説明

高強度モルタル組成物

【課題】常温養生のみで早期に高い圧縮強度を発現できる高強度モルタル組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、セメントと、シリカフュームと、水と、減水剤と、消泡剤と、細骨材と、無機質微粉末と、シリカゲルとを含み、セメントは、CSを40.0〜75.0質量%及びCAを2.7質量%未満含有し、かつ、45μmふるい残分が25.0質量%未満であり、細骨材と無機質微粉末の混合物は、粒径0.15mm以下の粒群を40〜80質量%、かつ、粒径0.075mm以下の粒群を30〜80質量%含有し、無機質微粉末が、石灰石粉、珪石粉及び砕石粉からなる群より選ばれる1種以上の微粉末であり、シリカゲルは、相対湿度80%における平衡含水率が20〜80%、かつ、窒素ガス吸着法で求めた全細孔容積が0.2〜1.5mL/gである高強度モルタル組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高強度モルタル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、構造部材の軽量化、鉄筋使用量の削減などの要求に伴い、200N/mm程度の圧縮強度が得られるような超高強度材料が提案されている。これらの材料では、セメント、ポゾラン質微粉末、骨材及び高性能減水剤が使用されており、熱養生によって超高強度化が図られている。また、これらに金属繊維や有機繊維を添加することによって、高いじん性やひび割れ抑制機能を付与することが提案されている(特許文献1〜3参照)。そして、特許文献2及び3に記載の材料を標準の条件で養生した場合、材齢28日目の圧縮強度が150N/mm程度に留まることがわかっている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−181004号公報
【特許文献2】特開2006−298679号公報
【特許文献3】特開2007−126317号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】超高強度繊維補強コンクリートの強度発現性状に関する実験的検討、コンクリート工学年次論文集、Vol.30、No.1、pp.243−248、2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、既存の技術では、コンクリートの超高強度化を実現するためには、熱養生を必要とする場合が多いため、コンクリートの製造箇所が限定され、製造品の運搬が必要である。また、コンクリート製品の形状や大きさは、材料の流動性、型枠や養生装置の形状等により制約を受けるため、超高強度材料は施工や設計の自由度が制限される。一方、ひび割れ抑制効果を備えた高じん性セメント系材料は、現場施工が可能であるが、強度は通常のコンクリートと同程度しか得られていない。このため、熱養生が不要であり、現場施工が可能な高強度材料が求められている。
【0006】
そこで、本発明は、常温養生のみで早期に高い圧縮強度を発現できる高強度モルタル組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の鉱物組成及び粒度分布を有するセメントと、特定の粒度を有する細骨材及び無機質微粉末と、シリカゲルとを、シリカフューム、減水剤及び消泡剤と組み合わせることで、熱養生しなくともモルタル組成物の強度を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、セメントと、シリカフュームと、水と、減水剤と、消泡剤と、細骨材と、無機質微粉末と、シリカゲルとを含む高強度モルタル組成物であって、セメントは、CSを40.0〜75.0質量%及びCAを2.7質量%未満含有し、かつ、45μmふるい残分が25.0質量%未満であり、細骨材と無機質微粉末の混合物は、粒径0.15mm以下の粒群を40〜80質量%、かつ、粒径0.075mm以下の粒群を30〜80質量%含有し、無機質微粉末が、石灰石粉、珪石粉及び砕石粉からなる群より選ばれる1種以上の微粉末であり、シリカゲルは、相対湿度80%における平衡含水率が20〜80%、かつ、窒素ガス吸着法で求めた全細孔容積が0.2〜1.5mL/gである、高強度モルタル組成物を提供する。このようなモルタル組成物は、常温養生のみで早期に高い圧縮強度を発現することができる。
【0009】
シリカゲルのBET比表面積が300m/g以上であると、モルタル組成物の強度をより向上することができる。
【0010】
無機質微粉末のブレーン比表面積が3000〜5000cm/gであると、高強度モルタル組成物の流動性を向上できる。
