説明

高屈折率無鉛・無砒素光学ガラス

【課題】特にPbO、TlO、TeO及びAsを用いない、好ましくは弗素及びGdを用いない環境保護的考慮がなされた光学ガラスを提供する。
【解決手段】屈折率nが1.91≦n≦2.05、アッベ数vが19≦v≦25である鉛及び砒素非含有光学ガラスであって、次の組成(酸化物に基づく重量%で)、即ちBi55−70、GeO13−21、SiO0−9、B0−10、LiO0−5、NaO0−5、KO0−5、CsO0−6、MgO0−10、CaO0−10、SrO0−10、BaO0−10、ZnO0−10、TiO0−5、La0−7、Wo0−6、Nb0−6、Σアルカリ金属酸化物0−5、Σアルカリ土類金属酸化物0−10、Σ(La+WO+Nb+TiO)0−8、通常の清澄剤0−2を含み、BiとGeOの比を5以下とすることを特徴とするガラス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酸化ゲルマニウムを含有する無鉛及び無砒素、特に無弗素光学ビスマスガラス、かかるガラスを写像、射影、電気通信光学、光通信工学、モバイル駆動機構及びレーザ技術の分野に用いるその使用、並びにそれを用いた光学素子及びそのプレフォームに関する。本発明によるガラスはまた、例えばCCD(電荷結合素子、例えば画像変換用半導体素子等)のマイクロレンズアレイの分野に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
近年、光並びに光電子技術(応用分野:写像、射影、電気通信光学、光通信工学、モバイル駆動機構、レーザ技術及び/又はマイクロレンズアレイ)の分野における市場の傾向は益々微小化の方向に向かって進んでいる。このことは、完成品が益々小さくなり、単一の構造部材とそれ等の構成部品の微小化を益々必要としていることから分かる。光学ガラスの製造者にとっては、この進展は完成製品の増大する量に反して、原料ガラスの要求量を明確に低減すべきことを意味している。同時に、ブロック及び/又はインゴットガラスから作られるかかる小部品の製造では著しく大量の廃棄物が製品に基づき比例して生成されようし、またかかる微小部品の処理には大型構造部材より、要する操業費が高くなるため、ガラス製造者に対して再生業者の側からの価格設定の圧力が増大する。
【0003】
従って、これまでのように光学部品のガラス部をブロック又はインゴットガラスから取り出す代わりに、ガラスの溶融直後に、ガブ(gob, gobs;塊)又は球(spheres)等の、最終輪郭又は形状にできるだけ近いプリフォームを生成する製造手法が最近重要になっている。例えば、再プレス成形のため最終形状に近いプリフォーム、所謂「精密ガブ」を再生業者が要請することが増えている。通常、用語「精密ガブ」は、既に部分化され、光学部品の最終形状に近い形状をもつ、好ましくは完全に火造りされた(焼成磨きの)、自由又は半自由形状ガラス部を意味する。
【0004】
かかる「精密ガブ」は好ましくは、いわゆる「精密プレス成形」又は「精密型成形」又は「精密ブランクプレス成形」によりレンズ、非球面レンズ、マイクロレンズアレイ等の光学部品に改造される。その場合、幾何学的形状又は面はそれ以上の処理、例えば面研磨をもはや要さない。この方法は、柔軟な仕方で溶融ガラスの量を低減、分割し(多数の材料小部品に部分化する)、そのセットアップ時間を短くする要求を満たすことができる。だが、時間単位当りの部品数が比較的少ないため、また大きさが通常小さいため、この方法の評価は材料的評価だけでは決まらない。それどころか、製品は設置準備完了の状態で、プレス機を離れなければならない、即ち労力の要る後処理、冷却及び/又は冷間再処理を放棄できなければならない。形状の高精度が要求されるため、グレードの高い、従って高価な型材料の精密機器をかかる加圧成形処理に用いなければならない。かかる型材料の寿命は、生成される製品及び/又は材料の採算性に影響を大幅に及ぼす。