説明

高度な色再現が可能な映像表示システム

【課題】映像信号送出するサーバにネットワークを介して接続される可搬式端末装置に映像データをダウンロードして表示する際に、被写体の色をより正確に再現することを可能とする。
【解決手段】可搬式端末装置110を取り巻く環境を照明する環境照明光の分光特性が環境照明検出部114で検出され、可搬式端末装置110の機種を特定する端末識別情報とともに環境照明光の分光情報がサーバ130に出力される。サーバ130は、端末識別情報に対応するモニタプロファイルをモニタプロファイル記憶部138中から抽出し、多原色映像保管部132に保管される映像データに対して環境照明光の分光特性および可搬式端末装置110のモニタプロファイルを加味して色変換の処理を行い、色変換処理後の映像データを可搬式端末装置110に送出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話やPDA(携帯情報端末)、ノートPC等の可搬式端末装置を用い、ネットワークを介して映像をダウンロードして高度な色再現の映像を視聴可能とする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
被写体の正確な色再現をカラーディスプレイ装置で可能とする技術として、種々の方法が提案されている。例えば、特許文献1には、カラーディスプレイ装置の色特性(モニタプロファイル)を、カラーディスプレイ装置に表示した色標(カラーパッチ)をカラーカメラで撮影することにより取得し、また、カラーディスプレイ装置の置かれる環境の照明条件(観察環境照明情報)を、照明光センサを用いて取得し、ネットワークを介して画像サーバから送られて来る画像データに対して上述したモニタプロファイルおよび観察環境照明情報に基づいて色変換の処理をし、映像を表示するものが開示されている。このような構成によって、例えばネットワークを介しての電子ショッピングに際し、顧客がカラーディスプレイ装置を観視している観察環境下で商品を観たときにどのような色調となるかをシミュレートすることが可能となり、注文して顧客の元に届けられた商品の色が予想していたものと異なっていたと云った理由で返品される不都合を抑制することが可能となる。
【特許文献1】特開2001−60082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した特許文献1の構成では、モニタプロファイルを計測するためのカラーカメラが必要で、高価となる。また、特に携帯電話やPDA等の軽量・小型であることを求められる機器に、それらの機器のディスプレイを撮影するためのカラーカメラを設けることは現実的ではない。加えて、携帯電話等の移動式端末装置、PDA、ノートPC等を用いて公衆回線にアクセスし、サーバから映像をダウンロードして視聴するような環境においては、それらの機器の情報処理能力、電池の容量等に制限があることから、ダウンロードした画像データに色変換の処理を行うような重い処理を長時間にわたり実行させることは困難な場合がある。
【0004】
本発明は、上述した課題を解決するための手段を提供することを目的としており、可搬式の端末装置にモニタプロファイルを検出するためのセンサ等を用いることなく安価に、しかも情報処理能力がさほど高くなくても被写体の色を正確に再現して表示することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1) 本発明の第1の態様は、ネットワークを介して互いに接続される可搬式端末装置および映像データ送出サーバを有する映像表示システムに適用される。
そして前記可搬式端末装置は、
前記映像データ送出サーバから出力される映像データに基づく映像を表示可能な映像表示部と、
前記可搬式端末装置を取り巻く環境を照明する光である環境照明光の分光特性に関連する情報である環境照明情報を前記映像データ送出サーバに送出するための環境照明情報送出部と、
前記可搬式端末装置の種類を前記映像データ送出サーバが特定することが可能に構成される端末特定情報を前記映像データ送出サーバに送出するための端末特定情報送出部と
を有し、
前記映像データ送出サーバは、
4つ以上の原色からなる多原色映像データを保管する多原色映像保管部と、
前記映像データ送出サーバに接続しうる複数種類の可搬式端末装置それぞれが有する映像表示部の表示特性を表すモニタプロファイルを記憶するモニタプロファイル記憶部と、
前記可搬式端末装置から送出される前記環境照明情報と、前記可搬式端末装置から送出される前記端末特定情報に対応する前記モニタプロファイルとに基づいて前記多原色映像データに色変換処理を行い、当該の色変換処理後の映像データを前記可搬式端末装置に送出するように構成される映像データ処理部と
を有する、
ことにより上述した課題を解決する。
(2) 本発明の第2の態様は、映像データ送出サーバにネットワークを介して接続可能な可搬式端末装置に適用される。そしてこの可搬式端末装置が、
前記映像データ送出サーバから出力される映像データに基づく映像を表示可能な映像表示部と、
前記可搬式端末装置を取り巻く環境を照明する光である環境照明光の分光特性に関連する情報である環境照明情報を前記映像データ送出サーバに送出するための環境照明情報送出部と、
前記可搬式端末装置の種類を前記映像データ送出サーバが特定することが可能に構成される端末特定情報を前記映像データ送出サーバに送出するための端末特定情報送出部と
を有し、
前記映像データ送出サーバに接続しうる複数種類の可搬式端末装置それぞれが有する映像表示部の表示特性を表すモニタプロファイルを記憶するために前記映像データ送出サーバ内に備えられるモニタプロファイル記憶部中から前記端末特定情報に対応するものとして取り出されたモニタプロファイルと、前記可搬式端末装置から前記映像データ送出サーバに送られた前記環境照明情報とに基づいて、前記映像データ送出サーバ中に保管される4つ以上の原色からなる多原色映像データに対して色変換処理が行われて生成され、出力される色変換処理後の映像データを前記映像データ送出サーバから入力して前記映像表示部に映像を表示可能に構成されることにより、上述した課題を解決する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、観察環境照明情報を可搬式端末装置が映像データ送出サーバに出力可能であることにより、可搬式端末装置がどのような観察環境に置かれていても、その観察環境に対応した映像を表示することが可能となる。また、可搬式端末装置が移動することによって観察環境が目まぐるしく変わる状況においてもその状況に対応して色変換の処理がなされた映像データに基づく映像をユーザは観ることが可能となる。さらに、色変換の処理が可搬式端末装置ではなく映像データ送出サーバの側で行われることにより、可搬式端末装置に求められる情報処理能力はさほど高いものではなくなるとともに、可搬式端末装置の映像表示部が有する原色数および表示解像度に対応して最適化された映像データが映像データ送出サーバから可搬式端末装置に送出されるので無駄な回線容量の浪費を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
