説明

高度に溶解性の水和性の粘性の溶液安定性焙焼デキストリン、その製造方法及び使用

【課題】ブリティッシュガムのような比較的高粘度、カナリアデキストリンのような周囲水中への100%溶解性及び溶液安定性並びに周囲温度での高水和性の性質の特定の組み合せを特徴とする焙焼デキストリンを提供する。
【解決手段】本発明は、周囲温度で、実質的に100%水に溶解性で、低自由水を有する溶液中に実質的に水和性で、カナリアデキストリンに対応する高粘度を有し、かつ、溶液安定性である、新規な焙焼デキストリンを提供する。これらのデキストリンは好ましくは澱粉を酸性化し、実質的に、無水条件下に、所望の最終生成物を生じるのに十分な時間及び温度でデキストリン化することにより製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周囲温度で、高度に水溶性で、低自由水を有する溶液中で高度に水和性であり、カナリアデキストリンに対応する粘性であり、かつ、溶液安定性である新規なデキストリン、それらの製法及びそれらの多数の工業的用途における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
澱粉のデキストリン化は1800年代の初期から知られており、酵素の作用、微生物の分解、酸加水分解または酸もしくはpH調節物質の存在または不存在のいずれかでの澱粉粉末の加熱(以下、「酸性化」という)により達成し得る。熱により形成されたデキストリンは焙焼デキストリンとして知られており、加水分解及び再結合の種々の生成物の混合物である。焙焼デキストリンは一般に次の3つのグループ、すなわち、比較的に低温(79〜120℃)で、比較的に短時間(3〜8時間)、酸触媒の存在において澱粉から製造される白色デキストリン、比較的に高温(150〜220℃)でより中位の時間(6〜18時間)、酸触媒の存在で澱粉から製造される、黄色デキストリンまたはカナリアデキストリン及び比較的に高温(130〜220℃)で長時間(10〜20時間)、いかなる触媒をも用いずに澱粉から製造されるブリティッシュガム、に分類される。
【0003】
白色デキストリン及びブリティッシュガムは、型どおりに95%まで水に溶解するのに対して、カナリアデキストリンは型どおりに95〜100%水溶性である。ブリティッシュガムはその名称が示すように型どおりに粘性の溶液を形成するのに対し、白色デキストリン及びカナリアデキストリンは比較的に粘性の少ない溶液を形成する。
【0004】
乾燥状態における焙焼デキストリンの製造は、所望の程度まで加水分解または転化し、そして、種々の工業用用途のために部分的または完全に水溶性である生成物を得るために実施される。それらは典型的には澱粉の酸性化、デキストリン化及び冷却により製造される。デキストリン化の初期には、高湿分の存在のため、加水分解が主要な反応である。加水分解反応の間に、澱粉の分子量が低下し、水が使い尽くされる。この段階の間に、いくらかの再結合は可能であるけれども、再結合は温度が上昇し、水(湿分)レベルが低下するまでは少ない。加水分解過程は、触媒、典型的には酸で促進し得る。
【0005】
湿分が前記過程から追い出され、温度が上昇し続けるにつれ、加水分解速度は特にデキストリン化の後の方の段階の間に遅くなる傾向がある。後の方の段階における反応条件、すなわち、高温及び低湿分は、水を放出する澱粉分子の再結合を促進する。再結合が起こると、澱粉の分子量及び枝分かれは加水分解生成物に関連して増加する。さらに、水が放出され、さらなる加水分解を可能にする。時間がたつにつれ、2つの反応、すなわち、加水分解と再結合の間が平衡状態に達する。
【0006】
慣用のデキストリン化の方法においては、湿分は澱粉床、特に単相系中に閉じ込められ、再結合は加水分解との競争である。系中のすべての自由湿分が実質的に取り除かれる系においては、澱粉からの完全な分離及び湿分の除去のため、再結合と加水分解との競争はより少ない。この水の分離及び除去は、高熱暴露からのすべての利点、特に高溶解性及び増加した溶液安定性をいまだに有している、より高い粘度の組成物をもたらす。デキストリンを無水状態まで加工すること、すなわち、周囲温度で高レベルの水溶解性を有する組成物を製造することはこの分野で知られている。しかしながら、これらは、ほとんど自由水を含有しない系、たとえば、特に熱を加えない、高固形分の砂糖溶液において、非常に低粘度及び/または完全には水和しない傾向にある。比較的に高粘度の、完全に水和し得るデキストリン組成物であって、優れた溶液安定性特性を有するものについてのニーズがある。
【0007】
焙焼デキストリンは、リボン撹拌機、オーブン及び流動床反応器を包含する種々の装置を用いて製造することができる。流動床反応器は、この装置の高熱伝達及び均質な混合特性により、より良い制御及び時間の減少が可能になったので、最近、支持を得た。流動床反応器におけるデキストリン化はこの分野で知られており、一般的にこの分野で知られている焙焼デキストリンと同じかまたは少々変化した焙焼デキストリンを製造する。たとえば、米国特許第2,845,368号、米国特許第3,967,975号、米国特許第4,021,927号、米国特許第4,237,619号及び米国特許第4,266,348号参照。さらに、種々の加工パラメータが試みられた。しかしながら、多くの参考文献、たとえば、米国特許第3,967,975号、カナダ国特許第1,150,934号並びに独国特許出願第DD157347号及びDD208991号は、湿った空気を用いる重要性を強調する。
