説明

高強度ナイロン56短繊維およびその製造方法

【課題】 優れた耐久性及び耐疲労性を有する高強度ナイロン56短繊維およびそのナイロン56短繊維を安定的に製造する方法を提供する。
【解決手段】 無機粒子を含有しないナイロン56樹脂を溶融紡糸し、油剤を付着させ、引取った後に、延伸し、190℃以上250℃以下の温度で3秒以上20秒以下の定長熱処理を施し、捲縮付与し、非拘束状態で100℃以上160℃以下の温度で15分以上40分以下の熱処理を施し、その後に切断して短繊維とすることにより、乾強度が6.5cN/dtex以上の高強度ナイロン56短繊維を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い強度を有するナイロン56短繊維を安定的に製造する方法に関するものである。更に詳しくは、優れた耐久性及び耐疲労性を発揮できる高強度ナイロン56短繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今の世界レベルでの環境に対する意識の向上に伴い、エネルギー資源や工業原料として石油に依存しきっている現代文明にとって石油資源が将来枯渇してしまう懸念やこの石油資源の大量消費により生じる二酸化炭素などの温室効果ガスによる地球温暖化が大きな問題となっている。
【0003】
従来、汎用プラスチックは石油を主原料として製造され、大量生産される各種日用品や医療分野、工業分野の製品などの原材料となっている。成形・加工が容易に行えることから、使用する目的・用途に合わせた性能を有する樹脂を合成することが可能であり、現代社会で幅広く用いられている。しかし、石油は枯渇資源であり、その問題解決策として非石油由来資源への代替化が大きな課題となっており、汎用合成樹脂の代替品としては植物由来のバイオプラスチックに注目が集まっている。植物を原料とすることにより、バイオプラスチックが分解や燃焼する際に放出される二酸化炭素は、植物が成長過程で光合成によって吸収したCO2を再放出しているものであるため、大気中の二酸化炭素の増減に影響を与えない(カーボンニュートラル)材料で、化石燃料の使用を減らせるため、二酸化炭素の排出を期待できる。
【0004】
このバイオプラスチックの1種として、バイオマス由来の1,5−ジアミノペンタンを重合原料に用いて製造されるナイロン56樹脂があり、繊維等の種々の用途への適用が試みられてきている。
【0005】
ところで、汎用合成繊維の中で大きなマーケットシェアを持つ繊維の一つとしてポリアミド繊維があり、ナイロン6繊維、ナイロン66繊維が代表的である。このポリアミド繊維は、絹や木綿に近いソフトな触感及び風合い、適度な吸湿性による独特のぬめり感を有しており、糸強度が高いことからアウターなどの衣料や、芯地用途、あるいはソファーなどの家具に用いられる人工皮革の基布などの用途に広く用いられている。また、優れた耐熱性、耐薬品性、耐摩耗性などの特長も有しており、抄紙用フェルトや不織布研磨材などの産業資材用途にも広く展開されている。不織布研磨材としては、家庭における食器洗い用や、工業用のバフ磨きパッドなど種々の用途に用いられている。
【0006】
例えば、ポリアミド短繊維を用いて製造される不織布研磨材は、ナイロン6短繊維やナイロン66短繊維からなる不織布に熱硬化性樹脂を付与し、砥粒を接着して製造されるものが知られている(特許文献1、2参照)。
【0007】
かかる不織布研磨材の使用時において、原料となるポリアミド短繊維の強度が低いと、耐久性が悪く、繰り返し使用時にちぎれやすくなり、さらには繊維屑が発生しやすくなるという問題があるため高強度の短繊維が求められている。その他の産業用資材用途においても高強度化された短繊維が要求されるケースが多々ある。
【0008】
かかる高強度ナイロン66フィラメント糸を得る方法としては、2000m/分以上の高速度にて紡糸し延伸する高速製糸延伸法が一般に知られている(特許文献3参照)。
【0009】
ところが、溶融紡糸された未延伸糸をトウにし、延伸、熱処理した後に切断して短繊維を製造する工程においては、高速製糸延伸法などのフィラメント用製糸技術を適用することは、設備投資などの面から工業的に採用することが難しい。特に安価な短繊維(低価格品)が求められる用途においては不適当である。ここでいう短繊維製造工程は、紡糸工程と延伸以降の後処理工程とが分かれていて、未延伸トウを缶内に一旦収納し、後処理工程にて延伸を行うというものが一般的なプロセスである。
