説明

高強度薄壁ハニカム

平衡圧力による破壊に対する優れた耐性を有する薄壁セラミックハニカム製品が提供され、ハニカムセルラーマトリックス部分を覆って配置された外皮層は、組成、密度またはセルラーマトリックスに対する外皮層の弾性率を高めるのに効果がある他の物理的パラメータに関してマトリックスの材料とは異なるセラミック材料から形成され、これにより、外皮層に近接したマトリックス領域内の圧力で誘起された剪断歪を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品の耐熱衝撃性を維持しながら、あるいは向上させながら、旧来からのハニカムよりも実質的に優れた平衡(isostatic)強度を示す自動車用の基体すなわちセラミックハニカムの構造およびその製造方法に関するものである。本発明は、パッケージングおよび耐用年数の延長などの目的にとって、より高い平衡強度を有することが重要である、薄壁および超薄壁を有する自動車用基体に適用して特に価値が高いものである。
【背景技術】
【0002】
約20〜125μmの範囲内の厚さを有する薄壁および超薄壁を有するセラミック壁で形成されたセルラーマトリックス部分を備えたセラミックハニカム基体、すなわちハニカムを改良するための種々の方法が提案されて来た。これら方法のうちのいくつかは、部品の周辺近傍にある領域のセルラーマトリックス部分のセル密度を高めること、セルラーマトリックス部分の周辺におけるセル壁すなわちウェブを厚くすること、周辺におけるウェブの交差部を隅肉付けのような手段によって厚くすること、および強度向上コーティングまたは接着剤を用いることにより外皮を厚くまたは強化することを含む。特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4が代表的なものである。
【特許文献1】米国特許第4,233,351号明細書
【特許文献2】米国特許第6,159,431−B1号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開2002−0192426−A1号明細書
【特許文献4】米国特許第5,714,228−B1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらの漸次的な周辺部強化の対策は、平衡強度を高めるのに役立つことが多いとはいうものの、このように改良されたハニカムは、殆どが熱衝撃による破損に耐える能力の低下を招来するものであった。さらに、マトリックスの強化のために過去に提案されたウェブの厚肉化および隅肉付けのプローチは、必然的にハニカムの開放断面積を減少させ、その結果、内燃機関の排気ガス流の処理に用いた場合に、このようなハニカムを含む触媒リアクタにおける排気ガスの圧力低下を増大させるものであった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、外部から圧力が加わった場合に薄壁セラミックハニカム触媒担持基体に発生する剪断圧縮応力の急勾配を緩やかにすることによって強度欠陥に対処するものである。
【0005】
本発明者等の解析によれば、二次元(半径方向)または三次元(半径方向および軸線方向)の平衡圧力が印加されている間、これら基体の外皮とセルラーマトリックス部分との間の境界面において大きな剪断応力勾配が発生することが判明している。これらの圧力に誘発された応力勾配の大きさは、部品のセルラー領域におけるセル間隔に対するセル壁すなわちウェブの厚さの比によって決定され、セル壁の厚さがより薄いとき、および/またはセル間隔がより大きいときにより高い応力が発生する。より進歩した排気規制システムに用いるために現在好ましいとされている、薄壁および超薄壁セラミックハニカム基体は、特にこの応力による破壊に脆さを有する。従来から、400/4、600/3、900/2および900/1基体と呼ばれている基体(最初の数字は1平方インチ(6.45cm)当りのセル密度、2番目の数字は10−3インチ(0.025mm)を単位とするセル壁の厚さを表す)は、圧力による破壊に対する耐性が向上された基体であり、特に有用である。
【0006】
本発明者等の解析によれば、外部から加えられた圧力によって発生する剪断応力勾配は、周辺のウェブ、特にこれらのハニカムの外皮層の表面の直近傍のセル壁を形成するウェブに大きな剪断および撓みを発生させる。このような剪断および撓みは、ハニカムの周辺部のセル壁の引っ張り強度を超える引っ張り応力を周辺部のセルラー領域に発生させる可能性があり、これによって、構造体にひび割れおよび圧縮破壊が生じる。
【0007】
