説明

高屈折率樹脂

【課題】 本発明は、ハロゲン元素や硫黄化合物を使用しなくても、屈折率が高く、透明性、耐熱性に優れた、光学用物品向けの樹脂を得ることができるフマル酸ジ(1−ナフチルメチル)を重合成分とする高屈折率樹脂を提供することにある。
【解決手段】 フマル酸ジ(1−ナフチルメチル)を重合成分として有する高屈折率樹脂であって好ましくはフマル酸ジ(1−ナフチルメチル)と芳香族ビニル単量体を40〜100質量%の割合で重合成分として有する高屈折率樹脂であり、光学材料用として用いるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈折率が高く、透明性、耐熱性に優れた高屈折率樹脂を得ることができる、フマル酸ジ(1−ナフチルメチル)を重合成分とする高屈折率樹脂に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学機器用の光導波路、光学レンズ、光学用封止剤、光学用接着剤、光学フィルム、導光板等の光学部品では、高屈折率樹脂が重要な役割を担っている光学部品に用いられる樹脂としては、PMMA(ポリメチルメタクリレート)やポリカーボネートが従来使用されている。これらは吸水が大きい、複屈折性を有するなどの問題があり、光学材料としての性能を充分に有していない。
【0003】
屈折率の観点からは、ポリスチレン、ポリカーボネート等が比較的屈折率が高いが、一般的に耐熱性が低いという問題を有している。耐熱性の観点からは、眼鏡レンズ用材料のジエチレングリコールビスアリルカーボネート(商品名「CR−39」)が多用されている。しかし、このジエチレングリコールビスアリルカーボネートを重合して得られる樹脂は、屈折率が1.50と低いため、例えばレンズの場合、縁肉厚にする必要があり、プラスチック化のメリットである軽量性が損なわれてしまう問題が残る。
【0004】
このため、屈折率の高い高分子材料の開発が行われてきたが、高屈折率樹脂を得ようとする場合には、分子構造にフッ素を除くハロゲン原子の導入、硫黄原子の導入を行うのが一般的である。しかし、これらの方法は、ハロゲン原子を導入した場合には比重が重くなり、燃焼時に有毒ガスを発生するため環境負荷をかけるという欠点があり、硫黄原子を導入した場合には、切削加工時に硫黄特有の臭気が発生し、耐候性、着色性に問題があり、透過率が低下するという欠点がある。
【0005】
ハロゲン元素や硫黄化合物を使用しなくても高屈折率樹脂として、フマル酸ジエステルの重合体が(例えば、特許文献1参照)、フマル酸ジエステルと芳香族ビニルとの共重合体が(例えば、特許文献2参照)、フマル酸ジエステルとフタル酸ジアリルとの共重合体が(例えば、特許文献3参照)提案されている。しかし、前記樹脂は屈折率が高くても1.60であり、光学用材料分野からの高屈折率化の要求には不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−034007号公報
【特許文献2】特開昭61−211316号公報
【特許文献3】特開昭62−235901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ハロゲン元素や硫黄化合物を使用しなくても、屈折率が高く、透明性、耐熱性に優れた、光学材料用樹脂を得ることができるフマル酸ジ(1−ナフチルメチル)を重合成分とする高屈折率樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、フマル酸ジ(1−ナフチルメチル)を重合成分として有する高屈折率樹脂が、ハロゲン元素や硫黄化合物を使用しなくても、屈折率が高く、透明性、耐熱性に優れた、主に光学用物品の光導波路、光学レンズ、光学用封止剤、光学用接着剤、光学フィルム、導光板として有用であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)フマル酸ジ(1−ナフチルメチル)を重合成分として有する高屈折率樹脂、
(2)フマル酸ジ(1−ナフチルメチル)と芳香族ビニル単量体を40〜100質量%の割合で重合成分として有する高屈折率樹脂、
(3)フマル酸ジ(1−ナフチルメチル)と芳香族ビニル単量体と、カルボン酸基、水酸基、エポキシ基のいずれかを有するビニル単量体を40〜100質量%の割合で重合成分として有する高屈折率樹脂、
(4)上記(1)ないし(3)のいずれかの高屈折率樹脂に、付加重合可能なビニル単量体を用いて変性することを特徴とする高屈折率樹脂、
(5)上記(1)ないし(4)のいずれかの高屈折率樹脂が光学材料用であることを特徴とする高屈折率樹脂、
を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、ハロゲン元素や硫黄化合物を使用しなくても、屈折率が高く、透明性、耐熱性に優れた、高屈折率樹脂を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
