高度にリン酸化された活性なヒトリソソームスルファターゼ酵素の製造およびそれの使用
本発明は、高度にリン酸化された活性なリソソームスルファターゼ酵素の組成物、それらの薬学的組成物、そのようなリソソームスルファターゼ酵素および組成物を生産ならびに精製する方法、ならびに疾患および病状(特に、リソソームスルファターゼ酵素における欠乏によって引き起こされるか、またはそれに関連付けられる、リソソーム蓄積症を含む)の診断、予防、または処置におけるそれらの使用を提供する。一実施形態において、END3相補群CHO細胞またはそれの誘導体において生産される、組換え型ヒトリソソームスルファターゼ酵素またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体が提供され、ここで、該END3相補群CHO細胞またはそれの誘導体は、組換え型ヒトスルファターゼ調節因子1(SUMF1)を発現する。
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
END3相補群CHO細胞またはそれの誘導体において生産される、組換え型ヒトリソソームスルファターゼ酵素またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体であって、ここで、該END3相補群CHO細胞またはそれの誘導体は、組換え型ヒトスルファターゼ調節因子1(SUMF1)を発現し、そしてここで、該組換え型リソソームスルファターゼ酵素またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体は、高レベルの活性化および高レベルのリン酸化を有する、組換え型ヒトリソソームスルファターゼ酵素またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体。
【請求項2】
前記組換え型リソソームスルファターゼ酵素が、アリールスルファターゼA(ARSA)、アリールスルファターゼB(ARSB)、イズロン酸−2−スルファターゼ(IDS)、スルファミダーゼ/ヘパリン−N−スルファターゼ(SGSH)、N−アセチルグルコサミン−スルファターゼ(G6S)およびN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)からなる群より選択される、請求項1に記載の組換え型ヒトリソソームスルファターゼ酵素またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体。
【請求項3】
END3相補群CHO細胞またはそれの誘導体によって生産される、組換え型ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)酵素またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体であって、ここで、該END3相補群CHO細胞またはそれの誘導体は、組換え型ヒトスルファターゼ調節因子1(SUMF1)を発現し、そしてここで、該組換え型ヒトGALNSは、高レベルの活性化および高レベルのリン酸化を有する、組換え型ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)酵素またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体。
【請求項4】
前記END3相補群CHO細胞またはそれの誘導体は、G71細胞株またはG71誘導体である、請求項1から3の何れか一項に記載の酵素。
【請求項5】
高度にリン酸化された活性な組換え型ヒトリソソームスルファターゼ酵素またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体を生産するための方法であって、該方法は:
(a)チャイニーズハムスター卵巣(CHO)に由来するEND3相補群細胞またはそれの誘導体を培養する工程;
(b)該END3相補群細胞またはそれの誘導体において、該高度にリン酸化された活性な組換え型ヒトリソソームスルファターゼ酵素またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体を発現することができる第一の哺乳動物発現ベクターを調製する工程;
(c)該END3相補群細胞またはそれの誘導体において、組換え型ヒトスルファターゼ調節因子1(SUMF1)またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体を発現することができる第二の哺乳動物発現ベクターを調製する工程;
(d)該第一のおよび第二の発現ベクターを用いて該END3相補群細胞またはそれの誘導体をトランスフェクトする工程;
(e)該高度にリン酸化された活性な組換え型ヒトリソソームスルファターゼ酵素またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体を発現する、該END3相補群細胞またはそれの誘導体のトランスフェクタントの選択およびクローニングをする工程;ならびに
(f)該高度にリン酸化された組換え型ヒトリソソームスルファターゼ酵素またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体を製造するための細胞培養の作業方法を最適化する工程、
を包含し、ここで該組換え型ヒトリソソームスルファターゼ酵素は、アリールスルファターゼA(ARSA)、アリールスルファターゼB(ARSB)、イズロン酸−2−スルファターゼ(IDS)、スルファミダーゼ/ヘパリン−N−スルファターゼ(SGSH)、N−アセチルグルコサミン−スルファターゼ(G6S)およびN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)からなる群より選択される、方法。
【請求項6】