− 第1の実施の形態 −
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る映像表示システム100の概略的構成を示すブロック図である。映像表示システム100は、可搬式端末装置110と、映像データを可搬式端末装置110に送出するためのサーバ130とがネットワーク120を介して有線又は無線の方式で接続されて構成される。
【0008】
可搬式端末装置110は、PDA、ノートPC等の可搬式のコンピュータや携帯電話、あるいはネットワークに接続して映像データを受信し、映像を表示可能なモニタ装置などで構成することが可能である。可搬式端末装置110は、映像表示部112と、環境照明検出部114とキー入力部116とを有する。これらの構成要素は一体に構成されていても別体で構成されていてもよい。映像表示部112は、カラー液晶表示デバイスや有機EL表示デバイス等で構成され、様々な情報および映像を表示可能に構成される。
【0009】
環境照明検出部114は、可搬式端末装置110を取り巻く環境の照明の状況(分光スペクトル)を計測可能に構成される。以下、本明細書においては、可搬式端末装置110を取り巻く環境を観察環境と称し、この観察環境に存在して観察環境を照明する自然光、あるいはタングステン灯や蛍光灯などを総称して観察環境照明と称する。そして観察環境照明からの光を観察環境照明光と称する。環境照明検出部114は一例として、図2にその概略が示されるような構成を有するものとすることが可能である。
【0010】
図2において、環境照明検出部114は、コサインコレクタ202と、光ファイバ204と、スリット206と、コリメータ・ミラー208と、グレーティング210と、結像ミラー212と、ラインセンサ214と、信号処理回路216とを有する。外光、すなわち観察環境照明光がコサインコレクタ202を介して光ファイバ204の入射端に導かれる。コサインコレクタ202は、180°の入射角で光を入射してそれを光ファイバ204の入射端に導くことにより測光特性を改善するためのものである。光ファイバ204の出射端から射出した光は、上記出射端近傍に配置されるスリット(開口)206で絞られてコリメータ・ミラー208に入射し、コリメータ・ミラー208の反射面で反射された際に平行光となるようにコリメートされ、グレーティング210に導かれる。グレーティング210で回折されて生成された一次スペクトル光は、結像ミラー212で反射・集光されてラインセンサ214に導かれる。
【0011】
上述のようにして分光されてラインセンサ214に入射する光の強度が信号処理回路216で求められ、ラインセンサ214を構成する各画素の位置および画素値から観察環境照明光の分光スペクトルを知ることが可能となる。なお、環境照明検出部114の構成としては、図2を参照して以上に説明したものに限られるものではなく、プリズム等を用いて分光された光をラインセンサやエリアセンサ等で受光して分光スペクトルを計測するものであってもよい。あるいは、互いに異なる透過帯域を有する複数(4以上)のカラーフィルタをCCD等の受光素子の光入射部に設置して観察環境照明光の分光スペクトルを計測可能としてもよい。
【0012】
図1に戻り、キー入力部116は、数字や文字等を入力するためのキー、あるいは映像表示部112に表示されるカーソル等の動きを観察者が制御したりメニュー操作をしたりすることが可能に構成される操作部材を含む。
【0013】
ネットワーク120は、可搬式端末装置110が携帯電話である場合には移動体通信網およびインターネットで構成される。また、可搬式端末装置110が、アダプタを介して移動体通信網に接続可能なPDAやノートPCである場合にもネットワーク120は移動体通信網およびインターネットで構成される。ネットワーク120はまた、LAN、WAN、公衆回線網などで構成することも可能である。その場合、可搬式端末装置110は無線のアクセスポイントを介してネットワーク120に接続することも、あるいは有線でネットワーク120に接続することも可能である。
【0014】
サーバ130は、可搬式端末装置110から要求される映像データを送出可能に構成され、いわゆるコンテンツプロバイダによって提供されるものであっても、個人が所有するコンピュータによって構成されるものであってもよい。
【0015】
可搬式端末装置110は、ネットワーク120を介してサーバ130に接続され、環境照明検出部114で検出された観察環境照明光の分光スペクトルに関連する情報と、可搬式端末装置110の種類をサーバ130が特定することが可能に構成される端末識別情報とが、ダウンロードすることを観察者が欲している映像データの種類を特定する情報とともにサーバ130へ送出される。
【0016】
可搬式端末装置110からの要求に応じて映像データを送出可能に構成されるサーバ130は、多原色映像保管部132と、映像データ処理部134と、モニタプロファイル選択部136と、モニタプロファイル記憶部138とを有する。
【0017】
多原色映像保管部132には、M原色(Mは4以上)の多原色映像が多数保管される。多原色映像とは、従来のカラー映像がRGB3原色の映像信号で構成されていたのと異なり、原色数が4以上、好ましくは6以上の映像信号で構成される映像である。例えば6バンドマルチスペクトルカメラで被写体を撮影して6バンドの多原色映像信号が生成される例について以下に説明する。
【0018】
