説明

高強力不織布

本発明は、繊維径7〜20μmの熱可塑性合成長繊維層を上下層、繊維径が5μm以下の熱可塑性合成微細繊維を中間層とし、各層が圧着により一体化されされた積層不織布において、微細繊維が長繊維層の少なくとも一面に進入指数0.36以上で進入し、長繊維を結合、包埋又は交絡して混和した構造を有し、積層不織布の目付が10〜250g/m以下、嵩密度が0.20g/cm以上であることを特徴とする。
本発明のスパンボンド系積層不織布は、不織構造を形成する微細繊維層による耐久性のあるさまざまなフィルター及びバリア機能を有し、スパンボンド不織布に比べて遥かに引張強力に優れるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、引張強力に優れ、良好なフィルター性及びバリア性を有する改良されたスパンボンド系積層不織布に関するものである。
本発明の改良されたスパンボンド系積層不織布は、引張強力に優れたフィルター性及びバリア性を有する不織布であって、スパンボンド系長繊維不織布の特徴が特に活かされる様々な用途、例えばハウスラップ、壁材、屋根下材等の建築用資材、防音材や吸音材、食品フィルター、エアフィルター、液体フィルター、掃除機フィルター、メンブレン支持体等のフィルタ用材料、フィルター資材等をはじめとする産業用資材や農業資材、保護衣、使い捨てオムツ、滅菌ラップ、医療用フィルター等の衛生・医療資材、包装材料、乾燥剤包材、懐炉包材、粘着性を有するテープ基材、ダウン押え、靴材などの生活製品資材等の材料など多くの利用分野で、新しい用途を拓くものである。
本発明の改良されたスパンボンド系不織布は、それがスパンボンド/メルトブロー/スパンボンドの積層不織布であり、その積層構造を変化させたことにより、引張強力に優れ、良好なフィルター性、バリア性を有する不織布であり、又それがポリエステル樹脂やポリアミド系樹脂素材による不織布であるにおいて、素材特性による高強力性、耐熱性、化学的親和性や親水性を備えているので、ポリオレフィン系スパンボンド系不織布に比べて、上記した各種の最終製品の機能を多様にすることができるばかりでなく、製造工程での自由度を高めることができることにより、更に使用される対象が広がり、不織布材料としての用途を、新しく拓くことができる。例えば、フィルター性、バリア性と引張強力に加えて耐熱性を持つとテープ基材、メンブレン等の支持体では、乾燥や塗布工程でも使用でき、基材融点と処理温度が近く、素材の強力の低下や変形を避けるヒートシールや、ホットメルト材での接着が必要とされる分野にも使用できるようになる。
【背景技術】
フラッシュ紡糸法やメルトブロー法による0.01dtex前後の微細繊維による不織布構造の形成は、フィルター性とバリア性とを共に備える不織布の製造に好都合である。
汎用のフラッシュ紡糸不織布は、繊維形成上、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系不織布に限られている。当然のことながら、ポリエステルやポリアミド繊維によるスパンボンド系不織布に比べて、耐熱性が著しく低い不織布材料でもある。フラッシュ紡糸による不織布の商業的な製造は、特殊な製造設備と特殊な溶剤の使用が不可欠でもある。
一方、メルトブロー紡糸法による不織布は、メルトブロー紡糸法により、多様な樹脂を用いて繊径5μm以下の微細繊維で形成される不織布構造を調製することができる。繊細繊維による網目構造に基づいて得られるフィルタ性及びバリア性機能をもっていることが特徴でもある。不織布構造が微細繊維で形成されているので、メルトブロー紡糸法による不織布は、反面、引張強力等の機械強力が劣る他、被ろ過体である固体や流体の浸入、通過で、微細繊維の間隙が押し拡げられる等、不織布構造が比較的容易に変形、破壊する欠点をもっている。このような理由で、メルトブロー不織布に長繊維不織布を付加した複合不織布構造を形成することで機械的物性について補強されたフィルタ性とバリア性を有する長繊維系積層不織布を得る試みが知られている。
それぞれ予め調製されたメルトブロー微細繊維不織布と連続長繊維不織布(=スパンボンド不織布)を積層し、積層構造を一体化して、機械強力の優れるフィルター及びバリア性に優れた複合不織布が特開平7−207566号公報で知られている。この提案による積層布帛では、不織布の構成繊維が各不織布構造内でリジッドに固定されて、自由度がなく、そのために積層されたメルトブロー不織布の微細繊維がスパンボンド長繊維層に拡散することがなく、積層体が熱カレンダロール又は熱エンボスロール間に通されることで、それぞれの不織布が複数回の熱履歴を被り、その分不織布の引っ張り強度が更に低下する。又、低目付のメルトブロー不織布は、著しく変形し易く取り扱いが煩雑なこともあって、積層構造の調製、加工の過程で、微細構造が引き伸ばされ易く、均一な層を形成することが困難である。
長繊維不織布の上面に、メルトブロー紡糸により直接に極細繊維の堆積ウエブを捕集形成した積層シートに非加熱的圧着法を適用して、良好なフィルター性をもった複合不織布を得る方法が特開平2−289161号公報に記載されている。また同様の方法で肌ざわりの良好な衛生材料を得る方法が特開平2−112458号公報に記載されている。この複合不織布では、スパンボンド長繊維層の構造が予め固定されたものであるので、メルトブロー微細繊維を長繊維層内部に実質的に進入させ、長繊維と絡ませて、進入した微細繊維の投錨(アンカー)効果の作用により、積層構造に抗層剥離性を付与することが期待できない。
特開平2−88056号公報には、捕集面上に堆積せしめた長繊維フィラメントのシート状ウエブの面上に極細繊維不織布を載せ、この上に更に付加して配置したスパンボンド不織布の層間を接着させることを目的としたロール間加工及びエンボスによる積層後熱圧着する方法が記載されている。接着層として適用されるメルトブロー不織布の不織布構造が予め固定されてしまっているので、メルトブロー繊維をスパンボンド不織布の長繊維層へと進入させて、投錨(アンカー)効果を発揮することがないので、期待される微細繊維による熱圧着接合効果は得られない。
特公昭60−1148号公報にも同様に、スパンボンド法によるポリオレフィン系長繊維不織布の製造において、移動捕集ネットの面上に堆積された長繊維ウエブ(スパンボンドウェブと呼ぶ)の裸面に、予め調製され巻き出し源に巻かれたメルトブロー極細繊維不織布を供給して積層して後、熱エンボスロールを用いる熱圧着法で積層不織布構造を固定する方法が記載されている。この公知方法においては、メルトブロー不織布を構成する微細繊維によるスパンボンド長繊維層の層間の接着剤として機能が示唆される。しかし、接着層として適用されるメルトブロー不織布は、予め不織布構造が固定されている材料なので、メルトブロー微細繊維がスパンボンド不織布の長繊維層内へ実質的に進入し、補強的な作用をすることを殆ど期待できない。
