説明

高屈折率樹脂組成物、樹脂成形体、光学部品および光学デバイス

【課題】 本発明の目的は、高屈折率、透明性および耐光性を有し、光学部品に適用可能な高屈折率樹脂組成物を提供することにある。また、上述のような高屈折率樹脂組成物を用いた樹脂成形体、光学部品および光学デバイスを提供することにある。
【解決手段】 本発明の高屈折率樹脂組成物は、光学部品として用いるものであって、ヒドロキシアミド重合体(a)と、酸化ジルコニウム粒子(b)及び溶剤(c)を含むものである。また、本発明の樹脂成形体は、上記に記載の高屈折率樹脂組成物に熱処理をすることにより得られるものである。また、本発明の光学部品は、上記に記載の樹脂成形体を有する。また、本発明の光学デバイスは、上記に記載の光学部品を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高屈折率樹脂組成物、樹脂成形体、光学部品および光学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
光学材料として、光通信に代表されるような多様な用途に応じたさまざまな透明材料が検討されている。情報機器の急速な小型軽量化や表示素子の高精細化に伴い、光学材料自体に対する要求も高度なものになっており、例えば、高耐熱性及び高透明性の両立が必要とされている。しかしながら、石英ガラス等の無機材料は、製作プロセスにおいて高温処理が必要であったり、構成や装置が複雑であったりするために高コストとなるといった問題があった。
【0003】
これに対して、プラスチック材料としては、光学特性の優れたポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネートに代表される耐熱樹脂が知られている。一般的にプラスチック材料の屈折率は低いため、高屈折率化のために、プラスチック材料中への酸化チタン粒子の分散が検討されている。しかしながら、高屈折率である酸化チタン粒子をプラスチック材料中に分散させた場合、その光触媒能によりプラスチック材料が分解される怖れがあり、耐光性の低い光学材料となる場合がある。
【0004】
プラスチック材料の耐光性低下を防止するため、酸化チタン粒子を金属元素酸化物で被覆する方法が検討されている(特許文献1参照)。しかし、この方法では、酸化チタン粒子への被覆が不十分な場合は耐光性が低下し、被覆が十分である場合は屈折率の低下を招くため、高屈折率と耐光性の両立が困難であった。また、金属元素酸化物の被覆により、酸化チタン粒子の粒径が大きくなったり、酸化チタン粒子同士が接着したりするため、プラスチック材料中での分散性が低下し、透明性の低下につながる可能性がある。
【0005】
また、耐光性を有する酸化ジルコニウム含有シリコーン樹脂組成物を光学材料として使用することが検討されている(特許文献2参照)。この樹脂組成物は、光触媒能の低い酸化ジルコニウムを相溶させるため耐光性は付与されるが、シリコーン樹脂の屈折率が低いため、十分な光学特性を有しているものではない。
【0006】
このように、高屈折率、透明性および耐光性を兼ね備えた光学部品に適用可能な樹脂の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−228888号公報
【特許文献2】特開2008−303299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、高屈折率、透明性および耐光性を有し、光学部品に適用可能な高屈折率樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明の目的は、上述のような高屈折率樹脂組成物を用いた樹脂成形体、光学部品および光学デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記(1)〜(12)に記載の本発明により達成される。
(1)光学部品として用いられる高屈折率樹脂組成物であって、ヒドロキシアミド重合体(a)と、酸化ジルコニウム粒子(b)及び溶剤(c)を含むことを特徴とする高屈折率樹脂組成物。
(2)前記光学部品は、入射光を電子素子に誘導するものである上記(1)に記載の高屈折率樹脂組成物。
(3)前記酸化ジルコニウム粒子(b)は、有機化合物により表面処理されているものである上記(1)または(2)に記載の高屈折率樹脂組成物。
(4)前記有機化合物により表面処理されている酸化ジルコニウム粒子(b)の波長633nmにおける屈折率が1.85以上である上記(3)に記載の高屈折率樹脂組成物。
(5)前記有機化合物は、50%重量減少温度が400℃以下である上記(3)または(4)に記載の高屈折率樹脂組成物。
(6)前記酸化ジルコニウム粒子(b)は、前記高屈折率樹脂組成物中において、動的光散乱法における平均粒径が1〜50nmである上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の高屈折率樹脂組成物。
(7)前記ヒドロキシアミド重合体(a)100重量部に対して、酸化ジルコニウム粒子(b)の含有量は100〜500重量部である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の高屈折率樹脂組成物。
(8)前記ヒドロキシアミド重合体(a)の標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は、3,000〜20,000である上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の高屈折率樹脂組成物。
(9)上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の高屈折率樹脂組成物を、300℃以上の熱処理をすることにより得られることを特徴とする樹脂成形体。
(10)波長633nmでの屈折率が、1.80以上である上記(9)に記載の樹脂成形体。
(11)上記(9)または(10)に記載の樹脂成形体を有することを特徴とする光学部品。
(12)上記(11)に記載の光学部品を有することを特徴とする光学デバイス。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高屈折率、高透明性および耐光性を有し、光学部品に適用可能な高屈折率樹脂組成物を得ることができる。
また、本発明によれば、性能に優れた樹脂成形体、光学部品および光学デバイスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の光学部品の1つである光導波路の構造例を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の高屈折率樹脂組成物、樹脂成形体、光学部品および光学デバイスについて詳細に説明する。
