説明

高屈折率偏光レンズの製造方法

気泡の発生といった不具合が無く密着性に優れたポリイソシアネートとポリチオールからなるポリウレタン系高屈折率偏光レンズの製造方法を提供する。偏光膜の両面にポリイソシアネートとポリチオールから形成されたポリウレタン系ポリマーからなるレンズ層を形成する工程を含む高屈折率偏光レンズの製造方法において、前記偏光膜として水分含有量が4.5重量%以下である偏光膜を用いることを特徴とする高屈折率偏光レンズの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイソシアネートとポリチオールから形成されたポリウレタン系ポリマーを用いた高屈折率偏光レンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に偏光レンズは、自然光が反射されたときに生じる偏光を遮断し、これにより防眩作用もしくは減光作用を果たすものである。近年においては、偏光レンズのこのような作用を利用して、特に屋外における偏光防止、たとえばスキー場における雪面の反射偏光の防止、釣りの場合の水面からの乱反射光の防止、あるいは自動車運転時に受ける対向車からの反射光の防止などに使用されている。また、このような分野のほかに、減光作用を目的とするサングラス、ファッショングラス等を含む多方面で使用されている。
【0003】
これらの偏光レンズを構成する透明樹脂として、比重が1.32とガラスより小さく、耐熱性、耐水性、耐溶剤性、加工性に優れ、しかも視力矯正作用をも兼ね備え、なおかつ少量多品種の生産性に適している樹脂であるジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂が主として用いられている。ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂製偏光レンズは、一般的に特許文献1に記載されているような方法、すなわちガスケットの両側部にモールドを嵌め、両モールド間に偏光膜を配置した後、重合開始剤を混合溶解したジエチレングリコールビスアリルカーボネートモノマーを充填し、重合硬化する方法(注型重合)によって製造されている。あるいは、特許文献2に記載されているように、2枚のレンズの間に偏光膜を挟持した状態で接着させることによって偏光レンズを製造する場合もある。
【特許文献1】:特開昭61−235113号公報
【特許文献2】:特開2001−249227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂は、屈折率が1.50と低く、強度数のマイナスレンズとした場合にレンズ周縁の厚みが大きくなり、見栄えが悪くかつ重くなるという欠点があった。近年、この欠点を改良する樹脂としてポリイソシアネートとポリチオールから形成されたポリウレタン系樹脂製の高屈折率レンズ(屈折率1.60−1.70)が開発され、現在も需要が伸びている。しかしながら、このポリイソシアネートとポリチオールからなるポリウレタン系モノマーを用いた場合、前記特許文献1に記載された方法に従って成型すると、偏光膜と樹脂層との界面付近に小さな気泡が生じ、偏光膜と樹脂層とが剥離し易くなるという不具合が発生する場合があった。
【0005】
また、互いに相補的な形状の接合面を有する2枚のポリウレタン系樹脂製高屈折率レンズをポリイソシアネートとポリチオールから作製し、各レンズの接合面にポリイソシアネートとポリチオールを含むモノマー混合物を塗布し、2つの接合面の間にモノマー混合物(接着剤)を介して偏光膜を挟持した状態で固定した後、加熱して重合硬化した場合(前記特許文献2と類似の方法)にも、前記のレンズと同様、偏光膜とレンズの間に小さな気泡が発生する現象が観察された。
本発明は、かかる不具合を解消し、偏光膜とレンズ層との密着性に優れたポリイソシアネートとポリチオールからなるポリウレタン系高屈折率偏光レンズの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の小さな気泡が生じる原因の一つが偏光膜中の水分であるとの観点から、偏光膜中の水分と気泡発生との関係を鋭意検討した。その結果、偏光膜中の水分を約4.5重量%以下とすることにより気泡の発生を抑止できることを見出し、本発明をなすに至った。
よって本発明は、偏光膜の両面にポリイソシアネートとポリチオールから形成されたポリウレタン系ポリマーからなるレンズ層形成工程を含む高屈折率偏光レンズの製造方法において、前記偏光膜として水分含有量を4.5重量%以下とした偏光膜を用いることを特徴とする高屈折率偏光レンズの製造方法を提供する。
【0007】
