説明

高度に架橋した耐酸化性超高分子量ポリエチレン

本発明は、高度架橋されていると共に、改善された耐酸化性を持つUHMWPEおよびその製造方法に関する。本発明のUHMWPE材料は、成形前に抗酸化化合物又は遊離基捕捉剤と混合される。添加物質含有のUHMWPEを成形し、ガンマ線又は電子線で照射すると、改善された耐摩耗性と耐酸化性を示す。このような材料は、関節置換インプラントの製造分野に特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
超高分子量ポリエチレン(以下、UHMWPE)は、John Charnleyにより1960年代初めに導入されて以来、人工関節全置換において軸受材料として最も一般的に使用されている(S.Kurtz編集「The UHMWPE Handbook」Elsevier 2004年)。それ以後、この材料が高い強靭性と良好な機械的性質を持つことから、人工間接全置換において、多様な応用製品が開発されている。
【0002】
「従来の」UHMWPEは、優れた臨床結果を示しているが、移植システムの耐用年限は、UHMWPEの軸受表面から出る摩耗粒子によって制限されている(Willert H.G., Bertram H., Buchhorn G.H.著, Clin Orthp 258, 95, 1990年)。このような摩耗粒子により、人体に溶骨性の反応が起こり局部での吸収の結果、人工関節の無菌性弛緩に至ることがある。
【0003】
従来のガンマ線滅菌したUHMWPEにおける2番目の問題は、棚エージング中の酸化による劣化である。ガンマ線のエネルギーは、ポリエチレン鎖の炭素―炭素結合、炭素―水素結合を十分に破壊して遊離基を生成させる。これらの遊離基は、部分的に再結合するが、一部は長期間存在し、インプラントを包む包装中に存在し或いは拡散している酸素と反応してしまう(Costa L., Jacobson K., Bracco P., Brach del Prever.E.M著, Biomaterials 23, 1613, 2002年)。酸化劣化反応により材料が脆化するので、材料の機械的な性質も劣化し、インプラントの亀裂をもたらすことがある(Kurtz S.M., Hozack W., Marcolongo M., Turner J., Rimnac C., Edidin A.著, J Arthroplasty 18, 68-78頁,2003年)。
【0004】
1970年代、高度架橋したUHMWPEは、材料の耐摩耗性を改善する目的で導入された(Oonishi H., Kadoya Y., Masuda S., Journal of Biomedical Materials Research, 58, 167, 2001年、 Grobbelaar C.J.,du Plessis T.A., Marais F.著, The Journal of Bone and Joint Surgery, 60-B, 370, 1978年)。
【0005】
UHMWPE材料は、材料の架橋結合の進行を促進して耐摩耗性を増加させるために高い照射線量(100 Mrad以下であり, ガンマ線滅菌の2.5Mrad以下と対照的である)でガンマ線照射される。しかし、ポリエチレン鎖の遊離基の量は、減少されず或いは部分に減少されるだけなので、このような材料は棚エージング中の劣化や生体内での酸化劣化がおこりやすい。
【0006】
最近では、遊離基の数を減少または消滅するために、照射架橋工程に熱処理がなされる。このような処理は3つの方法に分けることができる。
【0007】
一つは、融点未満の温度で照射した後、融点未満の温度でアニーリングする(US5414049,EP0722973)処理である。この方法の主な欠点として、UHMWPE鎖は依然として残留遊離基を含んでおり、酸化分解を引き起こすことである(Wannomae K.K., Bhattacharyya S., Freiberg A., Estok D., Harris W.H., Muratoglu O.J., Arthroplasty, 21, 1005,2006年)。
【0008】
二つは、融点未満の温度で照射後、融点を超える温度で再溶融する処理である(US6228900)。この方法の主な欠点は、アニーリング処理と比較すると、機械的特性が再溶融処理により劣化することである(Ries M.D., Pruitt L.著, Clinical Orthopaedics and Related Research, 440, 149, 2005年)。
【0009】
三つは、溶融中の照射である(US5879400, Dijkstra D.J., PhD Thesis, University of Groningen, 1988年)。この方法の欠点は結晶化がかなり減少することと、それにより機械的性能もかなり落ちることである。
【0010】
更なる処理として、化学的な酸化防止剤を医療グレードのUHMWPEに加えて、良好な酸化安定性と十分な機械的特性を伴う耐摩耗材料を作る方法がある。一般的な酸化防止剤の大半は生体適合性がなく、あっても低いため、人体に存在し或いは栄養製品に存在する化学物質が模索されていた。1982年にDolezelとAdamirovaは、生体内での生物学的劣化に対する医療インプラント用のポリオレフィンの安定性を向上させる方法を開示していた(CZ221404)。彼らは、アルファ、ベータ、ガンマ、又はデルタ・トコフェロール(ビタミンE)、或いはこれらの混合物をポリエチレン樹脂に添加して得られた混合物を処理していた。
【0011】
ビタミンEの他に、生物学的に無害な別の種類の物質も、ポリエチレンの酸化安定剤として添加されていた。HahnはUHMWPEにカロテノイド類(例、βカロチン)を加えて、安定な耐酸化性医療用インプラントを製造することを記載している(US 5827904)。しかし、照射架橋されたβカロチン含有製品の摩耗及び酸化特性は今日まで研究されてない。
【0012】
近年、多数の実験グループは、材料の耐摩耗性を改善するために、種々の処理方法を確立し、ビタミンEの添加と照射架橋の処理を組み合わせている(WO2005/074619)。多数の実験者は、UHMWPE粉末の硬化に先立ちビタミンEを添加している(JP11239611, US6277390, US6448315, WO0180778)。他の実験者は、液体のビタミンEを機械加工製品に拡散しており、時々高い温度を用いることが多い(CA256129, WO2004064618, WO2005110276)。
【0013】