本発明によれば、これらの応力勾配は、外皮の物理的特性および、随意的に外皮の厚さを制御することによって制御される。本発明者等は、与えられたセル壁の厚さとセル間隔の比に対して、印加された圧力により生じた応力勾配が緩やかおよび許容可能になるように外皮の弾性率を選択することができ、これによってハニカムの平衡強度が著しく向上されることを発見した。
【0008】
本発明の一つの実施の形態によれば、ハニカムマトリックスの弾性率に対する外皮の弾性率の比を高めることによって、応力勾配が一義的に緩やかになる。これは例えば、マトリックスを形成する壁の多孔率に対して外皮の多孔率を低下させることによって達成される。多孔率の変更の代わりに、またはそれに加えて、外皮の組成の変更も採用可能である。その実施の形態の実例は、20〜125μmの範囲内の壁厚さを有するセルラーマトリックス部分と、セルラーマトリックス部分を覆って配置された50〜250μmの範囲内の厚さを有するセラミック外皮層とを備えた、平衡応力に対し優れた耐性を示す薄壁セラミックハニカム製品であり、外皮層の組成または多孔率はセルラーマトリックス部分と異なっており、かつ外皮層はマトリックス部分の弾性率よりも高い弾性率を有する。
【0009】
これらのハニカムの外皮層をより厚くした場合にも、圧力で誘起されるコア・外皮応力勾配を緩やかにすることができるが、単に厚さのみを増大させるのは、熱衝撃による破壊に対する部品の脆さを増大させるので採用できない。しかしながら、本発明者等は、外皮がセルラーマトリックスよりも高い弾性率および高い熱膨張係数(CTE)の双方を有するように、外皮の組成および/または多孔率が変更される場合には、熱衝撃サイクルの冷却期間で発生する熱応力を穏やかにすることが可能であり、部品の熱衝撃に対する耐性が受容可能なものになることを発見した。
【0010】
環状のダイを通じてハニカムの外皮が、外皮を持たないかまたは薄い外皮を備えたセルラーコアを覆って同時に押出成形されるハニカム製造工程を採用することを通じて応力勾配を緩やかにすることは、コアおよび外皮における要求された化学的および物理的特性を維持しながら、外皮の組成、厚さおよび多孔性さえも広い範囲に亘って独立して変化させることができるので、外皮の特性を修正するための特に融通性に富む対策である。例えば、熱膨張係数値の緩やかな増大とともに低い多孔率を示す外皮組成を用いると、わずかに厚くされたが実質的に剛性が高められた外皮層を備えたセラミック基体の製造が可能になり、これらの基体は、熱衝撃による破壊の危険性を許容できないほど増大させることなく、圧力によって誘起される応力勾配に対する感受性が著しく低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
平衡強度は、被覆された基体の缶入れ(canning)時に重要な役割を果たす。その値は、壁の多孔率、セル密度、壁の厚さ、隅肉の曲率半径、外皮の厚さ、外皮の組織、外皮とマトリックスとの境界面、および基体の直径に左右される。高セル密度、薄壁および極薄壁を備えた進歩したハニカム触媒基体は、それらの低質量および大表面積に関連した特性上の長所を有するが、それらの平衡強度については顧客の要求仕様を満足させない可能性がある。
【0012】
応力解析の目的で、これらのハニカムのマトリックス領域を横方向に等方性を有する材料として取り扱い、外皮領域を等方性材料として取り扱うのが適切である。印加された圧力の一部は外皮が負い、残りは外皮とマトリックスとの境界面を通じてマトリックスに伝達される。
【0013】
伝達された圧力の三次元弾性解法によれば、上記境界面における剪断歪の等式に基づき、外皮およびマトリックス内の剪断圧縮応力が予測される。印加された圧縮応力の下で、応力の大きさおよび対応する強度値に応じて、外皮またはマトリックスまたは外皮とマトリックスとの境界面のいずれかでハニカムの破壊が始まる。例えば境界面の領域は、外皮内の大きな剪断圧縮応力によって、特に45°の方向に沿ったセル壁の撓みに直面する。このような撓みは引っ張り応力を誘導し、もしこの引っ張り応力の大きさがハニカムを形成するセラミック材料の引っ張り強度を超えると破壊を齎す可能性がある。本発明によれば、外皮の剛性を制御することを通じて外皮の圧縮応力を最少化することによってこれらの撓み応力が低減される。
【0014】
図1は、外皮面、入口面および出口面上に平衡圧力pを受けた自動車のハニカム触媒基体上の力を示す概略図である。図1において、rおよびrはそれぞれマトリックスおよび外皮の半径を表す。印加された圧力pは、pよりも小さい圧力pとしてマトリックスに伝達される。圧力pに等しくかつ反対方向の圧力が、r=rにおいて外皮に印加される。図2は、r=rによって画成された境界面における外皮を通じたマトリックスへの圧力の伝達を示す。両端面上の軸線方向の圧力は一定のpに留まる。図3に示された極座標系で表現されるマトリックスおよび外皮の境界条件は、
【数1】

