説明

高嵩密度洗剤組成物の製造方法

【課題】製造時又は使用時の環境負荷を低減することができる、高嵩密度洗剤組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】工程(A):陰イオン界面活性剤の酸前駆体と該酸前駆体を中和するのに必要な量以上の水溶性アルカリ無機物質とを、混合して該酸前駆体を中和する工程、及び工程(B):工程(A)で得られた中和混合物に、平均粒径125〜300μmの水溶性無機物質を中和混合物100質量部に対して100〜300質量部を添加して混合する工程、を含んでなる、高嵩密度洗剤組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境負荷を低減する高嵩密度洗剤組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化や水不足などの環境問題が深刻化しているため、環境に配慮した製品及び製造方法が求められている。粒状洗剤組成物においても同様のことが求められるが、粒状洗剤組成物を従来から知られている噴霧乾燥法で製造した場合には、多量のエネルギーを消費し、かつ多量の二酸化炭素を排出する。
【0003】
噴霧乾燥法は多大なエネルギーを消費する方法であり、主基剤である界面活性剤、無機粉体を水に溶解し、それを乾燥する方法である。そのため、多大な熱量を発生し、かつ多量の二酸化炭素を排出してしまう。併せて、噴霧乾燥で製造された粒状洗剤は低嵩密度であるため、包装容器が大きくなってしまう点もある。噴霧乾燥後に造粒機を用いて、活性剤などを担持させることで嵩密度を増加することが可能であるが、造粒機を増設してしまうと総エネルギー量が増加してしまう。そのため、製造エネルギーを低減した高嵩密度粒状洗剤組成物の製造方法が注目されている。
【0004】
特許文献1には、洗浄成分であるスルホン酸と炭酸ナトリウムと水とを強力な剪断装置で混合し、得られた固体物質を40℃以下に冷却してから、微粉砕し、得られた微粉を粒状化する方法が開示されている。この方法では中和反応生成物が団子状になり、中和反応を生起させるのに必要な極めて大きいエネルギーを供給できるニーダーのような混練装置が必要になってくる。また、特許文献2には高速ミキサー/造粒機を用いて、55℃以上の温度で乾式中和後、液体バインダーを添加することにより、粒状化する洗剤組成物の製造方法が開示されている。しかしながら、これらの手法ではアルカリ金属アルミノケイ酸塩の存在下で陰イオン界面活性剤の酸前駆体を中和するために、アルカリ金属アルミノケイ酸塩が劣化してにおいを発生させてしまう。
【0005】
特許文献3や特許文献4にはアルカリ金属アルミノケイ酸塩の不存在下で水溶性無機塩を陰イオン界面活性剤の酸前駆体で乾式中和する方法が開示されている。しかしながら、この方法では水に不溶性である多量のアルカリ金属アルミノケイ酸塩を配合し、中和混合物の凝集を抑制することが必要であるが、結果としてすすぎ時の濁りが改善されにくいため、すすぎ性を悪くしてしまうことを見出した。また、水不溶成分であるため溶け残りも懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60−72999号公報
【特許文献2】特開平4−363398号公報
【特許文献3】特開2001−152196号公報
【特許文献4】特開2001−131596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、製造時又は使用時の環境負荷を低減することができる、高嵩密度洗剤組成物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明の要旨は、
工程(A):陰イオン界面活性剤の酸前駆体と該酸前駆体を中和するのに必要な量以上の水溶性アルカリ無機物質とを、混合して該酸前駆体を中和する工程、及び
工程(B):工程(A)で得られた中和混合物に、平均粒径125〜300μmの水溶性無機物質を中和混合物100質量部に対して100〜300質量部を添加して混合する工程、
を含んでなる、高嵩密度洗剤組成物の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製法により、高嵩密度洗剤組成物の製造時又は使用時の環境負荷を低減することができるという効果が奏される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.工程(A)
工程(A)において用いられる陰イオン界面活性剤の酸前駆体とは、陰イオン界面活性剤の酸形態であって室温(25℃)ないし加熱により液状ないしペースト状のものをいい、中和反応により塩を形成するものである。陰イオン界面活性剤、好ましくは非石鹸系陰イオン界面活性剤の酸前駆体としては、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(LAS)、α−オレフィンスルホン酸(AOS)、アルキル硫酸(AS)、内部オレフィンスルホン酸、脂肪酸エステルスルホン酸、アルキルエーテル硫酸、ジアルキルスルホコハク酸等が挙げられる。酸前駆体は二成分以上を組み合わせて用いても良い。
【0011】
陰イオン界面活性剤の酸前駆体の量は所望の洗剤組成物の組成より適宜設定し得るが、中和反応により生成する陰イオン界面活性剤として、最終の高嵩密度洗剤組成物の5〜55質量%が好ましく、5〜45質量%がより好ましく、10〜35質量%がさらに好ましく、12〜30質量%がさらに好ましく、15〜25質量%が特に好ましい。
【0012】
工程(A)において用いられる水溶性アルカリ無機物質は、陰イオン界面活性剤の酸前駆体を中和可能なアルカリ性を示す無機物質のことである。このような水溶性アルカリ無機物質としては、特に限定されるものではないが、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩、ケイ酸ナトリウム等のケイ酸塩が例示される。水溶性アルカリ無機物質として、より好ましいものは炭酸ナトリウム又は炭酸カリウム、特に好ましくは炭酸ナトリウムである。炭酸ナトリウム等の炭酸塩は最終の洗剤組成物において、洗剤ビルダー及びアルカリ剤として機能する。従って、工程(A)における水溶性アルカリ無機物質は、陰イオン界面活性剤の酸前駆体を中和するのに必要な量以上配合するものである。例えば、陰イオン界面活性剤の酸前駆体の中和当量の1〜20倍が好ましく、1.5〜15倍がより好ましい。
【0013】
