説明

高強度ポーラスコンクリート組成物および高強度ポーラスコンクリート硬化体

【課題】 本発明は、透水係数が0.8cm/sec以上である高強度ポーラスコンクリートを提供する。
【解決手段】 粗骨材、細骨材、水、および、下記の結合材を、少なくとも含む高強度ポーラスコンクリート組成物であって、
水結合材比が10〜20%、モルタル粗骨材空隙比が0.35〜0.95、および、ペースト細骨材空隙比が1.0以上である、高強度ポーラスコンクリート組成物。
結合材:高炉セメント類、BET比表面積が15〜25m/gのポゾラン質微粉末、および、ブレーン比表面積が3000〜12000cm/gの無水石膏からなる混合物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透水係数が高い高強度ポーラスコンクリート組成物と、その硬化体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポーラスコンクリートは、歩道、広場、駐車場などの透水性舗装や、透水性ブロックなどに使用されてきた。そして、透水性コンクリート舗装は、透水性アスファルト舗装と比べ、(i)曲げ強度や圧縮強度が高いため、交通荷重による轍の発生や空隙つぶれが少なく、(ii)保水性が高く雨水の一時貯留性を有しているため、路面の温度上昇を抑える効果に優れ、(iii)供用寿命が数十年と長く、リサイクルが可能なことなどが利点として挙げられる。そして、昨今、温暖化対策や公共構造物の長寿命化が、ますます求められていることから、高透水性かつ高強度という、相反する特性を兼備したポーラスコンクリートは、これらの要望に応えることができる材料として期待されている。
【0003】
かかる状況を受けて、特許文献1には、透水性コンクリート舗装用結合材および透水性コンクリート舗装が提案されている。
すなわち、該結合材は、少なくとも、セメント、ポゾラン質微粉末、粒径が2mm以下の細骨材、減水剤、および、水を含むものである。そして、該結合材を用いて製造した舗装版の曲げ強度は5.5MPaで、透水係数は0.7cm/secである(段落0026)。これに更に繊維を含む舗装版の曲げ強度は7.0MPaで、透水係数は0.65cm/secである(段落0028)。また、更に繊維状粒子等を含む舗装版の曲げ強度は7.5MPaで、透水係数は0.63cm/secである(段落0030)。
【0004】
上記のように、該舗装版の透水係数は、0.63〜0.7cm/secである。この舗装版では、低下した透水性等の機能を回復するためにおこなうメンテナンスの間隔を長くすることができる。しかしながら、メンテナンス中は道路等を閉鎖する必要があることから、メンテナンスの間隔をより延長することができる透水性舗装が求められていた。
また、曲げ強度を高めるために、繊維を該結合材に混合すると、コンクリートの流動性が低下して、舗装作業に時間がかかり、交通解放が大幅に遅れるという問題もあった。
したがって、透水係数が更に高く、繊維を用いない高強度ポーラスコンクリートが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−181009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、前記メンテナンスの間隔をより延長することができ、透水係数が0.8cm/sec以上の高強度ポーラスコンクリートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の範囲の比表面積を有する混和材を含み、特定の範囲のモルタル粗骨材空隙比やペースト細骨材空隙比等を有するポーラスコンクリート硬化体は、透水係数が0.8cm/sec以上と大きいにもかかわらず、強度が十分に高いことを見い出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[8]を提供する。
[1]粗骨材、細骨材、水、および、下記の結合材を、少なくとも含む高強度ポーラスコンクリート組成物であって、
水結合材比が10〜20%、モルタル粗骨材空隙比が0.35〜0.95、および、ペースト細骨材空隙比が1.0以上である、高強度ポーラスコンクリート組成物。
結合材:高炉セメント類、BET比表面積が15〜25m/gのポゾラン質微粉末、および、ブレーン比表面積が3000〜12000cm/gの無水石膏からなる混合物