【0010】
さらに特許文献3の高速製糸延伸法においては、未延伸糸繊度が15デニールを越える太繊度品においては、口金の単孔吐出量が増大するため、均一な冷却と球晶生成抑制を同時に達成することができず、単糸断面内の冷却速度分布の違いによって配向度の異なった、すなわち強度特性にムラの大きい不均一な繊維となるという問題があった。
【0011】
高強度ナイロン66繊維を得るための他の方法としては、単に延伸倍率を高める方法や多段延伸法が一般的に知られている。しかし、紡糸後に未延伸糸を引き取り缶内に一旦収納し、後処理工程にて延伸を行う短繊維製造工程においては、そのような高強度化方法をとると、ナイロン66特有の球晶生成や膨潤などの影響で、激しい糸切れが生じ安定的に製糸できない。そこで、高強度ナイロン66短繊維の場合には、特許文献4に記載されているように定長熱処理を行うことによって高強度ナイロン66短繊維を製造する方法が提案されている。
【0012】
ところで、前記したナイロン56樹脂からなる繊維は、ナイロン66繊維に比べ紡糸時に球晶が発生しにくく製糸性が良好であるので、高強度化のために延伸倍率を高めたり定長熱処理する方法を適用することができる。しかし、延伸し定長熱処理して得られる繊維の乾熱収縮率は、ナイロン66繊維が2%と低いのに対し、ナイロン56樹脂からなる繊維の場合は4%と高いので、産業用資材用として要求される乾強度水準をナイロン66で達成できてもナイロン56繊維では達成が難しいという問題があった。即ち、乾熱収縮率が高いナイロン56繊維では強度保持率が低いので、乾強度が不十分となる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3245170号公報
【特許文献2】特表平10−505008号公報
【特許文献3】特公平3−23643号公報
【特許文献4】特開2005−240241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、高い強度を有するナイロン56短繊維を安定的に生産でき、優れた耐久性及び耐疲労性を発揮できるナイロン56繊維を製造するための方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するためにナイロン56繊維の製法について検討した結果、次の製造条件を採用することにより、目的を達成できることがわかった。
【0016】
即ち、本発明に係る高強度ナイロン56短繊維の製造方法は、無機粒子を含有しないナイロン56樹脂を溶融紡糸し、油剤を付着させ、引取った後に、延伸し、190℃以上250℃以下の温度で3秒以上20秒以下の定長熱処理を施し、捲縮付与し、非拘束状態で100℃以上160℃以下の温度で15分以上40分以下の熱処理を行い、その後に切断して短繊維とすることにより、乾強度が6.5cN/dtex以上の高強度ナイロン56短繊維を製造することを特徴とするものである。
【0017】
また、無機粒子を含有しないナイロン56樹脂を溶融紡糸し、含水油剤を付着させ、400〜2000m/分で引取った後に、湿式の熱源にて2倍以上に延伸し、190℃以上250℃以下の温度で3秒以上20秒以下の定長熱処理を施し、リラックス倍率0.85〜0.98でリラックス処理を施し、捲縮付与し、非拘束状態で100℃以上160℃以下の温度で15分以上40分以下の熱処理を行い、その後に切断して短繊維とすることにより、乾強度が6.5cN/dtex以上のナイロン56短繊維を製造することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、乾熱処理を施しても収縮が起こり難く、弾性率が高く維持される高強度ナイロン56繊維とすることができる。そして、乾熱処理において収縮し難いことにより初めてナイロン56の優れた特性を活かすことができる。このように、本発明によるナイロン56繊維は、乾熱処理後の弾性率が高く、高強度とすることができ、これらの相乗効果により、耐疲労性にも優れたものとなる。
