説明

高強度、高疲労強度の薄鋼帯板と無端状鋼帯及びその製造方法

【課題】本発明の目的は、電子写真式プリンター、複写機、パソコンのプリンターなどにおける駆動力等を伝達する機構のスチールベルト等に適用される動力伝達金属帯に関するものである。C含有量を過共析レベルまで増加させることに加えて、表層硬度、パーライト組織、残留応力を制御したことを特徴とする高強度、高疲労強度の薄鋼帯板とその無端状鋼帯を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.6〜1.3%、Si:0.1〜1.50%、Mn:0.1〜1.5%、Al:0.01%以下、Ti:0.01%以下にそれぞれ規制し、残部Fe及び不可避不純物からなり、引張強度1500MPa以上、伸び2%以上、表層硬度が400HV0.3以上を有する高強度、高疲労強度の薄鋼帯板とその無端状鋼帯である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、複写機、電子写真式プリンター、パソコンのプリンターなどにおける駆動力等を伝達する機構のスチールベルト等に適用される動力伝達金属帯に用いる薄鋼帯板と無端状鋼帯及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機、電子写真プリンター、パソコンのプリンター等の動力伝達部にはスチールベルトが利用されるが、これらの機器の小型化、高速処理化が急速に進行しており、それに従い、駆動部への小型化、薄型ニーズが益々高まっている。そのため、その駆動部に使用されるスチールベルトの厚さをこれまで以上に薄くする必要があり、高強度化が求められている。
【0003】
また、動力伝達部にスチールベルトが使用される場合、スチールベルトの滑りを防止するために、ベルトに張力が付与される。張力付与機構としては、例えば、駆動プリ−と非駆動プリ−の軸間を僅かに広げてテンションを付与する構造、または、駆動プリ−と非駆動プリ−の一方を両手持ちとして、ばね力等により両手持ちのプ−リをベルトに張力を付与される方向に張架する構造、または、駆動プリ−、被駆動プリ−の軸間は固定して、第3の別プ−リを設けて、これをベルトの内面側、外面側に押し当てて、ベルトに張力を付与する構造などがある。
【0004】
複写機、電子写真プリンター、パソコンのプリンター等の印刷効率アップのために、益々、動力は高速回転化しており、滑り防止としてスチールベルトに負荷される張力も増加している。そのため、スチールベルトには、高強度化に加えて、曲げ疲労寿命の向上も求められている。
【0005】
以上の背景もあり、スチールベルトには、高強度化に加えて高疲労寿命化のニ−ズが高く、従来は、JISで規定されるばね用ステンレス鋼帯などが適用されており、代表例として加工硬化型オ−ステナイトステンレスであるSUS304、析出硬化型ステンレスであるSUS632J1などが使用されている(非特許文献1、2、特許文献1)。
【0006】
更に、SUS632J1にMoを0.7〜1.2%程度添加し、一層の高強度化と高疲労寿命を兼備する鋼も適用されている(非特許文献2)。また、引張り強さとして、1700〜2400MPaを達成する高強度ステンレスとしてNSSHT−2000がスチールベルトに適用されている事例もある(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−080906号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】JISG4313
【非特許文献2】日新製綱(株)商品カタログ CC01−080107−J
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、前述したステンレス鋼では、何れの成分系でも合金元素が総計で20〜40%は添加されることから抜本的なコスト削減を行うことは困難である。
【0010】
本発明の目的は、電子写真式プリンター、複写機、パソコンのプリンターなどにおけるモーター駆動力等を伝達する機構に用いられるスチールベルト等に適用される動力伝達金属帯に関するものである。
【0011】
C含有量を過共析レベルまで増加させ、若干量の合金元素を加えることに加えて、表層硬度、パーライト組織、残留応力を制御したことを特徴とする高強度、高疲労強度の薄鋼帯板とその無端状鋼帯を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、電子写真式プリンター、複写機、パソコンのプリンターなどにおけるモーター駆動力等を伝達する機構に用いられるスチールベルト等に適用される動力伝達金属帯に於いて、C含有量を過共析レベルまで増加させ、若干量の合金元素を加えることに加えて、表層硬度、パーライト組織、残留応力などを制御すること等により薄鋼帯板とその無端状鋼帯の高強度化、高疲労強度化達成できることを見出した。