6バンドマルチスペクトルカメラ(不図示)の撮影レンズを透過した被写体光はビームスプリッタによって第1および第2の光路上を進む光に分離される。そのうち、第1の光路上を進む光は第1の分光透過特性を有する干渉フィルタを透過し、その後ダイクロイックプリズムによって例えばR1、G2、B1という分光波長帯域を有する3色の光に分離され、それぞれの色の光が異なる撮像素子上で被写体像を形成してR1、G2、B1の映像信号が形成される。第2の光路上を進む光は第2の分光透過特性を有する干渉フィルタを透過し、その後上述したのとは別のダイクロイックプリズムによって例えばR2、G1、B2という分光帯域を有する3色の光に分離され、それぞれの色の光が異なる撮像素子上で被写体像を形成してR2、G1、B2の映像信号が形成される。すなわち、撮影レンズを透過した被写体光はビームスプリッタによって二つの光に分離され、それぞれが互いに異なる分光透過特性を有する干渉フィルタおよびダイクロイックプリズムを経て6つの撮像素子上に導かれる、6板式のマルチスペクトルカメラ(MSC)によって、R1、R2、G1、G2、B1、B2の6バンド多原色映像信号が生成される。このとき、撮影時に被写体を照明していた照明光のスペクトルが計測され、この被写体を照明していた照明光のスペクトルに関連する情報(以下、本明細書ではこれを撮影環境照明情報と称する)が多原色映像データとともに記録される。多原色映像データにはまた、撮影レンズ、色分解光学系、撮像素子などによって決まる、各原色に対応する分光特性、階調(ガンマ)特性、レベル等の入力機器情報も含まれる。
【0019】
観察者、すなわちサーバ130から映像データをダウンロードして、可搬式端末装置110の映像表示部112に表示される映像を観察する人は、キー入力部116を操作することによって、多原色映像保管部132中に保管される複数の映像データ中で所望のものを選択する。
【0020】
モニタプロファイル記憶部138は、サーバ130に接続される可能性のある複数種類の可搬式端末装置それぞれが有する映像表示部の表示特性を網羅的に記録するデータベースである。このモニタプロファイル記憶部138には、一例として、各モニタの原色点(モニタがRGBモニタである場合、R色のみ、G色のみ、B色のみの画像を表示した際の表示色)の色度値(CIE xy色度図上のx、y座標値)に関連する情報、ガンマ特性(R、G、Bそれぞれの入力信号の変化量に対する表示される色の変化量の割合)、バイアス値(R、G、Bそれぞれの入力信号を0、すなわち最も暗い黒を表示したときの表示輝度レベル)等が可搬式端末装置の種類に対応して記録される。
【0021】
なお、可搬式端末装置110の映像表示部112は、XYZの測色値表示や多原色による表示が可能な構成とすることもできる。その場合には、それらの表示方式に対応した表示特性をモニタプロファイル記憶部138は記憶可能に構成される。
【0022】
モニタプロファイル選択部136は、サーバに接続されている可搬式端末装置110から送出された端末識別情報に対応するモニタプロファイルを選択して映像データ処理部134に出力する。この映像データ処理部134には、可搬式端末装置110から出力される観察環境照明情報も入力される。映像データ処理部134は、観察者が選択した映像に対応する映像データを多原色映像保管部132から取り出し、この映像データに対して上述したモニタプロファイルおよび観察環境照明情報に基づく色変換処理を行う。この色変換処理の詳細については後で図3および図4を参照して詳述する。映像データ処理部134は、ネットワーク120を介して色変換処理後の映像データを可搬式端末装置110に送出する。
【0023】
図3は、図1に示される映像データ処理部134の内部構成を概略的に示す図である。映像データ処理部134には、上述したように多原色映像保管部132から撮影環境照明情報および映像データが入力され、可搬式端末装置110からネットワーク120を介して観察環境照明情報が入力され、モニタプロファイル選択部136からモニタプロファイルが入力される。
【0024】
映像データ処理部134は、色変換データ演算部302と、モニタ色変換データ演算部304と、撮影特性情報分離部306と、色変換処理部308と、モニタ色変換部310とを有する。
【0025】
撮影特性情報分離部306は、多原色映像保管部132から入力した映像データ中から入力機器情報を分離抽出して撮影環境照明情報とともに色変換データ演算部302に出力する。撮影特性情報分離部306はまた、多原色映像保管部132から入力した映像データ中から分離抽出した多原色映像データを色変換処理部308に出力する。
【0026】
色変換データ演算部302は、撮影特性情報分離部306から入力した撮影環境照明情報および入力機器情報から、画像データの色変換処理に際して用いる演算パラメータ(以下、これを「演算パラメータ1」と称する)を求め、それを色変換処理部308に出力する。
【0027】
モニタ色変換データ演算部304は、モニタプロファイル選択部136から入力したモニタプロファイルから、モニタ色変換部310で後述するモニタ色変換の処理をする際に用いる演算パラメータ(以下、これを「演算パラメータ2」と称する)を求め、求めた演算パラメータ2をモニタ色変換部310に出力する。
【0028】
図4は、上述した色変換処理部308およびモニタ色変換部310の詳細を説明するブロック図である。色変換処理部308では、色変換データ演算部302から入力される演算パラメータ1に基づき、ルックアップ・テーブル(LUT)1,LUT2,…,LUT M (以下、これらのLUTを「LUT 402」と総称する)と、マトリクス演算部404内のM×3マトリクスとが生成される。これらのLUT402およびM×3マトリクスは、色変換処理部308に入力される多原色映像データ(図4に示す例においてはMバンド、すなわち原色数Mの多原色映像データが示される)を処理する際に用いられる。
【0029】