【0011】
上記シリカフュームの平均粒子径が0.05〜2.0μmであると、モルタル組成物の強度を更に向上することができる。そして、本発明の高強度モルタル組成物は、セメントを基準として、シリカフュームを3〜30質量%含むことが好ましい。
【0012】
本発明の高強度モルタル組成物は、セメント及びシリカフュームの合計量100質量部に対して、水を10〜25質量部、減水剤を0.5〜6.0質量部含むことが好ましい。これにより、モルタル組成物の強度がより一層向上する。
【0013】
また、本発明の高強度モルタル組成物は、セメント及びシリカフュームの合計量100質量部に対して、細骨材を10〜60質量部、無機質微粉末を10〜60質量部含むことにより、流動性が向上し、施工性に優れるものとなる。
【0014】
さらに、本発明の高強度モルタル組成物セメント及びシリカフュームの合計量100質量部に対して、シリカゲルを、0.1〜10.0質量部含むことにより、常温養生のみで早期に高い圧縮強度を発現できるという本発明の奏する効果をより一層有効かつ確実に発現することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、常温養生のみで早期に高い圧縮強度を発現できるモルタル組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例で用いた消泡剤のH−NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の高強度モルタル組成物は、セメントと、シリカフュームと、水と、減水剤と、消泡剤と、細骨材と、無機質微粉末と、シリカゲルとを含むものである。以下、本発明に係るモルタル組成物の好適な実施形態について説明する。
【0018】
セメントの鉱物組成は、CS量が40.0〜75.0質量%であり、CA量が2.7質量%未満である。セメントのCS量は、好ましくは45.0〜73.0質量%、より好ましくは48.0〜70.0質量%であり、更に好ましくは50.0〜68.0質量%である。CA量は好ましくは2.3質量%未満であり、より好ましくは2.1質量%未満であり、更に好ましくは1.9質量%未満である。CS量が40.0質量%未満では圧縮強度が低くなる傾向があり、75.0質量%を超えるとセメントの焼成自体が困難となる傾向がある。また、CA量が2.7質量%以上では流動性が悪くなる。なお、CA量の下限値は特に限定されないが、0.1質量%程度である。
【0019】
また、セメントのCS量は好ましくは9.5〜40.0質量%、より好ましくは10.0〜35.0質量%であり、更に好ましくは12.0〜30.0質量%である。CAF量は好ましくは9.0〜18.0質量%、より好ましくは10.0〜15.0質量%であり、更に好ましくは11.0〜15.0質量%である。このようなセメントの鉱物組成の範囲であれば、モルタル組成物の高い圧縮強度及び高い流動性を確保できる。
【0020】
また、セメントの粒度は、45μmふるい残分が、上限で25.0質量%未満であり、好ましくは20.0質量%であり、より好ましくは18.0質量%であり、更に好ましくは16.0質量%である。45μmふるい残分の下限は0.0質量%であり、好ましくは1.0質量%であり、より好ましくは2.0質量%である。セメントの粒度がこの範囲であれば、高い圧縮強度を確保でき、また、このセメントを使用して調製したモルタルスラリーは適度な粘性があるため、繊維を添加した場合には、十分な分散性が確保できる。
【0021】
セメントのブレーン比表面積は、好ましくは2500〜4800cm/g、より好ましくは2800〜4000cm/g、更に好ましくは3000〜3600cm/gであり、特に好ましくは3100〜3500cm/gである。セメントのブレーン比表面積が2500cm/g未満ではモルタル組成物の強度が低くなる傾向があり、4800cm/gを超えると低水セメント比での流動性が低下する傾向がある。
【0022】
本実施形態に係るセメントの製造にあたっては、通常のセメントと特に異なる操作を行う必要は無い。上記セメントは、石灰石、珪石、スラグ、石炭灰、建設発生土、高炉ダスト等の原料の調合を目標とする鉱物組成に応じて変え、実機キルンで焼成した後、得られたクリンカーに石膏を加えて所定の粒度に粉砕することによって製造することができる。焼成するキルンには、一般的なNSPキルンやSPキルン等を使用することができ、粉砕には一般的なボールミル等の粉砕機が使用可能である。また、必要に応じて、2種以上のセメントを混合することもできる。
【0023】