【0015】
マトリックスは、下記の弾性率およびポアソン比を有する横方向に等方性を有する材料として扱われる。すなわち、
【数2】

【0016】
文献から採った応力と歪の関係は、
【数3】

【0017】
(1)式をεθの式に代入すると、下記の式が得られる。すなわち、
【数4】

【0018】
弾性率E′およびポアソン比ν′を有する等方性材料として外皮を扱うと、応力と歪の関係は、文献から下記の式で与えられる。すなわち、
【数5】

【0019】
(2)式に加えて、r=rにおけるεθsを得るために、我々が必要とする文献から取ったσθsの解は、
【数6】

【0020】
(2)式および(7)式を(6)式のεθの式に代入すると、
【数7】

【0021】
部品強度を高めるために、r=rにおけるマトリックスから外皮領域への半径方向の変位は、εθmとεθsとが等しくなければならないことの意味と等価である。式(5)と式(8)を等しくした結果、pとpとの間の関係が下記のようになる。すなわち、
【数8】

【0022】
ここで、t=r−rは外皮の厚さを表す。角括弧内の量をλで表すと、λ<1と表すことが容易である。他の特殊な場合は(9)式から得られる。すなわち、
【数9】

【0023】
換言すれば、超薄の、または等剛性の外皮が平衡圧力のすべてをマトリックスに伝達する。同様に、外皮が厚くなるのにつれてマトリックスに伝達される圧力は(9)式に従って減少する。(9)式を書き直すと、
【数10】

【0024】
(6)式および(7)式に代入すると、
【数11】

【0025】
同様に、(1)式および(13)式から、

σθm=−λp r=rにおいて ‥‥(15)

現在では、商品として有用な薄壁コージェライトハニカム製品は、tが0.4〜0.6mmの範囲内で、rの値は約40〜50mmの範囲内にある。大部分の用途でのλは0.9程度なので、

σθs/σθm>10

マトリックスと外皮との境界面におけるσθの急勾配は物理的に上記境界面を横切る大規模な剛性変化によるものである。図4は、r=rにおける外皮からマトリックスへの剪断圧縮応力が急勾配であることによるハニカム触媒支持構造内の境界セルの撓みを示す概略図である。このような撓みは、例えば構造体の周囲を巡ってθ=π/4,3π/4,5π/4および7π/4ラジアンにおいて、弾性率比E/E′が最大のときに最も激しい。もしマトリックスまたは外皮が、例えば外皮またはセル壁の厚さの増大、および/またはセルと外皮の境界面における隅肉付けによって、外皮領域の近傍の剛性が高められている場合には、λは1に近付き、したがって、σθs/σθmも1に近付く。
【0026】
文献から、

E=(t/L)E ‥‥(16)

={(1−P)/(1+4P)}E ‥‥(17)