ところで、多原色の映像データに基づいて高度の色再現を行う技術分野において、レンダリング照明による色再現の技術が知られている。この技術は、マルチスペクトルカメラで得られる映像データから、撮影機器の特性や撮影環境照明光の分光スペクトルに基づいて被写体の分光反射率を推定し、任意の分光強度を有する照明光のスペクトルデータを上記のようにして求められた分光反射率に乗じることにより、被写体が任意の照明光で照明されたときの色(被写体で反射された光のスペクトル)を再現(シミュレート)して表示する技術である。例えば、観察環境における照明光の分光スペクトルデータを上記分光反射率に乗じることにより、表示装置と、この表示装置に表示される映像を観察する観察者を取り巻く環境に被写体が存在していたときの色を再現して表示することにより、観察者にとってその映像は非常にリアルなものとして感じられるようになる。本発明においては、或る分光特性を有する照明光を当てたときに被写体がどのような色合いに観えるかをシミュレートする際に、被写体の推定された分光反射率に対して適用する照明光をレンダリング照明光と称する。また、本発明においては、レンダリング照明光として観察環境照明光を適用して可搬式端末装置110の映像表示部112に映像を表示することにより、撮影時とは異なる、観察環境における照明光源下での被写体の色を再現する。
【0030】
色変換処理部308における色変換処理の説明に戻ると、色変換処理部308に入力される多原色映像データは、レンダリング照明光が適用される前の、推定分光反射率の映像データであり、暗闇に被写体があっても見えず、色が分からないのと同様に、レンダリング照明光が適用される前の映像データは、そのままでは色をなさない。色変換処理部308内において、多原色映像データには先ずLUT402が適用され、多原色映像データのそれぞれに対していわゆるトーンカーブの補正がなされてカメラのレベル・ガンマ特性の影響が除去される。続いて、マトリクス演算部404では多原色映像データに対してマトリクス演算がなされ、レンダリング照明光を適用する処理およびX、Y、Zの測色値映像データに変換する処理が行われる。このようにして得られたX、Y、Z測色値映像データはモニタ色変換部310に送出される。
【0031】
モニタ色変換部310では、モニタ色変換データ演算部304から入力される演算パラメータ2に基づき、色分解演算部414内のデータテーブルと、ルックアップ・テーブル(LUT)1,LUT2,…,LUT N(以下、「LUT 412」と称する)とが生成される。これらのデータテーブルおよびLUT412は、モニタ色変換部310に入力される3バンドの映像信号を処理する際に用いられる。
【0032】
色分解演算部414内のデータテーブルは、入力される3バンド(X、Y、Z)の映像信号を原色1から原色Nの映像データに分解するために用いられる。LUT412は、可搬式端末装置110の映像表示部112のガンマ特性およびバイアス値を補正するために用いられる。色分解演算部414内の上記データテーブルは、可搬式端末装置110に送出される映像データがRGB、XYZ等の3原色のものである場合には3×3のマトリクスとすることができる。可搬式端末装置110に送出される映像データの原色数が4以上の場合には、モニタ色変換部310に入力される3バンドの映像データから4色以上の原色の映像データを生成するためのルックアップ・テーブルが色分解演算部414内に生成される。
【0033】
以上に説明したように、可搬式端末装置110の観察者はネットワーク120を介してサーバ130にアクセスし、観たい映像を選択する。その際に可搬式端末装置110からは環境照明検出部114で検出された環境照明の分光特性に関連する観察環境照明情報が端末識別情報とともにサーバ130に送出される。サーバ130では、選択された映像データに対して、端末識別情報に対応するモニタプロファイルと、観察環境照明情報とに基づいて色変換の処理を行い、色変換処理後の映像データを可搬式端末装置110に送出する。その結果、映像表示部112に表示される映像中の被写体があたかも観察環境照明で照明されているかのような色合いで表示がなされるので、観察者は非常にリアルな映像を観察することが可能となる。また、インターネットを介してのショッピング等においても商品の色味が観察者の居る環境に置かれたときの色合いが再現可能となるので、発注して後日届けられた商品の色がイメージしていたものと異なる、といった不具合を抑制することが可能となる。
【0034】
また、可搬式端末装置110からは端末識別情報がサーバ130に送出されて、その端末識別情報に基づいて、サーバ130内のモニタプロファイル記憶部138内に記憶されるモニタプロファイル中から可搬式端末装置110用のモニタプロファイルが選択され、映像データ処理部134での色変換処理に際して参照される構成を有することにより、可搬式端末装置110の側にモニタプロファイル計測用の構成を備える必要がない。
【0035】
そして、映像データに対する色変換の処理はサーバ130の側で行われることにより、可搬式端末装置110の情報処理能力がさほど高くなくても高品位の映像を観察することが可能となる。加えて、映像表示部112の原色数が3しかないような場合には、サーバ130の側で3原色の映像データに変換してから可搬式端末装置110に送出されるので回線容量を浪費することがない。このとき、可搬式端末装置110の側の表示解像度をサーバ130が端末識別情報をもとに判定し、送出する映像データの解像度を最適なものに設定することによって、必要とする回線容量をさらに削減することが可能となる。
【0036】
以上の実施の形態の説明において、観察環境照明情報が可搬式端末装置110からサーバ130に送出されるタイミングについて詳しく述べていないが、以下のようなタイミングで送出可能である。すなわち、可搬式端末装置110からサーバ130に対して映像データの送出を要求する際に観察環境照明情報を送出可能である。あるいは、一定時間ごとに送出することも、送られてくる映像データのシーンの変わり目、あるいは映像データが静止画のデータである場合には異なる映像に切り替えられるタイミングで観察環境照明情報を送出することもできる。また、予め定められたタイミングで環境照明検出部114が環境照明光の検出を行い、検出された環境照明光の特性に予め定められた量を超す変化があったかどうかを可搬式端末装置110の側で判定し、上記予め定められた量を超す変化があったと判定される場合に可搬式端末装置110からサーバ130に新たな観察照明情報を送出するように構成されていてもよい。さらにまた、観察者が観察環境照明情報の更新操作をした際に可搬式端末装置110からサーバ130に新たな観察環境照明情報を送出するように構成されていてもよい。
【0037】
モニタプロファイル記憶部138に記憶されるモニタプロファイルの情報は、可搬式端末装置110のメーカからサーバ130を所有・管理するコンテンツプロバイダあるいは個人に供給するようにしても、上記コンテンツプロバイダで計測し、得られた情報を記憶するようにしてもよい。