このような技術の第一の欠点は、実際の架橋処理時における添加ビタミンEの遊離基吸収特性のために、非安定化UHMWPEと比較すると、低い架橋密度の材料を製造することである(耐摩耗性が低い製品となる)。WO0180778の方法の欠点として、インプラントは、ビタミンEを含有するプリフォームから機械加工されて包装され、その後、比較的高い照射線量(4Mradを超える)で照射されてインプラントの密度が増加され、インプラントの寸法安定性に悪い影響を与えてしまう。
【0014】
さらに、包装材料は、高い照射線量を浴びており、長期間での機械的又はバリア特性を損ねるかもしれない。よって、好ましくは、プリフォームのブロック又はロッドが高照射線量で照射された後、インプラントが高い精度で加工され、最後に包装される。また、UHMWPE粉末と液状の高粘度ビタミンEとで均一な混合物を製造することは困難である。
【0015】
上記第二の方法は多数の難点がある。UHMWPE製品を拡散律速して微添加するので、ビタミンEレベルの深さは制御されないままであり、不均一でその空間的次元に限られている。実際の微添加処理(上昇した温度で処理される)後のアニーリング処理により、部分的に濃度勾配の問題を解決するが、最終製品のビタミンEの最終含有量は不明のままである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
より高度に架橋されたUHNWPE材料に関する上記の問題を鑑みて、本発明の目的の一つは、通常に伴う酸化特性の増加問題が回避でき、改善され高度に架橋されたUHMPWE材料を提供する。このような材料を製造する方法は、クレーム1により提示されており、クレーム21に記載されているように、UHMWPEと添加剤との均一な混合物を含み高度に架橋された材料を製造することができる。特に、この方法は、人工エージング後の酸化指数が通常のガンマ線滅菌されたUHMWPE標準材料の酸化指数に比べ減少している材料を製造することができる。このようなガンマ線滅菌されたUHMWPE標準材料は、典型的にインプラント手術の関節置換の医療分野において使用されている。
【0017】
クレーム1の方法は、UHMWPE粉末に、主に抗酸化物質又は遊離基捕捉剤といった添加剤を多量に添加するステップを含んでいる。このような混合物は、プリフォームを製造するために、次に、UHMWPE粉末の融点を超える温度で成形される。プリフォームは、成形直後に、2Mradから20Mradの照射線量のガンマ線又は電子線で照射される。この照射により、UHMWPEのポリマー間の架橋数が増加し、それにより最終製品の耐摩耗性が増加する。成形前にUHMWPEに添加された添加剤により、この方法で製造された材料の酸化指数は、ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の酸化指数以下である。好ましくは、酸化指数を改善するために、照射されたプリフォーム材料の加熱処理を含まず、むしろ添加物質の存在により酸化指数を改善する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のUHMWPE材料を製造する方法は、UHMWPEのプリフォームを製造する標準的な方法にほぼ沿ったものである。用語「プリフォーム」は、本願明細書全文にわたって使用されており、UHMWPE材料の固まったブロック、シート、ロッドを意味し、特に、その後さらに加工された結果、最終製品が得られるものである。プリフォームから公知の標準的な方法で最終製品を製造することができるが、最も一般的には、プリフォームの不要な部分を排除するか機械加工することにより最終形状の製品が得られる。このようにプリフォームとは、固められたUHMWPE材料の多様な一般的な形を網羅する用語であり、まず単純な四角いブロックが考えられる。このプリフォームは、ISO 5834-2規格に記載された応力解除のアニーリング処理を受けてもよい。
【0019】
本発明によるUHMWPE材料の製造は、所望の量の添加物質をUHMWPE粉末と混合させることから始まる。後述する例では、UHMWPE粉末はTicona GUR(登録商標)1020医療グレードのUHMWPEである。このような粉末は公知であり、流通している商品を購入可能である。もちろん、その他のUHMWPE粉末も使用できる(例えば、Ticona GUR(登録商標)1050, DSM UH210, Basell 1900,何れも高純度のUHMWPE粉末)。好ましくは、UHMWPE粉末と混合する添加物質は、酸化防止物質または遊離基捕捉剤である。また、添加物質とUHMWPE粉末の混合の処理中に、完全に均一状の混合物を得ることが望ましい。明らかに、均一の初期混合物が使用されると、最終のUHMWPEプリフォーム全体にわたり、添加物質が均等に分布することになる。
【0020】
添加物質とUHMWPEを混合した後、混合物は、UHMWPEの融点を超える温度でプリフォームに成形される。この段階では、温度は成形処理に特に重要ではなく、UHMWPE粉末の融点を超えていれば十分である。従来から知られているように、温度が高いと、より急速に材料がプリフォームに成形される。
【0021】
一般的には、添加物質とUHMWPE粉末は、UHMWPE粉末の融点を超える温度において成形されるが、温度は添加物質の分解温度未満であることが好ましい。明らかに、温度はほとんどの化合物に影響し、同じことが抗酸化物質や遊離基捕捉剤にもあてはまる。添加物質の分解温度より低い温度に成形処理の温度を維持することは必須ではないが好ましく、それにより改善された最終製品が得られる。本発明における一つの形態によると、UHMWPE粉末の成形はアルゴン又は窒素といった不活性雰囲気下でなされる。
【0022】
従来技術として知られているように、UHMWPEプリフォームにガンマ線又は電子線を照射すると、UHMWPEポリマー間の架橋密度を増加する。材料の架橋密度の測定に相当する測定は、架橋結合間の分子量の測定がある。明らかに、UHMWPEポリマー間の架橋密度が高いほど、架橋結合間の分子量が低くなる。その反対も同様で、交差結合密度が減少すると交差結合間の分子量が増加する。ガンマ線と電子線照射は2Mradから20Mradの照射線量が好ましく、照射線量は要求されるUHMWPE材料の最終特性に合わせて選定される。照射線量を変更すると架橋結合間の分子量が変わるので、放射線量は所望の最終製品に基づき選定される。
【0023】