前記第一のおよび第二の発現ベクターは、前記END3相補群細胞またはそれの誘導体中に、工程(d)において同時にトランスフェクトされる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第一のおよび第二の発現ベクターは、前記END3相補群細胞またはそれの誘導体中に、工程(d)において連続してトランスフェクトされる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記END3相補群CHO細胞またはそれの誘導体は、G71細胞株またはG71誘導体である、請求項5から7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項5から8の何れか一項に記載の方法によって生産される、高度にリン酸化された活性な組換え型ヒトリソソームスルファターゼ酵素またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体。
【請求項10】
請求項9に記載のリソソームスルファターゼ酵素またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体、および、一つもしくはそれより多い薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤または賦形剤を含む、薬学的組成物。
【請求項11】
高度にリン酸化された活性な組換え型ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)酵素またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体またはそれの改変体を生産するための方法であって、該方法は:
(a)チャイニーズハムスター卵巣(CHO)に由来するEND3相補群細胞またはそれの誘導体を培養する工程;
(b)該END3相補群細胞またはそれの誘導体に適した、該高度にリン酸化された活性な組換え型GALNSまたはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体を発現することができる第一の哺乳動物発現ベクターを調製する工程;
(c)該END3相補群細胞またはそれの誘導体に適した、組換え型ヒトスルファターゼ調節因子1(SUMF1)またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体を発現することができる第二の哺乳動物発現ベクターを調製する工程;
(d)該第一のおよび第二の発現ベクターを用いて該END3相補群細胞またはそれの誘導体をトランスフェクトする工程;
(e)該高度にリン酸化された活性な組換え型ヒトGALNSまたはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体を発現する、該END3相補群細胞またはそれの誘導体のトランスフェクタントの選択およびクローニングをする工程;ならびに
(f)該高度にリン酸化された活性な組換え型ヒトGALNSまたはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体を製造するための細胞培養の作業方法を最適化する工程、
を包含する、方法。
【請求項12】
前記第一のおよび第二の発現ベクターは、前記END3相補群細胞またはそれの誘導体中に、工程(d)において同時にトランスフェクトされる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第一のおよび第二の発現ベクターは、前記END3相補群細胞またはそれの誘導体中に、工程(d)において連続してトランスフェクトされる、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記END3相補群CHO細胞またはそれの誘導体は、G71細胞株またはG71誘導体である、請求項11から13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項11から14の何れか一項に記載の方法によって生産される、高度にリン酸化された高度に活性な組換え型ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)酵素またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体。
【請求項16】
請求項15に記載の組換え型ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)酵素またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体、および、一つもしくは薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤または賦形剤を含む、薬学的組成物。
【請求項17】
N−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)における欠乏によって引き起こされるか、またはそれに関連付けられるリソソーム蓄積症に罹患した被験体を処置するために有用である、組換え型ヒトGALNS酵素またはそれの生物学的に活性な変異体、改変体もしくは誘導体であって、ここで該GALNS酵素またはそれの生物学的に活性な変異体、改変体もしくは誘導体は:
(a)非還元条件下でSDS−PAGEにかけられた場合、Coomassie Blue染色によって決定されるとき、少なくとも約90%の純度を有し;
(b)Cα−ホルミルグリシン(FGly)への、位置53のシステイン残基の少なくとも約90%の変換を有し;かつ
(c)位置178および397のアスパラギン残基がN結合型グリコシル化され、ここで、位置178の該アスパラギン残基に付加されたオリゴマンノース鎖の少なくとも約50%がビスリン酸化される、
組換え型ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)酵素またはそれの生物学的に活性な変異体、改変体もしくは誘導体。
【請求項18】
前記リソソーム蓄積症は、ムコ多糖体症IVa型(MPS IVa)またはモルキオA症候群である、請求項17に記載のGALNS酵素。
【請求項19】