【0008】
デキストリンは種々の工業用用途に用いられ、したがって、それらの所望の性質は変化する。たとえば、カナリアデキストリンは典型的には高固形分、すなわち、澱粉:水の比が1:1.25〜1:0.75または44.4%〜57.1%の固形分で用いられて、低粘度の分散液を与え、それが、カナリアデキストリンを多くの用途分野に有用にする。これらの特性が多くの用途領域に所望されるとはいえ、比較的に低い固形分関係を必要とするいくつかの用途がある。たとえば、澱粉/水の比が1:4.5〜1:1または18.1%〜50%の固形分の使用レベルが所望される。当分野で知られているデキストリン化方法を用いて作られた、上記組成物は高粘度を生ずることがある。しかしながら、これは溶解性及び溶液安定性を犠牲にしてなされる。一般に、高粘度のカナリアデキストリンが製造されるなら、それは、ブリティッシュガムデキストリンのいくつかの特性を得るであろう。すなわち、前記デキストリンは100%未満の水溶性であって、水和性ではないだろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
当分野で一般的に知られている焙焼デキストリンにはブリティッシュガムのような比較的高粘度、カナリアデキストリンのような周囲水中への100%溶解性及び溶液安定性並びに周囲温度での高水和性の性質の特定の組み合せを特徴とするものはない。典型的には高粘度焙焼デキストリンは、加熱しなければ、完全には水和性ではないか、限定された自由水を含有する溶液、たとえば、60%スクロース溶液には入らない。このような性質は多くの用途、特に菓子の製造に望ましいだろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
いまや、驚くべきことに、周囲温度で、高度に水溶性で、かつ、低自由水を有する溶液に水和性で、カナリアデキストリンに対応する粘性であり、かつ溶液安定性である焙焼デキストリンを製造し得ることを見出した。これらの焙焼デキストリンは、実質的に無水であるように澱粉を乾燥させ、かつ、系中のすべての自由水を効果的に除去することによって製造される。
【0011】
本発明は、周囲温度で、実質的に100%水溶性で、低自由水を有する溶液中で実質的に水和性であり、カナリアデキストリンに対応する比較的に高い粘度を有し、かつ、溶液安定性である新規な焙焼デキストリン(以下、「デキストリン」という)を提供することに向けられている。これらのデキストリンは、好ましくは澱粉を酸性化し、実質的に無水条件下に、所望の最終生成物を生じるのに十分な時間及び温度でデキストリン化することにより製造される。「実質的に無水条件」は、本明細書で用いる時は、澱粉が最高デキストリン化温度に到達する前また到達する時実質的に無水であり、最高デキストリン化温度に到達後、すべての自由水が効果的に系から除去されることを意味することを意図する。
【0012】
本発明の目的は、周囲温度で、実質的に100%水溶性で、限られた自由水を有する溶液中で実質的に水和性で、カナリアデキストリンに対応する高い粘度を有し、かつ、溶液安定性であるデキストリンを提供することである。本発明の他の目的は、実質的に100%周囲水に溶解性で、60から10%スクロースに希釈された周囲溶液中で実質的に水和性であり、少なくとも800cps のボレート化粘度及び60%スクロース溶液中で72時間400%より多く変化しない粘度を有するデキストリンを提供することである。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、周囲水に100%水溶性で、60%から10%スクロースに希釈された溶液中で実質的に水和性で、少なくとも50,000cpsのボレート化粘度及び60%スクロース溶液中で72時間100%よりも多く変化しない粘度を有するデキストリンを提供することである。本発明のその他の目的は実質的に無水条件下の製造により前記デキストリンを製造する方法を提供することである。
【0014】
本発明の更なる目的は、少なくとも1種の上記デキストリンを含有する、接着剤、医薬品、食品、紙、ガラス繊維、結合剤、殺虫剤、染料、ペンキ、増粘剤、サイジング剤、農業製品、塗料、水処理製品、化粧品または生地を提供することである。本発明のさらなる目的は、少なくとも1種の上記デキストリンを含有する食物製品を提供することである。
【0015】
本発明のさらなる目的は、塗料及びフィルム用途、封入、乳化のためにまたは菓子製品に用いることができる上記デキストリンを提供することである。これらの及び他の本発明の目的は、次の詳細な説明及び下記の例から当業者に明らかになるであろう。本発明は、周囲温度で、実質的に100%水溶性であり、低自由水を有する溶液中で実質的に水和性であり、カナリアデキストリンに対応する高い粘度を有し、かつ、溶液安定性である新規な焙焼デキストリン(以下、「デキストリン」という)を提供することに向けられている。これらのデキストリンは、任意に澱粉を酸性化し、実質的に無水条件下で、所望の最終生成物を生じるのに十分な時間及び温度でデキストリン化することにより製造される。
【0016】