【0038】
− 第2の実施の形態 −
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る映像表示システム100Aの概略的構成を示すブロック図である。なお、以下の説明において、図1から図4に示される本発明の第1の実施の形態に係る映像表示システムが有するものと同様の構成要素には同じ符号を付してその説明を省略する。また、機能的に類似している構成要素に対しては第1の実施の形態を説明する上記各図に示されるものと同じ番号にアルファベットを付加したものを参照符号として付している。
【0039】
第1の実施の形態においては、可搬式端末装置110から送出される観察環境照明情報に対応して、サーバ130からいわばリアルタイムで色変換の処理がなされた映像データが送出されるものであった。これに対して、第2の実施の形態においては、観察環境照明光として予め想定されるもの、例えば自然光(晴天昼光、朝、夕方、曇天等)、人工光(タングステン光、普通形蛍光灯、高演色タイプ蛍光灯等)などの状況と、モニタプロファイルの種類との組み合わせに対応して予め色変換の処理をしたものを保管しておく。そして、それらの映像データの中から最も適したものを可搬式端末装置110に送出する。
【0040】
図5に示す映像表示システム100Aは、可搬式端末装置110とサーバ130Aとがネットワーク120を介して有線又は無線の方式で接続されて構成される。サーバ130Aは、多原色映像保管部132と、映像データ処理部134Aと、モニタプロファイル記憶部138と、観察環境照明情報記憶部502と、表示用映像保管部504と、映像選択部506と、観察環境照明類似度判定部508とを有する。
【0041】
これらの構成要素のうち、観察環境照明情報記憶部502には、上述したように観察環境照明光として予め想定されるものに対応する観察環境照明情報が予め記憶されている。表示用映像保管部504には、映像データ処理部134Aにおいて後述するようにオフラインで色変換処理されて生成された表示用の映像データが多数保管される。
【0042】
観察環境照明類似度判定部508は、ネットワーク120を介して可搬式端末装置110から観察環境照明情報、すなわち観察環境照明光の分光スペクトルに関連する情報を入力する。そして観察環境照明類似度判定部508は、観察環境照明情報記憶部502に記憶される観察環境照明情報中から、可搬式端末装置110より上述のように入力した観察環境照明情報に最も類似するものを選択し、その最も類似するものに対応する情報である類似観察環境照明情報を映像選択部506に出力する。映像選択部506は、表示用映像保管部504に保管される映像データ中から、ネットワーク120を介して可搬式端末装置110から入力した端末識別情報および上記の類似観察環境照明情報の組み合わせに対応して最も適した映像データを選択し、ネットワーク120を介して可搬式端末装置110に送出する。
【0043】
図6は、映像データ処理部134Aの内部構成を説明するブロック図である。映像データ処理部134Aは、撮影特性情報分離部306と、色変換処理部308と、モニタ色変換部310と、色変換データ演算部302とモニタ色変換データ演算部304とを有する。図3と図6とを比較すると明らかなように、第1の実施の形態中における映像データ処理部134と第2の実施の形態中における映像データ処理部134Aとで内部構成に違いはなく、これらの映像データ処理部が入出力する情報あるいはデータの内容と、それらの情報あるいはデータをどこから入力してどこへ出力するかという点に違いがある。
【0044】
図5および図6を参照して説明すると、映像データ処理部134Aは、以下に説明する処理をオフラインにて最初に行う。すなわち、色変換データ演算部302は観察環境照明情報記憶部502から複数の種類の観察環境照明情報を順次入力し、この観察環境照明情報と、撮影特性情報分離部306から入力した撮影環境照明情報および入力機器情報とに基づいて、これらの情報の組み合わせに対応する演算パラメータ1を色変換処理部308に順次出力する。同様に、モニタ色変換データ演算部304は、モニタプロファイル記憶部138から複数の種類のモニタプロファイルを順次入力し、このモニタプロファイルに対応する演算パラメータ2をモニタ色変換部310に順次出力する。映像データ処理部134Aは、多原色映像保管部132から入力される映像データに対して上記の演算パラメータ1および演算パラメータ2を適用して処理済み映像データを順次生成し、表示用映像保管部504に出力する。
【0045】
図7は、表示用映像保管部504に保管される処理済み映像データを概念的に示す図である。図7に例示されるように、処理済み映像データは、コンテントごとに機種(可搬式端末装置の種類)および観察環境照明の種類に対応して生成・保管される。図7に示す例では、機種1の映像表示部はRGB表示であるため、機種1用の映像データはRGB映像データとなっている。また、機種2の映像表示部はXYZの測色値表示仕様となっているので機種2用の映像データはXYZ映像データとなっている。さらに、機種3の映像表示部は4つの原色を有する仕様となっているので、機種3用の映像データは4バンド映像データとなっている。このように、サーバ130Aに接続される可能性のある可搬式端末装置それぞれが有する映像表示部と、予め想定される観察環境照明との組み合わせに対応して映像データが生成され、表示用映像保管部504に保管される。
【0046】
観察者は可搬式端末装置110を操作し、ネットワーク120を介してサーバ130Aにアクセスし、観たい映像(コンテント)を選択する。その際に可搬式端末装置110からは環境照明検出部114で検出された環境照明の分光特性に関連する観察環境照明情報が端末識別情報とともにサーバ130Aに送出される。観察環境照明情報記憶部502中に記憶される複数種類の観察照明情報中から、サーバ130A内の観察環境照明類似度判定部508に入力された観察環境照明情報に最も類似するものである類似観察環境照明情報が映像選択部506に入力される。その類似観察環境照明情報に基づいて映像選択部506は表示用映像保管部504に保管される映像データ中から最適の映像データを可搬式端末装置110に送出する。
【0047】
