説明

高度複合構成要素の製造方法

【課題】積層材料成形品を製造するための方法を提供する。
【解決手段】本方法は、一つの態様では、凝固して樹脂層を形成する樹脂を表面上に適用する工程と、樹脂層とほぼ平行なx方向に沿って強化手段を提供する工程と、x方向に対して角度をなし且つ樹脂層とほぼ平行なy方向に沿って強化手段を提供する工程と、x方向及びy方向に対してほぼ垂直なz方向に強化手段を提供する工程とを含む。本方法は、別の態様では、液化樹脂を金型の金型表面に適用し、樹脂が凝固して金型の金型表面上に樹脂層を形成する工程と、弾性変形可能なチャンバ壁を各々有する第1及び第2の圧力チャンバ間に金型を配置し、チャンバ壁は、これらのチャンバ壁間に配置された金型に関して向き合って配置される、工程と、金型に面する向き合った表面に液化樹脂を適用し、向き合った表面上の樹脂は、凝固して向き合った樹脂層を形成し、積層材料レイアップが樹脂層間に配置される、工程と、各圧力チャンバを通して高温高圧の流体を循環し、樹脂層を液化し、積層材料レイアップを圧縮し、樹脂で含浸し、硬化する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、ガラスファイバ、カーボンファイバ、「ケブラー(ケブラー(Kevlar)は登録商標である)」、及びエポキシ及び他の樹脂等の材料の積層材料から形成した、パネル部品及びチューブ状構造、及びその他の高度積層材料成形品の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、常温で固体状態の樹脂を使用する。従って、本発明は、エポキシ、ポリエステル、及びアクリル樹脂等の熱硬化性樹脂を使用でき、本願において、これらの材料を使用して本発明を説明する。しかしながら、本発明は、例えばポリプロピレン、ポリスチレン、及びポリエチレン等の低温熱可塑性プラスチック、及び例えばPEEK、ポリエーテルエーテルケトン等の高温熱可塑性プラスチック等の熱可塑性プラスチック材料を使用してもよいということもまた理解されるべきである。従って、本願において、「樹脂」という用語は、この範囲の材料に関するものと理解されるべきである。
【0003】
本出願人の国際出願である第PCT/AU02/00078号には、高度積層材料成形品を製造するための多くの様々な方法及びシステムが記載されている。ここに記載された方法のうちの一つの方法では、室温で固体の非常に高粘度の樹脂を加熱によって液化した後、金型表面に適用する。次いで、適用後に樹脂を冷却して凝固することにより、金型表面に凝固した樹脂の層を形成する。樹脂の凝固は、金型の下に配置された、比較的低温の液体が循環しているチューブ状冷却装置又は冷却ブラダー等の手段を使用して金型表面を冷却することによって容易に行うことができる。樹脂の好ましい適用方法は、スプレー装置を用いて行われる。この方法では、スプレー手順中に液化した樹脂が金型表面にぶつかることにより、金型表面から空気が確実に追い出されるが、本出願人の国際出願の部分として認識されているように、溶融した液体の形態の樹脂を、所定範囲の方法を使用して金型に適用することにより、樹脂をその凝固前に均等に分配できる。金型の表面上に樹脂層が形成され、そして凝固した後、凝固した樹脂層にクロス(cloth) の形態のファイバ束層又は結合構築クロス層又はプレフォーム及びブリーダークロス等の他の成形品及び好ましくは少なくとも一つの樹脂流量制御フィルムを重ね、最終的な積層材料レイアップを形成する。流量制御フィルムは、後に行われる硬化プロセス中に樹脂がファイバ束層を通って移動する速度を制御するため、樹脂層とファイバ束層との間、又は様々なファイバ束層間に重ねることができる。次いで、真空フィルムを最終的な積層材料レイアップに重ね、真空フィルムの下の積層材料レイアップから空気を排出できるように金型部分に対してシールする。樹脂の凝固の程度(solidity)により、部品に全真空を引くことができ、クロス内の開放経路に沿って空気を引き出すことができる。続いて行われる硬化プロセスにおいて熱及び圧力を樹脂及びファイバ束層に加えることにより樹脂を再液化し、部品から全ての空気が除去される前に樹脂流路が塞がらないように、ファイバ束層を液化した樹脂に制御された態様で沈める。部品のこのような制御された態様の湿潤は、樹脂を溶融するために部品に亘って熱の線(a line of heat)即ち「熱ウェーブ(heat wave)」 を使用することによって容易に行うことができる。これにより、溶融樹脂の波即ちウェーブの前方で空気が確実に除去される。本出願人の特許で行われたように、高い温度、圧力、及び振動を金型及び積層材料レイアップに加え、かくして、積層材料レイアップから全ての残留空気を排出し、最終的な高度積層材料成形品が軽量で高強度で高靱性であるように作用する。
【0004】
樹脂を最初に金型表面に適用することには多くの利点がある。
【0005】
a)プレプレグ、樹脂フィルムインフュージョン法(RFI)、又は樹脂トランスファ成形法(RTM)等の他の製造方法で生じる、金型表面と積層材料レイアップとの間の隙間での空気の捕捉が最小になり、又は回避される。
【0006】
b)樹脂を部品に亘って樹脂進入点から真空吸引点まで、多くの場合に数メートル移動する必要があるRTM又はインフュージョン成形法等の液体制御成形技術とは異なり、垂直方向で計測して数ミリの厚さの積層体を通して樹脂を移動しさせすればよい。
【0007】
c)樹脂が連続層であり、厚さが部品に亘って制御されているため、部品のサイズに関わらず、部品を通して樹脂を上方に移動し、部品を制御下で均等に湿潤できる。これは、多くの場合、樹脂が反応を開始し、粘度の上昇を開始し、硬化する前に、樹脂の幾つもの流れを使用して部品を迅速に湿潤しなければならない液体制御成形法とは対照的である。樹脂のこれらの多数の流れは、幾つかの点で互いに接触しなければならず、これらの流れの接触点のところで、空気が、二つの流れの間に捕捉されてしまい、その結果、これらの点で性能が低下し、流れの接触線に沿って弱点が形成される。
【0008】
d)これにより、樹脂の分配が更に良好に行われ、表面の必要な場所に樹脂が更に均等に且つ精密に分配され、溶融状態の樹脂がファイバ束を通って移動するときにファイバ束を精密に湿潤し、積層体を充填し、かくして、樹脂で湿潤されていない場所即ちドライスポット(dry spot)がファイバ束内に形成されないようにし、部品の全ての部分で充填を正確に制御する。