【発明の開示】
本発明の目的は、引張強力に優れ、フィルター及びバリア機能を有し不織布構造の微細繊維層の長繊維層へのより高度な進入により、微細繊維層と長繊維層がより高度に相互に補強し合うことにより、微細繊維層構造がより強固で積層不織布が高い引張り強力であるスパンボンド系積層不詳布の提供を目的とする。
本発明のより具体的な目的は、フィルター性とバリアー性機能を維持する安定した構造の微細繊維不織布層とその両側に配置される前記微細繊維により構造補強された長繊維層が積層一体化された不織布構造でなるスパンボンド系積層不織布からなる高強力不織布を提供することにある。
本発明の他の目的は、微細繊維層の構造が強固で、積層不織布が高い引張り強力をもつことに加えて、素材をポリエステル系、ポリアミド系繊維とすることで、高強力、耐熱性、化学親和性、親水性等、前者では耐放射線性、寸法安定性など、後者では、油に対する対膨張性、染色性に優れたポリエステル繊維系、ポリアミド繊維系スパンボンド系高強力不織布を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、前記した引張強力及び耐毛羽性に優れ、フィルター及びバリア機能を有し、不織布構造を補強安定化させ、スパンボンド系高強力不織布の更に安定した製造プロセス方法の提供である。
本発明者等は、微細繊維不織布層の両側面に接して配置される長繊維層における微細繊維の絡合、混和の諸態様と積層不織布の引張り強力等の主要性能の相関関係について検討したところ、積層不織布を形成するにおいて、長繊維ウェブ層の層内部へのメルトブロー微細繊維の混和(=進入)態様が積層不織布の引張り強度、引裂き強度、5%モジュラス、耐毛羽性、層間剥離強力等と顕著な正の相関のあることを見出した。すなわち長繊維ウェブ層の層内部でのメルトブロー微細繊維の進入、混和が進行すればする程、積層不織布の引張強力が顕著に向上することを見出し、本発明を着想した。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の改良されたスパンボンド系積層不織布のCD(緯)方向の断面であって、メルトブロー微細繊維が長繊維層内部に向けて進入して形成された微細繊維混和層を含む積層不織布構造を模式的に説明する図である。
図2は、本発明のスパンボンド系積層不織布の積層断面構造を模式的に示す図である。
図3は、比較例のスパンボンド系積層不織布の積層断面構造を模式的に示す図である。
図4は、本発明の実施例1〜4、比較例1〜4のスパンボンド系積層不織布の毛羽等級に対する平均引張り強力を示す。
図5は、本発明の実施例5〜8、比較例5〜8のスパンボンド系積層不織布が示す引裂強力/引張り強力の相関図である。
本発明のスパンボンド系不織布は、繊維径が7μm以上で20μm以下の熱可塑性合成長繊維層を上下層とし、繊維径が5μm以下の熱可塑性合成微細繊維層を中間層とする圧着により一体化された積層不織布において、微細繊維が長繊維層の少なくとも一面側に進入指数が0.36以上で進入して長繊維と混和した不織布層構造を有し、該積層不織布が目付け10g以上250g/m以下であり、嵩密度が0.20g/cm以上であることを特徴とする高強力不織布である。
本発明のスパンボンド系積層不織布は、熱可塑性繊維形成性合成重合体を用いて少なくとも1層以上の長繊維を捕集コンベアー上に紡糸し、熱可塑性合成樹脂を用いてメルトブロー法で結晶化度が15%以上40%以下であるような微細繊維を少なくとも1層以上吹き付け、その後長繊維を少なくとも1層以上積層し、熱圧着温度が長繊維の融点より−10〜−80℃であり、熱圧着の線圧が100N/cm〜1000N/cmであり、エンボスロール又はフラットロールを用いた加圧により一体化することによって調製することができる。
以下に、本発明の引張強力にすぐれた、フィルター及びバリア機能を有する不織布及びその製造方法を詳細に説明する。
本発明のスパンボンド系積層不織布は、いわゆる熱可塑性合成繊維の長繊維ウエブ(SW)のシートが熱可塑性合成繊維のメルトブロー微細繊維ウエブ(MW)のシートを挟む配置でなるいわゆるSMS積層ウエブの繊維間及び層間構造が熱圧着作用により一体化して形成されたものであり、そのメルトブロー微細繊維が特定の進入指数で連続長繊維層に高度に進入した固定三層不織布構造を有するスパンボンド系積層不織布である。
本発明のスパンボンド系積層不織布の構造は、スパンボンド長繊維不織布の製造プロセスにおいて、移動する捕集体面状に溶融紡糸された多数本の連続長繊維群の第1の堆積長繊維ウェブ(SW1)の全面に直に吹き付けられたメルトブロー微細繊維ウエブ(MW)層、更にこの層の全面に多数本の連続長繊維群の第2のウェブ(SW2)を堆積して、全体として前述のシート状SMSウエブ積層体を形成して、メルトブロー微細繊維ウエブ(MW)層がサンドイッチ状で熱圧着される工程の間に、一体化され、メルトブロー微細繊維が全面で特定の進入係数で連続長繊維層に高度進入した三層積層不織布構造が形成されている。
本発明のスパンボンド系積層不織布は、前記したようにメルトブロー微細繊維が特定の進入指数で連続長繊維層内に高度に進入し、三層積層不織布構造に基づいて、メルトブロー微細繊維層と、長繊維層が拠り高度に相互に補強し合った構造をとることで、微細繊維層構造が強固で、良好なメルトブロー微細繊維によるフィルター性、バリア性をもちながら、そして耐毛羽性も一定に維持しながら、スパンボンド系積層不織布の引張強力を顕著に高めることに成功した。
図1は、本発明のスパンボンド系積層不織布のCD方向における断面構造を示す模式図で、連続長繊維層にメルトブロー微細繊維ウエブの紡糸ノズル側の面上に更に長繊維ウエブ(図示省略)を積層一体化した構造を示す断面図である。
本発明でいう三層積層不織布構造は、図1に示されるように、スパンボンド法による長繊維層(L)メルトブロー微細繊維層(MB)更に紡糸ノズル側に積層されたもう一つの長繊維層(図示なし)からなり、スパンボンド法による長繊維層(L)は、紡糸ノズル側にメルトブロー微細繊維が進入して形成された長繊維(S〜S)とメルトブロー微細繊維の混和層(M)を含んでいる。なお、長繊維層(L)は、メルトブロー微細繊維を含んでいない長繊維(SO)でなる層も存在する。図中、補集面側をA、一方ノズル面側をBで表わす。