本発明の高屈折率樹脂組成物は、光学部品として用いるための高屈折率樹脂組成物であって、ヒドロキシアミド重合体(a)と、酸化ジルコニウム粒子(b)及び溶剤(c)を含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の樹脂成形体は、上記に記載の高屈折率樹脂組成物を、300℃以上の熱処理をすることにより得られることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の光学部品は、上記に記載の樹脂成形体を有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の光学デバイスは、上記に記載の光学部品を有することを特徴とする。
【0016】
まず、高屈折率樹脂組成物について説明する。
本発明の高屈折率樹脂組成物は、光学部品として用いるものである。この光学部品を用いるような光学デバイスとしては、例えば光通信用プラスチック導波路、オンチップマイクロレンズ、集光レンズ、オンチップマイクロレンズとフォトダイオードの間に設ける光導波路等が挙げられる。
【0017】
前記高屈折率樹脂組成物は、ヒドロキシアミド重合体(a)と、酸化ジルコニウム粒子(b)及び溶剤(c)を含むことを特徴とする。
【0018】
前記ヒドロキシアミド重合体(a)は、特に限定されないが、ビスアミノフェノール化合物とジカルボン酸化合物とを反応させて合成されるものが挙げられる。ビスアミノフェノール化合物とジカルボン酸化合物とを反応させて得られるヒドロキシアミド重合体としては、o−ヒドロキシアミド重合体、m−ヒドロキシアミド重合体、およびp−ヒドロキシアミド重合体が挙げられる。この中でも、好ましくは、o−ヒドロキシアミド重合体である。これにより、ヒドロキシアミド重合体を縮合反応させて、耐熱性が高く溶剤に対する耐性の高いポリベンゾオキサゾール重合体を得ることができる。さらに好ましくは、下記式(A)で表され、下記式(B)で表される基の中から選ばれる基を有するビスアミノフェノール化合物の少なくとも1種と、下記式(C)で表される基の中から選ばれる基を有するジカルボン酸化合物の少なくとも1種とを用いて反応させて合成されるヒドロキシアミド重合体である。これにより、高屈折率と透明性を得ることができる。
【0019】
【化1】

【0020】
【化2】

【0021】
【化3】

【0022】
【化4】

【0023】
【化5】

【0024】
なお、式(B)、式(C)、式(D)及び式(E)で表される基における環構造上の水素原子は、炭素数1〜4のアルキル基の中から選ばれる少なくとも1個の基で置換されていてもよい。上記炭素数1〜4のアルキル基としては、特に限定されないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基及びt−ブチル基などが挙げられる。
【0025】
また、式(E)中のR置換基は、アリール基又は炭素数1〜10のアルキル基であり、具体的には、前記アリール基としては、フェニル基、ベンジル基、トリル基、o−キシリル基、m−キシリル基及びp−キシリル基などが挙げられる。前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基及びアダマンチル基などが挙げられる。
これらの中でも、フェニル基、トリル基、o−キシリル基、m−キシリル基、p−キシリル基、メチル基、イソブチル基及びt−ブチル基が好ましく、フェニル基、トリル基、o−キシリル基、m−キシリル基及びp−キシリル基がより好ましい。これにより、溶剤に対する溶解性を向上することができる。
【0026】
本発明で用いるビスアミノフェノール化合物の具体例としては、特に限定されないが、1,3−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、9,9−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等が挙げられる。
これらのなかでも、より好ましくは3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、9,9−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンである。これにより、透明性を向上することができる。さらに好ましくは、9,9−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンである。これにより、透明性をより向上することができる。
これらのビスアミノフェノール化合物は単独で用いてもよく、また2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
本発明で用いるジカルボン酸化合物の具体例としては、特に限定されないが、イソフタル酸、4,4’−スルホニルビス安息香酸、3,3’−スルホニルビス安息香酸、2,2’−スルホニルビス安息香酸、4,4’−チオビス安息香酸、3,4’−チオビス安息香酸、3,3’−チオビス安息香酸、2,2’−チオビス安息香酸、4,4’−オキシビス安息香酸、3,3’−オキシビス安息香酸、2,2’−オキシビス安息香酸、1,3−ビス(4−カルボキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−カルボキシフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−カルボキシフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−カルボキシフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(3−カルボキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン等が挙げられる。
これらの中でも、より好ましくは、イソフタル酸、4,4’−チオビス安息香酸、3,4’−チオビス安息香酸、3,3’−チオビス安息香酸、2,2’−チオビス安息香酸、4,4’−オキシビス安息香酸、3,3’−オキシビス安息香酸、2,2’−オキシビス安息香酸、9,9−ビス(3−カルボキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン、である。これにより、透明性を向上することができる。さらに好ましくは、4,4’−チオビス安息香酸、3,4’−チオビス安息香酸、3,3’−チオビス安息香酸等のチオビス安息香酸、である。これにより、屈折率を向上することができる。
これらのジカルボン酸化合物は単独で用いてもよく、また2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