ここで、 tおよびLは、それぞれセル壁の厚さおよびセル間隔を表し、Pは壁の部分多孔率を表し、Eは100GPa(14×10psi)の評価値による密実なコージェライトの弾性率を表す。したがって、マトリックス剛性Eを高めるためにセル壁の厚さtを増大させることは、ハニカムの外皮とコアの境界面における応力勾配σθs/σθmを緩やかにすることになる。
【0027】
外皮の厚さtを増大させても剪断マトリックス応力および歪を低減することができ、これによって、印加された応力下でのセル壁の撓みを低減することができる。図5には、マトリックス剪断応力σθmにおける、増大された外皮の厚さから生じ得るよりも実質的な低減が、4種類の従来のハニカム構造について示されている。図5におけるデータは、下記の表1に報告された4種類の市販のハニカムマトリックス構造(セル間隔Lおよび壁の厚さt)に関して提示されたものである。各ハニカムの形式の一定のセル壁すなわちウェブの厚さ、セル密度および壁の多孔率がその構造のマトリックス弾性率Eを一定にし、したがって、図5に示された剪断応力σθmにおける変動は完全に外皮を厚くすることに左右される。
【表1】

【0028】
残念ながら、外皮のみを厚くしても、あるいは外皮とマトリックスとの境界面におけるセル壁を厚くしても、いずれも常に少なくともハニカムの熱衝撃に対する耐性の低下を招来するので、薄壁セラミックハニカム基体に適用する実行可能な強化策にはならない。したがって、本発明は、外皮の厚さではなく外皮の剛性を高めることによって、外皮とコアの弾性率の比E′/Eを増大させる対策を含んでいる。この対策は、ハニカムの表面に平衡圧力を印加したときに外皮が受ける圧縮歪εθsを実質的に低減させ、これにより、製品の耐熱衝撃特性に悪影響を及ぼすことなしに製品の強度を著しく増大させることができる。
【0029】
上記の表1に報告された数種類のハニカム構造に関する変数を評価することによって、従来のハニカムにおける応力および歪の変数上の高められた外皮剛性の効果を示すことができる。印加された平衡圧力pの単位当りの変数εθs,σθsおよびσθmの計算結果が下記の表2に報告されている。これらの結果は、E′/E比の値を、0.6L/tから約3L/tの範囲に設定しなら、物理的パラメータr=46.5mm、ν=0.07、ν′=0.25およびt/t=4を上記(13)式、(14)式および(15)式に代入することによって得られた。マトリックス剪断応力σθmのデータは図6にプロットされている。これらのデータを検討すると、外皮の弾性率を高めることを通じて外皮対コアの弾性率比を高めると、マトリックス剪断応力σθmが約15%だけ低減される結果、外皮における剪断歪εθsを20%だけ低減させることができる。
【表2】