図1において、網掛け部で示した部分が微細繊維層であり、丸形断面で示したものが長繊維の断面である。微細繊維層の進入のタイプとしては、S13やS15の様に完全に長繊維を包埋しているものや、S11やS12等のように断面の半分以上包んでいるものや、S14やS16のように断面の一部と接着結合しているものがある。この様な、微細繊維の長繊維層への進入、結合、包埋の程度は、後述する進入指数を用いて評価できる。進入指数が大きいほど、微細繊維の長繊維への進入度合いが大きくなり、微細繊維の長繊維を包み込む度合いが大きくなるといえる。
この様に進入した微細繊維は、フィルム状ではなく、繊維状でしかも集合状態を維持しながら長繊維層の繊維間の隙間に進入し、長繊維層の繊維間隙を埋めていく働きを有している。この現象は、長繊維層を補強する作用とともに長繊維間の間隙を埋めることでフィルター作用、バリアー性を向上させる、種々の遮蔽効果、分離作用付与することができる。
さらに、長繊維層の繊維をこの様な特殊な形状で補強、固定化することで、長繊維はしっかり固定化され、耐摩耗性に優れ、表面の耐毛羽性の向上にも寄与するものである。
本発明のこの様な特異な構造は、エンボスによる部分熱圧着による一体化においては、熱圧着部を除く他の非圧着部分で全面に分布して存在する。又、フラットロールの加熱と加圧による一体化では、熱融着なく、全面にわたって、この構造が存在する。
本発明において、メルトブロー微細繊維の進入指数は、後述する方法に拠って測定される相隣する長繊維間(但し、3直径を超えない距離にあること)を埋めるメルトブロー微細繊維相深さの平均値(d)を長繊維の繊径(D)で割った、次式(1)で定義される値である。
進入指数 = d/D (1)
換言すれば、進入指数とは、長繊維層を構成する長繊維間に占めるメルトブロー微細繊維の充填度での混和度合いを表す。したがって、本発明の3層積層不織布は、不織布構造上、メルトブロー微細繊維が進入指数で特定される充填度で混和した長繊維層を含む積層不織布構造に特徴をもっている。
本発明ではメルトブロー微細繊維が、連続長繊維層へ0.36以上で進入してのメルトブロー微細繊維と連続長繊維が混和している構造をもつ。より好しくは、進入指数が0.4以上である。メルトブロー微細繊維層に更に連続長繊維ウェブを積層するがその方向への進入は少ない。
ここで、進入指数の算出は、熱圧着時のエンボスされた部位を除いて行われる。熱エンボスされた部位を進入指数の評価の対象としない理由は、被熱圧着エンボス部分は、電子顕微鏡観察の結果から概ね、微細繊維と長繊維とが共に溶融乃至高圧下に融解して繊維構造が破壊され、その部位の断面形状の観察から、両者の混和程度の判別が困難であるからである。
本発明において、スパンボンド長繊維層を構成する連続長繊維は、長繊維層に求められるカバーリング性、機械的強度、スパンボンド製造プロセスにおける紡糸安定性の観点から、繊径が7μ(PETでは0.53dtex、Ny6では0.42dtex)以上、好ましくは、12μ以上である。又、上限は20μm以下である。連続長繊維層は、移動捕集コンベア上に堆積された連続長繊維糸群のウェブ堆積層であるから、公知のスパンボンド紡糸プロセスにおける摩擦帯電やコロナ帯電または機械的な糸条分散手段を経て長繊維のウエブ内分散が均一性な長繊維ウエブ層から調製された不織布構造をもっている。連続長繊維層は、単層でもよいし、複数層を重ねた層であってもよい。なお、連続長繊維ウエブの調製方法は、例えば特公昭60−11148号公報、特公昭48−38025号公報等数多くの既知文献に記載されている。
メルトブロー微細繊維層は、平均繊径が0.5μm以上5μm以下、3μ以下が好ましい。Ind.Eng.Chem.48.vol8.1342−1346、特公昭56−33511号公報等多数の既知文献記載の方法、装置を用いて容易に調製することができる。メルトブロー紡糸による微細繊維は、繊径が0.5μよりも小さくなると、紡糸条件が過酷になりすぎ製造ができる安定な条件とはいえず好ましくない。微細繊維の繊径が5μより大きいと連続長繊維の繊径に近くなり、微細繊維によるフィルター性能、バリア性を発現させることが効果的にできないばかりでなく、微細繊維の連続長繊維層内への進入による混和層の形成が困難となる。進入においてメルトブロー微細繊維の繊径は、連続長繊維の繊径の約5分の1以下が好ましいことから、3μ以下がより好ましい。メルトブロー微細繊維を、前述の未結合状態の連続長繊維ウェブ上面に直にメルトブロー紡糸法により吹き付けることで、前記した進入指数0.36以上の混和層を形成することができる。吹き付けられたメルトブロー微細繊維のもつ結晶化度が15%以上40%以下に制御することで、熱圧着加工による不織布構造の固定を確実かつ安定して行える。
結晶化度が15%以下では、軟化点が低くなりすぎ、熱圧着ロールで一体化する時メルトブロー微細繊維が、長繊維層から滲みでたり、長繊維層の間隙から露出したりして、熱圧着ロールにメルトブロー繊維が付着したり、エンボス部位に膜、溶融塊となったり、またロールに接着して安定的な生産ができなくなる。一方、40%以上では、メルトブロー微細繊維と連続長繊維との接着力が低下、メルトブロー繊維のと長繊維への進入が減少して積層の層剥離や積層不織布の強度発現が妨げられる。
メルトブロー微細繊維は単層でも、複数層を重ねても堆積させることができる。しかし、混和層は長繊維層に直に吹き付ける第1層のメルトブロー微細繊維によって形成されるのであるから、第1層目の平均繊径が小さいほど進入指数を大きくすることができるので好ましい。
本発明で特定される進入指数を満足する三層積層不織構造は、スパンボンド長繊維不織布の製造プロセスにおいて、移動する捕集体面状に溶融紡糸された多数本の連続長繊維群の堆積ウェブ(SW1)の全面に、メルトブロー微細繊維ウエブ(MW)を直に吹き付け堆積させてメルトブロー層を形成することを基本原理とする。さらに溶融紡糸された多数本の連続長繊維群のウェブ(SW2)を堆積する。
本発明において、連続長繊維は延伸により充分な強力の発現と寸法安定性を考えて紡速等を設定される。例えばポリエチレンテレフタレートでは紡速が3000m/min以上、好ましくは3500m/min以上で延伸紡糸される。長繊維ウェブの上に直接吹き付けたメルトブロー微細繊維層にさらに長繊維ウェブを積層した、いわゆるSMS構造にする。これは、いわゆるSMの構造体であれば、長繊維層ウェブがある程度の結合が生じ強力を有する程度の一体化の熱圧着条件では、加熱ロールが直接メルトブロー層に接することになり、メルトブロー微細繊維が軟化乃至溶融して自身の破壊若しくは変形し、網目の繊維構造を失い易く、またメルトブロー繊維層が熱圧着ロールに取られ易くなり安定生産が困難になってしまう。そこで、本発明では、SMS構造にして、直接メルトブロー繊維が加熱ロールに接触しない構造にすることにより、メルトブロー微細繊維が連続長繊維に進入して結合し、連続長繊維層が強力を発現できる条件での熱圧着を可能にしている。
