説明

高屈折率賦与材のエマルジョン型有機樹脂組成物及びその用途

【課題】透明高屈折率の有機ポリマー微細球状粒子からなる光学特性賦与材としてディスプレイ画像表示面、光学レンズ、メディア媒体用基板等への光学特性被膜材及び着色塗料、着色インク、化粧料等への添加被覆材として用いられる高屈折率賦与材のエマルジョン型有機樹脂組成物及びその用途に関する。
【解決手段】金属シラン縮合体を介して、化学的に取り込まれている金属系無機元素が、元素周期律表に分類するZn,Bi,Al,In,Sb,Ga,Snの金属元素群及びCe,La,Ti,Zr,Ta,Yの遷移金属元素群から選ばれる少なくとも1種の無機元素で、屈折率(n)=1.65以上の高屈折率で、透明性又は半透明性の有機−無機ハイブリット構造体の有機ポリマー単分散球状粒子が、水性系又は油性系の分散溶媒中に一次分散状態で含有しているエマルジョン型の機能材有機樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高屈折率有機ポリマー球状粒子を含有する高屈折率賦与材樹脂組成物に関し、より詳細には、金属系無機元素が有機ポリマー内に化学的に取り込まれている有機ポリマーの微細球状粒子を主成分とする高屈折率で、少なくとも透明である等の光学特性を賦与させる機能材として、薄膜材及び添加・被覆材として用いられる高屈折率賦与材のエマルジョン型有機樹脂組成物に関する。
【0002】
また、本発明は、このような光学特性を賦与できるエマルジョン型有機樹脂組成物を、光学特性フィルム及び光学特性薄膜材として、または、光学特性賦与コーテイング材として各種ディスプレイ画像表示面、各種光学レンズに対するAR、AG対策材として、または、着色塗料、着色インク、化粧料等に添加・被覆させて光沢剤、色調高揚剤として作用させてカラー視感性を改善させる等の用途にも関する。
【背景技術】
【0003】
従来から、CRT、PDP、LCD、ELD等の画像表示装置において、入射光の迷光による画質低下や、また、表示画面の外光の反射によるコントランスト及び画質の低下、像の映り込み、画質のギラツキ、白ぼけ等の障害を防止させてより高い画質で、より高精細な画像を表示・視感させることが求められている。
【0004】
すなわち、これらの画像表示面には、従来から室内照明や、太陽光の入射等による操作者等の影の映り込みが、画像の視認性を著しく妨げている。そこで、その表面には、表面反射光を拡散させて、外光の正反射を抑えて映り込みを防ぐために、いわゆる防眩性を有する面として、ラフネスな表面(微細な凹凸を有する粗面)を形成させた光拡散層が設けられる。
【0005】
また、特に近年における表示の高精細化に伴い液晶ディスプレイ等において、画素サイズのより微細化、高精細化を必要とすることで、新たに表示のギラツキが問題になっているからである。すなわち、上述するような光拡散層を設けることで、ランダムに強弱の輝点が現れて、画像にギラツキ(画素を通りぬける光が表面のラフネス面によって歪められて透過光スポットのバラツキがランダムに発生する現象である)が生じて表示画質を著しく低下させる。また、このように表面処理層を設けることで、逆に光拡散に係わる白ぼけ(すなわち、白化現象として、ディスプレイを上下左右の角度から確認した時の表面層の白っぽさである)の現象を起こす傾向にある。
【0006】
そこで、従来から、光学干渉の原理を用いてこれらの表示画面の反射率を低減させるために、その最表面に金属酸化物の透明薄膜の積層多層膜を施したり、また、透明下地層(又は透明基材面)に、その屈折率より低屈折率層を形成させてなる低反射フィルム等による対策を施すことが知られている。
【0007】
例えば、[特許文献1]には、LCD、ELD、PDP等の画面のギラツキ現象を防止させて画像の視認性を高めるために用いられる光拡散フィルムとして、ポリエステル、アクリル樹脂、PC、ポリスチレン等の光透過性フィルム基材の片面に透過した光を拡散させるための表面粗さを有する光拡散層を設け、他方の光入射面の最表面に、入射する光の反射を防止するために、この基材フィルム材の屈折率よりも低いシリコン含有フッ化ビニリデンや、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体等のフッ素含有共重合体の低屈折率層を設けた光拡散フィルムが提案されている。
【0008】
また、[特許文献2]には、プラスチックス、金属等の各種の表面を改質させるコーテイング組成物として、反応性ラジカルを有するシラン化合物と各種の金属錯体化合物、又は金属アルコキシドを含有するコーテイング組成物が記載されている。しかしながら、これらの金属元素の化合物は、シラン化合物の三次元網目構造の塗膜を形成させる硬化触媒として使用されている。従って、シラン化合物とこれらの金属錯体化合物、金属アルコキシド等の金属元素の化合物間には、特に化学的な結合が形成されていないといえる。
【0009】
また、[特許文献3]には、屈折率が1.60〜1.74の高屈折率レンズ等の光学透明プラスチック・レンズ用の被覆組成物として、その硬化膜の屈折率が1.60以上であって、有機ケイ素化合物と、ルチル型チタン、酸化スズ及び酸化ジルコニウムからなる平均粒子径1〜300nmの複合酸化物微粒子(ゾル)とを主成分に、EDTA系金属キレート化合物等を含有するコーティング用組成物が提案されている。
すなわち、(1)塗膜の屈折率がレンズ屈折率より低いことによる塗膜に干渉縞を生じさせることを防止させる高屈折性を賦与させるコーティング組成物である。また、従来から、(2)屈折率を上げるための酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化タングステン等の無機微粒子ゾル及びこれらの複合ゾルの検討が知られている中で、これらのゾル組成物の安定性や、その硬化膜の耐光性等をクリヤしてなる特に、屈折率が1.60〜1.74の高屈折率プラスチック・レンズに対処できる耐擦傷性、耐摩耗性且つ透明性である高屈折率の硬化膜を形成させるコーティング組成物が提案されている。
【0010】
また、[特許文献4]には、屈折率が1.45〜1.62の範囲にある光学用透明プラスチックであるPMMA、PC、PS、ポリスルフォン、環状オレフィン及びこれらの複合材からなる熱可塑性プラスチックに粒径が20〜40nmのナノ粒子サイズの酸化チタン(ナノフェーズ・テクノロジー社製)が、40容量%含有させた屈折率が1.90なる光学反射率=0になる透明被膜材が提案されている。このような被覆材を用いてなる反射防止型光学透明部材を用いてなる、光学レンズ、レンズアレイー、メガネ用レンズ、窓ガラス、光ファイバー、デジタル撮像機の保護レンズ、デジタル撮像素子のマイクロレンズとして提供されると記載されている。
【0011】
また、[特許文献5]には、熱硬化型シリコン樹脂に、重量部数で表して屈折率が1.70〜2.7で、粒子径が15nm以下の酸化亜鉛、酸化チタニウム、酸化ジルコニウム粒子が20〜40重量部を含有する屈折率1.65〜2.2を賦与させる透明高屈折率コーテング樹脂組成物が提案されている。
【0012】
また、[特許文献6]には、TiO,ZrO,CeO,Al,Y,La,ZnO等の平均粒子径が30〜60nmで、屈折率が1.65以上の高屈折率金属酸化物微粒子を含有する高屈折率ハードコート被覆層と屈折率が1.35〜1.55の低屈折率ハードコート被覆層とを組合わせてなる層厚2〜5μmで、全光線透過率90%以上の反射防止フィルムが提案されている。
【0013】
【特許文献1】特開2001−21706
【特許文献2】特開平09−169951
【特許文献3】特開2002−129102
【特許文献4】特開2002−148408
【特許文献5】特開平08−110401
【特許文献6】特開2004−258209
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上のような状況下にあって、従来から、例えば、フラットCRTの視認性を向上させるため、外光の反射を抑える表面処理として、その表面に多層膜を形成させて干渉により光学的に外光の反射を低減させる対策がなされている。また、近年、省エネタイプ等として期待され実用化されている反射型LCDにおいても、バックライトなしでも外光の反射光を有効に利用するLCD表示面にさせるために施される反射対策から、その反面、新たに不必要な反射を防止させるAR対策が必要とされている。