[高屈折率樹脂]
本発明の高屈折率樹脂は、フマル酸ジ(1−ナフチルメチル)と必要に応じて用いられる共重合可能なビニル単量体を熱や紫外線、電子線等により重合することによって得ることができる。また、前記のようにして重合して得られたものに付加重合可能なビニル単量体を用いて変性して得られるものも本発明の高屈折率樹脂に含まれる。
【0013】
フマル酸ジ(1−ナフチルメチル)と必要に応じて用いられる共重合可能なビニル単量体としては、例えば、芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体、アルキル(メタ)アクリレート、アニオン性ビニル単量体、水酸基を有するビニル単量体、エポキシ基を有するビニル単量体、多官能性(メタ)アクリレート類、イソシアナートを含有するビニル単量体などが挙げられる。なお、本発明のフマル酸ジ(1−ナフチルメチル)と必要に応じて用いられる共重合可能なビニル単量体は、ハロゲン元素や硫黄化合物を含まないビニル単量体であることが好ましい。また、この中でも芳香族ビニル単量体は、高屈折率とするために用いることが好ましく、芳香族ビニル単量体とカルボン酸基、水酸基、エポキシ基のいずれかを有するビニル単量体を用いることも高屈折率とするために用いることが好ましい。
【0014】
芳香族ビニル単量体としては、芳香族化合物に相当する官能基を有するビニル単量体であり、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ビニルナフタレン、4−ビニルビフェニル等を挙げることができる。
【0015】
シアン化ビニル単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を挙げることができる。
【0016】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0017】
アニオン性ビニル単量体としては、カルボキシル基含有ビニル単量体、スルホ基含有ビニル単量体、リン酸エステル基含有ビニル単量体、これらの塩等を挙げることができる。これらの中でもカルボキシル基含有ビニル単量体を用いることが好ましい。
【0018】
前記カルボキシル基含有ビニル単量体としては、α,β−不飽和カルボン酸類、α,β−不飽和ジカルボン酸半エステル類が挙げられ、これらは2種以上併用することができる。
【0019】
α,β−不飽和カルボン酸類としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、これらの塩、酸無水物等を挙げることができ、これらは2種以上併用することができる。これらの中でも、特に、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましい。
【0020】
スルホ基含有ビニル単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホン化スチレン等を挙げることができ、リン酸エステル基含有ビニル単量体としては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルのリン酸エステルを挙げることができる。
【0021】
水酸基を有するビニル単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルヘキシル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0022】
エポキシ基を有するビニル単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0023】
多官能性(メタ)アクリレート類として、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート等を挙げることができる。
【0024】
イソシアナートを含有するビニル単量体として、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナート、2−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアナート、2−アクリロイルオキシエチルイソシアナート等を挙げることができる。
【0025】
付加重合可能なビニル単量体としては、前記フマル酸ジ(1−ナフチルメチル)と必要に応じて用いられる共重合可能なビニル単量体を挙げることができるが、特に、エポキシ基を有するビニル単量体であるグリシジル(メタ)アクリレート、イソシアナート基を有するビニル単量体である2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナート、2−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアナート、2−アクリロイルオキシエチルイソシアナート、さらにカルボキシル基を有するビニル単量体である(メタ)アクリル酸などが好ましく、特にエポキシ基を有するビニル単量体、具体的には、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0026】
