説明

高度不飽和脂肪酸食品の酸化防止用組成物及び及びそれを使用した酸化防止方法

【課題】
高度不飽和脂肪酸含有食品の酸化防止組成物、及び、酸化安定性の高い高度不飽和脂肪酸含有食品を提供する。
【解決手段】
本発明は、油脂食品中に添加することで抗酸化効果を有する組成物、α-リポ酸及びビタミンCの組合せからなる食品用酸化防止組成物について提供する。また、該食品用酸化防止組成物を含有する、酸化に対してより安定で、食味の優れた高度不飽和脂肪酸含有食品を提供する。
本発明は、高度不飽和脂肪酸含有食品中の高度不飽和脂肪酸の含量に対し、少なくとも、リポ酸を0.0025〜1.25重量%含有し、ビタミンCを0.025〜1.25重量%含有してなる高度不飽和脂肪酸含有食品の酸化防止用組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高度不飽和脂肪酸含有食品の酸化防止用組成物に関する。
また、ビタミンC及びリポ酸を含有してなる酸化防止用組成物を使用した高度不飽和脂肪酸含有食品の酸化防止方法に関する。
さらに、該酸化防止組成物を使用して高度不飽和脂肪酸含有食品の品質が向上する方法及び該酸化防止組成物を使用した高度不飽和脂肪酸含有食品に関する。
【背景技術】
【0002】
高度不飽和脂肪酸は様々な生理機能を有し、さまざまな食品に使用され食品成分として近年注目されている。高度不飽和脂肪酸の中でも、特にドコサヘキサエン酸やα-リノレン酸等はω-3系脂肪酸と呼ばれ、ω-3系脂肪酸が保有している特徴的な機能から、食品用途への応用が期待されている。また、アラキドン酸に代表されるω-6系高度不飽和脂肪酸についても特有の生理活性を有している。食品栄養学の分野においてはω-3系脂肪酸及びω-6系脂肪酸のバランスが盛んに議論される等、近年、高度不飽和脂肪酸は注目されている栄養素の一つである。
【0003】
しかしながら、高度不飽和脂肪酸は分子内に活性メチレン基を多く有し、酸化に対する安定性が極めて低いことが知られている。高度不飽和脂肪酸を含む脂質が酸化することは、臭いの発生による嗜好的品質の低下や栄養価値の低下等が懸念され、さらには、安全性の面でも過酸化物の生成に起因した毒性発現の可能性が懸念されており、高度不飽和脂肪酸にあっても深刻な問題である。高度不飽和脂肪酸のグリセリン誘導体が食品素材として販売されているが、酸化安定性が低く用途が限定されることから、食品への応用がさほど進んでいない。したがって、油脂含有食品、特に高度不飽和脂肪酸含有食品の酸化を防止することは非常に重要である。
【0004】
一般に、食品の酸化防止の目的で、ブチルヒドロキシアニソール(BHA、2-tert-butyl-4-hydroxyanisole及び3-tert-butyl-4-hydroxyanisoleの混合物)、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT、2,6-di-tert-butyl-4-hydroxytoluene)等のフェノール系合成酸化防止剤が使用されてきてはいるが、安全性の点で問題点が指摘され、より安全性の高い酸化防止剤の食品への利用が望まれている。特に、BHAは、ラットの前胃癌を生じる可能性があることが確認され、トコフェロールのような天然素材を含む酸化防止剤へと転換が進んだという経緯がある。しかし、現在、油脂含有食品に使用する酸化防止剤としては、トコフェロールが広く使用されているが、高度不飽和脂肪酸含有食品に対する酸化防止効果という点では、十分な効果が奏されているとはいえない。また、この酸化防止効果を補助するためにローズマリーや緑茶の抽出物等との併用(特許文献1〜2参照)も試みられているが、なお十分な酸化防止効果があるとは言い難い。
【0005】
一方、原生動物の発育因子として発見されたα-リポ酸は、生体内では肝臓、腎臓、心臓等に多く存在し、タンパク質と結合した状態で補酵素として働くことが知られている。さらに食品に関しては、α-リポ酸のタンパク質と結合していない状態での植物油や豚脂等の酸化に対する効果はすでに調べられている(非特許文献1参照)。しかしながら、そのような状態でのα-リポ酸の酸化防止効果についてはヨウ素価の低い豚脂等に対して確認されているだけであって、ヨウ素価の高い高度不飽和脂肪酸、とりわけDHAやEPAを含む魚油に対してその酸化防止効果は確認されていない。
【特許文献1】特開平9-272892号公報
【特許文献2】特開平10-195434号公報