寿命の長い型に対して極めて重要な要素に、加工温度がある。この加工温度はできるだけ低いと同時に、加圧成形すべき材料の粘性がプレス成形処理に対してもなお十分な点にまで低下が可能であるべきである。これは、処理すべきガラスの処理温度、即ちその転移温度Tgとかかるプレス成形工程の採算性との間に直接関係があることを意味している。即ち、ガラスの転移温度が低ければ低いほど、型の寿命は長くなり、従って収益は高くなる。従って、いわゆる「低Tgガラス」、即ち融点と転移温度が低いガラス、即ちできるだけ低い温度で、しかも処理に十分な粘性をもつガラスに対する要求がある。
【0005】
更に、溶融体の処理技術的観点から、「ショート」ガラス、即ち粘性が比較的小さい温度変化で、或る粘度範囲内で強く変化するガラスに対する要求が大きくなっている。この挙動には、溶融工程において、熱間成形の時間、即ち型の閉塞時間を低減できると云う利点がある。その故に、一方において処理量が増大、即ちサイクル時間が減少するであろう。他方において、型材料が保護されるであろう、このことは上記のように総生産コストに肯定的効果をもつ。かかる「ショート」ガラスには、結晶化傾向の高いガラスも対応する「ロング」ガラスの場合より速い冷却で処理できると云う更なる利点がある。それにより、後続する二次熱間成形工程で問題を生じ得る前核形成が回避されるであろう。これは、かかるガラスをファイバーに延伸できる可能性を与える。
【0006】
更に、ガラスは既述の要求される光学特性をもつ以外に、耐薬品性が十分高く、膨張係数ができるだけ低いことも望ましい。
【0007】
先行技術文献は既に同様の光学状態又は同種の化学組成をもつガラスに付き述べているが、これ等のガラスにはかなりの不利がある。特に、これ等ガラスの多くは、網目形成材であり、従ってガラスの転移温度を高くし、粘度曲線を長くし、屈折率を低下させるSOを高い比率で含む。そして/或いは、これ等ガラスの多くは溶融及び焼成工程中に容易に蒸発する、例えばF及びP等の成分を含むので、ガラス組成の正確な調整が困難になる。この蒸発はまた、ガラスが再度加熱され、型面に及びガラス上に付着することのあるプレス成形工程の際に不利である。
【0008】
特開2002−201039には、プレス型成形のための高屈折率Bi含有ガラスが開示されている。だが、この基本ガラス種はGeOを少量含有しているに過ぎない。
【0009】
特開平04−106806には、誘電性複合材が記載されている。ガラス成分は必ずCeOを含有している。
【0010】
WO99/51537、特願2001−213635、WO01/55041、WO03/022764、DE10144475及びWO03/022755には、常に光学的活性希土類を含有する光活性ガラスが記載されている。
【0011】
WO03/022763及びWO03/022766には、光活性希土類元素少なくとも1種をドープし、また酸化ビスマス及び酸化ゲルマニウムを任意に含有する光活性ガラスが記載されている。だが、これ等酸化物の比は、実際にゲルマニウムを成分として含有するガラスに対して少なくとも10であるため、即ちガラスのビスマス酸化物の含有率は比較的高い。WO03/022766によれば、どのガラスもプラチナ坩堝内で溶融されるため、どの場合にも3ppmを超える含有率でプラチナがガラスに含まれるので、ガラスのUVエッジの位置にマイナスの効果がある。
【0012】
DE10308476には、あらゆる場合にBi及びSiO成分を含有し、それ等の総量が最大で5モル%であるビスマス含有ガラスが記載されている。
【0013】