前記リソソーム蓄積症は、多発性スルファターゼ欠損症である、請求項17に記載のGALNS酵素。
【請求項20】
前記GALNS酵素は、還元条件下でSDS−PAGEにかけられた場合、Coomassie Blue染色によって決定されるとき、目に見えるタンパク質の少なくとも約75%である、約55〜60kDaの主要なバンドからなる、請求項17に記載のGALNS酵素。
【請求項21】
前記GALNS酵素は、還元条件下でSDS−PAGEにかけられた場合、Coomassie Blue染色によって決定されるとき、約55〜60kDaの単一のバンドから本質的になる、請求項17に記載のGALNS酵素。
【請求項22】
リソソームスルファターゼ酵素の欠乏を有する被験体を処置する方法であって、該方法は、該リソソームスルファターゼ酵素を必要としている該被験体に、該リソソームスルファターゼ酵素の治療上有効な量を投与することを包含し、ここで、該リソソームスルファターゼ酵素は、CHOに由来するEND3相補群細胞またはそれの誘導体によって生産される、組換え型ヒトリソソームスルファターゼ酵素またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体である、方法。
【請求項23】
前記リソソームスルファターゼ酵素欠乏は、異染性白質萎縮症(MLD)、ムコ多糖体症VI型(MPS VI)またはマロトー−ラミー症候群、ムコ多糖体症II型(MPS II)またはハンター症候群、ムコ多糖体症IIIa型(MPS IIIa)またはサンフィリポA症候群、ムコ多糖体症IIId型(MPS IIId)またはサンフィリポD症候群、およびムコ多糖体症IVa型(MPS IVa)またはモルキオA症候群からなる群より選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記リソソームスルファターゼ酵素欠乏は、MPS IVaまたはモルキオA症候群である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
一つまたはそれより多いリソソームスルファターゼ酵素における欠乏と関連付けられるリソソーム蓄積症を処置する方法であって、該方法は、該一つまたはそれより多いリソソームスルファターゼ酵素における欠乏を有する被験体に、CHOに由来するEND3相補群細胞またはそれの誘導体によって産生される、組換え型ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)酵素またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体の治療上有効な量を投与することを包含する、方法。
【請求項26】
前記リソソーム蓄積症は、多発性スルファターゼ欠損症(MSD)である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記END3相補群CHO細胞またはそれの誘導体は、G71細胞株またはG71誘導体である、請求項22から26の何れか一項に記載の方法。
【請求項28】
ムコ多糖体症IVa型(MPS IVa)もしくはモルキオA症候群、または多発性スルファターゼ欠損症(MSD)に罹患した被験体を処置する方法であって、該方法は、該被験体に、精製された、組換え型ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)酵素またはそれの生物学的に活性な変異体、改変体もしくは誘導体の治療上有効な量を投与することを包含し、ここで、該GALNSまたはそれの生物学的に活性な変異体、改変体もしくは誘導体は:
(a)非還元条件下でSDS−PAGEにかけられた場合、Coomassie Blue染色によって決定されるとき、少なくとも約90%の純度を有し;
(b)Cα−ホルミルグリシン(FGly)への、位置53のシステイン残基の少なくとも約90%の変換を有し;かつ
(c)位置178および397のアスパラギン残基がN結合型グリコシル化され、ここで、位置178の該アスパラギン残基に付加されたオリゴマンノース鎖の少なくとも約50%がビスリン酸化される、
方法。
【請求項29】
前記被験体は、MPS IVaまたはモルキオA症候群に罹患している、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記被験体は、MSDに罹患している、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記GALNS酵素は、還元条件下でSDS−PAGEにかけられた場合、Coomassie Blue染色によって決定されるとき、目に見えるタンパク質の少なくとも約75%である、約55〜60kDaの主要なバンドからなる、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記GALNS酵素は、還元条件下でSDS−PAGEにかけられた場合、Coomassie Blue染色によって決定されるとき、約55〜60kDaの単一のバンドから本質的になる、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
G71またはそれの誘導体に由来するEND3相補群CHO細胞株であって、ここで、該END3相補群CHO細胞株は:
(a)組換え型ヒトスルファターゼ調節因子1(SUMF1)のための発現ベクター;および
(b)組換え型ヒトリソソームスルファターゼ酵素のための発現ベクターを含み、ここで、該組換え型ヒトリソソームスルファターゼ酵素は、アリールスルファターゼA(ARSA)、アリールスルファターゼB(ARSB)、イズロン酸−2−スルファターゼ(IDS)、スルファミダーゼ/ヘパリン−N−スルファターゼ(SGSH)、N−アセチルグルコサミン−スルファターゼ(G6S)およびN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)からなる群より選択される、G71またはそれの誘導体に由来するEND3相補群CHO細胞株。
【請求項34】