【0013】
即ち本発明は、質量%で、C:0.6〜1.3%、Si:0.1〜1.50%、Mn:0.1〜2.0%、Al:0.01%以下、Ti:0.01%以下、窒素(N)及び酸素(O)含有量が何れも20〜40ppm(質量基準)にそれぞれ規制し、残部Fe及び不可避不純物からなり、引張強度1500MPa以上、伸び2%以上、表層硬度が400HV0.3以上を有する高強度、高疲労強度の薄鋼帯板とその無端状鋼帯である。
【0014】
本発明に於いては、上記の組成に加えて、更に質量ppmで、ホウ素(B)含有量が4〜30ppmであり、固溶ホウ素(B)が3ppm以上含有することができる。
【0015】
本発明に於いては、上記の2つの組成に加えて質量%で、Cr:0.01〜1.0%、Nb:0.01〜0.20%、Co:0.01〜1.0%、V:0.01〜0.50%、Cu:0.01〜0.20%、Mo:0.01〜0.50%、Ni:0.01〜0.50%、W:0.01〜0.20%からなる群から選択される少なくとも1種以上を含有することができる。
【0016】
また、本発明に於いては、パーライト分率が、80%以上で、残部は、ベーナイト、擬似パーライト、粒界フェライト、初析セメンタイト、球状セメンタイトであることを特徴とする高強度、高疲労強度の薄鋼帯板とその無端状鋼帯である。
【0017】
また、本発明に於いては、質量%で、窒素(N)及び酸素(O)含有量が何れも20〜40ppmに規定し、パーライトブッロクサイズ(PBSと称す)が20μm以下であることを特徴とする高強度、高疲労強度を有する高炭素鋼帯とその無端状鋼帯である。
【0018】
また、表面に圧縮残留応力を付与されていることを特徴とする高強度、高疲労強度の薄鋼帯板とその無端状鋼帯である。
【0019】
また、本発明の無端状鋼帯製造工程は、薄鋼帯板の端部同士を溶接してリング状のドラムを形成する工程と、溶接後のドラムに対して熱処理する工程と、熱処理したドラムを所定幅に栽断してリングを形成し、当該リングを圧延する工程を備えるが、溶接後ドラムに対する熱処理として、溶接後の溶接部位温度が720℃〜Ms点の範囲にある間に、720℃〜1500℃に加熱し、熔体化処理行った後に、冷速10℃/s以上でTTT線図のノーズ温度±30℃温度範囲に冷却した後に、その温度で恒温変態処理行うことを特徴とする。
【0020】
また、本発明の無端状鋼帯製造工程に於いて、リング圧延工程の後に、窒化処理、スキンパス圧延、矯正加工、ショットピ−ニング処理を少なくとも1種類以上の処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の高強度、高疲労強度を有する高炭素鋼帯は、従来のスチールベルトの適用されていた高強度ステンレス鋼などに比較して同等以上の引張強さ、延性、疲労特性を大幅なコスト低減をもって達成することができるものであり、工業上、経済上、顕著な効果をもつことが期待される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、溶接部を有する高強度、高疲労強度の無端状鋼帯、又は、高強度、高疲労強度の薄鋼帯板、若しくは無端状鋼帯の製造方法である。
【0023】
本発明の溶接部を有する無端状鋼帯における母材部と溶接部、及び、薄鋼帯板においては、引張強度1500MPa以上、伸び2%以上、表層硬度が400HV0.3以上を有する。下記成分を含有するとともに、引張強度と伸びを上記本発明範囲内とすることにより、無端状鋼帯においては母材部と溶接部のいずれについても、従来の高強度ステンレス鋼(Mo添加SUS632J1)である0.042%C−1.53%Si−0.30%Mn−7.2%Ni−14.7%Cr−0.39%Ti−0.70%Cu−0.72%Mo鋼と同等以上の疲労強度を実現することが可能となる。また、無端状鋼帯、薄鋼帯板は、主に、ベルト/プーリー機構によりに駆動力を伝達する際に使用されるスチールベルトに適用されるが、そのプーリーの表層は耐摩耗性を向上させるために、侵炭、窒化処理が施されていることが多く、表層硬度は400HV0.3以上である。このことから、スチールベルト耐久性、耐摩耗性の観点からスチールベルトの表層硬度も400HV0.3以上が必要である。
【0024】
以下に、本発明に於ける各元素の作用について述べる。尚、特に記載の無い限り質量%として記す。
【0025】
C:0.6〜1.3%
0.6%未満であると所望の引張強度を安定して得ることができない。1.3%を超えると初析セメンタイトが生成して加工性が劣化し、鋼帯加工中の破断原因となるだけでなく、鋼帯の延性、疲労寿命を劣化させてしまう。
【0026】
Si:0.1〜1.5%
