対して2C);具体的な解析はなされなかった)、126.8ppm(硫黄置換に対してパラ位の芳香族メタン炭素)、131.1ppm(アクリレートオレフィンメチレン)、127.7ppm(アクリレートオレフィンメタン;試験的解析)および126.8ppm(硫黄に対してパラ位の芳香族メタン炭素;試験的解析)で13CNMR信号(CDCl3、TMS)を示した。
【化7】

【0063】
上記の合成戦略にはまた、置換チオフェノールおよび置換チオナフタレンが組み込まれ得る。図1および2は、それぞれこれらのクラスを例示する。図1中のQは、Br、F、Cl、またはRまたはCF3を包含する群から選択され、その各々は、0〜5のいずれかの組み合わせで存在し得、ここで、Rは直鎖または分岐であり得る1〜6個の炭素を含有する基である。図2中のQは、Br、F、Cl、またはRまたはCF3を包含する群から選択され、その各々は、0〜7のいずれかの組み合わせで存在し得、ここで、Rは直鎖または分岐であり得る1〜6個の炭素を含有する基である。図1および2に例示した両方のクラスは、当該技術分野において周知である供給者から市販されている。例示的な置換チオフェノールとしては、2−ブロモチオフェノールおよび2−イソプロピルチオフェノールが挙げられ、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee、Wisconsin)のアルドリッチケミカルカンパニー(Aldrich Chemical Company)から共に入手可能である。
【0064】
実施例1と関連して、さらに他の本発明の態様においては、含芳香族硫黄アクリレートモノマー、またはチオ芳香族アクリレートモノマーの形成手法が、以下に、実施例1に記載の種々の試薬およびプロセス条件、およびそれらの類似体が拡大されて、記載されている。
1.少なくとも2モルのチオ芳香族化合物を準備し、
2.少なくとも1モルのジハロゲン化ジオールを準備し、
3.チオ芳香族化合物とジハロゲン化ジオールとを反応させてジ−チオ芳香族ジオールを形成し、
4.少なくとも2モルの塩化アクリロイルおよび少なくとも2モルのトリエチルアミンを準備し、および
5.チオ芳香族ジオールと反応性量の塩化アクリロイルおよびトリエチルアミンとを反応させて、ジ−チオ芳香族ジ−アクリレートモノマーを形成する。
【0065】
アクリレートエステルの他の形成手法は、当業者に周知であり、全体がこの明細書に包含される。他の本発明の態様は、上記に挙げた手法で形成されたチオ芳香族アクリレートモノマーを包含し、ここで、好ましいモノマーとしては、アクリル酸2−アクリロイルオキシメチル−3−(ナフタレン−2−イルスルファニル)−2−(ナフタレン−2−イルスルファニルメチル)−プロピルエステル(2)およびアクリル酸2−アクリロイルオキシメチル−3−フェニルスルファニル−2−フェニルスルファニルメチル−プロピルエステル(4)が挙げられる。さらに本発明の態様は、上記に挙げた手法で製造されたチオ芳香族アクリレートを含むハードコートおよび反射防止構造、および、上記に挙げた手法で製造されたこれらのハードコートおよび/または反射防止コーティングを含むディスプレイシステムを包含する。
【0066】
含芳香族硫黄アクリレートの形成手法の、関連する進歩性のある態様としては、このプロセスにより形成されたモノマー、このモノマーを含有するハードコート、およびこのモノマーで形成されたこのハードコートを含有するディスプレイシステムが挙げられる。この手法から形成された生成物の好ましい実施形態としては、アクリル酸2−アクリロイルオキシメチル−3−(ナフタレン−2−イルスルファニル)−2−(ナフタレン−2−イルスルファニルメチル)−プロピルエステル(2)およびアクリル酸2−アクリロイルオキシメチル−3−フェニルスルファニル−2−フェニルスルファニルメチル−プロピルエステル(4)が挙げられる。
【0067】
実施例2:
表面改質ジルコニアナノ粒子の調製
ZrO2メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン
ZrO2ゾルの分離
ZrO2ゾル(207.4g)を分離バックに充填しおよび3500gの脱イオン水中で6時間分離した(シグマ診断チューブMWCO>1200を用いた)。ゾルを単離し(34.03%固形分)、およびシラン処理のために用いた。
【0068】
分離したZrO2ゾル(80g、34.03%固形分、30.8%ZrO2)を、16ozジャーに充填した。水(80g)を攪拌しながら投入した。メトキシプロパノール(160g)、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(8.59g)を、500mlビーカーに攪拌しながら充填した。次いで、メトキシプロパノール混合物をZrO2ゾルに攪拌しながら充填した。ジャーをシールし、および90℃に3時間15分加熱した。加熱後、混合物をロータリーエバポレーションを介して170gまで揮散させて、白色のスラリーを得た。
【0069】
脱イオン水(258g)および高濃度NH3(5.7g、29重量%)を1リットルビーカーに投入した。上記の濃縮したゾルをこれに最低限の攪拌で添加した。固形分を、減圧ろ過を介して湿ったフィルタケーキとして分離した。湿った固形分(82g)をメトキシプロパノール(200g)中に分散させた。混合物を次いでロータリーエバポレーションを介して濃縮した(97g)。メトキシプロパノール(204g)を添加し、および混合物をロータリーエバポレーションを介して濃縮した(85.5g)。メトキシプロパノール(205g)を投入して、および混合物をロータリーエバポレーションを介して濃縮した。最終生成物91.46gを27.4%固形分で分離した。混合物を1μmフィルタでろ過した。
【0070】
2004年12月30日出願の、同時継続中の米国特許出願第11/027426号明細書には、例示的な3Mジルコニア粒子が記載されておりおよび参照により本明細書に援用される。産業に公知であるとおり、ナルコ(Nalco)およびビューラー(Buhler)もまた、本発明によるジルコニア粒子を提供する。
【0071】
実施例4〜10:
以下の表において実施例4〜10によって表される各組成物を、酢酸エチル中に溶解し、および線巻ロッドを用いて約4ミクロンの乾燥厚さにコートした。これらを、100℃の空気循環炉で1分乾燥させた。次いで、これらを500−ワットフュージョン(Fusion)UVプロセッサを用いて20ft/minで2パスを用いて硬化した。ジルコニアをメタクリレートシランで官能化した。シリカもまたメタクリレートシランで官能化した。2−ナフタレンチオエトキシアクリレート(2−NSEA)を、含芳香族硫黄アクリレートとして用い、および公知の方策で形成した。
【0072】
アクリル酸2−(ナフタレン−2−イルスルファニル)−エチルエステル(6)を芳香族単官能性含硫黄アクリレートモノマーとして用い、および以下に記載のとおり形成した。構造もまた以下に示す。
【0073】
2−(ナフタレン−2−イルスルファニル)−エタノール(5)の合成:
12リットル三首丸底フラスコに温度プローブ、機械的攪拌機およびコンデンサを装着する。2000gの2−チオナフトール、4000gのトルエン、および63.1gのトリエチルアミンを添加する。中度の攪拌を用いながら、バッチを95℃に加熱する。反応混合物に、1209gの溶融エチレンカーボネートを滴下添加する。バッチはCO2を放出する。添加は約3時間かかる。添加の完結後、反応を95℃に約12時間保持する。バッチを室温に冷却する。ガスクロマトグラフィーは、1%未満の残存2−チオナフトールを示す。ロータリーエバポレータで溶剤を揮散させて、静置させると結晶化する黄色の油である中間体アルコールを得る。収率は1815gである。この材料の融点は61〜63℃である。
【化8】