【0009】
e)金型及び積層材料レイアップに加えられる温度を注意深く制御することにより、及びケブラーベール(Kevlar veils)を使用することにより、積層材料レイアップを通る樹脂のトランスファ速度を更に正確に且つ精密に制御できる。
【0010】
f)樹脂の溶融前に全真空を引くことができるため、かくして、部品から全ての空気を逃がすことができ即ち除去できる。かくして、この方法に従って製造された完成した積層材料成形品内に残る気泡の数が少ない。これは、当然のことながら、樹脂がファイバ束層を通って徐々に移動し、これを含浸する際、空気が積層材料レイアップの上面に移動するためである。
【0011】
g)樹脂を進入点から出口点まで長い距離に亘って移動する必要がないため、樹脂は、低粘度であったり、粘度が一貫していたりする必要がない。従って、この製造プロセスで使用できる樹脂は、代表的には、比較的低価格で購入できる、樹脂トランスファ成形法(RTM)等の従来の製造プロセスで使用された種類の樹脂よりも長鎖型の樹脂である。この種の樹脂を使用することによって、他の樹脂を使用して製造された積層材料製品よりも高強度であり且つ高靱性の積層材料製品が得られる。
【0012】
h)様々な種類の樹脂を金型表面にスプレーできる。様々な樹脂を金型表面の様々な領域にスプレーしてもよい。更に、様々な樹脂層を重ねて又は混合して金型表面にスプレーしてもよい。
【0013】
i)顔料又は他の粉体を含有する樹脂層を適用できる。これらの顔料又は他の粉体を含有する樹脂は、適用時に加熱状態にある。これにより、重量の追加や樹脂の無駄を生じることなく、塗装した又はゲルコーティングを施した表面と等価の表面が製造され、航空機や車輛にいつでも設置できる最終的な部品を製造する。重量の追加や樹脂の無駄を生じないのは、これらが、部品を湿潤するために部品に引き込まれるためである。この方法の別の利点では、本出願人の国際出願第PCT/AU01/00224号の教示に従って別の部分に融合するように、部品の部分、領域、又は縁部を凹状にし、未硬化/部分硬化状態にできるということである。
【0014】
従って、本出願人の方法に従って製造された高度積層材料成形品は、従来の積層材料成形品製造プロセスを使用した成形品よりも材料特性が優れている。
【0015】
ファイバ束を樹脂層に被せるとき、各束内のファイバは、全体に、樹脂層の平面と平行な平面内に置かれる。様々なファイバ束層を互いに交差するように重ねることができ、ファイバの方向は、隣接した層の各々について、最大90°の範囲で変化する(これらのファイバの方向を、夫々、「x方向及びy方向」と呼ぶ)。従って、これらのファイバは、最終的積層材料成形品を、主としてx方向及びy方向で強化する。しかしながら、これらのファイバ束の全体平面に対して垂直方向(「z」方向と呼ぶ)で強化を行うことができるのが有利である。これは、強化体がz方向にも設けられているため、積層材料成形品にかなり大きな剥離抵抗を提供する。
【0016】
ファイバ棘小片即ちファイバスピクラ(fiber spicules)又はナノ粒子を樹脂及びファイバ束内に分配し、z方向に或る程度の追加の強化を行うことが周知であるが、これらのファイバ/ナノ粒子の整合を制御するのか困難である。これは、これらが積層体に亘って移動するためである。実際、積層体を強化するためのナノ粒子は、樹脂フィルムインフュージョン(RFI)として周知の凝固した樹脂フィルム層にナノ粒子を加え、又はナノ粒子をまぶした後、樹脂を溶融して積層体に溶け込ませ又は積層体を通して上方に流すことによって適用されてきた。これは、ナノ粒子を積層体内に入れ、これらを或る程度整合する上で効果的である。しかしながら、これには費用が非常に掛かり、複雑な形状の部品に行うのが困難であり、一層以上の凝固した樹脂フィルムが金型表面に適用されている場合には効果が限定的である。これは、樹脂フィルム層間に捕捉された空気を除去するのは非常に困難であることがわかっているためである。この問題点を解決するため、最新の産業的研究開発は、樹脂インフュージョンでナノ粒子を使用することに集中されている。これによって、積層体を通って移動する樹脂によりナノ粒子を積層体に引き込み、空気を除去する。これは、積層体がナノ粒子を遮り、これらを凝集し又は層にし、整合が全くなされず、部品の一端から他端まで、又は厚さに亘って一方の側から他方の側まで部品に均等に分配されないため、うまくいかなかった。マサチューセッツ工科大学の国際出願第PCT/US2007/011914号、第PCT/US2007/011913号、及び第PCT/US2008/009996号には、z方向での強化を行うことができる整合したナノ粒子を使用するための方法が記載されている。これらの出願に記載されたプロセスは、これらの整合したナノ構造を成長し、次いで向き合った基材間の界面に位置することを必要とする。従って、これらのプロセスを使用することは実際上の応用で困難である。更に、このプロセスは、積層体の形成に使用された固体樹脂フィルム層の積層材料、金型表面、及び樹脂層から空気を除去することと関連した問題点に対処していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、高度積層材料成形品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
以上を留意し、本発明の一態様によれば、積層材料成形品を製造するための方法において、凝固して樹脂層を形成する液化樹脂を表面上に適用する工程と、樹脂層とほぼ平行なx方向に沿って強化手段を提供する工程と、x方向に対して角度をなし且つ樹脂層とほぼ平行なy方向に沿って強化手段を提供する工程と、x方向及びy方向に対してほぼ垂直なz方向に強化手段を提供する工程とを含む、方法が提供される。
【0019】
樹脂は、液化樹脂を表面上にスプレーすることによって表面に適用されてもよく、樹脂は、次いで、表面上で凝固する。表面それ自体は、冷却空気又は他の手段並びに金型の皮膜を通した冷却によって冷却され、これにより樹脂の凝固を促し樹脂層を形成する。
【0020】