SU876572には、音響光学装置用の光学ガラスが記載されている。だが、あらゆる場合にGeOの含有率は22重量%を超えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、有利且つ所望の光学特性(n/v)が低転移温度を備えて実現されると共に、特にPbO、TlO、TeO及びAsを用いない、好ましくはまた弗素及びGdを用いないと云う環境保護的考慮がなされた光学ガラスを提供することにある。更に、これ等のガラスは、410nm以下のUVエッジλ(5mm)の位置を有すべきであり、ブランクプレス法(精密プレス)により処理可能であるべきであり、写像、射影、電気通信光学、光通信工学、モバイル駆動機構及びレーザ技術の分野の応用に適し、屈折率nが1.91≦n≦2.05及びアッベ数vが19≦v≦25であるべきであり、好ましくは転移温度TgがTg≦470℃とできるだけ低くあるべきである。また、それ等の溶融性及び処理性も良好であるべきであり、連続処理されるアグリゲートでの生産を可能にする十分な結晶化安定性を有するべきである。粘度範囲107.6〜1013dPasにおいてできるだけ「ショート」ガラスが望ましい。いわゆるショートガラスとして、粘度範囲10〜1013dPas内で極めて急峻な粘度曲線を有するガラスが意味される。本発明によるガラスに対して、用語「ショート」は粘度範囲107.6〜1013dPasのものを云う。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的は、特許請求の範囲に記載の本発明の実施態様により達せられる。
【0016】
特に、屈折率nが1.91≦n≦2.05及びアッベ数vが20≦v≦25である、鉛及び砒素、好ましくは更に弗素非含有の光学ガラスであって、次の組成(重量%での酸化物に基づく)、即ち
Bi 55 − 70
GeO 13 − 21
SiO 0.5 − 9
1 − 10
LiO 0 − 5
NaO 0 − 5
O 0 − 5
CsO 0 − 6
MgO 0 − 7
CaO 0 − 7
SrO 0 − 7
BaO 0 − 7
ZnO 0 − 10
TiO 0 − 5
La 0 − 7
Wo 0 − 6
Nb 0 − 6
Σアルカリ金属酸化物 0 − 5
Σアルカリ土類金属酸化物 0.5 − 10
Σ(La+WO+Nb+TiO) 0 − 8
通常の清澄剤 0 − 2
を含んで成り、BiとGeOの比を5以下とするガラスが提供される。好ましくは、この比は4以下である。好ましくは、本発明によるガラスはプラチナ成分最大で3ppmを含み、更に好ましくは最大で2ppm、最も好ましくは最大で1ppmを含む。プラチナ含有率のこれらの値に達するため、本発明によるガラスは好ましくは、例えば石英タンクのようなPt非含有溶融結合体内で溶融される。プラチナ成分の含有率をこのように低く保つことにより、所望の高屈折率のガラスの並外れた特徴である、UVエッジの位置410nm以下を得ることが容易になる。
【0017】
主要な酸化物であるビスマス酸化物とゲルマニウム酸化物の比を最大で5(即ち5以下)にするには、ビスマス酸化物の量を高い屈折率に関連してガラス遷移温度の所望値を得るのに必要な程度まで高くする一方で、できるだけ低くする。つまり、この成分はガラスを酸化還元反応に対して敏感にし、元素としてのビスマスはガラスを望ましくなく変色し、その透過特性を悪化させ、UVエッジを変化させるからである。更に、ガラス溶融体は特にビスマス比率を多くした混合物の場合、溶融坩堝に対して益々攻撃的になるからである。
【0018】
好ましくは、BiとGeOの総量を70重量%以上とする。
【0019】
好ましくは、ガラスは記載されない成分を含まない。
【0020】
本発明は更に、上記ガラスをプレスして得られる、特に精密プレス法により作製される光学素子、並びに上記ガラスの精密プレス法による光学素子の製造方法に関する。
【0021】
本発明によるガラスはアッベ数及び屈折率等、同様のガラス類の既知の光学ガラスと同一の光学状態を有するが、良好な溶融性及び被処理性並びに良好な環境共存性で特徴付けられる。
【0022】
特に、これ等のガラスは最終形状(輪郭)に近い処理、例えば精密ガブの生成、並びに正確な最終形状の光学部品の製造のための精密加圧(プレス)成形法に適している。これに関連して、本発明によるガラスの粘性温度分布(プロフィール)及び処理温度は、最終形状又は輪郭に近いかかる熱間成形が、反応が敏感な精密機械で可能なように調整されているのが好ましい。