重合開始剤は、例えば熱、紫外線、電子線、放射線によってラジカルを生成するものであれば、いずれのラジカル重合開始剤の使用も可能である。
【0027】
熱によるラジカル重合に際して使用できる重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスイソバレロニトリル等のアゾ系化合物、メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド等のケトンパーオキシド類、ベンゾイルパーオキシド、デカノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類、ジクミルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド等のジアルキルパーオキシド類、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ) ブタン等のパーオキシケタール類、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート等のアルキルパーオキシエステル類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーオキシカーボネート類等が挙げられる。
【0028】
紫外線、電子線、放射線によるラジカル重合に際して使用できる重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等のアセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4−トリメチルシリルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフィド等のベンゾフェノン誘導体、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾイン誘導体、メチルフェニルグリオキシレート、ベンゾインジメチルケタール、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0029】
これらの重合開始剤の使用量は、硬化温度や組成比、添加剤の種類、量によって異なるため、一概に限定することはできないが、本発明のフマル酸ジ(1−ナフチルメチル)と必要に応じて用いられる共重合可能なビニル単量体の総量100質量部に対して、0.01〜15質量部が好ましく、0.1〜10質量部が特に好ましい。光または熱重合開始剤の添加量が0.01質量部未満の場合は重合、硬化が不十分になる場合がある。また、15質量部を超えて添加することは経済的に好ましくない。
【0030】
重合温度は重合開始剤の種類に応じて適宜選択すればよい。紫外線等による重合であれば、室温でも可能である。熱重合の場合は開始剤の分解温度に対応して適宜決めることが望ましく、一般的には30〜130℃ が好ましい。また、段階的に温度を変えて重合させてもよい。重合の際には不活性溶媒を使用することもできる。
【0031】
フマル酸ジ(1−ナフチルメチル)と必要に応じて用いられる共重合可能なビニル単量体を重合して得られたものに付加重合可能なビニル単量体を用いて変性する方法としては、例えば、エポキシ基を有するビニル単量体の官能基を用いてカルボキシル基又は水酸基を有するフマル酸ジ(1−ナフチルメチル)と必要に応じて用いられる共重合可能なビニル単量体を重合して得られたものに反応させることによって行う方法、カルボキシル基又は水酸基を有するビニル単量体の官能基を用いてエポキシ基を有するフマル酸ジ(1−ナフチルメチル)と必要に応じて用いられる共重合可能なビニル単量体を重合して得られたものに反応させることによって行う方法を挙げることができ、これらの方法が好ましい。
【0032】
前記の方法の場合、反応に際して、エポキシ基とカルボキシル基又は水酸基の当量比が45〜55:55〜45となる比率で反応させることが好ましく、48〜52:52〜48がより好ましい。
【0033】
また、反応を促進させるために触媒を用いるのが好ましい。用いられる触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、メチルトリエチルアンモニウムクロライト、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライト、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオタイド、トリフェニルホスフィンなどが挙げられる。触媒の使用量は、付加重合可能なビニル単量体100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましい。