すべての澱粉及び粉(以下、「澱粉」という)は、本発明に用いるのに適切であり、かつ、あらゆる天然源から由来し得る。本明細書で用いる時、天然の澱粉及び粉は、自然界に見出されるものである。交雑、転座、逆位、形質転換またはあらゆる他の遺伝子または染色体工学を包含する標準的育種技術により得られた植物(それらの変異体も包含する)から由来する澱粉または粉も適切である。さらに、人工突然変異及び公知の標準的な突然変異育種により生産し得る上記の属の組成物の変異から成長した植物由来の澱粉または粉も本発明に適切である。
【0017】
澱粉及び粉のための典型的な源は、穀物、塊茎、根菜類、マメ科植物及び果実である。天然源は、コーン、エンドウ、ジャガイモ、サツマイモ、バナナ、大麦、小麦、米、サゴ、アマランサス、タピオカ、クズウコン、カンナ、モロコシ及びそれらのワキシーまたはハイアミロース種である。本明細書で用いる時、用語「ワキシー」は少なくとも約95重量%のアミロペクチンを含有する澱粉または粉を包含することを意図し、用語「ハイアミロース」は少なくとも約40重量%のアミロースを含有する澱粉または粉を包含することを意図する。
【0018】
ベース澱粉は、酸化、酵素転化、酸加水分解、熱及び/または酸デキストリン化により製造された流動性澱粉または低粘性変性澱粉(thin-boiling starch)を包含する、転化製品を製造するためにさらに転化することができる。熱及び/または剪断製品も本発明に有用である。澱粉は化学的、熱的または物理的にも変性できる。澱粉の変性の手順は、R.L.Davidson 編「Handbook of Water Soluble Gums and Resins 」(McGrawhill, Inc.,ニューヨーク州, ニューヨーク、1980年)の第22−26〜22−47頁のM.W.Rutenbergによる『澱粉及びその変性』の章に記載されている。たとえば、2官能性エーテル化剤及び/またはエステル化剤、たとえば、エピクロルヒドリン、ビス−β−クロルエチル、2塩基性有機酸、オキシ塩化リン、トリメタリン酸塩、酢酸及び2−または3−塩基性カルボン酸の線状混合無水物、特にエピクロルヒドリン、オキシ塩化リン、無水アジピン−酢酸及びトリメタリン酸ナトリウムで架橋することができる。澱粉は、アミノ基、イミノ基、アンモニウム基、スルホニウム基またはホスホニウム基を含有する周知の試薬により、カチオン性にまたは両性に処理することもできる。上記カチオン性誘導体は、エーテル結合またはエステル結合を介して結合している、第1、第2、第3及び第4級アミンを含む窒素含有基並びにスルホニウム基及びホスホニウム基を含有するものを包含する。
【0019】
カチオン及びアニオン変性剤を用いる澱粉の2重の処理が両性誘導体を製造するのに用いられてきており、この分野で周知である。カチオン変性、典型的には、2−ジエチルアミノエチルクロリド、エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド及び4−クロル−2−ブテニルトリメチルアンモニウムクロリドを用いる処理によって製造される、特に澱粉の第3アミノまたは第4アンモニウムエーテル化は、さらにリン酸塩基、ホスホン酸塩基、硫酸塩基、スルホン酸塩基またはカルボキシル基を用いるさらなる置換と組み合わされてきた。
【0020】
適切な食物誘導体は、それぞれ、無水酢酸、無水スクシン酸及び無水オクテニルスクシン酸との反応により製造された、エステル、たとえば、酢酸エステル及び半エステル、たとえば、スクシン酸エステル及びオクテニルスクシン酸エステル、オルトリン酸ナトリウムもしくはカリウムまたはトリポリリン酸ナトリウムもしくはカリウムとの反応により製造されたリン酸エステル誘導体、エーテル、たとえば、プロピレンオキシドとの反応により製造されたヒドロキシプロピルエーテルまたは他のあらゆる澱粉誘導体もしくはそれらの組み合せを包含する。
【0021】
物理的変性澱粉、たとえば、欧州特許出願公開第0721471号に代表されるファミリーに記載された熱−阻害澱粉も、粒状α−澱粉及び非粒状α−澱粉として、本発明で用いるのに適切である。α−澱粉を製造する方法は当分野で既知であり、たとえば、米国特許第4,465,702号、第5,037,929号、第5,131,953号及び第5,149,799号に記載されている。澱粉をα化するための慣用の手順は当業者にも知られており、たとえば、R.L. Whistler 及びE.F. Paschall 編「Starch : Chemistry and Technology 」Vol. III-Industrial Aspects, XXII 章『Production and Use of Pregelatinized Starch』(Academic Press, ニューヨーク、1967年)に記載されている。ジェットクック及び噴霧乾燥も当分野で既知であり、米国特許第3,674,555号に記載されている。
【0022】
本発明で用いるあらゆる澱粉、粉またはブレンド物は、澱粉本来のあるいは澱粉加工の間に創生される、所望しない風味、臭い及び色を除去するために当分野で既知のあらゆる方法により精製し得る。精製はデキストリン化の前及び/または後で行うことができる。当分野で既知の精製方法は、漂白、カーボンカラム処理、イオン交換(カチオン及びアニオンの両方)、水蒸気蒸留、限外濾過及びそれらの組み合せ、たとえば、欧州特許出願公開第554,818号により代表されるファミリーに記載のものを包含する。粒状またはα形のいずれかに用いることを意図する澱粉のためのアルカリ洗浄技術も有用であり、米国特許第5,187,272号に代表されるパテントファミリーに記載されている。