【0023】
更に、本発明によるガラスの結晶化安定性と粘性温度プロシールとが組み合わされて、ガラスの熱(更なる)処理(加圧成形又は再加圧成形)を殆ど問題無しに容易にすることができる。
【0024】
特に、本発明によるガラスは屈折率nが1.91≦n≦2.05、好ましくは1.92≦n≦2.04、特に好ましくは1.92≦n≦2.02、アッベ数vが20≦v≦25、好ましくは20≦v≦24である。
【0025】
本発明の一実施態様によれば、本発明によるガラスは転移温度TgがTg≦470℃、より好ましくはTg≦450℃である。
【0026】
本発明によれば、いわゆる「低Tgガラス」によって、転移温度Tgの低いガラス、即ち好ましくはTgが最大で470℃のガラスを意味する。
【0027】
好ましくは、本発明によるガラスは粘度範囲107.6〜1013dPasにおいてできるだけ「ショート」である。この場合、用語「ショートガラス」によって、所定の粘度範囲において温度の比較的小さい変化で粘性が強く変化するガラスが意味される。好ましくは、このガラスの粘性が107.6から1013dPasに低下する温度間隔ΔTは、最大で90K、好ましくは最大で80Kである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、ガラス例2における本発明のガラスの粘度曲線を示す。図1において、縦線はこのガラスの粘度が107.6から1013dPasに低下する温度間隔ΔTを示す。この場合、ΔTは499と426℃の間、即ち73Kである。
【0029】
図2は、ガラス例3における本発明のガラスの内部透過率曲線を示す。この場合、エッジ波長λ(5mm)は396nmである。
【0030】
本発明によるガラスの、用語「内側品質」によって、ガラスは泡及び/又は脈理及び/又は同様の欠陥の部分を含んでいるが、この部分ができるだけ少ないか、ガラスがかかる欠陥を全く含まないことを意味する。
【0031】
以下の記載において、用語「X非含有」又は「成分Xを含まない」は、ガラスがこの成分Xを実質的に含有しない、即ちかかる成分は不純物としてのみガラスに含まれ、個別成分としてガラス組成に添加されないことを意味する。ここで、Xは、例えばF等の任意成分を表す。
【0032】
以下の記載において、ガラス成分の比率データは全て重量%で与えられ、別途記載の無い場合は、酸化物に基づく。
【0033】
本発明によるガラスの基本ガラス系は酸化ゲルマニウム含有酸化ビスマスガラスであって、同ガラスはゲルマニウム酸化物に対するビスマス酸化物の比が最大で5であり、これは所望特性に対する良好な基礎となる。
【0034】
本発明によるガラスはBiを、少なくとも55重量%、好ましくは少なくとも56重量%、特に好ましくは少なくとも57重量%の比率で含む。Biの比率は最大で70重量%、好ましくは68重量%、特に好ましくは66重量%である。Biは粘度範囲107.6〜1013dPasにおいて所望の粘性温度挙動(「ショート」ガラス)を得る一助となる。更に、ガラスのTgを低下させ、その密度を増大させる。後者は高屈折率を保証する。最大比率70重量%は、ガラスのBiによる内部着色がガラスの透明度に過剰な否定的効果を及ぼすので、これを超えるべきではない。だが、比率は、本発明によるガラスの高屈折率と共に低Tgを保証するため、55重量%を下回るべきでない。
【0035】
本発明によるガラスはGeOを、少なくとも13重量%、好ましくは少なくとも14重量%、特に好ましくは15重量%の比率で含む。GeOの最大比率は21重量%、好ましくは最大で20重量%、更に好ましくは最大で19重量%である。GeOはBiと同様、網目形成材であり、ガラスを安定化する。GeOはBiと共に、本発明によるガラスの高屈折率と低遷移温度を促進する。更に、GeOは高アッベ数を支える。従って、この比率は上記最小比率を下回るべきでない。
