説明

高度に濃縮された薬学的製剤

本発明は、皮下注射のための薬学的に活性な抗CD20抗体、例えばリツキシマブ、オクレリズマブ又はHuMab<CD20>、又はかかる抗体分子の混合物の高度に濃縮された安定な薬学的製剤に関する。特に、本発明は、適切な量の抗CD20抗体に加えて、有効量の少なくとも一のヒアルロニダーゼ酵素を組み合わせ製剤として又は共製剤の形態での使用のために含有する製剤に関する。該製剤は加えて少なくとも一の緩衝剤、例えばヒスチジンバッファー、安定剤又は二以上の安定剤の混合物(例えば糖、例えばα,α−トレハロース二水和物又はスクロースと、場合によっては第二安定剤としてメチオニン)、非イオン性界面活性剤及び有効量の少なくとも一のヒアルロニダーゼ酵素を含有する。該製剤の調製方法とその使用もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮下注射のための薬学的に活性な抗CD20抗体又はかかる抗体分子の混合物の高度に濃縮された安定な薬学的製剤に関する。かかる製剤は、多くの量の抗CD20抗体又はその混合物に加えて、緩衝剤、安定剤又は二以上の安定化剤の混合物、非イオン性界面活性剤及び有効量の少なくとも一のヒアルロニダーゼ酵素を含有する。本発明は上記製剤の調製方法とかかる製剤の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
抗体の医薬品としての使用は過去数年にわたり増加している。多くの例では、かかる抗体は静脈内(IV)経路を介して注射され又は注入される。不幸にも、静脈内経路を介して投与されうる抗体の量は、抗体の物理化学的性質、特に適切な液体製剤におけるその溶解度及び安定性と注入液の体積により制限される。代替の投与経路は皮下又は筋肉内注射である。これらの注射経路は注射される最終溶液中において高いタンパク質濃度を必要とする[Shire, S.J., Shahrokh, Z.等, “Challenges in the development of high protein concentration formulations”, J. Pharm. Sci. 2004; 93(6): 1390-1402;Roskos, L.K., Davis C.G.等, “The clinical pharmacology of therapeutic antibodies”, Drug Development Research 2004; 61(3): 108-120]。皮下的に安全にかつ快適に投与されうる体積と、それによって治療用量を増加させるため、抗体製剤が注入されうる間質空間を増加させるためにグリコサミノグリカナーゼ酵素を使用することが提案されている[国際公開第2006/091871号]。
【0003】
現在市場にある治療用途の薬学的に活性な抗体の安定製剤の例は次の通りである:
【0004】
リツキサン(登録商標)/MABTHERAR(登録商標)(リツキシマブ)はB細胞上のCD20抗原に結合するキメラ抗体である。市販製剤は静脈内(IV)投与のための滅菌で透明無色の保存料を含まない液体濃縮物である。リツキシマブは100mg又は500mg(50mL)の頓用バイアルに10mg/mL(10mL)の濃度で供給される。製品9mg/mLの塩化ナトリウム、7.35mg/mLのクエン酸ナトリウム二水和物、0.7mg/mLのポリソルベート80、及び注射用水で製剤化される。pHは6.5に調整されている。IV投与に適したリツキシマブの代替液体製剤は米国特許第6991790号に開示されている。
【0005】
ハーセプチン(商標)(トラスツズマブ)は、およそ21mg/mlの注射用量を得るために注射用水を用いて注入のために再構成しなければならない150mgの凍結乾燥粉末(抗体、α,α−トレハロース二水和物、L−ヒスチジン及びL−ヒスチジン塩酸塩及びポリソルベート20を含む)の形態で欧州において現在市販されているHER2レセプターに対するモノクローナル抗体(抗HER2)である。合衆国及び多くの他の国では、440mgのトラスツズマブを含む複数用量のバイアルが市販されている。
【0006】
アバスチン(商標)(ベバシズマブ)は、a)4mlに100mgのベバシズマブと、b)16mlに400mgのベバシズマブで、次の賦形剤:トレハロース二水和物、リン酸ナトリウム及びポリソルベート20を含む注射用水に25mg/mlの最終濃度をそれぞれもたらす二つのタイプのバイアルの液体製剤として欧州において現在市販されている血管内皮増殖因子(VEGF)に対するモノクローナル抗体である。
【0007】
上記抗体製剤は静脈内投与に適していることが見出されているが、皮下注射のための治療的に活性な抗体の高度に濃縮された安定な薬学的製剤が提供されることが望まれている。皮下注射剤の利点は、患者へのかなり短い治療処置で開業医師がそれを実施することが可能になる点である。更に、患者は皮下注射を自分で実施するように訓練を受けることができる。通常、皮下経路を介した注射はおよそ2mlに限られている。複数用量を必要とする患者では、幾つかの単位投薬製剤が体表面の複数部位に注射されうる。
【0008】
皮下投与のための次の二つの抗体製品は既に市場に出ている。
【0009】
ヒュミラ(商標)(アダリムマブ)は、皮下投与のための0.8ml注射量中、40mg用量の形態(濃度:50mg抗体/ml注射量)で欧州において現在市販されている腫瘍壊死因子α(TNFα)に対するモノクローナル抗体である。
【0010】
ゾレア(商標)(オマリズマブ)は、125mg/mlの注射用量を得るために皮下注射用水を用いて再構成しなければならない150mgの凍結乾燥粉末(抗体、スクロース、及びヒスチジン及びヒスチジン塩酸塩一水和物及びポリソルベート20を含む)の形態で現在市販されている免疫グロブリンEに対するモノクローナル抗体(抗IgE抗体)である。
【0011】
皮下投与に適したそれほど濃縮されていない安定な薬学的抗CD20抗体製剤は現在市場で入手できる。従って、皮下注射のための治療的に活性な抗体の高度に濃縮された安定な薬学的製剤が提供されることが望まれている。
【0012】
皮下組織中への非経口薬の注射は、皮下(SC)組織における水伝導性に対する粘弾性耐性のため、注射時に生成された背圧のため[Aukland K.及びReed R., “Interstitial-Lymphatic Mechanisms in the control of Extracellular Fluid Volume”, Physiology Reviews”, 1993; 73:1-78]、並びに疼痛の知覚のために2ml未満の量に一般に限られている。
【0013】
高濃度タンパク質製剤の調製はかなりやりがいがあるものであり、各々のタンパク質は異なった凝集挙動を有しているので、使用される特定のタンパク質に各製剤を適合させる必要がある。凝集体は事例の少なくとも幾つかにおいて治療用タンパク質の免疫原性を引き起こしやすい。タンパク質又は抗体凝集体に対する免疫原性反応は、治療用タンパク質又は抗体を効果がないようにしうる抗体の中和を生じうる。タンパク質凝集体の免疫原性は皮下注射に関連して最も問題であり、繰り返しの投与は免疫応答のリスクを増加させると思われる。
【0014】
抗体は非常に類似した全体構造を有しているが、かかる抗体はアミノ酸組成(特に抗原への結合の原因のCDR領域中)及びグリコシル化パターンが異なる。更に、電荷及びグリコシル化変異体のような翻訳後修飾がまた存在しうる。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、好ましくは皮下注射のための、薬学的に活性な抗CD20抗体又はそのような抗体分子の混合物の高度に濃縮された安定な薬学的製剤を提供する。
【0016】
より詳細には、本発明の薬学的に活性な抗CD20抗体製剤の高度に濃縮された安定な薬学的製剤は、
− 約20から350mg/mlの抗CD20抗体;
− 5.5±2.0のpHを与える約1から100mMの緩衝剤;
− 約1から500mMの安定剤又は二以上の安定剤の混合物(これによって、場合によってはメチオニンが、好ましくは5から25mMの濃度で、第二の安定剤として使用される);
− 0.01から0.1%の非イオン性界面活性剤;及び
− 好ましくは有効量の少なくとも一のヒアルロニダーゼ酵素
を含有する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここでの「抗体」なる用語は最も広義に使用され、完全長抗体、モノクローナル抗体のような遺伝子操作抗体、又は組換え抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも二の完全長抗体から形成される多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、並びにそれらが所望の生物学的活性を示す限り、抗体断片を特に包含する。
【0018】
ここで使用される「モノクローナル抗体」なる用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体が、一般に微量に存在している変異体など、モノクローナル抗体の生産中に生じ得る可能な変異体を除いて同一であり、及び/又は同じエピトープに結合する。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的には含むポリクローナル抗体調製物とは異なり、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、それらが他の免疫グロブリンによって汚染されなていない点で有利である。「モノクローナル」との修飾語句は、実質的に均一な抗体の集団から得たものとしての抗体の性質を示すものであり、抗体が何か特定の方法による生産を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本発明で使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohler等, Nature 256: 495 (1975)よって記載されたハイブリドーマ法によって作ることができ、あるいは組換えDNA法によって作製されうる(例えば米国特許第4816567号を参照)。「モノクローナル抗体」はまた例えばClackson等, Nature, 352:624-628 (1991)及びMarks等, J. Mol. Biol., 222:581-597(1991)に記載された技術を使用するファージ抗体ライブラリーから単離することもまたできる。ここで使用される「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」なる用語は、単一のアミノ酸組成の抗体分子の調製物を意味する。従って、「ヒトモノクローナル抗体」なる用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変及び定常領域を有し、単一の結合特異性を示す抗体を意味する。一実施態様では、ヒトモノクローナル抗体は、不死化細胞に融合したヒト重鎖導入遺伝子及びヒト軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニック非ヒト動物、例えばトランスジェニックマウスから得られたB細胞を含むハイブリドーマによって産生される。ここで「モノクローナル抗体」なる用語は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の種から誘導された又は特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同であるが、鎖の残りが他の種から誘導された又は特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同であるいわゆるキメラ抗体、並びにそれらが所望の生物学的活性を示す限りそのような抗体の断片である(米国特許第4816567号;及びMorrison等 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855(1984))。キメラ抗体は、非ヒト霊長類(例えば旧世界ザル又は類人猿)由来の可変ドメイン抗原結合配列とヒト定常領域配列を含む「プリマタイズ」抗体を含む。
【0019】
「抗体断片」は、完全長抗体の一部、一般には少なくともその抗原結合部分又は可変領域を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFv断片;ダイアボディ、単鎖抗体分子、免疫毒素、及び抗体断片から形成される多重特異性抗体を含む。また抗体断片は、VH鎖の特性、つまりCD20抗原に結合するVL鎖と集合することができる特性を有する単鎖ポリペプチドを含む。「抗体断片」はまたそれ自体はエフェクター機能(ADCC/CDC)をもたらすことができないが、適切な抗体定常ドメインと組み合わされた後に本発明に従った形でこの機能をもたらすことができる断片を含む。
【0020】
「完全長抗体」は、抗原結合可変領域並びに軽鎖定常ドメイン(CL)及び重鎖定常ドメインCH1、CH2及びCH3を含むものである。定常ドメインは天然配列定常ドメイン(例えばヒト天然配列定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列変異体でありうる。好ましくは、完全長抗体は一又は複数のエフェクター機能を有する。
【0021】
ここでの「アミノ酸配列変異体」抗体は、主な種抗体と異なるアミノ酸配列を有する抗体である。通常、アミノ酸配列変異体は、主な種抗体と少なくとも約70%の相同性を有し、好ましくは、それらは主な種抗体と少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%の相同性である。アミノ酸配列変異体は、主な種抗体のアミノ酸配列内又は隣接して、所定の位置で置換、欠失及び/又は付加を有する。ここでのアミノ酸配列変異体の例には、酸性変異体(例えば脱アミド化された抗体変異体)、塩基性変異体、抗体の一又は二の軽鎖上にアミノ末端リーダー伸展(例えばVHS-)を有する抗体、抗体の一又は二の重鎖上にC末端リジン残基を有する抗体などが含まれ、重鎖及び/又は軽鎖のアミノ酸配列に対する変異の組合せが含まれる。ここで特に関心のある抗体変異体は、抗体の一又は二の軽鎖上にアミノ末端リーダー伸展を含み、場合によっては主な種抗体に対して他のアミノ酸配列及び/又は糖鎖付加(グリコシル化)の相違を更に含んでなる抗体である。
【0022】
ここでの「糖鎖付加(グリコシル化)変異体」抗体は、主な種抗体に結合した一又は複数の炭水化物部分と異なる一又は複数のそれに結合した炭水化物部分を有する抗体である。ここでの糖鎖付加変異体の例には、そのFc領域に結合した、G0オリゴ糖構造の代わりにG1又はG2オリゴ糖構造を有する抗体、その一又は二の軽鎖に結合した一又は二の炭水化物部分を有する抗体、抗体の一又は二の重鎖に結合した炭水化物がない抗体等、及び糖鎖付加変異の組合せを有する抗体が含まれる。更に、「糖鎖付加変異体」なる用語は例えば欧州特許出願公開第1331266号及び米国特許第7517670号に記載されたもののような糖鎖工学操作した抗体も含む。
【0023】
抗体「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列変異体Fc領域)に起因し得る生物学的活性の機能を意味する。抗体エフェクター機能の例は、C1q結合;補体依存性細胞傷害性(CDC);Fcレセプター結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC);食作用;細胞表面レセプターの下方制御(例えばB細胞レセプター;BCR)等を含む。
【0024】
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に依存して、完全長抗体は異なる「クラス」に分類できる。完全長抗体の五つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、それらの幾つかは更に「サブクラス」(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA及びIgA2に分類される。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれα[アルファ]、δ[デルタ]、ε[イプシロン]、γ[ガンマ]及びμ[ミュー]と呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元構造はよく知られている。
【0025】
ここでのモノクローナル抗体の「生物学的活性」は抗原に結合し、インビトロ又はインビボで測定することができる測定可能な生物学的応答を生じる抗体の能力を意味する。そのような活性はアンタゴニスト作用(例えば抗体がCD20抗体である場合)又はアゴニスト作用でありうる。
【0026】
「ヒト化抗体」なる用語は、そのフレームワーク又は「相補性決定領域」(CDR)が、親免疫グロブリンのものと比較して、異なった特異性の免疫グロブリンのCDRを含むよう修飾されている抗体を意味する。好ましい実施態様では、マウスCDRは、「ヒト化抗体」を調製するためにヒト抗体のフレームワーク領域中に移植される。特に好ましいCDRはキメラ及び二機能性抗体に対して以下に記載される抗原を認識するを表すものに対応する。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類のような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)の高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は対応する非ヒト残基によって置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性を更に洗練するためになされる。一般に、ヒト化抗体は、全て又は実質的に全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全て又は実質的に全てのFR残基がヒト免疫グロブリン配列の残基である少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。ヒト化抗体はまた場合によっては免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む(例えばRiechmann, L.等, Nature 332 (1988) 323-327;及びNeuberger, M.S.等, Nature 314 (1985) 268-270を参照)。
【0027】
「キメラ抗体」なる用語は、一つの供給源又は種に由来する可変領域、すなわち結合領域と、別の供給源又は種に由来する定常領域の少なくとも一部分を含む、通常は組換えDNA技術によって調製されるモノクローナル抗体を意味する。マウス可変領域及びヒト定常領域を含むキメラ抗体が特に好ましい。このようなマウス/ヒトキメラ抗体は、マウス免疫グロブリン可変領域をコードするDNAセグメントとヒト免疫グロブリン定常領域をコードするDNAセグメントを含む免疫グロブリン遺伝子を発現させた産物である。本発明によって包含される「キメラ抗体」の他の形態は、クラス又はサブクラスが元の抗体のものから改変又は変化せしめられたものである。このような「キメラ」抗体は、「クラススイッチ抗体」とも称される。キメラ抗体を作製するための方法は、一般的な組換えDNA及び当該技術分野で今はよく知られている遺伝子トランスフェクション技術を含む(例えば、Morrison, S.L.等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81 (1984) 6851-6855;米国特許第5202238号及び米国特許第5204244号を参照のこと)。
【0028】
ここで使用される「ヒト抗体」なる用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変及び定常領域を有する抗体を含むことが意図される。ヒト抗体は従来からよく知られている(van Dijk, M.A.及びvan de Winkel, J.G., Curr. Opin. Pharmacol. 5 (2001) 368-374)。かかる技術に基づいて、非常に様々な標的に対するヒト抗体を製造できる。ヒト抗体の例は例えばKellermann, S.A.等, Curr Opin Biotechnol. 13 (2002) 593-597に記載されている。
【0029】
ここで使用される「組換えヒト抗体」なる用語は、組換え手段によって調製され、発現され、創製され又は単離された全てのヒト抗体、例えばヒト免疫グロブリン遺伝子に対してトランスジェニックである動物(例えばマウス)に由来するか又はNS0細胞又はCHO細胞のような宿主細胞から単離された抗体又は宿主細胞に形質移入された組換え発現ベクターを使用して発現される抗体を含むことが意図される。このような組換えヒト抗体は、再編成された形態のヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変及び定常領域を有する。本発明に係る組換えヒト抗体は、インビボ体細胞突然変異に供されている。よって、組換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VH及びVL配列に由来し、これらに関するものであるが、インビボでヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然に存在しない場合がある配列である。