【0023】
澱粉は、慣用ではデキストリン化過程の前(デキストリン化過程中に酸性化されるかもしれないが)、及びデキストリン化機の中または装填の前のいずれかに、典型的には酸性化される。酸性化はデキストリン化の技術分野で既知のあらゆる方法及びあらゆる触媒を用いてなし得る。酸性化は粉末化澱粉を、酸またはアルカリ性反応の塩、中性塩、たとえば、塩化カルシウム、アルカリ性物質、たとえ、水酸化ナトリウムもしくはアンモニアまたは他の塩基、たとえば、ホウ砂もしくは炭酸ナトリウムを包含する、触媒、たとえば、酸、塩または他の化学薬品の希溶液で、粉末化澱粉を噴霧することにより達成される。酸を用いるなら、当分野で既知であって、デキストリンの最終使用用途で許容し得るあらゆる無機または有機酸でよい。たとえば、デキストリンが食品に用いられるものであるなら、食品級の触媒が好ましい。典型的な酸は塩酸、酢酸、硫酸、リン酸及び硝酸を包含するが、これらに限定されない。用いられる酸の量は典型的には澱粉の約1重量%まで、より特定的には約0.25重量%までである。澱粉は好ましくは実質的に無水である、これらの触媒の気体版、たとえば、塩素ガス、塩化水素ガス、2酸化硫黄または3酸化硫黄を導入することによっても酸性化できる。
【0024】
澱粉は、最高デキストリン化温度に到達後は少なくとも実質的に無水でなければならない。熱脱水は、約0.1重量%未満、好ましくは実質的に0%まで湿分含量を低下させるのに十分な時間及び温度で、加熱装置中で澱粉を加熱することにより行なわれる。慣用には、用いられる温度は、ほぼ澱粉の分解温度未満、特に約110〜250℃、より特に約170〜210℃である。脱水温度は100℃より低くてもよいが、湿分を除去するためには少なくとも約100℃の温度がより効率的であろう。デキストリン化機中で脱水するなら、澱粉は、典型的には温度が最高温度まで持ってこられた時に脱水される。
【0025】
澱粉は所望のデキストリンを与えるのに十分な時間及び温度でデキストリン化される。一般に、約110℃より高い最高温度が効率のために用いられる。温度の上限は典型的には約300℃であり、これは、澱粉はこの温度より高く、有意な時間保たれると澱粉が分解し始めるからである。典型的な最高温度は約110〜250℃特に約170〜210℃である。
【0026】
デキストリン化過程は、デキストリンが例のセクションの手順Bで測定した時に周囲水に実質的に100%溶解するまで、最高温度で進行させる。一般に澱粉はデキストリン化機中で最高温度に達した後、約30分〜6時間、実質的に溶解性であろう。次いで最高温度でのデキストリン化は、残りの特性、水和性、粘度及び溶液安定性が達成されるまで、典型的にはさらに約2〜6時間さらに進行させる。デキストリン化が完了するまで、温度を最高に保つことは、一般的に最も効率的であるけれども、本発明のデキストリンは種々の温度を用いても達成し得る。
【0027】
選択された温度及び時間は所望の加水分解及び再結合の量並びに得られる所望の澱粉特性に依存するだろう。一般に所望の澱粉を得るためには温度が低ければ低い程、長い時間が必要である。用いられる澱粉の源及び型(ベース)、脱水条件、加熱時間及び温度並びに装置は、加水分解及び再結合に影響を及ぼし、したがって、得られた澱粉の性質に影響を及ぼす、すべて相互に関係のある変数である。
【0028】
デキストリン化は常圧、真空下または加圧下で実施でき、この技術分野で慣用の手段、特に実質的に無水の流動化ガス、特に空気または不活性ガス中での熱の適用により達成し得る。熱脱水及びデキストリン化工程は、連続的及び同時であってよく、周囲温度から始めて、澱粉に熱を適用することにより達成される。加熱の間に湿分は追い出され、澱粉は無水または実質的に無水になる。
【0029】
デキストリン化は、澱粉が実質的に脱水される前に所望の程度の加水分解が得られさえすれば、熱脱水が起こるのと同じ装置中で行うことができる。最も慣用には、流動床が用いられる時のように、これらの過程は、同じ装置中で起こる熱脱水とデキストリン化が同時である。本発明のデキストリンを製造する方法は、バッチまたは連続的でよい。
【0030】
脱水及びデキストリン化装置は、澱粉中に最初からある湿分だけでなく、過程中に製造された湿分が除去されるようにその装置に大気への通気孔が備え付けられているなら、あらゆる工業用オーブン、慣用のオーブン、電子レンジ、デキストリン化機、乾燥機、加熱装置を装備したミキサーまたはブレンド機及び他の型のヒーターでよい。流動床反応器は、本発明のデキストリンの製造に特に適している。
【0031】
特に、装置は、流動床反応器、特にその装置が水蒸気を除去する手段、たとえば、真空または流動床の頂部空間から空気または流動化ガスを掃気する送風機を装備したものである。適切な流動化ガスは一般的には不活性であり、空気及び窒素を包含する。安全性の理由のため、12%未満の酸素を含有するガスが特に適切である。唯一の制限はガス相は自由水が系から、特に最高温度に達した後に、効率的に除去されるようなものでなければならないということである。上記条件は、特に流動ガスが熱く実質上無水であるように予熱されている時に特に満たされる。この2相過程、すなわち気体−固体は、系から実質的にすべての自由湿分を除去するのに高度に効率的である。
【0032】