本発明の第2の実施の形態においては、サーバ130Aに接続される可能性のある可搬式端末装置110の種類と、予め想定される観察環境照明光の種類との組み合わせに基づいて映像データが予め処理されて表示用映像保管部504に保管される。そのため、サーバ130Aが処理済みの映像データを可搬式端末装置110に送出する際に映像データを処理する必要がないのでサーバ130Aの処理負荷を軽減することが可能となる。
【0048】
以上に説明したように、観察環境照明類似度判定部508は、観察環境照明情報記憶部502に記憶される観察環境照明情報中から、可搬式端末装置110より入力される観察環境照明情報に最も類似するものを選択する構成を有しているので、第2の実施の形態における可搬式端末装置110の環境照明検出部114は観察環境照明光の分光特性を厳密に測定可能なものでなくてもよい。例えば、R、G、B各色のフィルタが受光部に設けられるCCDあるいはC−MOSセンサ等を用いて観察環境照明光のホワイトバランスあるいは色温度を測定可能な構成としてもよい。
【0049】
また、以上に説明したオフライン処理による表示用映像データの生成処理に関して、サーバ130A以外の処理システムで処理がなされて、処理後の映像データがサーバ130Aの表示用映像保管部504に転送あるいはコピーされるものであってもよい。
【0050】
第2の形態の説明においても、可搬式端末装置110からサーバ130Aに観察環境照明情報を送出するタイミングは第1の実施の形態で説明したのと同様のものとすることが可能である。
【0051】
モニタプロファイル記憶部138に記憶されるモニタプロファイルの情報も、第1の実施の形態と同様、可搬式端末装置110のメーカからサーバ130Aを所有・管理するコンテンツプロバイダあるいは個人に供給するようにしても、上記コンテンツプロバイダで計測し、得られた情報を記憶するようにしてもよい。
【0052】
− 第3の実施の形態 −
図8は、本発明の第3の実施の形態に係る映像表示システム100Bの概略的構成を示すブロック図である。以下の説明において、図1から図7に示される本発明の第1および第2の実施の形態に係る映像表示システムが有するものと同様の構成要素には同じ符号を付してその説明を省略する。また、機能的に類似している構成要素に対しては第1および第2の実施の形態を説明する上記各図に示されるものと同じ番号にアルファベットを付加したものを参照符号として付している。
【0053】
第1および第2の実施の形態においては、可搬式端末装置110が環境照明検出部114を有していて、観察環境照明光の分光特性を検出可能に構成されるものであった。これに対して、第3の実施の形態においては、可搬式端末装置110Aは観察環境照明光の分光特性を検出可能な構成を有していない。代わりに、可搬式端末装置110Aは観察環境照明情報設定部802を有する。観察者は、可搬式端末装置110Aおよび観察者を取り巻く観察環境を照明する光の種類を判断し、観察環境照明情報設定部802を操作して最適の観察環境照明情報を設定する。観察環境照明情報設定部802で設定可能な観察環境照明の種類としては、自然光(晴天昼光、朝、夕方、曇天等)、人工光(タングステン光、普通形蛍光灯、高演色タイプ蛍光灯等)などとすることが可能である。
【0054】
図8に示す映像表示システム100Bは、可搬式端末装置110Aとサーバ130Bとがネットワーク120を介して有線又は無線の方式で接続されて構成される。サーバ130Bは、多原色映像保管部132と、映像データ処理部134Aと、モニタプロファイル記憶部138と、観察環境照明情報記憶部502と、表示用映像保管部504と、映像選択部506とを有する。映像データ処理部134Aの内部構成は、図6に示されるものと同様である。
【0055】
本発明の第3の実施の形態においても、第2の実施の形態と同様に、サーバ130Bに接続される可能性のある可搬式端末装置110Aの種類と、予め想定される観察環境照明光の種類との組み合わせに基づいて映像データがオフライン時に予め処理されて表示用映像保管部504に保管される。
【0056】
観察者は可搬式端末装置110Aを操作し、ネットワーク120を介してサーバ130Bにアクセスし、観たい映像(コンテント)を選択する。このとき観察者が観察環境照明情報設定部802を操作して適宜の観察環境照明に設定するのに応じて可搬式端末装置110Aからは上記のように観察者が設定した観察環境照明に対応する観察環境照明設定情報が端末識別情報とともにサーバ130Bに送出される。観察環境照明設定情報および端末識別情報は映像選択部506に入力される。映像選択部506は、入力された観察環境照明設定情報および端末識別情報に基づいて表示用映像保管部504に保管される映像データ中から最適の映像データを可搬式端末装置110Aに送出する。
【0057】
第3の実施の形態の説明において、可搬式端末装置110Aからサーバ130Bに観察環境照明設定情報を送出するタイミングは、可搬式端末装置110Aからサーバ130Bに対して映像データの送出を要求する際とすることが可能である。あるいは、観察者が必要を感じたときに観察環境照明情報設定部802を操作し、その際に観察環境照明設定情報が可搬式端末装置110Aからサーバ130Bに送出されるものであってもよい。この場合サーバ130Aは、送出するべき映像データを、入力した観察環境照明設定情報に対応するものに即切り替えてもよいし、動画であればシーンの切り替えタイミングで、静止画であれば次の映像データを送出するタイミングで切り替えてもよい。
【0058】
モニタプロファイル記憶部138に記憶されるモニタプロファイルの情報も、第1および第2の実施の形態と同様、可搬式端末装置110Aのメーカからサーバ130Bを所有・管理するコンテンツプロバイダあるいは個人に供給するようにしても、上記コンテンツプロバイダで計測し、得られた情報を記憶するようにしてもよい。
【0059】
− 第4の実施の形態 −
図9は、本発明の第4の実施の形態に係る映像表示システム100Cの概略的構成を示すブロック図である。なお、以下の説明において、図1から図8に示される本発明の第1から第3の実施の形態に係る映像表示システムが有するものと同様の構成要素には同じ符号を付してその説明を省略する。また、機能的に類似している構成要素に対しては第1から第3の実施の形態を説明する上記各図に示されるものと同じ番号にアルファベットを付加したものを参照符号として付している。
【0060】