水溶性アルカリ無機物質は粒子状が好ましく、その平均粒径は収率向上及び保存安定性の観点から1〜100μm以上が好ましく、より好ましくは5〜50μm、最も好ましくは10〜30μmである。なお、粒子状の水溶性アルカリ無機物質の平均粒径は体積基準で算出されるものであり、レーザー回折式粒度分布測定装置:LA−920(堀場製作所(株)製)を用いて測定される値である。
【0014】
工程(A)において、水溶性アルカリ無機物質及び陰イオン界面活性剤の酸前駆体以外に、任意成分の一部ないし全部を添加することができる。ここで任意成分としては、例えば蛍光剤、顔料、再汚染防止剤(ポリカルボキシレートポリマー、ナトリウムカルボキシメチルセルロース等)、界面活性剤(脂肪酸又はその塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩等)、珪藻土、方解石、カオリン、ベントナイト、トリポリリン酸塩、硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0015】
工程(A)で添加される任意成分は、粒子状ないし粉体状のものを使用することが好ましい。その粒径は200μm以下が好ましい。なお、任意成分は、水溶液ないしペースト、スラリーとして添加してもよい。
【0016】
任意成分を添加する場合には、工程(A)における中和を行う前に、予め水溶性アルカリ無機物質と混合しておくことが好ましい。攪拌造粒機を用いる場合、混合時間は5分間以内が好ましい。
【0017】
工程(A)において、中和反応を促進させる為に水を加えても良い。水の添加量は、工程(A)における水溶性アルカリ無機物質(及び任意成分を含む場合はその質量も加えたもの)100質量部に対し、1〜19質量部が好ましく、4〜13質量部がより好ましい。中和反応を開始させる観点から1質量部以上が好ましく、洗剤組成物の凝集を抑える観点から19質量部以下が好ましい。なお、陰イオン界面活性剤の酸前駆体等の成分が水を含む場合、水溶液原料を用いる場合、又は水を含有する粉体原料を用いる場合は、それらの水分量を考慮して、水の添加量を決定すれば良い。
【0018】
また、中和反応を促進させる為のより好ましい態様として、上記の水の代わりにアルカリ水溶液又はアルカリスラリー溶液(以下、アルカリ溶液と略する)を用いることが好ましい。アルカリ溶液を用いることで、水の場合と比較して中和反応をより促進できるだけでなく、中和混合物の粒径を小さくすることができるので、嵩密度を高くできる。
【0019】
アルカリ溶液の添加量は、陰イオン界面活性剤の酸前駆体の中和当量の0.05〜0.5倍量が好ましく、0.1〜0.45倍量がより好ましく、0.15〜0.4倍量が特に好ましい。
【0020】
また、アルカリ溶液の種類としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等の強アルカリ水溶液が挙げられる。特に、水酸化ナトリウム水溶液がコストの観点から好ましい。
【0021】
また、工程(A)において中和を行う際、陰イオン界面活性剤の酸前駆体に硫酸等の無機酸を事前に添加することも好ましい。このような無機酸と該酸前駆体を予め混合したものを用いて、水溶性アルカリ無機物質を中和して得られる混合物粒子は、無機酸由来の中和塩が粒子内部よりも粒子表面近傍に多く存在するために、粒子の粘着性が低くなるので、粒子凝集を起こすことなく粒子を製造できる。また、粒子は多くの細孔を有することから、非イオン界面活性剤等の液体成分の含有量が高い粒子を製造できる。
【0022】
無機酸の添加量は、陰イオン界面活性剤の酸前駆体1モルに対して0.1〜1.0モルが好ましく、0.1〜0.8モルがより好ましく、0.15〜0.7モルがさらに好ましく、0.2〜0.6モルが特に好ましく、0.25〜0.5モルが最も好ましい。前記酸前駆体1モルに対して、洗剤組成物の粗粒化抑制の観点から0.1モル以上が好ましく、濃縮洗剤の配合組成の自由度確保の観点から1.0モル以下が好ましい。
【0023】
工程(A)において、陰イオン界面活性剤の酸前駆体と水溶性アルカリ無機物質を配合する順序は特に問わないが、水溶性アルカリ無機物質に対して酸前駆体を添加することが好ましい。酸前駆体の添加方法は、連続的又は複数回に分割して行っても良く、添加手段は複数回設けても良い。
【0024】
工程(A)における中和は、攪拌造粒機を用いて行うことが好ましい。攪拌造粒機は攪拌羽根と解砕/分散用チョッパー(又はこれに機能的に同等なもの)を具備するものが好ましい。
【0025】
本発明に用いられる攪拌造粒機の具体例としては、バッチ式のものとして、バーチカルグラニュレータ((株)パウレック製)、ハイスピードミキサー(深江工業(株)製)、レディゲミキサー((株)マツボー製)、プロシェアミキサー(太平洋機工(株)製)、ゲーリッケミキサー(明治機械(株)製)等が挙げられる。より好ましくはレディゲミキサー又はプロシェアミキサーであり、特に好ましくは、レディゲミキサーである。連続式のものとして、連続式レディゲミキサー(中速ミキサー:滞留時間が比較的長い)や、高速ミキサー(滞留時間が比較的短い)としてCBリサイクラー(Loedige製)、タービュライザー(ホソカワミクロン(株)製)、シュギミキサー((株)パウレック製)、フロージェットミキサー((株)粉研製)等が挙げられる。なお、本発明において、上記ミキサーを適宜組み合わせて用いても良い。例えば、水溶性アルカリ無機物質と任意成分の混合と、陰イオン界面活性剤の酸前駆体の添加による中和反応をそれぞれ異なった攪拌造粒機にて処理しても良い。
【0026】
攪拌造粒機は、内部の温度を調整するためのジャケットを具備するものや、ガス吹き込みの為のノズルを具備するものがより好ましい。このような、より好ましい攪拌造粒機の具体例としては、特開平10−296064号公報や特開平10−296065号公報に記載の混合機などが挙げられる。
【0027】
また、工程(A)においては、ガスを吹き込みつつ中和を行うことが好ましい。これは中和反応で生じた余剰の水分を蒸発させ、かつ得られる粒状物を冷却させることにより粒状物が大きな塊となるのを防止できるからである。かかるガスとしては、N2ガス、空気等が挙げられる。ガスの吹き込み量(通気量)は特に限定されないが、粒状物100質量部に対して毎分0.002質量部以上が好ましく、毎分0.02質量部以上がより好ましい。
【0028】
このような工程(A)によって得られる陰イオン界面活性剤の酸前駆体の中和物(なお、中和物中には少量の未中和の陰イオン界面活性剤の酸前駆体を含んでいても良い)と、残余の水溶性アルカリ無機物質及び任意成分を含有する混合物(以下、中和混合物とも略する)は粉末状ないし塊状である。特に、最終の洗剤組成物に対する界面活性剤の比率が20質量%を超えるような洗剤を製造する場合、小粒径の洗剤組成物を得る目的で解砕工程を設けることが好ましい。具体的には、中和混合物中の陰イオン活性剤の含有量が30質量%以上の時に解砕工程を設けることが好ましい。解砕方法は、解砕/分散用チョッパーを具備する攪拌造粒機内で工程(A)に引き続いて行ってもよく、また他の解砕機を用いて行ってもよい。解砕機の具体例としてはフィッツミル(ホソカワミクロン(株)製)、スピードミル(岡田精工(株)製)等が挙げられる。