【0015】
しかるに、従来から、このようなAR対策の多くは、光入射面に多層膜を構成させるものである。その光学的な作用目的から、この多層膜を形成させる各層の膜厚には高い精度が求められる。また、このような従来法による蒸着法や、スパッタ法等の真空成膜法(ドライ法)によるAR膜等の光学的対策には、著しくコスト高になる欠点を持ち合わせている。
【0016】
また、このような境界における屈折率が連続的に変化する多層膜反射防止層は、可視光の広波長領域で、入射面の入射角に対して生ずるフレネル反射を低減させる対策法である。しかしながら、このような多層膜からなる理想的な無光反射積層構造とは、適宜最適な屈折率を有する物質層を組み合わせることである。しかも、このような物質層を極薄膜に高度に平滑に積層形成させることは、技術的にも、コスト的にも必ずしも容易でないことも事実である。
【0017】
また、光の反射は、主にその光入射面の屈折率の急激な変化により生じる。従って、光が入射する境界(入射層)においては、屈折率変化が連続しているような入射層であれば、光の反射を効果的に防止することができる。このような観点から入射層を多層膜にして各界面での屈折率を滑らかに変化させることで、表示面におけるこのような光入射に伴う迷光としての影響を防止させるものである。
【0018】
そこで、既に上記した[特許文献1]〜[特許文献6]には、従来の乾式成膜法(ドライ法)に代わって、より低廉で技術的にも簡便である各種の湿式成膜法(ウエット法)による高屈折率被膜及び/又は低屈折率被膜を組み合わせて各種のレンズ面又は各種のディスプレイ面の反射低減又は反射防止対策が提案されている。
【0019】
その低屈折率被覆に対しては、[特許文献1]又は[特許文献6]には、例えば、屈折率が1.35〜1.55の低屈折率ハードコート被覆層等が提案されている。また、高屈折率被覆に対しては、[特許文献2]〜[特許文献6]には、TiO,ZrO,CeO,Al,Y,La,ZnO等の平均粒子径が20〜60nmで、屈折率が1.65以上の高屈折率金属酸化物微粒子を含有する高屈折率ハードコート被覆等が提案されている。
【0020】
しかるに、例えば、高屈折率被覆膜に係わって更に詳述すれば、これら[特許文献]に提案されている何れの高屈折率被覆膜も、有機ポリマー樹脂被膜中に分散する高屈折率を有するTiO等の粒子径が数十nmの超微細な無機酸化物粒子に由来するものである。
【0021】
上記するTiO,ZrO,CeO,Al,Y,La,ZnOのような酸化物粒子は、その一次粒子径のサイズから著しく凝集傾向にある超微細粒子であって、通常、その外観の粒子形状は、凝集粗大化した2次粒子を形成する傾向にある。しかも、有機ポリマー樹脂中に含有させるに際しての無機酸化物粒子は、無機/有機の互いに非相容性の異質分散系になる。従って、これらの高屈折率無機酸化物粒子が有機ポリマー樹脂中に高分散化させるに、従来から煩雑、難題な技術的課題が課せられるのが一般的である。また、得られる機能材樹脂組成物も、一般的に取り扱いハンドリング性を低下させる傾向にあるのが実状である。
【0022】
そこで、本発明の目的は、反射防止の光学特性フィルム及び光学特性薄膜、各種ディスプレイ・デバイスの画像表示面、各種光学レンズに対するAR、AG対策としてのコーテイング光学特性賦与材として、また、添加・被覆による着色塗料、着色インク、化粧料等に対する光学特性改善策材として、これらの作用効果を効果的に発揮させるため、可視光透過性に優れる屈折率(n)=1.65以上の高屈折率機能を賦与できる有機ポリマー球状粒子を主成分とし、しかも、取り扱いハンドリング性に優れる機能材有機樹脂成物を提供することである。
【0023】
また、本発明の他の目的は、このような高屈折率賦与材として高屈折率機能を賦与できる機能材有機樹脂組成物を用いて、反射防止の光学特性フィルム及び光学特性薄膜、ディスプレイ画面及び各種レンズの光学対策被膜、更には、着色塗料、着色インク及び化粧料に添加・被覆させてカラー視感性を向上させる各種の用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
そこで、本発明者は、上記課題を鋭意検討した結果、本発明者が既に特開2003−192791号公報において提案済みであるアルコキシシラン類及び/又はアシロキシシラン類のシラン化合物と、M(OR)n化学式[式中、Mは元素周期表の第2族〜第15族に属する金属元素及び遷移金属元素類から選ばれる少なくとも1種の無機元素を示し、Rが水素又は炭素数が、1〜10のアルキル基、フェニル基を示し、n=2〜4の整数を示す。]で表わされる金属元素オキシ化合物との脱水型又は脱アルコール型の金属シラン縮合物を介して金属系無機元素が化学的に取り込まれている有機ポリマー球状粒子に着目して、その金属系無機元素を特定した結果、油性系の分散溶媒中に、高屈折率で透明性の有機ポリマー粒子が、全く凝集することなく一次分散状態で含有するエマルジョン型の有機ポリマー樹脂組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
【0025】
本発明によれば、元素周期律表に分類する原子価2以上の金属系無機元素が脱水型又は脱アルコール型縮合体を介して化学的に取り込んでいる有機ポリマー単分散性球状粒子を主成分とし、その光学屈折率(n)=1.65以上の高屈折率で、且つ可視光透過率が60%以上である高屈折率球状粒子が、水性系又は油性系分散溶媒中に二次凝集することなく一次分散状態で含有していることを特徴とする高屈折率賦与材のエマルジョン型有機樹脂組成物を提供する。
【0026】
すなわち、
(1)このように有機ポリマー質中に化学的に結合している無機元素が、元素周期律表に分類する第3〜第15族に属するZn,Bi,Al,In,Sb,Ga,Snの金属元素群及びCe,La,Ti,Zr,Ta,Yの遷移金属元素群から選ばれる特定する少なくとも1種の金属系無機元素である。
(2)しかも、このように本発明において特定する無機元素の何れもが、通常、その酸化物、水酸化物又はイオンとしては、全く無色である原子価2以上の金属系無機元素である。
(3)また、有機−無機ハイブリット構造体として、これらの金属系無機元素を化学的に取り込むことで、これらの金属系無機元素に由来する光学屈折率(n)=1.65以上の高屈折率を有する有機ポリマー球状粒子となり、且つ単分散性の有機ポリマー球状粒子である。
(4)更に、単分散性に優れる有機ポリマー球状定形粒子であることから、水性系又は油性系の分散溶媒中に二次凝集することなく一次分散状態で含有している。
ことを特徴とする高屈折率を賦与させるエマルジョン型の機能材有機樹脂組成物である。
【0027】
また、本発明によれば、このような高屈折、透明性又は半透明性の光学特性及び高い分散性の粒子特性を有する有機ポリマー単分散球状粒子を主成分とすることで、本発明によるエマルジョン型の高屈折率賦与材の有機樹脂組成物は、下記(A)〜(F)に記載するような機能を効果的に発揮させることを特徴とする各種の用途を提供する。
すなわち、
(A)メガネ及びカメラレンズ、光ピックアップ用対物レンズ、レーザープリンター用レンズ、プロジェクションテレビ投影用レンズ、 偏光板及び光メディア媒体基材群から選ばれる何れかの透明基材上に、膜厚20nm〜2μmの薄膜として設けられることを特徴とする透明高屈率被覆膜を提供する。
(B)透明高屈折率被覆薄膜として、透明低屈折率被覆薄膜/前記透明高屈折率被覆薄膜/透明有機フィルム/透明粘着剤層/トランスファー基材フィルムの順に構成されことを特徴とするトランスファー型反射防止フィルムを提供する。
(C)エマルジョン型の水性系又は油性系の透明高屈折率を賦与できる機能材有機樹脂組成物を、光沢剤、色調高揚剤、粘稠剤及び流動化剤として配合されることを特徴とする着色インク組成物を提供する。