表面自体は、剛性金型の内キャビティによって提供されてもよい。別の態様では、又は追加として、表面は、カウルプレート等の別の剛性表面、又は真空バッグ壁等の可撓性又は弾性変形可能な表面に設けられていてもよく、又は樹脂を保持するための糸目の粗い織布(open weave cloth)又は可撓性キャリヤの形態をなしていてもよい。
【0021】
x方向及びy方向に沿った強化手段は、ガラスファイバ、カーボンファイバ、又は他の同様の材料でできたファイバ束層によって提供されてもよい。これらのファイバ束層は、上文中に説明したように、最終製造プロセス前に樹脂層に重ねられてもよい。別の好ましい構成では、例えばコアの両側に積層体を位置決めすることを必要とするハニカムコアの製造において、金型内に既に配置されているファイバ束上に樹脂層を重ねてもよい。この例では、樹脂を金型の面に適用し、ファイバ層を樹脂の上に位置決めした後、コアをファイバ層の上に位置決めし、次いでコアの反対側を、好ましくは表面上に樹脂層がスプレーされて凝固した金型表面に押し付ける。この表面は、溶融時に解放されてコア上の積層体層を湿潤する材料を提供する樹脂を保持するための真空バッグ、カウルプレート、又は任意の他の適当なキャリヤのいずれであってもよい。このキャリヤは、冷却された工具上に支持され、この工具上でスプレーされてもよく、これにより、必要とされる積層体の厚さに対して必要なスポット、領域、及び部分で樹脂が凝固する。樹脂の厚さ及びキャリヤの形状が、コア、フォーム、ハニカム、等の部品上を覆ったときに形成される部品の内皮膜のおおよその形状及び厚さと対応する。
【0022】
z方向に沿った強化手段は、長さが0.05mm乃至1mmと短い強化ファイバの形態のファイバスピクラを、樹脂層が「湿潤」しているうちに、樹脂層に亘って分配することによって提供されてもよい。ファイバを製造するこのカッターは、従来のガラスファイバチョッパーガン(fiberglass chopper gun)と同様であってもよいが、遥かに小規模であり、例えば、樹脂層が未だ熱いうちに樹脂層に亘って均等に分配された一連のファイバスピクラをスプレーするのに使用されてもよい。又は別の態様では、樹脂層を適用し凝固した後、スピクラを樹脂に埋設するために表面にヒートガン(heat gun)からの高温の空気を適用し、最外樹脂層を液化してもよい。プロセスを互いに密接して進行するため、ヒートガン及びカッターガン(cutter gun)を一体化してもよい。スピクラは、樹脂層の表面に対して全体に所定の角度をなす方向で樹脂層に少なくとも部分的に埋め込まれ、これによって、樹脂層に亘り「毛羽立った(fluffy)」表面を形成する。次いで、本出願人のプロセスを使用して更に多くの樹脂を適用し湿潤し、スピクラ及び/又はナノ粒子を閉じ込め、びっしりと並んだ粒子内に捕捉された空気を除去してもよい。
【0023】
従って、積層体層/プレパック(prepacks)を配置し、空気を除去し、樹脂を溶融し、積層体に流入すると、樹脂層に置かれたファイバ束のファイバ間をスピクラが穿刺する。ファイバ束内のファイバは、上述のように、全体にx方向及びy方向に延びており、これに対しスピクラは、全体にz方向に延びている。従って、スピクラは、最終的高度積層材料成形品で、ファイバ束の強化ファイバを互いに結束し、z方向で強化を提供することによって剥離抵抗を改善する。
【0024】
別の態様では、z方向に沿った強化手段は、樹脂層が未だ液状であるうちに樹脂層内に又は樹脂層の表面に亘って分配したナノ粒子の形態であってもよい。これらのナノ粒子は、nm(ナノメートル)単位の寸法を持つカーボンナノチューブから形成されてもよい。樹脂層に振動を加えることによって、ナノ粒子を樹脂層上又は樹脂層内に更に均等に分配し分散するとともにナノ粒子の塊を壊すため、振動手段が設けられていてもよい。ナノチューブの大きさがnm(ナノメートル)単位であるため、続いて行われる製造プロセス中、樹脂を再び液化したときに樹脂及びファイバ束のファイバ間を通る流れをなして上方に移動できる。更に、これらのナノチューブは、樹脂層上又はファイバ束間に配置された全ての樹脂制御ベールを通過でき、これによって、これらのナノチューブは全体にz方向に沿って整合する。従って、これらのナノチューブは、樹脂の硬化後、最終的積層材料成形品をz方向で強化する。しかしながら、移動距離が大きければ大きい程、ナノ粒子は、より多くの邪魔を受け、ブロックされ、フィルタ作用を受け、不整合状態で分散されてしまう。従って、粒子が整合を開始するというMITの特許に記載の利点は、部品を湿潤するためにナノ粒子が移動しなければならない距離に従って減少する。
【0025】
好ましい実施例では、様々な大きさのナノチューブを使用できる。従って、ナノチューブの移動は、一つ又はそれ以上の樹脂流量制御フィルムを使用することによって制御されてもよい。これらのフィルムは、特定の大きさのナノチューブしか通さない。従って、比較的大きなナノチューブは通過できず、フィルムの後方の領域に停まる。これにより、最終的積層材料成形品のナノチューブ分布を更に正確に制御できる。
【0026】
更に、樹脂制御層は、ナノ粒子を収容でき又は部品中のナノ粒子の含有量に影響を及ぼすことができる。これは、樹脂が樹脂制御層に吸い上げられ及び/又は樹脂制御層を通って流れるとき、制御層に含まれたナノ粒子を樹脂が制御層の外に及び隣接した積層体内に移動できるためである。このようにして、樹脂を使用してナノ粒子又はファイバスピクラを樹脂制御層から積層体内に分散するのに使用できる。
【0027】
好ましくは、物理的特性が各々異なる一つ以上の樹脂層を適用してもよい。これは、様々な種類の及び様々な添加剤を含む樹脂を、前に適用した樹脂層と順次重ねることによって行ってもよい。例えば、これらの様々な樹脂層を以下の順序で付着してもよい。最初に付着する層は、耐UV性添加剤及び色彩を含んでいてもよく、又は大きな耐引っ掻き性(scratch resistance)を提供する種類の樹脂であってもよい。次に付着する層は、耐衝撃性改良添加剤(toughening agent)を含んでいてもよく、次は補強剤であってもよく、次は高温添加剤であってもよく、例えば、最後に付着する層は、難燃剤を含んでいてもよい。樹脂層は、更に、カーボン黒等の耐落雷性(lightning strike resistance)を提供する添加剤を含んでいてもよい。これは、航空機の構造で導電性を提供するのに使用するのが有利である。本発明に従って製造された最終的な積層材料成形品は、成形品の厚さに亘って及び/又は成形品の長さに沿って様々な物理的特性を備えていてもよい。