【0029】
2.工程(B)
工程(B)は、工程(A)で得られた中和混合物に、特定の平均粒径を有する水溶性無機物質を添加して混合する工程である。
【0030】
水溶性無機物質の平均粒径は、最終の洗剤組成物の流動性及び溶解性の観点から、125〜300μm、好ましくは130〜200μmである。水溶性無機物質の例としては、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム等の硫酸塩、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム等の炭酸塩、トリポリリン酸ナトリウム等のリン酸塩、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸塩等が挙げられる。これら水溶性無機物質の中では、溶解性の観点から硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム等の硫酸塩が好ましく、硫酸ナトリウムが特に好ましい。水溶性無機物質は二成分以上を組み合わせて用いても良い。
【0031】
水溶性無機物質の量は、工程(A)で得られた中和混合物100質量部に対して100〜300質量部であり、100〜200質量部が好ましく、100〜150がより好ましい。破壊荷重の小さな粒子や溶解性に優れた粒子を製造する観点から、水溶性無機物質の量は100質量部以上が好ましく、洗剤組成物の自由度の確保の観点から、当該量は300質量部以下が好ましい。また、水溶性無機物質の添加方法としては、一括で添加しても、複数回に分けて添加しても良い。
【0032】
本発明の製造方法については、工程(B)において、液体バインダー、上記陰イオン界面活性剤以外の界面活性剤及び表面改質剤からなる群より選択される1種以上を配合することができる。
【0033】
工程(B)において、洗剤組成物の高嵩密度化、洗浄力又は金属封鎖能向上の観点から、液体バインダーを配合することが望ましい。
【0034】
液体バインダーとしては、例えば水、水溶性ポリマー(ポリエチレングリコール、アクリル酸マレイン酸コポリマー等)の水溶液、脂肪酸等の液体成分が挙げられる。液体バインダーは二成分以上を併用しても良く、この場合の例としては、(1)予め二成分以上の液体バインダーを混合した後に添加する、(2)それぞれの液体バインダーを同時に添加する、(3)それぞれの液体バインダーを交互に添加する、といった添加方法が挙げられる。いずれの方法においても、製造コスト低下の観点から、水を併用することが好ましい。液体バインダーの配合量は、中和混合物100質量部に対し、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい一方、1質量部以上が好ましい。
【0035】
工程(B)においては、溶解性、洗浄力、すすぎ性向上及び/又は高嵩密度化の観点から、その他界面活性剤を配合することが望ましい。
【0036】
その他界面活性剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。その中でも非イオン界面活性剤が好ましく、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンフェニルエーテル、ポリオキシアルキレングリコール脂肪酸エステルがより好ましい。
【0037】
特に、溶解性、洗浄力、すすぎ性向上の観点から、特に溶解性の観点から、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが好ましく、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルエーテルがより好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが更に好ましい。また、オキシアルキレン基としては、例えば、オキシエチレン基又はオキシプロピレン基がランダム付加又はブロック付加されて得られたものも用いることができる。ここで、アルキル基の炭素数は10〜20が好ましく、10〜16がより好ましく、12〜14がさらに好ましい。また、オキシアルキレン基の平均付加モル数は3〜50が好ましく、6〜40がより好ましく、14〜30が特に好ましい。特に、溶解性の観点から、該平均付加モル数は6以上がより好ましく、14以上が更に好ましく、16以上が更に好ましく、18以上が更に好ましく、20以上が更により好ましく、また、製造し易さの観点から、40以下が好ましく、30以下がより好ましい。その他界面活性剤は、適宜、二成分以上を混合して用いることができる。その他界面活性剤の配合量は、中和混合物100質量部に対し、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい一方、1質量部以上が好ましい。
【0038】
液体バインダー及びその他界面活性剤の添加方法としては、連続的または複数回に分割して行ってもよい。液体バインダー及びその他界面活性剤は水溶性無機物質の添加の前後に添加することが好ましい。
【0039】
また、工程(B)においては、表面改質剤を配合する工程(表面改質工程)を設けることが好ましい。表面改質工程は、アルカリ金属アルミノケイ酸塩等の無機粉末を用いて行うことができる。ある程度造粒が進んだ中和混合物に添加し、表面を被覆することで耐ケーキング性、流動性などの粉末物性を改善させる。無機粉末の例としては、アルカリ金属アルミノケイ酸塩以外に、結晶性ケイ酸塩、方解石、珪藻土、モンモリロナイト、タルクなどが挙げられる。無機粉末は二成分以上を併用しても良い。表面改質効率の観点から、アルカリ金属アルミノケイ酸塩(ゼオライト)が特に好ましい。
【0040】
表面改質剤の量としては、すすぎ性の観点から洗剤組成物中に15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい一方、1質量%以上が好ましい。
【0041】
工程(B)における混合装置としては、工程(A)の項目に記載の攪拌造粒機が挙げられる。工程(A)と工程(B)で用いる装置は、同一のものであってもよく、異なるものであってもよい。
【0042】
3.工程(C)