【0030】
ここで使用される場合、「特異的結合」又は「特異的に結合する」なる用語は、CD20抗原に特異的に結合する抗体を意味する。好ましくは、結合親和性は10−mol/l以下(例えば10−10mol/l)のKd値、好ましくは 10−10mol/l以下(例えば10−12mol/l)のKd値である。結合親和性は、表面プラズモン共鳴法(BIACORE(登録商標))のような標準的な結合アッセイで決定される。
【0031】
ここで使用される「核酸分子」なる用語は、DNA分子及びRNA分子を含むことが意図される。核酸分子は一本鎖又は二本鎖でありうるが、好ましくは二本鎖DNAである。
【0032】
「定常ドメイン」は抗原に対する抗体の結合には直接的には関与しないがエフェクター機能(ADCC、補体結合、及びCDC)に関与している。
【0033】
ここで使用される「可変領域」(軽鎖(VL)の可変領域、重鎖(VH)の可変領域)は、抗原への抗体の結合に直接関与する軽鎖及び重鎖の各対を示す。ヒト軽鎖及び重鎖の可変ドメインは同じ一般構造を有し、各ドメインが、その配列が広く保存され、3つの「高頻度可変領域」(又は相補性決定領域、CDR)によって連結された4つのフレームワーク(FR)領域を含む。フレームワーク領域はβシート高次構造を採用し、CDRはβシート構造を連結するループを形成しうる。各鎖のCDRは、フレームワーク領域によってその三次元構造に維持され、他の鎖のCDRと一緒になって抗原結合部位を形成する。抗体重鎖及び軽鎖CDR3領域は本発明に係る抗体の結合親和性/親和性において特に重要な役割を果たしており、よって本発明の更なる目的を提供する。
【0034】
「高頻度可変領域」又は「抗体の抗原結合部分」なる用語は、ここで使用される場合、抗原結合を担っている抗体のアミノ酸残基を意味する。高頻度可変領域は、「相補性決定領域」又は「CDR」に由来するアミノ酸残基を含む。「フレームワーク」又は「FR」領域は、ここで定義される高頻度可変領域残基以外の可変ドメイン領域である。よって、抗体の軽鎖及び重鎖は、N末端からC末端に向かって、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4を含む。特に、重鎖のCDR3は、抗原結合に最も寄与する領域である。CDR及びFR領域は、Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5版 Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)の標準的な定義に従って決定され、及び/又は「高頻度可変ループ」からの残基である。
【0035】
「CD20」及び「CD20抗原」という用語はここでは互換的に使用され、細胞により天然に発現される、又はCD20遺伝子を形質移入した細胞で発現されるヒトCD20の任意の変異体、アイソフォーム及び種ホモログを含む。本発明の抗体のCD20抗原への結合は、CD20の不活性化によるCD20発現細胞(例えば腫瘍細胞)の死滅を媒介する。CD20発現細胞の死滅は、次の機構の一又は複数によって生じうる:抗体依存性細胞傷害性(ADCC)細、補体依存性細胞傷害性(CDC)、誘導細胞死及び/又はアポトーシス、ホモタイプ凝集等。
【0036】
当該技術分野で認識されているCD20の同意語には、B−リンパ球抗原CD20、B−リンパ球表面抗原B1、Leu−16及びBp35が含まれる。
【0037】
本発明に係る「抗CD20抗体」なる用語は、CD20抗原に特異的に結合する抗体である。抗CD20抗体のCD20抗原への結合特性及び生物活性に応じて、Cragg, M.S.等, Blood 103 (2004) 2738-2743;及びCragg, M.S.等, Blood 101 (2003) 1045-1051に従い、2つのタイプの抗CD20抗体(I型及びII型抗CD20抗体)に区別できる。表1を参照のこと。

【0038】
I型及びII型抗CD20抗体の一つの本質的な性質はその結合態様である。而して、I型及びII型抗CD20抗体は、リツキシマブと比較して上記抗CD20抗体のラジ(Raji)細胞(ATTC番号CCL−86)上のCD20に対する結合能の比によって分類することができる。
【0039】
ここで使用される場合、「抗CD20抗体」はI型又はII型抗体のいずれかでありうる。好ましくはそれはI型抗体であり、最も好ましくはリツキシマブである。
【0040】
I型抗CD20抗体は、0.8から1.2、好ましくは0.9から1.1のリツキシマブと比較した上記抗CD20抗体のラジ細胞(ATTC番号CCL−86)上のCD20に対する結合能の比を有している。かかるI型抗CD20抗体の例は、例えば、欧州特許第2000149B1号(Anderson等,例えば図4及び5を参照)リツキシマブ、1F5 IgG2a(ECACC,ハイブリドーマ;Press等, Blood 69/2:584-591 (1987))、HI47 IgG3(ECACC,ハイブリドーマ)、2C6 IgG1(国際公開第2005/103081号に開示)、2F2 IgG1又はオファツムマブ(国際公開第2004/035607号及び国際公開第2005/103081号に開示)及び2H7 IgG1(国際公開第2004/056312号に開示)及び国際公開第2006/084264号(例えば表1及び2に開示された変異体)を含む。好ましくは、上記I型抗CD20抗体は、リツキシマブと同じエピトープに結合するモノクローナル抗体である。
【0041】
II型抗CD20抗体は、0.3から0.6、好ましくは0.35から0.55、より好ましくは0.4から0.5のリツキシマブと比較した上記抗CD20抗体のラジ細胞(ATTC番号CCL−86)上のCD20に対する結合能の比を有している。かかるII型抗CD20抗体の例は、例えば、トシツモマブ(B1 IgG2a)、ヒト化B−Ly1抗体IgG1(国際公開第2005/044859号に開示されたキメラヒト化IgG1抗体)、11B8 IgG1(国際公開第2004/035607号に開示)、及びAT80 IgG1を含む。好ましくは、上記II型抗CD20抗体は、ヒト化B−Ly1抗体(国際公開第2005/044859に開示)と同じエピトープに結合するモノクローナル抗体である。
【0042】
「リツキシマブと比較した抗CD20抗体のラジ細胞(ATTC番号CCL−86)上のCD20に対する結合能の比」は、ラジ細胞(ATTC番号CCL−86)と共にFACSArray(Becton Dickinson)においてCy5がコンジュゲートした上記抗CD20抗体とCy5がコンジュゲートしたリツキシマブを使用して、直接免疫蛍光測定法 (平均蛍光強度(MFI)を測定)によって決定され、次のようにして計算される:

【0043】
MFIは平均蛍光強度である。ここで使用される「Cy5標識比」は分子抗体当たりのCy5標識分子の数を意味する。
【0044】
典型的には、上記I型抗CD20抗体は、0.8から1.2、好ましくは0.9から1.1のリツキシマブと比較した上記第一の抗CD20抗体のラジ細胞(ATTC番号CCL−86)上のCD20に対する結合能の比を有している。
【0045】
典型的には、上記II型抗CD20抗体は、0.3から0.6、好ましくは0.35から0.55、より好ましくは0.4から0.5のリツキシマブと比較した上記第二抗CD20抗体のラジ細胞(ATTC番号CCL−86)上のCD20に対する結合能の比を有している。
【0046】
好ましい実施態様では、上記II型抗CD20抗体、好ましくはヒト化B−Ly1抗体は、増加した抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を有している。
【0047】
「増加した抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を有する抗体」は、該用語がここで定義されるように、当業者に知られる任意の適切な方法により決定されて、増加したADCCを有する抗体を意味する。一つの許容されるインビトロADCCアッセイは、次の通りである:
1)該アッセイは、抗体の抗原結合領域により認識される標的抗原を発現することが知られている標的細胞を使用する;
2)該アッセイは、エフェクター細胞として、無作為に選択された健常なドナーの血液から単離されたヒト末梢血単核細胞(PBMC)を使用する;
3)該アッセイは、次のプロトコルに従って実施される:
i)標準的な密度遠心分離手順を使用してPBMCを単離し、5×10細胞/mlの濃度でRPMI細胞培養培地に懸濁させる;
ii)標準的な組織培養法により標的細胞を増殖させ、生存率が90%以上の対数増殖期に回収し、RPMI細胞培養培地中で洗浄し、100マイクロキュリーの51Crで標識し、細胞培養培地で2回洗浄し、10細胞/mlの密度で細胞培養培地に再懸濁させる;
iii)上記100マイクロリットルの最終的な標的細胞懸濁物を96ウェルのマイクロタイタープレートの各ウェルに移す;
iv)抗体を細胞培養培地で4000ng/mから0.04ng/mlに連続希釈し、50マイクロリットルの得られた抗体溶液を96ウェルマイクロタイタープレート中の標的細胞に添加し、上記の全濃度範囲をカバーする様々な抗体濃度で3回試験する;
v)最大放出(MR)コントロールに対して、標識された標的細胞を含むプレート中の更なる3つのウェルに、抗体溶液(上記のiv項)に代えて、50マイクロリットルの非イオン性洗浄剤(Nonidet, Sigma, St. Louis)の2%(VN)水溶液を添加する;
vi)自然放出(SP)コントロールに対して、標識された標的細胞を含むプレート中の更なる3つのウェルに、抗体溶液(上記のiv項)に代えて、50マイクロリットルのRPMI細胞培養培地を添加する;
vii)ついで、96ウェルマイクロタイタープレートを50xgで1分間遠心分離し、1時間4℃でインキュベートする;
viii)標的細胞に対するエフェクターの比が25:1となるように各ウェルに50マイクロリットルのPBMC懸濁液(上記のi項)を添加して、該プレートを37℃、5%CO2のインキュベーター中に4時間配する;
ix)各ウェルから無細胞の上清を回収し、ガンマカウンターを使用して、実験的に放出された放射能(ER)を定量する;
x)特定の細胞溶解の割合を、各抗体濃度について、式(ER−MR)/(MR−SR)×100に従って計算する。ここで、ERは、各抗体濃度で定量(上記のix項)された平均放射能であり、MRは、MRコントロール(上記のv項)において定量(上記のix項)された平均放射能であり、SRは、SRコントロール(上記のvi項)において定量(上記のix項)された平均放射能である;
4)「増加したADCC」は、上記の試験された抗体濃度範囲内で観察される特定の細胞溶解の最大割合の増加、及び/又は上記の試験された抗体濃度範囲内で観察される特定の細胞溶解の最大割合の半分を達成するのに必要な抗体濃度の減少の何れかとして定義される。ADCCの増加は、上記アッセイで測定され、当業者に知られている同じ標準的な生産、精製、製剤化及び保存法を使用して同じ種類の宿主細胞により産生された同じ抗体により媒介されるものであるが、GnTIIIを過剰発現するように操作された宿主細胞により産生されたものではないADCCと比較したものである。
【0048】
前記「増加したADCC」は、前記抗体の糖操作により得ることができ、これは、Umana, P.等, Nature Biotechnol. 17 (1999) 176-180及び米国特許第6602684号に記載されたそのオリゴ糖類成分の操作によるモノクローナル抗体の前記天然の細胞媒介性エフェクター機能の亢進を意味する。
【0049】
「補体依存性細胞傷害性(CDC)」なる用語は、補体存在下での本発明に係る抗体によるヒト腫瘍標的細胞の溶解を意味する。CDCは、好ましくは、補体の存在下で本発明に係る抗CD20抗体を用いたCD20発現細胞の調製物の処理により測定される。CDCは、抗体が、100nMの濃度で4時間後に腫瘍細胞を20%以上溶解(細胞死)させるかどうかにより見出される。該アッセイは、好ましくは、51Cr又はEu標識腫瘍細胞で、放出された51Cr又はEuの測定により実施される。コントロールは、抗体を含まないで補体と腫瘍標的細胞をインキュベーションすることを含む。
【0050】
典型的には、IgG1アイソタイプのI型及びII型抗CD20抗体は特徴的なCDC特性を示す。I型抗CD20抗体は、互いに比較して増加したCDC(IgG1アイソタイプならば)を、II型抗CD20抗体は、減少したCDC(IgG1アイソタイプならば)を有している。好ましくはI型及びII型抗CD20抗体は共にIgG1アイソタイプ抗体である。
【0051】
「リツキシマブ」抗体は、ヒトCD20抗原に対する遺伝子操作キメラヒトガンマ1マウス定常ドメイン含有モノクローナル抗体である。このキメラ抗体は、ヒトガンマ1定常ドメインを含み、欧州特許第2000149B1号(Andersen等、図4及び5を参照)に「C2B8」という名称で特定されている。リツキシマブは、再発性又は難治性の低悪性度又は濾胞性のCD20陽性B細胞非ホジキンリンパ腫の患者の治療に対して承認されている。インビトロ作用機序研究は、リツキシマブがヒト補体依存性細胞傷害性(CDC)を示すことを示している(Reff等, Blood 83(2) 435-445(1994))。加えて、リツキシマブは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を測定するアッセイにおいて有意な活性を示す。
【0052】
「ヒト化B−Ly1抗体」なる用語は、国際公開第2005/044859号に開示されたヒト化B−Ly1抗体を意味し、これらは、マウスモノクローナル抗CD20抗体のB−Ly1(マウス重鎖(VH)の可変領域:配列番号1;マウス軽鎖(VL)の可変領域:配列番号2;Poppema, S.及びVisser, L., Biotest Bulletin 3 131-139(1987)を参照のこと)を、IgG1由来のヒト定常ドメインを用いてキメラ化され、ついでヒト化することにより取得された(国際公開第2005/044859号を参照のこと)。これらの「ヒト化B−Ly1抗体」は、国際公開第2005/044859号に詳細に開示されている。
【0053】
好ましくは、「ヒト化B−Ly1抗体」は、配列番号3から配列番号20の群から選択される重鎖(VH)の可変領域を有する(国際公開第2005/044859のB−HH2からB−HH9及びB−HL8からB−HL17)。特に好ましいのは、配列番号3、4、7、9、11、13及び15である(国際公開第2005/044859号のB−HH2、BHH−3、B−HH6、B−HH8、B−HL8、B−HL11及びB−HL13)。最も好ましくは上記VHはBHH6である。好ましくは、「ヒト化B−Ly1抗体」は、国際公開第2005/044859号の配列番号20(B−KVl)の軽鎖(VL)の可変領域を有する。更に、ヒト化B−Ly1抗体は好ましくはIgG1抗体である。好ましくは、かかるヒト化B−Ly1抗体は、国際公開第2005/044859号、国際公開第2004/065540号、Umana, P.等, Nature Biotechnol. 17:176-180(1999)及び国際公開第99/154342号に記載された手順に従ってFc領域において糖鎖操作(GE)される。殆どの糖操作されたヒト化B−Ly1抗体は、Fc領域において改変されたグリコシル化パターンを有しており、好ましくは、フコース残基のレベルが低下している。好ましくは、Fc領域のオリゴ糖の少なくとも40%以上(一実施態様では、40%と60%の間、他の実施態様では、少なくとも50%、更に他の実施態様では、少なくとも70%以上)がフコシル化されていない。更に、Fc領域のオリゴ糖は好ましくは二分されている。最も好ましくは、「ヒト化B−Ly1抗体」は国際公開第2005/044859号のVH B−HH6及びVL B−KV1を含む。ここで使用される場合、上記抗体はまた「HuMab<CD20>」とも称される。上記抗体はINNアフツズマブと命名された。他の最も好ましい実施態様では、上記抗体は上述のように減少したレベルのフコース残基を有しており、及び/又はFc領域のオリゴ糖は最も好ましくは二分されている。更に他の最も好ましい実施態様では、上記抗体は増加したここで定義されたADCCを示す。
【0054】
オリゴ糖成分は、物理的安定性、プロテアーゼ攻撃に対する耐性、免疫系との相互作用、薬物動態、及び特定の生物活性を含む、治療用糖タンパク質の効能に関連した特性に有意に影響し得る。そのような性質は、オリゴ糖の有無だけでなく、その特定の構造にも依存しうる。オリゴ糖構造と糖タンパク質機能との間のある一般化を図ることができる。例えば、所定のオリゴ糖構造は、特定の糖結合タンパク質との相互作用を通じての血流からの糖タンパク質の迅速な排除を媒介する一方、他のものは抗体に結合し、望まれない免疫反応を惹起させる(Jenkins, N.等, Nature Biotechnol. 14:975-981 (1996))。
【0055】
哺乳動物細胞は、ヒトへの応用に最も適合性のある形態にタンパク質をグリコシル化するその能力のために治療用糖タンパク質生産のための好ましい宿主である(Cumming等, Glycobiology 1:115-30 (1991);Jenkins, N.等, Nature Biotechnol. 14:975-981(1996))。細菌はタンパク質を非常に希にしかグリコシル化せず、酵母、糸状真菌、昆虫及び植物細胞等の他のタイプの一般的な宿主と同様に、血流からの迅速な排除、望ましくない免疫相互作用、ある特定の場合では、生物活性の低下に関与するグリコシル化パターンを生じる。哺乳動物細胞の中で、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、最近20年間に最も一般的に使用されている。適切なグリコシル化パターンを与えるのに加えて、これらの細胞は、遺伝的に安定で、高度に生産性のクローン細胞系の一貫した産生を可能とする。これらは、簡単なバイオリアクター中で、無血清培地を使用して高密度で培養することが可能で、安全かつ再現可能なバイオプロセスの開発を可能にする。他の一般的に使用される動物細胞は、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、NS0−及びSP2/0−マウスミエローマ細胞を含む。より最近では、トランスジェニック動物からの生産もまた試験されている。(Jenkins等, Nature Biotechnol. 14:975-981(1996))。
【0056】
全ての抗体は、重鎖定常領域の保存位置に炭水化物構造を含み、各アイソタイプは、N結合型炭水化物構造の別個のアレイを有し、これらはタンパク質構築、分泌又は機能的活性に様々に影響する(Wright, A.及びMonison, S.L., Trends Biotech. 15:26-32(1997))。結合したN結合炭水化物の構造は、プロセシングの度合いに応じてかなり変化し、高マンノースの多重に分岐した、並びに二分岐複合体オリゴ糖を含みうる。典型的には、特定のグリコシル化部位で結合したコアオリゴ糖構造の不均一なプロセシングが存在し、モノクローナル抗体であっても複数の糖形態として存在する。同様に、細胞株の間で抗体のグリコシル化において大きな差異が生じることが示されており、異なる培養条件下で増殖した与えられた細胞株に対して更に僅かな差異が見られる(Lifely, M.R.等, Glycobiology 5(8):813-22(1995))。
【0057】
単純な生産プロセスを維持し、有意な望ましくない副作用を潜在的に回避しながら、効力を大きく増加させる一つの方法は、Umana, P.等, Nature Biotechnol. 17:176-180(1999)及び米国特許第6602684号に記載されるように、そのオリゴ糖成分を操作することにより、モノクローナル抗体の天然の細胞媒介性エフェクター機能を亢進させることである。癌免疫療法において最も一般的に使用される抗体であるIgG1型抗体は、各CH2ドメインのAsn297に保存されたN結合型グリコシル化部位を有する糖タンパク質である。Asn297に結合した2つの複合した2分岐オリゴ糖は、CH2ドメイン間に埋まり、ポリペプチド主鎖との広範な接触を形成し、その存在は、抗体が抗体依存性細胞傷害性(ADCC)等のエフェクター機能を媒介するのに必須である(Lifely, M.R.等, Glycobiology 5:813-822(1995);Jefferis, R.等, Immunol. Rev. 163:59-76(1998);Wright, A.及びMorrison, S.L., Trends Biotechnol. 15:26-32(1997))。