【0028】
本発明に従って製造された高度積層材料成形品は、従来の方法で製造した積層材料成形品と比較して、層間剪断及び強靱性を改善し、かくして層間剥離強度(lamination strength)を改善することが期待される。更に、特定の部品の特定の領域についての化学電気的要求又は機械的要求に合わせて注文製作することが考えられる。
【0029】
本出願人の国際出願第PCT/AU02/00078号では、積層材料レイアップの圧縮及び硬化に使用されたシステムは、金型を向き合った圧力チャンバ間に支持するための構成を含む。各圧力チャンバは、弾性変形可能なチャンバ壁を有し、高温高圧の流体を各圧力チャンバを通して循環する。このシステムは、特に、液化樹脂を金型表面に適用し、固体樹脂層を形成する高度積層材料成形品の製造に適用できる。しかしながら、本発明の方法には、樹脂を他の表面に適用することが含まれる。
【0030】
従って、本発明の別の態様によれば、積層材料成形品を製造するための方法において、液化樹脂を金型の金型表面に適用し、樹脂が凝固して金型の金型表面上に樹脂層を形成する工程と、弾性変形可能なチャンバ壁を各々有する第1及び第2の圧力チャンバ間に金型アッセンブリを配置し、チャンバ壁は、これらのチャンバ壁間に配置された金型に関して向き合って配置される、工程と、金型に面する向き合った表面に液化樹脂を適用し、向き合った表面上の樹脂は、凝固して向き合った樹脂層を形成し、積層材料レイアップが樹脂層間に配置される、工程と、各圧力チャンバを通して高温高圧の流体を循環し、樹脂層を液化し、積層材料レイアップを圧縮し、樹脂で含浸し、振動を加え、硬化する工程とを含む、方法が提供される。
【0031】
液化樹脂は、前記圧力チャンバの弾性変形可能なチャンバ壁に適用されてもよい。別の態様では、真空バッグを使用して空気を除去し、積層材料レイアップを固める場合には、積層材料レイアップに向いた真空バッグの側に樹脂を適用してもよい。
【0032】
上文中に論じたように、樹脂を適用するための好ましい方法は、液化樹脂を表面にスプレーすることによって行われる。一つ以上の樹脂層を各面に適用してもよく、これにより得られた各樹脂層は、様々な材料特性を有する。
【0033】
更に、上文中に論じたように、z方向で強化するための強化手段が両樹脂層に設けられていてもよい。
【0034】
これと対応して、積層体が両方向から湿潤され、金型面側及び真空バッグキャリヤ又はカウルプレート側に付着した樹脂が一緒に来入する場合には、金型と向き合った側に適用された樹脂は、積層体内で必要とされるその最終的位置の順でキャリヤに付着されている。
【0035】
積層材料レイアップには、向き合ったファイバ束層間に挟まれた中央コア層が設けられていてもよい。中央コア層の樹脂含浸を制御するため、又は樹脂含浸が起こらないようにするため、中央コア層とファイバ束層との間に樹脂流量制御フィルムが設けられていてもよい。この方法に従って製造された結果的に得られた積層材料レイアップは、両側がファイバ強化皮膜で覆われた中央コアを有する。
【0036】
別の態様では、積層材料レイアップは、ファイバ束層から製造された、所望の形状に予備形成された「プレパック(prepack)」 によって提供されてもよい。プレパックは、取り付けラグ等の構成要素及び最終的積層材料成形品に埋め込まれるべき他の機械的構成要素を含む。プレパックを形成するファイバ束層には、プレパックを硬化前にその予備形成形状に保持できる糊剤が設けられていてもよい。プレパックは、断面幅/厚さを大幅に変化できるため、或る断面は他の断面よりも10mm以上厚く、硬化プロセス中、樹脂を金型表面に及び内面だけに配置することによって、適切に樹脂含浸を行うことができない場合もある。更に、ファイバ束層をz方向で適切に強化できない場合もある。従って、本発明の好ましい特徴は、積層材料レイアップに、及び/又は積層材料レイアップに埋設されるべき又は積層材料レイアップの部分を形成するキャリヤに液化樹脂を直接適用することである。従って、これにより、積層材料レイアップの比較的厚い領域に追加の必要な樹脂を加えることができる。更に、プレパックの組み立て時に溶融状態の液体樹脂をプレパックにスプレーした場合、樹脂は、凝固したとき、ホットメルト接着剤のように作用し、取り扱い中及び金型内への配置中、積層材料レイアップの多数の層でできたプレパックを互いに保持するのを補助し、硬化プロセスの部分として周囲樹脂層が再び液化する。真空が加えられる前に、プレパックを通る空気放出経路を樹脂が閉鎖したり塞いだりしないように、及び熱ウェーブが部品に亘って移動し、積層体から最後の空気を全て除去するように、この時点では限られた量の樹脂しか加えることができないということは当業者には理解されるべきである。
【0037】
更に、積層材料レイアップにスプレーされた樹脂は、ナノ粒子又はスピクラ等の強化手段を含んでいてもよい。従って、続いて行われる硬化プロセス中、ナノ粒子は積層材料レイアップを通って移動でき、z方向に必要な強化を提供する。
【0038】
この製造法は、中央コア層又は取り付けラグ及び他のデバイスが内部に形成された更に複雑な積層材料成形品の製造で特に有用である。航空の用途では、航空機用パネル内の中央コアを形成する上でノメックス(ノメックス(Nomex)は登録商標である)ハニカム層が一般的に使用されている。これは、軽量であり且つ耐燃性であるためである。パネルは、中央コアの両面にファイバ強化皮膜を有する。このようなパネルは、本発明の方法を使用して容易に形成でき、ファイバ束層が両面に位置決めされた中央ノメックスコアから積層材料レイアップを形成する。更に、中央コア層内への樹脂の侵入を制御し又は阻止するため、樹脂制御ベールが中央コア層とファイバ束層との間に配置されていてもよい。
【0039】