Siは、パーライト中のフェライトを強化させるためと鋼の脱酸のために有効な元素である。しかしながら、Siが0.1%未満では上記の効果が期待できず、一方、Siが1.5%を超えると鋼帯の疲労強度を劣化させる有害な硬質のSiO2系介在物が発生しやすくなる。このため、Siを0.1〜1.50%の範囲に制限した。
【0027】
Mn:0.1〜2.0%
Mnは、脱酸、脱硫のために必要であるばかりでなく、鋼の焼入性を向上させ熱処理後の鋼帯の引張強度を高めるために有効な元素である。しかしながら、Mnが0.1%未満では上記の効果が得られず、一方、Mnが2.0%を超えるとMn偏析が生じやすく鋼帯の加工性が劣化し、鋼帯加工中の破断原因となるだけでなく、鋼帯の延性、疲労寿命を劣化させてしまう。このため、Mnを0.1〜2.0%の範囲に限定した。
【0028】
Al:0.01%以下
Alの含有量は、鋼帯の疲労強度を劣化させる硬質非変形のアルミナ系非金属介在物が発生しやすくなる。このため、0.01%以下に制限した。0.01%未満のAlは脱酸剤として寄与する。尚、下限としては、不可避的に混入する0.001%とする。
【0029】
Ti:0.01%以下
Tiの含有量は、鋼帯の疲労強度を劣化させる硬質非変形のTi酸化物系、Ti炭窒化物系、Ti炭化物系非金属介在物が発生しやすくなる。このため、0.01%以下に制限した。0.01%未満のTiは脱酸剤として寄与する。尚、下限としては、不可避的に混入する0.001%とする。
【0030】
なお、不純物であるPとSは特に規定しないが、従来の鋼と同様に延性を確保する観点から、各々0.02%以下とすることが望ましい。
【0031】
本発明に用いられる鋼帯は上記元素を基本成分とするものであるが、更に強度、延性、疲労寿命等の機械的特性の向上を目的として、以下の様な選択的許容添加元素を1種または2種以上、積極的に含有してもよい。
【0032】
B:4〜30ppm
Bは、含有量が4〜30ppmであり、このうち固溶B含有量は3ppm以上である。Bは熱処理前に固溶状態で存在すれば、非パーライト組織の析出を抑制する。固溶B含有量が3ppm未満であると、この効果は不十分である。また、B含有量を4ppm以上とすれば、固溶Bとして3ppmを確保できる。逆に含有量が4ppm未満では、固溶B含有量を3ppm以上にすることは困難である。一方、Bは含有量30ppmを超えると粗大なFe3(CB)6炭化物を生成し、鋼帯の疲労寿命を劣化させる。Bが4〜30ppmで、Nが20〜40ppm含有すると適度に上記窒化物を生成する上でも好ましい。
【0033】
Cr:0.01〜1.00%
Crは、パーライトのラメラー間隔を微細化し、熱処理後の引張強度を高めるとともに、特に冷間加工硬化率を向上させる有効な元素である。しかしながら、Crが0.01%未満では効果が小さく、一方、Crが1.00%を超えると熱処理時のパーライト変態終了時間が長くなり生産性が低下してしまう。このため、Crは0.01〜1.00%の範囲とすることが好ましい。
【0034】
Nb:0.01〜0.200%
Nbは、パーライトのラメラー間隔を微細化し、パテンティング処理後の引張強度を高める効果があり、更に熱処理時のオーステナイト粒の細粒化効果を有する。しかしながら、Nbが0.01%未満ではその効果が小さく、一方、Nbが0.200%を超えて添加されてもその効果が飽和してしまう。このため、Nbは0.01〜0.200%の範囲とすることが好ましい。
【0035】
Co:0.01〜1.00%
Coは、熱間圧延材及び熱処理処理後の鋼帯の冷間加工性を高める作用がある。しかしながら、Coが0.01%未満ではその効果が小さく、一方、Coが1.00%を超えても添加量に見合う効果が発揮できない。このため、Coは0.01〜1.00%の範囲とすることが好ましい。
【0036】
V:0.01〜0.50%
Vは、パーライトのラメラー間隔を微細化し、熱処理後の引張強度を高める効果がある。しかしながら、この効果はVが0.01%未満ではその効果が小さく、一方、Vが0.50%を超えるとその効果が飽和してしまう。このため、Vは0.01〜0.50%の範囲とすることが好ましい。
【0037】
Cu:0.01〜0.2%
Cuは、鋼帯の耐食性を高める効果がある。この様な作用を有効に発揮させるには0.01%以上の添加が好ましい。しかし過剰に添加すると、Sと反応して粒界中にCuSを偏析するため、鋼帯製造過程で鋼塊や鋼帯などに疵を発生させる。この様な悪影響を防止するために、その上限を0.2%とした。
【0038】
Mo:0.01〜0.50%
Moは、焼入性向上効果により、熱処理時の強度を増加させる効果がある。しかしながら、Moが0.01%未満ではその効果が小さく、一方、Moが0.50%を超えても熱間圧延後の組織に冷間加工性を劣化させるベイナイト発生しやすくなる。このため、Moは0.01〜0.50%の範囲とすることが好ましい。
【0039】
Ni:0.01〜0.5%