(D)エマルジョン型の水性又は油性の透明高屈折率を賦与できる機能材有機樹脂組成物を、光沢剤、色調高揚剤及び粘稠剤として配合されてなるペースト状又はクリーム状であることを特徴とする乳化化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0028】
以上から、有機ポリマー球状粒子を主成分とする本発明による水性系又は油性系のエマルジョン型有機樹脂組成物は、下記(a)〜(f)なる特徴を有することから、取り扱いハンドリング性に優れる透明性又は半透明性の高屈折率なる光学特性を賦与させる機能材として利用することができる。
(a)含有する主成分の有機ポリマー球状粒子が、通常、その酸化物として高屈折率を発揮するTi、Zr、Zn等の金属系無機元素を化学的に取り込んでなす有機−無機ハイブリット構造体を形成している有機ポリマー球状粒子である。
(b)また、このように取り込まれている金属系無機元素類の何れもが、通常、その酸化物、水酸化物及びイオンとして、無色である無機元素である。
(c)しかも、その粒子径サイズが20nm以上で、1μmを超えない超微細であることから、可視光透過率に優れる有機ポリマー球状粒子とである。
(d)また、その粒子形状は、添付[図1]に示すSEM写真像から明らかなように、単分散性に優れる球状定形粒子である。
(e)更には、このように化学的に取り込まれた有機−無機ハイブリット構造体をなす有機ポリマー球状粒子は、これらの金属系無機元素に由来する光学特性として、光学屈折率(n)=1.65以上の高屈折率の有機ポリマー球状粒子である。
(f)更には、本発明による水性系又は油性系のエマルジョン型有機樹脂組成物中に主成分として含有する高屈折率有機ポリマー球状粒子は、その単分散性で球状定形粒子である粒子特性が活かされて全く2次凝集をすることなく一次分散状態で含有している。
【0029】
このような特徴を有する水性系又は油性系のエマルジョン型の光学特性機能を賦与させる機能材有機樹脂組成物を、塗工被膜化させても被覆ポリマー膜自体が高屈折率を有する有機ポリマー質機能材となる。その結果、従来のように被膜ポリマー中に、例えば、高屈折率機能材である酸化チタン等の超微細粒子を機械的に分散させてなる従来型の機能材樹脂組成物とは著しく異なって、技術的に煩雑・難題な障害を発生させないことから、極めて簡便なウエット塗工法で、良好な光学特性を発揮できる透明な高屈折率被膜を形成させることができる。
【0030】
また、高屈折率機能材であって、しかも、被膜ポリマー質となる単分散性の有機ポリマー球状粒子は、その粒子径が20nm〜1μm範囲で調整されている。従って、本発明による透明高屈折率賦与材の機能材有機樹脂組成物を用いることで、被覆膜の膜厚形成において、この単分散性の有機ポリマー球状粒子の粒子径サイズを適宜反映させることができる。従って、従来のドライ法に比較して著しく簡便なウエット塗工法で容易に所定の膜厚を有する透明で高屈折率の被膜を形成させることができる。
【0031】
更には、透明高屈折賦与材である水性系又は油性系のエマルジョン型有機樹脂組成物中に、主成分として含有する透明高屈折率有機ポリマー粒子は、既に説明する如く、非凝集状態で含有している超微細な単分散性球状粒子である。従って、このようなエマルジョン型の有機樹脂組成物を着色インク組成物に、配合させることでこの有機ポリマー単分散球状粒子の透明高屈折率なる光学特性と、超微細で球状定形粒子の粒子特性とが活かされて、光沢剤、色調高揚剤、粘稠剤及び流動化剤として効果的に機能を発揮させる。また、同様な理由から光沢剤、色調高揚剤及び粘稠剤として配合されたペースト状又はクリーム状の乳化化粧料を調製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に、本発明によるエマルジョン型の高屈折率賦与材樹脂組成物及びその用途に係わる実施の形態について更に説明する。
【0033】
既に上述する如く、本発明による高屈折率賦与材であるエマルジョン型有機樹脂組成物中に主成分として含有する有機ポリマー球状粒子は、本発明者が、既に特開2003−192791号公報に提案した無機元素を化学的に取り込ませてなる有機ポリマー球状粒子を特定して反映させたものである。本発明においては、特定する金属系無機元素を化学的に取り込んでいる有機ポリマー球状粒子が、水性系又は油性系の分散溶媒中に凝集することなく一次分散状態で含有している高屈折率機能を賦与できるエマルジョン型の機能材有機樹脂組成物を特徴としている。
【0034】
すなわち、反応性有機ラジカルを有するアルコキシシラン類及び/又はアシロキシシラン類のシラン化合物と、M(OR)n式で表される金属元素オキシ化合との脱水型又は脱アルコール型[式中、Mは元素周期表の第2族〜第15族に属する金属元素及び遷移金属元素類から選ばれる少なくとも1種の金属系無機元素を示し、Rが水素又は炭素数が、1〜10のアルキル基、フェニル基を示し、n=2〜4の整数を示す。]として、金属元素を取り込ませた金属シラン縮合物中には、シラン化合物からの反応性有機ラジカルが導入されている。これによって、金属系無機元素が反応性有機ラジカルを有する金属シラン縮合体として含有させることができる。次いで、この反応性有機ラジカルを介して、重合性モノマーと重合反応させることで、重合体粒子として有機ポリマー球状粒子の形成時にモノマーと結合し、有機ポリマー球状粒子中に金属系無機元素を化学的に結合させた有機ポリマー球状粒子を用いることができる。
【0035】
<本発明による高屈折率賦与材の有機樹脂組成物の調製>
このような金属系無機元素を含有する有機ポリマー球状粒子を調製するに際し、攪拌下に、水/界面活性剤/重合性モノマーの水性分散媒体中に、例えば、金属元素のオキシ化合物であるゾル状金属系無機元素の水酸化物粒子を、反応性有機ラジカルを有するアルコキシシラン類及び/又はアシロキシシラン類のシラン化合物と縮合反応させて得られる脱水型又は脱アルコール型の金属シラン縮合体微細粒子が、均一に分散するサスペンジョン溶液を調製する。
次いで、このサスペンジョン溶液に、所定量の水と更に同様の重合性モノマーとを添加させた後、通常の乳化重合又は懸濁重合反応下に、金属系無機元素のシラン縮合体に係わる反応性有機ラジカルと重合性モノマーと間で重合反応が進捗して重合体球状粒子が形成される。このように調製された有機ポリマー球状粒子は、この金属シラン縮合体を介して導入された本発明が特定した金属系無機元素が化学的に取り込まれてなる有機−無機ハイブリット構造体の有機ポリマー球状粒子として製造される。
【0036】
また、本発明においては、必要に応じて、このように金属元素を導入させるシラン縮合体の形成と、このシラン縮合体に係わる反応性有機ラジカルと重合性モノマーとの反応を、ほぼ同時に進捗させることもできる。また、特に、乳化重合又は懸濁重合に限定されるものでなく、本発明においては、ソープフリ乳化重合によっても適宜好適にこの有機ポリマー球状粒子を調製することができる。
【0037】
このように本発明が特定した金属系無機元素を含有させた金属シラン縮合体を用いることで、これらの金属系無機元素に由来する高屈折率成分を賦与させ、しかも、透明性又は半透明性を保持させるために、既に上述した如く、特定した無機元素は、好ましくは、元素周期律表に分類する第3〜第15族に属するZn,Bi,Al,In,Sb,Ga,Sn等の金属元素群及びCe,La,Ti,Zr,Ta,Yの遷移金属元素群から選ばれる少なくとも1種の金属系無機元素を好適に用いることができる。このように本発明が特定した無機元素の何れもが、通常、その酸化物、水酸化物又はイオンとしては、全く無色である原子価2以上の金属系無機元素である。
【0038】