本発明におけるアフターブレンド工程(C)として、揮発性成分、熱に敏感な成分(例えば、酵素や香料等)又はさらに表面改質剤を添加する工程を設けることができる。アフターブレンド工程(C)は、回転ドラム等の混合機を用いて行うことができる。工程(C)で添加される成分の量としては、工程(A)で得られた中和混合物100質量部に対して5〜20質量部が好ましく、5〜15質量部がより好ましい。なお、アフターブレンド工程においては、洗剤組成物を特定のスクリーンで篩い分けし、次いで篩上品に対しては粉砕処理を行って粉砕品を得、この粉砕品と篩下品とを混合する工程をさらに含んでもよい。
【0043】
4.高嵩密度洗剤組成物
本発明の製造方法により、高嵩密度、好ましくは嵩密度650g/L以上の高嵩密度洗剤組成物を得ることができる。
【0044】
本発明の高嵩密度洗剤組成物は、以下の物性を示すものがより好ましい。
【0045】
<平均粒径>
JIS Z 8801に規定の篩を用いて、100gの試料を5分間振動して篩い分けを行い、平均粒径を算出する。
【0046】
具体的には、目開きが2000μm、1400μm、1000μm、710μm、500μm、355μm、250μm、180μm及び125μmである9段の篩と受け皿を用い、ロータップマシーン(HEIKOSEISAKUSHO製、タッピング:156回/分、ローリング:290回/分)に取り付け、100gの試料を5分間振動して篩い分けを行った後、受け皿、125μm、180μm、250μm、355μm、500μm、710μm、1000μm、1400μm、2000μmの順番に受け皿及び各篩下の質量頻度を積算していく。積算の質量頻度が50%以上となる最初の篩の目開きをxjμmとし、それよりも一段小さい篩の目開きをxj+1μmとする時、受け皿からxjμmの篩までの質量頻度の積算をQj%とし、受け皿からxj+1μmの篩までの質量頻度の積算をQj+1%とする場合、平均粒径xaは、下記式(1)、(2)によって算出することができる。洗剤組成物の平均粒径は500μm以下のものが好ましく、300μm以下のものがより好ましい。
【0047】
【数1】

【0048】
<嵩密度>
650g/L以上のものが好ましく、650〜1050g/Lのものがより好ましく、750〜1000g/Lのものがより好ましく、850〜950g/Lのものが更に好ましい。なお、嵩密度はJIS K 3362で規定された方法で求められる。
【0049】
<流動性>
洗剤組成物の流動性は、JIS K 3362に規定の嵩密度測定用のホッパーから、100mLの粉末状の洗剤組成物が流出するのに要する時間で示す。ここで、該時間が8秒以下のものが好ましく、7秒以下のものがより好ましい。
【0050】
<破壊荷重>
破壊荷重は、レオメータ((株)レオテック製)を用い、嵩密度/20より算出した試料質量を専用治具に充填し、1kgf/3分間で荷重を加えた後の崩壊荷重より求めることができる。従って、破壊荷重は、凝集の抑制効果の指標とすることができる。
【0051】
より詳細には、粒子の破壊荷重が大きくなると、製造設備への粒子の付着量が増加する傾向が見られる結果、強く圧縮された溶解性が低い粒子が混入しがちになる。さらに、このような粒子の混入は、洗剤組成物の保存安定性にも影響を与えるおそれがあるので、粒子の混入を防ぐために、製造設備の清掃頻度を高める必要が生じてくる。そこで、本発明においては洗剤組成物の破壊荷重は小さい方が好ましく、50gf以下がより好ましく、20gf以下がさらに好ましい。
【0052】
<溶解性>
洗剤組成物の溶解性は、下記の溶解率によって評価する。
溶解率:メッシュ網(110mmφ:200メッシュ)の質量〔a〕を精密天秤で測定する。10℃±0.5℃の硬度4°DHの水1.00L±0.03Lに、測定対象の洗剤組成物1.000g±0.010g(サンプル質量〔b〕)を投入し、1Lビーカー(内径105mm)内で円柱状攪拌子(長さ35mm、直径8mm)にて60秒間、回転数800rpmにて攪拌した後、ホルダーに固定したメッシュ網に傾斜法にて濾過する。使用したビーカー、スターラーピース、ホルダーを10℃の水でリンスし、残留物をメッシュ上に回収する。使用したメッシュ網は、濾紙上に置き、余分な水分、泡を取り除いた後、残留物が損失しないようにし、105℃で30分乾燥した後、デシケーター内で10分冷却し、精密天秤で質量〔c〕を測定する。
【0053】
溶解率V(%)は、下記式(3)により算出する。
V(%)={1−(c−a)/b}×100 (3)
【0054】
洗剤組成物の溶解性は、高ければ高いほど好ましい。具体的には、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。
【0055】
<すすぎ性>
洗剤組成物のすすぎ性は、下記の方法によって測定されるすすぎ時の吸光度によって評価される。吸光度としては0.12以下が好ましく、0.10以下がより好ましく、0.05以下がさらに好ましい。このように、吸光度が小さいほどすすぎ性が良いことを示す。
【0056】
吸光度の測定:吸光度はSHIMADZU製:UV-2500PCを用いて測定する。具体的には、ガラスセル(10×10×45mm)にすすぎ後の水溶液を入れ、660nmの吸光度を測定する。
【0057】
より具体的には、まず、測定対象となる洗剤組成物15gを20℃±0.5℃の硬度4°DHの水が3L入った洗面器に溶解させる。衣類(グンゼ:YG1614)3枚と、オレイン酸(関東化学:鹿1級)1gを塗った布(木綿金巾2003布(谷頭商店);大きさ:15cm×30cm)を洗面器に投入して15分間静置する。その後、オレイン酸を塗った布を100回揉み洗い、衣類を各30回ずつ揉み洗い、衣類をまとめて1分間押し洗いした後、衣類及び布を各7回しぼる。その衣類及び布を20℃±0.5℃の硬度4°DHの水が5L入った別の洗面器に入れ、各衣類を上下に10回濯いだあとの水溶液を「測定用すすぎ水溶液」とする。この測定用すすぎ水溶液の吸光度を測定する。吸光度は濯ぎ終了後から3分間以内に測定することが好ましい。表1における評価の指標と吸光度とは次の関係にある。
【0058】
I:0.05以下
II:0.05超、0.10以下
III:0.10超、0.12以下
IV:0.12超
ここで、Iが最も高い評価であり、IVが最も低い評価である。
【0059】
<微粉率>
洗剤組成物の微粉率は、下記の方法によって評価する。
具体的には、目開きが125μmである篩と受け皿を用い、ロータップマシーン(HEIKOSEISAKUSHO製、タッピング:156回/分、ローリング:290回/分)に取り付ける。50gの試料を5分間振動させて篩い分けを行う。篩い分け前の受け皿の質量(bグラム)と篩い分け後の受け皿の質量(Bグラム)に基づいて、下記式(4)により微粉率を算出する。