第4の実施の形態においては、以下に詳述するように可搬式端末装置110Aは観察環境照明情報設定部802を有し、観察者は可搬式端末装置110Aおよび観察者を取り巻く観察環境を照明する光の種類を判断し、観察環境照明情報設定部802を操作して最適の観察環境照明情報を設定する。サーバ130Cは、可搬式端末装置110Aから入力した観察環境照明設定情報をもとに色変換の処理をリアルタイムで行い、可搬式端末装置110Aに送出する。
【0061】
図9に示す映像表示システム100Cは、可搬式端末装置110Aとサーバ130Cとがネットワーク120を介して有線又は無線の方式で接続されて構成される。サーバ130Cは、多原色映像保管部132と、映像データ処理部134Bと、モニタプロファイル記憶部138と、モニタプロファイル選択部136と、観察環境照明情報記憶部502と、適用観察環境照明選択部902とを有する。観察環境照明情報記憶部502には、第2および第3の実施の形態で説明したように観察環境照明光として予め想定されるもの、一例として自然光(晴天昼光、朝、夕方、曇天等)、人工光(タングステン光、普通形蛍光灯、高演色タイプ蛍光灯等)に対応する観察環境照明情報が予め記憶されている。
【0062】
適用観察環境照明選択部902は、観察環境照明情報記憶部502に記憶される観察環境照明情報中から、可搬式端末装置110Aより入力した観察環境照明設定情報に対応、あるいは最も類似する観察環境照明情報を選択し、映像データ処理部134Bに出力する。
【0063】
図10は、映像データ処理部134Bの内部構成を説明するブロック図である。映像データ処理部134Bは、撮影特性情報分離部306と、色変換処理部308と、モニタ色変換部310と、色変換データ演算部302とモニタ色変換データ演算部304とを有する。図3、図6、および図10を比較すると明らかなように、第1、第2の実施の形態中における映像データ処理部134、134Aと第4の実施の形態中における映像データ処理部134Bとで内部構成に違いはなく、これらの映像データ処理部が入出力する情報あるいはデータの内容と、それらの情報あるいはデータをどこから入力してどこへ出力するかという点に違いがある。
【0064】
図9および図10を参照して説明すると、映像データ処理部134B内の色変換データ演算部302は、適用観察環境照明選択部902から出力される観察環境照明情報を、撮影特性情報分離部306から出力される撮影環境照明情報および入力機器情報とともに入力する。色変換データ演算部302は、上述のように入力した情報に基づいて演算パラメータ1を求め、それを色変換処理部308に出力する。
【0065】
観察者は可搬式端末装置110Aを操作し、ネットワーク120を介してサーバ130Cにアクセスし、観たい映像(コンテント)を選択する。このとき観察者が観察環境照明情報設定部802を操作して適宜の観察環境照明に設定するのに応じて可搬式端末装置110Aからは上記のように観察者が設定した観察環境照明に対応する観察環境照明設定情報が端末識別情報とともにサーバ130Cに送出される。端末識別情報は、モニタプロファイル選択部136に入力され、この端末識別情報に対応するモニタプロファイルがモニタプロファイル記憶部138中から選択されて映像データ処理部134B内のモニタ色変換データ演算部304に入力される。観察環境照明設定情報は、適用観察環境照明選択部902に入力され、この観察環境照明設定情報に対応する観察環境照明情報が観察環境照明情報記憶部502中から選択されて映像データ処理部134B内の色変換データ演算部302に入力される。
【0066】
映像データ処理部134Bでは、選択された映像データに対して、端末識別情報に対応するモニタプロファイルと、観察環境照明情報とに基づいて色変換の処理を行い、色変換処理後の映像データを可搬式端末装置110Aに送出する。その結果、映像表示部112に表示される映像中の被写体があたかも観察環境照明で照明されているかのような色合いで表示がなされる。
【0067】
第4の実施の形態においても、第3の実施の形態と同様に、可搬式端末装置110Aからサーバ130Cに観察環境照明設定情報を送出するタイミングは、可搬式端末装置110Aからサーバ130Cに対して映像データの送出を要求する際とすることが可能である。あるいは、観察者が必要を感じたときに観察環境照明情報設定部802を操作し、その際に観察環境照明設定情報が可搬式端末装置110Aからサーバ130Cに送出されるものであってもよい。この場合サーバ130Cは、送出するべき映像データを、入力した観察環境照明設定情報に対応するものに即切り替えてもよいし、動画であればシーンの切り替えタイミングで、静止画であれば次の映像データを送出するタイミングで切り替えてもよい。
【0068】
モニタプロファイル記憶部138に記憶されるモニタプロファイルの情報も、第1および第2の実施の形態と同様、可搬式端末装置110Aのメーカからサーバ130Bを所有・管理するコンテンツプロバイダあるいは個人に供給するようにしても、上記コンテンツプロバイダで計測し、得られた情報を記憶するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係る映像信号処理の技術は、映像データを送出可能なサーバと、有線および無線の形態を問わずにネットワークを介してこのサーバに接続される、携帯電話、PDA、ノートPC、モニタ装置等の可搬式の端末装置とで構成される映像表示システムに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る映像表示システムの概略的構成を説明するブロック図である。
【図2】環境照明検出部の内部構成例を概略的に示すブロック図である。
【図3】映像データ処理部の内部構成例を概略的に示すブロック図である。
【図4】色変換処理部およびモニタ色変換部の内部構成例を概略的に示すブロック図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る映像表示システムの概略的構成を説明するブロック図である。
【図6】映像データ処理部の内部構成例を概略的に示すブロック図である。
【図7】表示用映像保管部に保管される映像データの保管形式を概念的に示す図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係る映像表示システムの概略的構成を説明するブロック図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態に係る映像表示システムの概略的構成を説明するブロック図である。