進入指数は、メルトブロー微細繊維を紡出するメルトブロー紡糸ノズルと連続長繊維の堆積ウエブの捕集面の相対位置を12cm前後に設定する方法、前記捕集面に作用する吸引力を高める方法に拠っても制御できる。意外にも、メルトブロー微細繊維を形成する樹脂素材の種類に拠っても、進入指数は相違する。ポリオレフィン樹脂によるよりも、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等の180℃以上の高融点を有する熱可塑性樹脂によるメルトブロー繊維の方が進入指数の大きい不織布が調整し易いことが判明している。
メルトブロー微細繊維の進入の具体的な形態については、メルトブロー微細繊維の吹き付けられた連続長繊維層への進入が、メルトブロー微細繊維が単一箇所で1,2本の単繊維が、単独でひげ状や絡みついたりするような形状では無く、もっとそれらが進んだ複数繊維の集合として層をなして進入している部分を形成しており、進入した層が長繊維の一部または全体を取り囲むように包埋、または交絡した配置する形態をとり、またその進入したメルトブロー微細繊維の一部が長繊維に接合しているような構造をメルトブロー層とメルトブローを吹き付けた長繊維層とに混和層として接合面の全体に持つ。但し層として進入することで、メルトブロー微細繊維によるフィルター性能やバリア性能を発現するメルトブロー層構造を壊さない程度のメルトブローの量は必要であり、好ましくはメルトブロー微細繊維率10wt%以上かまたは、2g/m以上あるとよい。
進入指数は、紡糸条件における長繊維側の自由度と、メルトブロー微細繊維の低い結晶化度による糸条特性と、メルトブローの進入力、およびフラットロールによる加熱、加圧による更なる進入とにより発現する。
熱圧着による三層積層不織布構造の固定は、不織布の表面積で50%以下の熱エンボス加工を適用するか、もしくは三層積層ウエブの全面に熱カレンダー加工を適用することにより行うことができる。
エンボス柄は基本的には大きく影響しないが、メルトブロー微細繊維層の損傷を招く恐れのある先端面積が小さく急激な大きな押し込みの凹凸を有するエンボス柄の使用は避けることが望ましい。エンボス面積が6%未満以下の熱圧着加工では充分な布強力が得られず、50%よりも大きいと、非部分圧着部分が少なくなり、流体が通過できる部分が少なくなる傾向となるので、好ましくない。ただし使用目的に合致したフィルター性能やバリア性になるのであるなら、一体化がフラットロールによる加熱加圧により行われてもよい。
熱圧着温度は、連続長繊維をなす熱可塑性樹脂の融点から20℃低い温度から80℃程度低い温度範囲で、線圧は100N/cm以上から1000N/cm以下の範囲から選択する。ただし、圧力や温度が低いと連続長繊維同士の接合やメルトブロー微細繊維の軟化による連続長繊維の間の接合が生じず、層間剥離が容易に生じたり、連続長繊維繊維が綿状に剥離したりするなど、充分な布強度を発現する不織布構造が得られない。容易に層間剥離することがなく、強度や布帛としての取り扱い性を考慮すると、毛羽指数がほぼ2.5級以上となる不織布構造を得る加熱加圧条件を適宜選択することが好ましい。逆に、温度があまりにも高くて、圧力が高いと、微細繊維が溶けたり、長繊維層の外側までメルトブロー微細繊維が滲み出て加熱ロールに付着したりするので、熱圧着加工条件の設定に当たっては、メルトブロー繊維量と連続長繊維層の量、進入度合い、連続長繊維層の繊維径、分散などを考慮する必要がある。
本発明のスパンボンド系積層不織布の目付は、一般的に、10g/m以上、250g/m以下が選ばれる。10g/m未満では、各種用途に使用するに強力が低い。長繊維層の目付けが5g/mを下回るとメルトブロー微細繊維が過度に連続長繊維ウェブを突き抜けて、熱圧着後の風合いを低下させたり、微細繊維層の構造が破壊され易くなる。製造面では、長繊維ウェブが捕集面に喰い込むことになり、又メルトブロー繊維がエンボスロールに融着し易くなるので安定生産が困難となる。目付けが250g/mを超えると、厚みが大きくなり、メルトブロー微細繊維量を増やして、より進入度を高めても、長繊維層の表層まで及びにくく、メルトブロー微細繊維の進入の効果を効率的に得ることができない。
メルトブロー微細繊維層の単位面積当りの重量が積層不織布の全目付けに対する比率は、製品不織布のバリア性やフィルター特性を満足するようにメルトブロー微細繊維の径と勘案して決定することができる。少なすぎると、既述の理由で、進入することで層構造を維持することができず、バリアー性やフィルター性が低下する。又、この比率が50%より大きくなると熱圧着時に軟化するメルトブロー繊維が多くなりすぎ、過度に連続長繊維層に進入することになるので、外側層である連続繊維層の表面まで露出したり、エンボス部分でも同様に表面化したり、軟化したメルトブロー繊維が樹脂化してエンボスロールに取られ易くなり、また積層不織布製品の表面やエンボス部の風合いを著しく硬くしてしまう。また積層不織布の目付あたりの引張り強力が、メルトブロー繊維の接着効果よりも連続長繊維の分率が減る分だけ低下することになり、好ましくない。
本発明のスパンボンド系積層不織布を構成する連続長繊維及びメルトブロー微細繊維は、繊維形成性の熱可塑性合成樹脂を繊維形成原料用いて調製される。繊維形成性熱可塑性合成樹脂は、熱可塑性樹脂からなるメルトブロー微細繊維および、連続長繊維からなるが、その熱可塑性樹脂は、ポリエステルまたは、その共重合体、それらの混合物からなるものである。例としてはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートや、ポリトリメチレンテレフタレート等をはじめとする、テレフタル酸、イソフタル酸やフタル酸、ナフタリンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノール等のジオールとが重合されたものであれば良い。また上記ポリエステルは生分解性樹脂、例えばポリ乳酸を初めとする脂肪族ポリエステルであってもよい。
それらに、本発明の効果を阻害しない程度に、ポリオレフィン類、ポリアミド類、ポリウレタン類を添加しても良いし、同様に本発明の効果を阻害しない程度に、原着や、酸化チタン、紫外線吸収剤や、熱安定剤、酸化防止剤等の任意の添加剤が添加されても良い。