デキストリン化後、デキストリンは冷却される。得られたデキストリンは、意図された最終用途に依存して、そのままあるいはさらにこの技術分野で既知の技術により変性して用いることができる。たとえば、デキストリンを当技術分野で既知で、かつ、松谷(Matsutani)化学工業株式会社に付与された種々の米国特許に記載のようにさらに転化し得る。
【0033】
臭い、色及び/または風味は、脱水工程の前及び/または熱処理工程の後で、澱粉または粉を水で洗浄すること及び/または澱粉または粉からタンパク質及び/または脂質を除去することを包含する、当分野で既知の技術により改良し得る。漂白剤(たとえば、亜塩素酸ナトリウム)またはアルカリをタンパク質及び/または脂質の除去に用いることができる。
【0034】
得られたデキストリンはその意図された最終用途に従って所望のpHに調整することもできる。一般にpHは約5.0〜約7.5、特に約6.0〜約7.0に、当分野で既知の技術を用いて調整される。得られたデキストリンは意図された最終使用用途のために所望の特性を達成するために物理的にまたは化学的に変性することもできる。たとえば、デキストリンは速やかな分散性のために塊にすることができる。デキストリンは再び湿らせることもできる。
【0035】
得られたデキストリンは、典型的には、カナリアデキストリンと同様に色は黄色から薄い黄褐色である。わずかな色は多くの用途に有害ではないけれども、色の少ないデキストリンを望むなら、色は種々の当業界で既知の方法によって減少させることができる。得られたデキストリンは例のセクションの手順Bを用いて周囲水に実質的に100%溶解性である。高い溶解性は多くの最終使用用途に必須の性質である。
【0036】
さらに得られたデキストリンは実質的に水和性である。本明細書で用いる時、実質的に水和性は、デキストリンが、周囲温度で低自由水を有する溶液中で、その溶液が透明で、曇らず、そして、デキストリンが実質的に沈澱して出ないように実質的に水和性であることを意味する。特にデキストリンは、例のセクションの手順Aにより調製されたようなスクロース溶液中で、デキストリンは水和/溶解化して透明な溶液を生じ、そして約2cmより少ない、特に約1cmよりも少ない沈澱物が24時間後に沈澱して出るというように実質的に水和性である。水和しない他のデキストリンは、いかなる水和/溶解もなしにデキストリンが単純に沈澱して出るので、なお、粒状の沈澱物を有する透明な「溶液」を、もたらす。これらのデキストリンは、それらが溶液を形成しないので、本発明の範囲内に入ることを意図していない。典型的には、他の粘性のデキストリンは、溶液中で自由水の量が限定されている時、熱を加えないと水和性ではない。
【0037】
得られたデキストリンは比較的高粘度で、慣用のカナリアデキストリンの粘度より高い。特にデキストリンは、例のセクションの手順Cにより測定した時に、少なくとも約800cps 、特に少なくとも約10,000cps 、より特定的には少なくとも約50,000cps のボレート化粘度を有する。最後にデキストリンは、デキストリンの溶液粘度が例のセクションの手順Dを用いて、時間にわたって徹底的に変化しないような溶液安定性である。特に溶液粘度は72時間内で400%未満、より特に200%未満、最も特定的には100%未満変化する。ある他のデキストリンは溶液安定性であるように見えるかもしれない。しかしながら、デキストリンが水和/溶解したこと、単純に沈澱して出ないことをチェックすべきである。デキストリンが単純に沈澱して出るなら、溶液粘度は変化する傾向がないだろう。
【0038】
本発明のデキストリンは、接着剤、医薬品、食物、紙、ガラス繊維、結合剤、殺虫剤、染料、ペンキ、増粘剤、サイジング剤、農業用製品、コーティング、水処理製品、化粧品及び生地を包含する種々の工業的用途に用い得る。特にそれらはコーティング及びフィルム用途、封入、乳化に、そして菓子製品に有用である。
【0039】
当デキストリン組成物のコーティング及びフィルム特性はパンコーティング操作に有用性を示す。パンニング、または回転するパン中のコーティング材料中にキャンディを回転させることによるそれらのコーティングはフィルム形成剤を含有する濃縮砂糖溶液で被覆することにより達成することができる。典型的には、軟かい加工品、たとえばゼリービーンズの芯のコーティングにおいて、フィルム形成剤を含有する光沢仕上げシロップが用いられる。フィルム形成剤は、その高度の水溶性及び比較的に低い溶液安定性粘度のために既知の親水コロイドである。上記特性は高固形分溶液の製造及び時間をかけてコーティング及びフィルムとして薄く、かつ、均一に適用することを可能にする。フィルム形成剤はそれらの湿分吸収性及びフィルム形成性のため、光沢仕上げシロップ中に用いられる。これらの特性は、コーティングをそれが乾燥する特に可塑化するのを助け、したがって、光沢仕上げされたゼリービーンズのクラッキング及びチッピング並びに発汗を防ぐ。接着性フィルム形成性特性も必要である。
【0040】
本発明のデキストリンは、さらに、乳化、封入、コーティング、増粘、フィルム形成、滑らかにする及び構造化の機能のための種々の用途においてアラビアゴムに代わるものとして有用である。たとえば、これらのデキストリンは、ソフトドリンク中の風味油を安定化し、キャンディに構造及びコーティングを与え、かけることができるサラダドレッシング及びバターソースを乳化させ、パン屋の製品のためにグレーズベースを提供し、食品用途及びビタミン用途のための種々の風味剤、脂肪及び油を乳化及び/または封入するのに有効に用い得る。