【0058】
2分岐オリゴ糖の形成を触媒するグリコシルトランスフェラーゼであるβ(l,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(「GnTIII」)のチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞における過剰発現が、操作されたCHO細胞により生産される抗神経芽細胞腫キメラモノクローナル抗体(chCH7)のインビトロADCC活性を有意に増加させることが既に示されている(その全内容が出典明示によりここに援用されるUmana, P.等, Nature Biotechnol. 17:176-180(1999);及び国際公開第99/154342号を参照)。抗体chCE7は、高い腫瘍親和性及び特異性を有するが、GnTIII酵素を欠く標準的な工業用細胞株において生産された場合、殆ど効力を有さず臨床的に有用ではない非コンジュゲートモノクローナル抗体の大きなクラスに属する(Umana, P.等, Nature Biotechnol. 17:176-180(1999))。その研究は、2分岐非フコシル化オリゴ多糖を含む、定常領域(Fc)に結合した2分岐のオリゴ糖の割合の増加をまた引き起こす、GnTIIIを発現するように、抗体産生細胞を操作することにより、天然に生じる抗体に見出されるレベルを超えて、ADCC活性の大幅な増加が達成されうることを最初に示したものである。
【0059】
「CD20抗原の発現」なる用語は、腫瘍又は癌のそれぞれに由来し、好ましくは非固形腫瘍に由来する細胞、好ましくはB細胞の細胞表面、より好ましくはB細胞にCD20抗原の有意なレベルの発現を示すことを意図する。「CD20発現癌」の患者は、当該技術分野で知られている標準的なアッセイにより判定されうる。「CD20抗原の発現」は、自己免疫疾患において、細胞、好ましくはB細胞の細胞表面、より好ましくはB細胞にCD20抗原の有意なレベルの発現を示すことをまた好ましくは意図する。CD20抗原の発現は、例えば免疫組織化学(IHC)検出、FACS又は対応するmRNAのPCRに基づく検出を介して測定される。
【0060】
「患者」又は「被検体」は本発明に係る症状又は疾患を被っている任意の哺乳動物であり、好ましくはヒトである。
【0061】
ここで使用される「CD20発現癌」なる用語は、好ましくはリンパ腫(好ましくはB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL))及びリンパ性白血病を意味する。かかるリンパ腫及びリンパ性白血病には、例えば(a)濾胞性リンパ腫、(b)小非切断細胞リンパ腫/バーキットリンパ腫(風土性バーキットリンパ腫、散発性バーキットリンパ腫及び非バーキットリンパ腫を含む)、(c)辺縁帯リンパ腫(節外性辺縁帯B細胞リンパ腫(粘膜関連リンパ組織リンパ腫、MALT)、結節性辺縁帯B細胞リンパ腫及び脾臓性辺縁帯リンパ腫を含む)、(d)マントル細胞リンパ腫(MCL)、(e)大細胞リンパ腫(B細胞びまん性大細胞リンパ腫(DLCL)、びまん性混合細胞リンパ腫、免疫芽球性リンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫、血管中心性肺B細胞リンパ腫を含む)、(f)ヘアリーセル白血病、(g)リンパ性リンパ腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、(h)急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ性リンパ腫(SLL)、B細胞前リンパ球性白血病、(i)形質細胞新生物、形質細胞骨髄腫、多発性骨髄腫、形質細胞腫及び(j)ホジキン病を含む。
【0062】
好ましくは、CD20発現癌は、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)である。CD20発現癌の他の例は、マントル細胞リンパ腫(MCL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、B細胞びまん性大細胞リンパ腫(DLCL)、バーキットリンパ腫、ヘアリーセル白血病、濾胞性リンパ腫、多発性骨髄腫、辺縁帯リンパ腫、移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、HIV関連リンパ腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、又は原発性CNSリンパ腫である。
【0063】
ここでの「自己免疫疾患」は、個人自身の組織又は器官から、またこれらに対して生じる疾患又は障害に関する。自己免疫疾患又は障害の例には、限定されないが、関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎)、乾癬、皮膚炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、中毒性上皮性表皮壊死症、全身性硬皮症及び硬化症、炎症性腸疾患と関連している反応、クローン病、潰瘍性大腸炎、呼吸窮迫症候群、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、髄膜炎、脳炎、ブドウ膜炎、大腸炎、糸球体腎炎、アレルギー性症状、湿疹、喘息、T細胞浸潤及び慢性の炎症性反応を伴う症状、アテローム性動脈硬化症、自己免疫心筋炎、白血球癒着不全、全身エリテマトーデス(SLE)、若年型糖尿病、多発性硬化症、アレルギー性脳脊髄炎、サイトカイン及びTリンパ球によって媒介される急性及び遅延過敏症と関連している免疫反応、結核、類肉腫症、ウェーゲナー肉芽腫症を含む肉芽腫症、無顆粒球症、脈管炎(ANCAを含む)、無形成性貧血、ダイアモンドブラックファン貧血症、自己免疫溶血性貧血(AIHA)を含む免疫性の溶血性貧血、悪性貧血、赤芽球癆(PRCA)、第VIII因子欠乏、血友病A、自己免疫好中球減少症、汎血球減少症、白血球減少症、白血球血管外遊出を伴っている疾患、中枢神経系(CNS)炎症性疾患、多臓器損傷症候群、重症筋無力症、抗原抗体複合体媒介疾患、抗糸球体基底膜抗体病、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット病、キャッスルマン病、グッドパスチャー症候群、ランバート・イートン筋無力症候群、レイノー症候群、シェーグレン症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群、類天疱瘡水疱、天疱瘡、自己免疫多腺性内分泌障害、腎症、IgM多発神経障害又はIgM媒介神経障害、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫血小板減少、自己免疫性睾丸炎及び卵巣炎を含む精巣及び卵巣の自己免疫疾患、原発性甲状腺機能低下;自己免疫甲状腺炎、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)、亜急性甲状腺炎、特発性副甲状腺機能低下症、アジソン病、グレーブ病、自己免疫性多腺性症候群(又は多腺性I型内分泌障害症候群)、インシュリン依存性真性糖尿病(IDDM)とも称されるI型糖尿病及びシーハン症候群を含む自己免疫性内分泌疾患;自己免疫肝炎、リンパ系の間質性肺臓炎(HIV)、閉塞性細気管支炎(非移植)対NSIP、ギランバレー症候群、大血管性脈管炎(リウマチ性多発性筋痛及び巨細胞(高安)動脈炎を含む)、中血管性脈管炎(川崎病及び結節性多発性動脈炎を含む)、強直性脊椎炎、ベルジェ病(IgA腎症)、急速進行性糸球体腎炎、原発性胆汁性肝硬変、セリアック病(グルテン腸疾患)、クリオグロブリン血症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、冠状動脈疾患などが含まれる。
【0064】
ここで使用される場合、「増殖阻害剤」は、インビトロ又はインビボで細胞、特にCD20発現癌細胞の増殖を阻害する化合物又は組成物を意味する。よって、増殖阻害剤は、S期にあるCD20発現細胞の割合を有意に減少させるものでありうる。増殖阻害剤の例は、細胞周期の進行を(S期以外の位置で)ブロックする薬剤、例えばG1停止又はM期停止を誘発する薬剤を含む。古典的なM期ブロッカーは、ビンカス(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキソール、及びトポIIインヒビター、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンを含む。G1を停止する薬剤は、S期停止にも溢流し、例えば、DNAアルキル化剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、及びアラ-Cである。更なる情報は、"The Molecular Basis of Cancer", Mendelsohn及びIsrael編, Chapter 1, 表題"Cell cycle reguration, oncogene, and antineoplastic drugs", Murakami等, (WB Saunders: Philadelphia, 1995)、特に13頁に見出すことができる。
【0065】
「治療」は治癒的治療と予防的又は防止的対策の双方を意味する。治療を必要とする者は疾患を既に持つ者並びに疾患が防止されなければならない者を含む。よって、ここで治療される患者は、その疾患を有すると診断されたか、又はその疾患の素因があるかもしくはその疾患に罹りやすい者である。
【0066】
ここで使用される「細胞傷害剤」なる用語は、細胞の機能を阻害又は阻止し、及び/又は細胞破壊をもたらす物質を意味する。この用語は、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32及びLuの放射性同位元素)、化学療法剤、及び毒素、例えば小分子毒素又は細菌、真菌、植物又は動物起源の酵素活性毒素でその断片及び/又は変異体を含むものを含むことを意図する。
【0067】
「化学療法剤」は、癌の処置に有用な化学的化合物である。化学療法剤の例は、アルキル化剤、例えばチオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXAN(商標));アルキルスルホネート、例えばブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン;アジリジン、例えばベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、及びウレドーパ;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド、及びトリメチロールメラミンを含むエチレンイミン及びメチラメラミン(methylamelamine);アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン(bullatacinone));δ−9−テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARENOL(商標));β−ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成アナログのトポテカン(HYCAMTIN(商標))、CPT−11(イリノテカン、CAMPTOSAR(商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレクチン(scopolectin)、及び9−アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC−1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン、及びビゼレシン合成アナログを含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸(podophyllinic acid);テニポシド;クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成アナログKW−2189及びCB1−TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンギスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノブエンビキン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソ尿素、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチン(ranimnustine);抗生物質、例えば、エンジイン抗生物質(例えばカリケアマイシン、特にカリケアマイシンγ1I及びカリケアマイシンωI1(例えば、等、Agnew, Chem Intl. Ed. Engl., 33:183-186 (1994)を参照));ダイネマイシンAを含むダイネマイシン;エスペラマイシン;並びにネオカルジノスタチン発色団及び関連色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN(商標)、モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシン、ドキソルビシンHClリポソーム注射剤(DOXIL(商標))、リポソームドキソルビシンTLCD−99(MYOCET(商標))、ペグ化リポソームドキソルビシン(CAELYX(商標))及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えばマイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗剤、例えばメトトレキセート、ゲムシタビン(GEMZAR(商標))、テガフール(UFTORAL(商標))、カペシタビン(XELODA(商標))、エポチロン、及び5−フルオロウラシル(5−FU);葉酸アナログ、例えばデノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセート;プリンアナログ、例えばフルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジンアナログン、例えばアンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン;抗副腎剤、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸リプレニッシャー(replenisher)、例えばフロリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシノイド、例えばメイタンシン(maytansine)及びアンサミトシン(ansamitocin);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン(losoxantrone);2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSKL(商標)多糖類複合体(JHS Natural Products,Eugene,OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2”−トリクロロトリエチルアミン;トリコテシン(特にT−2毒素、ベラクリン(verracurin)A、ロリジンA及びアングイジン);ウレタン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン;アラビノシド(「Ara−C」);チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセル(TAXOL(商標))、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子処方物(ABRAXANE(商標))、及びドセタキセル(TAXOTERE(商標));クロラムブシル;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;白金剤、例えばシスプラチン、オキサリプラチン、及びカルボプラチン;チューブリン重合化を微小管を形成しないように妨げるビンカ(vincas)であって、ビンブラスチン(VELBAN(商標))、ビンクリスチン(ONCOVIN(商標))、ビンデシン(ELDISINE(商標)、FILDESIN(商標))、及びビノレルビン(NAVELBINE(商標))を含むもの;エトポシド(VP−16);イフォスファミド;ミトキサントロン;ロイコボリン(leucovovin);ノバントロン(novantrone);エダトレキセート(edatrexate);ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロネート;トポイソメラーゼインヒビターRFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド、例えばレチノイン酸、例えばベキサロテン(bexarotene)(TARGRETIN(商標));ビスホスホネート、例えばクロドロネート(clodronate)(例えばBONEFOS(商標)又はOSTAC(商標))、エチドロネート(etidronate)(DIDROCAL(商標))、NE−58095、ゾレドロン酸/ゾレドロン酸塩(ZOMETA(商標))、アレンドロネート(FOSAMAX(商標))、パミドロネート(AREDIA(商標))、チルドロネート(tiludronate)(SKELID(商標))、又はリセドロネート(risedronate)(ACTONEL(商標));トロキサシタビン(1,3−ジオキソランヌクレオシドシトシンアナログ);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に異常な細胞増殖に関与するシグナル伝達経路で遺伝子の発現を阻害するオリゴヌクレオチド、例えばPKC−α、Raf、H−Ras及び上皮増殖因子レセプター(EGF−R);ワクチン、例えばTHERATOPE(商標)ワクチン及び遺伝子治療ワクチン、例えばALLOVECTIN(商標)ワクチン、LEUVECTIN(商標)ワクチン、及びVAXID(商標)ワクチン;トポイソメラーゼ1インヒビター(例えばLURTOTECAN(商標));rmRH(例えばABARELIX(商標));BAY439006(ソラフェニブ;Bayer);SU−11248(Pfizer);ペリフォシン(perifosine)、COX−2インヒビター(例えば、セレコキシブ又はエトリコキシブ)、プロテオソームインヒビター(例えば、PS341);ボルテゾミブ(VELCADE(商標));CCI−779;ティピファルニブ(tipifarnib)(R11577);オラフェニブ、ABT510;Bcl−2インヒビター、例えばオブリマーセンナトリウム(oblimersen sodium)(GENASENSE(商標));ピクサントロン;EGFRインヒビター(以下の定義を参照);チロシンキナーゼインヒビター(以下の定義を参照);及び任意の上記のものの薬学的に許容可能な塩、酸又は誘導体;並びに上記の二以上の組合せ、例えば、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニゾロンの併用療法についての略号であるCHOP(場合によっては更にインターフェロン−αを含む(CHVP/インターフェロン−α))、オキサリプラチン(ELOXATIN(商標))と5−FU及びロイコボリン(leucovovin)とを併用した治療レジメンの略号であるFOLFOX、CVP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、及びプレドニゾロン)、MCP(ミトザントロン、クロラムブシル及びプレドニゾロン)、FC(フルダラビン及びシクロホスファミド)、ICE(イフォスファミド、カルボプラチン、及びエトポシド)、及びデキサメタゾン、シタラビン、及びシスプラチン(DHAP)、デキサメタゾン、ドキソルビシンリポソーム、及びビンクリスチン(DVD)等を含む。
【0068】
「抗血管形成剤」は、血管の発達をある程度まで遮断し又は妨害する化合物を意味する。抗血管形成因子は、例えば、血管形成の促進に関与する増殖因子又は増殖因子レセプターに結合する低分子又は抗体でありうる。ここでの好ましい抗血管形成因子は、ベバシズマブ(AVASTIN(商標))等の血管内皮増殖因子(VEGF)に結合する抗体である。
【0069】