【0034】
さらに、反応中の重合を防止する目的で、重合防止剤を使用するのが好ましい。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール等が挙げられ、その使用量は、付加重合可能なビニル単量体100質量部に対して、0.01〜1質量部が好ましい。
【0035】
本発明の高屈折率樹脂は、光学材料用樹脂として、そのまま、またはその他の必要な成分を加えた光学材料用組成物として使用することができる。
【0036】
[光学材料用組成物]
本発明の高屈折率樹脂を、単量体及び重合開始剤並びに紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、着色剤(着色顔料、染料)、流動調節剤、レベリング剤及び無機充填剤などの公知の各種添加剤と混合して光学材料用組成物とすることができる。
【0037】
単量体としては、フマル酸ジ(1−ナフチルメチル)及び前記のフマル酸ジ(1−ナフチルメチル)と必要に応じて用いられる共重合可能なビニル単量体、例えば、芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体、アルキル(メタ)アクリレート、アニオン性ビニル単量体、水酸基を有するビニル単量体、エポキシ基を有するビニル単量体、多官能性(メタ)アクリレート類、イソシアナート類などが挙げられる。
【0038】
本発明の高屈折率樹脂と、フマル酸ジ(1−ナフチルメチル)以外の単量体の組成物中の質量比は重合体100質量部に対して単量体1〜10質量部であることが好ましく、1〜5質量%であることが特に好ましい。
【0039】
重合開始剤としては、前記の重合開始剤と同様に、例えば熱、紫外線、電子線、放射線によってラジカルを生成するものであれば、いずれのラジカル重合開始剤の使用も可能である。
【0040】
重合開始剤の使用量は硬化温度や組成比、添加剤の種類、量によって異なるため、一概に限定することはできないが、単量体100質量部に対して、0.01〜15質量部が好ましく、0.1〜10質量部が特に好ましい。光または熱重合開始剤の添加量が0.01質量部未満の場合は重合、硬化が不十分になる場合がある。また、15質量部を超えて添加することは経済的に好ましくない。
【0041】
紫外線吸収剤の具体例としては、2−(2’−ヒドロキシ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのトリアゾール類、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、4−tert−ブチルフェニルサリシラート等のサリシラート類、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバシートなどのヒンダートアミン類が挙げられる。
【0042】
紫外線吸収剤の配合量としては、他の配合物の種類、量等により変わるが、一般的には、光学材料用組成物中の全重合性成分100質量部に対して0.01〜2質量部が好ましく、0.03〜1.7質量部がより好ましく、0.05〜1.4質量部が最も好ましい。紫外線吸収剤が0.01質量部未満では十分な効果が得られない場合があり、2質量部を超えると経済的に好ましくない。
【0043】
酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]メタン等のフェノール系、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオナート等の硫黄系、トリスノニルフェニルホスファイト等のリン系の酸化防止剤が挙げられる。
【0044】
酸化防止剤の配合量は、他の配合物の種類、量等により変わるが、一般的には、光学材料用組成物中の全重合性成分100質量部に対して、0.01〜5質量部が好ましく、0.05〜4質量部がより好ましく、1〜3質量部が最も好ましい。酸化防止剤が0.01質量部未満では十分な効果が得られない場合があり、5質量部を超えると経済的に好ましくない。
【0045】
離型剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アミド、フッ素系化合物類、シリコン化合物類などが挙げられる。
【0046】
離型剤の配合量は、他の配合物の種類、量等により変わるが、一般的には、光学材料用組成物中の全重合性成分100質量部に対して、0.01〜2質量部が好ましく、0.03〜1.7質量部がより好ましく、0.05〜1.4質量部が最も好ましい。離型剤が0.01質量部未満では十分な効果が得られない場合があり、2質量部を超えると経済的に好ましくない。
【0047】