この処理において、交差結合間の分子量が減少したUHMWPEプリフォームが製造される。このように分子量が減少していると、改善された摩耗特性を持つ材料であることは従来技術で知られている。架橋結合の増加により更に最終製品の耐摩耗性が増加する。これは、個々のポリマーが周囲のポリマーとより実質的に結合するからである。しかし、従来技術で知られているように、UHMWPE材料の架橋数の増加は、遊離基の生成の増加を伴う傾向がある。明らかに、ガンマ線又は電子線の照射により架橋結合を促進した結果、遊離基の生成をもたらしている。
【0024】
UHMWPEプリフォーム内で遊離基が生成されることは普通好ましくない。一般的には遊離基濃度の増加は、UHMWPE材料が長期間にわたり酸素にさらされるとき、或いは、ASTM F2003に準拠する加速エージングの条件においてUHMWPE材料の酸化が増進される時に起こる。これは材料内に存在する遊離基が、プリフォームの周囲に存在する酸素と、より容易に反応する結果であり、材料の最終特性に望ましくない劣化を起こす。
【0025】
対照的に、ガンマ線又は電子線照射の結果、本発明の材料は、上記の酸化の増加がなく、酸化による悪影響を受けていない。つまり、添加物質によりUHMWPEプリフォームの酸化を劇的に減少させている。また、ASTM F 2003に規定されているように、酸素ボンベにて5atmの酸素圧で70℃、14日間にわたり人工エージングの処理を受けた後、本発明のUHMWPEプリフォームの酸化指数は、確かに通常のガンマ線滅菌された標準UHMWPE試料以下である。上記試料は、プリフォームとしてのバルク形態であり、或いはインプラントに成形されている。
【0026】
ガンマ線滅菌された標準UHMWPE試料は、本願発明で比較するための標準的な試料としている。この標準試料は上記と同じUHMWPE粉末より製造したものであるが、添加物質を含まず、高い照射線量でのガンマ線又は電子線の照射を受けていない。その照射線量は「UHMWPE Handbook」(S.Kurtz編集 Elsevier Academic press,2004年、38頁)に記載されているように2.5〜4.5Mradの範囲に制限されている。UHMWPEをその融点を超える温度で成形して硬化した後、材料はガンマ線照射により滅菌される。通常、この滅菌照射処理は約3Mradの放射量である。また、「UHMWPE Handbook」に記載のとおり、UHMWPE試料をガンマ線照射の前に不活性雰囲気下で包装することが可能である(S.Kurtz編集 Elsevier Academic press, 2004年、38頁)。このような滅菌化の処理は、使用前に滅菌する必要がある人体内へのインプラントの使用目的の試料に行われる。さらに、上記から明らかなように、ガンマ線滅菌された試料は通常は、滅菌処理の前に所望のインプラントの形に成形される。インプラント形状への成形は、材料の関連特性に対して、特に酸化指数に対して、特に重要な影響を及ぼさない。
【0027】
この明細書の後部に記載されている比較実験結果に、本発明材料の複数の実験も記載されている。さらに、本発明の例は、製造過程の各段階における本発明材料の特性を詳細に示している。上記比較例の試料は、αトコフェノール、クルクミン、ナリンゲニンといった添加物質を含まない。これらの添加物質は、それぞれ抗酸化物質と考えられており、人体内や、標準的な栄養物に見られる自然の抗酸化物質である。
【0028】
実験例4のデータ、特に表4では、添加物質の有無や照射線量が異なる多様な試料の架橋結合間の分子量Mcの比較が示されており、ガンマ線滅菌されたUHMWPE試料と比較できる。ここですぐに判ることは、試料を照射する処理により、表4のように、7Mrad又は14Mradの照射線量で架橋結合間の分子量がかなり減少する。明らかに、この架橋結合間の分子量の減少は、照射の結果によるもので、耐摩耗性の増加に関係する架橋密度の増加を示している。本願の発明による材料は、標準のガンマ線滅菌された標準試料(PE Steri)と比較してかなり改善された耐摩耗性をもつ。
【0029】
表4の照射線量は7Mradと14Mradだけの場合であるが、広範囲の照射線量において、同様な架橋密度の増加傾向がかなり明確である。一般的な傾向では、照射線量の増加は、架橋密度の増加と架橋結合間の分子量の減少をもたらし、その結果、最終材料の摩耗特性が改善される。このように、この例から、本発明の材料は標準UHMWPE材料よりもかなり高い耐摩耗性があることがわかる。改善された耐摩耗性を持つことから、本発明の材料は、例えば、膝、臀部、肩、足首、手首、つま先、又は指の関節全置換用の人体のインプラントとして利用すると非常に弾性があると予想される。
【0030】
実験例3では、実験例4と同じ材料の人工的エージング後の最高酸化指数が示されている。この人工エージングは、上述のように行われる。カンマ線殺菌後のUHMWPE試料の最大酸化指数は、比較例のUHMWPEプリフォームの最大酸化指数と同等であり、或いはそれ以下であることが明確に示されている。比較例のUHMWPEプリフォームは、高照射線量のガンマ線又は電子線の照射処理が行われているが、本発明の添加物質の添加が行われていない。すなわち、試料PE16とPE23は、本発明材料の記載と同様に処理されているが、成形処理の前に添加物質が混入されていない。これらの材料は、電子線又はガンマ線によって処理されており、最大酸化指数は表3に示す通りである。明らかに、7Mrad又は14Mradで照射され添加物質を含まない試料は、表4に示すように高い耐摩耗性をもっているが、照射線量の増加により、酸化指数も増加している。しかし、上述したように、酸化指数の増加が好ましくないことである。なぜなら、保存中又はインプラントとして使用中のUHMWPEプリフォームが、より酸化しやすいからであり、材料の脆化とインプラントの摩耗や疲労破損の増加といった重大な問題につながるからである。
【0031】
4つの実験例では、プリフォームの成形に先立ちUHMWPE粉末に添加物質が添加され、αトコフェロール、クルクミンとナリンゲニンにつき、エージング後の酸化指数はかなり減少されている。実は、人工エージング後の酸化指数は、ガンマ線滅菌された試料の約1/5以下である。これは非常に重要な結果を意味しており、即ち、本発明によるUHMWPE材料は、標準ガンマ線滅菌されたUHMWPEに比較するとかなり改善された摩耗特性を有すると共に、貯蔵時と使用時にずっと良好な耐酸化性を持っている。上記二つの特性は、共にインプラント部品の製造にかなり有利となる。すなわち、インプラント部品の使用前の保存期間が明確に改善されているだけでなく、使用中の酸化特性も改善されており、使用中の摩耗特性とも相乗してインプラントの寿命長期化につながっている。
【0032】