また、従来ジエチレングリコールビスアリルカーボネートと偏光膜を重合密着させる場合、その接着強度を増すため偏光膜に媒体となるシランカップリング剤等のコート処理を行うのが一般的であるが、ポリイソシアネートとポリチオールから形成されたポリウレタン系樹脂の場合には偏光膜に処理をしなくても充分接着強度が得られる事を見出した。従って本発明では、偏光膜として水分含有量が4.5重量%以下で、かつ表面が無処理である偏光膜が好ましく用いられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、偏向膜とレンズ層の界面付近で生じていた気泡の発生を格段に抑制でき、偏光膜とレンズ層との密着性に優れたポリイソシアネートとポリチオールからなるポリウレタン系高屈折率偏光レンズを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る高屈折偏光レンズの製造方法の好適な実施の形態を説明する。
請求項2に係る製造方法(以下「第1実施形態」とする)では、注型重合の手法を用いて偏光膜の両面にレンズ層を形成する工程(レンズ層形成工程)を経て高屈折率偏光レンズを製造する。
【0010】
より詳細には、まず、ガスケットの両側部にモールドを嵌め、ガスケット内面と両モールドとで画定される空隙内に、水分含有量が4.5重量%以下で、かつ表面が無処理である偏光膜を配置する。
次いで、前記空隙内の各モールドと偏光膜との間隙に、ポリイソシアネートとポリチオールを含むモノマー混合物を充填する。
【0011】
ここで使用されるモノマー混合物は、ポリイソシアネートとポリチオールとを含有する。
本発明における「ポリイソシアネート」とは、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機化合物を指し、具体的にはヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ノルボルネンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのビューレット化反応性生成物、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト反応生成物などの脂肪族系あるいは脂環族系ポリイソシアネート、さらにp−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルエタンジイソシアネート、などの芳香族ポリイソシアネートが挙げられる。
【0012】
一方、「ポリチオール」とは1分子中に2個以上のチオール基を有する有機化合物を指し、具体的にはエタンジチオール、ヘキサンジチオール、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、ビス(2−メルカプトエチル)チオエーテル、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエルスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエルスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、4−メルカプトメチル−3,6−ジチア−1,8−オクタンジチオール、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、1,2−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、トリス(3−メルカプトプロピル)トリイソシアヌレートなどが挙げられる。
【0013】
これらのポリイソシアネートとポリチオールは各々1種類または2種類以上を混合して用いることができる。但し、ポリイソシアネートとポリチオールイソシナネートとチオールの混合比率は、イソシナネート基とチオール基とが当量であるのが望ましい。例えば、キシリレンジイソシアネート及びペンタエルスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)とを混合する場合は、各々43重量%及び57重量%とし、両者が当量比率となるようにすることが適切である。
【0014】
この実施形態で使用するモノマー混合物は、重合硬化することによって、透明で、その屈折率が1.59以上のレンズを形成する配合とするのが好ましい。そのような配合は、当業者であれば容易に設定することができる。
このモノマー混合物には、ジブチル錫ジラウレート等の反応促進剤、紫外線吸収剤、離型剤あるいは染料などを必要に応じて添加することができる。
【0015】