前記END3相補群CHO細胞株は、組換え型ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)のための前記発現ベクターを含む、請求項33に記載のEND3相補群CHO細胞株。
【請求項35】
前記END3相補群CHO細胞株は、組換え型ヒトGALNSを発現および分泌する、請求項34に記載のEND3相補群CHO細胞株。
【請求項36】
前記END3相補群CHO細胞株は、クローン4、クローン5、クローンC6、クローンC2、クローンC5、クローンC7、クローンC10、クローンC11およびクローンC30からなる群より選択される、請求項34に記載のEND3相補群CHO細胞株。
【請求項37】
前記END3相補群CHO細胞株は、クローンC2である、請求項34に記載のEND3相補群CHO細胞株。
【請求項38】
前記END3相補群CHO細胞株は、懸濁物中での増殖に適合させられている、請求項34に記載のEND3相補群CHO細胞株。
【請求項39】
天然の基質を分解する、組換え型ヒトリソソーム酵素の活性を測定するための方法であって、該方法は:
(a)該リソソーム酵素に対する天然の基質が蓄積する条件下で、該リソソーム酵素が不足している、単離されたヒト細胞を培養すること;
(b)該細胞を該リソソーム酵素と接触させること;
(c)該細胞を溶解すること;
(d)該細胞溶解産物に、(i)天然の基質に対し特異的であり、かつ(ii)該天然の基質から低分子オリゴ糖を切断する酵素を添加すること;
(e)検出可能部分で該低分子オリゴ糖を標識すること;
(f)該標識された低分子オリゴ糖を必要に応じて分離すること;
(g)該標識された低分子オリゴ糖を検出すること;および
(h)(i)該リソソーム酵素と接触させられた細胞由来の標識された低分子オリゴ糖の量と(ii)該リソソーム酵素と接触させられていない細胞由来の標識された低分子オリゴ糖の量とを比較することによって、天然の基質を分解する該リソソーム酵素の活性を決定すること、
を包含し、ここで、(h)(ii)と比較したときの(h)(i)における減少は、天然の基質を分解する該リソソーム酵素の活性を示す、方法。
【請求項40】
前記リソソーム酵素は、アリールスルファターゼB(ARSB)、イズロン酸−2−スルファターゼ(IDS)、スルファミダーゼ/ヘパリン−N−スルファターゼ(SGSH)、N−アセチルグルコサミン−スルファターゼ(G6S)およびN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)からなる群より選択されるリソソームスルファターゼ酵素である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記リソソームスルファターゼ酵素は、GALNSである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記リソソーム酵素は、α−L−イズロニダーゼ(IDU)である、請求項39に記載の方法。
【請求項1】
END3相補群CHO細胞またはそれの誘導体において生産される、組換え型ヒトリソソームスルファターゼ酵素またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体であって、ここで、該END3相補群CHO細胞またはそれの誘導体は、組換え型ヒトスルファターゼ調節因子1(SUMF1)を発現し、そしてここで、該組換え型リソソームスルファターゼ酵素またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体は、高レベルの活性化および高レベルのリン酸化を有する、組換え型ヒトリソソームスルファターゼ酵素またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体。
【請求項2】
前記組換え型リソソームスルファターゼ酵素が、アリールスルファターゼA(ARSA)、アリールスルファターゼB(ARSB)、イズロン酸−2−スルファターゼ(IDS)、スルファミダーゼ/ヘパリン−N−スルファターゼ(SGSH)、N−アセチルグルコサミン−スルファターゼ(G6S)およびN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)からなる群より選択される、請求項1に記載の組換え型ヒトリソソームスルファターゼ酵素またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体。
【請求項3】
END3相補群CHO細胞またはそれの誘導体によって生産される、組換え型ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)酵素またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体であって、ここで、該END3相補群CHO細胞またはそれの誘導体は、組換え型ヒトスルファターゼ調節因子1(SUMF1)を発現し、そしてここで、該組換え型ヒトGALNSは、高レベルの活性化および高レベルのリン酸化を有する、組換え型ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)酵素またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体。
【請求項4】
前記END3相補群CHO細胞またはそれの誘導体は、G71細胞株またはG71誘導体である、請求項1から3の何れか一項に記載の酵素。
【請求項5】
高度にリン酸化された活性な組換え型ヒトリソソームスルファターゼ酵素またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体を生産するための方法であって、該方法は:
(a)チャイニーズハムスター卵巣(CHO)に由来するEND3相補群細胞またはそれの誘導体を培養する工程;
(b)該END3相補群細胞またはそれの誘導体において、該高度にリン酸化された活性な組換え型ヒトリソソームスルファターゼ酵素またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体を発現することができる第一の哺乳動物発現ベクターを調製する工程;