また、前記ジカルボン酸化合物はその誘導体を含む。その誘導体とは、酸ハロゲン化物や活性化エステル化物等を示す。例えば、酸クロリド化物は、まず、N,N’−ジメチルホルムアミド等の触媒存在下で、前記ジカルボン酸化合物と、過剰量の塩化チオニルとを、室温ないし130℃程度の温度で反応させ、過剰の塩化チオニルを加熱及び減圧により留去した後、残査をヘキサン等の溶媒で再結晶することにより得ることができる。
【0029】
前記ジカルボン酸化合物に加え、構造の異なるジカルボン酸化合物を併用することが好ましい。これにより、ヒドロキシアミド重合体の耐熱性および溶剤に対する溶解性を向上することができる。
このようなジカルボン酸化合物の具体的としては、特に限定されないが、4−フェニルエチニルイソフタル酸、5−フェニルエチニルイソフタル酸、2−フェニルエチニルテレフタル酸、3−フェニルエチニルテレフタル酸等が挙げられる。
これらの中でも、より好ましくは、4−フェニルエチニルイソフタル酸、5−フェニルエチニルイソフタル酸、2−フェニルエチニルテレフタル酸、3−フェニルエチニルテレフタル酸である。これにより、耐熱性および溶剤に対する溶解性を向上することができる。さらに好ましくは、4−フェニルエチニルイソフタル酸、5−フェニルエチニルイソフタル酸である。これにより、耐熱性、透明性および溶剤に対する溶解性をさらに向上することができる。
これらのジカルボン酸化合物は単独で用いてもよく、また2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
具体的なビスアミノフェノール化合物およびジカルボン酸化合物の好ましい組み合わせとしては、特に限定されないが、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンとイソフタル酸、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンと3,3’−チオビス安息香酸、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンと4,4’−オキシビス安息香酸、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンと9,9−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルと9,9−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンとイソフタル酸、9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンと3,3’−チオビス安息香酸、9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンと4,4’−チオビス安息香酸、9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンと3,4’−チオビス安息香酸、9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンと4,4’−オキシビス安息香酸、9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンと9,9−ビス(3−カルボキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンと9,9−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレンが挙げられる。これにより、透明性および溶剤に対する溶解性を向上することができる。さらに好ましくは、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンと3,3’−チオビス安息香酸、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルと9,9−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンと3,3’−チオビス安息香酸、9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンと4,4’−チオビス安息香酸、9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンと3,4’−チオビス安息香酸、9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンと4,4’−オキシビス安息香酸、9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンと9,9−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレンが挙げられる。これにより、高屈折率、高透明性および溶剤に対する溶解性に優れる。
【0031】
また、ビスアミノフェノール化合物と構造の異なる2種類のジカルボン酸化合物の好ましい組み合わせとしては、具体的には、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンとイソフタル酸と5−フェニルエチニルイソフタル酸、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンと3,3’−チオビス安息香酸と5−フェニルエチニルイソフタル酸、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンと4,4’−オキシビス安息香酸と5−フェニルエチニルイソフタル酸、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンと9,9−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレンと5−フェニルエチニルイソフタル酸、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルと9,9−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレンと5−フェニルエチニルイソフタル酸、9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンとイソフタル酸と5−フェニルエチニルイソフタル酸、9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンと3,3’−チオビス安息香酸と5−フェニルエチニルイソフタル酸、9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンと4,4’−チオビス安息香酸と5−フェニルエチニルイソフタル酸、9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンと3,4’−チオビス安息香酸と5−フェニルエチニルイソフタル酸、9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンと4,4’−オキシビス安息香酸と5−フェニルエチニルイソフタル酸、9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンと9,9−ビス(3−カルボキシフェニル)フルオレンと5−フェニルエチニルイソフタル酸、9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンと9,9−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレンと5−フェニルエチニルイソフタル酸が挙げられる。