Niは鋼帯の強度上昇にはあまり寄与しないが、鋼帯の靭性を高める元素である。この様な作用を有効に発揮させるには0.01%以上の添加が好ましい。一方、Niを過剰に添加すると変態終了時間が長くなるので、上限値を0.5%とした。
【0040】
W:0.01〜0.2%
Wは、鋼帯の耐食性を高める効果がある。この様な作用を有効に発揮させるには0.01%以上の添加が好ましい。一方、Wを過剰に添加すると変態終了時間が長くなるので、上限値を0.2%とした。
【0041】
本発明の薄鋼帯板、及び溶接部を有する無端状鋼帯においては母材部と溶接部ともに、パーライト分率が80%以上で、残部は、ベーナイト、擬似パーライト、粒界フェライト、初析セメンタイト、球状セメンタイトであると好ましい。鋼帯の組織を、パーライト分率が80面積%以上で、残部は、ベーナイト、擬似パーライト、粒界フェライト、初析セメンタイト、球状セメンタイトに調整することにより、溶接部位の引張強度、延性、疲労寿命などは母材部位と大きな差異がなくなるため、スチールベルトに過共析成分系を適用可能となる。
【0042】
尚、パーライト分率の測定は、スチールベルト用無端状鋼帯の長さ方向に10等分して、10サンプル夫々のC断面を樹脂に埋め込んで切断し、切断面を研磨し、その中心部位をSEM解析により、倍率5000倍で、観察し、パーライトの面積率を10サンプルの平均として求めることができる。
【0043】
本発明の薄鋼帯板、及び溶接部を有する無端状鋼帯においては母材部と溶接部ともに、パーライトブロックサイズ(PBS)を20μm以下に微細化することにより、無端鋼帯の疲労強度を更に向上させることが可能となる。N、O含有量を下記のように規定するとともに後述するように熔体化処理温度を調整することにより、PBSを20ppm以下とすることができる。
【0044】
N:20〜40ppm
窒素(N)含有量は20ppm未満であると、微量に存在するAl、BあるいはTiと窒化物を生成することでオ−ステナイト粒の粗大化防止を通してPBSの粗大化を防止する作用が不十分となり、特に、PBSで20μm以下を達成することが困難となる。一方、40ppmを超えると鋼帯加工中の時効を促進し、延性劣化等を引き起こす。
【0045】
O:20〜40ppm
酸素(O)含有量は、20ppm未満であると、Al、Ti、Si、Mn等と酸化物を生成することでオ−ステナイト粒の粗大化防止を通してPBSの粗大化を防止する作用が不十分となり、特に、PBSで20μm以下を達成することが困難となる。40ppmを超えると、酸化物生成により鋼帯の疲労寿命が低下する。
【0046】
尚、PBSの測定は、スチールベルト用の無端状鋼帯の長さ方向に10等分して、10サンプル夫々のC断面を樹脂に埋め込んで切断し、切断面を研磨し、その中心部位をEBSP解析により、倍率500倍で、方位差9度の界面で囲まれた領域を一つのブロック粒として解析し、10サンプルの平均体積から求めた。
【0047】
PBSを20μm以下に制御した結果、無端状鋼帯として、引張り強さ、延性、疲労寿命等の機械的特性のバラツキ抑制などによる安定化に加えて、表面疵の抑制にも効果がある。
【0048】
本発明の鋼帯を活用したスチールベルト用高強度、高疲労強度無端状鋼帯は、例えば以下の工程で製造される。
【0049】
即ち、転炉出鋼後、二次精錬処理行い溶鋼組成を本発明成分範囲に調整した後に、例えば、連続鋳造法を行い幅250×長さ1500mmの鋳片を製造する。更に鋳片を連続熱間圧延、更に冷間圧延と焼鈍を繰り返し行い、一例として0.5mm厚さの鋼帯とする。
【0050】
その後、0.5mm厚の鋼帯板を所定の長さ、幅に切断後、その両端をTig溶接、プラズマ溶接、あるいはレーザー溶接などにより接合し、ドラム状とする。ドラムに溶接後、溶接部位温度が720℃〜Ms点の範囲にある間に、ドラムを720℃〜1500℃に再加熱し、熔体化処理行う。熔体化処理を行った後に、冷速10℃/s以上でTTT線図のノーズ温度±30℃温度範囲に冷却した後に、その温度で恒温変態処理行う。Ms点温度は、成分含有量から一般的なMs(k)=823−350C%−40Mn%−35V%−20Cr%−17Ni%−10Cu%−10Mo%−10W%+15Co%+30Al%の学会推奨式で推算することができる。TTT線図のノーズ温度は、フォーマスターにより実験的に求めることができる。
【0051】