シリカフュームは、金属シリコン、フェロシリコン、電融ジルコニア等を製造する際に、発生する排ガス中のダストを集塵して得られる副産物であり、主成分は、アルカリ溶液中で溶解する非晶質のSiOである。シリカフュームの平均粒子径は、好ましくは0.05〜2.0μm、より好ましくは0.10〜1.5μm、更に好ましくは0.18〜0.28μmである。このようなシリカフュームを用いることで、モルタル組成物の高い圧縮強度及び高い流動性を確保できる。
【0024】
本発明の高強度モルタル組成物において、セメントを基準としたシリカフューム含有量は、好ましくは3〜30質量%、より好ましくは5〜20質量%、更に好ましくは10〜18質量%である。また、モルタル1m当たりのシリカフュームの単位量は、好ましくは35〜380kg/m、より好ましくは58〜253kg/m、更に好ましくは116〜228kg/mである。
【0025】
シリカゲルは、珪酸アルカリと鉱酸を酸性条件下で反応させてゲル化した後、乾燥して得られる多孔性の非晶質シリカである。シリカゲルとしては、例えば、JIS Z 0701−1977「包装用シリカゲル乾燥剤」に適合する種類を使用でき、市販品として入手することができる。
【0026】
シリカゲルの相対湿度80%における平衡含水率は、20〜80%であり、好ましくは20〜70%、より好ましくは25〜50%、更に好ましくは25〜40%である。相対湿度80%における平衡含水率が20%未満又は80%を超えると、十分に高い強度が発現し難い。
【0027】
平衡含水率とは、JIS A 1475−2004「建築材料の平衡含水率測定方法」で規定される平衡質量含水率であり、測定は、同規格のチャンバー法による放湿過程の測定手順に準じる。但し、本発明では、測定温度を20℃とし、相対湿度95%以上の雰囲気で平衡させた後に相対湿度80%の平衡含水率を測定するものとする。
【0028】
シリカゲルの窒素ガス吸着法で求めた全細孔容積は、0.2〜1.5mL/gであり、好ましくは0.2〜1.0mL/g、より好ましくは0.3〜0.8mL/g、更に好ましくは0.3〜0.6mL/gである。全細孔容積が1.5mL/gを超える場合、シリカゲルの吸水量が多く、これを添加したモルタル組成物の流動性が低下するほか、セメントの水和に必要な水が不足し、十分に高い強度が発現し難い傾向にある。さらに全細孔容積が0.2mL/g未満では、細孔量が不足し、相対湿度80%における平衡含水率が上記所定の範囲から外れる傾向にある。
【0029】
窒素ガス吸着法で求めた全細孔容積とは、JIS K 1150−1994「シリカゲル試験方法」で規定される窒素吸着等温線から求めた細孔容積である。容量法により測定した吸着等温線について、同規格の試験方法にしたがい相対圧1.0における吸着容積量を求め、これを全細孔容積とする。ここで、吸着容積量は気体窒素の容積値ではなく液体窒素の容積値である。
【0030】
シリカゲルのBET比表面積は、好ましくは300m/g以上、より好ましくは300〜1000m/g、更に好ましくは500〜900m/gであり、特に好ましくは600〜800m/gである。これにより、より良好な強度発現性を得ることができる。
【0031】
BET比表面積は、窒素ガスを用いた容量法により測定した吸着等温線にBET式を適用することで算出される表面積であり、JIS R 1626−1996「ファインセラミックス粉体の気体吸着BET法による比表面積の測定方法」で規定されるBET多点法に従い求められる。
【0032】
シリカゲルの平均粒子径は、好ましくは1.0〜2000μm、より好ましくは1.5〜1500μm、更に好ましくは2.0〜1000μmである。このようなシリカゲルを用いることで、モルタル組成物の高い圧縮強度及び高い流動性を確保できる。
【0033】
本発明の高強度モルタル組成物において、安定した高強度発現性を得るため、シリカゲルの含有量は、セメント及びシリカフュームの合計量100質量部に対して0.1〜10.0質量部であることが好ましい。より好ましい範囲は0.4〜5.0質量部であり、更に好ましくは0.5〜3.0質量部、特に好ましくは0.6〜1.6質量部である。所定のシリカゲルをこの範囲で用いることにより、流動性と高強度発現性のバランスのとれたモルタル組成物を得ることができる。また、モルタル1m当たりのシリカゲルの単位量は、好ましくは1.3〜150kg/m、より好ましくは5.8〜75kg/m、更に好ましくは6.5〜45kg/m、特に好ましくは7.8〜24kg/mである。
【0034】