微粉率(%)=〔(〔B〕−〔b〕)/50〕×100 (4)
【0060】
洗剤組成物の微粉率は小さければ小さいほど好ましい。例えば20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、13%以下がさらに好ましい。
【実施例】
【0061】
下記の実施例において、ゼオライトとしては、ゼオライト4A(東ソー(株)製)を、非イオン界面活性剤としてはポリオキシエチレンアルキルエーテル〔アルキル基の炭素12〜14(平均12.8)の第1級飽和アルコールにエチレンオキサイドを平均6モル付加したもの〕(以下、非イオン界面活性剤Aと略す)と、ポリオキシエチレンアルキルエーテル〔アルキル基の炭素12〜14(平均12.8)の第1級飽和アルコールにエチレンオキサイドを平均21モル付加したもの〕(以下、非イオン界面活性剤Bと略す)を、脂肪酸としてはパルミチン酸を、液体バインダーとしてはポリアクリル酸ナトリウム水溶液(花王(株)製、質量平均分子量:1万)を使用した。
【0062】
実施例1
レディゲミキサーFKM−130D((株)マツボー製)を用いて、洗剤組成物を35kg単位で製造した。このミキサーは攪拌羽根、解砕/分散用チョッパーに相当する剪断機及び機内温度調整のためのジャケットを具備するものである。操作は以下のように実施した。
【0063】
[工程(A)]
<粉体混合>
炭酸ナトリウム(ライト灰:セントラル硝子(株)製、平均粒径15μm)23質量部、蛍光剤0.05質量部を、上記レディゲミキサーにより、攪拌羽根回転数55r/min(周速度1.4m/s)、剪断機回転数3600r/min(周速度29m/s)の条件で1分間混合した。
【0064】
<中和>
ミキサーを前記と同条件で作動させながら、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(LAS:分子量322)15質量部及び98%硫酸1.87質量部を2分間で加えた。この間、ミキサーのジャケットには40℃の水を通して冷却した。LASの添加中、機内温度は最高65℃に達した。LAS添加後1.5分後に脂肪酸1.0質量部を2秒で添加した後、引き続きミキサーを同条件で1.5分間作動させ、中和反応及び造粒操作を完結させた。また、LASの添加開始直後より機内の通気(300L/min)を行った。
【0065】
[工程(B)]
<水溶性無機物質の添加>
中和反応及び造粒操作が完了した時点で、ミキサーを前記と同条件で作動させながら、平均粒径4μmのゼオライト(2.78質量部)、硫酸ナトリウム(無水中性芒硝:平均粒径130μm)が44質量部になるように加え、2分間混合した。ここで、硫酸ナトリウムの添加量は、工程(A)で得られた中和混合物100質量部に対して約110質量部である。
【0066】
<液体バインダーや表面改質剤の添加>
攪拌羽根は前記と同条件、剪断機回転数600r/min(周速度4.1m/s)で作動させながら、非イオン界面活性剤B(2質量部)をミキサーに加え1分間混合し、引き続き、40質量%ポリアクリル酸ナトリウム(有効分0.6質量部)水溶液を加え2分間混合し、続いて表面改質剤として平均粒径4μmのゼオライト(2.78質量部)を加え、さらに1分間ミキサーを作動させることにより表面改質処理を行った。得られた洗剤組成物は、平均粒径268μm、嵩密度886g/L、破壊荷重0gfの粒子であった。
【0067】
[工程(C)]
<アフターブレンド>
洗剤組成物を1180μmスクリーンで篩い分けし、篩上品はフィッツミル粉砕機(DKA-6:ホソカワミクロン製)で、ゼオライト(6.44質量部)と混合させた後、粉砕処理を行った。篩下品と粉砕品を混合して得られた高嵩密度洗剤組成物は、平均粒径242μm、嵩密度876g/Lの粒子であった。また、流動性は7.9秒、溶解性は88%、すすぎ性はII、微粉率は13.5%であり、共に良好な評価結果であった。
【0068】
実施例2
レディゲミキサーFKM−130D((株)マツボー製)を用いて、洗剤組成物を35kg単位で製造した。このレディゲミキサーの構成は、実質的に実施例1と同じものであった。操作は以下のように実施した。
【0069】
[工程(A)]
<粉体混合>
炭酸ナトリウム(実施例1と同じライト灰)23質量部、蛍光剤0.05質量部を、上記レディゲミキサーにより、実施例1と同じ条件で1分間混合した。
【0070】
<中和>
ミキサーを前記と同条件で作動させながら、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(LAS:分子量322)15質量部及び98%硫酸1.87質量部を2分間で加えた。この間、ミキサーのジャケットには40℃の水を通して冷却した。LASの添加中、機内温度は最高65℃に達した。LAS添加後1.5分後に脂肪酸1質量部を2秒で添加した後、引き続きミキサーを同条件で1.5分間作動させ、中和反応及び造粒操作を完結させた。また、LASの添加開始直後より機内の通気(300L/min)を行った。
【0071】
[工程(B)]
<水溶性無機物質の添加>
中和反応及び造粒操作が完了した時点で、ミキサーを前記と同条件で作動させながら、平均粒径4μmのゼオライト(1.58質量部)、硫酸ナトリウム(無水中性芒硝:平均粒径130μm)50質量部になるように加え、2分間混合した。ここで、硫酸ナトリウムの添加量は、工程(A)で得られた中和混合物100質量部に対して約125質量部である。
【0072】
<液体バインダーや表面改質剤の添加>
実施例1と同条件で作動させながら、非イオン界面活性剤B(2質量部)をミキサーに加え1分間混合し、引き続き、40質量%ポリアクリル酸ナトリウム(有効分0.6質量部)水溶液を加え2分間混合し、続いて表面改質剤として平均粒径4μmのゼオライト(0.8質量部)を加え、さらに1分間ミキサーを作動させることにより表面改質処理を行った。得られた洗剤組成物は、平均粒径267μm、嵩密度913g/L、破壊荷重0gfの粒子であった。
【0073】
[工程(C)]
<アフターブレンド>
洗剤組成物を実施例1と同様にして、ゼオライト(3.62質量部)と混合させた後、粉砕処理を行った。篩下品と粉砕品を混合して得られた高嵩密度洗剤組成物は、平均粒径252μm、嵩密度923g/Lの粒子であった。また、流動性は7.5秒、溶解性は90.2%、すすぎ性はI、微粉率は10.9%であり、共に良好な評価結果であった。
【0074】
実施例3
レディゲミキサーFKM−130D((株)マツボー製)を用いて、洗剤組成物を35kg単位で製造した。このレディゲミキサーの構成は、実質的に実施例1と同じものであった。操作は以下のように実施した。