また熱可塑性樹脂が、ポリアミド例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612など、またはその共重合体、それらの混合物からなるものであってもよい。
それらに、本発明の効果を阻害しない程度に、ポリオレフィン類、ポリエステル類、ポリウレタン類を添加しても良いし、同様に本発明の効果を阻害しない程度に、原着や、酸化チタン、紫外線吸収剤や、熱安定剤、酸化防止剤等の任意の添加剤が添加されても良い。
ここでいう添加されるポリオレフィン類はポリエチレン、ホモポリプロピレンもしくはαオレフィン、エチレンをランダム共重合したポリプロピレンなどであってもよく又それらを混合したものであってもよい。
なお、本発明では、連続長繊維及びとメルトブロー微細繊維が共に同種の樹脂原料を用いて繊維形成されることが、熱圧着による一体化加工における接着強度の発現を向上させる上で、好ましい。
メルトブロー微細繊維の積層に供給される連続長繊維ウェブの自由度は、メルトブローの吹き付け時のウェブめくれ防止のために予熱ロールや平滑ロール等で表面層の平滑化を行ったり、静電気を除去して繊維間の反発を弱めたり、コンベア面へ吸着させる吸引を行ったりすることでも自由度を下げる方向だが、メルトブローの直接紡糸時に連続長繊維の糸条が動き上記のメルトブロー繊維を連続長繊維に進入する構造形成できる程度にとどめなければならない。またメルトブローの紡糸条件としては、メルトブロー微細繊維の繊径と吐出量、連続長繊維の繊径と単位面積当りの重量と分散、進入力を与える為の延伸加熱流体の速度、ノズルと連続長繊維ウェブが載せられているコンベア面までの距離、吹き付け角度、メルトブロー微細繊維が着地する部分での吸引風速等の条件を選定する。そしてメルトブロー繊維同士またはメルトブロー繊維と連続長繊維の接合に関しては、メルトブロー微細繊維が捕集される時点での粘着性の有るメルトブロー紡糸の温度条件、ノズルからコンベア面までの距離も考慮して条件を選定する。
メルトブロー繊維の結晶化度は,前述の運転上の問題点ばかりでなく、進入にも影響し、結晶化度が40%より大きくなると、接着性が低下し、進入性も低下する。また柔軟性も低下し吹き付け時の進入が発現しにくく、熱圧着時にメルトブロー微細繊維層が軟化しにくくなり移動による進入が発現しにくくなる。
メルトブロー微細繊維の結晶化度を所定の範囲に収めるには、ポリエステル樹脂では、溶液粘度がηsp/cが0.2〜0.8好しくは0.2〜0.5であれば、一般的なメルトブロー紡糸条件で結晶化度を調整可能である。またポリアミドでは溶液比粘度ηrelが1.8〜2.7好しくは1.8〜2.2であれば同様に調整可能である。一般的なポリプロピレンのメルトブロー微細繊維での紡糸後の結晶化度は約50%程度であり、ポリエステルやポリアミドに比べると高い値を示す。これは、冷却過程による効果が大きいと考えることができ、素材の融点が高い樹脂の方が軟化し易く進入も発現し易いと考えられる。
発明の最良の実施形態
【実施例】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例のみに限られるものではない。
実施例及び比較例等において言及する特性値は、以下に記述する測定法によるものである。
(1)繊維の直径[μm](繊径)の測定
繊維ウエブ、不織布等の試料の両端部10cmを除いて、布帛の幅20cm毎の区域からそれぞれ1cm角の試験片を切り取りってサンプルを調製した。各試験片について、マイクロスコープで繊維の直径を各30点づつ測定して、測定値の平均値を算出(小数点第2位を四捨五入)して、試料の構成繊維の繊径とした。
使用装置:キーエンス製VT−8000
測定の倍率:連続長繊維では倍率1000倍、メルトブロー微細繊維では倍率2500倍
(2)不織布の毛羽等級(耐毛羽性)[級]の測定
JIS L 0849の摩擦堅牢度試験法に準じて、下記の測定法を案出して用いた。
不織布試料の両端10cmを除いて、布帛の幅20cmあたりMD方向に長さ300mm、巾25mmの試験片を採取した。日本学術振興会型堅牢度試験機を用いて、摩擦子の荷重200g、摩擦子側に人膚に模擬される摩擦係数と考えられているリンレイクロス−重梱包用No.314布粘着テープを取り付けて、試験片メルトブロー微細繊維の進入側の長繊維層の面側を50回動作(往復)させて、擦り、各々の試験片の被摩擦面を以下の基準で耐毛羽性を等級づけ、等級値の平均値(小数点第2位で四捨五入)を求めて、不織布の毛羽等級とした。
1級:試験片が破損するほど繊維が剥ぎ取られる。
2級:試験片が薄くなるほど甚だしく繊維が剥ぎ取られている。
2.5級:毛玉が大きくはっきり見られ、複数箇所で繊維が浮き上がりはじめる。
3級:はっきりとした毛玉ができはじめ、または小さな毛玉が複数見られる。
3.5級:一カ所に小さな毛玉ができはじめる程度に毛羽立っている。
4級:毛羽立ちがない。
(3)引裂強力[N]の測定
JIS L1085 5・5C法、ペンジュラム法に準じて、不織布試料の両端10cmを除いて、幅20cm当たり、縦65mm×横100mmの大きさの試験片をMD方向、CD方向の各1枚を採取して、エレメンドルフ型引裂試験機を用いて測定した。測定値の平均値を算出(小数点1位を4捨5入)した。なお、MD方向の測定データとは不織布をMD方向に引裂いた値を指す。
(4)不織布の引張強力[N/3cm幅]の測定
不織布の両端10cmを除き、幅20cmあたり3cm×約20cmの試験片をMD方向、CD方向の各1枚を採取し、定速伸張試験型引張試験機に把握長10cmで取付け、30cm/分の引張速度で試験片が破断するまで加重を加える。試験片の最大荷重時の強さの平均値をMD、CD方向で求めた(N単位で小数点第1位を四捨五入)。
(5)不織布の通気度[cc/cm/sec]の測定
JIS L−1096に記載のフラジール法に準じて測定した。不織布の両端10cmを除いて、幅20cmあたりに1点を採取して、測定し、測定値の平均値(小数点2位を4捨5入)を算出した。
(6)メルトブロー微細繊維の進入状況の観察方法
不織布の両端10cmを除いて布幅20cm毎に一箇所選んでサンプル採取し、その幅長さ(1cm)の布のCD方向断面をエタノール含浸不織布の液体窒素凍結試料を剃刀で切断し、得られた切断面のPt−Pd蒸着(0.1torr 4.2mA、エイコー社製IB−5使用)断面を日立製作所社製電子顕微鏡S−4100、FESEMを用いて、拡大倍率500倍程度で断面を観察する。
(7)進入指数[−]の測定算出
進入指数は、積層不織布の長繊維層に進入しているメルトブロー微細繊維の進入の程度を表し、進入指数が大きいほど、長繊維層へのメルトブロー微細繊維の混和(進入)レベルが大きいと判定する。