【0074】
アクリル酸2−(ナフタレン−2−イルスルファニル)−エチルエステル(6)の合成:
250ml三首丸底フラスコに温度プローブ、機械的攪拌機およびコンデンサを装着する。フラスコに、50gの上記中間体、29.7gのトリエチルアミン、0.01グラムの各サリチルアルドキシムおよびテトラメチルフェニレンジアミン、および430gのt−ブチルメチルエーテルを添加する。混合物を40℃に加熱し、および24.4gの塩化アクリロイルを反応に滴下添加する。反応を40℃に1時間保持する。GCは、反応に残存出発材料がないことを示す。反応を室温に冷却する。フラスコに400グラムの水を添加する。5グラムの高濃度HClを添加し、および十分に攪拌し、次いで水性相を相分離する。有機相を、300グラムの水および30グラムの炭酸ナトリウムの混合物で洗浄する。有機相を、300グラムの水および30グラムの塩化ナトリウムの混合物で洗浄する。ロータリーエバポレータで溶剤を揮散させて黄色油を得る。収率は50gである。このモノマー(6)の屈折率は1.6209である。
【0075】
所望の生成物6は、32.0ppm(−CH2−S−Napth)、62.9ppm(−CH2−OAcr)、165.7ppm(アクリレートカルボニル)、および125.8、126.6(1つのナフチル環あたり2C)、126.9、127.0、127.5(1つのナフチル環あたり2C)および128.4ppm(残りの芳香族炭素)で13CNMR信号(d6−DMSO、TMS)を示した。
【化9】