【0036】
Bi及びGeO以外の網目形成材として、SiOもガラスに含ませることができる。本発明によるガラスはSiOを最大で9重量%、好ましくは最大で8重量%、特に好ましくは最大で7重量%の比率で含む。成分酸化珪素の可能な下限として、0.5重量%が上げられる。
【0037】
SiOの最大比率は超えるべきでない。と云うのも、SiOはガラス遷移温度及び粘度の上昇並びに屈折率の低下を招くからである。
【0038】
の最大比率は10重量%、好ましくは最大で9重量%、特に好ましくは最大で8重量%である。Bの強力な網目形成特性は結晶化に対するガラスの安定性及び耐薬品性を増大する。だが、比率は10重量%を超えるべきでない。と云うのも10重量%を超えると、ガラスは「ロング」になって本発明の目的に対して好ましくないからである。更に、溶融及び焼成工程中に、添加B成分が蒸発する傾向があるので、成分の正確な調整が難しくなる。本発明によるガラスはBを、少なくとも1重量%、好ましくは2重量%の量含んでも良い。
【0039】
本発明によるガラスはZnOを最大で10重量%、好ましくは最大で7重量%、特に好ましくは最大で5重量%の比率で含む。ZnOは粘度範囲107.6〜1013dPasにおける所望の粘性温度挙動(「ショート」ガラス)を得る一助となる。
【0040】
本発明によるガラスはアルカリ金属酸化物としてLiO、NaO、KOを、最大で5重量%、好ましくは最大で4重量%、より好ましくは最大で3重量%の量で含む。本発明によるガラスはLiOを、少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも0.7重量%の量で含んでも良い。
【0041】
ガラスが酸化セシウムを含む場合、この成分は最大で6重量%、好ましくは最大で5重量%、より好ましくは最大で4重量%の量で含まれる。
【0042】
本発明によるガラス内のアルカリ金属酸化物の総量は0〜5重量%である。好ましいのは最大で3重量%、特に好ましいのは最大で2重量%である。アルカリ金属酸化物の総量は最大で5重量%であり、この値を超えるべきでない、さもなければかかるガラス形の屈折率が余りに低くなり過ぎるからである。アルカリ金属酸化物の添加はバーニング挙動の最適化のためであり、即ちこれ等酸化物は融剤としての効果がある。更に、Tgを低下させる一因となる。
【0043】
粘性温度挙動を柔軟に調整するため、本発明によるガラスは任意選択として、MgO、CaO、SrO及び/又はBaOから成る群より選ばれるアルカリ土類金属酸化物を含むことができる。その単一成分の比率は10重量%、好ましくは7重量%、特に好ましくは6重量%を上回るべきでない。本発明によるガラスはMgO、CaO、SrO又はBaOを少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも1重量%の量で含んでも良い。アルカリ土類金属酸化物は急峻な粘度曲線の一助となる。最大比率は、ガラス内の高比率は特に再加熱中に結果として失透を生じるで、10重量%を上回るべきでない。
【0044】
本発明によるガラスはLaを最大で7重量%、好ましくは最大で6重量%の比率で、WO又はNbを最大で6重量%、好ましくは5重量%、特に好ましくは最大で4重量%の比率で含んでも良い。これ等の成分で、光学状態が調整できる。だが、比率を高くすると、ガラスの粘性は高くなる。
【0045】
ガラスは好ましくは、TiOを含まない。ガラスはTiOを最大で5重量%、好ましくは最大で3重量%の量で含んでも良い。TiOは高屈折率及び高分散の一因となり、光学状態を調整する作用がある。だが、この成分は結果としてガラスのTgと粘性を高め、UVでの吸収によって透過率に否定的な影響を与える。
【0046】
好ましくは、Bi及びGeOの総量70重量%、より好ましくは72重量%、特に好ましくは73重量%を上回る。この総量で、本発明によるガラスの高屈折率が低Tgと共に保証される。