本発明において、シラン化合物から導入される反応性有機ラジカルとして、例えば、ビニル基、エポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アミノ基等を挙げることができる。すなわち、そのシリコーン化合物(又はシラン化合物)としては、例えば、アルコキシシラン、アシロキシシラン、シランカップリング剤、シリル化剤等のシラン化合物を挙げることができる。例えば、アルコキシシランとしては、Si(OMe)4 ,MeSi(OMe)3 ,MeSi(OMe),MeSi(OMe) ,CSi(OMe)3 ,n−C37Si(OMe)3 ,n−C613Si(OMe)3 ,n−C1021Si(OMe)3 ,CH=CHSi(OMe)3 ,C65Si(OMe)3 ,(C65)Si(OMe);特に、通常に知られているシランカップリング剤として、NHCHCHNHCHCHCHMeSi(OMe)3 ,NHCHCHNHCHCHCHSiMe(OMe),HSCHCHCHSi(OMe)3 ,CNHCHCHCHSi(OMe)3 ,CH=(CH)CCOOCHCHCHSi(OMe)3 ;また、Si(OEt)4 ,MeSi(OEt)3 ,MeSi(OEt),MeSiOEt等が挙げられ、また、アシロキシシランとしては、MeSi(OCOMe),CSi(OMe)3 ,CH=CHSi(OCOMe)等が挙げられ、更には、シリル化剤としては、MeSiCl,(MeSi)NH,(MeSiNH)C=O,MeCONHSiMe等を挙げることができる。ここで、Meはメチル基である。
【0039】
また、金属系無機元素のオキシ化合物としては、その金属水酸化物、その金属アルコキシド等が挙げられる。中でも本発明に用いるオキシ化合物として、例えば、Zn(OH),Al(OH),Ti(OH),Zr(OH),Ga(OH),Ce(OH),Ce(OH),Bi(OH),In(OH),Sb(0H),Sn(OH),La(OH),Y(OH)等の金属系無機元素の水酸化物を挙げることができる。本発明において、これら水酸化物の超微細粒子の水性分散ゾルとして適宜好適に用いることができる。
【0040】
また、金属アルコキシドとしては、例えば、アルミニウムエトキシド,アルミニウムトリエトキシド,イソブチルアルミニウムメトキシド,イソブチルアルミニウムエトキシド,イソブチルアルミニウムイソプロポキシド,アルミニウムブトキシド,;スズt−ブトキサイド;テトラエトキシチタン,テトラ−n−プロポキシチタン,テトラ−n−ブトキシチタン,テトラ−i−プロポキシチタン,チタンメトキサイド,チタンエトキサイド,チタン−n−プロポキサイド,チタンイソプロポキサイド,チタンイソブトキサイド;ジルコニウムエトキサイド,ジルコニウム−n−プロポキサイド,ジルコニウムイソプロポキサイド,ジルコニウム−n−ブトキサイド,エトキサイドテトラ−n−プロポキシジルコニウム等が挙げられる。
【0041】
本発明において、このような金属シラン縮合体を用いることで、有機ポリマー球状粒子100質量部当り、Zn,Bi,Al,In,Sb,Ga,Snの金属元素群及びLa,Ce,Ti,Zr,Ta,Yの遷移金属元素群から選ばれる所望する金属系無機元素を0.01〜30質量部数の範囲で、化学的に結合してなる光学屈折率(n)=1.65以上である有機ポリマー単分散性球状粒子を製造することができる。
【0042】
また、本発明において、得られる有機ポリマー球状粒子が、より高屈折率である観点から、好ましくは、取り込む金属系無機元素量の含有量に比例させて高屈折率化される。また、より透明である観点からは、好ましくは、その取り込み量は、25質量部数以下で、更に好ましくは、20質量部数以下であることがより好適である。
【0043】
本発明においては、このように金属系無機元素を化学的に取り込むことで発現される屈折率(n)は、上記する金属系無機元素の種類及びその取り込まれる量によって適宜自在に調整されるので、有機ポリマー球状粒子に賦与される光学特性の屈折率(n)は、好ましくは、1.65以上で、略1.90以下である有機ポリマー球状粒子として適宜製造することができる。
【0044】
<本発明に用いる重合性モノマー種>
本発明による有機ポリマー球状粒子の製造法において、上記する高屈折率有機ポリマー球状粒子の高屈折率化は、有機ポリマー球状粒子を構成する有機ポリマー質自体の屈折率を考慮すると、適材有機ポリマー質として、可能な限り高い屈折率を有するポリマー樹脂を用いることが望まれる。そこで、従来から広く用いられている透明有機ポリマー樹脂(括弧内の数値は、それぞれの光学屈折率を示す)として、例えば、テトラフルオロエチレンン(1.35〜1.38)、酢酸ビニル(1.45〜1.47)、ポリ−4−メチルペンテン−1(1.466)、ポリ(メタ)アクリル酸メチル(1.488〜1.495)、ポリシクロヘキシルメタクリレート(1.5066)、ポリビニルアルコール(1.49〜1.53)、ナイロン6(1.53)、ポリベンジルメタアクリレート(1.5680)、ポリフェニレンメタクリレート(1.5706)、ポリエチレンテレフタレート(1.576)、スチレン・アクリロニトリル共重合体(1.57)、ポリスチレン(1.59〜1.592)、塩化ビニル(1.54〜1.63)、塩化ビニリデン(1.60〜1.63)等を挙げることができる。
【0045】
そこで、本発明において用いる高屈折率化された有機ポリマーとは、光学屈折率(n)=1.65以上である有機ポリマーを高屈折率賦与材として適宜好適に各種の用途に用いるものである。
【0046】
既に上述する如く、本発明においては、乳化重合法又は縣濁重合法で有機ポリマー球状粒子を調製させることから、特に限定されるものではないが、有機ポリマー質を形成させる重合性モノマーとして、好ましくは、重合反応系において、水溶性の液状であることが好適である。従って、本発明において、このような金属元素を含有する有機ポリマー球状粒子のポリマー質としては、好ましくは、(メタ)アクリル系、スチレン系、アクリル−スチレン系、アクリル−ジエン系、スチレン−ジエン系、アクリル−イミド系、スチレン−イミド系等を適宜好適に調製させて用いることができる。
【0047】
そこで、本発明に用いるアクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、(メタ)アクリル酸アニールエステル類、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル類、多価アクリル酸エステル類、脂環式アルコールのメタクリル酸エステル類、エポキシ基含有ビニル単量体、不飽和カルボン酸又はその部分エステル化合物及びその無水物、アミド基含有ビニル単量体、有機ケイ素基含有ビニル化合物単量体等が挙げられる。本発明においては、好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類の単独又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル類を主成分にして、他のアクリル系モノマー類の少なくとも1種を適宜好適に組合わせて使用することができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステル類に他のモノマー類を組合わせて使用する場合、その配合割合は、発現させる特性にもよるが、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類の100質量部に対して、他のアクリル系モノマー類の少なくとも1種を10〜100質量部の範囲で適宜用いることができる。
【0048】
これらのアクリル系モノマーの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル,(メタ)アクリル酸エチル,(メタ)アクリル酸プロピル,(メタ)アクリル酸イソプロピル,(メタ)アクリル酸ブチル,(メタ)アクリル酸イソブチル,(メタ)アクリル酸ペンチル,(メタ)アクリル酸ヘキシル,(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル,(メタ)アクリル酸オクチル,(メタ)アクリル酸ラウリル,(メタ)アクリル酸ノニル,(メタ)アクリル酸デシル,(メタ)アクリル酸ドデシル,(メタ)アクリル酸フェニル,(メタ)アクリル酸メトキシエチル,(メタ)アクリル酸エトキシエチル,(メタ)アクリル酸プロポキシエチル,(メタ)アクリル酸ブトキシエチル,(メタ)アクリル酸エトキシプロピル等のアクリル酸アルキルエステル;ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド;N-メチロール(メタ)アクリルアミド及びジアセトンアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類並びにグリシジル(メタ)アクリレート;エチレングリコールのジアクリル酸エステル,ジエチルグリコールのジアクリル酸エステル,トリエチレングリコールのジアクリル酸エステル,ポリエチレングリコールのジアクリル酸エステル,ジプロピレングリコールのジアクリル酸エステル,トリプロピレングリコールのジアクリル酸エステル等の(ポリ)アルキレングリコールのジアクリル酸エステル類;エチレングリコールのジメタクリル酸エステル,ジエチレングリコールのジメタクリル酸エステル,トリエチレングリコールのジメタクリル酸エステル,ポリエチレングリコールのジアクリル酸エステル,プロピレングリコールのジメタクリル酸エステル,ジプロピレングリコールのジメタクリル酸エステル,トリプロピレングリコールのジメタクリル酸エステル等の(ポリ)アルキレングリコールのジメタクリル酸エステル類等を挙げることができる。