これにより、耐熱性、透明性および溶剤に対する溶解性を向上することができる。さらに好ましくは、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンと3,3’−チオビス安息香酸と5−フェニルエチニルイソフタル酸、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルと9,9−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレンと5−フェニルエチニルイソフタル酸、9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンと3,3’−チオビス安息香酸と5−フェニルエチニルイソフタル酸、9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンと4,4’−チオビス安息香酸と5−フェニルエチニルイソフタル酸、9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンと3,4’−チオビス安息香酸と5−フェニルエチニルイソフタル酸、9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンと4,4’−オキシビス安息香酸と5−フェニルエチニルイソフタル酸、9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンと9,9−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレンと5−フェニルエチニルイソフタル酸である。これにより、耐熱性、屈折率、透明性および溶剤に対する溶解性にさらに優れる。
【0032】
上記ヒドロキシアミド重合体の合成において、ビスアミノフェノール化合物とジカルボン酸化合物とを反応させる方法としては、特に限定されないが、従来の酸クロライド法、活性化エステル法、ポリリン酸やジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤の存在下での縮合反応等の方法を挙げることができる。
【0033】
本発明に用いるヒドロキシアミド重合体の製造方法として、酸クロライド法について詳細に説明する。
まず、使用するジカルボン酸クロライド化合物を合成する。N,N’−ジメチルホルムアミド等の触媒存在下で、前記ジカルボン酸化合物と、過剰量の塩化チオニルとを、室温ないし100℃程度の温度で反応させ、過剰の塩化チオニルを加熱及び減圧により留去した後、残査をヘキサン等の溶媒で再結晶することにより、ジカルボン酸クロライド化合物を得ることができる。
製造したジカルボン酸クロライド化合物を、前記ビスアミノフェノール化合物と共に、通常、N−メチル−2−ピロリドン及びN,N’−ジメチルアセトアミド等の極性溶媒に溶解し、ピリジン等の酸受容剤存在下で、室温ないし−30℃程度の温度で反応させることにより、ヒドロキシアミド重合体を得ることができる。
【0034】
このようにして得られるヒドロキシアミド重合体が共重合体である場合の繰り返し単位の配列は、ブロック的であっても、ランダム的であっても良い。
例えば、ブロック的な繰り返し単位の製造方法としては、酸クロライド法による場合、式(B)で表される基の中から選ばれる基を有するビスアミノフェノール化合物と、式(C)で表される基の中から選ばれる基を有するジカルボン酸クロライド化合物の少なくとも1種とを、予め反応させて重合体の分子量を上げた後、更に式(B)で表される基の中から選ばれる基を有するビスアミノフェノール化合物と、式(E)で表される基の中から選ばれる基を有するジカルボン酸クロライド化合物の少なくとも1種とを反応させることにより得ることができる。
【0035】
また、逆に、式(B)で表される基の中から選ばれる基を有するビスアミノフェノール化合物と、式(E)で表される基の中から選ばれる基を有するジカルボン酸クロライド化合物の少なくとも1種とを、予め反応させて重合体の分子量を上げた後、更に式(B)で表される基の中から選ばれる基を有するビスアミノフェノール化合物と式(C)で表される基の中から選ばれる基を有するジカルボン酸クロライド化合物の少なくとも1種とを反応させてもよい。
【0036】
ランダム的な繰り返し単位の場合は、式(B)で表される基の中から選ばれる基を有するビスアミノフェノール化合物と式(C)で表される基の中から選ばれる基を有するジカルボン酸クロライド化合物の少なくとも1種と、式(E)で表される基の中から選ばれる基を有するジカルボン酸クロライド化合物の少なくとも1種とを、同時に反応させることにより得ることができる。
【0037】
また、上記一般式(A)で表される前記ヒドロキシアミド重合体(a)は、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は、3,000〜20,000が好ましい。これにより、前記ヒドロキシアミド重合体(a)は、耐熱性および溶剤への溶解性を両立することができる。より好ましくは4,000〜15,000である。これにより、塗膜形成に適した溶液粘度となり、基板への濡れ性が高く膜厚を均一にすることができる。さらに好ましくは、5,000〜12,000である。これにより、耐熱性を維持しつつ、塗膜形成に適した溶液粘度となり、基板への濡れ性が高く膜厚を均一にすることができる。
【0038】
上記重量平均分子量は、高速液体クロマトグラフを用い、標準ポリスチレンで検量線を作成し、ポリスチレン換算で求めたものをいう。例えば、装置として、東ソー株式会社製高速液体クロマトグラフSC−8020システムに、TSKgelGMH−HRH高速SEC用カラム、UV(λ=270nm)検出器を用い、移動相としてLiBr0.5%を添加したN−メチル−2−ピロリドン液を用いて測定し、標準ポリスチレンとして、東ソー製PS−オリゴマーキットにより、リテンションタイムと分子量の検量線を作製し、ヒドロキシアミド重合体のポリスチレン換算の重量平均分子量を求めることができる。