[2]前記[1]に記載の高炉セメント類が、ポルトランドセメントクリンカ粉末、副材、および、ブレーン比表面積が3000〜12000cm/gの高炉スラグ粉末からなる、高強度ポーラスコンクリート組成物。
[3]前記[2]に記載の高炉セメント類が高炉セメントである、高強度ポーラスコンクリート組成物。
【0009】
[4]前記[1]〜[3]に記載の高強度ポーラスコンクリート組成物を硬化させてなる、高強度ポーラスコンクリート硬化体。
[5]透水係数が0.8〜2.0cm/secである、前記[4]に記載の高強度ポーラスコンクリート硬化体。
[6]曲げ強度が4.5N/mm以上である、前記[4]または[5]に記載の高強度ポーラスコンクリート硬化体。
[7]圧縮強度が20N/mm以上である、前記[4]〜[6]のいずれか1項に記載の高強度ポーラスコンクリート硬化体。
[8]空隙率が15〜28%である、前記[4]〜[7]のいずれか1項に記載の高強度ポーラスコンクリート硬化体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、透水係数が0.8cm/sec以上の高強度ポーラスコンクリート硬化体等を提供することができる。
また、該硬化体は、透水性舗装や透水性ブロックとして用いた場合に、低下した透水性などの機能を回復するためにおこなうメンテナンスの間隔を、大幅に延長することができる。
さらに、該硬化体は、都市型集中豪雨にも、十分、対応することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、上記のとおり、結合材、粗骨材、細骨材、および、水を、少なくとも含む高強度ポーラスコンクリート組成物であって、水結合材比が10〜20%、モルタル粗骨材空隙比が0.35〜0.95、および、ペースト細骨材空隙比が1.0以上である高強度ポーラスコンクリート組成物(以下「組成物」という。)と、これが硬化してなる高強度ポーラスコンクリート硬化体(以下「硬化体」という。)である。
以下に、本発明について詳細に説明する。なお、%は特に示さない限り、質量%である。
【0012】
結合材
結合材は、(A)高炉セメント類、(B)BET比表面積が15〜25m/gのポゾラン質微粉末、および、(C)ブレーン比表面積が3000〜12000cm/gの無水石膏からなる混合物である。なお、以下、ポゾラン質微粉末、および/または、無水石膏を「混和材」という。
次に、前記(A)〜(C)の各成分について説明する。
【0013】
(A)高炉セメント類
本発明で用いる高炉セメント類として、少なくとも、(A1)高炉スラグ粉末、(A2)セメントクリンカ粉末、および、(A3)副材を含む混合物や、高炉セメント(A種、B種およびC種)などが挙げられる。
以下に、前記(A1)〜(A3)の各成分について説明する。
【0014】
(A1)高炉スラグ粉末
前記高炉スラグ粉末は、高炉セメントに由来する高炉スラグ粉末のほか、高炉セメントに由来しない、コンクリートの機能向上等を目的に別途添加する高炉スラグ粉末も含む。該混和材には、JIS A 6206に規定するコンクリート用高炉スラグ微粉末のほか、更にこれらの微粉末を粉砕したものが含まれる。
該高炉スラグ粉末の粉末度は、好ましくは、ブレーン比表面積が3000〜12000cm/gであり、より好ましくは、4000〜10000cm/gである。該比表面積が3000cm/g未満では潜在水硬性が低く、12000cm/gを超えると、粉砕の手間が増大してコスト高になる。
なお、前記高炉スラグ粉末を含め、本発明で用いる粉末を調製するための粉砕手段として、ボールミルやロッドミルなどが使用できる。
【0015】
(A2)セメントクリンカ粉末
本発明で用いるセメントクリンカ粉末として、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、および、耐硫酸塩ポルトランドセメントなどのポルトランドセメントのクリンカ粉末、および、普通エコセメントのクリンカ粉末から選ばれる、少なくとも1種以上が挙げられる。
また、前記セメントクリンカ粉末は、部分的に水和したものも含む。部分的に水和したセメントクリンカを含む結合材は、組成物の流動性が向上するため好ましい。この部分水和の程度は、強熱減量で示せば0.5〜5.0%である。この部分水和は、例えば、セメントクリンカ粉末や、高炉セメントなどのセメント粉末に、水を添加して撹拌し混合するか、または、これらの粉末を相対湿度80%以上の雰囲気下に1週間以上保持する等により行われる。