【0076】
アクリル酸2−{4−[4−(2−アクリロイルオキシ−エチルスルファニル)−フェニルスルファニル]−フェニルスルファニル}−エチルエステルが含芳香族硫黄アクリレートとして用いられる。ペンタエリスリトールトリおよびテトラアクリレート混合物(SR295)は架橋剤として用いられる。ダラキュア(Daracur)4265およびTPOが光開始剤として用いられ、およびこれらは周知のそれらの供給者から入手される。例えば、TPOおよびダラキュア(Daracure)4265は、ニューヨーク州タリータウン(Tarrytown、New York)のチバガイギー(Ciba−Geigy)から入手可能な光開始剤である。
【0077】
コーティング組成物を未乾燥塗膜としてコートしおよびオーブン中で乾燥させて溶剤を除去し、および次いで、H−バルブまたは他のランプを用い、所望の波長で、好ましくは不活性雰囲気(酸素50百万分率(ppm)未満)中で紫外線放射に処した。反応メカニズムは、アクリレート相の多官能性成分を、チオアクリレートモノマー相と共有結合的に架橋させる。例えば高指数ハードコート光学コーティングとして得られたフィルムは、従って、約2〜8ミクロン、およびより好ましくは約3〜6ミクロンの厚さを有する共架橋ポリマーネットワークからなる。約75〜130の範囲の、AR構造中のより薄い層でこの組成物を用いることは可能であろう。
【0078】
改変反復研磨手法(ASTM F735−94)を用いて耐摩耗性を実施した。環状のシェーカを用いた(VWR DS−500E、コネチカット州ブリストル(Bristol、CT)のVWR製)。サンプルを16ozジャー(ニュージャージー州ミルビルのウィートン(Wheaton、Millville、NJ)製W216922)に載置し、50グラムの20〜30メッシュオッタワサンド(Ottawa sand)(コネチカット州ブリストル(Bristol、CT)のVWR製)でカバーした。シェーカを400rpm、1時間にセットした。テスト前および後に、ラムダ(Lambda)900分光光度計(コネチカット州シェルトンのパーキンエルマー(Perkin Elmer、Shelton、CT))を450nmでの拡散透過モードで用いてサンプルのヘーズを計測した。テスト前および後のヘーズの差をサンプルの擦傷とし記録した。屈折率を、メトリコン(Metricon)(登録商標)屈折率計で計測した。
【0079】
【表1】