【0039】
また、ヒドロキシアミド重合体の標準ポリスチレン換算の重量平均分子量を前記範囲にするための反応方法としては、例えば、上記製造方法において、ジカルボン酸クロライド化合物とビスアミノフェノール化合物の反応モル比を調整して分子量を制御する方法、ジカルボン酸クロライド化合物とビスアミノフェノール化合物に、カルボン酸クロライド化合物又はアミノフェノール化合物を用いて、反応を停止させ、任意の分子量に調整する方法等を例示することができる。上記カルボン酸クロライド化合物及びアミノフェノール化合物は、ヒドロキシアミド重合体の末端基として反応を終結させ、それ以上分子量が大きくならないようにするために用い、特に限定されないが、安息香酸クロライド、2−アミノフェノールなどを例示することができる。
【0040】
本発明の高屈折率樹脂組成物は、酸化ジルコニウム粒子(b)を含む。前記酸化ジルコニウム粒子(b)は、特に限定されないが、表面が有機化合物等で表面処理されていてもよい。これにより、ヒドロキシアミド重合体(a)や溶剤(c)への分散性を向上することができる。
【0041】
前記表面処理としては、例えば、前記有機化合物による酸化ジルコニウム粒子(b)表面に対する被覆処理、または前記有機化合物による酸化ジルコニウム粒子(b)への表面修飾処理、溶剤中もしくは無溶剤において混合し、加熱して表面吸着処理させる方法が挙げられる。また、前記有機化合物による表面処理後に、溶剤中において高周波超音波ホモジナイザーや、微小ビーズを用いたビーズミル処理等を行うことが好ましい。これにより、均一に表面処理された平均粒径の小さい粒子が得られる。また、表面処理後の前記有機化合物の状態は、使用する有機化合物により特に限定されないが、酸化ジルコニウム粒子(b)の表面全体又は一部が前記有機化合物により被覆された状態、酸化ジルコニウム粒子(b)の表面の一部に前記有機化合物が接している状態等が挙げられる。
【0042】
前記有機化合物は、特に限定されないが、前記有機化合物により表面処理されている酸化ジルコニウム粒子(b)の波長633nmにおける屈折率が1.85以上となるものが好ましい。例えば、ポリオキシアルキルエーテル、ポリオキシアリールエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド等があげられる。より好ましくは、ポリオキシアルキルエーテル、ポリオキシアリールエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリウレタン、ポリアミドである。これにより、本発明の高屈折率樹脂組成物の屈折率および酸化ジルコニウム粒子(b)の分散性を向上することができる。さらに好ましくは、ポリプロピレングリコール、ポリウレタン、ポリアミドである。これにより、本発明の高屈折率樹脂組成物の分散性と屈折率をより向上することができる。
【0043】
また、前記有機化合物は、50%重量減少温度が400℃以下であることが好ましい。上記50重量減少温度とは、示差熱熱重量同時測定装置を用いて、該有機化合物を50℃から600℃まで5℃/分昇温させたときの重量減率が、50%に達したときの温度である。このような前記有機化合物として、特に限定されないが、ポリオキシアルキルエーテルでは、ポリオキシエチレン(5)ドコシルエーテル、ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアミン等が挙げられ、ポリオキシアリールエーテルでは、ポリオキシエチレン(2)オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(2)ノニルフェニルエーテル等が挙げられ、ポリエチレングリコールでは、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600等が挙げられ、ポリプロピレングリコールでは、ポリプロピレングリコール400、ポリプロピレングリコール700、アミン末端ポリプロピレングリコールであるポリプロピレングリコール−ビス−2−アミノプロピルエーテル400、ポリウレタン系のものでは、ポリプロピレンヘキサメチレンジイソシアネート、ポリブチレンヘキサメチレンジイソシアネート、ポリエステル系のものでは、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンシクロヘキシレート等が挙げられる。より好ましくは、ポリオキシエチレン(5)ドコシルエーテル、ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアミン、ポリオキシエチレン(2)オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(2)ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、ポリプロピレングリコール400、ポリプロピレングリコール700、ポリプロピレングリコール−ビス−2−アミノプロピルエーテル400である。これにより、熱処理工程において前記有機化合物は分解されるため、熱処理工程後、さらに本発明の高屈折率樹脂組成物の屈折率を上昇することができる。さらに好ましくは、ポリオキシエチレン(5)ドコシルエーテル、ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(2)オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(2)ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、ポリプロピレングリコール400、ポリプロピレングリコール700、ポリプロピレングリコール−ビス−2−アミノプロピルエーテル400である。
なお、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールの後に記載している数字は、それぞれ、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールの平均分子量を示す。
【0044】
これらの有機化合物は、単独で用いてもよく、また、2種類以上を混合して使用することもできる。また、有機化合物により表面処理されていない酸化ジルコニウム粒子、またはそれぞれ異なる有機化合物により表面処理されている酸化ジルコニウム粒子を、単独で用いてもよく、また、2種類以上を混合して使用することもできる。
【0045】