減水剤としては、リグニン系、ナフタレンスルホン酸系、アミノスルホン酸系、ポリカルボン酸系の減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤等を使用することができる。低水セメント比での流動性確保の観点から、減水剤として、ポリカルボン酸系の減水剤、高性能減水剤又は高性能AE減水剤を用いることが好ましく、ポリカルボン酸系の高性能減水剤を用いることがより好ましい。本実施形態に係るモルタル組成物は、セメントとシリカフュームの合計量100質量部に対して、減水剤を好ましくは0.5〜6.0質量部、より好ましくは1.0〜4.0質量部、更に好ましくは1.8〜3.0質量部である。また、モルタル1m当たりの減水剤の単位量は、好ましくは7〜86kg/m、より好ましくは13〜58kg/m、更に好ましくは18〜43kg/mである。
【0035】
消泡剤としては、特殊非イオン配合型界面活性剤、ポリアルキレン誘導体、疎水性シリカ、ポリエーテル系等が挙げられる。この場合、セメントとシリカフュームの合計量100質量部に対して、消泡剤を好ましくは0.01〜2.0質量部、より好ましくは0.02〜1.5質量部、更に好ましくは0.03〜1.0質量部である。また、モルタル1m当たりの消泡剤の単位量は、好ましくは0.13〜29kg/m、より好ましくは0.26〜22kg/m、更に好ましくは0.39〜15kg/mである。
【0036】
細骨材としては、川砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、石灰石骨材、高炉スラグ細骨材、フェロニッケルスラグ細骨材、銅スラグ細骨材、電気炉酸化スラグ細骨材等を使用することができる。なお、細骨材の粒度は、10mmふるいを全部通り、5mmふるいを85質量%以上通過する。
【0037】
また、無機質微粉末としては、石灰石粉、珪石粉、砕石粉等を使用することができる。無機質微粉末は、石灰石粉、珪石粉、砕石粉等をブレーン比表面積が2500cm/g以上となるまで粉砕又は分級した微粉末であり、細骨材の微粒分を補う目的で配合され、モルタル組成物の流動性を改善することできる。無機質微粉末のブレーン比表面積は3000〜5000cm/gであることが好ましく、3200〜4500cm/gであることがより好ましく、3400〜4300cm/gであることが更に好ましい。
【0038】
本実施形態に係る細骨材と無機質微粉末との混合物は、粒径0.15mm以下の粒群を40〜80質量%、好ましくは45〜80質量%含み、より好ましくは50〜75質量%含む。また、上記混合物は、粒径0.075mm以下の粒群を30〜80質量%、好ましくは35〜70質量%含み、より好ましくは40〜65質量%含む。無機質微粉末の含有量が30質量%以下では、モルタルスラリーの粘性が低すぎるため高張力繊維が十分に分散しない恐れがある。無機質微粉末の含有量が90質量%を超えると、微粉量が多すぎて粘性が高くなり、所定のフローを出すためには水セメント比を増やす必要があるため強度低下に繋がる恐れがある。
【0039】
セメント及びシリカフュームの合計量100質量部に対して、細骨材を10〜60質量部、無機質微粉末を10〜60質量部含むことが好ましく、細骨材を15〜50質量部、無機質微粉末を15〜50質量部含むことがより好ましく、細骨材を15〜30質量部、無機質微粉末を15〜30質量部含むことが更に好ましい。また、モルタル1m当たりの細骨材及び無機質微粉末の単位量は、好ましくは140〜980kg/m、より好ましくは300〜900kg/m、更に好ましくは600〜900kg/mである。
【0040】
また、本実施形態に係るモルタル組成物は、セメントとシリカフュームの合計量100質量部に対して、水を好ましくは10〜25質量部、より好ましくは12〜20質量部、更に好ましくは13〜18質量部含む。モルタル1m当たりの単位水量は、好ましくは180〜280kg/m、より好ましくは190〜270kg/m、更に好ましくは200〜250kg/mである。
【0041】
本実施形態に係るモルタル組成物には、必要に応じて、高張力繊維、膨張材、収縮低減剤、凝結促進剤、凝結遅延剤、増粘剤、ガラス繊維、有機繊維、合成樹脂粉末、ポリマーエマルジョン、ポリマーディスパージョン等を1種以上添加してもよい。
【0042】
さらに、上記本実施形態に係るモルタル組成物に、粗骨材を適量組み合わせることにより、コンクリートを調製してもよい。粗骨材の量や、水の量は、目標圧縮強度、じん性、目標スランプに応じて適時変えればよい。粗骨材としては、砂利、砕石、石灰石骨材、高炉スラグ粗骨材、電気炉酸化スラグ粗骨材等を使用することができる。また、5mmの篩いに85質量%以上とどまる粗骨材がより好ましい。
【0043】