上文中に論じたように、ファイバ束が、予め凝固した樹脂に、この樹脂の溶融時に沈み込むとき、ファイバ束中の空気が排出される。樹脂層及び積層材料レイアップの両方を垂直に整合した状態に配置し、樹脂層を下から上へ徐々に液化することにより、空気が容易に排出される。これにより、「樹脂ウェーブ(resin wave)」が発生し、これにより空気が上方にファイバ束の外に押しやられ、最終的な積層材料成形品内に残る気泡の量を最小にする。これは、樹脂層又は各樹脂層がその最下部分からその最上部分に向かって徐々に加熱されるように、液体が各圧力チャンバを徐々に充填する上文中に説明したシステムを使用することによって行うことができる。これにより、金型及び従って樹脂層及び積層材料レイアップに沿って「熱ウェーブ」を形成する。
【0040】
従って、本発明の別の態様によれば、積層材料成形品を製造するための方法において、液化樹脂を金型の金型表面に適用し、樹脂が凝固して金型の金型表面上に樹脂層を形成する工程と、樹脂層上に積層材料レイアップを配置する工程と、弾性変形可能なチャンバ壁を各々有する第1及び第2の圧力チャンバ間に金型を配置し、チャンバ壁は、これらのチャンバ壁間に配置された金型に関して向き合って及びほぼ垂直方向に整合して配置される、工程と、各圧力チャンバを通して高温高圧の流体を循環し、樹脂層を液化し、積層材料レイアップを圧縮し、樹脂で含浸し、硬化する工程とを含み、圧力チャンバは、最初、樹脂層が圧力チャンバの底部から上方に徐々に液化するように、流体で徐々に充填される、方法が提供される。
【0041】
この方法により、ファイバ束からの空気の除去が容易になる。
【0042】
上文中に説明したシステムを使用した高度積層材料成形品の製造を、高温製造ゾーン及び低温製造ゾーンに分けるのが好ましい。
【0043】
この目的のため、本発明の更に別の態様によれば、積層材料成形品を製造するための方法において、液化樹脂を金型の金型表面に適用し、樹脂が凝固して金型の金型表面上に樹脂層を形成する工程と、弾性変形可能なチャンバ壁を各々有する第1及び第2の圧力チャンバ間に金型を配置し、チャンバ壁は、これらのチャンバ壁間に配置された金型に関して向き合って配置される、工程と、各圧力チャンバを通して高温高圧の流体を循環し、樹脂層を液化し、積層材料レイアップを圧縮し、樹脂で含浸し、硬化する工程とを含み、第1及び第2の圧力チャンバは、高温に連続的に保持され、金型は、圧力チャンバから離して外で冷却される、方法が提供される。
【0044】
製造プラント内の温度は、各硬化イベント間で製造プラントを再加熱する必要がないように、比較的高温に維持されていてもよい。加熱及び冷却を必要とする硬化サイクルに通されるのは金型だけである。金型の加熱及び冷却を行うために加える必要があるエネルギは最小であり、樹脂層及び積層材料レイアップを支持する金型をプラントに挿入し、圧縮し、そして加熱する場合にだけエネルギが加えられる。かくして、硬化サイクルは圧力チャンバとは別であり、その配管は高温のままであり、金型だけが部品とともに加熱及び冷却され、かくして、プラント全体及び硬化した積層材料成形品を冷却するためにプラントを通して比較的低温の流体を循環する必要がないように、金型をプラントから取り出して別のゾーンで冷却する。金型は、例えば、ロボットによって高温の圧力チャンバから取り出され、冷却流体が循環されている冷却ブラダーに置かれ、これによって金型を制御下で冷却できる。これには、積層材料成形品の硬化した樹脂内で、不均等な冷却による高い応力レベル及び微小亀裂即ち「クレージング(crazing)」 が発生し難いという追加の利点がある。従って、次の金型について製造プラントの圧力チャンバを再加熱する必要がなく、これによって、製造プロセスのサイクル時間を速くし、エネルギの無駄を少なくする。冷却サイクル中に金型を一つのステーションから別のステーションまで移動する時間を節約するため、冷却ゾーンとして金型キャリヤを使用するのが有利である。第1製造部品について必ずしも金型を冷却しなくてもよいが、連続的製造に関し、これはプロセスの一体の部分である。そうでない場合には、金型は長時間に亘って高温のままであり、金型との接触時に樹脂を凝固する能力を停止し、生産性を低下する。
【0045】
本発明に従って高度積層材料成形品を製造するための方法の好ましい実施例を示す添付図面を参照して本発明を更に詳細に説明するのが便利である。本発明のこの他の実施例が可能であり、従って、添付図面に示す態様は、本発明の以上の全体的な説明を限定するものと理解されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、本発明による金型及び樹脂層の部分側断面図である。
【図2】図2は、ファイバ束及び流れ制御ベールが樹脂層上に配置され、積層材料レイアップを形成する、図1の金型の部分側断面図である。
【図3】図3は、本発明による硬化プロセス中のナノ粒子の移動方向を示す、金型及び積層材料レイアップの部分側断面図である。
【図4】図4は、金型、積層材料レイアップ、及び本発明による製造プラントの向き合った圧力チャンバ壁の部分断面図である。
【図5】図5(a)乃至図5(g)は、本発明による製造プロセスの様々な段階を示す図である。
【図6】図6は、樹脂が冷却して凝固するときに各層を安定化し且つ各層に付着するため、層間にスプレーした加熱樹脂とともに組み立てられたプレパックを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
先ず最初に図1を参照すると、金型表面2を持つ金型1の断面が示してある。凝固した樹脂層3が金型表面2に適用してある。樹脂層3自体は、様々な物理的特性を持つ様々な樹脂層5、7、9、11によって形成されている。例えば、金型表面2の直ぐ隣の層5は、硬化時に高い耐引っ掻き性を持つ一層の樹脂によって形成されていてもよい。第1層5と隣接した次の層7は、積層材料成形品に対して耐落雷性を提供する樹脂及びカーボン黒の混合物であってもよい。次の層9は、最終的積層材料成形品の強度を向上するのを補助する耐衝撃性改良剤が含まれていてもよい。最終外層11は、難燃剤を含んでいてもよい。積層材料成形品の用途に応じて、樹脂層の様々な組み合わせが考えられる。
【0048】
本発明による方法の一つの好ましい実施例によれば、未だ湿潤状態の樹脂層3に強化ファイバスピクラをスプレーしてもよい。これにより、これらのスピクラが樹脂層に少なくとも部分的に埋設される。これにより樹脂層3に毛皮のような上面を形成する。この毛皮のような表面は、金型表面2から全体に横方向に樹脂層3から遠ざかる方向に上方に(z方向と呼ぶ)延びるファイバスピクラによって形成される。