【0016】
また、セメントクリンカ粉末のブレーン比表面積は、好ましくは、3000〜5000cm/gであり、より好ましくは、3100〜4800cm/gである。
該値が3000cm/g未満では強度発現性が低く、5000cm/gを超えると粉砕に手間がかかりコスト高になる。
前記ポルトランドセメントクリンカ粉末は、好ましくは、CSを45〜80%、および、CAを4〜20%含むものであり、より好ましくは、CSを50〜75質量%、および、CAを5〜15%含むものである。CSの含有率が45〜80質量%、および、CAの含有率が4〜20質量%の範囲を外れると、組成物の強度発現性が低下する場合がある。
【0017】
(A3)副材
本発明において、副材とは、二水石膏、半水石膏、および、石灰石粉末から選ばれる、少なくとも1種以上である。
ここで、前記石膏として、天然二水石膏、排煙脱硫石膏、リン酸石膏、チタン石膏、フッ酸石膏、精錬石膏、および、半水石膏から選ばれる、少なくとも1種以上が挙げられる。
該石膏のブレーン比表面積は、好ましくは、2000〜10000cm/gであり、より好ましくは2500〜8000cm/gである。該値が2000〜10000cm/gの範囲において、組成物の流動性や強度発現性が高くなる傾向がある。
また、前記石灰石粉末は、組成物の流動性や強度発現性を向上させる効果があり、該効果を有効に発揮するためには、石灰石粉末のブレーン比表面積は、好ましくは、2500〜10000cm/gであり、より好ましくは、3000〜10000cm/gであり、さらに好ましくは、4000〜9000cm/gである。
【0018】
前記高炉セメント類の中でも、高炉セメントが好ましく、高炉セメントA種またはB種がより好ましく、強熱減量が1.0%以上(より好ましくは1.3%以上、さらに好ましくは1.5%以上)の高炉セメントがさらに好ましく、強熱減量が1.0%以上(より好ましくは1.3%以上、さらに好ましくは1.5%以上)の高炉セメントA種またはB種が特に好ましい。
【0019】
(B)ポゾラン質微粉末
ポゾラン質微粉末は、単独では水硬性はないが、水酸化カルシウムがあれば、水中で反応して不溶性のゲルを生成し硬化する物質である。
そして、本発明で用いるポゾラン質微粉末として、例えば、シリカフューム、シリカダスト、フライアッシュ、火山灰、シリカゾル、沈降性シリカなどが挙げられる。これらの中でも、シリカフュームやシリカダストは、その平均粒径が1μm以下であって粉砕する必要がないため好適である。
また、該ポゾラン質微粉末のBET比表面積は、通常、15〜25m/gであり、好ましくは17〜23m/g、より好ましくは18〜22m/gである。該比表面積が15〜25m/gの範囲を外れると、透水係数が減少するほか、組成物の打設時の作業性が低下する場合がある。
【0020】
(C)無水石膏
本発明で用いる無水石膏は、天然無水石膏のほか、石膏ボードなどの石膏廃材を加熱処理して得られる再生無水石膏が挙げられる。
また、無水石膏の粉末度は、通常、ブレーン比表面積が3000〜12000cm/gであり、好ましくは4000〜10000cm/gである。該比表面積が3000cm/g未満では、硬化体の強度発現性が低く、12000cm/gを超えると、粉砕の手間が増大してコスト高になる。
【0021】
結合材中の各成分の含有率
本発明に用いる結合材は、上記のとおり、(A1)高炉スラグ粉末、(A2)セメントクリンカ粉末、(A3)副材、(B)ポゾラン質微粉末、および、(C)無水石膏の各成分からなり、前記各成分の含有率は以下のとおりである。
(A1)成分の含有率は、4〜40%が好ましく、6〜30%がより好ましい。該含有率が4〜40%の範囲にあれば、硬化体の長期強度発現性と耐久性が向上する。
(A2)成分の含有率は、40〜90%が好ましく、50〜80%がより好ましい。該含有率が40〜90%の範囲にあれば、硬化体の強度発現性が向上する。
(A3)成分の含有率は、7%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。該含有率が7%を超えると、その分、他の成分が少なくなり、組成物の長期強度発現性が低下する場合がある。
(B)成分の含有率は、1〜30%が好ましく、2〜20%がより好ましい。該含有率が1〜30%の範囲で、硬化体の耐久性が向上する。