「サイトカイン」なる用語は、細胞間媒介物質として別の細胞に作用するある細胞集団によって放出されるタンパク質に対する総称である。このようなサイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン、及び伝統的なポリペプチドホルモンである。サイトカインの中に含まれるのは、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン、N−メチオニルヒト成長ホルモン、及びウシ成長ホルモン、副甲状腺ホルモン、チロキシン、インスリン、プロインスリン、レラキシン;プロレラキシン、糖タンパク質ホルモン、例えば卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及び黄体形成ホルモン(LH)、肝増殖因子;線維芽細胞増殖因子、プロラクチン、胎盤ラクトゲン、腫瘍壊死因子α及びβ、ミュラー管抑制物質、マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド、インヒビン;アクチビン、血管内皮増殖因子、インテグリン、トロンボポエチン(TPO)、NGF−β等の神経増殖因子、血小板増殖因子;TGF−α及びTGF−β等のトランスフォーミング増殖因子(TGF)、インスリン様増殖因子−I及び−II、エリスロポエチン(EPO)、骨誘導因子;インターフェロン−α、−β、及び−γ等のインターフェロン、コロニー刺激因子(CSF)、例えばマクロファージCSF(M−CSF)、顆粒球マクロファージCSF(GM−CSF)、及び顆粒球CSF(G−CSF)、インターロイキン(ILs)、例えば、IL−1、IL−1α、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、TNF−α又はTNF−β等の腫瘍壊死因子、及びLIF及びkitリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子である。ここで使用される場合、サイトカインなる用語は、天然源由来又は組換え細胞培養由来のタンパク質、及び天然配列サイトカインの生物学的に活性な等価物を含む。
【0070】
「有効量」なる用語は、所望される効果をもたらす量を意味する。本発明に係るヒアルロニダーゼ酵素のような製剤成分の場合、有効量は、抗CD20抗体が上に概説したように治療的に効果的な形で作用することができるように同時投与された抗CD20抗体の分散及び吸収を増加させるのに必要な量である。医薬物質の場合には、それは、患者の疾患を治療するのに効果的な活性成分の量である。疾患が癌である場合、有効量の薬剤により、癌細胞の数が減少し得;腫瘍の大きさが小さくなり得;周辺臓器への癌細胞の浸潤が阻害され得(すなわち、ある程度ゆっくりになり、好ましくは停止する);腫瘍の転移が阻害され得(すなわち、ある程度ゆっくりになり、好ましくは停止する);腫瘍の増殖がある程度阻害され得;及び/又は癌に関連した症状の一又は複数がある程度軽減され得る。薬剤が、存在する癌細胞の増殖を妨げるか、及び/又は殺傷し得る範囲で、それは細胞増殖抑制性及び/又は細胞傷害性であり得る。有効量により、無増悪生存が延長し、他覚的応答(一部寛解(PR)又は完全寛解(CR)を含む)が生じ、全生存時間が増加し、及び/又は癌の一又は複数の症状が改善され得る。
【0071】
「薬学的製剤」なる用語は、活性成分の生物学的活性が効果的であることを許容する形態であり、その製剤が投与されるであろう被検体に許容できない程に毒性である更なる成分を含まない調製物を意味する。そのような製剤は無菌である。
【0072】
「滅菌」製剤は無菌的であるか又はあらゆる生きている微生物及びその胞子を含まない。
【0073】
「安定」製剤は、例えば2−8℃のような意図された保存温度での保存時にその中の全てのタンパク質が本質的にその物理的安定性及び/又は化学的安定性及び/又は生物学的活性を保持するものである。好ましくは、その製剤は、保存時に本質的にその物理的及び化学的安定性、並びにその生物学的活性を保持する。保存期間は一般にその製剤の意図された有効期間に基づき選択される。更に、製剤は好ましくは製剤の凍結(例えば−20℃まで)及び解凍後、例えば1又はより多くのサイクルの凍結解凍後に安定である。タンパク質の安定性を測定するための様々な分析技法が当該技術分野で利用でき、例えば、Peptide and Protein Drug Delivery, 247-301, Vincent Lee編, Marcel Dekker, Inc., New York, New York, Pubs. (1991)及びJones, A. Adv. Drug Delivery Rev. 10: 29-90 (1993)に概説されている。選択された温度で選択された期間、安定性を測定することができる。安定性は、(例えば、分子ふるいクロマトグラフィーを用いた、濁度を測定することによる、及び/又は視覚検査による)凝集体形成の評価;カチオン交換クロマトグラフィー又はキャピラリーゾーン電気泳動を用いて電荷不均一性を評定することによる;還元抗体とインタクトな抗体を比較するSDS−PAGE分析;抗体の生物学的活性又は抗原結合機能を評価することを含む多様な異なる方法で定性的及び/又は定量的に評価することができる。不安定性は、凝集、脱アミド(例えばAsn脱アミド)、酸化(例えばMet酸化)、異性化(例えばAsp異性化)、クリッピング/加水分解/断片化(例えば、ヒンジ領域断片化)、スクシンイミド形成、不対システイン等の何れか一又は複数を伴うことがある。
【0074】
本発明に従って使用される抗体の治療用製剤は、所望の純度を有する抗体を任意の薬学的に許容可能な担体、賦形剤又は安定剤と混合することによって凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で、貯蔵のために調製される(Remington's Pharmaceutical Sciences 16版, Osol, A.編(1980))。許容可能な担体、賦形剤、又は安定化剤は、用いられる用量及び濃度でレシピエントに非毒性である。
【0075】
ここで使用される「界面活性剤」なる用語は、薬学的に許容され得る界面活性剤を示す。本発明の製剤において、界面活性剤の量は、重量/容量で表現される百分率で記載される。最も一般的に使用される重量/容量単位はmg/mLである。薬学的に許容可能な界面活性剤の適切な例は、ポリエチレン−ソルビタン脂肪酸エステル(Tween)、ポリエチレン−ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ステアレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えばポリオキシエチレンモノラウリルエーテル、アルキルフェニルポリオキシ−エチレンエーテル(Triton−X)、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体(Poloxamer、Pluronic)、及びドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む。最も適切なポリオキシエチレンソルビタン−脂肪酸エステルは、ポリソルベート20(商標Tween20(商標)の下に販売)及びポリソルベート80(商標Tween80(商標)の下に販売)である。最も適切なポリエチレン−ポリプロピレン共重合体は、名称プルロニック(Pluronic)(登録商標)F68またはポロキサマー(Poloxamer)188(商標)の下に販売されているものである。好ましいポリオキシエチレン−ステアレートは、商標Myrj(商標)の下に販売されているものである。最も適切なポリオキシ−エチレンアルキルエーテルは、商標Brij(商標)の下に販売されているものである。最も適切なアルキルフェノールポリ−オキシエチレンエーテルは商品名Triton−Xで販売されている。
【0076】
ここで使用される「バッファー」なる用語は薬学的に許容可能なバッファーを示す。ここで使用される場合、「5.5±2.0のpHを与える緩衝剤」とは、それを含有する溶液がその酸/塩基共役成分の作用によってpH変化に抵抗することをもたらす薬剤を意味する。本発明に係る適切な薬学的に許容可能なバッファーは、限定しないが、ヒスチジンバッファー、シトレートバッファー、グルコネートバッファー、スクシネートバッファー、アセテートバッファーグリシルルリシン及び他の有機酸バッファー、及びホスフェートバッファーを含む。好ましいバッファーは、等張剤と当該技術分野で知られている酸又は塩基での潜在的なpH調整を含む、L−ヒスチジン又はL−ヒスチジン塩酸塩とのL−ヒスチジンの混合物を含む。
【0077】
「ヒスチジンバッファー」はアミノ酸ヒスチジンを含有するバッファーである。ヒスチジンバッファーの例は、塩化ヒスチジン、酢酸ヒスチジン、リン酸ヒスチジン、硫酸ヒスチジンを含む。ここでの実施例において特定された好ましいヒスチジンバッファーは、塩化ヒスチジンバッファーであることが見出された。好ましい実施態様では、塩化ヒスチジンバッファーは、L−ヒスチジン(遊離塩基、固形)を希塩酸で滴定することによって、又は定まった量及び比でL−ヒスチジンとL−ヒスチジン塩酸塩(例えば一水和物として)を溶解することにより、調製される。
【0078】
「等張」とは対象の製剤がヒト血液と本質的に同じ浸透圧を有していることを意味する。等張製剤は一般に〜300mOsm/kgの浸透圧を有するであろう。等張性は蒸気圧又は凝固点降下型浸透圧計を使用して測定できる。
【0079】
ここで使用される「等張剤」なる用語は、薬学的に許容され得る等張剤を示す。等張剤は等張製剤を提供するために使用される。等張製剤は、液体又は固体形態(例えば、凍結乾燥形態)から再構成された液体であり、生理食塩溶液及び血清のような、それが比較される所定の他の溶液と同じ浸透圧を有する溶液を示す。適切な等張剤は、限定するものではないが、塩(限定するものではないが、塩化ナトリウム(NaCl)又は塩化カリウムを含む)、糖(限定するものではないが、グルコース、スクロース、トレハロース又はグリセリンを含む)及びアミノ酸、糖、塩及びその組み合わせの群からの任意の成分を含む。等張剤は、一般に、約5mMから約350mMの全量で使用される。
【0080】
本発明に係る製剤に関連してここで使用される「液体」なる用語は、少なくとも約2から約8℃の温度で液体である製剤を示す。
【0081】
本発明に係る製剤に関連してここで使用される「凍結乾燥」なる用語は、製剤を凍結させ、ついで氷を凍結内容物から当該技術分野において知られている任意の凍結乾燥方法、例えば、市販の凍結乾燥装置によって昇華させることによって乾燥された製剤を示す。
【0082】
ここで使用される「塩」なる用語は、約1mMから約500mMの量の塩を示す。塩の非限定的な例は、カチオンであるナトリウム、カリウム、カルシウム又はマグネシウムの、アニオンである塩化物、リン酸、クエン酸、コハク酸、硫酸又はその混合物との任意の組み合わせの塩を含む。
【0083】
ここで使用される「アミノ酸」なる用語は、限定するものではないが、アルギニン、グリシン、オルニチン、グルタミン、アスパラギン、リジン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、イソロイシン、ロイシン、アラニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、メチオニン、セリン及びプロリンを含む約1から約100mg/mLの量のアミノ酸を示す。
【0084】
ここでの「糖」は、単糖、二糖類、三糖類、多糖類、糖アルコール、還元糖、非還元糖等を含む一般組成(CHO)及びその誘導体を含む。ここでの糖の例は、グルコース、スクロース、トレハロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、メリビオース、メレジトース、ラフィノース、マンノトリオース、スタキオース、マルトース、ラクツロース、マルツロース、グリシトール、マルチトール、ラクチトール、イソ−マルツロース等を含む。本発明に係る定義にまた含まれるのは、グルコサミン、N−メチルグルコサミン(いわゆる「メグルミン」)、ガラクトサミン及びノイラミン酸及び本発明に係る糖の組み合わせである。ここでの好ましい糖は非還元二糖、例えばトレハロース又はスクロースである。本発明に係る最も好ましい糖はトレハロースである。
【0085】
「安定剤」なる用語は、例えば、限定するものではないが、上記のセクションに記載されたようなアミノ酸及び糖、並びに当該技術分野において知られている任意の種類及び分子量の市販のデキストランのような薬学的に許容可能な安定剤を意味する。
【0086】
「抗酸化剤」なる用語は、薬学的に許容可能な抗酸化剤を意味する。これは、メチオニン、ベンジルアルコール又は酸化を最小化するために使用される任意の他の賦形剤のような賦形剤を含みうる。
【0087】
例えば癌に適用される場合の「治療方法」なる用語又はその均等語は、患者における癌細胞の数を低下させるか又は除去するように、又は癌の症候を軽減するように設計された作用の過程又は手順を意味する。癌又は別の増殖性疾患の「治療方法」は、癌細胞又は他の疾患が実際に除去されること、細胞の数又は疾患が実際に低下されること、又は癌アハ他の疾患の症候が実際に軽減されることを必ずしも意味しない。しばしば、癌の治療方法は、患者の病歴及び推定される生存余命が与えられても、それにもかかわらず全体的な有益な作用の過程を誘導すると見なされる低い成功の可能性でさえ、実施される。
【0088】
従って、本発明によって解決される課題は、皮下注射のための薬学的に活性な抗CD20抗体又はそのような抗体分子の混合物の新規で高度に濃縮された安定な薬学的製剤を提供することである。そのような製剤は、多くの量の抗CD20抗体又はその混合物に加えて、緩衝剤、安定剤又は二以上の安定剤の混合物、非イオン性界面活性剤及び有効量の少なくとも一のヒアルロニダーゼ酵素を含有する。高度に濃縮された抗体製剤の調製は、高いタンパク質濃度での粘度の潜在的な増加及びそれ自体が濃度依存性である現象であるタンパク質凝集の潜在的増加のため、やりがいがある。高粘度は抗体製剤のプロセス能力(例えばポンプ移送及び濾過工程)及び投与(例えばシリンジ能力)にマイナスの影響を与える。賦形剤の添加により、幾つかの例では高粘度を減少させることができた。タンパク質の凝集の制御及び分析は困難性が増す。凝集には、発酵、精製、製剤化及び保存中を含む製造プロセスの様々な工程において潜在的に遭遇する。異なった因子、例えば温度、タンパク質濃度、撹拌ストレス、凍結及び解凍、溶媒及び界面活性剤効果、及び化学修飾が治療用タンパク質の凝集挙動に影響を及ぼすかも知れない。高度に濃縮された抗体製剤の開発の間、タンパク質の凝集傾向がモニターされ、様々な賦形剤及び界面活性剤の添加によって制御されなければならない[Kiese S.等, J. Pharm. Sci., 2008; 97(10); 4347-4366]。
【0089】
第一の態様では、本発明は、非経口投与のための薬学的に活性な抗CD20抗体又はそのような抗体分子の混合物の高度に濃縮された安定な薬学的製剤を提供する。好ましくは、投与経路は、ボーラスとしての静脈内投与又は所定期間にわたる連続注入、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液内、又はクモ膜下腔内経路による。抗体の静脈内又は皮下投与が好ましい;皮下注射は最も好ましい。上に記載したように、本質的に粒子を含まない抗CD20抗体の高度に濃縮された安定な薬学的製剤を生成することは全く些細なことではない。該製剤が皮下投与を意図した場合、好ましい実施態様では、該製剤はヒアルロニダーゼ酵素と組み合わされる。
【0090】
より詳細には、本発明の薬学的に活性な抗CD20抗体製剤の高度に濃縮された安定な薬学的製剤は、
− 約20から350mg/mlの抗CD20抗体;
− 5.5±2.0のpHを与える約1から100mMの緩衝剤;
− 約1から500mMの安定剤又は二以上の安定剤の混合物(これによって、場合によってはメチオニンが、例えば5から25mMの濃度で、第二の安定剤として存在する);
− 0.01から0.1%の非イオン性界面活性剤;及び
− 有効量の少なくとも一のヒアルロニダーゼ酵素
を含有する。
【0091】
本発明の薬学的に活性な抗CD20抗体製剤の高度に濃縮された安定な薬学的製剤は液体形態で提供され得、又は凍結乾燥形態で提供されうる。再構成された製剤中の抗体濃度は、凍結乾燥製剤の再構成によって増加させ、凍結乾燥工程前における混合物中のタンパク質濃度より約2−40倍多いタンパク質濃度を再構成製剤中に与えることができる。
【0092】
好ましい抗CD20抗体濃度は、50から150mg/ml、より好ましくは75から150mg/ml、更により好ましくは120±20mg/ml、最も好ましくは約120mg/mlである。
【0093】
緩衝剤の好ましい濃度は、1から50mM、より好ましくは10から30mMであり;最も好ましい濃度は約20mMである。様々な緩衝剤が上に概説されたように当業者に知られている。好ましい緩衝剤は、ヒスチジンバッファー、酢酸バッファー、及びクエン酸バッファーからなる群から選択され、最も好ましくはL−ヒスチジン/HClバッファーである。本発明に係るヒスチジンバッファーは約1mMから約50mM、好ましくは約10mMから約30mM、更により好ましくは約20mMの量で使用される。本発明に係る酢酸バッファーは好ましくは約10mMから約30mM、最も好ましくは約20mMである。本発明に係るクエン酸バッファーは好ましくは約10mMから約30mM、最も好ましくは約20mMである。
【0094】
使用されるバッファーとは独立して、pHは約4.5から約7.0、好ましくは約5.5から約6.5を含む値に調整され、また好ましくは5.5、6.0、6.1及び6.5からなる群から選択される。このpHは当該技術分野で知られた酸又は塩基を用いた調節によって、又はバッファー成分の十分な混合物を使用して、又は双方によって得ることができる。
【0095】
安定剤(本特許明細書において「安定化剤」なる用語と同義に使用される)は、好ましくは、塩、炭水化物、糖及びアミノ酸からなる群から選択され、より好ましくは炭水化物又は糖、より好ましくは薬学的製剤における適切な添加剤又は賦形剤として当局によって認められている糖、最も好ましくはα,α−トレハロース二水和物、NaCl及びメチオニンからなる群から選択される。安定剤の好ましい濃度は、15から250mM、又はより好ましくは150から250mMである。最も好ましくは、約210mMの濃度である。製剤は二次安定剤を含み得、この二次安定剤は、好ましくは5から25mMの濃度、より好ましくは5から15mMの濃度での好ましくはメチオニンである。最も好ましいメチオニン濃度は約10mMである。
【0096】
非イオン性界面活性剤は好ましくはポリソルベートであり、より好ましくはポリソルベート20、ポリソルベート80及びポリエチレン−ポリプロピレン共重合体の群から選択される。非イオン性界面活性剤の濃度は、0.01から0.1%(w/v)、又は0.02から0.08%(w/v)、好ましくは0.02から0.06%(w/v)、最も好ましくは約0.06%(w/v)である。
【0097】
ここで使用される「糖」なる用語は、約25mMから約500mMの量で使用される薬学的に許容可能な糖を示す。好ましくは、100から300mMである。より好ましくは180から240mMである。最も好ましくは210mMである。
【0098】
ヒアルロニダーゼ酵素の濃度は、本発明に係る製剤の調製に使用される実際のヒアルロニダーゼ酵素に依存する。ヒアルロニダーゼ酵素の有効量は、以下の開示に更に基づいて当業者が容易に決定することができる。それは、同時投与される抗CD20抗体の分散及び吸収の増加が可能であるように十分な量で提供されなければならない。ヒアルロニダーゼ酵素の有効量は好ましくは約1000から16000U/mlであり、該量は、100000U/mgの推定された比活性に基づき、約0.01mgから0.16mgのタンパク質に対応する。ヒアルロニダーゼ酵素の好ましい濃度は、約1500から12000U/mlである。より好ましくは約2000U/ml又は約12000U/mlの濃度である。これまでに特定された量は、製剤に最初に添加されるヒアルロニダーゼ酵素の量に対応する。ヒアルロニダーゼ酵素濃度は、組み合わされた最終製剤として、又は以下に更に概説されるように、例えば共製剤として、同時投与で使用するために存在する。本発明に係る製剤に対する重要な問題は、それが使用準備が整った、及び/又は注入される時点で、それが添付の特許請求の範囲に記載された組成を有していることである。
【0099】
ヒアルロニダーゼ酵素は、動物、ヒト試料から誘導され得、又は更に以下に記載される組換えDNA技術に基づいて製造される。
【0100】
より詳細には、本発明に係る高度に濃縮された安定な薬学的製剤は次の好ましい組成の一つを有する:
a) 好ましくはリツキシマブ、オクレリズマブ又はHuMab<CD20>である100から150mg/mlの抗CD20抗体;1から50mMのヒスチジンバッファー、好ましくは約5.5のpHのL−ヒスチジン/HCl;15から250mMの好ましくはα,α−トレハロース二水和物である安定剤と場合によっては5から25mMの濃度の第二安定剤としてのメチオニン;好ましくは0.02から0.06%(w/v)の、ポリソルベート20及びポリソルベート80の群から選択される非イオン性界面活性剤と場合によっては1000から16000U/mlのヒアルロニダーゼ酵素、好ましくはrHuPH20、最も好ましくは2000U/ml又は12000U/mlの濃度のもの。