長繊維層内へのメルトブロー微細繊維の進入態様は、エタノール含浸液体窒素凍結した積層不織布試料から(6)と同条件で採取し、蒸着しないで調製したCD方向の切断断面をキーエンス社製VT−8000で投射光条件でマイクロスコープ(註参照)を用いて、1500倍程度映像を記録して以下の基準で長繊維層へのメルトブロー微細繊維層の進入状態を分別する(図1参照)。
a.微細繊維層の長繊維層への進入を分別することができない、エンボスロールでの熱圧着で一体化した不織布のエンボス部分は、進入指数の測定、算出からは除く。一般に微細繊維の進入のない部分の微細繊維層(M)と長繊維層との界面は明確に特定することができないので、長繊維層を構成する2つの隣接する2つの長繊維(S11、S12;S12、S13;……S15、S16;……)の間の微細繊維層を含んでいる2つの長繊維の組み合わせを抽出する。但し、抽出した各組2つの長繊維の間の距離は長繊維の直径の三倍を超えないものとする。抽出した各組2つの長繊維の接線を捕集面とは反対側に引く。
b.この各接線を基準線として、各2長繊維間に進入している微細繊維層の基準線から最も離れている部位までの距離を求めこれを進入深さ(d、d、d、……d15)(図1参照。1断面あたり15組抽出して、各組の進入深さを測定し、幅方向での平均値を求めて、2つの繊維間における微細繊維の進入深さの平均値(d)(μm)とする。但し、抽出された各2長繊維間に進入している微細繊維の進入深さが、無限大になるのを防ぐ為、抽出した2長繊維のうち、捕集面側から離れている方と不織布の捕集面側の最外部との距離(dc)と進入深さを比較して、進入深さがdcの1.41倍以上になっている場合は、その2長繊維の組み合わせでの進入深さを、dcの1.41倍の値とする。長繊維の直径(D)(μm)は、繊径の測定方法により求める。そして、次式により進入指数を算出(小数点第3位4捨5入)する。
進入指数 = d/D (1)
註:断面観測は、マイクロスコープ観測の方が、電子顕微鏡に比べて、長繊維に多数のメルトブロー微細繊維が絡む接触があっても、抽出されるべき両者の接触部分の観察し易い。
6)結晶化度[%]の測定
試料繊維を約8mg秤量して、サンプルパンに入れ、サンプルシーラーを用いてサンプルを調製する。SIIナノテクノロジー社製DSC210を使用し、以下の条件で測定した(測定雰囲気:窒素ガス50ml/min、昇温速度:10℃/min、測定範囲:25〜300℃)。
ポリエステルは冷結晶化部があるので、以下の式で結晶化度(小数点第2位四捨五入)を求める。
結晶化度%
=(融解部の熱量−冷結晶部の熱量)/完全結晶の熱量
・PET完全結晶の熱量:126.4J/g(“Macromol Physics”Academic Press,New York & Londonm Vol.1,P389(1973))
・PP完全結晶の熱量:165J/g(J.Chem.Phys.Ref.Data,10(4)1981 1051)
・ナイロン6の完全結晶の熱量:190.8J/g(J.Plymer SciA−1,l 2697(1963)
(7)不織布の耐水圧[kPa]の測定
試料不織布の幅両端10cmを除き、布帛の幅20cmあたり18cm×18cm角の試験片を調製し、JIS L1092に準じて測定しその平均値(小数点第3位四捨五入)を算出した。
(8)溶液粘度測定法[ηsp/c]
0.025gのサンプルをオルソクロロフェノール(OCP)25mlに溶解する。90℃に加温して(溶けなければ120℃)溶かす。測定温度は、35℃条件下で、粘度管による測定で行ない次式で計算する。n数3点で、算術平均し、小数点第3位四捨五入で算出する。
ηsp/c=((t−t0)/t0)/c
溶媒通過時間:t0秒、溶液通過時間:t秒、C:1000mlあたりの溶質g
(9)相対粘度測定法[ηrel]
0.025gのサンプルを98%硫酸25mlに常温で溶解する。測定温度は、25℃条件下で、粘度管による測定で行なう。n数3点で、算術平均し、小数点第2位四捨五入で算出する。
ηrel=t/t0
溶媒通過時間:t0秒、溶液通過時間:t秒
【実施例1〜4】
汎用的なポリエチレンテレフタレートをスパンボンド法により、紡糸温度300℃でフィラメントの長繊維群を移動捕集面に向けて押し出し、紡糸速度3500m/分で紡糸し、コロナ帯電で3μC/g程度帯電させて充分な開繊させて、平均繊径13μmフィラメントからなる、5cm変動率15%以下の均一性を目付25g/mの未結合長繊維ウエブを捕集ネット面上で調製した。
一方、ポリエチレンテレフタレート(溶液粘度ηsp/c 0.50)を、紡糸温度300℃、加熱エア温度320℃、吐出エア1000Nm/hr/mの条件下でメルトブロー法により紡糸して、平均繊径1.6μmの極細繊維を目付け10g/mのランダムウエブとして上記形成の長繊維ウエブに向けて直に噴出させる。この際のメルトブローノズルから長繊維ウェブ上面までの距離は、100mmとし、メルトブローノズル直下の捕集面における吸引を0.2kPa、風速約7m/secに設定した。かくして、長繊維集合ウエブ層内への堆積メルトブロー微細繊維の進入が助長された、メルトブロー微細繊維ウエブ/長繊維ウエブ(MW/SW1と略記)を調製した。
メルトブロー微細繊維ウエブ/長繊維ウエブの極細繊維ウエブ面上に、更にポリエチレンテレフタレートの長繊維ウエブを最初に調整した長繊維と同様にして開繊し、直に長繊維ウエブ/メルトブロー微細繊維ウエブ/長繊維ウエブでなる三層積層ウエブ(SW2/MW/SW1)調製し、次いで、SW2/MW/SW1をエンボスロールとフラットロールの間に通して,熱圧着させ、積層層間不織布構造が固定された3積層不織布S/M/S)を得た。熱圧着加工は、エンボスロールは布折り目柄、面積率14.4%であり、ラットロールとの間に、線圧365N/cm一定下に、エンボスロール温度について異なる実施例1〜4の積層不織布を調製した。実施例1〜4の不織布における熱圧着条件不織布の構造及び使用性能に関する諸データを示す。但し、耐毛羽性は補集面側について、測定した。
(比較例1〜4)
ポリエチレンテレフタレート(溶液粘度ηsp/c 0.50)をメルトブロー紡糸条件、紡糸温度300℃、加熱エア温度320℃、吐出ガス量1000Nm/hrの下で、メルトブローノズルから100mmの捕集面に吐出して、平均繊径1.6μmの極細繊維でなる、目付け10g/mの自己接着したメルトブロー極細繊維不織布を得た。
実施例1〜4と同方法、同様条件を用いるスパンボンド法により調製された長繊維ウエブ(SW1)の上面に、上記で調製されたメルトブロー極細繊維不織布を巻き出して、直に重ね、更にこの上に前記第1の長繊維ウエブと同一条件下でスパンボンド法により紡糸されるポリエチレンテレフタレートの連続長繊維をウェビング(SW2)することで、三層積層ウエブ(SW/MW/SW)を調製して、実施例1〜4と同じ条件での熱圧着法を適用して、三層積層不織布を調製した。