(c)該END3相補群細胞またはそれの誘導体において、組換え型ヒトスルファターゼ調節因子1(SUMF1)またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体を発現することができる第二の哺乳動物発現ベクターを調製する工程;
(d)該第一のおよび第二の発現ベクターを用いて該END3相補群細胞またはそれの誘導体をトランスフェクトする工程;
(e)該高度にリン酸化された活性な組換え型ヒトリソソームスルファターゼ酵素またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体を発現する、該END3相補群細胞またはそれの誘導体のトランスフェクタントの選択およびクローニングをする工程;ならびに
(f)該高度にリン酸化された組換え型ヒトリソソームスルファターゼ酵素またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体を製造するための細胞培養の作業方法を最適化する工程、
を包含し、ここで該組換え型ヒトリソソームスルファターゼ酵素は、アリールスルファターゼA(ARSA)、アリールスルファターゼB(ARSB)、イズロン酸−2−スルファターゼ(IDS)、スルファミダーゼ/ヘパリン−N−スルファターゼ(SGSH)、N−アセチルグルコサミン−スルファターゼ(G6S)およびN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)からなる群より選択される、方法。
【請求項6】
前記第一のおよび第二の発現ベクターは、前記END3相補群細胞またはそれの誘導体中に、工程(d)において同時にトランスフェクトされる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第一のおよび第二の発現ベクターは、前記END3相補群細胞またはそれの誘導体中に、工程(d)において連続してトランスフェクトされる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記END3相補群CHO細胞またはそれの誘導体は、G71細胞株またはG71誘導体である、請求項5から7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項5から8の何れか一項に記載の方法によって生産される、高度にリン酸化された活性な組換え型ヒトリソソームスルファターゼ酵素またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体。
【請求項10】
請求項9に記載のリソソームスルファターゼ酵素またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体、および、一つもしくはそれより多い薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤または賦形剤を含む、薬学的組成物。
【請求項11】
高度にリン酸化された活性な組換え型ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)酵素またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体またはそれの改変体を生産するための方法であって、該方法は:
(a)チャイニーズハムスター卵巣(CHO)に由来するEND3相補群細胞またはそれの誘導体を培養する工程;
(b)該END3相補群細胞またはそれの誘導体に適した、該高度にリン酸化された活性な組換え型GALNSまたはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体を発現することができる第一の哺乳動物発現ベクターを調製する工程;
(c)該END3相補群細胞またはそれの誘導体に適した、組換え型ヒトスルファターゼ調節因子1(SUMF1)またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体を発現することができる第二の哺乳動物発現ベクターを調製する工程;
(d)該第一のおよび第二の発現ベクターを用いて該END3相補群細胞またはそれの誘導体をトランスフェクトする工程;
(e)該高度にリン酸化された活性な組換え型ヒトGALNSまたはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体を発現する、該END3相補群細胞またはそれの誘導体のトランスフェクタントの選択およびクローニングをする工程;ならびに
(f)該高度にリン酸化された活性な組換え型ヒトGALNSまたはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体を製造するための細胞培養の作業方法を最適化する工程、
を包含する、方法。
【請求項12】
前記第一のおよび第二の発現ベクターは、前記END3相補群細胞またはそれの誘導体中に、工程(d)において同時にトランスフェクトされる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第一のおよび第二の発現ベクターは、前記END3相補群細胞またはそれの誘導体中に、工程(d)において連続してトランスフェクトされる、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記END3相補群CHO細胞またはそれの誘導体は、G71細胞株またはG71誘導体である、請求項11から13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項11から14の何れか一項に記載の方法によって生産される、高度にリン酸化された高度に活性な組換え型ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)酵素またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体。