【0041】
本発明のいくつかの態様は次のものを包含するが、これらに限定されない。
1.a.周囲水に実質的に100%溶解性で、b.低自由水を有する周囲溶液に実質的に水和性で、c.カナリアデキストリンに対応する高いボレート化粘度及び、d.溶液安定性を特徴とするデキストリン。
【0042】
2.前記ボレート化粘度が約800cps よりも高い、1のデキストリン。
3.前記ボレート化粘度が約10,000cps よりも高い、1のデキストリン。
4.前記ボレート化粘度が約50,000cps よりも高い、3のデキストリン。
【0043】
5.前記溶液粘度(安定性)が72時間内に400%よりも大きく変化しない、1のデキストリン。
6.前記溶液粘度(安定性)が72時間内に100%よりも大きく変化しない、5のデキストリン。
7.前記デキストリンが周囲温度で、60%の固形分のスクロース溶液中で実質的に水和性である、1のデキストリン。
【0044】
8.デキストリンの製造方法であって、a.最高デキストリン化温度に達する前に実質的に無水まで澱粉を脱水し、b.澱粉が周囲水中で実質的に100%水溶性で、低自由水を有する周囲溶液中で実質的に水和性で、カナリア澱粉に対応する高いボレート化粘度を有し、かつ、溶液安定性であるまで、最高デキストリン化温度で実質的に無水条件下でデキストリン化することを含む前記方法。
【0045】
9.前記最高デキストリン化温度が約110℃〜約250℃である、8の方法。
10.前記最高デキストリン化温度が約110℃〜約210℃である、9の方法。
11.前記最高デキストリン化温度でのデキストリン化が約2.5〜約12時間である、8の方法。
【0046】
12.さらに澱粉の酸性化を含む、8の方法。
13.前記デキストリン化が流動床反応器中で行なわれる、8の方法。
14.予備処理された流動化ガスが用いられ、前記流動化ガスが加熱され、かつ、少なくとも実質的に無水である、13の方法。
15.1のデキストリンを含む組成物。
【0047】
16.15の組成物であって、前記組成物は、接着剤、医薬品、食品、紙、ガラス繊維、結合剤、殺虫剤、染料、ペンキ、増粘剤、サイジング剤、農業、コーティング、水処理、化粧品及び生地からなる群から選択される、前記組成物。
17.前記デキストリンがコーティング、フィルム、封入剤または乳化剤である、15の組成物。
【0048】
18.前記組成物が菓子製品である、16の組成物。
次の例は本発明をさらに説明するために提示され、いかなる点に関しても限定するものととるべきではない。
【実施例】
【0049】
次の試験手順を例を通して用いた。
手順
【表1】

【0050】
砂糖及びデキストリンを乾式ブレンドする。乾式ブレンド砂糖混合物を完全に水に分散させる。分散液を1晩(少なくとも12時間)放置し、次いで、水で希釈して10%固形分(重量/重量)分散液を形成する。砂糖溶液を円錐底を有する50mlの目盛をつけたガラスの沈降(遠心)管に注ぐ。希釈液を静かに24時間放置する。沈澱物のcmを測定し、上清の性質を観察する(透明、曇り)。
【0051】
沈降した物質及び曇りは高固形分砂糖溶液中の試料の水和性の欠如を示す。試料は水中で溶解性と認めることができる。しかしながら、高固形分溶液中の水和性は、多くの用途で重要であり、特にパンニング操作においてフィルム形成剤として実際の性能を試験される組成物に関係する。
【0052】
B. 溶解性(水中の%)
2gのデキストリンを小さいビーカー中でぬらし、200mlの容積測定フラスコに定量的に移し、周囲温度の蒸留水で200mlマークの約1ミリリットルまで希釈する。フラスコに栓をして、2分間フラスコを逆にすることにより混合する。フラスコを22.2±0.4℃の環境に4時間置く。4時間の終りに、デキストリンを周囲蒸留水で200mlまで希釈し、フラスコを逆にすることにより混合する。内容物をワットマンNo. 1または同等の濾紙で濾過する。50mlのアリコートまたは濾液を、純粋な実験室級の砂を1/3充填し、前もって乾燥し、目方を計った100mlビーカー中にピペットで入れて、105℃のオーブン中で1晩蒸発させて乾燥させる。試料を除去し、相対湿度0%のデシケーター中に置き、冷却させる。次にビーカーをデシケーターから取り出し、適当な分析天秤上で直ぐに秤量する。溶解性を次のように各試料について2回行ない、その結果を平均することにより計算する。
【0053】
【数1】

【0054】
C. ボレート化粘度
粘度をブルックフィールド粘度計を用いてボレート化粘度として測定する。ほうろうのコップ及び温度計の目方を量る(風袋重量)。66.6gの無水試料をコップ中に秤量する。水を加え、試料を十分に混合して完全にぬらし、ペーストを形成する。さらに水を加え、澱粉混合物重量を200gにする。次に混合物を沸とう水浴中に入れ、絶えず撹拌しながら90℃に至らせる。次に混合物を氷浴に入れ、絶えず撹拌しながら70℃まで冷却する。次に9.99gのホウ砂を加え、70℃の温度を維持しながら試料を5分間撹拌する。次に混合物を氷浴中に戻し、絶えず撹拌しながら25℃まで冷却する。失った湿分を水で置き換えることにより、混合物を定められた重量まで戻す。次に粘度をブルックフィールド・モデルDV−11+粘度計(ブルックフィールドから市販されている)を用いて、25℃、20rpm 及び適切なスピンドルで読み取る。
【0055】