【非特許文献1】DrindaらZ Lebensm Unters Forsch A (1999) 208:270-276
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高度不飽和脂肪酸含有食品の酸化防止の目的で、BHA等のような安定した酸化防止効果を有し、しかも、トコフェロールなどのようなより安全性の高い食品用酸化防止剤の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
幅広いヨウ素価の油脂においても酸化防止効果を発揮せしめるがために、鋭意検討を行った結果、ビタミンCとα-リポ酸を使用した組成物が、魚油のような高度不飽和脂肪酸を含有する食品に対して顕著な酸化防止効果を有することが分かった。本発明はビタミンC及びα-リポ酸含有粗組成物を高度不飽和脂肪酸含有食品に添加することを特徴とする。
本発明者らは、幅広いヨウ素価の油脂においても酸化防止効果を発揮せしめた、高度不飽和脂肪酸含有食品の酸化防止組成物を得るべく鋭意研究を重ねた結果、高度不飽和脂肪酸含有食品の原料に、酸化防止組成物として少なくともビタミンC及びα-リポ酸を使用することで、魚油等の高度不飽和脂肪酸を含有する食品に対して顕著な酸化防止効果を奏し、酸化安定性を長期間高く維持し、品質劣化がない高度不飽和脂肪酸含有食品が得られることを見出した。さらに、本発明は、ステアリン酸、パルミチン酸並びにオレイン酸等から選ばれる1つ以上のアスコルビン酸エステル群から選ばれるビタミンC誘導体を含むビタミンC及びα-リポ酸の組合せを、本発明の高度不飽和脂肪酸含有食品の酸化防止組成物の組成として使用し、高度不飽和脂肪酸を含む脂質含有食品を製造するための原料に添加することで高い酸化防止効果を奏する方法をも見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、少なくともビタミンC及びα-リポ酸の組合せにより、高度不飽和脂肪酸含有食品や、原料となる脂質並びに高度不飽和脂肪酸の酸化を防止する酸化防止組成物を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、油脂食品中に添加することで抗酸化効果を有する組成物、α-リポ酸及びビタミンCの組合せからなる食品用酸化防止組成物について提供する。また、該食品用酸化防止組成物を含有する、酸化に対してより安定で、食味の優れた高度不飽和脂肪酸含有食品を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のビタミンCは、アスコルビン酸(ascorbic acid, [ CAS No50-81-7] 若しくはその誘導体又はそれらの塩を意味し、食品に添加でき、本発明の高度不飽和脂肪酸含有食品の酸化防止効果を奏するものであれば、特に限定されない。例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸エステル等のアスコルビン酸誘導体が挙げられ、アスコルビン酸エステルは、アスコルビン酸を、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸等の脂肪酸でエステル化したモノエステルであり、アスコルビン酸ステアレート、アスコルビン酸パルミテート等が挙げられる。アスコルビン酸の誘導体としては、アスコルビン酸のリン酸エステル、又はアスコルビン酸の配糖体等も含み使用することができる。本発明のビタミンCは、前記より1種又は2種以上を適宜選択して使用すれば良い。アスコルビン酸またはその誘導体は、塩であっても良い。塩としても、食品に許容されものであれば特段の限定はなく使用することができ、例えば、ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩やトリエチルアミン塩等の有機アミン塩、リジン塩やアルギニン塩等の塩基性アミノ酸塩等が挙げられる。本発明において、ビタミンCはアスコルビン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を単独で含有することもできるし、2種以上を組み合わせて含有することもでき、適宜選択して使用すれば良い。本発明のビタミンCを、高度不飽和脂肪酸含有食品中の高度不飽和脂肪酸重量に対し、0.025〜1.25重量%、好ましくは0.05〜1.125重量%、より好ましくは0.125%〜1.00重量%を含有する。配合量は種類、剤形、用途等によって変化するが、適宜選択して使用すればよい。