【0049】
本発明による方法の別の好ましい実施例によれば、カーボンナノチューブの形態のナノ粒子を樹脂層3に混入してもよい。振動手段により金型1を振動することによって、ナノチューブを更に均等に分配するのを補助し、樹脂層3内のナノチューブの塊を壊す。ナノ粒子を樹脂層3の最上層15に亘って分配できると考えられる。
【0050】
図2は、本発明による方法の次の工程を示す。この工程では、多くの異なるファイバ束17、19の層を樹脂層3に重ねる。これらのファイバ束17、19は、各ファイバ束層のファイバが互いに対して最大90°で全体に整合するように、十字形状に重ねられる。従って、樹脂層に最も近いファイバ束17のファイバは、図2で見て紙面に対して垂直方向に延びているのに対し、次のファイバ束層19のファイバは、第1ファイバ束17のファイバに対して最大90°の角度をなして延びており、従って、図2で見て紙面に亘って延びている。この構成を次の三つのファイバ束層17、19で繰り返す。ケブラーベール21が樹脂層3と第1ファイバ束層17との間に配置されていてもよい。更に、第2ケブラーベール21が、金型表面2から遠ざかる方向で二つの最も上側のファイバ束層17、19間に配置されていてもよい。これらのケブラーベールは、硬化プロセス中、金型及び積層材料レイアップに加えた熱により樹脂層3を最初に液化するとき、ファイバ束層を通る樹脂の流量を制御するように作用する。
【0051】
図3は、硬化プロセス中の積層材料レイアップ6を示す。真空バッグ(図示せず)を積層材料レイアップ6に重ねる。全真空を引き、ファイバ束17、19に存在する自由経路を使用してレイアップ6から全ての空気を除去する。これは、樹脂層3を加熱して液化する前に行われる。空気の排出前に部品が湿潤している場合には、樹脂が制御されていない態様で上方に移動し、空気経路を塞ぎ、全ての空気が除去される前にレイアップ6全体のガス抜きを行うことができないようになる。更に、樹脂で湿潤する上で正しい温度までファイバ束を加熱する必要がある。従って、積層材料レイアップ6に熱及び圧力を加えると、樹脂層3が液化を開始し、ファイバ束17、19が、矢印10で示すように樹脂層に沈み始め樹脂層によって湿潤される。
【0052】
ファイバスピクラを樹脂層3の上面に埋設する方法では、ファイバスピクラは、ファイバ束が最初に樹脂層3上に置かれたときにファイバ束に食い込む。硬化プロセス中、これらのスピクラは様々なファイバ束を互いにキー止めするのを補助し、これによってz方向で強化を提供する。
【0053】
ナノ粒子を樹脂層3に亘って分配した方法では、ナノ粒子は、積層材料レイアップに熱及び圧力が加えられたとき、ファイバ束を通って液体樹脂とともに流れ始める。これを矢印8によって示す。ケブラーベール21は、樹脂及びナノ粒子のトランスファ速度を制御するように作用し、最外ベールに達っする流れを制御し、ナノ粒子を捕捉し、これらがこれ以上移動しないようにする。更に、ベール21は、様々な層に集中する必要がある様々なナノ粒子及び様々な種類及び大きさのナノ粒子に対してフィルタの作用をなし、これにより、例えば耐引っ掻き性、耐落雷性、耐衝撃性改良、及び難燃性を、必要な夫々の層に分けることができる。ナノ粒子は、積層材料成形品が完全に硬化したとき、積層材料をz方向で強化し、必要な特定の特性を提供するように作用する。
【0054】
本発明に従って準備された積層材料レイアップの硬化に本出願人の国際出願第PCT/AU02/00078号に記載された製造プラントを使用できる。出典を明示することにより、この出願に開示された全ての内容は本明細書の開示の一部とされる。しかしながら、この積層材料レイアップの硬化にもっと従来の製造方法及びシステムを使用できるということは理解されるべきである。本出願人の製造プラントは、製造プロセス中に高温高圧の液体を循環する向き合った圧力チャンバを使用する。金型1は、各圧力チャンバの向き合った圧力チャンバ壁間に配置できる。図4は、本発明による積層材料成形品の製造における、この製造プラントの使用を詳細に示す。金型1には樹脂層3が適用されている。次いで、積層材料レイアップ6を金型1及び層3に重ねることができる。次いで、真空バッグ23をレイアップ6に重ね、真空バッグ23の下から空気を引き出し、内部の圧縮及びレイアップ6からの空気の排出の両方を行う。好ましい構成によれば、積層材料レイアップ6に向いた真空バッグ23の表面に第2樹脂層25を予め付着してもよい。別の態様ではカウルプレート又はキャリヤを使用する場合には、レイアップ6に向いたカウルプレートの表面に第2樹脂層25を予め付着してもよい。図4では、硬化プロセスの開始前に積層材料レイアップ6を向き合った樹脂層3、25の間に配置する。積層材料レイアップ6は、例えばノメックス(Nomex)ハニカムコアが提供する中央コア層27を含んでいてもよい。中央コア層27の両側には、ファイバ束層17が設けられており、中央コア層27と各ファイバ束層17との間にケブラーベール21が設けられている。
【0055】
製造プラント内での硬化プロセス中、金型1及びカウルプレート又は真空バッグ23の両方の樹脂層が液化し、これらの夫々が隣接したファイバ束層17に含浸する。ケブラーベール21は、ノメックスコア27内への樹脂の含浸を最小にする、又は阻止するように作用する。結果的に得られた積層材料成形品は、中央コア27を含む。中央コア27は、この場合には、両側がファイバ強化皮膜で覆われたノメックスハニカム層である。このようなパネルは、航空の用途で使用するのに特に適している。
【0056】
高品質の積層材料成形品の製造を容易にするため、金型1及び圧縮チャンバ壁23をほぼ垂直方向に整合できる。製造プロセスの初期段階中、各圧力チャンバを加熱された液体で徐々に充填し、両樹脂層3、25をそれらの最も下の部分から最も上の部分に向かって徐々に加熱する。従って、これらの樹脂層3、25は、下から上に向かって徐々に液化し、その結果、溶融樹脂の波が生じ、これが部品に沿って、及びファイバ束層17を通って上方に進行する。これにより、ファイバ束17が液化した樹脂によって徐々に含浸されるに従って、空気をファイバ束17から上方に排出する。これは、最終的積層材料成形品のファイバ強化皮膜内に気泡が残らないようにするのを補助し、物理的特性を向上する。勿論、このように圧力チャンバを徐々に充填し、樹脂層に亘って及び部品に沿って下から上に「熱ウェーブ」を発生することは、単一の樹脂層だけを液化する必要がある場合でも、又は多くの樹脂層を液化する必要がある場合でも使用できる。