(C)成分の含有率は、1〜20%が好ましく、3〜18%がより好ましい。該含有率が1〜20%の範囲で、硬化体の強度発現性が向上する。
【0022】
粗骨材、細骨材および水
本発明で用いる粗骨材は、特に限定されず、例えば、砂利、砕石、スラグ粗骨材、軽量粗骨材など、または、これらの混合物が挙げられる。
また、細骨材は、特に限定されず、例えば、川砂、山砂、陸砂、海砂、砕砂、硅砂、スラグ細骨材、軽量細骨材など、または、これらの混合物が挙げられる
これらの粗骨材や細骨材は、天然骨材のほか再生骨材も用いることができる。
【0023】
本発明で用いる水も、特に限定されず、水道水やスラッジ水などを用いることができる。また、水結合材比(W/b:100×水の質量/結合材の質量)は、通常、10〜20%であり、好ましくは12〜18%である。水結合材比が10%未満では、セメントの水和に必要な水が不足して硬化が不十分になるおそれがある。また、該比が20%を超えると、モルタルによって硬化体中の空隙が埋められて、空隙率が低下するとともに、硬化体の強度が低下する。
また、前記組成物の水結合材比を低くしつつ、所定の流動性を得るために、減水剤、高性能減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤などから選ばれる、少なくとも1種以上を用いることができる。これらの減水剤として、リグニンスルホン酸塩系、ナフタレンスルホン酸塩系、メラミンスルホン酸塩系、および、ポリカルボン酸塩系のものが挙げられる。
なお、本発明の組成物は、他に、収縮低減剤、AE剤、膨張材、顔料、石炭灰などの混和剤(材)を含んでもよい。
【0024】
モルタル粗骨材空隙比
モルタル粗骨材空隙比(Km)は、配合特性を表す指標の一つであって、粗骨材を締め固めた状態における粗骨材間の空隙量に対する、モルタルの体積の比を表し、以下の(1)式により算出することができる。
【0025】
【数1】

(式中、mは単位モルタル体積(m)を表し、Vgはコンクリート1m中の粗骨材の実績率から算出される空隙の体積(m)を表し、gは単位粗骨材体積(m)を表し、Ggは粗骨材の実積率(%)を表す。)
本発明の組成物のモルタル粗骨材空隙比は、通常、0.35〜0.95であり、好ましくは、0.40〜0.90であり、より好ましくは、0.45〜0.85である。該比が0.35未満では、硬化体の空隙率が高すぎて、十分な強度を得ることができない場合があり、0.95を超えると、硬化体の空隙率が低すぎて、所定の透水性を得ることができない場合がある。
【0026】
ペースト細骨材空隙比
ペースト細骨材空隙比(Kp)も、配合特性を表す指標の一つであって、細骨材を締め固めた状態における細骨材間の空隙量に対する、セメントペーストの体積の比を表し、以下の(2)式により算出することができる。
【0027】
【数2】

(式中、pは単位ペースト体積(m)を表し、Vsはコンクリート1m中の細骨材の実績率から算出される空隙の体積(m)を表し、sは単位細骨材体積(m)を表し、Gsは細骨材の実積率(%)を表す。)
本発明の組成物のペースト細骨材空隙比は、通常、1.0以上であり、好ましくは、1.0〜9.0であり、より好ましくは、2.0〜8.0である。該比が1.0未満では、強度発現性が低下し、打設時の作業性も低下する。なお、該比が9.0を超えると、実積率を確保し難く、透水係数が低下するおそれがある。
【0028】
高強度ポーラスコンクリート硬化体
(1)硬化体の透水係数、空隙率、曲げ強度、および、圧縮強度
硬化体の透水係数は、好ましくは、0.8〜2.0cm/secであり、より好ましくは、1.0〜1.8cm/secである。該係数が0.8cm/sec未満では、透水性が十分でなく、2.0cm/secを超えると、強度が低下する場合がある。
【0029】
また、硬化体の空隙率は、好ましくは、15〜28%であり、より好ましくは、18〜25%である。一般に、空隙率と透水係数の間には相関があり、前記透水係数を得るためには、硬化体の空隙率は、15〜28%の範囲が好ましい。
ここで、空隙率の算出方法を、以下の(i)〜(iv)に示す。
(i)内径10cm、高さ20cmの鋼製型枠に、組成物を所定の質量(Wtp)投入し、その上に所定の質量(例えば、4kg)のおもりを載置して振動台に乗せ、振動を加えて締め固める。
(ii)該組成物が硬化した後に脱型し、取り出した硬化体の直径と高さを測定して、硬化体のかさ体積(Vtp)を求める。