【請求項16】
請求項15に記載の組換え型ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)酵素またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体、および、一つもしくは薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤または賦形剤を含む、薬学的組成物。
【請求項17】
N−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)における欠乏によって引き起こされるか、またはそれに関連付けられるリソソーム蓄積症に罹患した被験体を処置するために有用である、組換え型ヒトGALNS酵素またはそれの生物学的に活性な変異体、改変体もしくは誘導体であって、ここで該GALNS酵素またはそれの生物学的に活性な変異体、改変体もしくは誘導体は:
(a)非還元条件下でSDS−PAGEにかけられた場合、Coomassie Blue染色によって決定されるとき、少なくとも約90%の純度を有し;
(b)Cα−ホルミルグリシン(FGly)への、位置53のシステイン残基の少なくとも約90%の変換を有し;かつ
(c)位置178および397のアスパラギン残基がN結合型グリコシル化され、ここで、位置178の該アスパラギン残基に付加されたオリゴマンノース鎖の少なくとも約50%がビスリン酸化される、
組換え型ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)酵素またはそれの生物学的に活性な変異体、改変体もしくは誘導体。
【請求項18】
前記リソソーム蓄積症は、ムコ多糖体症IVa型(MPS IVa)またはモルキオA症候群である、請求項17に記載のGALNS酵素。
【請求項19】
前記リソソーム蓄積症は、多発性スルファターゼ欠損症である、請求項17に記載のGALNS酵素。
【請求項20】
前記GALNS酵素は、還元条件下でSDS−PAGEにかけられた場合、Coomassie Blue染色によって決定されるとき、目に見えるタンパク質の少なくとも約75%である、約55〜60kDaの主要なバンドからなる、請求項17に記載のGALNS酵素。
【請求項21】
前記GALNS酵素は、還元条件下でSDS−PAGEにかけられた場合、Coomassie Blue染色によって決定されるとき、約55〜60kDaの単一のバンドから本質的になる、請求項17に記載のGALNS酵素。
【請求項22】
リソソームスルファターゼ酵素の欠乏を有する被験体を処置する方法であって、該方法は、該リソソームスルファターゼ酵素を必要としている該被験体に、該リソソームスルファターゼ酵素の治療上有効な量を投与することを包含し、ここで、該リソソームスルファターゼ酵素は、CHOに由来するEND3相補群細胞またはそれの誘導体によって生産される、組換え型ヒトリソソームスルファターゼ酵素またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体である、方法。
【請求項23】
前記リソソームスルファターゼ酵素欠乏は、異染性白質萎縮症(MLD)、ムコ多糖体症VI型(MPS VI)またはマロトー−ラミー症候群、ムコ多糖体症II型(MPS II)またはハンター症候群、ムコ多糖体症IIIa型(MPS IIIa)またはサンフィリポA症候群、ムコ多糖体症IIId型(MPS IIId)またはサンフィリポD症候群、およびムコ多糖体症IVa型(MPS IVa)またはモルキオA症候群からなる群より選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記リソソームスルファターゼ酵素欠乏は、MPS IVaまたはモルキオA症候群である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
一つまたはそれより多いリソソームスルファターゼ酵素における欠乏と関連付けられるリソソーム蓄積症を処置する方法であって、該方法は、該一つまたはそれより多いリソソームスルファターゼ酵素における欠乏を有する被験体に、CHOに由来するEND3相補群細胞またはそれの誘導体によって産生される、組換え型ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)酵素またはそれの生物学的に活性な断片、変異体、改変体もしくは誘導体の治療上有効な量を投与することを包含する、方法。
【請求項26】
前記リソソーム蓄積症は、多発性スルファターゼ欠損症(MSD)である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記END3相補群CHO細胞またはそれの誘導体は、G71細胞株またはG71誘導体である、請求項22から26の何れか一項に記載の方法。
【請求項28】
ムコ多糖体症IVa型(MPS IVa)もしくはモルキオA症候群、または多発性スルファターゼ欠損症(MSD)に罹患した被験体を処置する方法であって、該方法は、該被験体に、精製された、組換え型ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)酵素またはそれの生物学的に活性な変異体、改変体もしくは誘導体の治療上有効な量を投与することを包含し、ここで、該GALNSまたはそれの生物学的に活性な変異体、改変体もしくは誘導体は:
(a)非還元条件下でSDS−PAGEにかけられた場合、Coomassie Blue染色によって決定されるとき、少なくとも約90%の純度を有し;
(b)Cα−ホルミルグリシン(FGly)への、位置53のシステイン残基の少なくとも約90%の変換を有し;かつ
(c)位置178および397のアスパラギン残基がN結合型グリコシル化され、ここで、位置178の該アスパラギン残基に付加されたオリゴマンノース鎖の少なくとも約50%がビスリン酸化される、
方法。
【請求項29】