【0057】
図5(a)乃至図5(g)は、本発明による製造プロセスに含まれる様々な工程を示す。先ず最初に、図5(a)に示すように、金型1の金型表面2を上に向けて金型1をトロリー27に置く。トロリー27には、樹脂層3の冷却及び凝固を容易にするために金型表面2の温度を低下するための冷却手段が設けられている。この冷却手段は、金型1の下に配置された空冷ブラストの形態であってもよいし、冷却ブラダーの形態であってもよく、又は金型内又はトロリー27自体の天板部分内に配置された冷却チューブの形態であってもよい。
【0058】
トロリー27をスプレー室29まで移動する。スプレー室29でスプレーノズル30が液化樹脂を金型表面2にスプレーする。この樹脂が凝固し、金型表面2上に樹脂層3を形成する。上文中に論じたように、樹脂層3自体は、連続した樹脂スプレー工程で互いに重ねられた様々な物理的特性の様々な樹脂層で形成されていてもよい。
【0059】
スプレー工程を完了し、樹脂層3が凝固した後、サイジングによって、又はファイバ束上に予めスプレーした凝固した樹脂の液滴によって互いに保持されたファイバ束層のアッセンブリからプレパック31を形成する。樹脂の凝固によりファイバ束は互いに保持される。更に、最終的な湾曲した硬化済の積層材料成形品内で必要とされるプレパック31上又はプレパック内の領域に、ナノチューブをスプレー又は他の方法で分配してもよい。
【0060】
図5(d)に示すように、真空バッグ33をプレパック31及び金型1の上に置く。真空バッグ33の下から空気を排出し、プレパック31内から空気の大部分を除去するとともに、プレパック31の予備圧縮を行う。
【0061】
次いで、プレパック31及び真空バッグ33を含む金型アッセンブリ34をトロリー27から取り出し、図5(e)に示すように製造プラント35に入れる。この製造プラントは、向き合った下圧力チャンバ37及び上圧力チャンバ39を含む。各圧力チャンバは、弾性変形可能な圧力チャンバ壁23を有する。圧力チャンバ37、39は、金型アッセンブリ34を向き合った圧力チャンバ壁23間に配置できるように、ヒンジ41によって連結されている。製造プラント35は、各硬化サイクル中にプラントを再加熱する必要がないように、高い作動温度に保持される。これは、本出願人の国際出願第PCT/AU02/00078号に記載された製造プラントの作動と異なる。この樹脂の製造プラントは、様々な作動温度間でサイクルすることを必要とし、その結果、サイクル時間が長く、かくして製造時間が長く、エネルギ費用が比較的高い。金型及び積層体に圧縮圧力を加えるため、圧力チャンバ37、39を窒素で加圧してもよく、その後、傾斜位置に保持された圧力チャンバに高温の液体を徐々に導入する。圧力チャンバが傾斜位置に保持されているため、樹脂層3を下から上へ徐々に液化する上で熱ウェーブを容易に使用でき、これによって、上文中に説明したように、全ての残留空気の除去が容易になる。垂直状態又は垂直状態に近い状態でのこの作業プロセスは、溶融樹脂に作用し、これをそのスプレーされた位置に維持するHTF流体のコラム圧力(the column pressure of the HTF fluid)を加えることによって高められるということに着目されたい。この均衡密度効果(Balanced Density effect) は、本出願人の特許出願第2006265783号に記載されており、この均衡効果なしでは、溶融状態の樹脂は、金型の面を下方に移動する傾向があり、部品の底部に毛管作用とは逆方向に移動する("wick" down) 傾向がある。金型アッセンブリ34を図5(f)に示すように製造プラント35内の所定位置に保持するため、位置決めピン43が他方の圧力チャンバ壁23に設けられている。次いで、硬化サイクルを行うため、図5(g)に示すように上圧力チャンバを下圧力チャンバ上に閉鎖する。硬化サイクルの終了時に高温の流体を圧力チャンバの外に圧送し、金型1と接触していたブラダーを金型から引き出し、かくして圧縮圧力を解放する。ブラダーを引き出した後、圧力チャンバ37及び39を開放でき、部品を製造プラント35からロボットによって高温のまま取り出し、冷却を行うためにトロリー上に置く。トロリーに設けられた冷却手段は、積層材料成形品の急速冷却を容易にし、成形品のクレージングの可能性を小さくする。
【0062】
図6は、プレパック31のアッセンブリを更に詳細に示す。連続したファイバ束層49がオープンフォーム50即ち「モーレ(maule)」に置いてある。液化樹脂を樹脂ガン51によってファイバ層にスプレーする際、真空により、層をオープンフォーム50上に保持する。この樹脂ガン51は、高温の樹脂を混合ヘッド52を通してスプレーする。混合ヘッド52には、樹脂ライン53及び硬化剤ライン55の夫々によって、加熱された樹脂及び硬化剤が供給される。追加のファイバ束層49を、樹脂をスプレーした前の層に連続的に重ねる。
【0063】
更に複雑な形状及び厚さの積層材料成形品を形成する場合、中央コア層27をプレパック31に代えてもよいということは理解されるべきである。更に、ナノ粒子等の強化手段を含む液化した樹脂を、プレパック31に予めスプレーしてもよい。この樹脂は、続いて行われる硬化プロセス中に凝固するとき、プレパック31を互いに保持するように作用する。更に、プレパック31の追加の樹脂は、再び液化することにより、プレパック31の含浸を補助すると同時に、十分なナノ粒子をプレパック31の内部に入れ、上文中に説明したように、z方向での必要な強化を提供する。
【0064】
当業者に明らかであると考えられる変形及び変更は、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の範疇に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層材料成形品を製造するための方法において、