酸化ジルコニウム粒子の平均粒子径としては、1〜50nmが好ましい。これにより、透明性の低下を抑えることが出来る。より好ましくは、1〜40nmである。これにより、透明性の低下をより抑えることが出来る。さらに好ましくは、1〜30nmである。これにより、短波長領域においても透明性の低下を抑えることが出来る。
上記平均粒子径は、高屈折率樹脂組成物中における酸化ジルコニウム粒子の、動的光散乱式粒径分布測定装置を用いて測定したキュムラント解析における平均粒径として測定することができる。その際の測定条件としては、例えば、25℃〜40℃において、高屈折率樹脂組成物中における酸化ジルコニウム粒子の固形分濃度が1%〜50%の範囲で測定することが好ましい。
【0046】
本発明に用いる溶剤(c)としては、ヒドロキシアミド重合体(a)の構造により、それぞれ異なるが、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒及び非プロトン極性溶媒などが挙げられ、例えば、ケトン系溶媒として、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、4−メチル−シクロヘキサノン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、炭酸プロピレン、ジアセトンアルコール及びγ−ブチロラクトンなど;エーテル系溶媒として、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコール1−モノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル及び1,3−ブチレングリコール−3−モノメチルエーテルなど;エステル系溶媒として、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチル−1,3−ブチレングリコールアセテート、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル及びメチル−3−メトキシプロピオネートなど;非プロトン系極性溶媒として、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド及びジメチルスルホキシドなど;等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中で、ヒドロキシアミド重合体(a)の構造により異なるが、N−メチル−2−ピロリドンと前記N−メチル−2−ピロリドン以外の溶媒の混合物、シクロペンタノンと前記シクロペンタノン以外の溶媒の混合物、シクロヘキサノンと前記シクロヘキサノン以外の溶媒の混合物がより好ましい。前記ヒドロキシアミド重合体(a)の溶解性が高いため、高屈折率樹脂組成物の組成を均一にすることができる。
【0047】
本発明の高屈折率樹脂組成物において、光学部品の使用目的等により異なるが、前記ヒドロキシアミド重合体(a)100重量部に対して、前記酸化ジルコニウム粒子(b)の含有量は、100〜500重量部であることが好ましい。これにより、高屈折率樹脂組成物は、均一な膜を得るために適当な粘度となり、また、屈折率が上昇するため、良好な光学特性を得ることができる。より好ましくは、前記ヒドロキシアミド重合体(a)100重量部に対して、前記酸化ジルコニウム粒子(b)の含有量は150〜450重量部である。これにより、より良好な光学特性を得ることができる。さらに好ましくは、前記ヒドロキシアミド重合体(a)100重量部に対して、前記酸化ジルコニウム粒子(b)の含有量は200〜400重量部である。これにより、均一な膜を得るための最適な粘度を維持しつつ、より良好な光学特性を得ることができる。
【0048】
また、前記ヒドロキシアミド重合体(a)100重量部に対して、溶剤(c)の含有量は400〜3,000重量部が好ましい。これにより、前記高屈折率樹脂組成物は、フィルム状に成形する場合において、膜厚の調整が容易となり、また、均一な膜を作成するのに適した溶液粘度とすることができる。より好ましくは、600〜2,500重量部である。これにより、均一で適切な厚みの膜を作成するのに適した溶液粘度とすることができる。さらに好ましくは、800〜2,000重量部である。これにより、高屈折率樹脂組成物を、安定な状態で均一かつ適切な厚みの膜を作成するのに適した溶液粘度とすることができる。
【0049】
本発明の高屈折率樹脂組成物は、ヒドロキシアミド重合体(a)と酸化ジルコニウム粒子(b)と溶剤(c)以外の成分として、分散剤、界面活性剤、シラン系に代表されるカップリング剤などの表面処理剤、酸素ラジカルやイオウラジカルを加熱により発生するラジカル開始剤等の添加剤を添加することができる。
また、前記分散剤としては、グリセリンやステアリン酸及びオレイン酸などの脂肪酸、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルメタリン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタンなどが挙げられる。
【0050】
本発明の高屈折率樹脂組成物は、上記で得られたヒドロキシアミド重合体(a)、酸化ジルコニウム粒子(b)および溶剤(c)、また、必要に応じて添加剤を混合することにより得ることができる。
上記組成物の混合において、酸化ジルコニウム粒子(b)と溶剤(c)を予め混合して、溶剤中に酸化ジルコニウム粒子(c)を分散させた分散液を用意すると好ましい。これにより、酸化ジルコニウム粒子(c)の分散性を向上することができる。
【0051】
これらの酸化ジルコニウム粒子(c)を溶剤に均一に分散させる方法としては、前述した酸化ジルコニウム粒子を表面処理する方法のほかに、例えば、溶剤と、酸化ジルコニウム粒子と、必要に応じて表面処理剤や分散剤とを混合した後に、高周波超音波ホモジナイザーや、微小ビーズを用いたビーズミルを用いて分散させる方法等が挙げられる。
【0052】
本発明の樹脂成形体は、前記高屈折率樹脂組成物を300℃以上の熱処理をすることにより得られることを特徴とする。
本発明の樹脂成形体が、フィルム状である場合の熱処理について説明する。本発明の高屈折率樹脂組成物を、適当な支持体、例えば、シリコーンウェハーやセラミック基板等に塗布して、塗膜を形成する。塗布方法としては、特に限定されないが、スピンナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング等が挙げられる。その後、上記で得た塗膜を、例えば、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気中で、40℃以上、425℃以下の温度で加熱して溶剤を除去し、引き続き、300℃以上の温度下で、加熱及び/又活性エネルギー線を照射して、前記光学部品用組成物中のヒドロキシアミド重合体を、縮合反応させてフィルムを形成し、それを光学部品として使用することができる。