【0075】
[工程(A)]
<粉体混合>
炭酸ナトリウム(実施例1と同じライト灰)23.00質量部、蛍光剤0.05質量部を、上記レディゲミキサーにより、実施例1と同じ条件で1分間混合した。
【0076】
<中和>
ミキサーを前記と同条件で作動させながら、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(LAS:分子量322)15質量部及び98%硫酸1.87質量部を2分間で加えた。この間、ミキサーのジャケットには40℃の水を通して冷却した。LASの添加中、機内温度は最高65℃に達した。LAS添加後1.5分後に脂肪酸1質量部を2秒で添加した後、引き続きミキサーを同条件で1.5分間作動させ、中和反応及び造粒操作を完結させた。また、LASの添加開始直後より機内の通気(300L/min)を行った。
【0077】
[工程(B)]
<水溶性無機物質の添加>
中和反応及び造粒操作が完了した時点で、ミキサーを前記と同条件で作動させながら、平均粒径4μmのゼオライト(1.58質量部)、硫酸ナトリウム(無水中性芒硝:平均粒径130μm)50質量部になるように加え、2分間混合した。ここで、硫酸ナトリウムの添加量は、工程(A)で得られた中和混合物100質量部に対して約125質量部である。
【0078】
<液体バインダーと表面改質剤の添加>
実施例1と同条件で作動させながら、非イオン界面活性剤A(2質量部)をミキサーに加え1分間混合し、引き続き、40質量%ポリアクリル酸ナトリウム(有効分0.6質量部)水溶液を加え2分間混合し、続いて表面改質剤として平均粒径4μmのゼオライト(0.8質量部)を加え、さらに1分間ミキサーを作動させることにより表面改質処理を行った。得られた洗剤組成物は、平均粒径273μm、嵩密度870g/L、破壊荷重0gfの粒子であった。
【0079】
[工程(C)]
<アフターブレンド>
洗剤組成物を実施例1と同様にして、ゼオライト(3.62質量部)と混合させた後、粉砕処理を行った。篩下品と粉砕品を混合して得られた高嵩密度洗剤組成物は、平均粒径255μm、嵩密度931g/Lの粒子であった。また、流動性は7.6秒、溶解性は80.1%、すすぎ性はI、微粉率は9.8%であった。溶解性に関しては、高EO付加ノニオン(非イオン界面活性剤B)を用いた実施例2と比べると若干劣る傾向が見られるものの、共に良好な評価結果であった。
【0080】
比較例1
レディゲミキサーFKM−130D((株)マツボー製)を用いて、洗剤組成物を35kg単位で製造した。このミキサーは攪拌羽根、解砕/分散用チョッパーに相当する剪断機及び機内温度調整のためのジャケットを具備するものである。操作は以下のように実施した。
【0081】
[工程(A)]
<粉体混合>
炭酸ナトリウム(ライト灰:セントラル硝子(株)製、平均粒径15μm)23質量部、硫酸ナトリウム(無水中性芒硝:平均粒径130μm)50質量部、蛍光剤0.05質量部を、上記レディゲミキサーにより、攪拌羽根回転数55r/min(周速度1.4m/s)、剪断機回転数3600r/min(周速度29m/s)の条件で1分間混合した。
【0082】
<中和>
ミキサーを前記と同条件で作動させながら、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(LAS:分子量322)15質量部及び98%硫酸1.87質量部を2分間で加えた。この間、ミキサーのジャケットには40℃の水を通して冷却した。LASの添加中、機内温度は最高65℃に達した。LAS添加後1.5分後に脂肪酸1質量部を2秒で添加した後、引き続きミキサーを同条件で1.5分間作動させ、中和反応及び造粒操作を完結させた。また、LASの添加開始直後より機内の通気(300L/min)を行った。
【0083】
[工程(B)]
<解砕助剤の添加>
中和反応及び造粒操作が完了した時点で、ミキサーを前記と同条件で作動させながら、平均粒径4μmのゼオライト(1.58質量部)を加え、2分間混合した。ここで、水溶性無機物質の添加量は、工程(A)で得られた中和混合物100質量部に対して0質量部である。
【0084】
<液体バインダーと表面改質剤の添加>
攪拌羽根は前記と同条件、剪断機回転数600r/min(周速度4.1m/s)で作動させながら、非イオン界面活性剤B(2質量部)をミキサーに加え1分間混合し、引き続き、40質量%ポリアクリル酸ナトリウム(有効分0.6質量部)水溶液を加え2分間混合し、続いて表面改質剤として平均粒径4μmのゼオライト(0.8質量部)を加え、さらに1分間ミキサーを作動させることにより表面改質処理を行った。得られた洗剤組成物は、平均粒径402μm、嵩密度868g/L、破壊荷重100gfの粒子であった。ここで、破壊荷重に関しては、実施例1〜3と比べると非常に劣るものであった。
【0085】
[工程(C)]
<アフターブレンド>
洗剤組成物を1180μmスクリーンで篩い分けし、篩上品はフィッツミル粉砕機(DKA-6:ホソカワミクロン製)で、ゼオライト(3.62質量部)と混合させた後、粉砕処理を行った。篩下品と粉砕品を混合して得られた高嵩密度洗剤組成物は、平均粒径339μm、嵩密度935g/Lの粒子であった。また、流動性は5.8秒、溶解性は83.2%、すすぎ性はI、微粉率は3.8%であった。ここで、溶解性に関しては、同じ最終組成を有する実施例2と比べると若干劣るものであった。
【0086】
比較例2
レディゲミキサーFKM−130D((株)マツボー製)を用いて、洗剤組成物を35kg単位で製造した。このレディゲミキサーの構成は、実質的に実施例1と同じものであった。操作は以下のように実施した。
【0087】
[工程(A)]
<粉体混合>
炭酸ナトリウム(実施例1と同じライト灰)23質量部、硫酸ナトリウム(無水中性芒硝:平均粒径130μm)25質量部、蛍光剤0.05質量部を、上記レディゲミキサーにより、実施例1と同じ条件で1分間混合した。
【0088】
<中和>
ミキサーを前記と同条件で作動させながら、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(LAS:分子量322)15質量部及び98%硫酸1.87質量部を2分間で加えた。この間、ミキサーのジャケットには40℃の水を通して冷却した。LASの添加中、機内温度は最高65℃に達した。LAS添加後1.5分後に脂肪酸1質量部を2秒で添加した後、引き続きミキサーを同条件で1.5分間作動させ、中和反応及び造粒操作を完結させた。また、LASの添加開始直後より機内の通気(300L/min)を行った。
【0089】
[工程(B)]
<水溶性無機物質の添加>