【表2】

砂糖及びデキストリンを乾式ブレンドする。乾式ブレンドした砂糖混合物を水に完全に分散させる。コップ中の溶液粘度をブルックフィールド粘度計(モデルDVII+、Bスピンドル、92S、12rpm に設定)を用いて、0、24、48及び72時間の時間の15秒後に測定する。cps 粘度における、0時間〜72時間の変化の%を高砂糖系における組成物の相対的安定性を測定するのに用いる。
【0056】
溶液粘度を式:
【数2】

で測定する。
意味のある読み取りを得るために、デキストリンはスクロース溶液中に溶解性/水和性でなければならない。デキストリンが単純に沈降して出るなら、溶媒の粘度であってデキストリン溶液の粘度は測定されない。
【0057】
E. 湿分%
すべての試料の湿分%をCenco湿分天秤(CSC Scientific Company, Incから市販されている)及び製造者の指示に従う試験を用いて測定する。Cenco湿分天秤は、試料を乾燥させるために赤外線加熱ランプを用いる、試料を秤量するための鋭敏な捩り天秤である。試料の重量損失%は湿分の損失による。
【0058】
F. 色(L値)
ハンター比色計は、デキストリンの乾燥粉末試料の多数の色等級及び光学的性質を測定するのに用い得る。ハンターColor QUEST分光比色計球型(Hunter Associates Laboratory, Inc, バージニア州, レストンから市販されている) が水晶窓のついたNIR圧縮セル (Bran-Luebbe, Inc., イリノイ州バッファローグラブから市販されている) 及び次のパラメーターを用いる製造者の指示に従う試験と共に用いられる。等級=L、観測装置角度=10、光源=D65、反射率調節=RSIN、視角サイズ=LAV及び紫外線フィルター=不在。
【0059】
例1−タピオカ澱粉を用いる流動床反応器中の発明のデキストリンの製造
流動床反応器に、固形分20%で湿分含量7.4%及びpH4.5のタピオカ澱粉を100部装填した。澱粉を実質的に無水の空気を用いて流動化した。次に流動化された澱粉を、澱粉が固形分20%でpH3.9となるまで、流動化空気流れ中に無水塩化水素ガスを加えることにより酸性化した。
【0060】
デキストリン化過程を開始するために、流動化空気及び反応器の外部蒸気ジャケットを加熱して、3時間以内に185℃の最高澱粉温度を得た。澱粉の湿分含量は2時間以内に7.4%から0.0%に降下した。
澱粉が約185℃の最高温度に達すると(時間=0、t=0)、上記加工条件は、さらに6時間保持された(t=6:00)。試料をt=0から1/2時間ごとに採り、周囲温度まで冷却させた。t=6:00に達すると、空気入口温度を低下させ外側ジャケットに水を加えることにより、流動化澱粉床を冷却して澱粉を周囲温度にさせた。
【0061】
結果を下記表Iに要約する。
【表3】

【0062】
t=0.00、0.50及び1.00時間のボレート化粘度は所望の範囲外であった。
表Iから分かるように、t≧2時間で、デキストリンは周囲水に溶解する。しかしながら、t>3時間までは、「溶液」の透明な外観が証拠となるように、デキストリンは砂糖溶液中に水和性ではない。
【0063】
例2−OSAワキシー澱粉を用いる発明のデキストリンの製造
ワキシーコーン澱粉を撹拌下水に加え、固形分約40%のスラリーを形成する。3(w/v)%のNaOHの水溶液でpHを7.5に調整する。希水酸化ナトリウム溶液でpHを7.5に維持しながら、無水オクテニルスクシン酸をスラリーに加えることにより、該試薬の3%処理を行う。さらに希水酸化ナトリウム溶液を加えずにpHが安定化した時に反応は完了する。pHを希酸溶液で3.0に調整する。次に反応した澱粉を、当分野で既知の方法及び装置を用いて、脱水し、湿分約12%まで乾燥する。これはOSA変性澱粉を生ずる。
OSA変性澱粉を例1に記載の方法に従い、デキストリン化する。
【0064】
例3−伝統的なデキストリンとの比較
A. 油ジャケット付リボン型配合機(伝統的デキストリン化機)に固形分40%のスラリー中で湿分含量4〜6%のタピオカ澱粉の100部を装填する。固形分40%のスラリー中で、3.2のpHが得られるまで、撹拌された澱粉床上に1Nの塩酸溶液を噴霧する。油ジャケットを2〜4時間で185℃の澱粉床が得られるように加熱する。最高澱粉温度をさらに6時間一定に保持して、伝統的な方法により作られたカナリアデキストリンを製造する。
【0065】
B. 最高澱粉温度を160℃に下げた以外は例3Aの手順にしたがってデキストリンを製造する。得られるデキストリンは例3Aよりも高粘度のカナリアデキストリンである。
【0066】
C. 固形分40%のスラリー中で、pHを3.9まで低下させた以外は例3Aの手順に従って、デキストリンを製造する。伝統的な方法を用いて高粘度のカナリアデキストリンを製造する試みであったが、得られたデキストリンに、カナリアデキストリンの溶解性及び溶液安定性は得られなかった。
結果を下記表IIに要約する。
【0067】
【表4】

【0068】
表IIから分かるように、本発明のデキストリンだけが、水に100%溶解性であることに加えて、比較的に高粘度で、かつ、水和性である。伝統的なデキストリンの粘度が増加するにつれ、水溶解性及び水和性は低下する。
【0069】
例4−伝統的なデキストリン及び発明のデキストリンの時間に関する溶液粘度及び安定性の比較