材料の多様な機械的特性が表5の実験例5に示されている。この表からわかるように、本発明材料の降伏応力、引張力、破断点伸びと破壊靭性は、添加物質を含まない標準材料と比較されている。この実験例とその結果によると、少量の添加物質を加えた場合、添加物質を含むUHMWPE材料の最終的な機械特性には実質的に不利な影響を与えていない。このように、本発明の材料は、酸化特性において添加物質を含まない材料と比較して改善されていることだけに止まらず、添加物質を加えても最終的機械特性には実質的な影響がないことを示している。よって、この材料はインプラントとして使用される時に、その統合された品質を維持しつつインプラントとして使用できるという大きな効果を持つ。
【0033】
実験例5を示す表5と実験例1を示す表1のように、材料の処理温度は170℃又は210℃である。実験例全般に使用されているこれらの温度値は、UHMWPEの溶融点を超える温度であって、粉末をプリフォームに成形することができ、しかも純粋な添加物質の分解温度より低く設定されている。これらの温度は単なる例にすぎず、UHMWPE粉末と添加物質の成形中の温度範囲を限定するものではない。確かに、より低温でより長時間の成形処理や、より高温でより短時間のプリフォームの製造も考えられる。また、純粋な添加物質の分解温度より低く温度を維持することが望ましいが、成形処理において分解温度を超える温度になったとしても、添加物質を含むUHMWPEプリフォームは耐酸化性において大幅に改善されている。
【0034】
さらに、上記5つの比較実験で添加剤としての物質は、添加物質の選択として特に限定しているわけではない。広範囲の抗酸化物質や遊離基捕捉剤から選択することも十分可能である。好ましくは、これらの抗酸化物質は水溶性ではなく、子牛血清に可溶性でなく、親油性および生体適合性があり、人間の栄養物に存在する一般的な自然の抗酸化物質である。さらに、抗酸化物質の前駆物質を形成し人体内で抗酸化物質に変換可能な物質も使用可能である。
【0035】
上記の条件に当てはまる適切な物質は、カロテノイド類又はフラボノイド類から選択される。カロテノイド類としては、βカロチンとリコペンであり、フラボノイド類としてはナリンゲニン、ヘスペリチンとルテオリンである。さらに、添加物質として適切な化合物は、プロピルガラート、オクチルガラート、ドデシルガラート、メラトニン、オイゲノール、及びコエンザイムQ10である。特定なデータが比較例1から5に記載されていないが、上記の化合物は全て活性抗酸化物質であり、本発明のUHWMPE材料の添加物質として適切である。
【0036】
上述したように、本願発明によるUHMWPE材料の製造方法は、優れた耐酸化性を持つ耐摩耗性UHMWPEを提供するのに適している。本発明の材料とその製造方法における他の利点は、照射したプリフォームに対し特定のアニーリング処理をせずに、材料の改善された耐酸化性が達成されていることである。すなわち、添加物質が望ましい性質をもたらすので、照射されたプリフォームに対して、耐酸化性を改善するためのアニーリング処理を行う必要がないということである。
【0037】
本願発明のさらなる特性は、照射後の遊離基の含有量である。実験例2を示す表2は、照射された材料の遊離基含有量を電子スピン共鳴(ESR)シグナルとして表している。すなわち、材料の電子スピン共鳴を室温で照射処理の後1週間から4週間の間に測定して遊離基含有量が求められる。また、実験例3〜5と同じ材料を使用しており、ガンマ線滅菌された試料と比較される。表2のデータからすぐ判るように、ESRシグナルに基づく遊離基含有量は、実際、ガンマ線滅菌された標準プリフォームよりも高い。上述したように、試料を照射する処理は、架橋密度を増加する一方、遊離基の生成も増加させる。このように、ガンマ線滅菌された標準プリフォームは、架橋結合を増加させるための高い照射線量の放射線を使用していないので、過剰な遊離基を生成しない。
【0038】
特に興味深いことは、本願発明による材料の遊離基含有量は、ガンマ線滅菌された標準UHMWPEプリフォームと比較すると高いが、材料の酸化特性には影響しない。すなわち、本願発明による材料のESRシグナルは、ガンマ線滅菌された標準材料のESRシグナルよりも高いが、試料の酸化指数はガンマ線滅菌された標準材料の酸化指数よりも低い。遊離基含有量が増加するとUHMWPE材料の酸化も増加することはよく知られている(The UHMWPE Handbook S.Kurtz編集,Elsevier Academic Press,2004,11章)が、これは、本願発明による材料にはあてはまらない。この事は、実験例2を示す表2と実験例3を示す表3の比較で明らかである。
【0039】
本発明の材料は、ガンマ線滅菌された標準試料よりも高い遊離基含有量を有しながらより高い耐酸化性を有することが、次に述べる二つのメカニズムから考えられる。
【0040】
第一の可能性として、添加物質は、実際に材料内に存在する遊離基の活性結合部分を提供していることである。すなわち、本願発明の材料内に遊離基は未だ明確に存在しているが、酸化反応に関わることができない。これは高いESRシグナルと低い酸化指数の値に支持されるものである。添加物質の存在は、遊離基がUHMWPE材料の周辺に存在する酸素と反応する能力に大きな影響を与えることが明らかである。添加物質は、ある方式で、遊離基を添加物質自身と結合させ、或いは、ポリマー構造内で上記結合を行っていると考えられる。従って、遊離基は、存在する酸素と反応できず、結果として材料の酸化特性が大いに向上される。
【0041】
第二の可能性として、本発明の材料が高い遊離基含有量を持つにもかかわらず低い酸化指数をもつ理由としては、プリフォームの周辺に存在する酸素と添加物質との特別な反応が考えられる。この場合、遊離基はUHMWPE内に未だ存在しているが、遊離基と添加物質自体との反応性よりも、遊離基と周囲の酸素との反応性の方が低い。すなわち、抗酸化物質または遊離基捕捉剤は、遊離基よりも高い酸素との反応性をもっているので、遊離基との反応より早く酸素と反応するということである。よって、本発明のUHMWPE材料が、なぜ高い遊離基含有量を許容しながら、大幅に改善された酸化特性を提供できるのかを説明できるであろう。これは、遊離基-添加物質の反応の方が、エネルギー的に有利であるので、単純に、材料に含有される遊離基の反応によるUHMWPE材料の酸化は、起こらないからであろう。
【0042】
上記2つのシナリオは、別々に提示されてきたが、共に本願材料の特性に関与している可能性が高い。すなわち、遊離基はある程度添加物質と結合し、更に添加物質は、試料の環境中に存在する酸素とエネルギー的により反応しやすいということである。