中和反応及び造粒操作が完了した時点で、ミキサーを前記と同条件で作動させながら、平均粒径4μmのゼオライト(1.58質量部)、硫酸ナトリウム(平均粒径130μm)25質量部を加え、2分間混合した。ここで、硫酸ナトリウムの添加量は、工程(A)で得られた中和混合物100質量部に対して約38質量部である。
【0090】
<液体バインダーと表面改質剤の添加>
実施例1と同条件で作動させながら、非イオン界面活性剤B(2質量部)をミキサーに加え1分間混合し、引き続き、40質量%ポリアクリル酸ナトリウム(有効分0.6質量部)水溶液を加え2分間混合し、続いて表面改質剤として平均粒径4μmのゼオライト(0.8質量部)を加え、さらに1分間ミキサーを作動させることにより表面改質処理を行った。得られた洗剤組成物は、平均粒径356μm、嵩密度918g/L、破壊荷重63gfの粒子であった。ここで、破壊荷重に関しては、実施例1〜3と比べると非常に劣るものであった。
【0091】
[工程(C)]
<アフターブレンド>
洗剤組成物を実施例1と同様にして、ゼオライト(3.62質量部)と混合させた後、粉砕処理を行った。篩下品と粉砕品を混合して得られた高嵩密度洗剤組成物は、平均粒径298μm、嵩密度922g/Lの粒子であった。また、流動性は7.8秒、溶解性は82.5%、すすぎ性はI、微粉率は7.8%であった。ここで、溶解性に関しては、同じ最終組成を有する実施例2と比べると若干劣るものであった。
【0092】
比較例3
レディゲミキサーFKM−130D((株)マツボー製)を用いて、洗剤組成物を35kg単位で製造した。このレディゲミキサーの構成は、実質的に実施例1と同じものであった。操作は以下のように実施した。
【0093】
[工程(A)]
<粉体混合>
炭酸ナトリウム(実施例1と同じライト灰)23質量部、硫酸ナトリウム(無水中性芒硝:平均粒径130μm)50質量部、蛍光剤0.05質量部を、上記レディゲミキサーにより、実施例1と同じ条件で1分間混合した。
【0094】
<中和>
ミキサーを前記と同条件で作動させながら、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(LAS:分子量322)15質量部及び98%硫酸1.87質量部を2分間で加えた。この間、ミキサーのジャケットには40℃の水を通して冷却した。LASの添加中、機内温度は最高65℃に達した。LAS添加後1.5分後に脂肪酸1質量部を2秒で添加した後、引き続きミキサーを同条件で1.5分間作動させ、中和反応及び造粒操作を完結させた。また、LASの添加開始直後より機内の通気(300L/min)を行った。
【0095】
[工程(B)]
<解砕助剤の添加>
中和反応及び造粒操作が完了した時点で、ミキサーを前記と同条件で作動させながら、平均粒径4μmのゼオライト(1.58質量部)を加え、2分間混合した。ここで、水溶性無機物質の添加量は、工程(A)で得られた中和混合物100質量部に対して0質量部である。
【0096】
<液体バインダーと表面改質剤の添加>
実施例1と同条件で作動させながら、非イオン界面活性剤A(2.00質量部)をミキサーに加え1分間混合し、引き続き、40質量%ポリアクリル酸ナトリウム(有効分0.60質量部)水溶液を加え2分間混合し、続いて表面改質剤として平均粒径4μmのゼオライト(0.80質量部)を加え、さらに1分間ミキサーを作動させることにより表面改質処理を行った。得られた洗剤組成物は、平均粒径410μm、嵩密度870g/L、破壊荷重100gfの粒子であった。ここで、破壊荷重に関しては、実施例1〜3と比べると非常に劣るものであった。
【0097】
[工程(C)]
<アフターブレンド>
洗剤組成物を実施例1と同様にして、ゼオライト(3.62質量部)と混合させた後、粉砕処理を行った。篩下品と粉砕品を混合して得られた高嵩密度洗剤組成物は、平均粒径340μm、嵩密度940g/Lの粒子であった。また、流動性は8.5秒、溶解性は80.5%、すすぎ性はI、微粉率は4.3%であった。
【0098】
比較例4
レディゲミキサーFKM−130D((株)マツボー製)を用いて、洗剤組成物を35kg単位で製造した。このレディゲミキサーの構成は、実質的に実施例1と同じものであった。操作は以下のように実施した。
【0099】
[工程(A)]
<粉体混合>
炭酸ナトリウム(実施例1と同じライト灰)23質量部、硫酸ナトリウム(無水中性芒硝:平均粒径130μm)19質量部、重曹6質量部、蛍光剤0.05質量部を、上記レディゲミキサーにより、実施例1と同じ条件で1分間混合した。次いで、水3質量部をミキサー中に反応開始剤として加え、上記と同じ混合条件で1分間混合した。
【0100】
<中和>
ミキサーを前記と同条件で作動させながら、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(LAS:分子量322)15.3質量部及び98%硫酸1.91質量部を2分間で加えた。この間、ミキサーのジャケットには40℃の水を通して冷却した。LASの添加中、機内温度は最高68℃に達した。引き続きミキサーを同条件で2分間作動させ、中和反応及び造粒操作を完結させた。また、LASの添加開始直後より機内の通気(300L/min)を行った。
【0101】
[工程(B)]
<解砕助剤の添加>
中和反応及び造粒操作が完了した時点で、ミキサーを前記と同条件で作動させながら、平均粒径4μmのゼオライト(20質量部)を加え、2分間混合した。ここで、硫酸ナトリウムの添加量は、工程(A)で得られた中和混合物100質量部に対して0質量部である。
【0102】
<液体バインダーと表面改質剤の添加>
実施例1と同条件で作動させながら、非イオン界面活性剤A(2.00質量部)をミキサーに加え1分間混合した。引き続き、40質量%ポリアクリル酸ナトリウム(有効分0.80質量部)水溶液及び60質量%PEG13000(0.38質量部)を加え2分間混合し、続いて表面改質剤として平均粒径4μmのゼオライト(5質量部)を加え、さらに1分間ミキサーを作動させることにより表面改質処理を行った。得られた洗剤組成物は、平均粒径419μm、嵩密度876g/L、破壊荷重0gfの粒子であった。
【0103】
[工程(C)]
<アフターブレンド>
洗剤組成物を実施例1と同様にして、ゼオライト(5質量部)と混合させた後、粉砕処理を行った。篩下品と粉砕品を混合して得られた高嵩密度洗剤組成物は、平均粒径405μm、嵩密度860g/Lの粒子であった。また、流動性は8.1秒、溶解性は70.1%、すすぎ性はIV、微粉率は7.8%であった。ここで、溶解性及びすすぎ性に関しては、各実施例と比べると非常に劣るものであった。
【0104】
比較例5