【0010】
本発明のα-リポ酸は、α-リポ酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を意味し、食品に添加でき、本発明の高度不飽和脂肪酸含有食品の酸化防止効果を有するものであれば、特に限定されない。α-リポ酸は、チオクト酸とも呼ばれるいわゆる含硫ビタミン様作用物質であり、化学的に1,2-ジチオラン-3-ペンタン酸(1,2-Dithiolane-3-pentanoic acid[ CAS No.62-46-4]として、動植物界に広く分布する。また、該α-リポ酸の誘導体としては、例えばα-リポ酸、ジヒドロリポ酸、そのアルキル又はアルケニルエステル及びアミド等が挙げられる。また、該α-リポ酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属の他、アミン塩、アンモニウム塩等が挙げられる。α-リポ酸若しくはその誘導体又はそれらの塩は単独で含有することもできるし、2種以上を組み合わせて含有することもでき、適宜選択して使用すれば良い。本発明のα-リポ酸を、高度不飽和脂肪酸含有食品中の高度不飽和脂肪酸重量に対し、0.0025〜1.25重量%、好ましくは0.01〜0.5重量%、より好ましくは0.0625%〜0.125重量%を含有する。配合量は種類、剤形、用途等によって変化するが、適宜選択して使用すればよい。
【0011】
本発明の高度不飽和脂肪酸含有食品の酸化防止方法は、高度不飽和肪酸含有食品に、ビタミンC及びリポ酸を使用する方法は限定されるものではないが、食品に添加する際の食品用酸化防止剤は、粉末状あるいは顆粒状などの固体であっても良く、液状であっても良く、水・油などの液体基材に溶解、分散、懸濁、または乳化させた状態であっても良い。
本発明において、高度不飽和脂肪酸含有食品にビタミンC及びα-リポ酸を含有する高度不飽和脂肪酸含有食品の酸化防止組成物を使用する際には、ビタミンC及びα-リポ酸は粉末状あるいは顆粒状等の固体であっても良く、液状であっても良く、水・油等の液体基材に溶解、分散、懸濁、または乳化させた状態であっても良い。添加する際、エタノールのような食品に使用可能な溶媒に予め溶解した後、油脂食品に直接添加、あるいは水等の液状基材に溶解、分散、懸濁した液体を原料に添加し、溶媒除去を行う、また、乳化剤を加えて乳濁液にしたものを添加しても良い。原料に直接添加しても良いが、少量の油脂に一旦溶解させてから油脂食品に添加するのが好ましい。油脂に溶解させ添加する場合、溶解させる油脂は、食品に添加できるものならいずれの油脂を使用しても構わないが、酸化防止組成物が溶解し易い油脂、例えば、炭素数2〜12の短鎖脂肪酸や中鎖脂肪酸のトリグリセライド等に酸化防止組成物を溶解して、原料へ添加すれば良い。さらに、このα-リポ酸及びビタミンCを含む組成物に、酸化防止効果があるとされる緑茶抽出物、ローズマリー抽出物、シナージスト作用による酸化防止向上効果があるとされるクエン酸、レシチン等を添加して油脂食品に添加することも、更なる安定化に寄与する可能性があるため、その効果を確認の上、任意で添加することができる。
【0012】
本発明の酸化防止組成物の有効成分であるα-リポ酸を添加する際、処理温度は60℃以下が好ましい。より好ましくは50℃以下である。処理温度が60℃以上では、α-リポ酸が重合・分解する恐れがある為、処理温度はそれ以下の温度であることが望ましい。
【0013】
本発明の高度不飽和脂肪酸含有食品に含まれる酸化防止組成物は、少なくともビタミンC及びα-リポ酸を含有する組合せを混合するだけで得られる。添加濃度としては、高度不飽和脂肪酸含有食品への使用方法により適宜変更し使用するが、高度不飽和脂肪酸含有食品の高度不飽和脂肪酸重量に対し、ビタミンCは0.025〜1.25重量%、好ましくは0.05〜1.125重量%、より好ましくは0.125%〜1.00重量%を、α-リポ酸は0.0025〜1.25重量%、好ましくは0.01〜0.5重量%、より好ましくは0.0625%〜0.125重量%を含有すればよい。より少ない量加える場合、該高度不飽和脂肪酸含有食品の高度不飽和脂肪酸の充分な酸化防止効果を期待できない可能性がある。一方、より多い量を添加した場合、酸化促進効果をもたらす可能性があるため適切ではない。