【0049】
また、スチレン系モノマーの具体例としては、例えば、スチレン,メチルスチレン,ジメチルスチレン,トリメチルスチレン,エチルスチレン,ジエチルスチレン,トリエチルスチレン,プロピルスチレン,ブチルスチレン,ヘキシルスチレン,ヘプチルスチレン及びオクチルスチレン等のアルキルスチレン;フロロスチレン,クロルスチレン,ブロモスチレン,ジブロモスチレン,クロルメチルスチレン等のハロゲン化スチレン;ニトロスチレン,アセチルスチレン,メトキシスチレン、α−メチルスチレン,ビニルトルエン等を挙げることができる。
【0050】
また、ポリマー質の耐熱性等を考慮した場合のその他の重合性モノマーとして、例えば、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミドなどのアクリルアミド系誘導体、p−アミノスチレンなどのアミノスチレン類、マレイミド,N−メチルマレイミド,N−フェニルマレイミド,N−シクロヘキシルマレイミド,6−アミノヘキシルコハク酸イミド,2−アミノエチルコハク酸イミド等のイミド類、更には、重合性二重結合を二個有するブタジエン,イソプレイン,シクロペンタジエン,1,3−ペンタジエン,ジシクロペンタジエン等のジエン類を挙げることができる。
【0051】
また、必要に応じて、官能基を有するモノマーとして、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸等の不飽和カルボン酸が挙げられ、また、これらの誘導体として、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、また、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸プロピルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸フェニルアミノエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルアミノエチルなどのアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル系誘導体類、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミンなどのビニルアミン系誘導体類、アリルアミン、メタクリルアミン、N−メチルアクリルアミン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアリルアミン系誘導体等を挙げることができる。
【0052】
また、本発明において、必ずしも架橋構造を形成させる必要がないが、好ましくは、形成される粒子の機械的強度を高める観点から、架橋構造を適宜導入させることができる。このような架橋構造を形成させるに、2官能性以上の多官能性モノマーを適宜好適に使用することができる。その多官能性モノマーとして、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート,トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート,ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート,トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート,ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート,1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジアクリレート,1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリアクリレート,1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリアクリレート,N−メチロールアクリルアマイド等を挙げることができる。また、このような多官能性モノマーは、既に上述した重合性モノマー100質量部に対して、通常、0.5〜50質量部、好ましくは、1〜15質量部で適宜好適に使用される。
【0053】
また、乳化重合又は懸濁重合においては、その乳化剤として、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩,ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル等のポリエチレングリコールアルキルエーテル,ビニル基、アクリロイル基、アリル基等の反応性基を有する反応性乳化剤,ポリビニルアルコール,ポリアクリル酸塩等の水溶性高分子化合物を挙げることができる。例えば、乳化重合において、これらの乳化剤は、アクリル系モノマー等の重合性モノマー100質量部に対して、通常、0.01〜60質量部で、好ましくは0.1〜20質量部の範囲で適宜添加することができる。また、その添加量において、下限値方向の添加量では、得られるポリマー球状粒子の粒子径が大き目の傾向に調製され、一方、上限値方向の添加量では、その粒子径が小さ目の傾向に調製され、本発明においても、金属元素含有の有機ポリマー球状粒子は、単分散性に優れた平均粒子径を、適宜20nm以上で、1μmを超えない範囲に調製することができる。
【0054】
本発明においては、得られる金属元素含有の有機ポリマー球状粒子の平均粒子径に係わって、例えば、体積基準で表わして、好ましく、(1)20nm以上で、400nmを超えない範囲に、(2)400nm以上で、800nmを超えない範囲に、(3)800nm以上で、1μmを超えない範囲の微細粒子群に、予め棲み分け調製したエマルジョン型有機樹脂組成物を適宜調製することができる。
【0055】
以上から、本発明において、好ましくは、所定の粒度分布を持たせることで特定の用途に対処にさせる場合には、これら(1)〜(3)に記載するエマルジョン型有機樹脂組成物を、予め所定の配合割合で組み合わせ混合させることで、所定の粒度分布を持たせた高屈折率賦与材のエマルジョン型有機樹脂組成物を適宜好適に調製して用いることができる。
【0056】
また、特に、所望する粒子径及びその均斉度を求める場合には、通常、乳化重合法にあっては、乳化剤の種類及びその添加量等に影響され、分散安定剤として界面活性剤等を用いずに水系の反応媒体中に、溶解したモノマーを、水溶性開始剤により攪拌混合下に重合させることから、一般的に、その粒子径は、溶解度の高いモノマーにおいて、生成する粒子径が小さくなり、溶解度の低いモノマーにおいて、その粒子径が大きくなる傾向にある。本発明においては、好ましくは、懸濁重合法において、油溶性重合開始剤を溶解する反応モノマーに、乳化剤を溶解する水性媒体を所定の攪拌速度・加温下に介在させて所望する粒子径を有する本発明による金属元素含有の重合体樹脂粒子の分散液(エマルジョン)を適宜容易に調製することができる。
【0057】
なお、本発明においては、既に説明した如く、超微細粒子でありながら、外観形状が球状の定形粒子で、しかも、単分散性に優れる等の粒子特性が反映されて、本発明においては、特に分散剤を用いることなく一次分散状態で含有している機能材有機樹脂組成物を調製することができる。