【0080】
表1に示すとおり、すべての3つの成分、官能化ジルコニア、アクリレート架橋剤、および含芳香族硫黄アクリレートが耐久性高指数ハードコートを製造するために必要であることを実施例は示す。実施例4および5は、ジルコニアが高屈折率コーティングに必要であることを示し、およびアクリレート架橋剤および含芳香族硫黄アクリレートと組み合わされた場合、シリカと同等の耐久性を付与することを示す。実施例6は、ジルコニアと共に含芳香族硫黄アクリレートのみを有する場合、劣った耐久性の結果となることを示す。その一方、ジルコニアおよび架橋剤および含芳香族硫黄アクリレートを組み合わせる(実施例8)と、架橋剤と組み合わされたジルコニア(実施例7)での結果と同等の耐久性をもたらす。最も重要なのは、実施例9および10が、架橋剤の一部を含芳香族硫黄アクリレートで置き換える(実施例10)と、同等の耐久性が提供されるが、架橋剤およびジルコニアだけ(実施例9)と比してより高い屈折率を提供することを示していることである。
【0081】
実施例11:
図3に示すアクリル酸2−{4−[4−(2−アクリロイルオキシ−エチルスルファニル)−フェニルスルファニル]−フェニルスルファニル}−エチルエステル(8)の合成。
15グラムの4,4’−チオビスベンゼンチオール(1)、11.6グラムのエチレンカーボネート、および0.6グラムのトリエチルアミンを30mLのトルエン中に含有する混合物を90℃で4時間加熱した。混合物をトルエン中の10パーセント酢酸エチルから再結晶させて13.2グラムの2−{4−[4−(2−ヒドロキシ−エチルスルファニル)−フェニルスルファニル)−フェニルスルファニル)−エタノール(7)を得た。
【化10】

【0082】
13グラムの(7)および14.9グラムのジイソプロピルエチルアミンを含有する溶液を5℃に冷却し、およびこれに10.4グラムの塩化アクリロイルを20分間の時間をかけて添加した。混合物を5〜10℃で2時間攪拌し、その後これを75mLの1N HCLおよび100mLの酢酸エチルを含有する混合物に注ぎいれた。5分間攪拌した後、有機相を除去し、および飽和KCl溶液で洗浄し、続いて10パーセント水性重炭酸カリウムで洗浄した。溶剤を除去し、および残渣をカラムクロマトグラフィー(25%酢酸エチル/ヘキサンで溶出されたシリカゲル)で精製して、第1の分画に8.5グラムの(8)を得た。
【0083】
実施例11の手法によって形成された所望の生成物8は、3.2ppm[硫黄に対してαの−CH2−]、4.3ppm[酸素に対してαの−CH2−]、5.8ppmおよび6.4ppm[オレフィンメチレン;それぞれシス−およびトランス−プロトン]、6.1ppm[オレフィンメチン]および7.26および7.32ppm[芳香族メチンプロトン]で1HNMR信号(CDCl3、TMS)を示した。
【0084】
所望の生成物8は、32.1ppm[硫黄に対してαの−CH2−]、62.8ppm[酸素に対してαの−CH2−]、128.0ppm[アクリレートオレフィンメチン]、130.2および131.5ppm[芳香族メチン炭素]、131.3ppm[アクリレートオレフィンメチレン]、133.7および134.5ppm[硫黄に対して芳香族環イプソ位炭素]および165.8ppm[アクリレートカルボニル]で13CNMR信号(CDCl3、TMS)を示した。
【化11】

【0085】
実施例12:
図4に示される(11)、アクリル酸アクリル酸2−[7−(2−アクリロイルオキシ−エチルスルファニル)−ナフタレン−2−イルスルファニル]−エチルエステル(11)の合成。
32グラムの2,7−ジヒドロキシナフタレンおよび26.3グラムの水酸化カリウムを10℃に冷却された140mLの水中に含有する混合物に、88mLのテトラヒドロフラン中の56.8グラムの塩化ジメチルチオカルバモイルを徐々に添加した。温度を添加の間中12℃未満に維持した。形成された固形分をろ過し、水で洗浄し、メタノール中に再スラリー化しおよびろ過して、50.2グラムのジメチル−チオカルバミン酸O−(7−ジメチルチオカルバモイルオキシ−ナフタレン−2−イル)エステルを製造した。乾燥後、これを丸底フラスコ中に載置しおよび窒素雰囲気下に250℃で1.5時間加熱した。混合物を冷却し、および固形分を酢酸エチルから再結晶させて、17グラムのジメチル−チオカルバミン酸S−(7−ジメチルカルバモイルスルファニル−ナフタレン−2−イル)エステルを得た。50mLのエタノールと22.4グラムのカリウム溶液との32milの水中の混合物にこれを添加し、および次いで還流で30分間加熱した。混合物を冷却し、300mLの水で希釈し、および塩酸で酸性化した。形成された固形分をろ過し、および乾燥させて8.5グラムのナフタレン−2,7−ジチオール(9)を得た。
【化12】