溶接後の溶接部位温度が低すぎると溶接部に割れが発生し、引張強度が低下して疲労寿命が悪化し、溶接部位温度が高すぎると、次の熱処理工程へ帯板をセットする際に、溶接部の幅、厚みなどの寸法が変動するほど軟化しているため、冷間圧延後の寸法にも大きなバラツキが発生する問題があるが、溶接部位温度が720℃〜Ms点の範囲にあればこれらの問題が発生しない。熔体化処理温度が低すぎると未溶解炭化物が残留し伸びが低下して疲労寿命が悪化し、熔体化処理温度が高すぎるとγ粒径が粗大化し伸びが低下して疲労寿命が低下するが、熔体化処理温度を720℃〜1500℃とすればこれらの問題が発生しない。熔体化処理行った後の冷速が遅すぎると引張強度が低下して疲労寿命が悪化し、恒温変態温度が低すぎると伸びが低下して疲労寿命が悪化し、恒温変態温度が高すぎると伸び、延性が低下して疲労寿命が悪化するが、冷速10℃/s以上でTTT線図のノーズ温度±30℃温度範囲に冷却した後に、その温度で恒温変態処理行うこととすればこれらの問題が発生しない。
【0052】
熱処理後のドラムを所定の幅に切断後に、表面スケール除去、必要により表面被膜処理などを行い、更に一例として0.2mm厚まで冷間圧延する。これにより、母材部と溶接部ともに、引張強度1500MPa以上、伸び2%以上、表層硬度が400HV0.3を有する無端状鋼帯となる。尚、表層硬度は、無端状鋼帯長さ方向の表裏面の溶接部位を含む夫々5か所の硬度を測定し、その平均値とした。
【0053】
上記本発明の製造方法を適用するとともに、鋼中のC含有量を0.77質量%以上とすることにより、鋼帯の組織を、パーライト分率が80%以上で、残部は、ベーナイト、擬似パーライト、粒界フェライト、初析セメンタイト、球状セメンタイトに調整することが可能となり、溶接部位の引張強度、延性、疲労寿命などは母材部位と大きな差異がなくなるため、スチールベルトに過共析成分系を適用可能となる。
【0054】
本発明の薄鋼帯板、及び溶接部を有する無端状鋼帯においては、母材部と溶接部ともにパーライトブロックサイズ(PBS)を20μm以下に微細化するためには、N、O含有量を20〜40質量ppmに調整するとともに、熔体化処理温度を1000℃以下とする。これにより、無端状鋼帯の縦断面の中心部位を代表部位として組織を観察した場合、本発明の範囲に成分が適正に調整され、更に、上述の溶接後の熱処理によりPBSは20μm以下に微細化することが可能となり、無端鋼帯の疲労強度を更に向上させることが可能となる。
【0055】
また、無端状鋼帯の疲労寿命を向上させるためには、表層の圧縮残留応力を高めることが有効であり、冷間圧延後のリングに窒化処理、スキンパス冷間圧延、矯正加工、ショットピ−ニン処理等を少なくとも1種類以上行うことにより、表層の引張り残留応力を低減、圧縮残留応力の導入を図ることが可能となる。窒化処理においては、冷間圧延後無端状鋼帯の引張強度を低下させないことが条件であり、一般的なイオン窒化処理を適用すると好ましい。
【0056】
また、連続鋳造で鋳片を製造する際に、例えば、400×500mmの断面に鋳造して、その後、加熱炉で約1000℃に加熱後に、熱間連続圧延により165角断面の鋼片とする。その鋼片を更に加熱炉で約1000℃に加熱後に熱間連続圧延で例えば線径5.5mmの線材に圧延する。
【0057】
その線径5.5mmの線材を酸洗い等により表面のスケールを除去後に、必要により潤滑被膜処理して、例えば冷間でダイス伸線して、線径3.0mmの伸線ワイヤに仕上げ、その後、熱処理と異形ダイス、ローラー圧延機、カセットローラーダイスなどによる冷間加工を繰り返し行い、厚さ0.5mmの鋼帯に仕上げた後に、前述と同じ方法で、0.2mm厚さの鋼帯リングを製造することも可能である。
【0058】
本発明に規定した高炭素鋼は、冷間加工性に優れるパーライト組織に調整されているため、より安価製造工程として、線材からの鋼帯を製造可能とするものである。
【0059】
本発明の無端状鋼帯は、高い引張強度、高い疲労寿命を有し、更に溶接方法の適正化により容易に無端状鋼帯とすることも可能であることから、例えば、電子写真式プリンター、複写機、パソコンのプリンターなどにおける駆動力等を伝達する機構に用いられるスチールベルト等に適用することが有効である。
【0060】
本発明の薄鋼帯板の製造方法について説明する。本発明範囲の成分を含有する薄鋼帯板を熱間及び冷間圧延して製造した薄板コイルを裁断して、更に冷間加工して規定幅、厚の薄板を製造する。上記工程では規定した仕上がりの強度、伸びが確保できない場合には、加工途中に熱処理を加える。熱処理は、室温以上から720℃〜1500℃に加熱し、熔体化処理行った後に、冷速10℃/s以上でTTT線図のノ−ズ温度±30℃温度範囲に冷却した後に、その温度で恒温変態処理を行う。鋼帯の組織を、パーライト分率が80%以上とする製造方法、PBSを20μm以下に微細化する製造方法については、上記無端状鋼帯の製造方法と同様である。
【実施例】
【0061】
以下の実施例で本発明の詳細を説明する。前述した様に薄板、または線材から熱間加工により製造した0.35mm厚さの鋼帯を準備した。更にこの鋼帯を溶接し、溶接部の温度が熱処理前溶接部温度まで低下した時点で再加熱し、熔体化処理を行い、所定の冷速で冷却した後に恒温変態処理を行い、冷間圧延し、厚さ0.2mmに調整した無端状鋼帯とした。この無端状鋼帯に於いて、引張強度、伸び、パーライト分率、PBS、表層硬度、残留応力及び疲労寿命を調査した。結果を表1、2に示した。