(iii)配合に基づき、空気が全くないものとして計算した硬化体の理論体積質量(T)を計算して求める。
(iv)下記(3)式に、上で求めた数値を代入して、空隙率(Vvt)を算出する。
【0030】
【数3】

(式中、Vvtは空隙率(%)を表し、Wtpは測定に用いた組成物の質量(kg)を表し、Vtpは硬化体のかさ体積(m)を表し、Tは硬化体の理論体積質量(kg/m)を表す。)
【0031】
硬化体の曲げ強度は、好ましくは、4.5N/mm以上であり、より好ましくは、5.0N/mm以上である。該強度が4.5N/mm未満では、軽交通用車道に要求される曲げ強度の基準値(4.5N/mm)を満たさない。
また、硬化体の圧縮強度は、好ましくは、20N/mm以上であり、より好ましくは、22N/mm以上である。該強度が20N/mm以上であれば、軽交通用車道に要求される圧縮強度(16N/mm以上)を十分に満たすことができる。
【0032】
(2)硬化体の製造方法
硬化体は、配合物を二軸強制練りミキサーなどで混練した後、該混練物(組成物)を型枠に投入し、敷均し機や加圧振動機などにより締め固めて、製造することができる。なお、透水性舗装のように、早期の強度発現が必要な硬化体の場合は、必要に応じて、加熱養生や蒸気養生などを施してもよい。また、長期に渡る強度発現が必要な場合は、必要に応じて、密閉養生や水中養生などを施してもよい。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
1.使用材料
(1)BET比表面積20m/gのシリカフューム(SF1)
(2)ブレーン比表面積4000cm/gの天然無水石膏
(3)BET比表面積10m/g(平均粒径0.7μm)のシリカフューム(SF2)
(4)高炉セメントB種
強熱減量1.1%、太平洋セメント社製。
以下の成分および組成からなるセメントである。
(i)ブレーン比表面積4500cm/gの高炉スラグ粉末:40%
(ii)ブレーン比表面積3300cm/gの普通ポルトランドセメントクリンカ粉砕物:56%
(iii)ブレーン比表面積4000cm/gの二水・半水石膏:2.2%(SO換算)。ただし、二水石膏/半水石膏=1/1(質量比:SO換算)
【0034】
(5)普通ポルトランドセメント
太平洋セメント社製。
以下の成分および組成からなるセメントである。
(i)ブレーン比表面積3300cm/gの普通ポルトランドセメントクリンカ粉砕物:98%
(ii)ブレーン比表面積4000cm/gの二水・半水石膏:2%(SO換算)。
ただし、二水石膏/半水石膏=1/1(質量比:SO換算)
ちなみに、該セメントの鉱物組成は、CSが63質量%、CSが11質量%、CAが9質量%、CAFが9質量%である。
(6)細骨材
静岡県掛川市産の山砂
(7)粗骨材
茨城県桜川市産の硬質砂岩砕石1305
(8)高性能AE減水剤
商品名:レオビルドSP8HV
(BASFポゾリス社製)
【0035】
2.透水係数等の試験方法
表1に示す結合材の配合と、表2に示すコンクリートの配合に従って調合した配合物を、二軸強制練りミキサーで混練して、組成物(フレッシュコンクリート)を調製した。
次に、前記調製した組成物を用い、透水係数、材齢28日における曲げ強度、および、材齢28日における圧縮強度を、それぞれ、JCI−SPO3、JIS A 1106、および、JIS A 1108に準じて測定した。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
3.空隙率の算出
内径10cm、高さ20cmの鋼製型枠に、前記調製した組成物2.6kgを投入し、その上に4kgのおもりを載置して、振動台に乗せ、振動数3000rpmで、60秒間、振動を加えて締め固めた。次に、該組成物が硬化した後に脱型し、取り出した硬化体の直径と高さを測定して、硬化体のかさ体積を求めた。さらに、表1および表2の配合に基づき、空気が全くないものとして、硬化体の理論体積質量を算出した。さらに、前記組成物の質量(2.6kg)、硬化体のかさ体積、および、硬化体の理論体積質量を、前記(3)式に代入して空隙率を算出した。
以上の全ての結果を表3に示す。
【0039】
【表3】

【0040】
透水係数と空隙率について
表3に示すように、結合材が、シリカフュームのみの混和材および普通ポルトランドセメントからなる比較例1〜3では、透水係数が0.40〜0.65cm/secといずれも低い。