次に、充填したモノマー混合物を重合硬化することにより、偏光膜の両面に、ポリイソシアネートとポリチオールから形成されたポリウレタン系ポリマーからなるレンズ層が形成される。
重合硬化は、通常、5℃から40℃の間の温度で開始し、その後時間をかけて徐々に110℃から120℃を上限とし昇温させてその温度で2時間から4時間加熱することによって行なう。但し、偏光膜としてヨウ素染色された膜を用いる場合は110℃以上加熱すると偏光膜が変色し色のバラツキや色ムラを生じる場合があるので90℃から105℃を上限とし昇温させ、その後は離型性によって4時間から10時間その温度を維持して重合させることが好ましい。
重合硬化した後、一体成形物(偏光レンズ)を離型し、重合による歪みを緩和することを目的として、離型したレンズを加熱してアニール処理を施すのが望ましい。アニール処理温度は通常110℃から125℃で約1時間から3時間行なえばよい。但し、ヨウ素染色された偏光膜を使用した場合は90℃から105℃で約1時間から3時間行なう。
【0016】
この第1実施形態において使用されるガスケットの材質としては、ポリ塩化ビニル,エチレン−酢酸ビニルコポリマー,エチレン−エチルアクリレートコポリマー,エチレン−プロピレンコポリマー,エチレン−プロピレン−ジエンコポリマー,ポリウレタンエラストマー,フッ素ゴム,あるいはそれらにポリプロピレンをブレンドした軟質弾性樹脂類が用いられるが、ポリイソシアネートとポリチオールを含むモノマー混合物に対して膨潤も溶出もしない材質が選ばれる。
【0017】
請求項3に係る製造方法(以下「第2実施形態」とする)においては、ポリイソシアネートとポリチオールとを含むモノマー混合物を接着剤として、別に作製した2枚の高屈折率レンズを、それらの間に偏光膜を挟持した状態で接着する工程(レンズ層形成工程)を経て高屈折率偏光レンズを製造する。
【0018】
より詳細には、まず、ポリイソシアネートとポリチオールから形成されたポリウレタン系ポリマーからなる2枚の高屈折率レンズを用意する。これらの2枚のレンズは、互いに接着する接合面のカーブを同一とすること、即ち、2枚のレンズの接合面を互いに相補的な形状としておくことが必要である。
これらのレンズは、上記の第1実施形態において説明したポリイソシアネートとポリチオールを含むモノマー混合物を用いて、例えば、前記した注型重合とよばれる方法で成型され得る。あるいは、ポリイソシアネートとポリチオールから形成された市販のポリウレタン系高屈折率レンズの接合面を研磨して互いの接合面のカーブを合わせたものを用いてもよい。
【0019】
次いで、各レンズの一方の面(接合面)にポリイソシアネートとポリチオールを含むモノマー混合物(接着剤)を塗布する。
ここで、接着剤として用いられるポリイソシアネートとポリチオールを含むモノマー混合物は、前記第1実施形態において用いられるものと同じでよい。好ましくは、ここで使用されるモノマー混合物は、接着される2枚のポリウレタン系高屈折率レンズを構成するモノマー組成と同一の組成とする。モノマー組成が異なると屈折率が相違し、その結果としてレンズと接着面との間で反射が起こる場合がある。また、接着剤として用いるモノマー混合物には、離型剤を添加しないか、接着性に影響しない程度の微量の離型剤を添加するのが好ましい。
【0020】
次に、前記接着剤(モノマー混合物)を塗布した接合面の間に、水分が4.5重量%以下である偏光膜を挟持した状態で固定し、加熱して前記モノマー混合物を重合硬化させることによって目的の高屈折率偏光レンズを得る。
重合硬化は、第1実施形態と同様の条件で行なう。即ち、通常は、室温から30分以上かけて徐々に120℃まで加熱することによって硬化させるが、ヨウ素染色した偏光膜を使用する場合は、105℃を上限とすることが望ましい。
【0021】
上記第1実施形態及び第2実施形態のいずれにおいても、使用される偏光膜は、水分含有量が4.5重量%以下、好ましくは4.3重量%以下、より好ましくは4.0重量%以下とされた膜である。水分含有量が約4.5重量%を越えた偏光膜を使用すると、モノマー混合物を重合硬化させた後に、偏光膜とレンズとの間に小さな気泡の発生が見られた。
【0022】
使用する偏光膜としては、偏光レンズにおいて最も広く使用されているポリビニルアルコール偏光膜を使用するのが好ましい。この偏光膜は、ポリビニルアルコールの薄いフィルムを延伸配向させ、ヨウ素あるいは二色性染料で染色することにより得られる。その他、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等のポリマーフィルムから製造された偏光膜を使用してもよい。
【0023】