さらに、配合量は種類、剤形、用途等によって変化するが、適宜選択して使用すればよい。
【0014】
本発明の高度不飽和脂肪酸含有食品は、高度不飽和脂肪酸を含む食品であれば良く、ヨウ素価の高い油脂を含む食品であってもよい。例えば、本発明の高度不飽和脂肪酸含有食品に含まれる高度不飽和脂肪酸は、菜種油、カラシ油、綿実油、パーム油、米ぬか油、アーモンド油、ヘーゼルナッツ油、とうもろこし油、ヒマワリ油、落花生油、オリーブ油、ブドウ種子油、松実油、卵黄抽出油等が挙げられる。本発明の高度不飽和脂肪酸含有食品は、脂質である高度不飽和脂肪酸を含有すればよく、高度不飽和脂肪酸のヨウ素価には限定されないが、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上を食品に使用することが、栄養面、機能性の面等からもよい。例えば、ヨウ素価130以上で、酸化安定性について極めて不安定な油脂としては、例えば、大豆油、サフラワー油、月見草油、ボラージ油、シソ油、えごま油、亜麻仁油、ニシン油、イワシ油、カツオ油、マグロ油、サンマ油、メンハーデン油、ホタテ油、イカ油、タラ肝油、サメ肝油、鯨油、アザラシ油等があげられる。本発明の高度不飽和脂肪酸含有食品の酸化防止剤は、上記の高度不飽和脂肪酸を含有する食品に対し有効に酸化防止効果を奏する点で好適である。本発明の高度不飽和脂肪酸含有食品として、例えば、食用油、マーガリン類、菓子類、調味料、乳製品等が挙げられる。例えば、サラダ油、白絞油等の食用油、また、これらの食用油ソフトカプセル等に充填したサプリメント食品、ショートニング、ファットスプレッド、マーガリン等のマーガリン類、ビスケット、クッキー、ケーキ、キャンディ、ゼリー、チョコレート、せんべい、あられ、錠菓等の菓子類、醤油、味噌、ソース、タレ、マヨネーズ、ドレッシング等の調味料、ヨーグルト、チーズ、バター、コーヒーホワイトナー、ホイップクリーム、乳などの乳製品等が挙げられる。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例において、各種性状の測定及び評価は以下の方法により行った。
過酸化物価の測定方法は、AOCS(AOCSCd86-90)に準じて行った。酸価の測定方法は、基準油脂分析試験法(2.3.2.1-1996)に従って行った。官能試験はサンプルの臭いを直接嗅ぐ方法で行い、評価は5人のパネルにより、採点は、1(不良)〜5(良好)の5段階で行った。
【0016】
(実施例1)
99.5%純度のエタノールでα-リポ酸(97%、Degussa社製)とアスコルビン酸パルミチン酸エステル(95%、DSMニュートリションジャパン製)を溶解して調整した酸化防止組成物を、ヨウ素価185、酸価0.1、過酸化物価0.4、高度不飽和脂肪酸40%含有の精製カツオ油(池田糖化工業製 商品名:DHA27C-RD)に対し、終濃度がα-リポ酸0.025重量%、アスコルビン酸パルミチン酸エステル0.1重量%となるように添加した油脂食品を褐色のガラスビンに入れ、密閉し、40℃で1週間保存した。結果を表1に示した。
【0017】
【表1】

【0018】
保存1週間後の油脂食品は、酸価、過酸化物価はほとんど上昇しておらず、風味も良好な状態が保持されていた。この結果から、α-リポ酸とビタミンCの混合物は高度不飽和脂肪酸含有食品の効果的な酸化防止組成物となりうること、加えて、この酸化防止組成物を応用することで、高度不飽和脂肪酸の酸化が抑制され、商品価値の高い油脂食品を提供可能であることが示された。
【0019】
(実施例2)
ヨウ素価185、酸価0.1、過酸化物価0.4、高度不飽和脂肪酸40%含有の精製カツオ油(池田糖化工業製 商品名:DHA27C-RD)に対し、α-リポ酸(97%、Degussa社製)を0.05重量%、アスコルビン酸パルミチン酸エステル(95%、DSMニュートリションジャパン製)を0.1重量%、α-トコフェロール(96%、DSMニュートリションジャパン製)を0.1重量%添加した油脂食品を褐色のガラスビンに入れ、密閉し、40℃で1週間保存した。結果を表2に示した。
【0020】
【表2】

【0021】
保存1週間後の油脂食品は、酸価及び過酸化物価の上昇は認められず、風味も良好な状態を保持しており、食品として摂取するに好適な品質を有する高度不飽和脂肪酸含有食品であることが示された。
【0022】
(実施例3)