b) 好ましくはリツキシマブ、オクレリズマブ又はHuMab<CD20>である120±20mg/mlの抗CD20抗体;10から30mM、好ましくは20mMのヒスチジンバッファー、好ましくは約5.5のpHのL−ヒスチジン/HCl;150から250mM、好ましくは210mMの好ましくはα,α−トレハロース二水和物である安定剤と場合によっては5から25mM、好ましくは5から15mM、最も好ましくは10mMの濃度の第二安定剤としてのメチオニン;好ましくは0.02から0.06%(w/v)の、ポリソルベート20及びポリソルベート80の群から選択される非イオン性界面活性剤と場合によっては1000から16000U/ml、好ましくは1500から12000U/ml、最も好ましくは2000U/ml又は12000U/mlのヒアルロニダーゼ酵素、好ましくはrHuPH20。
c) 好ましくはリツキシマブ、オクレリズマブ又はHuMab<CD20>である120mg/mlの抗CD20抗体;10から30mM、好ましくは20mMのヒスチジンバッファー、好ましくは約5.5のpHのL−ヒスチジン/HCl;150から250mM、好ましくは210mMの好ましくはα,α−トレハロース二水和物である安定剤と場合によっては5から25mM、好ましくは5から15mM、最も好ましくは10mMの濃度の第二安定剤としてのメチオニン;好ましくは0.02から0.06%(w/v)の、ポリソルベート20及びポリソルベート80の群から選択される非イオン性界面活性剤と場合によっては1000から16000U/ml、好ましくは1500から12000U/ml、最も好ましくは2000U/ml又は12000U/mlのヒアルロニダーゼ酵素、好ましくはrHuPH20。
d) 120mg/mlの抗CD20抗体、好ましくはリツキシマブ;20mMのヒスチジンバッファー、好ましくは約5.5のpHのL−ヒスチジン/HCl;210mMのα,α−トレハロース二水和物と場合によっては10mMの濃度の第二安定剤としてのメチオニン;好ましくは0.02から0.06%(w/v)の、ポリソルベート20及びポリソルベート80の群から選択される非イオン性界面活性剤と場合によっては2000U/ml又は12000U/mlのヒアルロニダーゼ酵素、好ましくはrHuPH20。
e) 120mg/mlの抗CD20抗体、好ましくはリツキシマブ;20mMのヒスチジンバッファー、好ましくは約5.5のpHのL−ヒスチジン/HCl;210mMのα,α−トレハロース二水和物と場合によっては第二安定剤としての10mMのメチオニン;好ましくは0.02から0.06%(w/v)の、ポリソルベート20及びポリソルベート80の群から選択される非イオン性界面活性剤と、場合によっては2000U/ml又は12000U/mlのヒアルロニダーゼ酵素、好ましくはrHuPH20を含有する凍結乾燥製剤。
【0101】
約30mg/mlから350mg/ml、例えば約30mg/mlから100mg/ml(約30mg/ml、約50mg/ml又は約100mg/mlを含む)のオクレリズマブ(例えばヒト化2H7.v16);5.5±2.0のpH(例えばpH5.3)を与える約1から100mMの緩衝剤(例えば酢酸ナトリウム);約15から250mMの安定剤又は二以上の安定剤の混合物(トレハロース、例えば約8%のトレハロース二水和物を含む);約0.01から0.1%(w/v)の非イオン性界面活性剤;及び場合によっては有効量の少なくとも一のヒアルロニダーゼ酵素(例えばrhHUPH20)を、好ましくは約1500U/mlから約12000U/mlの量で含有する薬学的に活性な抗CD20抗体の安定な薬学的製剤が提供される。
【0102】
少量の可溶性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGPs)を使用することによって治療用タンパク質及び抗体の皮下注射を容易にすることが提案されている;国際公開第2006/091871号を参照。そのような可溶性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質の添加(組み合わせ製剤として又は同時投与によっての何れかで)が、皮下組織中への治療薬の投与を容易にすることが示されている。細胞外空間中にヒアルロナンHAを迅速に脱重合させることによって、sHASEGPは間質の粘度を減少させ、それによって水伝導性を増加させ、皮下組織中に安全かつ快適に投与される大きな体積を可能にする。減少した間質粘度を介してsHASEGPによって誘導される増加した水伝導性は大きな分散を可能にし、潜在的にSC投与される治療薬の全身性バイオアベイラビリティを潜在的に増加させる。
【0103】
よって、可溶性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質を含有する本発明の高度に濃縮された安定な薬学的製剤は皮下注射に特に適している。抗CD20抗体及び可溶性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質を含有するそのような製剤は一つの単一の組み合わせ製剤の形態で又は別法では皮下注射の直前に混合することができる二つの別個の製剤の形態での投与のために提供されうることは当業者によって明らかに理解される。別法では、抗CD20抗体及び可溶性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質は、好ましくは互いに直ぐ隣接している部位に身体の異なった部位に、別個の注射剤として投与されうる。例えば最初に可溶性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質と続く抗CD20抗体製剤の注射の、連続した注射剤として本発明に係る製剤中に存在している治療剤を注射することがまたできる。これらの注射はまた逆の順序で、つまり抗CD20抗体製剤の最初の注射と続く可溶性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質の注射によって、実施されうる。抗CD20抗体及び可溶性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質が別個の注射剤として投与される場合、タンパク質の一方又は双方には、緩衝剤、安定剤及び非イオン性界面活性剤が添付の特許請求の範囲に特定された濃度で提供されなければならないがヒアルロニダーゼ酵素は除外される。ついで、ヒアルロニダーゼ酵素は、例えば約6.5のpHのL−ヒスチジン/HClバッファー、100から150mMのNaCl及び0.01から0.1%(w/v)のポリソルベート20又はポリソルベート80中に提供されうる。好ましい実施態様では、抗CD20抗体は、添付の特許請求の範囲に特定された濃度で緩衝剤、安定剤及び非イオン性界面活性剤と共に提供される。
【0104】
上に記載したように、可溶性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質は抗CD20製剤における更なる賦形剤であると考えられうる。可溶性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質は、抗CD20製剤の製造時に抗CD20製剤に加えられ得、又は注射の直ぐ前に添加されうる。別法では、可溶性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質は別個の注射剤として提供されうる。後者の場合、可溶性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質は、皮下注射がなされる前に適切な希釈剤で再構成されなければならない凍結乾燥形態で別個のバイアルで提供されうるか、又は製造者によって液体製剤として提供されうる。抗CD20製剤及び可溶性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質は別個の物として入手されうるか、又は注射成分とその皮下投与のための適切な指図書の双方を含みキットとしてまた提供されうる。製剤の一又は双方の再構成及び/又は投与のための適切な指図書がまた提供されうる。
【0105】
従って、本発明は、注射成分とその皮下投与のための適切な指図書の双方を含むキットの形態で、薬学的に活性な抗CD20抗体又はかかる抗体の混合物及び適切な量の少なくとも一のヒアルロニダーゼ酵素の高度に濃縮された安定な薬学的製剤からなる薬学的組成物をまた提供する。
【0106】
本発明の更なる態様は、本発明に係る高度に濃縮された安定な薬学的製剤を含む注射デバイスに関する。そのような製剤は薬学的に活性な抗CD20抗体又はそのような抗体分子の混合物及び以下に概説される適切な賦形剤からなり得、組み合わせ製剤として又は同時投与のための別個の製剤として可溶性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質を更に含みうる。
【0107】
様々な抗CD20抗体が従来から知られている。そのような抗体は好ましくはモノクローナル抗体である。それらはいわゆるキメラ抗体、ヒト化抗体又は完全なヒト抗体の何れかでありうる。それらは、そのような抗体又は断片のアミノ酸配列変異体及び/又は糖鎖付加変異体を含む完全長抗CD20抗体;同じ生物学的活性を有する抗CD20抗体断片でありうる。ヒト化抗CD20抗体の例はリツキシマブ、オクレリズマブ及びアフツズマブ(HuMab<CD20>)のINN名で知られている。最も成功した治療用抗CD20抗体は、MABTHERA(商標)又はリツキサン(商標)の商品名でジェネンテック社及びエフ・ホフマン−ラ・ロシュ社によって販売されているリツキシマブである。
【0108】
ここで定義される抗CD20抗体は、好ましくはリツキシマブ(例えばAnderson等の米国特許第7381560号及び欧州特許第2000149B1号、例えば図4及び5を参照)、オクレリズマブ(国際公開第2004/056312号に開示)及び国際公開第2006/084264号(例えば表1及び2に開示された変異体)、好ましくは変異体v.16又はv.114又はv.511及びアフツズマブ(HuMab<CD20>;国際公開第2005/044859号を参照)の群から選択される。最も好ましい抗CD20抗体はリツキシマブである。「リツキシマブ」、「オクレリズマブ」及び「アフツズマブ」(HuMab<CD20>)なる用語は、合衆国、欧州及び日本からなる群から選択される国又は領域において同一又はバイオシミラー品として市販の認可を得るのに必要な要件を満たす全ての対応する抗CD20抗体を包含する。リツキシマブは米国特許第7381560号及び欧州特許第2000149B1号に定義されたCDR領域を有している。
【0109】
多くの可溶性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質が従来から知られている。そのような可溶性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質の機能、作用機序及び性質を更に定義するために、次の背景情報が提供される。
【0110】
SC(皮下組織)間質マトリックスは、グリコサミノグリカンの粘弾性ゲル内に埋め込まれた線維性タンパク質の網目構造からなる。ヒアルロナン(HA)、つまり非硫酸化反復線形二糖類は、SC組織の顕著なグリコサミノグリカンである。HAは、高分子量のメガダルトンの粘性ポリマーとして線維芽細胞によって間質中に分泌され、続いてリソソームヒアルロニダーゼ及びエキソグルコシダーゼの作用を通してリンパ及び肝臓において局所的に分解される。体内のおよそ50%のヒアルロナンがSC組織によって産生され、そこで、およそ0.8mg/gmの湿重量組織で見出される[Aukland K.及びReed R., “Interstitial-Lymphatic Mechanisms in the control of Extracellular Fluid Volume”, Physiology Reviews”, 1993; 73:1-78]。平均70kgの成人は15グラムのHAを含んでおり、その30パーセントが毎日代謝回転する(合成され、分解される)と推定される[Laurent L.B.,等, “Catabolism of hyaluronan in rabbit skin takes place locally, in lymph nodes and liver”, Exp. Physiol. 1991; 76: 695-703]。皮下組織マトリックスのゲル様成分の主要な構成成分として、HAはその粘度に有意に寄与する。
【0111】
グリコサミノグリカン(GAGs)は細胞外マトリックス(ECM)の複合直鎖状多糖類である。GAGsは、N置換ヘキソサミン及びウロン酸(ヒアルロナン(HA)、コンドロイチン硫酸(CS)、コンドロイチン(C)、デルマタン硫酸(DS)、ヘパラン硫酸(HS)、及びヘパリン(H)の場合)、又はガラクトース(ケラタン硫酸(KS)の場合)の反復二糖類構造を特徴とする。HAを除いて、全てはコアタンパク質に共有結合して存在する。そのコアタンパク質を伴うGAGsは構造的にプロテオグリカン(PGs)と称される。
【0112】
ヒアルロナン(HA)は哺乳動物の主に結合組織、皮膚、軟骨中、及び滑液中に見出される。ヒアルロナンはまた眼の硝子体の主要構成要素である。結合組織では、ヒアルロナンに関連した水和の水が組織間に水和マトリックスをつくり出す。ヒアルロナンは、迅速な発生、再生、修復、胚形成、発生学的発生、創傷治癒、血管形成、及び腫瘍形成を含む細胞運動性に関連した生物学的現象において重要な役割を果たしている[Toole, Cell Biol. Extracell. Matrix, Hay (編), Plenum Press, New York, 1991; pp. 1384-1386;Bertrand等, Int. J. Cancer 1992; 52:1-6;Knudson等, FASEB J. 1993; 7:1233-1241]。また、ヒアルロナンのレベルは腫瘍攻撃性と相関する[Ozello等, Cancer Res. 1960; 20:600-604;Takeuchi等, Cancer Res. 1976; 36:2133-2139;Kimata等, Cancer Res. 1983; 43:1347-1354]。
【0113】
HAは多くの細胞の細胞外マトリックス、特に結合軟部組織に見出される。HAには、例えば水及び血漿タンパク質恒常性等の様々な生理学的機能があてがわれている[Laurent T.C.等, FASEB J., 1992; 6: 2397-2404]。HA生産は増殖性細胞で増加し、有糸分裂において所定の役割を果たしうる。それは自発運動及び細胞遊走にまた関与していた。HAは細胞調節、発生、及び分化において重要な役割を担っているようである[上掲のLaurent等]。
【0114】
HAは臨床医学において広く使用されている。その組織保護及びレオロジー特性は(例えば白内障手術中に角膜内皮を保護するために)眼科手術に有用であることが証明されている。血清HAは肝疾患及び様々な炎症症状、例えば関節リウマチの診断に用いられる。HAの蓄積によって引き起こされる間質浮腫は様々な器官に機能不全を生じさせうる[上掲のLaurent等]。
【0115】
ヒアルロナンタンパク質相互作用は、細胞外マトリックス又は「基底質」の構造に関与している。
【0116】
ヒアルロニダーゼは動物界全体に見出される一般的に中性又は酸活性の酵素の一群である。ヒアルロニダーゼは基質特異性及び作用機序について変動する(国際公開第2004/078140号)。3種の一般的なクラスのヒアルロニダーゼが存在している:
1.主要最終産物として四糖類及び五糖類を含むエンド−β−N−アセチルヘキソサミニダーゼである哺乳動物タイプのヒアルロニダーゼ(EC3.2.1.35)。これらは加水分解性及び及びトランスグルコシダーゼ活性の双方を有しており、ヒアルロナン及びコンドロイチン硫酸(CS)、一般にC4−S及びC6−Sを分解しうる。
2.細菌ヒアルロニダーゼ(EC4.2.99.1)はヒアルロナンと様々な度合いでCS 及びDSを分解する。これらは主に二糖類最終産物を生じるβ脱離反応によって作用するエンド−β−N−アセチルヘキソサミニダーゼである。
3.ヒル、他の寄生虫、及び甲殻類からのヒアルロニダーゼ(EC3.2.1.36)は、β1−3結合の加水分解を通して四糖類及び五糖類参集産物を生成するエンド−β−グルクロニダーゼである。
【0117】
哺乳動物ヒアルロニダーゼは二つの群に更に分けられうる:中性活性及び酸活性酵素である。ヒトゲノムHYALl、HYAL2、HYAL3、HYAL4、HYALPl及びPH20/SPAM1には6つのヒアルロニダーゼ様遺伝子が存在する。HYALPlは偽遺伝子であり、HYAL3は如何なる既知の基質に対しても酵素活性を有していることは示されていない。HYAL4はコンドロイチナーゼであり、ヒアルロナンに対して殆ど活性を示さない。HYALlは原型的な酸活性酵素であり、PH20は原型的な中性活性酵素である。酸活性ヒアルロニダーゼ、例えばHYALl及びHYAL2は一般に中性pH(つまり、pH7)での触媒活性を欠く。例えば、HYALlはpH4.5ではインビトロで殆ど触媒活性を持たない[Frost I.G. 及びStern, R., “A microtiter-based assay for hyaluronidase activity not requiring specialized reagents”, Anal. Biochemistry, 1997; 251:263-269]。HYAL2はインビトロで比活性が非常に低い比活性の酸活性酵素である。
【0118】
ヒアルロニダーゼ様酵素は、ヒトHYAL2及びヒトPH20のようなグリコシルホスファチジルイノシトールアンカーを介して細胞膜に一般的にロックされるもの[Danilkovitch-Miagkova等, Proc. Natl. Acad. Sci. U SA, 2003; 100(8):4580-4585;Phelps等, Science 1988; 240(4860): 1780-1782]と、ヒトHYAL1のように一般に可溶性であるもの[Frost, I.G.等, “Purification, cloning, 及びexpression of human plasma hyaluronidase”, Biochem. Biophys. Res. Commun. 1997; 236(l):10-15]によりまた特徴付けることができる。しかしながら、種間でばらつきがある:例えば、ウシPH20は細胞膜に非常に緩く付着されており、ホスホリパーゼ感受性アンカーを介して結合されていない[Lalancette等, Biol. Reprod., 2001; 65(2):628- 36]。ウシヒアルロニダーゼのこの独特の特徴が、臨床使用用の抽出物としての可溶性ウシ精巣ヒアルロニダーゼ酵素の使用を可能にしている(Wydase(商標)、Hyalase(商標))。他のPH20種は、洗浄剤又はリパーゼの使用なしでは一般に可溶ではない脂質結合酵素である。例えば、ヒトPH20はGPIアンカーを介して細胞膜に結合される。ポリペプチドに脂質アンカーを導入しないヒトPH20 DNAコンストラクトを作製しようとする試みの結果、触媒的に不活性な酵素、又は不溶性酵素が得られた[Arming等, Eur. J. Biochem., 1997; 247(3):810-4]。天然に生じるマカクザル精子ヒアルロニダーゼは、可溶型と膜結合型の両方で見出されている。64kDaの膜結合型はpH7.0で酵素活性を有するが、54kDa型はpH4.0でのみ活性である[Cherr等, Dev. Biol., 1996;10; 175(l): 142-53]。よって、可溶型PH20は中性条件下では酵素活性を欠いていることが多い。
【0119】
上に記載したように、また国際公開第2006/091871号及び米国特許第7767429号における教示に従って、皮下組織中への治療薬剤の投与を容易にするために、少量の可溶性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGPs)を製剤中に導入することができる。細胞外空間においてHAを迅速に脱重合させることにより、sHASEGPは間質の粘度を低減し、それによって水伝導性を増加させ、SC組織へのより多い容量の安全かつ快適な投与を可能にする。減少した間質の粘度を通してsHASEGPによって誘導された水伝導性の増加は、より多い分散を可能にし、SC投与治療薬の全身性バイオアベイラビリティを潜在的に増加させる。
【0120】