【0030】
上述の弾性的解法は、三次元平衡圧力の下で発生する外皮とマトリックスの応力および歪の状態に適用可能である。しかしながら、セラミックハニカム触媒基体を金属製のリアクタ容器に缶入れする際に、これらハニカム基体が受ける応力は二次元平衡負荷であることがより一般的である。これらのハニカムの同一の寸法および物理的特性に基づく同様の解析は簡単な仕事であり、これら二次元的解析は、二次元平衡圧力はやはり応力が大きく、同じ基体に印加される三次元的圧力よりも応力が大きいことを示している。一般に、歪による破壊の判定基準を同じとして、かつ外皮とマトリックスとの境界面における外皮の剪断歪をマトリックスの剪断歪に等しくすると、二次元負荷の下で生じた、より高い圧縮歪は、同じ薄壁セラミック基体に関して三次元平衡強度よりも平均で14%低い二次元平衡強度を生むことを解析的解法が示している。
【0031】
何れの場合においても、セラミックハニカム基体の外皮および端面に印加された平衡圧力の90%以上が、これらの基体の内部に圧縮応力を誘起させる態様でマトリックス領域に伝達され、この圧縮応力の接線方向の大きさは、マトリックス内よりも外皮内の方が大きいことが上述したことから明らかである。その結果、これらのハニカムは、認識されていたよりもずっと高い、マトリックスにおける境界のセルを「押しつぶす」のに十分な外皮圧縮歪を受け、セル壁のひび割れおよびハニカムの早期破壊を齎すセル撓み応力を誘起する。
【0032】
本発明は、壁の厚さおよび強度を増大させるのではなく、すなわち壁を厚くして歪を減らすのではなく、外皮の剛性を増大させてこの問題を解決したものである。外皮の弾性率を高めることによって、マトリックスの弾性率Eに対する外皮の弾性率E′の比を増大させることは、熱衝撃による損傷に対する耐性を減少させることなしにこれらセラミックハニカムの応力破壊に対する抵抗力を増大させるのに極めて効果的であることを上記のデータが実証している。
【0033】
前述のように、本発明によれば、外皮の弾性率を高めるための多くの方法をうまく採用して部分強度を高めることが可能である。多くの方法のうち最も効果的なものは、外皮の多孔率を低めて、および/または外皮の組成を変えて、その弾性率を高めることである。本発明の好ましい実施の形態においては、外皮の多孔率がマトリックスの多孔率よりも低く、特殊な場合には多孔率ゼロの完全に密実化された外皮層が有用である。
【0034】
修正された組成および弾性率を有する外皮をセラミックハニカムの表面に施すことは押出成形時に行なうことが最も効率的である。従来から用いられているハニカム押出成形用ダイは、ダイの中心部分、すなわちマトリックス部分に供給されるものとは異なる組成を有するバッチをダイの周辺部分、すなわち「外皮供給(skin feed)」部分に供給するように構成された押出成形機に取り付けられるように設計されている。双方のバッチの組成は、外皮の押出し速度と、ハニカムのセルラーマトリックスすなわちコアの押出し速度とが一致するように、コアと外皮の押出し量が適合するように調整される。あるいは、ハニカムマトリックスすなわちコアが外皮を備えずに、より好ましいのはコアと組成が一致した薄い外皮とともに押出成形され、その後、適当な補助的コーティング工程によって、適当に高い弾性率を備えた第2の外皮が、押出成形されたコアに施される。
【0035】
ハニカムの強度を大きく高めるために必要な、外皮・マトリックス弾性率比の増大は、ハニカムの寸法、多孔率および組成によって異なるが、実験によって容易に決定することができる。上述の表2に示された計算に基づくと、セル間隔をL,マトリックスの壁の厚さをtとしたとき、外皮・マトリックス弾性率比E′/Eは、セル間隔/マトリックス壁厚比L/tの少なくとも1.1倍とすべきである。L/t比の1.5〜3倍のE′/E比がより好ましく、E′は外皮の弾性率に対応し、Eは、セル間隔L、マトリックスの壁の厚さt、多孔率P、およびセル壁を形成するセラミック材料の完全に密実な弾性率Eに左右される横方向に等方性を有する媒体として考えたときのマトリックスの弾性率であり、下記の式で表される。すなわち、