【0086】
5.4グラムのナフタレン−2,7−ジチオール(9)、5.4グラムのエチレンカーボネートおよび0.26グラムのトリエチルアミンを20mLのトルエン中に含有する混合物を90℃に4時間加熱した。混合物を冷却し、およびろ過により固形分を除去した。固形分を酢酸エチルから再結晶させて、5.3グラムの2−[7〜2−ヒドロキシ−エチルスルファニル]−ナフタレン−2−イルスルファニル]−エタノール(10)を得た。
【化13】

【0087】
5.2グラムの(10)および7.2グラムのジイソプロピルエチルアミンを40mLのテトラヒドロフラン中に含有する混合物を5℃に冷却しおよびこれに5グラムの塩化アクリロイルを添加した。混合物をこの温度で2時間攪拌し、その後これを、75mLの1N HCLおよび100mLの酢酸エチルの混合物に注ぎいれた。5分間攪拌した後、有機相を分離し、および飽和塩化カリウム溶液で洗浄し、続いて10パーセント炭酸カリウムで洗浄した。溶剤を除去し、および残渣を、ヘキサン中の25パーセント酢酸エチルで溶出されるシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製して、第1の分画に2.6グラムの(11)を得た。
【0088】
実施例12の手法で形成された所望の生成物(11)は、5.8ppm、6.1ppm、および6.4ppm(アクリルオレフィンプロトン)、7.4および7.7ppm(ナフタレン環系の3−、4−、5−、および6−位における芳香族環メチン)、および7.75ppm(ナフタレン環系の1−および8−位における芳香族環メチン)で1H NMR信号(CDCl3、TMS)を示した。
【0089】
所望の生成物(11)は、165.8ppm(アクリレートカルボニル)、134.0ppm(環結合点4−および5−位の第4級環炭素)、133.8ppm(硫黄に対してイプソ位の第4級炭素)、131.3ppm(アクリレートオレフィンメチレン)、130.3ppm(1−および8−位の間の環結合点の第四級環炭素)および128.4ppm、128.0ppm、127.3ppm、および126.5ppm(ナフタレン環メチンおよびアクリレートオレフィンメチン)で13CNMR信号(CDCl3、TMS)を示した。
【化14】

【0090】
単に適切に出発ナフタレンジオールを選択しおよび同一の手法に従うだけで、(11)の他のナフタレン異性体の調製に上記の手法が用い得ると考えられている。
【0091】
以下の表2は、種々の例示組成物の組成を記載すると共に、各組成物に対するRIおよび耐磨耗テストの結果を記載している。
【0092】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】アリールチオ試薬のフェニルクラスを構造的に示す。
【図2】アリールチオ試薬のナフチルクラスを構造的に示す。
【図3】アクリル酸2−{4−[4−(2−アクリロイルオキシ−エチルスルファニル)−フェニルスルファニル]−フェニルスルファニル}−エチルエステルの形成を構造的に示す。
【図4】本発明の好ましい実施形態を構造的に示す。
【図5】本発明による光学コーティングを含有する反射防止コーティング構造を示す。
【図6】本発明による典型的なディスプレイデバイスを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基材と、
基材に結合されたハードコート層であって、表面改質無機ナノ粒子、少なくとも1種のアクリレート架橋剤、および含芳香族硫黄アクリレートモノマーの反応生成物を含むハードコート層と、
前記ハードコート層と結合された任意選択の低屈折率と
を含むディスプレイ。
【請求項2】
前記無機ナノ粒子が表面改質ジルコニアである、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項3】
ハードコート層が少なくとも1.58の屈折率を有する、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項4】
低指数層が1.5以下の屈折率を有する、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項5】
含芳香族硫黄アクリレートモノマーが、ナフタレン基または2つ以上の芳香族基を含有する、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項6】
前記含芳香族硫黄アクリレートモノマーが、以下のナフタレンおよびフェニル式によって定義される化合物の群から選択される、請求項1に記載のディスプレイ。
【化1】