本発明の製造方法は、偏光膜の水分含有量が4.5重量%を越えている場合には、前記レンズ層形成工程に供する前に、偏光膜の水分含有量を4.5重量%以下にする乾燥工程を更に具備する。
本発明における乾燥工程は、加熱、風乾、真空乾燥等の手段を用いて偏光膜を乾燥することを含む。但し、加熱する場合には、偏光膜を構成する材料(ポリマー)のガラス転移点未満の温度まで加熱するのが好ましく、ヨウ素染色された偏光膜の場合は、約105℃を上限として加熱するのが好ましい。
【0024】
偏光膜を構成するポリビニルアルコールは、元来吸湿性の高いポリマーである。よって、その水分含有量が4.5%を越えている場合は、ポリビニルアルコールのガラス転移点(約70℃)未満の温度で加熱乾燥して、水分を4.5%以下にするのが好ましい。
【0025】
本発明者らは、偏光膜中の水分と、成型あるいは接着に用いるモノマー混合物に含まれるポリイソシアネートとが反応し、その際発生する炭酸ガスが気泡になると考えている。従って、偏光膜に含まれる水分量を約4.5重量%以下に低下させることにより前記の反応を抑制し、その結果、気泡がなく、密着性に優れた積層体を得ることができた。
なお、本発明における「水分含有量(重量%)」とは、絶対乾燥状態の膜重量に対する、水分を吸収したことによる重量増加分の割合(%)である。また、本発明における「絶対乾燥状態」とは、膜を90℃で4時間以上、真空乾燥した状態と定義する。
【実施例1】
【0026】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。
厚さ40μmの市販のポリビニルアルコール製二色染料系偏光膜を用い、本発明の第1実施形態の方法に従って偏光レンズを作製するとともに、偏光膜の水分含有量と気泡発生の有無との関係を調べた。
【0027】
具体的には、以下の手法を用いた。
(1)偏光膜を温度20℃、相対湿度65%に調節した恒温恒湿器の中に24時間静置して調湿した。
(2)調湿した偏光膜を、60℃に温度調節した熱風循環式オーブン内に置き、その後30分毎に取り出し、即座にレンズ成型用のガラスモールドセットの中に入れ、その両側に予め調合したポリイソシアネートとポリチオールのモノマー混合物を注入した。
(3)注入後このモールドセットを熱風循環式オーブンの中に置き、30℃で10時間保ったのち、8時間をかけて徐々に110℃まで昇温させ、さらに110℃で3時間維持して重合硬化した。
(4)次いで60℃まで除冷した後、オーブンからモールドセットを取り出して離型し、レンズにおける気泡発生の有無を調べた。結果を下記の表1に示す。
【0028】

【0029】
表1から明らかなように、偏光膜の水分含有量が4.30%以下(加熱1.5時間以上)では、気泡の無い良好な偏光レンズが得られたが、4.72%以上(加熱1.0時間以下)では微小気泡が発生した。また、水分含有量が増加するのに伴って、気泡の数が増え、そのサイズも大きくなる傾向が見られた。
【0030】
上記において、偏光膜の水分含有量は、同時にオーブンから取り出した別の偏光膜の重量(W1)を即座に測定し、それを、予め90℃に保った真空乾燥器に迅速に入れ、真空で5時間乾燥した後に、吸湿しないように重量(W0)を測定し、乾燥前後の重量変化から下記に式に従って算出した。
水分含有量(重量%)={(W1−W0)/W0}x100
なお、90℃における真空乾燥における偏光膜の重量変化を測定したところ、4時間で恒量に達していた。
【0031】
また、成型に用いたモノマー混合物は、ノルボルナンジイソシアネート51重量部、ペンタエルスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)23重量部および4−メルカプトメチル−3,6−ジチア−1,8−オクタンジチオール26重量部を混合し、さらに硬化促進剤としてジブチル錫ジラウレートを0.06重量部、離型剤としてZelec UN(商品名)を0.1重量部加えて溶解した後、減圧下で脱泡処理して調製した。
【実施例2】
【0032】
厚さ50μmの市販ポリビニルアルコール製ヨウ素系偏光膜を用い、本発明の第2実施形態の方法に従って高屈折率偏光レンズを作製するとともに、偏光膜の水分含有量と気泡の発生の有無との関係を調べた。
【0033】
具体的には、以下の手法を用いた。
(1)偏光膜の調湿、乾燥を前記の実施例1と同様に行った。
(2)熱風循環式オーブンから取り出した偏光膜を、直前にポリイソシアネートとポリチオールのモノマー混合物を塗布した2枚のポリウレタン系高屈折率レンズの接合面に即座に挿入し、貼り合わせて固定した。
(3)貼り合わせたレンズを熱風循環式オーブンの中に置き、30℃から90℃へ30分かけて昇温させ、90℃で10時間保持して接着剤を重合硬化させた。