着色剤としては、アントラキノン系、アゾ系、カルボニウム系、キノリン系、キノンイミン系、インジゴイド系、フタロシアニン系などの有機顔料、アゾイック染料、硫化染料などの有機染料、チタンイエロー、黄色酸化鉄、亜鉛黄、クロムオレンジ、モリブデンレッド、コバルト紫、コバルトブルー、コバルトグリーン、酸化クロム、酸化チタン、硫化亜鉛、カーボンブラックなどの無機顔料などが挙げられる。
【0048】
本発明の光学材料用高屈折率樹脂組成物は高屈折率樹脂を含むため、光導波路、光学レンズ、光学用封止剤、光学用接着剤、光学フィルム、プリズム、液晶パネル用導光板、光ファイバー等に適用することが好ましい。本発明の高屈折率樹脂、光学材料用高屈折率樹脂及びその組成物の硬化物の屈折率は通常1.61〜1.69であり、好ましくは1.63〜1.66である。屈折率の測定は、例えばアッベ屈折率計を用いて測定できる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は特に断らない限り質量基準である。
【0050】
屈折率の測定、ならびに耐熱性試験は、下記の方法により実施した。
【0051】
[屈折率]
アッベ屈折率計を用い、硬化膜の屈折率を求めた。接触液は1−ブロモナフタレンを使用した。
【0052】
[耐熱性]
硬化膜を200℃の乾燥機で30分間加熱し、硬化膜の状態を目視より観察した。
○:色相、形状に変化なし
×:色相、形状に変化あり
【0053】
(実施例1 : 樹脂(A))
攪拌装置、温度計、窒素導入管を備えた四口フラスコにフマル酸ジ(1−ナフチルメチル)20.0gとテトラヒドロフラン55.0gを加え、60℃で攪拌し溶解させた。ここに、テトラヒドロフラン15.0gに溶かした2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.6gを加え、60℃で24時間攪拌した。沈殿剤にメタノールを用いた再沈殿を2回行い、150℃で脱溶媒することで精製し樹脂(A)を収率75.0%で得た。樹脂(A)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させ、この混合溶液をガラス上に塗布した後で、150℃の乾燥機で乾燥し、硬化塗膜を得た。硬化膜の物性を測定した。結果を表1に示す。
【0054】
(実施例2 : 樹脂(B))
攪拌装置、温度計、窒素導入管を備えた四口フラスコにフマル酸ジ(1−ナフチルメチル)39.64gとテトラヒドロフラン37.2gを加え、60℃で攪拌し溶解させた。ここに、テトラヒドロフラン20.0gに溶かした2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.0gを加え、さらにスチレン10.4gを加え、60℃で48時間攪拌した。沈殿剤にメタノールを用いた再沈殿を2回行い、150℃で脱溶媒することで精製し、樹脂(B)を収率79.8%で得た。樹脂(B)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させ、この混合溶液をガラス上に塗布した後で、150℃の乾燥機で乾燥し、硬化塗膜を得た。硬化膜の物性を測定した。結果を表1に示す。
【0055】
(実施例3 : 樹脂(C))
攪拌装置、温度計、窒素導入管を備えた四口フラスコにフマル酸ジ(1−ナフチルメチル)34.88gとテトラヒドロフラン28.88gを加え、60℃で攪拌し溶解させた。ここに、テトラヒドロフラン20.0gに溶かした2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.0gを加え、さらにスチレン10.0gとメタクリル酸0.68gを加え、60℃で48時間攪拌した。沈殿剤にメタノールを用いた再沈殿を2回行い、150℃で脱溶媒することで精製し、樹脂(C)を収率78.8%で得た。樹脂(C)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させ、この混合溶液をガラス上に塗布した後で、150℃の乾燥機で乾燥し、硬化塗膜を得た。硬化膜の物性を測定した。結果を表1に示す。
【0056】
(実施例4: 樹脂(D))
攪拌装置、温度計、窒素導入管を備えた四口フラスコにフマル酸ジ(1−ナフチルメチル)33.70gとテトラヒドロフラン28.88gを加え、60℃で攪拌し溶解させた。ここに、テトラヒドロフラン20.0gに溶かした2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.0gを加え、さらにスチレン9.84gとグリシジルメタクリレート1.42gを加え、60℃で48時間攪拌した。沈殿剤にメタノールを用いた再沈殿を2回行い、150℃で脱溶媒することで精製し、樹脂(D)を収率74.8%で得た。樹脂(D)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させ、この混合溶液をガラス上に塗布した後で、150℃の乾燥機で乾燥し、硬化塗膜を得た。硬化膜の物性を測定した。結果を表1に示す。
【0057】
(実施例5 : 樹脂(E))