【0047】
光学ガラスとしての本発明によるガラスはまた、着色成分、及び/又は、レーザに活性な等、光学的に活性な成分を含まない。
【0048】
特に、本発明によるガラスは、例えばAg等の、酸化還元反応に敏感な成分を含まず、例えばTl、Te、Be及びAsの酸化物等の、有毒な又は健康に有害な成分を含まない。どの場合でも、本ガラスはPbOや砒素を含まない。
【0049】
本発明の一実施態様によれば、本発明によるガラスはまた、好ましくは、請求の範囲に記載されていない他の成分を含まない、即ちかかる実施態様によれば、ガラスは記載されている成分から実質的に成る。この場合、「実質的に成る」は、他の成分は不純物としてのみ含まれ、ガラス組成に夫々成分として意図的には添加されないことを意味する。
【0050】
本発明によるガラスは通常の清澄剤を少量含んでも良い。好ましくは、添加清澄剤の量は最大で2.0重量%、より好ましくは最大で1.0重量%である。清澄剤として次の組成、即ち
Sb 0 〜 1 及び/又は
SnO 0 〜 1 及び/又は
SO2− 0 〜 1 及び/又は
F 0 〜 1
の成分少なくとも1つが(重量%で、残余のガラス成分に加えて)、本発明によるガラスに含まれても良い。
【0051】
また、弗素又は弗素含有成分は溶融及び焼成工程中に蒸発しがちであり、従ってガラス組成の正確な調整を難しくする。従って、本発明によるガラスはまた、弗素を含まないのが好ましい。
【0052】
更に、本発明は、本発明によるガラスを写像、射影、電気通信光学、光通信工学、モバイル駆動機構及び/又はレーザ技術の分野に用いるその使用に関する。
【0053】
更に、本発明は、本発明によるガラスを含む光学素子に関する。ここで、光学素子は特に、レンズ、非球面、プリズム及びコンパクトな構造部材で良い。この場合、本発明によれば、用語「光学素子」はまた、かかる光学素子のプリフォーム、例えばガブ(ガラス溶融体)、精密ガブ等を含む。
【0054】
以下に、本発明を一連の実施例に付いて詳細に説明する。だが、本発明は記載の実施例に限定されない。
【0055】
実施例
以下の実施例は本発明による好適なガラスを示し、その保護範囲を制限するものではない。
【0056】
実施例1
酸化物の原料を量り分け、例えばSb等の1つ又は複数の清澄材を添加し、次いでこれ等を十分に混合する。ガラス混合物は約970℃で連続溶融アグリゲート(結合体)に溶融され、酸素を泡立て、次いで清澄処理(970℃)され、均質化される。約970℃の鋳込み温度でガラスは鋳造され、所望の寸法に処理される。実験の示すところでは、大量の連続アグリゲートでは、温度を少なくとも約100Kに低下でき、加圧成形法により材料を最終形状に近い形状まで処理できる。
【0057】
【表1】

【0058】
例1〜6及び例7〜11に付いて得られた特性を夫々、表2及び表3に示す。
【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
本発明によるガラスはガラス転移温度Tgが470℃以下であり、良好に処理可能であり、アルカリに対して良好な耐性(良好な耐アルカリ性)を有する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】ガラス例2における本発明のガラスの粘度曲線を示す。
【図2】ガラス例3における本発明のガラスの内部透過率曲線を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率nが1.91≦n≦2.05、アッベ数vが19≦v≦25である鉛及び砒素非含有光学ガラスであって、次の組成(酸化物に基づく重量%で)、即ち
Bi 55 − 70
GeO 13 − 21
SiO 0.5 − 9
1 − 10
LiO 0 − 5
NaO 0 − 5
O 0 − 5
CsO 0 − 6
MgO 0 − 7