皮下組織に注射されたとき、sHASEGPによるHAの脱重合はSC組織内の注射部位に局在化する。実験的証拠は、CD−1マウスにおける一回の静脈内投薬の後、検出可能な血中への全身的吸収を伴わないで、13から20分の半減期でsHASEGPがマウスの間質空間で局所的に不活性化されることを示している。血管区画内において、sHASEGPは、マウス及びカニクイザルのそれぞれにおいて、0.5mg/kgまでの用量で、2.3及び5分の半減期を証明している。SC組織におけるHA基質の連続的合成と組み合わせての、sHASEGPの迅速な排除は、他の同時注射される分子に対して一過性で局所的に活性な浸透亢進を生じ、その効果は投与後24から48時間以内では完全に可逆的である[Bywaters G.L.,等, “Reconstitution of the dermal barrier to dye spread after Hyaluronidase injection”, Br. Med. J., 1951; 2 (4741): 1178-1183]。
【0121】
局所的液体分散に対するその効果に加えて、sHASEGPはまた吸収促進薬として作用する。16キロダルトン(kDa)を越える高分子は、主に拡散を介して毛細管を通っての吸収から排除され、殆どは流入領域リンパ節を介して吸収される。皮下的に投与された高分子、例えば治療用抗体(分子量およそ150kDa)は、従って続く血管区画中への吸収のために流入領域リンパに達する前に間質マトリックスを横切らなければならない。局所的分散を増加させることにより、sHASEGPは多くの高分子の吸収速度(Ka)を増加させる。これは、sHASEGPのないSC投与に対して、増加したピーク血液レベル(Cmax)と潜在的に増加したバイオアベイラビリティをもたらす[Bookbinder L.H.等, “A recombinant human enzyme for enhanced interstitial transport of therapeutics”, J. Control. Release 2006; 114: 230-241]。
【0122】
動物由来のヒアルロニダーゼ産物は、主に他の同時投与薬の分散及び吸収を増加させ、皮下注入(多い量での液のSC注射/注入)のために60年以上にわたって臨床的に使用されてきた[Frost G.I., “Recombinant human hyaluronidase (rHuPH20): an enabling platform for subcutaneous drug and fluid administration”, Expert Opinion on Drug Delivery, 2007; 4: 427-440]。ヒアルロニダーゼの作用機序の詳細は次の文献に詳細に記載されている:Duran-Reynolds F., “A spreading factor in certain snake venoms and its relation to their mode of action”, CR Soc Biol Paris, 1938; 69-81;Chain E., “A mucolytic enzyme in testes extracts”, Nature 1939; 977-978;Weissmann B., “The transglycosylative action of testicular hyaluronidase”, J. Biol. Chem., 1955; 216: 783-94;Tammi, R., Saamanen, A.M., Maibach, H.I., Tammi M., “Degradation of newly synthesized high molecular mass hyaluronan in the epidermal and dermal compartments of human skin in organ culture”, J. Invest. Dermatol. 1991; 97:126-130;Laurent, U.B.G., Dahl, L.B., Reed, R.K., “Catabolism of hyaluronan in rabbit skin takes place locally, in lymph nodes 及びliver”, Exp. Physiol. 1991; 76: 695-703;Laurent, T.C.及びFraser, J.R.E., “Degradation of Bioactive Substances: Physiology and Pathophysiology”, Henriksen, J.H. (Ed) CRC Press, Boca Raton, FL; 1991. pp. 249-265; Harris, E.N.等, “Endocytic function, glycosaminoglycan specificity, and antibody sensitivity of the recombinant human 190-kDa hyaluronanレセプターfor endocytosis (HARE)”, J. Biol. Chem. 2004; 279:36201-36209;Frost, G.I., “Recombinant human hyaluronidase (rHuPH20): an enabling platform for subcutaneous drug and fluid administration”, Expert Opinion on Drug Delivery, 2007; 4: 427-440。EU諸国において承認されたヒアルロニダーゼ製品はHylase(登録商標)「Dessau」及びHyalase(登録商標)を含む。米国で承認された動物由来のヒアルロニダーゼ製品はVitrase(商標)、Hydase(商標)、及びAmphadase(商標)を含む。
【0123】
ヒアルロニダーゼ製品の安全性と効能は広く確立されている。特定された最も顕著な安全性リスクは過敏性及び/又はアレルギー誘発性であり、これは動物由来の調製物の純度の欠如に関連していると考えられている[Frost, G.I., “Recombinant human hyaluronidase (rHuPH20): an enabling platform for subcutaneous drug and fluid administration”, Expert Opinion on Drug Delivery, 2007; 4 : 427-440]。英国、独国及び米国の間では動物由来のヒアルロニダーゼの承認された投薬量に関して差があることに留意すべきである。英国では、皮下又は筋肉内注射へのアジュバントとしての通常の用量は1500単位で、注射剤に直接添加される。米国では、この目的に対して使用される通常の用量は150単位である。皮下注入では、ヒアルロニダーゼは相対的に多量の液の皮下投与を補助するために使用される。英国では、1500単位のヒアルロニダーゼが皮下使用のためのそれぞれ500から1000mlの液と共に一般に与えられる。米国では、各リットルの皮下注入液に対して150単位が十分であると考えられている。独国では、この目的では、150から300単位が十分であると考えられている。英国では、局所麻酔剤の拡散が1500 単位の添加によって加速される。独国及び米国では、この目的には150単位が十分であると考えられている。投薬量の差にかかわらず(英国での投薬量は米国よりも10倍高い)、米国及び英国でそれぞれ市販されている動物由来のヒアルロニダーゼ製品の安全性プロファイルの明らかな差は報告されていない。
【0124】
2005年12月2日に、Halozyme Therapeutics社は、組換え型ヒトヒアルロニダーゼrHuPH20の注射製剤(HYLENEX(商標))についてFDAから承認を得た。FDAは次の適応症のSC投与のための150単位用量のHYLENEX(商標)を承認した:
− 他の注射薬剤の吸収及び分散を増加させるためのアジュバントとして
− 皮下点滴療法のため
− 放射線不透過性薬剤の再吸収を改善するためのSC尿路造影法における補助剤として。
【0125】
規制の再調査の一部として、rHuPH20が、他の注入薬剤の分散及び吸収という、過去に承認された動物由来ヒアルロニダーゼ調製物と同じ性質を有しているが、改善された安全性プロファイルを有していることが確立された。特に、動物由来ヒアルロニダーゼと比較して組換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)の使用は、動物の病原体及び伝達性海綿状脳症での汚染の潜在的リスクを最小にする。
【0126】
可溶型ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、同タンパク質の調製方法及び薬学的組成物におけるその使用は国際公開第2004/078140号に記載されている。
【0127】
以下に更に概説される詳細な実験研究は、驚いたことに、本発明の製剤が望ましい貯蔵安定性を有しており、保健機関による承認に対する全ての必要な要件を満たしていることを示した。
【0128】
本発明に係る製剤中のヒアルロニダーゼ酵素は、例えば活性物質の吸収を増大させることによって(浸透促進剤として作用する)、体循環への抗CD20抗体のデリバリーを亢進する。ヒアルロニダーゼ酵素はまたSC間質組織の細胞外成分であるヒアルロナンの可逆的加水分解により皮下投与を経由して体循環中への治療用抗CD20抗体のデリバリーを増加させる。皮下組織におけるヒアルロナンの加水分解はSC組織の間質空間中のチャンネルを一次的に開放し、それによって体循環中への治療用抗CD20抗体のデリバリーを改善する。また、投与は、ヒトにおける疼痛の減少と、SC組織の容積由来膨潤の低減を示す。
【0129】
ヒアルロニダーゼは、局所的に投与されるとその全効果を局所的に有する。換言すれば、ヒアルロニダーゼは数分で不活性化され局所的に代謝され、全身性又は長期にわたる効果を持つとは指摘されていない。血流に入るときの数分以内でのヒアルロニダーゼの迅速な不活性化は、異なったヒアルロニダーゼ産物間の比較できる体内分布を遂行する現実的な能力を妨げる。ヒアルロニダーゼ産物は遠位部位では作用できないので、この性質はまた潜在的な全身性の安全性に対する懸念を最小にする。
【0130】
全てのヒアルロニダーゼ酵素の統一的特徴は、化学構造、種供給源、組織源、又は同じ種及び組織からの医薬品バッチにおける差異にかかわらず、ヒアルロナンを脱重合するその能力である。それらは、その活性が異なった構造を有しているのにかかわらず、同じである(効力は除く)点で珍しい。
【0131】
本発明の製剤に係るヒアルロニダーゼ酵素は、ここに記載された安定な薬学的製剤において抗CD20抗体の分子完全性に対して悪影響を有していないことを特徴とする。更に、ヒアルロニダーゼ酵素は体循環への抗CD20抗体のデリバリーを単に改変するが、全身的に吸収される抗CD20抗体の治療効果をもたらし又はそれに寄与する如何なる性質も有さない。ヒアルロニダーゼ酵素は全身的にバイオアベイラブルではなく、本発明に係る安定な薬学的製剤の推奨保存条件で抗CD20抗体の分子完全性に悪影響を及ぼさない。従って、それはこの発明に係る抗CD20抗体製剤において賦形剤と考えられる。それは治療効果を奏さないので、それは、治療的に活性な抗CD20抗体とは別の薬学的形態の構成成分を表す。
【0132】
本発明に係る多くの適切なヒアルロニダーゼ酵素は従来から知られている。好ましい酵素は、ヒトヒアルロニダーゼ酵素、最も好ましくはrHuPH20として知られている酵素である。rHuPH20はN−アセチルグルコサミンのC位とグルクロン酸のC位の間のβ−1,4結合の加水分解によってヒアルロナンを脱重合する中性及び酸活性のβ−1,4グリコシルヒドロラーゼのファミリーのメンバーである。ヒアルロナンは、例えば皮下間質組織のような結合組織、及びある種の特殊組織、例えば臍帯及び硝子体液の細胞内基底質に見出される多糖類である。ヒアルロナンの加水分解は間質組織の粘性を一時的に減少させ、注入された液体又は局在化した漏出液又は滲出液の分散を促進し、よってその吸収を容易にする。ヒアルロニダーゼの効果は局所的で、24から48時間以内に生じる完全な再構成で可逆的である[Frost, G.I., “Recombinant human hyaluronidase (rHuPH20): an enabling platform for subcutaneous drug 及びfluid administration”, Expert Opinion on Drug Delivery, 2007; 4:427-440]。ヒアルロナンの加水分解を通した結合組織の浸透性の増加は同時投与された分子の分散及び吸収を増加させるその能力についてのヒアルロニダーゼの効果と相関する。
【0133】
ヒトゲノムは幾つかのヒアルロニダーゼ遺伝子を含む。PH20遺伝子産物のみが生理的細胞外条件下で有効なヒアルロニダーゼ活性を保有し、延展剤として作用する一方、酸活性のヒアルロニダーゼはこの性質を有していない。
【0134】
rHuPH20は、現在治療的用途に利用できる最初で唯一の組換えヒトヒアルロニダーゼ酵素である。ヒトゲノムは幾つかのヒアルロニダーゼ遺伝子を含む;PH20遺伝子産物のみが生理的細胞外条件下で有効なヒアルロニダーゼ活性を保有し、延展剤として作用する。天然に生じるヒトPH20タンパク質は、細胞膜にそれを固着させるカルボキシ末端アミノ酸に結合した脂質アンカーを有している。Halozymeによって開発されたrHuPH20酵素は、脂質結合の原因であるアミノ酸をカルボキシ末端に欠く切断欠失変異体である。これは、ウシ精巣調製物に見出されるタンパク質に類似した可溶性の中性pH活性な酵素を生じる。rHuPH20タンパク質は分泌プロセス中にN末端から除去される35アミノ酸のシグナルペプチドと共に合成される。成熟rHuPH20タンパク質は幾つかのウシヒアルロニダーゼ調製物に見出されるものとオルソロガスな真正のN末端アミノ酸配列を含んでいる。
【0135】
動物由来PH20及び組換えヒトrHuPH20を含むPH20ヒアルロニダーゼは、N−アセチルグルコサミンのC位と及びグルクロン酸のC位の間のβ−1,4結合の加水分解によってヒアルロナンを脱重合する。四糖類は最も小さい消化産物である[Weissmann, B., “The transglycosylative action of testicular hyaluronidase”, J. Biol. Chem., 1955; 216: 783-94]。このN-アセチルグルコサミン/グルクロン酸構造は、組換え生物学的産物のN結合グリカンに見出されておらす、従って、rHuPH20は、それが共に処方される抗体、例えばリツキシマブの糖鎖付加に影響を及ぼさない。rHuPH20酵素自体は、モノクローナル抗体に見出されるものと同様なコア構造と共に分子当たり6つのN結合グリカンを有している。予期されるように、これらのN結合構想は経時的に変化せず、これらのN結合グリカン構造に対するrHuPH20の酵素活性の欠如を確認する。rHuPH20の短い半減期及びヒアルロナンの一定の合成が組織に対する酵素の短い局所的な作用を生じる。
【0136】
本発明に係る皮下製剤における賦形剤であるヒアルロニダーゼ酵素は、好ましくは、組換えDNA技術を使用して調製される。このようにして、同じタンパク質(同一のアミノ酸配列)がいつも得られ、組織からの抽出中に同時精製される汚染タンパク質によって引き起こされるアレルギー反応が避けられることが保証される。本発明に係る製剤に使用されるヒアルロニダーゼ酵素は好ましくはヒト酵素、最も好ましくはrHuPH20である。
【0137】
rHuPH20(HYLENEX(商標))のアミノ酸配列はよく知られており、CAS登録番号75971−58−7の下で入手できる。おおよその分子量は61kDaである(米国特許第7767429号をまた参照)。
【0138】
天然源の哺乳動物ヒアルロニダーゼとヒト及び他の哺乳動物からのPH−20 cDNAクローンの間で多重構造的及び機能的比較が実施されている。PH−20遺伝子は組換え産物rHuPH20に使用される遺伝子である;しかしながら、組換え医薬品はPH−20遺伝子によってコードされる完全タンパク質の447アミノ酸切断型である。アミノ酸配列に関する構造的類似性は何れの比較においても60%を滅多に越えない。機能的比較は、rHuPH20の活性が過去に承認されたヒアルロニダーゼ産物のものと非常に類似していることを示している。この情報は、ヒアルロニダーゼの供給源にかかわらず、ヒアルロニダーゼの臨床的安全性及び効能は均等であるという過去50年の臨床的知見と一致している。
【0139】
本発明に係る抗CD20抗体SC製剤におけるrHuPH20の使用は、より多い量の医薬品の投与を可能にし、皮下的に投与されたCD20抗体、好ましくはリツキシマブの体循環中への吸収を潜在的に向上させる。
【0140】
本発明に係る安定な薬学的製剤の浸透圧は330±50mOsm/kgである。
【0141】
本発明に係る安定な薬学的製剤は本質的に可視(ヒトの眼による検査)粒子を含まない。(光遮蔽により測定した)肉眼では可視できない粒子は次の基準を満たさなければならない:
− バイアル当たりの≧10μm粒子の最大数 −> 6000
− バイアル当たりの≧25μm粒子の最大数 −> 600
【0142】
更なる態様では、本発明は、被検体における抗CD20抗体での治療を受け入れられる疾患又は障害、例えば癌又は非悪性疾患の治療に有用な医薬の調製における製剤の使用であって、上記疾患又は障害を治療するのに有効な量でここに記載の製剤を被検体に投与することを含む使用を提供する。好ましくは、抗CD20抗体は化学療法剤と同時に又は順次に同時投与される。
【0143】
更なる態様では、本発明は、被検体における抗CD20抗体での治療を受け入れられる疾患又は障害(例えば癌(好ましくは)又は非悪性疾患)を治療する方法において、上記疾患又は障害を治療するのに有効な量でここに記載された製剤を被検体に投与することを含む方法を提供する。癌又は非悪性疾患は一般にCD20発現細胞を含み、本発明に係る治療用薬学的SC製剤中のCD20抗体が罹患した細胞に結合できる。本発明に係る製剤で治療することができる様々な癌又は非悪性疾患は、好ましくはここで定義される自己免疫疾患である。好ましくは、抗CD20抗体は化学療法剤と同時に又は順次に同時投与される。
【0144】
製剤に対してヒアルロニダーゼを添加すると、皮下的に安全にかつ快適に投与されうる注射容量を増加させることが可能になる。好ましい注射容量は1から15mlである。本発明に係る製剤の投与は治療用抗体の分散、吸収及びバイオアベイラビリティを増加させることが観察されている。SC経路によって投与される大きな分子(つまり>16kDa)は排出リンパ液を通して血管区画内に優先的に吸収される[Supersaxo, A.等, “Effect of Molecular Weight on the Lymphatic Absorption of Water-Soluble Compounds Following Subcutaneous Administration”, 1990; 2:167-169;Swartz, M. A., “Advanced Drug Delivery Review, The physiology of the lymphatic system”, 2001; 50: 3-20]。よって、体循環中へのこれらの大きな分子の導入速度は静脈内注入に対して遅くなり、よって注入関連応答の頻度/強度が潜在的に減少する。
【0145】
本発明に係る皮下CD20抗体(好ましくはリツキシマブ)製剤の製造は、製造プロセスの最終精製工程において高い抗体濃度(およそ120mg/ml)を必要とする。従って、更なるプロセス工程(限外濾過/ダイアフィルトレーション)がCD20抗体、好ましくはリツキシマブの一般的な製造プロセスに加えられる。本発明に係る高度に濃縮された安定な薬学的抗CD20抗体製剤は、高抗CD20抗体濃度の再構成された製剤を生成するために適切な希釈剤で再構成することができる安定化タンパク質製剤としてもまた提供されうる。
【0146】
この発明に係るCD20抗体SC製剤は、癌、好ましくはCD20発現癌を治療するために好ましくは使用される。
【0147】
本特許明細書において使用される「約」なる用語は、与えられた特定の値が、ある範囲まで変動しうることを特定することを意味し、例えばその与えられた値に±10%、好ましくは±5%、最も好ましくは±2%の範囲の変動が含まれることを意味する。
【0148】
上記アッセイとは別に、様々なインビボアッセイが当業者には利用可能である。例えば検出可能な標識、例えば放射性同位体で場合により標識された抗体に、患者の体内の細胞を曝露して、例えば放射能を外部スキャンすることにより、又はその抗体に予め曝露された患者から採取した生検を分析することにより、その患者の細胞に対する抗体の結合を評価することができる。
【0149】