(4)次いで60℃に除冷したのち、オーブンから貼り合わせたレンズ積層物を取り出して気泡の有無を調べた。
偏光膜の水分含有量は実施例1と同様の方法で算出した。結果を下記の表2に示す。
【0034】

【0035】
表2から明らかなように、偏光膜の水分含有量が4.35%以下(加熱1.5時間以上)では、気泡のない良好な偏光レンズが得られたが、水分含有量が4.69%以上(加熱1.0時間以下)では微小気泡が発生した。この場合にも、水分含有量の増加に伴って気泡の数が増え、そのサイズも大きくなった。
【0036】
接着に用いたモノマー混合物は、ノルボルナンジイソシアネート51重量部、ペンタエルスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)23重量部および4−メルカプトメチル−3,6−ジチア−1,8−オクタンジチオール26重量部を混合し、さらに硬化促進剤としてジブチル錫ジラウレート0.06重量部を溶解した後、減圧下で脱泡処理して調製した。
【0037】
貼り合わせに用いた2枚のレンズは次のようにして作製した。
(1)ノルボルナンジイソシアネート51重量部、ペンタエルスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)23重量部および4−メルカプトメチル−3,6−ジチア−1,8−オクタンジチオール26重量部を混合し、さらに硬化促進剤としてジブチル錫ジラウレート0.06重量部、離型剤としてZelec UN(商品名)0.1重量部を加えて溶解した後、減圧下で脱泡処理してモノマー混合物を調製した。
(2)前記のモノマー混合物を、ガラスモールド中に注入し、このモールドセットを熱風循環式オーブン中に置き、30℃で10時間保ったのち、8時間をかけて徐々に110℃まで昇温し、さらに110℃で3時間維持して重合硬化した。
(3)次いで60℃に除冷したのち、オーブンからモールドセットを取り出して離型した。
(4)離型後、さらに115℃で2時間アニール処理した。当該レンズの屈折率は1.593であった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、高屈折率偏光レンズ、特にポリイソシアネートとポリチオールからなるポリウレタン系レンズの製造に利用することができる。本発明の製造方法における偏向膜の水分含有量を調節する工程は、例えば、加熱、風乾、真空乾燥等の手段を用いて実施できるので、レンズの工業的生産にも適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光膜の両面にポリイソシアネートとポリチオールから形成されたポリウレタン系ポリマーからなるレンズ層を形成する工程を含む高屈折率偏光レンズの製造方法において、
前記偏光膜として水分含有量が4.5重量%以下である偏光膜を用いることを特徴とする高屈折率偏光レンズの製造方法。
【請求項2】
前記レンズ層形成工程が、ガスケットの両側部にモールドを嵌め、両モールド間に、水分含有量が4.5重量%以下である偏光膜を配置した後、各モールドと偏光膜との間隙にポリイソシアネートとポリチオールを含むモノマー混合物を充填して重合硬化することを含むことを特徴する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記レンズ層形成工程が、ポリイソシアネートとポリチオールから形成されたポリウレタン系ポリマーからなる2枚の高屈折率レンズを用意し、各レンズの一方の面にポリイソシアネートとポリチオールを含むモノマー混合物を塗布し、当該塗布面の間に水分含有量が4.5重量%以下である偏光膜を挟持した状態で固定した後、当該積層物を加熱して前記モノマー混合物を重合硬化させることを含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記レンズ層形成工程に先立って、偏光膜の水分含有量を4.5重量%以下とする乾燥工程を更に含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の製造方法。

【国際公開番号】WO2004/099859
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【発行日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506022(P2005−506022)
【国際出願番号】PCT/JP2004/006376
【国際出願日】平成16年5月12日(2004.5.12)
【出願人】(394019543)株式会社ホプニック研究所 (5)
【Fターム(参考)】