【図10】映像データ処理部の内部構成例を概略的に示すブロック図である。
【符号の説明】
【0071】
100、100A、100B、100C … 映像表示システム
110、110A … 可搬式端末装置
112 … 映像表示部
114 … 環境照明検出部
116 … キー入力部
120 … ネットワーク
130、130A、130B、130C … サーバ
132 … 多原色映像保管部
134、134A、134B … 映像データ処理部
136 … モニタプロファイル選択部
138 … モニタプロファイル記憶部
202 … コサインコレクタ
204 … 光ファイバ
206 … スリット
208 … コリメータ・ミラー
210 … グレーティング
212 … 結像ミラー
214 … ラインセンサ
216 … 信号処理回路
302 … 色変換データ演算部
304 … モニタ色変換データ演算部
306 … 撮影特性情報分離部
308 … 色変換処理部
310 … モニタ色変換部
402、412 … LUT
404 … マトリクス演算部
414 … 色分解演算部
502 … 観察環境照明情報記憶部
504 … 表示用映像保管部
506 … 映像選択部
508 … 観察環境照明類似度判定部
802 … 観察環境照明情報設定部
902 … 適用観察環境照明選択部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して互いに接続される可搬式端末装置および映像データ送出サーバを有する映像表示システムであって、
前記可搬式端末装置は、
前記映像データ送出サーバから出力される映像データに基づく映像を表示可能な映像表示部と、
前記可搬式端末装置を取り巻く環境を照明する光である環境照明光の分光特性に関連する情報である環境照明情報を前記映像データ送出サーバに送出するための環境照明情報送出部と、
前記可搬式端末装置の種類を前記映像データ送出サーバが特定することが可能に構成される端末特定情報を前記映像データ送出サーバに送出するための端末特定情報送出部と
を有し、
前記映像データ送出サーバは、
4つ以上の原色からなる多原色映像データを保管する多原色映像保管部と、
前記映像データ送出サーバに接続しうる複数種類の可搬式端末装置それぞれが有する映像表示部の表示特性を表すモニタプロファイルを記憶するモニタプロファイル記憶部と、
前記可搬式端末装置から送出される前記環境照明情報と、前記可搬式端末装置から送出される前記端末特定情報に対応する前記モニタプロファイルとに基づいて前記多原色映像データに色変換処理を行い、当該の色変換処理後の映像データを前記可搬式端末装置に送出するように構成される映像データ処理部と
を有する
ことを特徴とする映像表示システム。
【請求項2】
前記可搬式端末装置が、前記環境照明光の分光特性を検出するための環境照明検出部をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の映像表示システム。
【請求項3】
前記環境照明検出部は予め定められたタイミングで前記環境照明光の分光特性を検出し、検出された前記分光特性に予め定められた量を超す変化があったときに前記可搬式端末装置から前記映像データ送出サーバへ新たな観察照明情報を送出するように構成されることを特徴とする請求項2に記載の映像表示システム。
【請求項4】
前記映像表示部に表示される映像を観察するユーザによって前記環境照明光情報を入力又は設定することが可能に構成される環境照明光情報入力部が前記可搬式端末装置に備えられることを特徴とする請求項1に記載の映像表示システム。
【請求項5】
前記映像データ送出サーバが、
予め想定される複数種類の所定環境照明光と複数の前記モニタプロファイルとの網羅的組み合わせに対応して予め前記色変換処理を行って得られる複数の色変換処理後映像データを保管する色変換処理後映像データ保管部と、
前記予め想定される複数種類の所定環境照明光のうち、前記可搬式端末装置から送出される環境照明情報で特定される環境照明光に最も類似する所定環境照明光を特定する類似環境照明光特定部と、
前記色変換処理後映像データ保管部中に保管される前記複数の色変換処理後映像データ中から、前記類似環境照明光特定部で特定された所定環境照明光と、前記端末特定情報との組み合わせに対応する色変換処理後映像データを選択して前記可搬式端末装置に送出する映像選択送出部と
をさらに有することを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の映像表示システム。
【請求項6】
映像データ送出サーバにネットワークを介して接続可能な可搬式端末装置であって、
前記映像データ送出サーバから出力される映像データに基づく映像を表示可能な映像表示部と、
前記可搬式端末装置を取り巻く環境を照明する光である環境照明光の分光特性に関連する情報である環境照明情報を前記映像データ送出サーバに送出するための環境照明情報送出部と、
前記可搬式端末装置の種類を前記映像データ送出サーバが特定することが可能に構成される端末特定情報を前記映像データ送出サーバに送出するための端末特定情報送出部と
を有し、
前記映像データ送出サーバに接続しうる複数種類の可搬式端末装置それぞれが有する映像表示部の表示特性を表すモニタプロファイルを記憶するために前記映像データ送出サーバ内に備えられるモニタプロファイル記憶部中から前記端末特定情報に対応するものとして取り出されたモニタプロファイルと、前記可搬式端末装置から前記映像データ送出サーバに送られた前記環境照明情報とに基づいて、前記映像データ送出サーバ中に保管される4つ以上の原色からなる多原色映像データに対して色変換処理が行われて生成され、出力される色変換処理後の映像データを前記映像データ送出サーバから入力して前記映像表示部に映像を表示可能に構成されることを特徴とする可搬式端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−288859(P2008−288859A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131646(P2007−131646)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】