前記活性エネルギー線としては、例えば、電子線、紫外線領域から赤外線領域の任意の波長を有する光線を用いることができる。
【0053】
本発明の光学部品は、本発明の樹脂成形体を有することを特徴とする。また、本発明の光学部品は、入射光を電子素子に誘導するものとして利用されることが好ましい。このような光学部品について、好適な実施形態に基づいて説明する。
図1は光導波路の一例を示す断面図である。光学部品100は、基板1と、基板1に埋め込まれているフォトダイオード11と、フォトダイオード11を覆うように設けられている樹脂成形体5と、樹脂成形体5の側面を囲むように設けられた絶縁材2と、絶縁材2中に設けられた回路配線21と、樹脂成形体5および絶縁材2の上面(図1中の上側)に設けられたカラーフィルター3と、カラーフィルター3の上面に設けられた平坦化膜4と、樹脂成形体5の上方に相当する、平坦化膜4の上側の位置に設けられたレンズ6とで構成されている。このような構成により、レンズ6から入射した光信号7が、平坦化膜4およびカラーフィルター3を透過して、樹脂成形体5に入射される。
ここで、レンズ6に垂直方向に入射する光は、光漏れ等を特に生じることなくフォトダイオード11に入射される。これに対して、レンズ6に対して入射角度θが大きい光は、樹脂成形体5で光漏れ等が生じる場合があった。本発明では、樹脂成形体5は前述したように高屈折率の光学部品用樹脂組成物の硬化物で構成されているので、入射角度θが大きい光信号7に対しても光信号7を外部に漏らすことなく、フォトダイオード11に誘導することができる。
【0054】
ここで、樹脂成形体5は、本発明の樹脂成形体で構成されており、耐熱性および透明性に優れているものである。そのため、光学部品を実装する際の熱履歴に充分耐えることが可能であり、またフォトダイオードの受光量を向上することができる。
【0055】
さらに、樹脂成形体5が、本発明の樹脂成形体で構成されている場合、その高い屈折率により光漏れ等を低減することができるため、フォトダイオードの受光量を向上することができる。
【0056】
また、このような樹脂成形体5を形成する場合、予め樹脂成形体5に相当する部分が凹部となっており、そこに前述の高屈折率樹脂組成物を埋め込んだ後に、硬化させる手法が取られている。
このような凹部の大きさとしては、例えば径0.4〜1μm、深さ0.5〜2μmの場合が挙げられ、非常に小さい空間である。このような凹部に前述した高屈折率樹脂組成物を埋め込むためには、高屈折率樹脂組成物の室温での溶液粘度を低いものとして流動性を十分に確保する必要がある。そのような室温での溶液粘度としては、例えば5〜11mPa・sであることが好ましく、特に7〜10mPa.sであることが好ましい。溶液粘度が前記範囲内であると、凹部への埋込み性に優れる。
【0057】
具体的には、上述したような凹部に本発明の高屈折率樹脂組成物を埋め込み、250〜400℃において、0.5〜5分間加熱・乾燥して樹脂成形体5を得て、最終的な光学部品100を得る。
【0058】
樹脂成形体5の633nmでの屈折率は、特に限定されないが、1.80以上であることが好ましい。屈折率が前記範囲内であると、光信号7が樹脂成形体5よりもれるのを防止する効果に優れる。より好ましくは1.80〜2.00である。これにより、光信号7が樹脂成形体5よりもれるのを防止する効果が特に優れる。さらに好ましくは、1.82〜1.95である。これにより、さらに集光効率を高める効果に優れる。
前記屈折率は、例えばプリズムカップリング法を用いた屈折率測定装置、プリズムカプラー(メトリコン社製2010プリズムカプラー)を用いて評価することができる。その際の測定には、直径2インチ、厚み1mmの石英基板上に本発明の高屈折率樹脂組成物の液状被膜を作成し、加熱・乾燥させたものを用いる。
【0059】
樹脂成形体5は、特に限定されないが、波長400nmにおける厚み1μmでの光線透過率が90%以上であることが好ましく、特に95%以上であることが好ましい。光線透過率が前記範囲内であると、特に透明性に優れる。
【0060】
このような光学部品100の具体例としては、例えば、光学レンズ、光学フィルター、光スイッチ、光導波路、光ファイバー、集光レンズ等が挙げられる。
また、このような光学部品100は、上述したような樹脂成形体5で光学素子が被覆されているので、光漏れが小さく、光学素子の受光特性に優れる。
【0061】
また、上述したような光学部品100を有する光学デバイスとしては、例えば光電集積回路、光集積回路、CCDセンサ、CMOSセンサ等の光学デバイス等が挙げられる。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0063】
(実施例1)
1.ジカルボン酸化合物の合成(4,4’−オキシビス安息香酸ジクロライドの合成)
温度計、ジムロート冷却管、撹拌機を備えた300mLの4つ口フラスコに、東京化成工業株式会社製4,4’−オキシビス安息香酸10.33g(0.04mol)、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.08g(0.0004mol)および塩化チオニル50g(0.42mol)を加え、3時間還流した。100℃で塩化チオニルを留去し、残留物を60℃で12時間真空乾燥し、10.9gの4,4’−オキシビス安息香酸ジクロライドを得た。(収率92%)
【0064】
2.ヒドロキシアミド重合体の重合
窒素ガスフロー下で、ビスアミノフェノール化合物(A)として9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン30.44g(0.08mol)を、乾燥したN−メチル−2−ピロリドン200gに溶解した後、5℃に冷却し、ジカルボン酸化合物(B)として上述の4,4’−オキシビス安息香酸ジクロリド29.5g(0.1mol)を、少しずつ添加した。滴下終了後、5℃で、1時間撹拌後、室温まで3時間かけて戻し、さらに室温で2時間撹拌した(反応モル比A/B=0.8)。その後、反応液を50%メタノール水溶液4リットルに小さな液滴で滴下し、沈殿物を集めた。さらに、50%メタノール水溶液4リットル中での攪拌、沈殿物の回収を3回繰り返した。その後、沈殿物を乾燥することにより、ヒドロキシアミド重合体を得た。
東ソー株式会社製高速液体クロマトグラフSC−8020システムに、TSKgelGMH−HRH高速SEC用カラム、LiBr0.5%入りN−メチル−2−ピロリドン移動相、UV(λ=270nm)検出器を用いて40℃にて測定し、標準ポリスチレン(東ソー製PS−オリゴマーキット)を用いて換算してヒドロキシアミド重合体の重量平均分子量を求めたところ、7,600だった。
【0065】
3.酸化ジルコニウム粒子の表面処理