CaO 0 − 7
SrO 0 − 7
BaO 0 − 7
ZnO 0 − 10
TiO 0 − 5
La 0 − 7
Wo 0 − 6
Nb 0 − 6
Σアルカリ金属酸化物 0 − 5
Σアルカリ土類金属酸化物 0.5 − 7
Σ(La+WO+Nb+TiO) 0 − 8
通常の清澄剤 0 − 2
を含んで成り、BiとGeOの比を5以下とすることを特徴とするガラス。
【請求項2】
酸化ビスマスと酸化ゲルマニウムの総量を70重量%以上とする請求項1に記載のガラス。
【請求項3】
次の組成(酸化物に基づく重量%で)、即ち
Bi 56 − 68
GeO 14 − 20
SiO 0.5 − 8
1 − 9
LiO 0.5 − 4
NaO 0 − 4
O 0 − 4
CsO 0 − 5
MgO 0 − 7
CaO 0 − 7
SrO 0 − 7
BaO 0 − 7
ZnO 0 − 7
TiO 0 − 4
La 0 − 6
Wo 0 − 6
Nb 0 − 6
Σアルカリ金属酸化物 0 − 3
Σアルカリ属土類金酸化物 0.5 − 7
Σ(Bi+GeO) >72
Σ(La+WO+Nb+TiO) 0 − 7
通常の清澄剤 0 − 2
を含んで成る請求項1又は2に記載のガラス。
【請求項4】
次の組成(酸化物に基づく重量%で)、即ち
Bi 57 − 66
GeO 15 − 19
SiO 0.5 − 7
2 − 8
LiO 0.7 − 3
NaO 0 − 3
O 0 − 3
CsO 0 − 4
MgO 0 − 6
CaO 0 − 6
SrO 0 − 6
BaO 0 − 6
ZnO 0 − 5
TiO 0 − 3
La 0 − 6
Wo 0 − 4
Nb 0 − 4
Σアルカリ金属酸化物 0 − 2
Σアルカリ土類金属酸化物 1 − 6
Σ(Bi+GeO) >73
Σ(La+WO+Nb+TiO) 0 − 6
通常の清澄剤 0 − 2
を含んで成る請求項1〜3の何れか一つに記載のガラス。
【請求項5】
清澄剤として次の成分(重量%で)、即ち
Sb 0 − 1 及び/又は
SnO 0 − 1 及び/又は
SO2− 0 − 1 及び/又は
F 0 − 1
を含んで成る請求項1〜4の何れか一つに記載のガラス。
【請求項6】
弗素を含まない請求項1〜3の何れか一つに記載のガラス。
【請求項7】
プラチナ成分を最大で3ppm含む請求項1〜3の何れか一つに記載のガラス。
【請求項8】
比Bi/GeOが4以下である請求項1〜3の何れか一つに記載のガラス。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一つに記載のガラスを写像、射影、電気通信光学、光通信工学、モバイル駆動機構、レーザ技術及び/又はマイクロレンズアレイ等の分野に用いるその使用。
【請求項10】
請求項1〜8の何れか一つに記載のガラスを光学素子のために用いるその使用。
【請求項11】
請求項1〜8の何れか一つに記載のガラスを含んで成る光学素子。
【請求項12】
請求項1〜8の何れか一つに記載のガラスを精密プレスする工程を含んで成る光学素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−131703(P2012−131703A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−19418(P2012−19418)
【出願日】平成24年2月1日(2012.2.1)
【分割の表示】特願2006−290692(P2006−290692)の分割
【原出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(504299782)ショット アクチエンゲゼルシャフト (346)
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr.10,D−55122 Mainz,Germany
【Fターム(参考)】