これに対して、結合材が、高炉セメントB種と普通ポルトランドセメントとの混合物、シリカフューム、および、無水石膏からなる実施例1および2では、透水係数が、それぞれ1.28cm/secおよび1.26cm/secであり、いずれも、本発明において目標とする透水係数0.8cm/secを十分に満たすことができ、空隙率も25.0%と高い。
【0041】
曲げ強度と圧縮強度について
表3に示すように、実施例1および2において、曲げ強度が、それぞれ4.60N/mmおよび4.52N/mm、圧縮強度が、それぞれ25.2N/mmおよび20.4N/mmであり、いずれも、軽交通用車道に要求される、曲げ強度4.5N/mm、および、圧縮強度16N/mmよりも高い。
【0042】
4.メンテナンス間隔の評価
表2の実施例1および比較例3のポーラスコンクリート(透水係数測定用の硬化体)のメンテナンス間隔の評価を、下記方法により行った。
(i)硬化体(100×100×200mm)の測定面(200cm)に対して、150gの石灰粉(粒径100μm以下、土や細かい砂を模擬したもの)を均一に広げ、その上に水を1500cm流した。
(ii)前記(i)の操作を、合計で10回繰り返した。
(iii)前記10回繰り返した後の硬化体の透水係数を、JCI−SPO3に準じて測定した。
その結果、実施例1のポーラスコンクリートでは、透水係数は0.80cm/secであり、十分な透水性を維持していた。一方、比較例3のポーラスコンクリートでは、透水係数は0.08cm/secであり、透水性が大きく低下した。
【0043】
上記の結果から、本発明の高強度ポーラスコンクリート硬化体は、透水性舗装や透水性ブロックとして用いた場合に、メンテナンス間隔を大幅に延長できることがわかる。また、透水係数が0.8cm/sec以上と高く、都市型集中豪雨に対しても、十分、対応することができる。
さらに、本発明の高強度ポーラスコンクリート硬化体は、軽交通用車道に使用でき、交通荷重による轍の発生や空隙つぶれがより少なく、供用年数が更に延長できるものと期待される。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の高強度ポーラスコンクリート硬化体は、透水係数が0.8cm/sec以上であるため、透水性舗装や透水性ブロックとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗骨材、細骨材、水、および、下記の結合材を、少なくとも含む高強度ポーラスコンクリート組成物であって、
水結合材比が10〜20%、モルタル粗骨材空隙比が0.35〜0.95、および、ペースト細骨材空隙比が1.0以上である、高強度ポーラスコンクリート組成物。
結合材:高炉セメント類、BET比表面積が15〜25m/gのポゾラン質微粉末、および、ブレーン比表面積が3000〜12000cm/gの無水石膏からなる混合物
【請求項2】
請求項1に記載の高炉セメント類が、ポルトランドセメントクリンカ粉末、副材、および、ブレーン比表面積が3000〜12000cm/gの高炉スラグ粉末からなる、高強度ポーラスコンクリート組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の高炉セメント類が高炉セメントである、高強度ポーラスコンクリート組成物。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の高強度ポーラスコンクリート組成物を硬化させてなる、高強度ポーラスコンクリート硬化体。
【請求項5】
透水係数が0.8〜2.0cm/secである、請求項4に記載の高強度ポーラスコンクリート硬化体。
【請求項6】
曲げ強度が4.5N/mm以上である、請求項4または5に記載の高強度ポーラスコンクリート硬化体。
【請求項7】
圧縮強度が20N/mm以上である、請求項4〜6のいずれか1項に記載の高強度ポーラスコンクリート硬化体。
【請求項8】
空隙率が15〜28%である、請求項4〜7のいずれか1項に記載の高強度ポーラスコンクリート硬化体。

【公開番号】特開2012−193079(P2012−193079A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58922(P2011−58922)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】