【0019】
このように、本発明によると、樹脂含浸性に優れ、優れた耐久性を有すると共に耐疲労性にも優れ、強度も良好であるナイロン56短繊維を安定して製造することができる。本発明により得られるナイロン56短繊維は産業資材用、例えば研磨材用として好適なものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のナイロン56短繊維の製法は、ナイロン56樹脂を溶融紡糸し、延伸し、定長熱処理し、短繊維化する方法において、特定条件下で定長熱処理すること、溶融紡糸に供されるナイロン56樹脂は無機粒子を含有しないこと、捲縮処理後に非拘束下で熱処理すること、及び得られる短繊維の乾強度が6.5cN/dtex以上であることを特徴とするものである。
【0021】
本発明におけるナイロン56樹脂は、1,5−ジアミノペンタンとアジピン酸とを主たるモノマ成分として重合されたナイロン樹脂であり、植物由来原料の1,5−ジアミノペンタンを30%以上、好ましくは50%以上含むことが環境適応性の点から好ましい。ナイロン56樹脂は溶融紡糸時の球晶の発生が少ないことから、紡糸及び延伸工程での糸切れが少なく、産業資材用途の繊維として満足する特性が得られ易い。本発明では、無機粒子を含まないナイロン56樹脂を用いることにより無機粒子が核となる球晶発生をさらに低減させることができる。
【0022】
これに対し従来のポリアミド繊維には、その用途により、艶消し剤として酸化チタンが、また耐候剤としてヨウ化銅やヨウ化カリウムが、抗菌性を持たせるために銀系抗菌剤などの無機系添加剤を練り込ませることが多く、この無機粒子が核となり球晶の発生を促進させている。
【0023】
また、産業資材用途の繊維としては優れた耐久性及び耐疲労性が必要であるので、従来から、ポリアミド繊維の中でも特に強度の高いナイロン66繊維が好適に用いられている。しかし、ナイロン66繊維は耐熱性や耐摩耗性に優れる反面、溶融紡糸時において球晶が発生し易いので、高い強度の繊維を安定的に得ることは難しいという問題がある。
【0024】
ところが、本発明においてはナイロン56樹脂を用いることにより、溶融紡糸時の球晶が発生しにくく、且つ優れた耐久性及び耐疲労性が良好な高強度ナイロン短繊維とすることができる。
【0025】
ナイロン56樹脂の重合度は特に限定されるものではないが、紡糸性を良くし、繊維のタフネスを良好にする観点より、98%硫酸相対粘度(ηr)が2.4以上4.3以下であることが好ましい。
【0026】
本発明において前記ナイロン56樹脂を溶融紡糸するには、紡糸口金を用いて溶融したポリマを押し出すが、紡糸生産性の観点より、その紡糸孔数は40個以上3000個以下が好ましい。紡糸され冷却された繊維には含水油剤が付与される。また、紡糸速度(引取り速度)については、400m/分以上2000m/分以下が好ましく、400m/分以上1000m/以下がより好ましい。
【0027】
紡糸の後、湿式の熱源を用い、所定の延伸倍率にて延伸を行うが、その延伸倍率は2倍以上であることが好ましく、3.5倍以上5.5倍以下であることがより好ましい。延伸倍率が低過ぎる場合には繊維の配向結晶化による高強度化が不十分であり、高い強度を要求される用途においては、使用に耐えられる程度の強度が期待できない。一方、延伸倍率が高過ぎる場合、延伸工程において単糸切れが頻発し、ローラー巻き付きが生じることが多くなるため、安定して生産できなくなる。延伸の後、繊維に定長熱処理を施す。この定長熱処理においてナイロン56繊維は熱収縮を起こしやすいが、ナイロン66に比べナイロン56は紡糸時の球晶の発生が少なく、ナイロン66では延伸不可能である高い延伸倍率での延伸を行うことできるので、熱収縮を起こしてもナイロン66よりも高強度とすることができる。
【0028】
延伸後の定長熱処理における処理温度は190℃以上250℃以下であることが必要である。この定長熱処理を行うことにより繊維強度を高めることができる。ナイロン56樹脂の結晶化温度が約210℃であることから上記範囲の温度が高強度化に有効である。190℃未満の熱処理ではポリマを十分に配向結晶化できず、繊維の十分な高強度化が困難である。また、ナイロン56樹脂の融点は約255℃であるので、250℃より高い温度で熱処理すると工程通過中に繊維が溶融して融着する。