【0058】
<水性系又は油性系の分散溶媒及び本発明による機能材有機樹脂組成物>
以上から得られた高屈折率機能を賦与させる有機ポリマー球状粒子を、分散溶媒中に分散させて本発明による機能材有機樹脂組成物を調製させるに際しては、その機能材有機樹脂組成物の用途にもよるが、その分散溶媒としては、酢酸エチル,酢酸ブチル、MEK,アセトン,MIBK,アセチルアセトン、MMA,アルコール類、ポリエチレングリコール、トルエン、キシレン等から選ばれる水性系又は油性系の分散溶媒の単独又は2種類以上を混合させて適宜好適に用いることができる。本発明においては、このような水性系又は油性系の分散溶媒100容量部当たり、平均粒子径20nm以上で、1μmを超えない範囲にある高屈折率有機ポリマー球状粒子を、6〜50容量部範囲で、好ましくは、10〜40容量部で、特に好ましくは、20〜30容量部の範囲にある水性系又は油性系エマルジョン型有機樹脂組成物として適宜好適に用いられる。本発明においては、この下限値の6容量部未満では、塗工等の取り扱い時における実用性に乏しく、また、上限値の50容量部を超えると、含有微細粒子が凝集傾向にあって均質な塗膜形成を阻害させ、しかも、取り扱いハンドリング性を著しく低下させる。
【0059】
特に、アルコール類としては、以下に挙げるものに限定されることはないが、例えば、メタノール、エタノール,プロパノール,イソプロパノール、ブタノール,;2−アミノエタノール,1−アミノ−2−プロパノール,3−アミノ−1−プロパノール,2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール,2−アミノ−3−フェニル−1−プロパノール,4−アミノ−1−ブタノール,2−アミノ−1−ブタノール,2−アミノ−3−メチル−1−プタノール,2−アミノ−1−ペンタノール,6−アミノ−1−ヘキサノール,7−アミノ−1−ヘプタノール,2−(2−アミノエトキシ)エタノール等の1級アミノアルコール;2−フルオロエタノール,2,2,2−トリフルオロエタノール,2−パーフルオロブチルエタノール,3−パーフルオロブチル−2−プロペン−1−オール,6−(パーフルオロブチル)ヘキサノール,2−(パーフルオロヘキシル)エタノール,3−(パーフルオロヘキシル)プロパノール,6−(パーフルオロオクチル)ヘキサノール,6−(パーフルオロ−1−メチルエチル)ヘキサノール,2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エタノール等のモノオール化合物、また、エチレングリコール,ジエチレングリコール,プロピレングリコール,ジプロピレングリコール,1,3−ブタンジオール,1,4−ブタンジオール,4,4’−ジヒドロキシフェニルプロパン,4,4’−ジヒドロキシフェニルメタン,グリセリン,ペンタエリスリトール,(ポリ)エチレングリコール,(ポリ)プロピレングリコール,(ポリ)テトラメチレングリコール,(ポリ)ブチレングリコール,3−メチル−1,5−ペンタンジオール,ヘキサンジオール等の多価アルコール類等を挙げることができる。
【0060】
このように調製される本発明による機能材有機樹脂組成物においては、既に説明しているように、機能材有機樹脂組成物中に主成分として含有する高屈折率有機ポリマー球状粒子が、超微細粒子でありながら全く凝集することなく一次分散状態で含有している。その明確な理由説明は不明であるが、外観形状が球状の定形粒子であって、しかも、単分散性に優れる等の粒子特性が反映されて、特に分散化対策を施すことなく一次分散状態で含有されるものである。また、本発明において、分散性や、透明性や、特に高屈折率機能を阻害させない限りにおいて、本発明によるこの有機樹脂組成物中に、必要に応じて、従来から公知である適材な分散剤を添加させることができる。
【0061】
<その他の配合材>
また、本発明によるこの有機樹脂組成物中に、同様にして分散性や、透明性や、高屈折率機能を阻害させない限りにおいて、その他の配合材として、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、増粘剤、硬化剤、消泡剤、帯電防止剤、抗菌・防カビ剤等を必要に応じて適宜組み合わせて配合することができる。更には、インクジェット等の着色インクの発色成分としては、カーボンブラック等の黒色顔料、フタロシアニン系化合物等のシアン系顔料、マゼンダ系顔料、モナゾ系顔料、ジサゾ系化合物等のイエロー系顔料等を配合することができる。
【0062】
<塗工被膜形成材及びインクバインダー>
更には、必要に応じて、同様にして分散性や、透明性や、高屈折率機能を阻害させない限りにおいて、本発明においては、塗工被覆膜形成性の観点又はインクバインダー成分の観点から、例えば、ポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレン系樹脂、塩素化ポリオレフィン、イソシアネート系化合物等や、また、必要に応じて、電離放射線硬化型樹脂液として、重合性不飽和結合又はエポキシ基を有するプレポリマー、オリゴマー及びその他の単量体を適宜配合させることができる。これらのプレポリマー、オリゴマーとして、不飽和ポリエステル類、エポキシ樹脂、(メタ)アクリレート類が挙げられ、他の単量体としては、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル類、不飽和カルボン酸アミド、エチレングリコールアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート等の多官能性化合物、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコール等のポリチオール化合物等が挙げられる。特に、電離放射線硬化型樹脂液をUV硬化させる場合には、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類の光重合開始剤や、トリエチルアミン、n−ブチルアミン等の光増感剤を配合することができる。
【0063】
<高屈折率賦与材としての用途>
以上から、本発明によれば、高屈折率機能を賦与できるエマルジョン型の機能材有機樹脂組成物を用いることで、光反射膜、光拡散膜、光反射防止膜、防眩性反射防止膜等の光学特性賦与として、
(1)高屈折率被覆膜;透透明基材上に、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート法、インクジェット塗工法等の何れかの方法で塗工させて、この基材上に、20nm〜2μm膜厚の高屈折率透明被覆膜を設けることができる。そこで、本発明における透明基材として、ガラス、LCD又はPDP等の画像表示面、メガネ及びカメラレンズ、光ディスクの光ピックアップ用対物レンズ、レーザープリンター用レンズ、プロジェクションテレビ投影用レンズ、光ディスクの光ピックアップ用対物レンズ、CD又はDVD等の光メディア媒体用基板等を挙げることができる。なお、これらの透明基材として従来から広く用いられている部材[屈折率/光透過率%]としては、例えば、PMMA[1.49/92〜93]、CR−39[1.5/89〜91]、AS樹脂[1.57/90]、PC[1.59/87〜90]、MS樹脂[1.56/90]、PS[1.59/88〜90]、TPX[1.466/>90]、環境ポリオレフィン[1.466/>90]等を挙げることができる。
(2)トランスファー型反射防止フィルム;本発明による機能材有機樹脂組成物を塗工被覆させて形成される透明高屈率被覆膜を、「透明低屈折率被覆薄膜/透明高屈折率被覆薄膜/透明有機フィルム/透明粘着剤層/トランスファー基材フィルム」として構成されるトランスファー型反射防止フィルムである。
(3)着色塗料及び着色インク;本発明による(n)≧1.65の高屈折率で、粒子サイズが数十nm〜数百nm程度の単分散球状定形粒子からなる水性系又は油性系エマルジョン型有機樹脂組成物を配合させることで、着色インク組成物に光沢剤、色調高揚剤として作用してカラー視感性を向上させ、同時に粒子特性が活かされて粘稠剤及び流動化剤として作用する着色インク組成物である。