凝固して樹脂層を形成する樹脂を表面上に適用する工程と、前記樹脂層とほぼ平行なx方向に沿って強化手段を提供する工程と、前記x方向に対して角度をなし且つ前記樹脂層とほぼ平行なy方向に沿って強化手段を提供する工程と、前記x方向及び前記y方向に対してほぼ垂直なz方向に強化手段を提供する工程とを含む、方法。
【請求項2】
積層材料成形品を製造するための方法において、
液化樹脂を金型の金型表面に適用し、前記樹脂が凝固して前記金型の前記金型表面上に樹脂層を形成する工程と、
前記樹脂層上に積層材料レイアップを配置する工程と、
弾性変形可能なチャンバ壁を各々有する第1及び第2の圧力チャンバ間に前記金型を配置し、前記チャンバ壁は、これらのチャンバ壁間に配置された金型に関して向き合って配置される、工程と、
前記金型に面する向き合った表面に液化樹脂を適用し、前記向き合った表面上の前記樹脂は、凝固して向き合った樹脂層を形成し、前記積層材料レイアップは、前記樹脂層間に配置される、工程と、
各圧力チャンバを通して高温高圧の流体を循環して前記樹脂層を液化し、前記積層材料レイアップを圧縮し、樹脂で含浸し、硬化する工程とを含む、方法。
【請求項3】
積層材料成形品を製造するための方法において、
液化樹脂を金型の金型表面に適用し、前記樹脂が凝固して前記金型の前記金型表面上に樹脂層を形成する工程と、前記樹脂層上に前記積層材料レイアップを配置する工程と、
弾性変形可能なチャンバ壁を各々有する第1及び第2の圧力チャンバ間に前記金型を配置し、前記チャンバ壁は、これらのチャンバ壁間に配置された金型に関して向き合って及びほぼ垂直方向に整合して配置される、工程と、
各圧力チャンバを通して高温高圧の流体を循環し、前記樹脂層を液化し、前記積層材料レイアップを圧縮し、樹脂で含浸し、硬化する工程とを含み、
前記圧力チャンバは、最初、前記樹脂層が前記圧力チャンバの底部から上方に徐々に液化するように、前記流体で徐々に充填される、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、更に、
金型に面する向き合った表面に液化樹脂を適用する工程を含み、前記向き合った表面上の前記樹脂が凝固して向き合った樹脂層を形成し、前記積層材料レイアップは、前記樹脂層間に配置される、方法。
【請求項5】
積層材料成形品を製造するための方法において、
液化樹脂を金型の金型表面に適用し、前記樹脂が凝固して前記金型の前記金型表面上に樹脂層を形成する工程と、
弾性変形可能なチャンバ壁を各々有する第1及び第2の圧力チャンバ間に前記金型を配置し、前記チャンバ壁は、これらのチャンバ壁間に配置された金型に関して向き合って配置される、工程と、
各圧力チャンバを通して高温高圧の流体を循環し、前記樹脂層を液化し、前記積層材料レイアップを圧縮し、樹脂で含浸し、硬化する工程とを含み、
前記第1及び第2の圧力チャンバは、高温に連続的に保持され、前記金型は、前記圧力チャンバから離して外で冷却される、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、
前記金型を圧力チャンバ間から取り出し、硬化した積層材料成形品を冷却するための冷却手段に置く、方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちのいずれか一項に記載の方法において、
前記樹脂は、前記表面上にスプレーされる、方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちのいずれか一項に記載の方法において、
前記強化手段は、前記樹脂層に亘って分配されたファイバスピクラを含む、方法。
【請求項9】
請求項1乃至7のうちのいずれか一項に記載の方法において、
前記強化手段は、前記樹脂層に亘って分配されたカーボンナノチューブの形態のナノ粒子を含む、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
前記表面及び前記樹脂層を振動し、前記ナノ粒子を前記樹脂層に亘って分配する工程を含む、方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のうちのいずれか一項に記載の方法において、
種類が異なり、添加剤が異なる樹脂を、前記表面上に又は前に適用された樹脂層上に順次スプレーする、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、
前記異なる樹脂層には、機械的要求に合わせて、耐引っ掻き層、耐衝撃性改良剤層、耐落雷性層、及びファイバ難燃化層のうちの少なくとも一つが含まれる、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図5(c)】
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【図5(d)】
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【図5(e)】
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【図5(f)】
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【図5(g)】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−529385(P2012−529385A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514291(P2012−514291)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際出願番号】PCT/AU2010/000709
【国際公開番号】WO2010/141984
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(502321032)クイックステップ、テクノロジーズ、プロプライエタリ、リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】QUICKSTEP TECHNOLOGIES PTY,LTD.
【Fターム(参考)】