【0043】
実験例4を示す表4に記載された架橋結合間の分子量を見て判るように、本願発明による試料の値は、ガンマ線滅菌された標準UHMWPEプリフォームよりも低い。確かに、本発明による材料のプリフォームの照射後の架橋結合間の分子量は、ガンマ線滅菌された標準UHMWPEプリフォームの架橋結合間分子量より15%から70%低い。明らかに、これはかなり改善された摩耗特性を持つことを示す有利な値である。好ましくは、架橋結合間の分子量は6000g/mol未満である。
【0044】
さらに、実験例3を示す表3から判るように、本発明による材料の人工エージング後の最大酸化指数は、ガンマ線滅菌されたUHMWPE試料の値よりも低い。実際、本発明による材料の人工エージング後の酸化指数は、ガンマ線滅菌されたUHMWPE試料の酸化指数の5%から75%である。本発明材料の人工エージング後の酸化指数は0.35未満である。
【0045】
実験例2を示す表2から判るように、ESRシグナルは、本発明のUHMWPE材料の遊離基含有量を表しており、この含有量は、ガンマ線滅菌された標準試料のESRシグナルよりも高い。本発明による照射後のプリフォームの遊離基含有量は、ガンマ線滅菌された標準UHMWPE試料の遊離基含有量の110%〜500%である。
【0046】
比較例1から5おいて添加物質の量が全て0.1重量%であるが、これは単に一つの例にすぎない。0.001から0.5重量%の範囲の添加物質の量は、本願の発明において有効な量である。特に0.002から0.2重量%の範囲の添加物質の量が好ましい。このような量の添加物質は、高度に架橋されたUHMWPEの機械的特性を実質的に弱めたり劣化させたりすることなく、酸化特性を好ましく改善する。
【0047】
上述のように、比較例は7Mradと14Mradの2種類の照射線量のみで行われている。2Mradから20Mradのガンマ線又は電子線照射量は、より良い摩耗性のために改善された架橋密度の最終試料を得るのに十分であろう。照射処理の照射線量は4Mradから15Mradの範囲内であることが好ましく、試料を劣化させることなく十分な架橋結合ができる。
【0048】
上述のように、本願発明の材料は、インプラントの部品を製造するのに適していると考えられる。照射されたプリフォームは、インプラント材料の関連の形に成形する更なる処理を受けることができる。成形後のインプラント材料は、保存しておき手術の時にすぐ使用できるように滅菌されることが必要である。インプラント部品は、滅菌するために、窒素やアルゴンのような保護雰囲気を使用したガスバリア包装で包装し、2Mradから4Mradのガンマ線滅菌処理をすることができる。インプラントはガス透過性包装で包装することもでき、包装後、酸化エチレンやガスプラズマを使用して滅菌できる。インプラントが包装されて滅菌されると、手術で必要な時まで安全に保管することができる。本発明の材料で製造するインプラントの重要な利点は、インプラントを製造する標準UHMWPE材料に比べて材料の酸化が大幅に減少されることであり、保管可能な寿命がかなり延長される。
【0049】
比較実験:
すべての試料に対して、次の製品が使用されている。GUR(商標登録)1020 医療クレードUHMWPE(Ticona GmbH, ドイツ)、(±)-α-トコフェノール(ビタミンE, BioChemika, Sigma-Aldrich Chemie GmbH, スイス)、クルクミン(原料粉末:クルクマ ロンガ,Sigma-Aldrich Chemie GmbH,スイス)及び、(±)-ナリンゲニン(Sigma-Aldrich Chemie GmbH, スイス)。
【0050】
実験例1:
試料は「準工業」サイズ225×225×45mm3であった。UHMWPE GUR(登録商標)1020は、添加物質なしで処理され、或いはαトコフェロール、クルクミン、ナリンゲニンをそれぞれ添加して処理された。その後、いくつかの試料は、2つの異なる放射線量である7Mrad±10%, 14Mrad±10%でガンマ線照射によりそれぞれ架橋結合処理された。なお、加熱による後処理はなされていない。実験例1の試料を処理する工程は、表1に示されている。
【0051】
実験例1の試料を処理する方法
【表1】

【0052】
この実験によって分かったのは、UHMWPE粉末と異なる抗酸化物質とを混合することによって「準工業」サイズの完全に均一な試料を得ることができる。さらに、比較的低い温度である170℃、すなわちUHMWPEの融点より35℃高い温度で混合物を処理することも可能である。
【0053】
実験例2:
実験例1の照射された試料全てについて遊離基含有量が測定された。遊離基含有量の測定は、室温でガンマ線照射の1-4週間後に電子スピン共鳴(ESR)によって行われた。ESRシグナルは、試料の中央から切り出した円柱によって測定された(長さ15mm,直径4mm)。この円柱は、ESR装置(Bruker)に配置された試験管に挿入された。一定のマイクロ波周波数で磁場を変化することによって、吸収シグナル(一次導関数)は、磁場強度の関数として得られた。任意ユニット(a.u.)での最終ESRシグナルは、一次吸収シグナルの二重積分により求めることができた(Gerson F., Huber W.著, 「Electron Spin Resonance Spectroscopy of organic radicals」 Wiley VCH, 2007年; Weil J.A., Bolton J.R.著「Electron Paramagnetic Resonance」 John Wiley&Sons, 2007年)。なお、ESRシグナルのパーセンテージは、二重積分の結果に基づくものであった。
【0054】
上記実験の結果は、表2に示されている。
【0055】
実験例2の試料のESRシグナル
【表2】

【0056】
つまり、実験例2によると、αトコフェローをUHMWPEに添加すると架橋結合後の遊離基数が減少する一方、クルクミンは遊離基数を促進している。ナリンゲニンは、焼結した架橋UHMWPE製品における遊離基の数に及ぼす影響があまり大きくない。PE steriは、ガンマ線滅菌されたUHMWPE標準試料に関するデータを示している。
【0057】
実験例3:
実験例2と同じ一式の試料を使用し、UHMWPE化合物の酸化安定性に与えるクルクミンとナリンゲニンの影響が測定された。全ての試料は、ASTM F 2003に基づき、酸素ボンベ内で5気圧の酸素気圧と70℃で14日間にわたり、促進されたエージング処理を受けた。エージングした成分の酸化指数は、ASTM F 2102-06に基づきFTIRにより測定された。この基準に基づき酸化指数を測定する方法は、以下の通りである。