【0062】
尚、疲労試験は、スチールベルトが使用される条件下では、無端状鋼帯には曲げ応力が負荷されることを考慮して、溶接部位を含む試験片の繰り返し曲げ疲労試験にて評価を実施した。平均応力が540MPa、最大応力が1020MPaで繰り返し曲げ応力を付与した場合の疲労寿命を計測した。
【0063】
本発明の無端状鋼帯が高強度でかつ高疲労寿命を有することを評価するために、比較例14に示した従来の高強度ステンレス鋼(Mo添加SUS632J1)である0.042%C−1.53%Si−0.30%Mn−7.2%Ni−14.7%Cr−0.39%Ti−0.70%Cu−0.72%Mo鋼と、平均応力が540MPa、最大応力が1020MPaで繰り返し曲げ応力を付与した場合の疲労寿命で比較評価した。
【0064】
表1の本発明例1〜7及び比較例8〜13は、1.02%C−0.20%Si−0.30Mn−0.2Cr鋼(Al、Ti無添加、O=32ppm、N=28ppm)である。TTT線図のノーズ温度は575℃である。比較例14とあわせ、溶接後の熱処理条件と0.2mm無端状鋼帯の引張強度、伸び、パーライト分率、PBS、表層硬度、及び疲労試験結果を示す。本発明範囲から外れる数値にアンダーラインを付している。表3、4も同様である。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
溶接後の熱処理が本発明の範囲内であれば、溶接部を含む無端状鋼帯の特性、組織は発明の範囲に制御され、従来の高強度ステンレス鋼である0.086%C−2.63%Si−0.31%Mn−8.25%Ni−13.73%C−2.24%Mo−0.17%Cu鋼を上回る疲労寿命を発現する。特に、本発明例4〜7は、熔体化処理温度を1000℃以下とすることによってPBSを20μm以下の制御したことから、更に疲労寿命が向上することが分かる。
【0068】
尚、比較例8は、溶接部位の温度が低過ぎて、溶接部に割れ発生し、TSが1500MPaを下回り、疲労寿命も悪化する。比較例9は、熔体化温度が高過ぎ、γ粒径が粗大化し、パーライト分率も低下、伸びが2%を下回り、疲労寿命が悪化する。比較例10は、熔体化温度が低過ぎ、未溶解炭化物が残留し、パーライト分率も低下、TSが1500MPaを下回り、疲労寿命が悪化する。比較例11は、熔体化処理後の冷速が遅すぎ、パーライトが粗大化し、TSが1500MPaを下回り、疲労寿命も悪化する。比較例12は、恒温変態温度が高過ぎ、パーライトが粗大化し、TSが1500MPaを下回り、疲労寿命も悪化する。比較例13は、恒温変態温度が低過ぎ、パーライト分率が低下し、伸びが2%を下回り、疲労寿命が悪化する。
【0069】
更に、表2には、表層の残留応力制御の効果を確認するために、表1のNo.4の無端状鋼帯に於いて、リング圧延工程の後に、窒化処理、スキンパス圧延、矯正加工、ショットピ−ニング処理を実施し、その結果を示した。比較のため、表1の比較例14の特性も示している。引張りの残留応力を低減する、または圧縮に制御することにより、疲労寿命が大きく改善することが分かる。尚、表2内の各工程に付与された番号は、圧延工程後に実施される工程の順番を示している。
【0070】
表3に、種々の化学組成で製造した0.5mm厚さの鋼帯の両端をTig溶接により接合してドラム状とし、ドラムに溶接後、溶接部位温度が500℃に保ちドラムを加熱炉に装入し、1000℃に再加熱し、熔体化処理行った後に、冷速50℃/sでTTT線図のノーズ温度に冷却した後に、その温度で恒温変態処理を行った。その後、0.20mm厚まで圧延した無端鋼帯板の引張強度、伸び、パーライト分率、PBS、表層硬度、及び疲労寿命を調査した結果を示した。尚、No.25〜54は本発明鋼、No.55〜66は比較鋼である。
【0071】
尚、疲労試験は、スチールベルトが使用される条件下では、無端状鋼帯には曲げ応力が負荷されることを考慮して、溶接部位を含む試験片の繰り返し曲げ疲労試験にて評価を実施した。
【0072】
【表3−1】

【表3−2】

【0073】
本発明の薄鋼帯板とその無端状鋼帯が高強度でかつ高疲労寿命を有することを評価するために、比較例66に示した従来の高強度ステンレス鋼(NSSHT−2000)である0.086%C−2.63%Si−0.31%Mn−8.25%Ni−13.73%Cr−0.17%Cu−0.39%Ti−2.24%Mo−0.70%Cu鋼に平均応力が540MPa、最大応力が1020MPaで繰り返し曲げ応力を付与した場合の疲労寿命で比較評価した。
【0074】
含有成分が本発明の範囲に有れば、本発明の製造方法を適用したこととあいまって、引張り強さ1500MPa以上であり、従来の高強度ステンレス鋼(NSSHT−2000)と比較して高い疲労寿命を達成することができることが分かる。