酸化ジルコニウム粒子としては、UEP−100(第一希元素株式会社製)を用いた。この酸化ジルコニウム粒子150gに、エタノール300mLと、表面処理剤としてポリプロピレングリコール−ビス−2−アミノプロピルエーテル400(Aldrich(株)製)を10g加えて混合し、150℃で3時間加熱することで表面処理を行った。
【0066】
4.高屈折率樹脂組成物の調製
上記ヒドロキシアミド重合体20gと、上記酸化ジルコニウム60gと、シクロヘキサノン300gとを混合し、ヒドロキシアミド重合体を溶解させた後、0.03mmφのジルコニアビーズを用いたビーズミルにより分散処理を行い、孔径0.5μmテフロン(登録商標)フィルターでろ過し、高屈折率樹脂組成物を調製した。
【0067】
5.樹脂成形体の作製
上記組成物を用いて、凹部を有するシリコン基板上に、スピンコートにより、塗膜を形成し、該塗膜をNガス雰囲気下で、200℃/90秒間加熱して乾燥し、さらに380℃/250秒間熱処理をし、樹脂成形体を得た。
【0068】
(実施例2)
実施例1のポリプロピレングリコール−ビス−2−アミノプロピルエーテル400をポリオキシエチレン(2)ノニルフェニルエーテルに変更する以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
【0069】
(実施例3)
実施例1のポリプロピレングリコール−ビス−2−アミノプロピルエーテル400をポリエチレングリコール600に変更する以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
【0070】
(実施例4)
実施例1の酸化ジルコニウム粒子の表面処理を行わないこと以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
【0071】
(実施例5)
実施例1における高屈折率樹脂組成物中の酸化ジルコニウム粒子の含有量を、ヒドロキシアミド重合体100重量部に対して、300重量部から100重量部に変更する以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
【0072】
(実施例6)
実施例1における高屈折率樹脂組成物中の酸化ジルコニウム粒子の含有量を、ヒドロキシアミド重合体100重量部に対して、300重量部から500重量部に変更する以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
【0073】
(比較例1)
高屈折率樹脂組成物に、酸化ジルコニウム粒子を含まないこと以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
【0074】
(比較例2)
酸化ジルコニウム粒子を酸化チタン粒子TTO−55(N)(石原産業株式会社製)に変更する以外は、実施例1と同様にした。
【0075】
6−1.光線透過率
得られた樹脂組成物を用いて、株式会社島津製作所製分光光度計UV−3100を用いて波長400nmで測定した。
【0076】
6−2.屈折率(酸化ジルコニウム粒子)
Metricon製プリズムカプラーを用いて、20℃での633nm(He−Neレーザーを使用)での酸化ジルコニウム粒子の屈折率(TM)を測定した。
【0077】
6−3.屈折率(樹脂成形体)
Metricon製プリズムカプラーを用いて、20℃での633nm(He−Neレーザーを使用)での樹脂成形体の膜面に対して垂直方向の屈折率(TM)を測定した。
【0078】
6−4.耐光性
樹脂成形体を、UVカットフィルターL−39(オーエムジー株式会社製)を挟んで、キセノンアーク灯(60W/m2)で10時間照射し、樹脂成形体の400nmでの光線透過率の変化を測定した。
キセノンアーク灯照射前後で、光線透過率に変化があった場合は×、変化がなかった場合は○として、得られた結果を表1に示した。
【0079】
【表1】

【0080】
表1から明らかなように、実施例1〜6で得られた樹脂成形体は、光線透過率、屈折率が高く、長時間の光照射前後で透過率に変化が少なかった。ゆえに、高屈折率、高透明性および耐光性に優れていることが示唆された。
【符号の説明】
【0081】
1 基板
11 フォトダイオード
2 絶縁材
21 回路配線
3 カラーフィルター
4 平坦化膜
5 被覆部材
6 レンズ
7 光信号
100 光学部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部品として用いられる高屈折率樹脂組成物であって、ヒドロキシアミド重合体(a)と、酸化ジルコニウム粒子(b)及び溶剤(c)を含むことを特徴とする高屈折率樹脂組成物。
【請求項2】
前記光学部品は、入射光を電子素子に誘導するものである請求項1に記載の高屈折率樹脂組成物。
【請求項3】
前記酸化ジルコニウム粒子(b)は、有機化合物により表面処理されているものである請求項1または2に記載の高屈折率樹脂組成物。
【請求項4】
前記有機化合物により表面処理されている酸化ジルコニウム粒子(b)の波長633nmにおける屈折率が1.85以上である請求項3に記載の高屈折率樹脂組成物。
【請求項5】
前記有機化合物は、50%重量減少温度が400℃以下である請求項3または4に記載の高屈折率樹脂組成物。
【請求項6】
前記酸化ジルコニウム粒子(b)は、前記高屈折率樹脂組成物中において、動的光散乱法における平均粒径が1〜50nmである請求項1ないし5のいずれかに記載の高屈折率樹脂組成物。
【請求項7】
前記ヒドロキシアミド重合体(a)100重量部に対して、酸化ジルコニウム粒子(b)の含有量は100〜500重量部である請求項1ないし6のいずれかに記載の高屈折率樹脂組成物。
【請求項8】
前記ヒドロキシアミド重合体(a)の標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は、3,000〜20,000である請求項1ないし7のいずれかに記載の高屈折率樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の高屈折率樹脂組成物を、300℃以上の熱処理をすることにより得られることを特徴とする樹脂成形体。
【請求項10】
波長633nmでの屈折率が、1.80以上である請求項9に記載の樹脂成形体。
【請求項11】
請求項9または10に記載の樹脂成形体を有することを特徴とする光学部品。
【請求項12】
請求項11に記載の光学部品を有することを特徴とする光学デバイス。

【図1】
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【公開番号】特開2011−32444(P2011−32444A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183106(P2009−183106)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】