E=(t/L)E および E={(1−P)/(1+4P)}E

認識されるように、外皮の弾性率を調整するためのコーティングによる対策は、外皮の熱膨張係数または厚さを過度に増大させるような外皮の気泡の塗りつぶしまたは外皮の厚さの増加のためにコーティング材料を用いてはならない。良く知られているように、いずれの増大も、コーティングされた基体の熱衝撃破損に抵抗する能力を許容できない程度に低下させる可能性がある。
【0036】
しかしながら、熱衝撃作用を回避するために外皮の厚さの過度な増大は避けるべきであるとしても、セル壁の厚さの2倍という低い値から約3〜8倍の範囲内の値というような僅かな外皮の厚さの増大は、補助的な強化法として利用することが可能である。しかしながらその場合、外皮を厚くすることによる耐熱衝撃性に及ぼす作用は、外皮の熱膨張係数をマトリックスの熱膨張係数よりも僅かに高くなるように調整することによって、かつ外皮の強化によって和らげなければならない。外皮の弾性係数E′を高めるという本来の目的のために外皮の多孔率を低下させることは、外皮の強度を増大させる有利な効果を奏し、これによって、別の方法で得られるよりも厚い、熱膨張率の高い外皮層を用いることが可能になる。しかしながら、好ましい実施の形態においては、最終的なハニカムにおける最良の熱衝撃緩和特性を得るために、コアと外皮との間の平均線膨張係数の差が、25〜800℃の範囲に亘って約2×10−7/℃を超えてはならない。
【0037】
上述した実施例および記載は、単に本発明の説明に過ぎず、限定を意図したものではない。本発明は、例えば正方形のセル断面を有するセラミックハニカムに限定されるものではなく、三角形、六角形のセル形状を有するものも同様に効果的に改善される。同様に、上述した円筒状のハニカム以外のハニカムの部分断面も含まれ、このような部分断面の例は、この分野で良く知られている、卵型、バイラジアル、楕円形、長円形および三角形のハニカム形状を含む。したがって、上述した本発明の特定の実施の形態の変形も、添付の請求項の範囲内で実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】三次元的平衡圧力を受けた自動車のハニカム触媒基体上の力を示す概略図
【図2】図1の基体のマトリックスに対する外皮からの圧力伝達を示す概略図
【図3】ハニカム基体内で圧力により発生した応力を解析するための極座標系
【図4】ハニカム基体のコアすなわちマトリックスの周辺のセル壁部分における剪断応力に対する表面に印加された圧力の影響を示す図
【図5】平衡圧力を受けたハニカム基体内に生じるマトリックス応力に対する外皮を厚くしたことの影響を示すグラフ
【図6】平衡圧力を受けたハニカム基体内に生じるマトリックス応力に対する外皮の剛性を高めたことの影響を示すグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平衡圧力による破損に対する耐性が改良された薄壁セラミックハニカム製品であって、
20〜125μmの範囲内の壁厚さを有するセルラーマトリックス部分と、
50〜250μmの範囲内の厚さと、前記セルラーマトリックス部分とは異なる組成または結晶組織または多孔率と、前記マトリックス部分の弾性率よりも高い弾性率とを有して、前記セルラーマトリックス部分を覆って配置された外皮層と、
を備えていることを特徴とするハニカム製品。
【請求項2】
前記外皮層は、多孔率が前記セルラーマトリックス部分と異なっていることを特徴とする請求項1記載のハニカム製品。
【請求項3】
前記外皮層は、組成または結晶組織が前記セルラーマトリックス部分と異なっていることを特徴とする請求項1記載のハニカム製品。
【請求項4】
前記外皮層は、前記マトリックス部分の多孔率よりも低い多孔率と、前記マトリックス部分の平均線膨張係数よりも高い平均線膨張係数とを有することを特徴とする請求項1記載のハニカム製品。
【請求項5】
前記セルラーマトリックス部分のセル密度が、ハニカム断面の1平方センチメートル当り62〜200セルの範囲内にあることを特徴とする請求項1記載のハニカム製品。
【請求項6】
平衡圧力による破損に対する耐性が改良された薄壁セラミックハニカム製品であって、

E=(t/L)E および E={(1−P)/(1+4P)}E
によって規定されるマトリックス弾性率Eを有するセラミック・セルラーマトリックス部分と、該セルラーマトリックス部分を覆って配置された、外皮弾性率E′を有するセラミック外皮層とを備えており、
ここで、tは前記マトリックス部分の壁の厚さ、Lは前記マトリックス部分のセル間隔、Pは前記マトリックス部分を構成するセラミック材料の多孔率、Eは前記セルラーマトリックス部分を構成するセラミックの完全に密実化された弾性率であり、
前記マトリックス弾性率Eに対する前記外皮弾性率E′の比E′/Eが、前記マトリックス部分の壁の厚さに対する前記セル間隔の比L/tの少なくとも1.1倍であることを特徴とするセラミックハニカム製品。
【請求項7】
前記トリックス弾性率Eに対する前記外皮弾性率E′の比E′/Eが、前記マトリックス部分の壁の厚さに対する前記セル間隔の比L/tの少なくとも1.5〜3倍であることを特徴とする請求項6記載のセラミックハニカム製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−519509(P2007−519509A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547132(P2006−547132)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/042107
【国際公開番号】WO2005/065188
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】