本実施形態に係るモルタル組成物の製造方法は、特に限定されないが、水及び減水剤以外の材料の一部又は全部を予め混合しておき、次に、水、減水剤を添加してミキサに入れて練り混ぜる。モルタルの練混ぜに使用するミキサは特に限定されず、モルタル用ミキサ、二軸強制練りミキサ、パン型ミキサ、グラウトミキサ等を使用することができる。
【0044】
本発明の高強度モルタル組成物は、高強度が求められるPC梁、高耐久性パネル、ブロック耐震壁などに有効である。高張力繊維を添加することによって、橋梁等の鉄筋量を減らすことが可能となる。また、橋梁の補修・補強等にも有効である。
【0045】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0046】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0047】
[使用材料の準備]
実施例及び比較例のモルタル組成物を調製するために、以下に示す材料を準備した。
【0048】
(1)セメント(C)
石灰石、珪石、スラグ、石炭灰、建設発生土、銅ガラミ等の原料を調合し、キルンで焼成した後、石膏を加えて粉砕することにより、ポルトランドセメントを調製した。得られたセメントの化学成分を、JIS R 5202‐2010「セメントの化学分析方法」にしたがい測定し、鉱物組成を下記のボーグ式により算出した。得られたセメントの鉱物組成を表1に示す。
【0049】
S量=(4.07×CaO)−(7.60×SiO)−(6.72×Al)−(1.43×Fe)−(2.85×SO
S量=(2.87×SiO)−(0.754×CS)
A量=(2.65×Al)−(1.69×Fe
AF量=3.04×Fe
【0050】
また、得られたセメントの45μmふるい残分をセメント協会標準試験方法 JCAS K−02「45μm網ふるいによるセメントの粉末度試験方法」に準じて、ブレーン比表面積をJIS R 5201−1997「セメントの物理試験方法」に準じて測定した。結果を表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
(2)シリカフューム(SF):平均粒子径0.24μm
シリカフュームの平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所製、商品名「LA−950V2」)を用いて測定した粒子径分布より、粒子径−通過分積算%曲線を算出し、粒子径−通過分積算%曲線より通過分積算が50体積%となる粒子径を求めた。試料分散媒は0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を用い、測定前に出力600Wのホモジナイザーにて10分間分散処理した。粒度分布の演算はMie散乱理論に従った。粒子屈折率は1.45−0.00i、溶媒屈折率は1.333とした。各粒度の通過分積算(体積%)を表2に示す。
【0053】
【表2】

【0054】
(3)細骨材
砕砂:安山岩砕砂、表乾密度2.62g/cm、粗粒率2.80
(4)無機質微粉末
珪石粉、密度2.63g/cm、ブレーン比表面積3820cm/g
【0055】
上記砕砂及び無機質微粉末の粒度を、JIS A 1102−2006「骨材のふるい分け試験方法」を参考として測定した。次いで、細骨材及び無機質微粉末を混合して所定の粒度になるように調整した。結果を表3に示す。
【0056】
【表3】

【0057】
(5)減水剤:ポリカルボン酸系高性能減水剤(固形分濃度25質量%)
(6)消泡剤:特殊非イオン配合型界面活性剤
図1は、上記消泡剤を重メタノールに溶解し、NMR測定装置(BRUKER製、商品名「AVANCE」)を用いて測定したH−NMRスペクトルである。上記消泡剤の構造単位である、ポリオキシプロピレン(以下、「POP」と略記する)の構造単位、ポリオキシエチレン(以下、「POE」と略記する)の構造単位及びアルキル鎖の構造単位のモル比を、POP中のメチル基に由来するシグナルの積分値を基準に算出した。この内、POPに対するPOEのモル比を、3.5ppm付近に現れるPOPのメチル基以外の炭化水素基に由来するシグナル及びPOEの炭化水素基に由来するシグナルの積分値からPOPのメチル基以外の炭化水素基に由来するシグナルの積分値を差し引くことにより算出した。消泡剤中のPOP、POE及びアルキル鎖の構造単位のモル比を表4に示す。
【0058】
【表4】

【0059】
(7)シリカゲル(SG)
平均粒子径4.0μm、BET比表面積699m/g、全細孔容積0.52mL/g、相対湿度(R.H.)80%における平衡含水率35.7%
(8)練混ぜ水(W):上水道水
【0060】
[モルタル組成物の調製]
モルタル組成物の調製を、表5の配合組成に基づき、以下の通りに行った。
【0061】