【0058】
厚さ150μmの試料片を作り測定することによって酸化指数の深さ分布を求めた。極めて薄くスライスされた試料から、赤外線スペクトラムはFTIRにより解像度4cm-1で得られた。酸化指数は、1680-1765cm-1の領域におけるピークの吸光度、すなわちカルボニル基に関連するピークを、1330-1396cm-1の間の参照帯域の吸光度で除算して求めると定義されている。
【0059】
エージング後の最大酸化指数(Max. OI)は、表3に記載されている。
【0060】
【表3】

【0061】
つまり、この実験例によると、クルクミン(PE19, PE26)又はナリンゲニン(PE20, PE27)を含み加熱処理を伴わない試料は、照射された純UHMWPE(PE6, PE23)に比較すると、人工エージング後の酸化は僅か又は全く見られない。クルクミン又はナリンゲニンを含む照射後の試料は、添加物質を全く含まない物質に比較して同じかそれ以上の遊離基を含むが(表2参照)、人工エージング後にほとんど酸化が見られなかった。よって、人工エージング前に高い遊離基数を持ち、エージング後に非常に低い酸化指数をもつUHMWPE試料を得ることが可能である。
【0062】
実験例4:
上記実験例と同じ試料一式を使い、架橋密度と膨潤比をASTM D 2765-95 Method C(1つの試料につき3試験片)に基づき測定した。実験結果として架橋結合間の分子量Mcは、表4に示されている。
【0063】
さらに、トランスビニレン指数(TVI)は、基準ピーク(1900cm-1)の領域を使いトランスビニレンのピーク(965cm-1)の領域を正規化して求められた。4つの薄片試料を最大深さ2.5mmまで測定して平均することによって、実際のガンマ線照射量の定性的な情報(他試料と比較したガンマ線照射量)が得られた。
【0064】
実験例4の試料の架橋結合間の分子量
【表4】

【0065】
つまり、実験4によると、すべての添加物質は架橋処理中に放射線を消費するため、純UHMWPE試料(PE16)に比較して架橋密度が低いことが明らかである。対応のTVI指数に関連してMcに注目すると、架橋添加物質として、クルクミンは僅かに、ナリンゲニンは明確に、α-トコフェノールと比較してより有効である。しかし、抗酸化物質を含み7Mradの照射線量で照射された試料は全て、標準滅菌されたUHMWPE試料よりも架橋結合間分子量が低い。
【0066】
実験例5:
実験例1の複数試料の機械的特性が測定された。降伏応力、引張力、破断点伸びはASTMD 368(1試料に5試験片)に基づき測定され、破壊靭性はDIN EN ISO 11542-2(1試料に4試験片)に基づき測定された。機械特性の結果を表5に表示している。
【0067】
実験例5の試料の機械的特性
【表5】

【0068】
この実験では、材料を170℃で処理して良好な機械特性を持つことが示されている。さらに実験例5は、クルクミンを添加しても焼結UHMWPEの特性に悪影響を与えないことを示している。成形温度は処理中の170℃を超えないが、全ての非照射試料は、標準ISO 5834-2 type1(YS>21.0MPa, TS>35.0MPa, EAB>300.0%, FT>180kJ/m2)の基準を満たしている。全ての架橋試料は、ISO5834-2type2 (YS>19.0MPa, TS>27.0MPa, EAB>300.0%, FT>90kJ/m2)の基準を満たしている。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐酸化性UHMWPE材料を製造する方法であって、
多量の抗酸化物質及び遊離基捕捉剤のうち少なくとも一方を添加物質としてUHMWPE粉末と混合することと、
前記UHMWPE粉末の融点を超える温度で前記UHMWPE粉末と前記添加物質との混合物を成形してプリフォームを作ることと、
2Mradから20Mradの照射量のガンマ線または電子線を前記プリフォームに照射することと、
を含み、
前記添加物質を含有し前記照射されたプリフォームの人工エージング後の酸化指数は、ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の酸化指数以下であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記添加物質を含有し前記照射されたプリフォームの遊離基含有量は、前記ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の遊離基含有量を超えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記照射された材料の架橋結合間分子量が、前記ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の架橋結合間分子量より小さくなるように、前記プリフォームを照射する処理は、前記プリフォーム中の架橋結合を増加させることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記照射されたプリフォームの架橋結合間分子量は、前記ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の架橋間分子量より15-70%低いことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記照射されたプリフォームは、アニーリング処理又は更なる加熱処理を受けないことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記添加物質と前記UHMWPE粉末の混合物を処理する温度は、好ましくは、前記UHMWPEの融解温度より高く、前記添加物質の分解温度より低いことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記添加物質は、好ましくは、βカロチン、リコペン等のカロテノイド類、ナリンゲニン、ヘスペリチン、ルテオリン等のフラボノイド類、或いは、クルクミン、プロピルガラート、オクチルガラート、ドデシルガラート、メラトニン、オイゲノール、コエンザイムQ10、ビタミンEのうちの一つ又は複数であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記添加物質と前記UHMWPE粉末を混合する処理により均一の混合物を生成することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記UHMWPE粉末と混合する前記添加物質の量は、0.001重量%から0.5重量%の範囲であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記UHMWPE粉末と混合する前記添加物質の量は、0.02重量%から0.2重量%の範囲であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記ガンマ線又は電子線照射は、好ましくは、4Mradから15Mradの照射量で行われることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記照射されたプリフォームの人工エージング後の最大酸化指数は、前記ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の最大酸化指数より低いことを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記照射されたプリフォームの人工エージング後の最大酸化指数は、前記ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の最大酸化指数の5%から75%であることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記照射されたプリフォームの人工エージング後の最大酸化指数は、前記ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の最大酸化指数の10%から50%であることを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記照射されたプリフォームの人工エージング後の最大酸化指数は、前記ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の最大酸化指数の15%から30%であることを特徴とする請求項1から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記遊離基含有量はESRにより測定され、前記照射されたプリフォームの遊離基含有量は、前記ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の遊離基含有量より高いことを特徴とする請求項1から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記遊離基含有量はESRにより測定され、前記照射されたプリフォームの遊離基含有量は、前記ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の遊離基含有量の110-500%であることを特徴とする請求項1から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記遊離基含有量はESRにより測定され、前記照射されたプリフォームの遊離基含有量は、前記ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の遊離基含有量の120-400%であることを特徴とする請求項1から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記遊離基含有量はESRにより測定され、前記照射されたプリフォームの遊離基含有量は、前記ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の遊離基含有量の130-300%であることを特徴とする請求項1から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記プリフォームは照射された後、更にインプラントに成形され、
前記インプラントは包装され、更に2Mradから4Mradのガンマ線照射により滅菌され、或いは、酸化エチレン又はガスプラズマへ曝されることによって滅菌されることを特徴とする請求項1から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
耐酸化性UHMWPE材料であって、UHMWPEと、添加物質としての抗酸化物質又は遊離基捕捉剤とを含み、プリフォームとして、2Mradから20Mradの放射量のガンマ線又は電子線で照射されており、
前記照射された、UHMWPEと添加物質との混合物は、人工エージング後の酸化指数がガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の酸化指数以下であることを特徴とする材料。
【請求項22】
前記材料の遊離基含有量が、前記ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の遊離基含有量を超えていることを特徴とする請求項21に記載の材料。
【請求項23】
前記照射されたプリフォームの架橋密度が、前記ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の架橋密度より低いことを特徴とする請求項21に記載の材料。
【請求項24】
前記照射されたプリフォームの架橋結合間分子量は、前記ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の架橋結合間分子量よりも15-70%低いことを特徴とする請求項23に記載の材料。
【請求項25】
前記照射されたプリフォームは、アニーリング処理又は更なる加熱処理を受けていないことを特徴とする請求項21から24のいずれかに記載の材料。
【請求項26】
前記添加物質は、好ましくは、βカロチン及びリコペン等のカロテノイド類、ナリンゲニン、へスペリチン、ルテオリン等のフラボノイド類、又はクルクミン、プロピルガラート、オクチルガラート、ドデシルガラート、メラトニン、オイゲノール、コエンザイムQ10、及びビタミンEのうちの一つまたは複数であることを特徴とする請求項21から25のいずれかに記載の材料。
【請求項27】
前記添加物質は、前記UHMWPE材料全体に均一に分布されていることを特徴とする請求項21から26に記載の材料。
【請求項28】
前記UHMWPE材料における前記添加物質の量は、0.001重量%から0.5重量%の範囲であることを特徴とする請求項21から27のいずれかに記載の材料。
【請求項29】