(4)乳化化粧料;本発明による(n)≧1.65の高屈折率で、粒子サイズが数十nm〜数百nm程度の単分散球状定形粒子からなる水性系又は油性系エマルジョン型有機樹脂組成物を配合させることで、ペースト状の乳化タイプの化粧料に光沢剤、色調高揚剤として作用してカラー視感性を向上させ、同時に粒子特性が活かされて粘稠剤及び流動化剤として作用させることができる。
【0064】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これらの実施例にいささかも限定されるものではない。
【実施例】
【0065】
(参考例)
<金属シラン縮合体の調製>
温度計、撹拌装置を備えた容量300mlの四つ口丸底フラスコに、テトラ−n−プロポキシチタンニウムの5質量部、シランカップリング剤のγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの5質量部、イソプロパノール10質量部、メチルメタクリレート(MMA)30質量部を添加して30分間攪拌混合した。次いで、水道水1質量部、MMAの65質量部を添加して、脱アルコール型の反応性ラジカルを有するチタン・シラン縮合体を含有する「含水MMA混合溶液−1」を調製した。
次いで、金属元素としてジルコンの金属シラン縮合体を含む水相モノマー分散体を調製した。テトラ−n−プロポキシチタニウムの代わりにテトラ−n−プロポキシジルコニウムに替えた以外は同様にして、脱アルコール型の反応性ラジカルを有するジルコン・シラン縮合体を含有する「含水MMA混合溶液−2」を調製した。
次いで、金属元素として錫の水性水酸化物ゾルを用いて、金属元素として錫の金属シラン縮合体を含む水相モノマー分散体を調製した。以下同様にして、脱アルコール型の反応性ラジカルを含有する錫・シラン縮合体を含有する「含水MMA混合溶液−3」を調製した。
【0066】
(実施例1)
温度計、窒素導入管、撹拌装置を備えた容量1000mlの四つ口丸底フラスコに、乳化剤であるドデシルスルホン酸ナトリウムの1.5質量部、水道水240質量部を添加し、80℃に昇温させた。次いで、過硫酸カリウムの0.55質量部を添加した。次いで、76〜78℃、攪拌下に、「含水MMA混合溶液−1」の100質量部と乳化剤ドデシルスルホン酸ナトリウムの1.5質量部との混合溶液をゆっくり徐注させた後、この温度下で40分間反応させ、次いで90℃で1時間反応させて、本発明に用いるチタン・シラン縮合体を化学的に取り込んだPMMA粒子が分散する重合体を調製した。得られたチトタン金属元素を化学的に取り込んだ「PMMA微細粒子−T1」の平均粒子径は、80nmで、単分散性球状粒子であった。また、その可視光透過率が98%で、且つその屈折率は1.83であった。
【0067】
(実施例2)
温度計、窒素導入管、撹拌装置を備えた容量1000mlの四つ口丸底フラスコに、乳化剤であるポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウムの10質量部、含水MMA混合溶液−1の10質量部とMMA90質量部、水道水400質量部を添加し、70℃に昇温させた。次いで、過硫酸カリウムの0.55質量部を添加した。次いで、70〜73℃、攪拌下、この温度下で2時間反応させ、次いで90℃で3時間反応させて、本発明によるチタン・シラン縮合体を内包したPMMA微細粒子を分散する重合体を調製した。得られた金属元素を内包するPMMA微細粒子の平均粒子径は、40nmで、真球状の粒子であった。また、その可視光の透過率が98%以上の透明粒子で、且つその屈折率は1.67であった。
【0068】
(実施例3)
温度計、窒素導入管、撹拌装置を備えた容量1000mlの四つ口丸底フラスコに、含水MMA混合溶液−1の100質量部を添加し、アゾ系開始剤のAIBNの1.5質量部を溶解させ、更に乳化剤であるポリビニールアルコールの5%水溶液60質量部、重合禁止剤の亜硝酸ナトリウム0.1質量部、水300質量部を添加し、強攪拌下で10分間混合した。次いで、75℃×2時間反応させ、更に90℃×3時間反応させて、発明に用いるチタン・シラン縮合体を化学的に取り込んだPMMA微細粒子が分散する重合体を調製した。得られたチタン金属元素を化学的に取り込んだ「PMMA微細粒子−T2」の平均粒子径は、1μmで、単分散性球状粒子であった。また、可視光透過率が70%の半透明の粒子で、且つその屈折率は1.83であった。
【0069】
(実施例4)
温度計、窒素導入管、撹拌装置を備えた容量1000mlの四つ口丸底フラスコに、乳化剤であるドデシルスルホン酸ナトリウム1.5質量部、水道水240質量部を添加し、80℃に昇温させた。次いで、過硫酸カリウムの0.55質量部を添加した。次いで、76〜78℃、攪拌下に、「含水MMA混合溶液−2」の100質量部と乳化剤ドデシルスルホン酸ナトリウム1.5質量部との混合溶液をゆっくり徐注させた後、この温度下で40分間反応させ、次いで90℃×1時間反応させて、本発明に用いるジルコニウム・シラン縮合体を化学的に取り込んだPMMA微細粒子を分散する重合体を調製した。得られたジルコニウム金属元素を化学的に取り込んだ「PMMA微細粒子−Z1」の平均粒子径は、80nmで、真球状の粒子であった。また、その可視光の透過率が96%の透明粒子で、且つその屈折率は1.78であった。
【0070】
(実施例5)
温度計、窒素導入管、撹拌装置を備えた容量1000mlの四つ口丸底フラスコに、乳化剤であるポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウムの0.1質量部、含水MMA混合溶液−1の12質量部とMMA88質量部、水道水700質量部を添加し、70℃に昇温させた。次いで、過硫酸カリウムの0.55質量部を添加した。次いで、70〜73℃、攪拌下、この温度下で2時間反応させ、次いで90℃で3時間反応させて、本発明によるチタン・シラン縮合体を内包したPMMA微細粒子を分散する重合体を調製した。得られた金属元素を内包するPMMA微細粒子の平均粒子径は、300nmで、真球状の粒子であった。また、その可視光の透過率が98%以上の透明粒子で、且つその屈折率は1.68であった。
【0071】
(応用例1)
市販の口紅用に用いられている赤色有機顔料100質量部当たり実施例1で調製した「PMMA微細粒子−T1」が分散溶媒ジプロピレングリコール中に50容量部で含有する本発明による高屈折率賦与材のエマルジョン型有機樹脂組成物の50重量部中に練り込んでペースト状の赤色化粧料−1を試作した。次いで、分散溶媒ジプロピレングリコール50質量部に上記赤色有機顔料100質量部を練り込んでペースト状にした試料を比較対照にして、20代の女性の手の甲にそれぞれを1cm×2cmサイズに指先で2回重ね塗りをした。次いで、女性3人と男性2人のパネラーによって目視観察した結果、何れのパネラーも赤色化粧料−1については、著しく艶やかで深み感のある赤色カラー視感性を呈していると評価された。
【0072】
(応用例2)
市販のインクジェット用に用いられている黒色水性インクとマゼンダ色水性インクのそれぞれに、実施例1で調製した「PMMA微細粒子−T1」が分散溶媒酢酸エチル中に50容量部で含有する本発明による高屈折率賦与材のエマルジョン型有機樹脂組成物の15容量%になるように配合した。次いで、次いで、これらのインク組成物に、水溶性セルロースエーテルの0.4容量部を配合してそれぞれを用いて、白色紙上に、2cm×2cm角にインクジェット塗工した。何れのインクも吐出塗工性に支障なく、しかも、赤及び黒色の塗工面は、鮮やかな光沢感を呈していた。
【0073】
(応用例3)
実施例4で調製した高屈折率有機ポリマー球状粒子(平均粒子径80nm、屈折率(n)=1.78)及び実施例2で調製した高屈折率有機ポリマー球状粒子(平均粒子径40nm、屈折率(n)=1.67)のそれぞれを、分散溶媒のMEK中に、容量%で45%になるように分散させて、本発明による高屈折率賦与材のエマルジョン型有機樹脂組成物を調製した。次いで、これらのエマルジョン型有機樹脂組成物のそれぞれ100質量部当たり、硬化被膜形成剤[綜研化学(株)製のアクリル樹脂ポリマー溶液EF−32]の10質量部を配合させてコーティング用の高屈折率賦与材樹脂組成物−1及び高屈折率賦与材樹脂組成物−2を調製した。