比較例1〜4サンプルを採取した。
表1に、比較例1〜4の積層不織布における熱圧着条件と積層不織布の構造及び使用性能に関する諸データを示す。但し、耐毛羽性は補集面側について測定したものである。

表1は、本発明の積層不織布が、比較例1〜4の積層不織布と比べて、毛羽等級が同等レベルに固定された不織布構造をもっていながらも、引張強力について10%以上も著しく向上していることを示している。本発明の積層不織布は、エンボスロール温度が高い、実施例2、比較例4でも、引張強力の向上が見られるので、不織布の機械的物性を損なわずに不織布構造を固定することができる(Fig.4参照)とエンボス部でない部分での補強があることを示しており、まさしく進入の効果による引張強力であることが判る。
【実施例5〜8】
実施例1〜4と同様の条件で調製された三層積層ウエブ(SW2/MW/SW1)に、MDの引裂強力が所定の値となるようエンボス温度を変えて熱圧着処理して、構造の固定された三層不織布を調整した。表2に不織布の使用性能を示す。
(比較例5〜8)
比較例1〜4と同様の条件を用いて調製された三層積層ウエブ(SW/MW/SW)に、MDの引裂強力が所定の値となるようエンボス温度を変えて熱圧着処理して構造の固定された三層不織布を調製した。表2に不織布の使用性能を示す。

表2は、微細繊維のスパンボンド連続長繊維層への進入度が増大すると、微細繊維の連続長繊維との結合、包埋、交絡等による不織布構造の固定点を不織布内部おいても増加させるので、不織布強力が同等であっても、不織布の引裂強力を高めることを示している。
フィルターとして使用される際積層不織布は、加熱変形時や流体通過時の不織布内部微細繊維構造の網目構造が変形しにくいことが重要である。本発明の積層不織布では、連続繊維層の断面に多数のメルトブロー極細繊維が進入する構造を形成することで引張強力が高まり、それに応じてモジュラスが高まる事、引裂強力が高まる事から不織布内部の微細繊維構造の網目構造が変形しにくいものにしていることが判る。
【実施例9】
実施例3を、フッ素系撥水剤を純分で1%塗布して充分に乾燥した。耐水圧を測定した結果を表3に示す。
(比較例9)
比較例3をフッ素系撥水剤を純分で1%塗布して充分に乾燥した。耐水圧を測定した結果を表3に示す。

表3は、本発明が上述するように、メルトブローが進入することにより微細繊維構造の網目構造が補強されているかを見るために変形を有する測定法である耐水圧の評価を行った結果を示す。本発明は、耐水圧が向上することから、良好なフィルター、バリア効果を示すことが判る。
【実施例10】
実施例1〜4と同様の条件で調整された三層積層ウェブ(SW2/MW/SW1)に、フラットロールによる加熱加圧処理を行ない一体化させる。線圧は、270N/cmで、耐毛羽性をフラットロール温度にて調整して実施例10を採取した。表4に不織布の構造及び使用性能のデータを示す。
(比較例10)
比較例1〜4と同様の条件で調整された三層積層ウェブ(SW/MW/SW)に、フラットロールによる加熱加圧処理を行ない一体化させる。線圧は、270N/cmで、耐毛羽性をフラットロール温度にて調整して比較例10を採取した。表4に不織布の構造及び使用性能のデータを示す。
フラットプレスのカレンダ加熱圧着によれば、進入の程度が大きいので、エンボス熱圧着法よりも、引張強力の増加効果が大きい。

(実施例11、12)
汎用的なナイロン6をスパンボンド法により、紡糸温度265℃でフィラメントの長繊維群を移動捕集面に向けて押し出し紡糸し、コロナ帯電で6μc/g程度の帯電をさせて充分な開繊させて平均繊径15μmフィラメントからなる、5cm目付変動率15%以下の均一性の目付け25g/mの未結合ウェブを捕集ネット上で調整した。一方ナイロン6(溶液相対粘度 ηrel:2.1)を用い、公知のメルトブロー法により、紡糸温度270℃、加熱エア320℃、1100nm/hr/mで、平均繊径1.6μで10g/mになるように吐出し、更にナイロン6のスパンボンドウェブを最初のウェブと同様に、25g/mを、メルトブローの上に積層して、三層積層ウェブ(SW2/MW/SW1)を調製し、熱圧着は実施例1〜4と同様のエンボスロールで同様の線圧とした。エンボスロール温度で、耐毛羽性を調整し実施例11を採取した。またライン速度を変えて、全体の目付が40g/mの実施例12を採取した。表5に不織布の構造及び使用性能のデータを示す。
(比較例11、12)
ナイロン6(溶液相対粘度 ηrel:2.1)を用い、公知のメルトブロー法により、紡糸温度270℃、加熱エア320℃、1100nm/hr/mで、メルトブローノズルから100mmの捕集面に吐出し、平均繊径1.6μで目付け10g/m6.7g/mの自己接着したメルトブロー極細繊維不織布を得た。実施例11、12と同方法、同条件を用いるスパンボンド法により調整された長繊維ウェブ(SW)の上に、上記で調整されたメルトブロー極細繊維不織布を巻き出して、直に重ね、更にこの上に前記第一の長繊維ウェブと同一条件下でスパンボンド法により紡糸されるナイロン6の連続長繊維をウェビングすることで、3積層ウェブ(SW/MW/SW)を調整して実施例11、12、と同じ条件での熱圧着を適用して三層積層不織布を調整した。熱圧着は、実施例1〜4と同様のエンボスロールで同様の線圧とした。エンボスロール温度で、耐毛羽性を調整し実施例11を採取した。またライン速度を変えて、上記で調整されたメルトブロー極細繊維不織布6.7g/mを供給して、比較例11と同様にして、比較例12を採取した。表5に不織布の構造及び使用性能のデータを示す。

ナイロン不織布においても、ポリエステル不織布の場合と同様に強力も向上する。ナイロンスパンボンド不織布は、柔軟性に優れ、染色や印刷もでき意匠性の高い、高強力ナイロンSMS積層不織布を調製することが可能であることが確認できた。
【実施例13〜15】
実施例1〜4と同様の条件で調整された三層積層ウェブ(SW2/MW/SW1)に、エンボスロールによる加熱加圧処理を行ない一体化させる。メルトブローの繊径は、加熱エア量で調整し、量は長繊維の紡口ホール数で調整する。メルトブロー層の両側に配置されるスパンボンドウェブの目付は、どちらも同じにする線圧は、365N/cmで、ロール温度は210℃で実施例13〜15を採取した。表6に積層不織布の構造及び使用性能のデータを示す。
【実施例16〜18】