【0075】
尚、比較例No.55は、C=1.36%と高過ぎて、初析セメンタイトが生成し、伸びも2%を下回り、延性が低い。そのため、疲労特性も悪く、繰り返し曲げ応力を付与した場合に、早期に破断する。比較例No.56は、C=0.52%と低過ぎて、引張強度も1500MPaに到達していない。そのため、疲労特性も悪く、繰り返し曲げ応力を付与した場合に、早期に破断する。比較例No.57は、C=0.48%と低過ぎて、引張強度が1500MPa、硬度も400HV0.3に到達していない。そのため、疲労特性も悪く、繰り返し曲げ応力を付与した場合に、早期に破断する。比較例No.58は、Si=1.7%と高過ぎて、大量のSiO2酸化物が生成。そのため、疲労特性も悪く、繰り返し曲げ応力を付与した場合に、早期に破断する。比較例No.59は、Mn=1.65%と高過ぎて、中心偏析により延性、疲労特性が低下。繰り返し曲げ応力を付与した場合に、早期に破断する。比較例No.60は、Al=0.020%、Ti=0.013%と高過ぎて、大量のアルミナ、チタニア等の介在物が生成。そのため、疲労特性も悪く、繰り返し曲げ応力を付与した場合に、早期に破断する。比較例No.61は、N=48ppmと多過ぎて、時効により延性が低下し、伸びが2%より低下。そのため、疲労特性も悪く、繰り返し曲げ応力を付与した場合に、早期に破断する。比較例No.62は、O=46ppmと高過ぎて、大量の酸化物系介在物が生成。そのため、疲労特性も悪く、繰り返し曲げ応力を付与した場合に、早期に破断する。比較例No.63は、B=35ppmと高過ぎて、粗大なFe3(CB)6炭化物を生成。そのため、疲労特性も悪く、繰り返し曲げ応力を付与した場合に、早期に破断する。比較例No.64は、Cu=0.33%と高過ぎて、表面疵が発生。そのため、疲労特性も悪く、繰り返し曲げ応力を付与した場合に、早期に破断する。比較例No.65は、Moが高過ぎて冷間加工性が劣化し、表面疵が発生した。そのため、疲労特性も悪く、繰り返し曲げ応力を付与した場合に、早期に破断する。
【0076】
次に、薄鋼帯板の実施例について説明する。
【0077】
表4に、種々の化学組成で製造した0.5mm厚さの鋼帯について、1000℃に再加熱し、熔体化処理行った後に、冷速50℃/sでTTT線図のノーズ温度に冷却した後に、その温度で恒温変態処理を行った。その後、0.20mm厚まで圧延した薄鋼帯板の引張強度、伸び、パーライト分率、PBS、表層硬度、及び疲労寿命を調査した結果を示した。尚、No.67〜96は本発明鋼、No.97〜108は比較鋼である。
【0078】
【表4−1】

【表4−2】

【0079】
本発明の薄鋼帯板が高強度でかつ高疲労寿命を有することを評価するために、比較例108に示した従来の高強度ステンレス鋼(NSSHT−2000)である0.086%C−2.63%Si−0.31%Mn−8.25%Ni−13.73%Cr−0.17%Cu−0.39%Ti−2.24%Mo−0.70%Cu鋼に平均応力が540MPa、最大応力が1020MPaで繰り返し曲げ応力を付与した場合の疲労寿命で比較評価した。
【0080】
含有成分が本発明の範囲に有れば、引張り強さ1500MPa以上であり、従来の高強度ステンレス鋼(NSSHT−2000)と比較して高い疲労寿命を達成することができることが分かる。
【0081】
比較例No.97は、Cが高過ぎて、初析セメンタイトが生成し、EL<2%と延性が低く疲労寿命も低下した。比較例No.98は、Cが低過ぎて、TS<1500MPaとなり引張強度が低く、疲労寿命が低下した。比較例No.99は、Cが低過ぎて、引張強度<1500MPa、硬度<400と低く、疲労寿命が低下した。比較例No.100は、Siが高過ぎて、大量のSiO2酸化物が生成し、疲労寿命が低下した。比較例No.101は、Mnが高過ぎて、中心偏析により延性、疲労寿命が低下した。比較例No.102は、Al、Tiが高過ぎて、大量のアルミナ、チタニア等の介在物が生成し、疲労寿命が低下した。比較例No.103は、Nが多過ぎて、時効により延性が低下し、伸びが2%より低下し、疲労寿命も低下した。比較例No.104は、Oが高過ぎて、大量の酸化物系介在物が生成し、疲労寿命が低下した。比較例No.105は、Bが高過ぎて、粗大なFe3(CB)6炭化物を生成し、疲労寿命が低下した。比較例No.106は、Cuが高過ぎて、表面疵が発生し、疲労寿命が低下した。比較例No.107は、Moが高過ぎて、冷間加工性が劣化し、表面疵が発生し、疲労寿命が低下した。