セメント、シリカフューム、細骨材、無機質微粉末、シリカゲル及び消泡剤を二軸強制練りミキサに加え、減水剤を含む練混ぜ水をミキサ内に投入して10分間撹拌して、モルタル組成物を調製した。
【0062】
ここで、減水剤の添加量は、モルタル組成物のスランプフローが650mm〜750mmとなるよう調整した。スランプフローは、JIS A 1150−2007「コンクリートのスランプフロー試験方法」に準じ測定した。
【0063】
【表5】


*1:セメント及びシリカフュームの合計量100質量%に対する水の量。
*2:減水剤中の水分は単位水量に含める。
【0064】
[モルタル組成物の評価]
(1)強度試験
JIS A 1132−2006「コンクリートの強度試験用供試体の作り方」に準じて5cm×10cmの円柱供試体を作製し、JIS A 1108−2006「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準じて圧縮強度試験を行った。供試体は試験材齢まで標準養生した。表6に結果を示す。
【0065】
【表6】


*3:セメント及びシリカフュームの合計量100質量%に対するシリカゲルの量。
【0066】
所定の平衡含水率及び全細孔容積を有するシリカゲルを配合した本発明に係る高強度モルタル組成物は、シリカゲルを配合していない比較例1の高強度モルタル組成物に比べ、早期に高い圧縮強度を発現することが確認された。
【0067】
以上のことから、セメントやシリカフュームを配合し、水結合材比が小さい条件で使用されるモルタル組成物に対し、特定の平衡含水率と全細孔容積を有するシリカゲルを配合することで、常温養生のみでも早期に高い強度発現性を示す高強度モルタル組成物を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントと、シリカフュームと、水と、減水剤と、消泡剤と、細骨材と、無機質微粉末と、シリカゲルとを含む高強度モルタル組成物であって、
前記セメントは、CSを40.0〜75.0質量%及びCAを2.7質量%未満含有し、かつ、45μmふるい残分が25.0質量%未満であり、
前記細骨材と無機質微粉末の混合物は、粒径0.15mm以下の粒群を40〜80質量%、かつ、粒径0.075mm以下の粒群を30〜80質量%含有し、
前記無機質微粉末が、石灰石粉、珪石粉及び砕石粉からなる群より選ばれる1種以上の微粉末であり、
前記シリカゲルは、相対湿度80%における平衡含水率が20〜80%、かつ、窒素ガス吸着法で求めた全細孔容積が0.2〜1.5mL/gである、高強度モルタル組成物。
【請求項2】
前記シリカゲルのBET比表面積が300m/g以上である、請求項1記載の高強度モルタル組成物。
【請求項3】
前記無機質微粉末のブレーン比表面積が3000〜5000cm/gである、請求項1又は2に記載の高強度モルタル組成物。
【請求項4】
前記シリカフュームの平均粒子径が0.05〜2.0μmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の高強度モルタル組成物。
【請求項5】
前記セメントを基準として、前記シリカフュームを3〜30質量%含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の高強度モルタル組成物。
【請求項6】
前記セメント及び前記シリカフュームの合計量100質量部に対して、水を10〜25質量部、減水剤を0.5〜6.0質量部含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の高強度モルタル組成物。
【請求項7】
前記セメント及び前記シリカフュームの合計量100質量部に対して、細骨材を10〜60質量部、無機質微粉末を10〜60質量部含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の高強度モルタル組成物。
【請求項8】
前記セメント及び前記シリカフュームの合計量100質量部に対して、前記シリカゲルを、0.1〜10.0質量部含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の高強度モルタル組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2012−171804(P2012−171804A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32120(P2011−32120)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】