次いで、この高屈折率賦与材樹脂組成物−1及び高屈折率賦与材樹脂組成物−2を用いてディップ法で、屈折率(n)=1.59のPC板(2mm×30mm×50mm)にコーティングを行い120℃×2時間で、下記試験板NO1〜NO3の高屈折率硬化被膜を形成させた。なお、これらの高屈折率硬化被膜の膜厚は、90〜100nmであった。
試験板NO1;屈折率1.64被膜/PC板
試験板NO2;屈折率1.75被膜/PC板
試験板NO3;屈折率1.64被膜/屈折率1.75被膜/PC板
【0074】
(応用例4)
実施例4で調製した高屈折率有機ポリマー球状粒子(平均粒子径80nm、屈折率(n)=1.78)及び実施例5で調製した高屈折率有機ポリマー球状粒子(平均粒子径300nm、屈折率(n)=1.67)のそれぞれを、分散溶媒のMEK中に、容量%で45%になるように分散させて、本発明による高屈折率賦与材のエマルジョン型有機樹脂組成物−3及びエマルジョン型有機樹脂組成物−4を調製した。次いで、エマルジョン型有機樹脂組成物−4の100質量部当たり、エマルジョン型有機樹脂組成物−3の30質量部を混合させて、平均粒子径80nmと平均粒子径300nmとの高屈折率有機ポリマー球状粒子が混合するエマルジョン型有機樹脂組成物−5を調製した。次いで、(応用例3)と同様にして、硬化被膜形成剤を配合させて、コーティング用の高屈折率賦与材樹脂組成物−3を調製した。
次いで、透明ガラス板(2mm×100mm×100mm)上に高屈折率賦与材樹脂組成物−3をスピンコートさせて略700nm厚の塗工膜を形成させた後、120℃×2時間で加熱処理を行って、透明ガラス板上に略650nm厚の光拡散フィルムを貼合させた。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上から、本発明による高屈折率賦与材としての機能材有機樹脂組成物の特徴は、その機能材主成分である有機ポリマー粒子が、粒子サイズが数十nm〜数百nmの超微細な粒子で、その粒子形状が球状定形粒子で、しかも、単分散性である等の粒子特性が活かされて、2次凝集することなく一次分散状態で含有している高屈折率賦与材の水性系又は油性系エマルジョン型有機樹脂組成物である。
【0076】
このような特徴を有する水性系又は油性系エマルジョン型有機樹脂組成物を用いることで、従来のドライ薄膜化法に比べて著しく簡便で、低廉であるウエット薄膜化法で、ガラス、LCD又はPDP等の画像表示面、各種のレンズ、CD又はDVD等の光メディア媒体用基板等の透明基材上に、光反射膜、光拡散膜、光反射防止膜、防眩性反射防止膜等の光学特性対策を施すことができる。
【0077】
また、このような特徴を有する水性系又は油性系エマルジョン型有機樹脂組成物を用いることで、本発明による(n)≧1.65の高屈折率で、粒子サイズが数十nm〜数百nm程度の単分散球状定形粒子からなる水性系又は油性系エマルジョン型有機樹脂組成物を配合させることで、光沢剤、色調高揚剤として作用してカラー視感性を向上させ、同時に粒子特性が活かされて粘稠剤及び流動化剤として作用効果を発揮する着色塗料、着色インク及び乳化化粧料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明に用いる高屈折率有機ポリマー球状超微細粒子の粒子形状が単分散粒子であることを示すSEM写真像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
元素周期律表に分類する原子価2以上の無機元素が脱水型又は脱アルコール型縮合体を介して化学的に結合している有機ポリマー球状粒子を主成分とする高屈折率を賦与できるエマルジョン型有機樹脂組成物において、 前記無機元素が、Zn,Bi,Al,In,Sb,Ga,Snの金属元素群及びLa,Ce,Ti,Zr,Ta,Yの遷移金属元素群から選ばれる少なくとも1種で、
前記無機元素を化学的に取り込んでなる有機−無機ハイブリット構造体である前記有機ポリマー球状粒子が、光学屈折率(n)=1.65以上で、透明性又は半透明性の単分散性球状粒子で、且つ水性系又は油性系の分散溶媒中に一次分散状態で含有していることを特徴とする高屈折率賦与材のエマルジョン型有機樹脂組成物。
【請求項2】
前記有機ポリマー単分散性球状粒子100質量部当り、前記無機元素が0.1〜30質量部数の範囲で含有していることを特徴とする請求項1に記載の高屈折率賦与材のエマルジョン型有機樹脂組成物。
【請求項3】
前記有機ポリマー単分散性球状粒子の有機ポリマー質が、(メタ)アクリル系、スチレン系、アクリル−スチレン系、アクリル−ジエン系、スチレン−ジエン系、アクリル−イミド系、スチレン−イミド系の何れかであることを特徴とする請求項1又は2に記載の高屈折率賦与材のエマルジョン型有機樹脂組成物。
【請求項4】
前記有機ポリマー単分散性球状粒子が、体積基準で表す平均粒子径が20nm以上で、400nmを超えない超微細粒子であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の高屈折率賦与材のエマルジョン型有機樹脂組成物。
【請求項5】
前記有機ポリマー単分散性球状粒子が、体積基準で表す平均粒子径が400nm以上で、800nmを超えない超微細粒子であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の高屈折率賦与材のエマルジョン型有機樹脂組成物。
【請求項6】
前記有機ポリマー単分散性球状粒子が、体積基準で表す平均粒子径が800nm以上で、1μmを超えない超微細粒子であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の高屈折率賦与材のエマルジョン型有機樹脂組成物。
【請求項7】
体積基準で表して、水性系又は油性系の分散溶媒100容量部当たり、前記有機ポリマー単分散性球状粒子が、6〜50容量部の範囲にあることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の高屈折率賦与材のエマルジョン型有機樹脂組成物。
【請求項8】
請求項7に記載する高屈折率を賦与できるエマルジョン型有機樹脂組成物を用いて、透明基材上に、膜厚20nm〜2μmの薄膜として設けることを特徴とする透明高屈率被覆膜。
【請求項9】
前記透明基材が、メガネ及びカメラレンズ、光ピックアップ用対物レンズ、レーザープリンター用レンズ、プロジェクションテレビ投影用レンズ、偏光板及び光メディア媒体基板群から選ばれる何れかであることを特徴とする請求項8に記載の透明高屈率被覆膜。
【請求項10】
請求項8に記載する透明高屈率被覆膜が、透明低屈折率被覆薄膜/前記透明高屈折率被覆薄膜/透明有機フィルム/透明粘着剤層/トランスファー基材フィルムの順で構成されていることを特徴とするトランスファー型反射防止フィルム。
【請求項11】
請求項7に記載する水性系又は油性系の高屈折率賦与材として用いられるエマルジョン型有機樹脂組成物を、光沢剤及び色調高揚剤として、同時に粘稠剤及び流動化剤として配合されていることを特徴とする着色インク組成物。
【請求項12】
請求項7に記載する水性系又は油性系の高屈折率賦与材として用いられるエマルジョン型有機樹脂組成物を、光沢剤及び色調高揚剤として、同時に粘稠剤及び流動化剤として配合されているペースト状又はクリーム状であることを特徴とする乳化化粧料。

【図1】
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【公開番号】特開2006−299096(P2006−299096A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−123005(P2005−123005)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【出願人】(000202350)綜研化学株式会社 (135)
【Fターム(参考)】