【0029】
定長熱処理の手段は、特に限定されるものではないが、熱ドラム方式が好ましい。定長熱処理に使用する全ての熱ドラムの速度を延伸速度と同一にして実施するのが、安定性、確実性の上から好ましい。かかる熱ドラム表面の加熱方法は特に限定されるものではないが、熱媒加熱方式、過熱蒸気方式、飽和蒸気方式、誘導加熱方式など一般に知られる様々な加熱方式を用いることができる。
【0030】
かかる定長熱処理における熱処理時間は3秒以上20秒以内とする。ここでいう熱処理時間とは、繊維と加熱体との接触時間を意味する。熱処理時間を3秒以上とすれば配向結晶化が進むので、乾熱処理後の弾性率を所定水準まで高めることができる。しかし、長時間にわたる定長熱処理を行うと、繊維に与える熱量が過剰となるため繊維自体が熱劣化を起こし、要求される物性を得ることが困難となるばかりでなく、ナイロン56繊維としての特性をも失う。この点からは定長熱処理の時間は短い方がよく20秒以内の熱処理とする。
【0031】
定長熱処理に続いてリラックス倍率0.85〜0.98でリラックス処理することが好ましい。その後に捲縮付与された後、非拘束状態で所定温度、所定時間の熱処理を行う。ナイロン56は、その分子構造上、配向結晶化が起こりにくいため、配向非結晶部が熱により容易に緩和され繊維が収縮してしまう。そこで、熱収縮を低減させるために、熱処理装置内に、捲縮付与後の繊維を非拘束状態で配置して100℃以上160℃以下の温度で15分以上40分以下の熱処理を行い、配向非結晶部を結晶化させ非晶鎖の結束性を更に高める必要がある。熱処理時間が15分より短いと配向非晶部の結晶化が進みきらず、高い強度を得ることができない。また、40分より長いと熱による繊維自体が熱劣化を起こし、要求される特性を得ることが難しい。
【0032】
このように捲縮付与後に非拘束下で熱処理することにより得られた繊維は所定長に切断されて短繊維(原綿)が製造される。
【0033】
本発明においては、生産性の点から、繊維表面の平滑性を良好とし、摩擦による擦過切れを防止するため、紡糸、冷却された繊維を引取る前に油剤を付与する。これ以外に、紡糸、延伸等の製造プロセスにおける少なくとも1ヶ所以上で油剤を付与するのが好ましい。繊維に付与する油剤の油分量は合計で繊維重量に対して0.1重量%以上0.8重量%以下とするのが好ましい。
【0034】
かかる油剤の種類は特に限定されるものではなく、通常のナイロン短繊維用の含水油剤を用いればよい。また油剤の付与方式としては、噴霧方式や油剤浴に繊維を浸すディップ方式などが好ましい。
【0035】
かくして得られるナイロン56短繊維は、高強度、即ち、乾強度が6.5cN/dtex以上を有するものとなる。
【0036】
かかるナイロン56繊維の乾強度は、6.7cN/dtex以上であることが好ましい。乾強度が6.5cN/dtex未満であると、高い強度が求められる産業資材用途に用いた場合、製品の耐久性が悪くなり、実用性に劣るものとなる。なお、ここでいう繊度及び乾強度は、JIS 1015(化学繊維ステープル試験法)に基づいて測定されるものである。
【実施例】
【0037】
単繊維の繊度及び乾強度は、JIS 1015(化学繊維ステープル試験法)に準じて測定した。
【0038】
実施例1
無機粒子を含有しないナイロン56樹脂(98%硫酸相対粘度3.6)のチップを溶融押出機に供給して275℃で溶融し、直径0.3mmの紡糸孔100個の紡糸口金より、380g/分の吐出量で紡出した。紡出糸を冷却し、含水油剤を付与した後、600m/分の紡糸速度で未延伸糸の形態で円柱型の容器内に収納した。
【0039】
こうして得られた未延伸トウを、延伸速度90m/分において、スチームを付与して加温しながら4.8倍の倍率で2段延伸(1段目倍率:4.00倍、2段目倍率:1.20倍)した。
【0040】
延伸の後に、過熱蒸気方式にて表面を230℃に加熱した熱ドラム7本を用いて定長熱処理を行った。すなわち、この7本の熱ドラムは延伸速度と等速の90m/分で回転されており、このドラム表面に延伸トウを巻きつけた。延伸トウと熱ドラムの接触時間は3.9秒であった。定長熱処理に続いてリラックス倍率0.98でリラックス処理を施した。