レディゲミキサーFKM−130D((株)マツボー製)を用いて、洗剤組成物を35kg単位で製造した。このレディゲミキサーの構成は、実質的に実施例1と同じものであった。操作は以下のように実施した。
【0105】
[工程(A)]
<粉体混合>
炭酸ナトリウム(実施例1と同じライト灰)23.00質量部、蛍光剤0.05質量部を、上記レディゲミキサーにより、実施例1と同じ条件で1分間混合した。
【0106】
<中和>
ミキサーを前記と同条件で作動させながら、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(LAS:分子量322)15.0質量部及び98%硫酸1.87質量部を2分間で加えた。この間、ミキサーのジャケットには40℃の水を通して冷却した。LASの添加中、機内温度は最高65℃に達した。LAS添加後1.5分後に脂肪酸1.0質量部を2秒で添加した後、引き続きミキサーを同条件で1.5分間作動させ、中和反応及び造粒操作を完結させた。また、LASの添加開始直後より機内の通気(300L/min)を行った。
【0107】
<水溶性無機物質の添加>
中和反応及び造粒操作が完了した時点で、ミキサーを前記と同条件で作動させながら、平均粒径4μmのゼオライト(1.58質量部)、硫酸ナトリウム(無水中性芒硝:平均粒径25μm)50.00質量部になるように加え、2分間混合した。ここで、硫酸ナトリウムの添加量は、工程(A)で得られた中和混合物100質量部に対して約110質量部である。ただし、平均粒径125〜300μmの硫酸ナトリウムの添加量は、上記中和混合物100質量部に対して0質量部であった。
【0108】
<液体バインダーと表面改質剤の添加>
実施例1と同条件で作動させながら、非イオン界面活性剤B(2.00質量部)をミキサーに加え1分間混合し、引き続き、40質量%ポリアクリル酸ナトリウム(有効分0.60質量部)水溶液を加え2分間混合し、続いて表面改質剤として平均粒径4μmのゼオライト(0.80質量部)を加え、さらに1分間ミキサーを作動させることにより表面改質処理を行った。得られた洗剤組成物は、平均粒径225μm、嵩密度881g/L、破壊荷重0gfの粒子であった。
【0109】
[工程(C)]
<アフターブレンド>
洗剤組成物を実施例1と同様にして、ゼオライト(3.62質量部)と混合させた後、粉砕処理を行った。篩下品と粉砕品を混合して得られた高嵩密度洗剤組成物は、平均粒径216μm、嵩密度889g/Lの粒子であった。また、流動性は10.1秒、溶解性は89.5%、すすぎ性はI、微粉率は23.5%であった。ここで、流動性及び微粉率に関しては、同じ最終組成を有する実施例2と比べると非常に劣るものであった。
【0110】
表1の*2として工程(B)における中和混合物100質量部に対する平均粒径125〜300μmの水溶性無機物質の量(質量部)を、*3として工程(B)の終了後の造粒品(洗剤組成物)の破壊荷重を、*4として工程(C)の終了後の洗剤組成物の各評価結果を示す。
【0111】
【表1】

【0112】
上記の結果より、工程(B)における中和混合物に対する平均粒径が所定の範囲内の水溶性無機物質の割合が所定の範囲を満たさない比較例1〜5における造粒品や洗剤組成物の評価は、実施例1〜3よりも劣ることが分かった。
【0113】
具体的には、製造された洗剤組成物中の水溶性無機物質の量としては実施例と同程度であっても、工程(B)で水溶性無機物質を全く添加しなかった例(比較例1及び3)や工程(B)での水溶性無機物質の添加量が少ない例(比較例2)では、造粒品の破壊荷重が非常に大きな値となり、製品としての洗剤組成物の溶解性が劣る傾向が見られた。また、工程(B)において、水溶性無機物質に代えてゼオライトを用いた例(比較例4)では、製品の溶解性及びすすぎ性が大きく劣る傾向が見られた。さらに、平均粒径が所定の範囲よりも小さい水溶性無機物質を用いた例(比較例5)では、微粉量が多くなるだけでなく、製品の流動性にも劣る傾向が見られた。
【0114】
実施例においては、噴霧乾燥を行うことなく優れた性質の洗剤組成物を製造することができた。さらに実施例1〜3のものは破壊荷重が非常に小さい好ましい粒子であり、それ以外の評価項目についても優れていることが分かった。実施例2と3からは、特定の構造を有する界面活性剤を工程(B)で用いることにより、溶解性をより向上できることが分かった。さらに実施例1と2からは、本発明の方法によればゼオライトの使用量を低減できること、その結果、すすぎ性と溶解性をより向上できることが分かった。このように、本発明の製造方法によって製造される高嵩密度洗剤組成物を用いることで、洗濯時やすすぎ時に使用する水の量を少なくできるため、使用時の環境負荷を低減させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の製造方法により得られた高嵩密度洗剤組成物は、衣類の洗濯等に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程(A):陰イオン界面活性剤の酸前駆体と該酸前駆体を中和するのに必要な量以上の水溶性アルカリ無機物質とを、混合して該酸前駆体を中和する工程、及び
工程(B):工程(A)で得られた中和混合物に、平均粒径125〜300μmの水溶性無機物質を中和混合物100質量部に対して100〜300質量部を添加して混合する工程、
を含んでなる、高嵩密度洗剤組成物の製造方法。
【請求項2】
水溶性無機物質が硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩及びケイ酸塩からなる群より選択される一種以上の塩である請求項1記載の高嵩密度洗剤組成物の製造方法。
【請求項3】
工程(B)において、液体バインダー、上記陰イオン界面活性剤以外の界面活性剤及び表面改質剤からなる群より選ばれる1種以上を配合する、請求項1又は2に記載の高嵩密度洗剤組成物の製造方法。
【請求項4】
界面活性剤がポリオキシアルキレンアルキルエーテルである請求項3記載の高嵩密度洗剤組成物の製造方法。
【請求項5】
界面活性剤が、オキシアルキレン基の平均付加モル数が14〜30であるポリオキシアルキレンアルキルエーテルである請求項3又は4記載の高嵩密度洗剤組成物の製造方法。
【請求項6】
更に、工程(C)として、アフターブレンド工程を含んでなる、請求項1〜5の何れかに記載の高嵩密度洗剤組成物の製造方法。

【公開番号】特開2012−188461(P2012−188461A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50542(P2011−50542)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】