【請求項7】
前記アクリレート架橋剤が多官能性であり、および前記含芳香族硫黄アクリレートが、少なくとも1.58またはそれを超える屈折率を示す、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項8】
前記含芳香族硫黄アクリレートモノマーが、アクリル酸2−[7−(2−アクリロイルオキシ−エチルスルファニル)−ナフタレン−2−イルスルファニル]−エチルエステルおよびアクリル酸2−{4−[4−(2−アクリロイルオキシ−エチルスルファニル)−フェニルスルファニル]−フェニルスルファニル}−エチルエステルからなる群から選択される、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項9】
前記含芳香族硫黄アクリレートモノマーが、以下の式によって定義される化合物の群から選択される、請求項1に記載のディスプレイ。
【化2】

(式中、R1=HまたはCH3であり、m、n、p、qは独立して1〜6であり、Arはいずれかの芳香族基である。)
【請求項10】
前記含芳香族硫黄アクリレートが、アクリル酸2−アクリロイルオキシメチル−3−(ナフタレン−2−イルスルファニル)−2−(ナフタレン−2−イルスルファニルメチル)−プロピルエステルおよびアクリル酸2−アクリロイルオキシメチル−3−フェニルスルファニル−2−フェニルスルファニルメチル−プロピルエステルからなる群から選択される、請求項9に記載のディスプレイ。
【請求項11】
ハードコート組成物であって、樹脂マトリックス中に含芳香族硫黄アクリレートと表面改質ジルコニアナノ粒子とを含み、前記ハードコートが少なくとも1.58の屈折率を有する、ハードコート組成物。
【請求項12】
アクリレート架橋剤で架橋された、請求項11に記載のハードコート。
【請求項13】
光開始剤をさらに含む、請求項11に記載のハードコート。
【請求項14】
前記ハードコートが、改定ASTM F735−94により測定される際、3.0%ヘーズ以下の耐摩耗性を有する、請求項11に記載のハードコート。
【請求項15】
前記樹脂マトリックスが、少なくとも3の官能価を有する多官能性アクリレートであるペンタエリスリトールトリアクリレートを含む、請求項11に記載のハードコート。
【請求項16】
前記多官能性アクリレートがペンタエリスリトールトリアクリレートである、請求項15に記載のハードコート。
【請求項17】
請求項11に記載のハードコートを含む、ディスプレイ。
【請求項18】
ナフタレン基、または2つ以上の芳香族基を含有する含芳香族硫黄アクリレート、
アクリレート架橋剤、および
官能化ジルコニアナノ粒子
を含むコーティング組成物。
【請求項19】
前記ジルコニアナノ粒子が、約10〜30ナノメートルの直径を有する、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
下記式により定義される、含芳香族硫黄アクリレートモノマー。
【化3】

(式中、R1=HまたはCH3であり、m、n、p、qは独立して1〜6であり、Arはいずれかの芳香族基である。)
【請求項21】
アクリル酸2−アクリロイルオキシメチル−3−(ナフタレン−2−イルスルファニル)−2−(ナフタレン−2−イルスルファニルメチル)−プロピルエステルおよびアクリル酸2−アクリロイルオキシメチル−3−フェニルスルファニル−2−フェニルスルファニルメチル−プロピルエステルからなる群から選択される、請求項20に記載のモノマー。
【請求項22】
下記式により定義される、含芳香族硫黄アクリレートモノマー。
【化4】

【請求項23】
下記式により定義される群から選択される含硫黄アクリレートモノマーを含む、重合性組成物。
【化5】

(式中、R1=HまたはCH3であり、m、n、p、qは独立して1〜6であり、Arはいずれかの芳香族基である。)
および
【化6】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−527413(P2008−527413A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549456(P2007−549456)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【国際出願番号】PCT/US2005/045876
【国際公開番号】WO2006/073773
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】