【0041】
リラックス処理したトウを押込式のクリンパーを通過させて捲縮付与した後に、非拘束状態で熱処理装置内に入れ145℃で20分間の熱処理を行った。その後に38mmの長さに切断することで、単繊維繊度16.8dtexで乾強度6.7cN/dtexのナイロン56短繊維(原綿)を製造した。この原綿を開繊しウエブとした後、絡合させ不織布とし、樹脂付着により砥粒を繊維表面に接着させ、家庭用研磨材を製造した。
【0042】
この家庭用研磨材は適度な堅さ及び触感を有しており、手になじみやすいもので、繰り返し使用しても繊維の破断による劣化及び繊維屑が発生しにくい優れたものであった。
【0043】
比較例1
硫酸相対粘度が3.6のナイロン56樹脂チップに100ppm相当のヨウ化銅を混錬し、溶融紡糸を実施した以外は、全て実施例1と同様の方法でナイロン56短繊維(原綿)を製造した。原綿の単繊維繊度は16.6dtexで、乾強度は6.3cN/dtexであった。
【0044】
この原綿を、実施例1と同様の方法で不織布とし研磨材とした。この研磨材は適度な堅さ、弾性及び触感を有しており、手になじみやすいものであったが、繰り返し使用時に繊維の破断による劣化及び繊維屑が発生しやすいものであった。
【0045】
比較例2
延伸後の定長熱処理温度を175℃にしたこと以外は実施例1と同様でナイロン56短繊維(原綿)を製造した。原綿の単繊維繊度17.4dtex、乾強度5.6cN/dtexであった。
【0046】
この原綿を、実施例1と同様の方法で不織布とし研磨材とした。この研磨材は適度な堅さ、弾性及び触感を有しており、手になじみやすいものの、繰り返し使用時に繊維の破断による劣化及び繊維屑が発生しやすいものであった。
【0047】
比較例3
延伸後の定長熱処理温度を255℃にしたこと以外は実施例1と同様でナイロン56短繊維(原綿)を製造したところ、定長熱処理時に繊維間で融着が発生し、安定的に繊維を得ることが出来なかった。
【0048】
比較例4
捲縮付与後の非拘束下での熱処理を行わずに切断したこと以外は実施例1と同様でナイロン56短繊維(原綿)を製造したところ、原綿の単繊維繊度17.2dtex、乾強度5.8cN/dtexであった。
【0049】
比較例5
捲縮付与後の熱処理時間を10分にしたこと以外は実施例1と同様でナイロン56短繊維(原綿)を製造したところ、原綿の単繊維繊度17.1dtex、乾強度6.0cN/dtexであった。
【0050】
比較例6
捲縮付与後の熱処理時間を45分にしたこと以外は実施例1と同様でナイロン56短繊維(原綿)を製造したところ、原綿の単繊維繊度16.9dtex、乾強度5.8cN/dtexであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粒子を含有しないナイロン56樹脂を溶融紡糸し、油剤を付着させ、引取った後に、延伸し、190℃以上250℃以下の温度で3秒以上20秒以下の定長熱処理を施し、捲縮付与し、非拘束状態で100℃以上160℃以下の温度で15分以上40分以下の熱処理を施し、その後に切断して短繊維とすることにより、乾強度が6.5cN/dtex以上のナイロン56短繊維を製造することを特徴とする高強度ナイロン56短繊維の製造方法。
【請求項2】
無機粒子を含有しないナイロン56樹脂を溶融紡糸し、含水油剤を付着させ、400〜2000m/分で引取った後に、湿式の熱源にて2倍以上に延伸し、190℃以上250℃以下の温度で3秒以上20秒以下の定長熱処理を施し、リラックス倍率0.85〜0.98でリラックス処理を施し、捲縮付与し、非拘束状態で100℃以上160℃以下の温度で15分以上40分以下の熱処理を施し、その後に切断して短繊維とすることにより、乾強度が6.5cN/dtex以上のナイロン56短繊維を製造することを特徴とする高強度ナイロン56短繊維の製造方法。

【公開番号】特開2011−195964(P2011−195964A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60299(P2010−60299)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】