実施例10、11と同様の条件で調整された三層積層ウェブ(SW2/MW/SW1)に、フラットロールによる加熱加圧処理を行ない一体化させる。メルトブロー層の両側に配置されるスパンボンドウェブの目付は、どちらも同じにするメルトブローの繊径は、加熱エア量で調整し、長繊維の目付は紡口ホール数に基いて調整した。線圧は、270N/cmで、ロール温度は210℃で実施例16〜18を採取した。表6に積層不織布の構造及び使用性能のデータを示す。

微細繊維を連続長繊維に進入させ、熱圧着で一体化したものは、メルトブローの繊径、量からみて、通気度は適度な値を示しており、微細繊維構造が無くなるほど、進入により微細繊維のバリア機能が変化しているわけでも、逆に,微細繊維構造がすべて溶けてフィルム状になりフィルター機能がなくなっていない一例である。
(実施例19〜20、比較例13,14)
実施例1〜4と同様の条件で調整された三層積層ウェブ(SW2/MW/SW1)に、エンボスロールによる圧着処理を行ない一体化させる。ただし、ライン速度を調整し総目付けを30g/mにする。線圧は、365N/cmで、ロール温度は210℃で一定とした。メルトブローの結晶化度を、加熱エア量を500〜1500Nm/hr/mで調整して、実施例19〜20、比較例13,14を採取した。ロールの汚れは、30分間運転して、熱圧着をするエンボスロール又はその対となるフラットロールに不織布表面の繊維が引き上げられる程度の汚れがあるか否かで判断する。汚れがなければ“○”あれば“×”と記載する。

結晶化度は、あまり高くても接着強力の低下に影響し、進入の程度にも関係すると思われる。低くしすぎると、メルトブロー微細繊維がエンボス部や、長繊維部の隙間から不織布の表面層に露出すると、熱圧着するロールに、軟化して、接着してしまい、ロール汚れを誘発してしまい、布表面に再付着したり、布表面の糸を引き剥がしたり、ロール取られで安定的な生産ができなくなる。このバランスが重要と考えられる。
発明の産業上の利用可能性
本発明の積層不織布は、メルトブロー微細繊維層を挟み配置される連続長繊維層からなる積層不織布構造を有し、かつ少なくとも一方の連続長繊維層が前記メルトブロー微細繊維を0.36以上の進入指数で含む混和層を有する長繊維層を形成してなる引張り強力等機械物性に優れ、フィルター性、バリア性スパンボンド系積層不織布である。
本発明の積層不織布は、不織構造を形成する微細繊維層による耐久性のあるさまざまなフィルター及びバリア機能を有するスパンボンド系不織布材料であり、対応するスパンボンド不織布に比べて遥かに引張強力にすぐれる不織布材料である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維径が7μm以上で20μm以下の熱可塑性合成長繊維層を上下層とし、繊維径が5μm以下の熱可塑性合成微細繊維の少なくとも1層でなる中間層とし、圧着により一体化された積層不織布において、前記中間層を構成する微細繊維の一部が長繊維層の少なくとも一面に進入指数が0.36以上で進入して、長繊維を結合又は包埋若しくは交絡した混和構造層を有し、積層不織布の目付けが10g以上250g/m以下であり、嵩密度が0.20g/cm以上であることを特徴とする高強力不織布。
【請求項2】
微細繊維の繊維径が3μ以下である請求項1記載の高強力不織布。
【請求項3】
微細繊維が複数集合した層状で長繊維層に進入し、微細繊維の集合が長繊維と結合又は包埋若しくは交絡した構造を有することを特徴とする請求項1〜3記載の高強力不織布。
【請求項4】
該微細繊維の含有率が50wt%以下である請求項1〜3記載のいずれかに記載の高強力不織布
【請求項5】
連続長繊維をなす熱可塑性樹脂が主としてポリエステルまたはその共重合体、もしくはそれらの混合物からなるものであり、微細繊維をなす熱可塑性樹脂が主としてポリエステル系樹脂またはその共重合体、もしくはそれらの混合物からなるものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの請求項に記載の高強力不織布。
【請求項6】
微細繊維をなすポリエステル系樹脂の溶液粘度ηsp/cが0.2〜0.8であることを特徴とする請求項5に記載の不織布。
【請求項7】
連続長繊維をなす熱可塑性樹脂が主としてポリアミド系樹脂またはその共重合体、もしくはそれらの混合物からなるものであり、微細繊維が主としてポリアミド系樹脂またはその共重合体、もしくはそれらの混合物からなるものであることを特徴とする請求項1〜4に記載の高強力不織布。
【請求項8】
メルトブロー細繊維をなすポリアミドの溶液相対粘度ηrelが、1.8〜2.7であることを特徴とした請求項7記載の高強力不織布。
【請求項9】
熱可塑性合成樹脂を用いて少なくとも1層以上の長繊維をコンベアー上に紡糸し、その上に熱可塑性合成樹脂を用いてメルトブロー法で結晶化度が15%以上40%以下であるような微細繊維を少なくとも1層以上吹き付け、その後、熱可塑性合成樹脂をもちいた長繊維を少なくとも1層以上積層し、熱圧着温度が長繊維の融点より−10〜−80℃であり、熱圧着の線圧が100N/cm〜1000N/cmであり、エンボスロールまたはフラットロールを用いた圧着により一体化することを特徴とする高強力不織布の製造方法。
【請求項10】
ポリエステル系樹脂を用いて少なくとも1層以上の長繊維をコンベアー上に紡糸し、その上に溶液粘度ηsp/cが0.2〜0.8であるポリエステル系樹脂を用いてメルトブロー法で結晶化度が15%以上40%以下であるような微細繊維を少なくとも1層以上吹き付け、その後、ポリエステル系樹脂をもちいた長繊維を少なくとも1層以上積層したことを特徴とする請求項9に記載の高強力不織布の製造方法。
【請求項11】
ポリアミド系樹脂を用いて少なくとも1層以上の長繊維をコンベアー上に紡糸し、その上に溶液相対粘度ηrelが1.8〜2.7であるポリアミド系樹脂を用いてメルトブロー法で微細繊維を少なくとも1層以上吹き付け、その後、ポリアミド系樹脂をもちいた長繊維を少なくとも1層以上積層したことを特徴とする請求項9に記載の高強力不織布の製造方法。

【国際公開番号】WO2004/094136
【国際公開日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【発行日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505784(P2005−505784)
【国際出願番号】PCT/JP2004/005785
【国際出願日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】