前記UHMWPE材料における前記添加物質の量は、0.02重量%から0.2重量%の範囲であることを特徴とする請求項21から28のいずれかに記載の材料。
【請求項30】
前記照射されたプリフォームの人工エージング後の最大酸化指数は、ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の最大酸化指数より低いことを特徴とする請求項21から29のいずれかに記載の材料。
【請求項31】
前記照射されたプリフォームの人工エージング後の最大酸化指数は、前記ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の最大酸化指数の5%から75%であることを特徴とする請求項30に記載の材料。
【請求項32】
前記照射されたプリフォームの人工エージング後の最大酸化指数は、前記ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の最大酸化指数の10%から50%であることを特徴とする請求項30に記載の材料。
【請求項33】
前記照射されたプリフォームの人工エージング後の最大酸化指数は、前記ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の最大酸化指数の15%から30%であることを特徴とする請求項30に記載の材料。
【請求項34】
前記遊離基含有量はESRにより測定され、前記照射されたプリフォームの遊離基含有量は、前記ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の遊離基含有量を超えていることを特徴とする請求項21から33のいずれかに記載の材料。
【請求項35】
前記遊離基含有量はESRにより測定され、前記照射されたプリフォームの遊離基含有量は、前記ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の遊離基含有量の110-500%であることを特徴とする請求項34に記載の材料。
【請求項36】
前記遊離基含有量はESRにより測定され、前記照射されたプリフォームの遊離基含有量は、前記ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の遊離基含有量の120-400%であることを特徴とする請求項34に記載の材料。
【請求項37】
前記遊離基含有量はESRにより測定され、前記照射されたプリフォームの遊離基含有量は、前記ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の遊離基含有量の130-300%であることを特徴とする請求項34に記載の材料。
【請求項38】
材料であって、UHMWPEと添加物質である抗酸化物質又は遊離基捕捉剤との混合物を含み、プリフォームとして、2Mradから20Mradの照射量のガンマ線又は電子線で照射されており、人工エージング後の酸化指数は0.35未満であることを特徴とする材料。
【請求項39】
人工エージング後の酸化指数は0.25未満であることを特徴とする請求項38に記載の材料。
【請求項40】
人工エージング後の酸化指数は0.15未満であることを特徴とする請求項38に記載の材料。
【請求項41】
材料であって、UHMWPEと添加物質である抗酸化物質又は遊離基捕捉剤との混合物を含み、プリフォームとして、ガンマ線又は電子線の2Mradから20Mradの照射量で照射されており、架橋結合間の分子量は6000g/mol未満であることを特徴とする材料。
【請求項42】
架橋結合間の分子量が5000g/mol未満であることを特徴とする請求項41に記載の材料。
【請求項43】
架橋結合間の分子量が4500g/mol未満であることを特徴とする請求項41に記載の材料。
【請求項44】
材料であって、UHMWPEと添加物質である抗酸化物質又は遊離基捕捉剤との混合物を含み、プリフォームとして、ガンマ線又は電子線の2Mradから20Mradの照射量で照射され、遊離基含有量はガンマ線滅菌された標準UHMWPEの遊離基含有量を超えていることを特徴とする材料。
【請求項45】
材料であって、UHMWPEと添加物質である抗酸化物質又は遊離基捕捉剤との混合物を含み、
プリフォームとして、ガンマ線又は電子線の2Mradから20Mradの照射量で照射されており、人工エージング後の酸化指数は0.35未満であり、架橋結合間の分子量は6000g/mol未満であることを特徴とする材料。
【請求項46】
材料であって、UHMWPEと添加物質である抗酸化物質又は遊離基捕捉剤との混合物を含み、プリフォームとして、ガンマ線又は電子線の2Mradから20Mradの照射量で照射されており、人工エージング後の酸化指数は0.35未満であり、遊離基含有量はガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の遊離基含有量を超えていることを特徴とする材料。
【請求項47】
材料であって、UHMWPEと添加物質である抗酸化物質又は遊離基捕捉剤との混合物を含み、プリフォームとして、ガンマ線又は電子線の2Mradから20Mradの照射量で照射されており、架橋結合間の分子量は6000g/mol未満であり、遊離基含有量は、ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の遊離基含有量を超えていることを特徴とする材料。
【請求項48】
材料であって、UHMWPEと添加物質である抗酸化物質又は遊離基捕捉剤との混合物を含み、プリフォームとして、ガンマ線又は電子線の2Mradから20Mradの照射量で照射され、人工エージング後の酸化指数は0.35未満で、架橋結合間の分子量は6000g/mol未満であり、遊離基含有量は、ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の遊離基含有量を超えていることを特徴とする材料。



【公表番号】特表2010−521566(P2010−521566A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553921(P2009−553921)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【国際出願番号】PCT/EP2007/002477
【国際公開番号】WO2008/113388
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(508132436)スミス アンド ネフュー オーソペディックス アーゲー (5)
【Fターム(参考)】