上記例1及び3からのデキストリンの溶液粘度と安定性を手順Dを用いて測定した。結果を下記表III に要約する。
【0070】
【表5】

【0071】
表III から分かるように、本発明のデキストリンの粘度はアラビアゴムほど安定ではないけれども、カナリアデキストリン3A及び3Bよりも顕著に溶液安定性である。例3Cのデキストリンは全く溶液安定性でない。このデキストリンの粘度は時間に関して変化しないけれども、60%の砂糖溶液中に水溶性/水和性でなく(表II参照) 、したがって、試験試料の底でぎっしり詰まった沈降物として存在する。
【0072】
例5−光沢付与シロップとしての本発明のデキストリンの使用
成分 重量%
水 17%
例1のデキストリン(t=6) 5%
砂糖 33%
コーンシロップ(42DE) 45%
水とデキストリンとを十分に分散するまで混合する。砂糖を加え、溶解するまで混合する。次にコーンシロップを加え、溶解するまで混合する。
【0073】
例6−パンコーティングとしての発明のデキストリンの使用
成分 重量%
A.例1のデキストリン(t=6) 33%
水 76%
B.粒状砂糖 62%
水 21%
例1のデキストリン(t=6) 17%
チョコレート、ピーナッツまたはキャンディの芯を回転するパンの中に置き、デキストリンを水に溶解することにより作ったシロップAで湿らせる。これらの被覆された芯を粉末化砂糖で乾燥させる。このコーティング手順を所望のコーティングが完成するまで繰り返す。芯をパンから取り出し、1晩乾燥させる。
【0074】
デキストリンと砂糖を水に溶解することにより作ったシロップBをキャンディに8回ぬらすことで適用し、各サイクルの間に乾燥のために粉末化砂糖を振りかける。次いで、グラニュー糖と着色剤と風味剤とを含有するシロップを用いて、さらにコーティングを蓄積させる。次にキャンディを磨く。
【0075】
注:この分野で既知のほとんどのデキストリンは、これらの高砂糖系においてデキストリンを溶解化するために加熱工程を必要とする。本発明のデキストリンはこのような加熱工程を必要としない。
【0076】
【表6】

【0077】
デキストリンを中位の撹拌下に、溶液が滑らかでかたまりがなくなるまで、水に懸濁する。ゆっくり撹拌しながら風味油をゆっくり加える。混合物を均質化し、次いで、噴霧乾燥させて、封入化油をもたらす。
b. 例7aを8.0gの例1のデキストリン(t=6)及び24.0gの例2のデキストリンを用いて繰り返す。
【0078】
【表7】

【0079】
安息香酸ナトリウム及びクエン酸を水に加える。次いで、デキストリンを中位の撹拌下に完全に分散するまで、混合物に加える。次いで、15分間の激しい撹拌下にかんきつ油を混合する。次いで、約175.8kg/cm2 (2500psi )で、2回通過を用いて混合物を加圧均質化して乳化を達成する。
b. 2.75gの例1のデキストリン(t=6)及び8.25gの例2のデキストリンを用いて例8aを繰り返す。
【0080】
例9−フィルムコーティングとしての発明のデキストリンの使用
成分 重量%
例1のデキストリン(t=6) 17.0
水 73.9
塩 9.1
調味料 所望に応じて
デキストリンを水に加え、任意に約71.1℃(160°F)まで加熱する。デキストリン溶液をこの温度に5分間保ち、次いで、塩と調味料を混合する。次に、ピーナッツをこの溶液に浸して、炒って味つけしたピーナッツを形成する。
【0081】
例10−硬いガム菓子を作るための発明のデキストリンの使用
成分 重量%
例1のデキストリン(t=6) 30.0
42DEコーンシロップ 30.0
スクロース 20.0
水 20.0
酸、着色剤、風味剤 所望に応じて
コーンシロプを77℃に加熱する。別のやかんで、デキストリンを中位の撹拌で水に混合する。連続撹拌しながらコーンシロップと砂糖を加え、88℃に加熱する。次いで、熱いスラリーを135℃でジェットクックする。酸、着色剤及び風味剤を加えて、十分に混合する。混合物を型に入れて、全固形分が少なくとも88%になるまで54℃で乾燥させて、硬いキャンディを生産する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.周囲水に実質的に100%溶解性で、
b.低自由水を有する周囲溶液に実質的に水和性で、
c.カナリアデキストリンに対応する高いボレート化粘度で、かつ、
d.溶液安定性を特徴とする、
デキストリン。
【請求項2】
デキストリンの製造方法であって、
a.最高デキストリン化温度に達する前に実質的に無水まで澱粉を脱水し、
b.前記澱粉が周囲水中に実質的に100%溶解性で、低自由水を有する周囲溶液中に実質的に水和性であり、カナリアデキストリンに対応する高いボレート化粘度を有し、溶液安定性であるまで、実質的に無水条件下で最高デキストリン化温度でデキストリン化する
ことを含む、前記方法。

【公開番号】特開2011−1555(P2011−1555A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−184573(P2010−184573)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【分割の表示】特願平11−119352の分割
【原出願日】平成11年4月27日(1999.4.27)
【出願人】(308036790)ブルノプ トゥヴェーデ ベスローテン フェンノートシャップ (21)
【Fターム(参考)】