この発明に係るCD20抗体SC製剤はまた様々な非悪性疾患又は障害を治療するために使用されうることが考えられ、そのようなものは、ここに定義される自己免疫疾患;子宮内膜症;強皮症;再狭窄;大腸ポリープ、鼻ポリープ、又は消化管ポリープ等のポリープ;線維腺腫;呼吸器疾患;胆嚢炎;神経線維腫症;多発性嚢胞腎疾患;炎症性疾患;乾癬及び皮膚炎を含む皮膚疾患;血管系疾患;血管上皮細胞の異常増殖が関与する症状;消化性潰瘍;メネトリエ病、分泌性腺腫又はタンパク質減少症候群;腎疾患;血管形成疾患;老年性黄斑変性症、推定眼性ヒストプラズマ症症候群(presumed ocular histoplasmosis syndrome)、増殖性糖尿病網膜症由来の網膜血管新生、網膜血管新生、糖尿病網膜症、又は老年性黄斑変性症等の眼疾患;変形性関節症、くる病及び骨粗鬆症等の骨関連病変;脳虚血後損傷;肝硬変、肺線維症、サルコイドーシス、甲状腺炎、全身性高粘性症候群(hyperviscosity syndrome systemic)、オースラー-ウェーバー-ランデュ病、慢性閉塞性肺疾患、又は火傷、外傷、放射線、脳卒中、低酸素症又は虚血後の浮腫;皮膚の過敏症反応;糖尿病性網膜症及び糖尿病性腎症;ギラン-バレー症候群;移植片対宿主病又は移植片拒絶反応;パジェット病;骨又は関節炎;光加齢(例えば、ヒトの皮膚のUV照射によって引き起こされる);良性前立腺肥大;アデノウイルス、ハンタウイルス、ライム病菌、エルシニア菌、及び百日咳菌から選択される微生物性病原体を含むある種の微生物感染症;血小板凝集により引き起こされる血栓;子宮内膜症、卵巣過剰刺激症候群、子癇前症、機能不全子宮出血、又は機能性子宮出血等の生殖性症状;滑膜炎;アテローム;急性及び慢性腎症(増殖性糸球体腎炎及び糖尿病誘発性腎性疾患を含む);湿疹;肥大性瘢痕形成;内毒素ショック及び真菌感染:家族性大腸ポリープ症;神経変性疾患(例えば、アルツハイマー氏病、AIDS関連認知症、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、網膜色素変性症、脊髄性筋萎縮症及び小脳変性症);骨髄異形成症候群;再生不良性貧血;虚血性損傷;肺、腎臓、又は肝臓の線維症;T細胞媒介性過敏症疾患;乳児肥厚性幽門狭窄症;泌尿器系閉塞性症候群;乾癬性関節炎;及び橋本甲状腺炎を含む。治療される好ましい非悪性の徴候はここに定義された通りである。
【0150】
徴候が癌である場合、患者は抗体製剤と化学療法剤の組み合わせで治療されうる。併用投与には、別個の製剤又は単一の薬学的製剤を用いた同時投与又は併用投与、及び何れかの順序での連続投与が含まれ、ここで、好ましくは両方(又は全て)の活性薬剤が同時にそれらの生物学的活性を示す期間がある。よって、化学療法剤は、本発明に係る抗体製剤の投与前、又は投与後に投与されうる。この実施態様では、化学療法剤の少なくとも一回の投与と本発明に係る抗体製剤の少なくとも一回の投与の間のタイミングは好ましくはおよそ1ヶ月以下、最も好ましくはおよそ2週間以下である。あるいは、化学療法剤及び本発明に係る抗体製剤は、単一の製剤又は別個の製剤で患者に同時に投与される。
【0151】
上記抗体製剤での治療は癌又は疾患の症状又は徴候の改善をもたらす。例えば、治療されている疾患が癌である場合、かかる治療法は生存(全生存及び/又は無増悪生存期間)の改善を生じ得、及び/又は客観的な臨床応答(部分又は完全)を生じ得る。更に、化学療法剤と抗体製剤の併用での治療は、患者に相乗的な又は相加より大きな治療的恩恵を生じ得る。
【0152】
好ましくは、投与される製剤中の抗体はネイキッド抗体である。しかしながら、投与される抗体は細胞傷害剤とコンジュゲートされていてもよい。好ましくは、免疫コンジュゲート及び/又はそれが結合する抗原が細胞によって内部に取り入れられ、それが結合する癌細胞の死滅化における免疫コンジュゲートの治療効果が増大する。好ましい実施態様では、細胞傷害剤は癌細胞中の核酸を標的とし又は妨害する。そのような細胞傷害剤の例は、メイタンシノイド、カリケアマイシン、リボヌクレアーゼ及びDNAエンドヌクレアーゼを含む。好ましい免疫コンジュゲートは、国際公開第2003/037992号に記載されているようなトラスツズマブ−DM1(T−DM1)、より好ましくは免疫コンジュゲートT−MCC−DM1と同様に、リツキシマブ−メイタンシノイド免疫コンジュゲートである。
【0153】
皮下デリバリーでは、製剤は、適切な装置、例えば(限定しないが)シリンジ;注射装置(例えば、INJECT−EASE(商標)及びGENJECT(商標)装置);注入ポンプ(例えばAccu−Chek(商標));ペン型注射器(例えばGENPEN(商標));無針装置(例えばMEDDECTOR(商標)及びBIOJECTOR(商標));又は皮下パッチデリバリーシステムを介して投与されうる。
【0154】
疾患の予防又は治療のための上記抗CD20抗体製剤の投与の量、及び投与のタイミングは、治療されている患者のタイプ(種、性別、年齢、体重等)及び状態及び治療されている疾患又は症状の重篤度に依存する。適切な用量決定にまた重要なのは疾患の経過、抗体が予防又は治療目的で投与されるかどうか、従前の治療法、患者の臨床履歴及び抗体に対する反応性である。最終の用量決定は主治医の裁量である。抗体は、一回で又は一連の治療にわたって適切に患者に投与される。疾患のタイプ及び重篤さに応じて、約1μg/kgから50mg/kg(例えば、0.1−20mg/kg)の上記抗CD20抗体が、患者への投与の最初の候補投薬量である。
【0155】
上記抗CD20抗体の好ましい投薬量は、約0.05mg/kgから約30mg/kg体重の範囲であろう。よって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、10mg/kg又は30mg/kg(又は任意のその組合せ)の一又は複数の用量を患者に投与することができる。患者のタイプ(種、性別、年齢、体重等)及び状態及び抗CD20抗体のタイプに応じて、上記最初の投薬量は第二の抗CD20抗体の投薬量とは異なりうる。そのような用量は、毎日又は間欠的に、例えば3日毎から6日毎又は1週間毎から3週間毎に投与されうる。最初のより高い負荷用量の後、一又は複数の低い用量を投与してもよい。臨床実験に基づき(リツキシマブに対する非限定的例証のための実施例3及び4をまた参照のこと)、好ましい投薬量範囲は300mg/mから900mg/mである。より好ましくは、上記抗CD20抗体の好ましい投薬量範囲は、約375mg/mから約800mg/mである。上記抗CD20抗体の好ましい特定の投薬量は、約375mg/m、約625mg/m及び約800mg/mの投薬量である。また好ましいのは上記抗CD20抗体の固定用量である。
【0156】
一実施態様では、B細胞リンパ腫、好ましくは非ホジキンリンパ腫に対する固定投薬量は次の通りである。好ましいのは一用量当たり約1200mgから約1800mgの上記抗CD20抗体である。より好ましいのは、一用量当たり約1300mg、約1500mg、約1600mg及び約1700mgの上記抗CD20抗体の群から選択される投薬量である。B細胞リンパ腫患者、好ましくは非ホジキンリンパ腫患者に対する最も好ましい固定投薬量は、一用量当たり約1400mgの上記抗CD20抗体(例えばリツキシマブ)であり、これは、約2年間(又はそれ以上)等の間、およそ2ヶ月毎(およそ8週間毎を含む)、およそ3ヶ月毎(およそ12週間毎を含む)を含む様々なスケジュールに従って投与されうる(リツキシマブに対する非限定的例証のための実施例3及び4をまた参照のこと)。
【0157】
他の実施態様では、白血病患者、好ましくは慢性リンパ性白血病(CLL)患者に対する固定投薬量は次の通りである。好ましいのは一用量当たり約1600mgから約2200mgの上記抗CD20抗体である。より好ましいのは、一用量当たり約1700mg、約1800mg、約1900mg、及び約2100mgの上記抗CD20抗体の群から選択される投薬量である。一実施態様では、白血病患者、好ましくはCLL患者に対する固定投薬量は、一用量当たり約1870mgの上記抗CD20抗体(例えばリツキシマブ)である。
【0158】
また他の実施態様では、自己免疫疾患、例えば関節リウマチ、多発性硬化症、ループス腎炎、糖尿病、ITP、及び脈管炎の患者に対する固定投薬量は次の通りである。好ましいのは一用量当たり約1200mgから約2200mgの上記抗CD20抗体、例えば一用量当たり約1500mgの上記抗CD20抗体(例えばリツキシマブ)である。
【0159】
化学療法剤が投与されるならば、それは通常それに対して知られている投与量で投与され、又は薬剤の併用作用又は化学療法剤の投与に起因する負の副作用のために場合によっては低下される。そのような化学療法剤の調製及び投薬スケジュールは、製造者の指示書に従って、又は熟練した医師によって経験的に決定された通りに使用されうる。そのような化学療法のための調製及び投薬スケジュールはまたChemotherapy Service Ed., M.C. Perry, Williams & Wilkins, Baltimore, MD (1992)に記載されている。
【0160】
本発明に係る薬学的に活性な抗CD20抗体の安定な薬学的製剤は好ましくは皮下注射剤として投与され得、投与は好ましくは3週間(q3w)の時間間隔で数回繰り返される。最も好ましくは、注射液の全体積は1から10分、好ましくは2から6分、最も好ましくは3±1分の時間内に投与される。最も好ましくは2ml/分が投与され、つまり例えばおよそ240mg/分である。他の静脈内(IV)化学療法剤が投与されない多くの患者では、そのような皮下投与は、自宅での自己投与の潜在性と共に患者の利便性を増加させる。これは、改善された服薬遵守に導き、IV投与に関連したコスト(つまり、IV投与の看護コスト、デイ・ベッドのレンタル、患者の移動等)を低減/削除する。本発明による皮下投与は注入関連反応の減少した頻度及び/又は強度に関係している蓋然性が高い。
【0161】
好ましい実施態様では、医薬は、CD20発現癌に罹患している患者において転移又は更なる播種性転移を予防又は低減させるのに有用である。該医薬は、かかる患者の生存期間を増加させ、かかる患者の無増悪生存期間を増加させ、応答期間を増加させ、生存期間、無増悪生存期間、奏効率又は応答期間により測定される治療される患者の統計的に有意で臨床的に意味のある改善を生じせしめるのに有用である。好ましい実施態様では、医薬は患者群の奏効率を増加させるのに有用である。
【0162】
本発明の文脈において、一又は複数の更なる他の増殖阻害剤、細胞傷害剤、化学療法剤、抗血管新生剤、抗癌剤、又はサイトカイン、又はかかる薬剤の作用を亢進させる化合物が、CD20発現癌の抗CD20抗体治療において使用されうる。好ましくは、抗CD20抗体治療は、かかる更なる細胞傷害剤、化学療法剤又は抗癌剤、又はかかる薬剤の効果を亢進する化合物なしで使用される。
【0163】
このような薬剤は、例えば、アルキル化剤又はアルキル化作用を有する薬剤、例えばシクロホスファミド(CTX;例えばcytoxan(登録商標))、クロランブシル(CHL;例えばleukeran(登録商標))、シスプラチン(CisP;例えばplatinol(登録商標))、ブスルファン(例えばmyleran(登録商標))、メルファラン、カルムスチン(BCNU)、ストレプトゾトシン、トリエチレンメラミン(TEM)、マイトマイシンC等;代謝拮抗物質、例えばメソトレキセート(MTX)、エトポシド(VP16;例えばvepesid(登録商標))、6−メルカプトプリン(6MP)、6−チオグアニン(6TG)、シタラビン(Ara−C)、5−フルオロウラシル(5−FU)、カペシタビン(例えばXeloda(登録商標))、ダカルバジン(DTIC)等;抗生物質、例えばアクチノマイシンD、ドキソルビシン(DXR;例えばアドリアマイシン(登録商標))、ダウノルビシン(ダウノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン等;アルカロイド、例えばビンカアルカロイド、例えばビンクリスチン(VCR)、ビンブラスチン等;及び他の抗腫瘍剤、例えばパクリタキセル(例えばtaxol(登録商標)))、及びパクリタキセル誘導体、細胞分裂阻害剤、グルココルチコイド、例えばデキサメタゾン(DEX;例えばdecadron(登録商標))及びコルチコステロイド、例えばプレドニゾン、ヌクレオシド酵素インヒビター、例えばヒドロキシ尿素、アミノ酸枯渇化酵素、例えばアスパラギナーゼ、ロイコボリン及び他の葉酸誘導体、及び類似の多様な抗腫瘍剤を含む。次の薬剤もまた更なる薬剤として使用することができる:アルニホスチン(例えばethyol(登録商標))、ダクチノマイシン、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、ストレプトゾシン、シクロホスファミド、ロムスチン(CCNU)、ドキソルビシンリポ(例えばdoxil(登録商標))、ゲムシタビン(例えばgemzar(登録商標))、ダウノルビシンリポ(例えばdaunoxome(登録商標))、プロカルバジン、マイトマイシン、ドセタキセル(例えばtaxotere(登録商標))、アルデスロイキン、カルボプラチン、オキサリプラチン、クラドリビン、カンプトテシン、CPT11(イリノテカン)、10−ヒドロキシ7−エチル−カンプトテシン(SN38)、フロクスウリジン、フルダラビン、イホスファミド、イダルビシン、メスナ、インターフェロンベータ、インターフェロンアルファ、ミトキサントロン、トポテカン、ロイプロリド、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、プリカマイシン、ミトタン、ペガスパルガーゼ、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、タモキシフェン、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、ウラシルマスタード、ビノレルビン、クロランブシル。好ましくは、抗CD20抗体治療は、かかる更なる薬剤なしで、使用される。
【0164】
上述の細胞傷害及び抗癌剤並びに抗増殖性標的特異的抗癌薬、例えば化学療法レジメンにおけるプロテインキナーゼインヒビターの使用は、一般に癌治療の技術分野で充分に特徴付けられており、ここでのその使用は、幾らかの調整を施して、耐性と効能をモニターし、また投与経路と投薬量を管理するための同じ考慮事項に属する。例えば細胞傷害剤の実際の投薬量は、組織培養法を使用して決定される患者の培養細胞応答に依存して変動しうる。一般に、投薬量は、更なる他の薬剤の非存在下で使用される量と比較して減少される。
【0165】
効果的な細胞傷害剤の典型的な投薬量は、製造者によって推奨される範囲であり得、インビトロ応答又は動物モデルにおける応答により示される場合、約1オーダーの大きさまでの濃度又は量を減少させることができる。よって、実際の投薬量は、医師の判断、患者の状態、及び初代培養悪性腫瘍細胞又は組織培養組織試料のインビトロ応答性、又は適切な動物モデルで観察される応答に基づく治療方法の効能に依存する。
【0166】
本発明の文脈では、CD20発現癌の抗CD20抗体治療に加えて、有効量の電離放射が照射され、及び/又は放射性医薬品が使用されうる。放射線源は、治療される患者に対して体外でも体内でもよい。放射線源が患者に対して体外である場合、治療は外部ビーム放射線療法(EBRT)として知られている。放射線源が患者に対して体内である場合、治療は密封小線源治療法(BT)と呼ばれる。本発明の文脈で使用される放射性原子は、限定されないが、ラジウム、セシウム−137、インジウム−192、アメリシウム−241、金−198、コバルト−57、銅−67、テクネチウム−99、ヨード−123、ヨード−131、及びインジウム−111を含む群から選択されうる。また、かかる放射性同位体で抗体を標識することもできる。好ましくは抗CD20抗体治療は、かかる電離放射線なしで使用される。
【0167】
放射線療法は、切除不能な又は手術不可能な腫瘍及び/又は腫瘍転移を抑制するための標準的な治療法である。改善された結果は、放射線療法を化学療法と組合せたときに見られる。放射線療法は、標的領域に送達される高線量の放射線が、腫瘍組織と正常組織の両方の生殖細胞死を生じるという原理に基づく。放射線量レジメンは、一般に放射線吸収線量(Gy)、時間及び分割で定義され、腫腸学者により注意深く定められなければならない。患者が受ける放射線被爆量は様々な考慮事項に依存するが、2つの最も重要なことは、体の他の重要な構造もしくは臓器に対する腫瘍の位置と、腫瘍が広がっている度合いである。放射線療法を受けている患者の典型的な治療過程は、1〜6週間で、患者に投与される総線量が10〜80Gyで、1日の割合が約1.8〜2.0Gyで、週に5日間という治療スケジュールである。この発明の好適な実施態様では、ヒト患者の腫瘍が本発明の併用治療と放射線で治療される場合に相乗作用がある。換言すれば、本発明のCD20抗体製剤を含む薬剤による腫瘍増殖の阻害は、放射線と組合せ、場合によっては更なる化学療法又は抗癌剤を組合せられると、亢進される。アジュバント放射線療法のパラメータは、例えば国際公開第99/60023号に含まれている。
【0168】
限定しないが、第二(第三、第四等)の化学療法剤(別の言葉では異なった化学療法剤の「カクテル」);他のモノクローナル抗体;増殖阻害剤;細胞傷害剤;化学療法剤;抗血管形成剤;及び/又はサイトカイン等;又はその任意の適切な組み合わせを含む他の治療レジメンを抗体と組み合わせてもよい。
【0169】
上記の治療レジメンに加えて、患者には癌細胞の外科的除去及び/又は放射線療法を施すことができる。
【0170】
本発明の他の実施態様では、本発明の薬学的製剤を含む製造品が提供され、その使用のための説明書を提供する。この製造品は容器を含む。適切な容器には、例えばボトル、バイアル(例えば、複数又は二重チャンバーバイアル)、シリンジ(複数又は二重チャンバーシリンジなど)、及び試験管が含まれる。容器はガラス又はプラスチックのような様々な材料で形成することができる。容器は製剤を収容し、該容器の上又は該容器に付随したラベルは使用のための指示を示しうる。容器は、再構成された製剤の繰り返し投与(例えば2から6の投与)を可能にする多使用バイアルでありうる。製造品は、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び使用説明に関するパッケージ挿入物を含む、市販及び使用者の観点から望ましい他の材料を更に含みうる。
【0171】
本発明に従って製剤化される抗体は、好ましくは本質的に純粋であり、望ましくは本質的に均一である(つまり、汚染タンパク質等を含まず、本発明に係る製剤中のヒアルロニダーゼ酵素は本発明に係る抗CD20モノクローナル抗体の汚染タンパク質であるとは考えてはいけない)。
【0172】
本発明は次の実施例を参照することにより更に十分に理解されるであろう。実施例は、しかしながら、発明の範囲を限定するものと解してはならない。全ての文献及び特許引用例は出典明示によりここに援用される。
【実施例】
【0173】
本発明に係る皮下投与のための抗CD20製剤を、以下に概説する一般的調製及び分析方法及びアッセイを使用して以下に与えた実験結果に基づいて開発した。
【0174】
実施例1:高度に濃縮された液体製剤の調製
リツキシマブは、組換えタンパク質の生産から一般に知られている技術によって製造される。欧州特許第2000149B号に記載のようにして調製された遺伝子操作チャイニーズマムスター卵巣細胞(CHO)株がマスター細胞バンクからの細胞培養で増殖される。リツキシマブモノクローナル抗体は、細胞培養液から収集され、固定プロテインAアフィニティークロマトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィー、ウイルス汚染物質を除去するための濾過工程と続くアニオン交換クロマトグラフィー及び限外濾過/ダイアフィルトレーション工程を使用して精製される。
【0175】
rHuPH20は、組換えタンパク質の生産で一般に知られている技術によって製造される。該プロセスは、ワーキング細胞バンク(WCB)又はマスター細胞バンク(MCB)からの細胞の解凍と一連のスピナフラスコでの細胞培養による増殖とバイオリアクターでの増殖で始まる。6リットルまでの細胞培養を使用して、メトトレキセートでの淘汰圧下で維持される連続細胞源を提供する。およそ36リットルまで増殖させたとき、およそ300リットルの最終バッチ体積のために400リットルのバイオリアクターに移す。製造バイオリアクターは、淘汰圧のない流加培養モードで操業され、製造段階の期間がおよそ2週間である。rHuPH20は培養液中に分泌される。500リットルの最終バッチ体積には、1000リットルのバイオリアクターを使用することができる。製造段階の完了後、収集液を濾過によって清澄にし、ついで溶媒/洗浄剤で処理してウイルスを不活化させる。ついで、タンパク質を一連の4つのカラムクロマトグラフィープロセスによって精製して、プロセス及び生成物に関連する不純物を除去する。ウイルス濾過工程を実施し、ついで、濾過したバルクを濃縮し、最終バッファー中に製剤化する:20mMのL−ヒスチジン/HClバッファー(pH6.5)、130mMのNaCl、0.05%(w/v)のポリソルベート80中に10mg/mLのrHuPH20。rHuPH20バルクは−70℃以下で保存される。
【0176】
本発明に係る製剤の他の賦形剤は広く実際に使用され、当業者に知られている。従って、それらをここで詳細に説明する必要はない。
【0177】
本発明に係る皮下投与のための液体医薬品製剤を次の通りに開発した:
液体製剤の調製のために、リツキシマブを、予測されたバッファー組成を含むダイアフィルトレーションバッファーに対してバッファー交換し、必要とされる場合、およそ200mg/mlの抗体濃度までダイアフィルトレーションによって濃縮した。ダイアフィルトレーション操作の完了後、賦形剤(例えばトレハロース、rHuPH20、界面活性剤)を原液として抗体溶液に加えた。最後に、タンパク質濃度を、およそ120mg/mlの最終リツキシマブ濃度になるまでバッファーで調節した。
【0178】
全ての製剤を0.22μmの低タンパク質結合フィルターで滅菌濾過し、ETFE(エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体)被覆ゴム栓及びアルクリンプ(alucrimp)キャップで閉めた滅菌した6mlのガラスバイアルに無菌的に充填した。充填体積はおよそ3.0mlであった。これらの製剤を、異なった気候条件(5℃、25℃及び40℃)で異なった時間間隔の間、保存し、震盪(5℃及び25℃で200rpmの震盪頻度で1週間)及び凍結解凍ストレス法によってストレスを与えた。次の分析法によってストレス試験を適用する前後に試料を分析した:
1)紫外分光法;
2)分子ふるい(サイズ排除)クロマトグラフィー(SEC);
3)イオン交換クロマトグラフィー(IEC);
4)溶液の濁度;
5)可視粒子;
6)rHuPH20活性。
【0179】
タンパク質含有量の決定に使用される紫外線分光法は240nmから400nmの波長範囲でPerkin Elmer λ35紫外線分光光度計で実施した。ニートタンパク質試料は対応する製剤バッファーを用いておよそ0.5mg/mlまで希釈した。タンパク質濃度は式1に従って計算した。

280nmでの紫外線吸収を320nmでの光散乱に対して修正し、ニート試料と希釈バッファーの重み付け質量と密度から決定された希釈係数を乗じた。分子はキュベットの経路長dと吸光係数εの積で除した。
【0180】
分子ふるいクロマトグラフィー(SEC)を使用して、製剤中の可溶性高分子量種(凝集物)と低分子量加水分解産物(LMW)を検出した。該方法ではUV検出器(検出波長280nm)及びTosoHaas TSK G3000SWXLカラム(7.8×300mm)を備えた適切なHPLC機器を使用した。未変化の単量体、凝集物及び加水分解産物を、0.2Mのリン酸水素ジカリウム、025Mの塩化カリウム,pH7.0を0.5ml/分の流量で使用して定組成溶離プロファイルによって分離した。
【0181】
イオン交換クロマトグラフィー(IEC)を実施して、製剤中のリツキシマブの正味荷電を変える化学分解産物を検出した。この目的に対して、リツキシマブをパパインで消化させた。該方法では、UV検出器(検出波長280nm)及びPlymer Labs PL−SCX1000A分析用カチオン交換カラムを備えた適切なHPLC機器を使用した。10mMのMES,pH6.0と10mMのMES、0.2Mの塩化ナトリウム,pH6.0を1ml/分の流量でそれぞれ移動相A及びBとして使用した。
【0182】
濁度の決定に対しては、室温でHACH 2100AN濁度計を使用して、FTU(濁度単位)で乳白色を測定した。
【0183】
Seidenader V90−T視覚検査機器を使用して試料を可視粒子について分析した。
【0184】
ヒアルロニダーゼとしてrHuPH20のインビトロ酵素アッセイを活性アッセイとして使用した。該アッセイは、ヒアルロナン(ヒアルロン酸ナトリウム)がカチオン性沈殿剤に結合するときの不溶性沈殿物の形成に基づく。酵素活性は、ヒアルロナン基質と共にrHuPH20をインキュベートし、ついで酸性化された血清アルブミン(ウマ血清)を用いて未消化のヒアルロナンを沈殿させることによって酵素活性を測定した。濁度は640nmの波長で測定し、ヒアルロナン基質に対する酵素活性から生じる濁度の減少が酵素活性の尺度である。該手順はrHuPH20アッセイ参照標準の希釈で作成した標準曲線を使用して実施され、試料活性が曲線から読み取られる。
【0185】
製剤AからJに対する安定性試験の結果を以下に加えられる表に記載する。
【0186】










【0187】
実施例2:ヒト化2H7抗CD20液体製剤の調製
液体製剤の調製のために、組換えヒト化2H7抗CD20抗体(国際公開第2006/084264号に開示の2H7.v16)を、予測されたバッファー組成を含むダイアフィルトレーションバッファーに対してバッファー交換し、必要とされる場合、およそ60及び120mg/mlの抗体濃度まで濃縮した。標的濃度を達成した後、賦形剤(例えばトレハロース、rHuPH20、ポリソルベート20)をついで原液として抗体溶液に加えた。最後に、タンパク質濃度を、およそ30、50、及び100mg/mlのヒト化2H7濃度になるまで最終製剤バッファーで調節した。
【0188】
全ての製剤を0.22μmの低タンパク質結合フィルターで滅菌濾過し、フルオロ樹脂積層ブチルゴム栓で栓をしアルミニウム/プラスチックフリップオフシールで蓋をした滅菌した3mlのガラスバイアルに無菌的に充填した。充填体積はおよそ1.2mlであった。これらの製剤を、異なった温度(5℃、25℃及び40℃)で異なった時間間隔の間、保存した。次の分析法によって各安定性時点で試料を分析した:
1)紫外分光法;
2)分子ふるいクロマトグラフィー(SEC);
3)イオン交換クロマトグラフィー(IEC);
4)ヒト化2H7活性に対する補体依存性細胞傷害性(CDC)アッセイ
5)rHuPH20活性のための比濁アッセイ
【0189】
1)タンパク質濃度は240nmから400nmの波長範囲でAgilent8453分光光度計を使用して紫外線吸収分光法によって決定した。試料は対応する製剤バッファーを用いて重量測定でおよそ0.5mg/mlまで希釈した。タンパク質濃度は式1を使用して計算した:
タンパク質濃度=((Amax−A320)×DF)/(ε(cm/mg)×d(cm))(式1)
ここで、DFは希釈係数、dはキュベットの経路長、εは吸光係数であり、Amaxで2H7に対して1.75(cm/mg−1)である。AmaxでのUV光吸収(典型的には278から280nm)を320nmでの光散乱に対して修正し、ニート試料と希釈バッファーの重み付け質量と密度から決定された希釈係数を乗じた。分子はキュベットの経路長dと吸光係数εの積で除した。
【0190】
2)分子ふるいクロマトグラフィー(SEC)を使用して、製剤中の可溶性高分子量種(凝集物)と低分子量加水分解産物(LMW)を検出した。SECは、UV検出器(検出波長280nm)及びTSK G3000SWXLカラム(7.8×300mm)を備えたAgilent Technologies社1100シリーズHPLCで実施した。未変化の単量体、凝集物及び加水分解産物を、0.20Mのリン酸カリウム、0.25Mの塩化カリウム,pH6.2を0.3ml/分の流量で使用して定組成溶離プロファイルによって分離した。
【0191】
3)イオン交換クロマトグラフィー(IEC)を実施して、製剤中の抗CD20抗体の正味荷電を変える化学分解産物を検出した。この目的に対して、抗CD20抗体をカルボキシペプチダーゼBと共にインキュベートし、塩基性アミノ酸の加水分解を触媒した。イオン交換クロマトグラフィーは、UV検出器(検出波長280nm)及びDionex ProPac WCX−10(4×250mm)を備えたAgilent Technologies社1100シリーズHPLCで実施した。酸性及び塩基性変異体を、pH6.9の25mMのリン酸カリウム(移動相A)及び25mMのリン酸カリウムに溶解した120mMの塩化カリウム(移動相B)の線形勾配を0.5mL/分の流量で使用して分離した。
【0192】
4)補体依存性細胞傷害アッセイ(CDC)アッセイを実施して抗CD20抗体のインビトロ活性を決定した。補体依存性細胞傷害性(CDC)力価アッセイを使用して、ヒト補体の存在下でのヒトBリンパ芽球様(WIL2−S)細胞を溶解する抗体の能力を測定する。該アッセイは96ウェルの組織培養マイクロタイタープレートで実施される。このアッセイでは、アッセイ希釈剤に希釈した様々な濃度の抗CD20抗体参照材料、コントロール、又は試料を、固定量のヒト補体の存在下でWIL2−S細胞と共にインキュベートする(50000細胞/ウェル)。プレートを加湿インキュベーター中で37℃/5%CO2で1から2時間、インキュベートする。インキュベーション期間の終わりに、50μLのレドックス染料アラマーブルー(商標)を各ウェルに加え、プレートを15から26時間インキュベートする。アラマーブルー(商標)は生きた細胞によって還元されると530nmの励起波長及び590nmの発光波長で蛍光を発するレドックス染料である。従って、色と蛍光の変化は生細胞の数に比例する。相対蛍光単位(RFU)で表した結果を抗CD20抗体濃度に対してプロットし、パラレルラインプログラムを使用して参照材料に対する抗CD20抗体試料の活性を推定する。
【0193】
5)比濁アッセイを使用してヒアルロニダーゼ活性及び酵素濃度を決定した。この方法は、ヒアルロン酸が酸性化血清アルブミンと結合する場合の不溶性沈殿物の形成に基づいている。簡単に言えば、2.5U/mlから0.25U/mlの範囲の希釈系列のrhuPH20ヒアルロニダーゼ(Halozyme, Inc.)作用参照標準を、酵素希釈剤(70mMのNaCl、25mMのPIPES,pH5.5、0.66mg/mlのゼラチン加水分解物、0.1%のヒト血清アルブミン)で調製する。試験試料を酵素希釈剤で1.5U/mlの最終濃度まで希釈する。30μlの標準及び試料希釈物を「黒の透明な底部」の96ウェルプレート(Nunc)に移す。ついで、プレートをカバーし、37℃で5分間、事前に温めた。ついで、反応を、30μlの事前に温めた0.25mg/mlのヒアルロン酸基質溶液(70mMのNaCl、25mMのPIPES,pH5.5、0.25mg/mlの乾燥ヒアルロン酸ナトリウム,Lifecore Biomedical)を加えることによって開始させる。プレートを手短に振盪し、37℃で10分間インキュベートする。このインキュベーション工程後、反応を、240μlの血清作業液(2.5%のウマ血清、500mMの酢酸カリウム,pH4.25)を添加することによって停止させる。室温で30分の展開時間後、反応の濁度をマイクロプレートリーダーで波長640nmで測定する。ヒアルロン酸基質に対する酵素活性から生じる濁度の減少がヒアルロニダーゼ活性の指標である。試料の活性はrhuPH20作業参照標準の希釈物を用いて作成した較正曲線に対して決定する。
【0194】
様々なヒト化2H7抗体製剤で得られた結果を次の表に示す:









【0195】
実施例3:製剤での患者の治療
リツキシマブ含有レジメンは様々なCD20陽性B細胞悪性腫瘍に罹患した患者に対する治療の標準となった。現在、リツキシマブは数時間にわたる静脈内(IV)注入として投与されている。これらの長い注入時間と注入に関連した副作用は、患者によっては、現在の治療処置の不快なところであると指摘されている。更に、静脈内アクセスをなすのに必要とされる手順は侵襲的であると考えられ、特に繰り返して治療される悪性疾患の患者においては、苦痛でありうる。皮下(SC)投与は、治療を顕著に単純化し得、投与を10分以内に短くし、患者の悩みを改善する。組換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)が開発され、同時投与医薬の分散と吸収を改善することが認められた。それはリツキシマブと併用されて、10mLより多くの注射容量を安全で快適にSC投与することが可能になった。この治療の目的は、IVリツキシマブへの匹敵する曝露を与える実施例1(製剤A)に記載されたようにして調製されたrHuPH20を含むSCリツキシマブ製剤の用量を選択し、維持治療の間における男性及び女性濾胞性リンパ腫(FL)患者におけるその安全性と耐容性を評価することであった。
【0196】
この実施例は、無作為化非盲検多施設アダプティブIb相試験からのステージ1データを提供する。124名の患者を4群のリツキシマブ維持処置群の一つに無作為化した:16名の患者のIVコントロール、34名の患者のSC用量1(375mg/m)、34名の患者のSC用量2(625mg/m)及び40名の患者のSC用量3(800 mg/m)。無作為化の前に、適格の患者は維持セッティングにおいて375mg/mの少なくとも一のIVリツキシマブ用量で処置した。SCコホートの一つに無作為化した患者には、1回のIV用量をSC用量に置き換えた。現地の慣行に従って、患者にリツキシマブを2ヶ月毎(q2m)又は3ヶ月毎(q3m)の何れかのレジメンで投与した。安全性データは合計119名の患者から入手可能である。リツキシマブSCは一般に耐容性がよかった。臨床的に有意な観察又は処置関連の深刻な有害事象は報告されなかった。合計で95の有害事象(AEs)が46名の患者(39%)で報告された。最も起こりうる記述されたAEは「投与関連反応」(発疹、紅斑及び軽度の不快感を含むAAR)であった。これらのAARは可逆的で、主に強度は軽度で、1事象だけ何らかの処置を必要とした(吐き気に対してメトクロプラミド)。全体として、AEプロファイルは、リツキシマブIV(AAR後、最も頻繁な事象は胃腸疾患及び軽度の感染であった)で治療された患者において予想されたものと有意には異なっていない。4例の深刻な有害事象(SAE)が4名の別個の患者で報告され、全てが試験医薬とは無関係と報告された。死亡、中止又は治療中断に至るAEはなかった。
【0197】
各患者においてSC投与された全容量は4.4−15.0mLの範囲であった。平均注射期間は2mL/分であった。SCコホートにおけるリツキシマブの最大血清中濃度は2日目と8日目(48時間と168時間)の間に生じた。薬物動態パラメーターは投与されたSC用量(375、625及び800mg/m)の範囲にわたって用量に関して線形であった。625mg/mのリツキシマブSCを投与した患者における28日目(C28)のリツキシマブ濃度及び血清曝露度合い(AUC0−57)は、375mg/mSCの標準的なリツキシマブIV用量を投与された患者のものに匹敵していた。
【0198】
結論として、皮下リツキシマブは、維持治療中のFL患者において承認されている静脈内製剤に匹敵する血清曝露を達成しながら速く、快適かつ安全に送達されうる。患者の経験は好ましかった。これらの結果は皮下リツキシマブの更なる試験を支持し、1400mgのリツキシマブSCの固定用量は、治験のステージ2における正式なCtrough非劣性試験のために選択した。
【0199】
実施例4:濾胞性非ホジキンリンパ腫の患者におけるリツキシマブSQ対リツキシマブIV
過去に未治療の濾胞性(低悪性度)リンパ腫の患者が、(a)CHOP又はCVPでの併用でのリツキシマブSC製剤(実施例1の製剤Aに従って調製)で、又は(b)CHOP又はCVPでの併用でのリツキシマブIVでの、維持治療で治療される。
【0200】
患者を無作為化して、静脈内注入として375mg/m2のリツキシマブを又は皮下的に1400mgのリツキシマブを投与する。また、患者は標準の化学療法(CVP又は CHOP)を受ける。8の治療サイクル後に完全寛解又は部分寛解を達成した患者は、更に最大12サイクル数の維持治療を受ける。維持治療サイクルは8週毎に繰り返される。試験治療の予想される時間は96週間である。
【0201】
12サイクルまで8週毎の維持療法としての1400mgのSQリツキシマブ抗CD20抗体での治療は、場合によっては(CHOP又はCVPを含む)化学療法との併用で、濾胞性リンパ腫を治療するのに安全で効果的であることが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.約50から350mg/mlの抗CD20抗体;
b.5.5±2.0のpHを与える約1から100mMの緩衝剤;
c.約1から500mMの安定剤又は二以上の安定剤の混合物;
d.約0.01から0.1%の非イオン性界面活性剤;及び
e.場合によっては有効量の少なくとも一のヒアルロニダーゼ酵素
を含有する、薬学的に活性な抗CD20抗体の高度に濃縮された安定な薬学的製剤。
【請求項2】
抗CD20抗体濃度がそれぞれ100から150mg/ml、好ましくは120±20mg/mlである請求項1に記載の高度に濃縮された安定な薬学的抗CD20抗体製剤。
【請求項3】
約1000から約16000U/ml、好ましくは約2000U/ml又は12000U/mlのヒアルロニダーゼ酵素を含有する請求項1又は2に記載の高度に濃縮された安定な薬学的抗CD20抗体製剤。
【請求項4】
緩衝剤が1から50mMの濃度である請求項1から3の何れか一項に記載の高度に濃縮された安定な薬学的抗CD20抗体製剤。
【請求項5】
緩衝剤が、好ましくは5.5、6.0、6.1及び6.5からなる群から選択される、5.5から6.5のpHを与える請求項1から4の何れか一項に記載の高度に濃縮された安定な薬学的抗CD20抗体製剤。
【請求項6】
緩衝剤がヒスチジンバッファーである請求項1から5の何れか一項に記載の高度に濃縮された安定な薬学的抗CD20抗体製剤。
【請求項7】
安定剤が糖、例えばα,α−トレハロース二水和物又はスクロースである請求項1から6の何れか一項に記載の高度に濃縮された安定な薬学的抗CD20抗体製剤。
【請求項8】
安定剤が15から250mMの濃度にある請求項1から7の何れか一項に記載の高度に濃縮された安定な薬学的抗CD20抗体製剤。
【請求項9】
メチオニンが第二安定剤として使用される請求項7又は8に記載の高度に濃縮された安定な薬学的抗CD20抗体製剤。
【請求項10】
メチオニンが5から25mMの濃度で存在する請求項9に記載の高度に濃縮された安定な薬学的抗CD20抗体製剤。
【請求項11】
非イオン性界面活性剤が、好ましくはポリソルベート20、ポリソルベート80、及びポリエチレン・ポリプロピレン共重合体からなる群から選択される、ポリソルベートである請求項1から10の何れか一項に記載の高度に濃縮された安定な薬学的抗CD20抗体製剤。
【請求項12】
ポリソルベートの濃度がそれぞれ0.02%(w/v)から0.08%(w/v)である請求項11に記載の高度に濃縮された安定な薬学的抗CD20抗体製剤。
【請求項13】
ヒアルロニダーゼ酵素がrHuPH20である請求項1から12の何れか一項に記載の高度に濃縮された安定な薬学的抗CD20抗体製剤。
【請求項14】
抗CD20抗体が、リツキシマブである請求項1から13の何れか一項に記載の高度に濃縮された安定な薬学的抗CD20抗体製剤。
【請求項15】
抗CD20抗体が、オクレリズマブである請求項1から13の何れか一項に記載の高度に濃縮された安定な薬学的抗CD20抗体製剤。
【請求項16】
抗CD20抗体が、HuMab<CD20>である請求項1から13の何れか一項に記載の高度に濃縮された安定な薬学的抗CD20抗体製剤。
【請求項17】
凍結及び解凍時に安定である請求項1から16の何れか一項に記載の高度に濃縮された安定な薬学的抗CD20抗体製剤。
【請求項18】
皮下又は筋肉内投与のための請求項1から17の何れか一項に記載の高度に濃縮された安定な薬学的抗CD20抗体製剤。
【請求項19】
液体形態である請求項1から18の何れか一項に記載の高度に濃縮された安定な薬学的抗CD20抗体製剤。
【請求項20】
凍結乾燥形態である請求項1から19の何れか一項に記載の高度に濃縮された安定な薬学的抗CD20抗体製剤。
【請求項21】
被検体における癌又は非悪性疾患等の抗CD20抗体での治療を受け入れられる疾患又は障害の治療に有用な医薬の調製における請求項1から20の何れか一項に記載の製剤の使用であって、上記疾患又は障害を治療するのに有効な量でここに記載の製剤を被検体に投与することを含む使用。
【請求項22】
製剤が化学療法剤と同時に又は順次に同時投与される請求項21に記載の使用。
【請求項23】
1200mgから約2200mgの固定用量の抗CD20抗体がそれを必要とする被検体に投与される請求項21又は22に記載の使用。
【請求項24】
約1200mgから約1800mgの固定用量の抗CD20抗体がそれを必要とする被検体に投与される請求項21又は22に記載の使用。
【請求項25】
1600mgから約2200mgの固定用量の抗CD20抗体がそれを必要とする被検体に投与される請求項21又は22に記載の使用。
【請求項26】
被検体における癌又は非悪性疾患等の抗CD20抗体での治療を受け入れられる疾患又は障害を治療する方法において、上記疾患又は障害を治療するのに有効な量で請求項1から25の何れか一項に記載の製剤を被検体に投与することを含む方法。
【請求項27】
製剤が化学療法剤と同時に又は順次に同時投与される請求項26に記載の方法。
【請求項28】
明細書に記載された発明。

【公表番号】特表2013−504540(P2013−504540A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528365(P2012−528365)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063271
【国際公開番号】WO2011/029892
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(306021192)エフ・ホフマン−ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト (58)
【Fターム(参考)】