ヨウ素価195、酸価0.3、過酸化物価0.1、高度不飽和脂肪酸42%含有の精製タテゴトアザラシ油(スピルリナ研究所製 商品名:ハープシールオイル)に対し、α-リポ酸(96%、Degussa社製)を0.05重量%、アスコルビン酸パルミチン酸エステル(95%、DSMニュートリションジャパン製)を0.03重量%添加した油脂食品を褐色のガラスビンに入れ、密閉し、40℃で1週間保存した。保存後の酸価は0.3、過酸化物価1.2であり、官能評価点数は4.6と、保存後も良好な状態を保持していた。この結果から、高度不飽和脂肪酸の含量が高く、酸化による品質劣化を受けやすい海産動物由来の油脂食品にあっても、ビタミンCとα-リポ酸を使用することで酸化を効果的に抑制できることが示された。
【0023】
(実施例4)
ヨウ素価170、酸価0.1、過酸化物価0.05、高度不飽和脂肪酸30%含有の精製イワシ油(日本化学飼料製)に対し、α-リポ酸(96%、Degussa社製)を0.03重量%、アスコルビン酸パルミチン酸エステル(95%、DSMニュートリションジャパン製)を0.1重量%添加した油脂食品を褐色のガラスビンに入れ、密閉し、40℃で1週間保存した。過酸化物価の測定を行ったところ、ほとんど上昇はなく、風味も良好な状態を保持していた。
【0024】
(比較例1)
ヨウ素価185、酸価0.1、過酸化物価0.4、の精製カツオ油(高度不飽和脂肪酸40%含有品、池田糖化工業製 商品名:DHA27C-RD)を褐色のガラスビンに入れ、密閉し、40℃で1週間保存した。結果を表3に示した。
【0025】
【表3】

【0026】
保存1週間後の油脂食品は、過酸化物価30以上に上昇しており、食品として摂取することは好ましくない品質に変化していることが示された。風味は強い酸化臭に変化しており評価点数は5から1.1へと低下していた。
【0027】
(比較例2)
ヨウ素価185、酸価0.1、過酸化物価0.4の高度不飽和脂肪酸40%含有精製カツオ油(池田糖化工業製 商品名:DHA27C-RD)に対し、α-リポ酸(96%、Degussa社製)を0.025重量%、αトコフェロール(96%、DSMニュートリションジャパン製)を0.1重量%添加した油脂食品を褐色のガラスビンに入れ、密閉し、40℃で1週間保存した。
結果を表4に示した。
【0028】
【表4】

【0029】
保存1週間後の油脂食品は、過酸化物価20以上に上昇しており、風味も食品として好ましくない臭いに変化していた。この結果から、α-リポ酸とα-トコフェロールを併用しても高度不飽和脂肪酸を含む油脂の酸化を完全には抑制できないことが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンC及びリポ酸を含有してなる高度不飽和脂肪酸含有食品の酸化防止用組成物。
【請求項2】
高度不飽和脂肪酸含有食品中の高度不飽和脂肪酸の含量に対し、リポ酸を0.0025〜1.25重量%含有してなる請求項1記載の高度不飽和脂肪酸含有食品の酸化防止用組成物。
【請求項3】
ビタミンCが、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸をステアリン酸、パルミチン酸並びにオレイン酸群から選ばれる脂肪酸でエステル化したアスコルビン酸誘導体から選ばれる少なくとも1つ以上を含んでなる請求項1記載の高度不飽和脂肪酸含有食品の酸化防止用組成物。
【請求項4】
高度不飽和脂肪酸含有食品中の高度不飽和脂肪酸の含量に対し、ビタミンCを0.025〜1.25重量%含有してなる請求項1記載の高度不飽和脂肪酸含有食品の酸化防止用組成物。
【請求項5】
高度不飽和肪酸含有食品に、ビタミンC及びリポ酸を使用してなる高度不飽和脂肪酸含有食品の酸化防止方法。
【請求項6】
高度不飽和脂肪酸として海産動物由来のグリセリンエステル体を含有する高度不飽和脂肪酸含有食品中に、ビタミンC及びリポ酸を使用してなる高度不飽和脂肪酸含有食品の酸化防止方法。
【請求項7】
ビタミンC及びリポ酸を含有する高度不飽和脂肪酸含有食品の酸化防止用組成物を使用してなる高度不飽和脂肪酸含有食品。

【公開番号】特開2006−333792(P2006−333792A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−163320(P2005−163320)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(000210067)池田食研株式会社 (35)
【Fターム(参考)】