攪拌装置、温度計、窒素導入管を備えた四口フラスコに樹脂(C)22.78g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート53.15gとハイドロキノンモノメチルエーテル0.003gを加え、60℃で攪拌し溶解させた。ここに、グリシジルメタクリレート0.57gとジメチルベンジルアミン0.03gを加え、80℃で6時間攪拌し、反応させることで樹脂(E)を得た。樹脂(E)38.27gに、1,3−ブタンジオールジメタクリレート0.23gと1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン0.02gを加え、樹脂混合液(E)とし、この混合溶液をガラス上に塗布した後で、90℃の乾燥機で乾燥し、その後水銀ランプ(0.75kW)で120秒間露光し、さらに150℃の乾燥機で乾燥し、硬化塗膜を得た。硬化膜の物性を測定した。結果を表1に示す。
【0058】
(実施例6 : 樹脂(F))
攪拌装置、温度計、窒素導入管を備えた四口フラスコに樹脂(D)22.48g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート53.50gとハイドロキノンモノメチルエーテル0.002gを加え、60℃で攪拌し溶解させた。ここに、メタクリル酸0.43gとジメチルベンジルアミン0.02gを加え、80℃で6時間攪拌し、反応させることで樹脂(F)を得た。樹脂(F)38.22gに、1,3−ブタンジオールジメタクリレート0.29gと1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン0.02gを加え、樹脂混合液(F)とし、この混合溶液をガラス上に塗布した後で、90℃の乾燥機で乾燥し、その後水銀ランプ(0.75kW)で120秒間露光し、さらに150℃の乾燥機で乾燥し、硬化塗膜を得た。硬化膜の物性を測定した。結果を表1に示す。
【0059】
(比較例1)
攪拌装置、温度計、窒素導入管を備えた四口フラスコにフマル酸ジベンジル25.64gとテトラヒドロフラン30.00gを加え、60℃で攪拌し溶解させた。ここに、テトラヒドロフラン20.0gに溶かした2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.0gを加え、さらにスチレン10.4gを加え、60℃で48時間攪拌した。沈殿剤にメタノールを用いた再沈殿を2回行い、150℃で脱溶媒することで精製し、樹脂を収率81.5%で得た。樹脂をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させ、この混合溶液をガラス上に塗布した後で、150℃の乾燥機で乾燥し、硬化塗膜を得た。硬化膜の物性を測定した。結果を表1に示す。
【0060】
(比較例2)
攪拌装置、温度計、窒素導入管を備えた四口フラスコにメタクリル酸メチル90.0gとベンゾイルパーオキシド2.7gを加え、40℃で攪拌し、この混合物をガラス上に塗布した後で、40℃の乾燥機で24時間乾燥し、100℃の乾燥機で24時間乾燥し、硬化塗膜を得た。硬化膜の物性を測定した。結果を表1に示す。
【0061】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の樹脂および樹脂組成物からえられた硬化物はハロゲン元素や硫黄化合物を使用しなくても屈折率が高く、透明性、耐熱性に優れ、光導波路、光学レンズ、光学用封止剤、光学用接着剤、光学フィルム、プリズム、液晶パネル用導光板、光ファイバー等の光学材料などとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フマル酸ジ(1−ナフチルメチル)を重合成分として有する高屈折率樹脂。
【請求項2】
フマル酸ジ(1−ナフチルメチル)と芳香族ビニル単量体を40〜100質量%の割合で重合成分として有する高屈折率樹脂。
【請求項3】
フマル酸ジ(1−ナフチルメチル)と芳香族ビニル単量体と、カルボン酸基、水酸基、エポキシ基のいずれかを有するビニル単量体を40〜100質量%の割合で重合成分として有する高屈折率樹脂。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の高屈折率樹脂に、付加重合可能なビニル単量体を用いて変性することを特徴とする高屈折率樹脂。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の高屈折率樹脂が光学材料用であることを特徴とする高屈折率樹脂。

【公開番号】特開2011−162638(P2011−162638A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26035(P2010−26035)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000109635)星光PMC株式会社 (102)
【Fターム(参考)】