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の薄鋼帯板とその無端状鋼帯は、C含有量を0.6〜1.3%まで増加することにより、大幅に添加合金削減が可能となることに加えて、高強度化、高疲労寿命化を達成できることから電子写真式プリンター、複写機、パソコンのプリンターなどの駆動力等を伝達する機構に用いられる動力伝達金属帯への適用に最適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接部を有する無端状鋼帯であって、質量%で、C:0.6〜1.3%、Si:0.1〜1.50%、Mn:0.1〜2.0%、Al:0.01%以下、Ti:0.01%以下にそれぞれ規制し、残部Fe及び不可避不純物からなり、母材部と溶接部ともに、引張強度1500MPa以上、伸び2%以上、表層硬度が400HV0.3以上を有する高強度、高疲労強度の無端状鋼帯。
【請求項2】
さらに質量ppmで、B含有量が4〜30ppmであることを特徴とする請求項1に記載の高強度、高疲労強度の無端状鋼帯。
【請求項3】
さらに質量%で、Cr:0.01〜1.0%、Nb:0.01〜0.20%、Co:0.01〜1.0%、V:0.01〜0.50%、Cu:0.01〜0.20%、Mo:0.01〜0.50%、Ni:0.01〜0.50%、W:0.01〜0.20%からなる群から選択される少なくとも1種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の高強度、高疲労強度の無端状鋼帯。
【請求項4】
母材部と溶接部ともに、パーライト分率が80%以上で、残部は、ベーナイト、擬似パーライト、粒界フェライト、初析セメンタイト、球状セメンタイトであることを特徴とする請求項1及至3の何れかに記載の高強度、高疲労強度の無端状鋼帯。
【請求項5】
質量ppmで、N、O含有量を何れも20〜40ppmに規定し、パーライトブッロクサイズ(PBSと称す)が20μm以下であることを特徴とする請求項1及至4の何れかに記載の高強度、高疲労強度の高疲労強度の無端状鋼帯。
【請求項6】
表面に圧縮残留応力を付与されていることを特徴とする請求項1及至5の何れかに記載の高強度、高疲労強度の無端状鋼帯。
【請求項7】
請求項1及至3の成分の薄鋼帯板の端部同士を溶接してリング状のドラムを形成する工程と、溶接後のドラムに対して熱処理する工程と、熱処理したドラムを所定幅に栽断してリングを形成し、当該リングを圧延する工程を備える無端状鋼帯の製造方法に於いて、溶接後ドラムに対する熱処理として、溶接後の溶接部位温度が720℃〜Ms点の範囲にある間に、720℃〜1500℃に加熱し、熔体化処理行った後に、冷速10℃/s以上でTTT線図のノーズ温度±30℃温度範囲に冷却した後に、その温度で恒温変態処理行うことを特徴とする請求項1及至6の何れかに記載の無端状鋼帯の製造方法。
【請求項8】
リング圧延工程の後に、窒化処理、スキンパス圧延、矯正加工、ショットピ−ニング処理を少なくとも1種類以上の処理を行うことを特徴とする請求項7に記載の無端状鋼帯の製造方法。
【請求項9】
質量%で、C:0.6〜1.3%、Si:0.1〜1.50%、Mn:0.1〜1.5%、Al:0.01%以下、Ti:0.01%以下にそれぞれ規制し、残部Fe及び不可避不純物からなり、引張強度1500MPa以上、伸び2%以上、表層硬度が400HV0.3以上を有する高強度、高疲労強度の薄鋼帯板。
【請求項10】
さらに質量ppmで、B含有量が4〜30ppmであることを特徴とする請求項9に記載の高強度、高疲労強度の薄鋼帯板。
【請求項11】
さらに質量%で、Cr:0.01〜1.0%、Nb:0.01〜0.20%、Co:0.01〜1.0%、V:0.01〜0.50%、Cu:0.01〜0.20%、Mo:0.01〜0.50%、Ni:0.01〜0.50%、W:0.01〜0.20%からなる群から選択される少なくとも1種以上を含有することを特徴とする請求項9又は10に記載の高強度、高疲労強度の薄鋼帯板。
【請求項12】
パーライト分率が、80%以上で、残部は、ベーナイト、擬似パーライト、粒界フェライト、初析セメンタイト、球状セメンタイトであることを特徴とする請求項9及至11の何れかに記載の高強度、高疲労強度の薄鋼帯板。
【請求項13】
質量ppmで、N及びO含有量が何れも20〜40ppmに規定し、パーライトブッロクサイズ(PBSと称す)が20μm以下であることを特徴とする請求項9及至12記載の何れかに記載の高強度、高疲労強度の薄鋼帯板。
【請求項14】
表面に圧縮残留応力を付与されていることを特徴とする請求項9及至13記載の何れかに記載の高強度、高疲労強度の薄鋼帯板。

【公開番号】特開2013−7084(P2013−7084A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139618(P2011−139618)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】