前記被験体は、MPS IVaまたはモルキオA症候群に罹患している、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記被験体は、MSDに罹患している、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記GALNS酵素は、還元条件下でSDS−PAGEにかけられた場合、Coomassie Blue染色によって決定されるとき、目に見えるタンパク質の少なくとも約75%である、約55〜60kDaの主要なバンドからなる、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記GALNS酵素は、還元条件下でSDS−PAGEにかけられた場合、Coomassie Blue染色によって決定されるとき、約55〜60kDaの単一のバンドから本質的になる、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
G71またはそれの誘導体に由来するEND3相補群CHO細胞株であって、ここで、該END3相補群CHO細胞株は:
(a)組換え型ヒトスルファターゼ調節因子1(SUMF1)のための発現ベクター;および
(b)組換え型ヒトリソソームスルファターゼ酵素のための発現ベクターを含み、ここで、該組換え型ヒトリソソームスルファターゼ酵素は、アリールスルファターゼA(ARSA)、アリールスルファターゼB(ARSB)、イズロン酸−2−スルファターゼ(IDS)、スルファミダーゼ/ヘパリン−N−スルファターゼ(SGSH)、N−アセチルグルコサミン−スルファターゼ(G6S)およびN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)からなる群より選択される、G71またはそれの誘導体に由来するEND3相補群CHO細胞株。
【請求項34】
前記END3相補群CHO細胞株は、組換え型ヒトN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)のための前記発現ベクターを含む、請求項33に記載のEND3相補群CHO細胞株。
【請求項35】
前記END3相補群CHO細胞株は、組換え型ヒトGALNSを発現および分泌する、請求項34に記載のEND3相補群CHO細胞株。
【請求項36】
前記END3相補群CHO細胞株は、クローン4、クローン5、クローンC6、クローンC2、クローンC5、クローンC7、クローンC10、クローンC11およびクローンC30からなる群より選択される、請求項34に記載のEND3相補群CHO細胞株。
【請求項37】
前記END3相補群CHO細胞株は、クローンC2である、請求項34に記載のEND3相補群CHO細胞株。
【請求項38】
前記END3相補群CHO細胞株は、懸濁物中での増殖に適合させられている、請求項34に記載のEND3相補群CHO細胞株。
【請求項39】
天然の基質を分解する、組換え型ヒトリソソーム酵素の活性を測定するための方法であって、該方法は:
(a)該リソソーム酵素に対する天然の基質が蓄積する条件下で、該リソソーム酵素が不足している、単離されたヒト細胞を培養すること;
(b)該細胞を該リソソーム酵素と接触させること;
(c)該細胞を溶解すること;
(d)該細胞溶解産物に、(i)天然の基質に対し特異的であり、かつ(ii)該天然の基質から低分子オリゴ糖を切断する酵素を添加すること;
(e)検出可能部分で該低分子オリゴ糖を標識すること;
(f)該標識された低分子オリゴ糖を必要に応じて分離すること;
(g)該標識された低分子オリゴ糖を検出すること;および
(h)(i)該リソソーム酵素と接触させられた細胞由来の標識された低分子オリゴ糖の量と(ii)該リソソーム酵素と接触させられていない細胞由来の標識された低分子オリゴ糖の量とを比較することによって、天然の基質を分解する該リソソーム酵素の活性を決定すること、
を包含し、ここで、(h)(ii)と比較したときの(h)(i)における減少は、天然の基質を分解する該リソソーム酵素の活性を示す、方法。
【請求項40】
前記リソソーム酵素は、アリールスルファターゼB(ARSB)、イズロン酸−2−スルファターゼ(IDS)、スルファミダーゼ/ヘパリン−N−スルファターゼ(SGSH)、N−アセチルグルコサミン−スルファターゼ(G6S)およびN−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ(GALNS)からなる群より選択されるリソソームスルファターゼ酵素である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記リソソームスルファターゼ酵素は、GALNSである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記リソソーム酵素は、α−L−イズロニダーゼ(IDU)である、請求項39に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2011−509674(P2011−509674A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−543278(P2010−543278)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/031276
【国際公開番号】WO2009/091994
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(506136483)バイオマリン ファーマシューティカル インコーポレイテッド (18)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/031276
【国際公開番号】WO2009/091994
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(506136483)バイオマリン ファーマシューティカル インコーポレイテッド (18)
【Fターム(参考)】
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