説明

高性能ガス発生組成物

膨張可能な拘束システム中に使用されるガス発生剤に関する組成物および方法。本開示の噴霧乾燥技術によって形成された発生剤粒状物によって、高燃焼速度および高ガス発生量などの優れた性能が得られる。さらに、ガス発生剤粒状物生成物の加工を効率化することができる。このようなガス発生剤は、非限定的な例として、硝酸グアニジンと、塩基性硝酸銅と、過塩素酸カリウムなどの二次酸化剤とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2008年11月12日に出願された米国特許出願第12/269,340号明細書、および2008年4月10日に出願された米国仮特許出願第61/043.909号明細書の優先権を主張し、これらの開示全体が参照により本明細書にこれらの全体が組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、膨張可能な拘束システムに関し、特にこのようなシステムで使用するための火工品ガス発生組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
この項における記載は、本開示に関連する背景情報を提供するものであり、従来技術を構成するものではない場合がある。
【0004】
受動的に膨張可能な拘束システムは、自動車などの種々の用途で使用される。ある種の受動的に膨張可能な拘束システムは、例えば、火工品ガス発生剤を使用してエアバッグクッションを膨張させる(例えば、ガスイニシエータおよび/またはインフレータ)、またはシートベルトテンショナーを作動させる(例えば、マイクロガスジェネレーター)ことによって乗員のけがを最小限にする。自動車のエアバッグインフレータの性能および安全性の要求は、乗員の安全性を向上させるために絶えず増加している。
【0005】
ガス発生剤およびイニシエータ材料の選択には、特に、現行産業の性能の規格、指針、および基準への適合、安全なガスまたは流出物の発生、ガス発生剤材料の取り扱い安全性、材料の継続的な安定性、ならびに製造の費用対効果などの種々の要因への対処が必要となる。火工品組成物は、取り扱い、保管、および廃棄の間に安全であることが好ましい。さらに、火工品材料組成物がアジドを含有しないことが好ましい。
【0006】
ガス発生量、観察される燃焼速度によって決定される相対速度比、およびコストに関する改善されたガス発生剤の性能は、インフレータガス発生剤の設計において重要な変数となる。例えば、ガス発生剤燃焼速度またはガス発生量の増加は、新規なおよび/またはエキゾチックな組成物を混入することによって実現できるが、それらの組成物は高価であることが多い。このような組成物は、微粉砕した粒子を混合して発生剤を製造し、次にこれを、衝撃出力の制御のためにペレット化または他の方法で粒状物にすることによって通常は加工される。
【0007】
これまで従来の製造および加工方法で使用されてきたテトラゾール類、ビテトラゾール類などの高価な成分を使用せずに、高ガス発生量および高燃焼速度(例えば、3,000ポンド/平方インチにおいて1インチ/秒以上)を有するガス発生剤が製造されることが望ましい。比較的速い燃焼速度のさらなる利点は、この性質によって、側面衝突用途などの非常に高速の応答が要求されるインフレータ用途に発生剤を使用することが可能となることである。さらに、高燃焼速度ガス発生剤からは、例えば位置のずれた乗員の場合の用途、および類似の要求などの高度なインフレータ用途に適合させるために調整された衝撃性能を有する粒状物を設計することができる。
【発明の概要】
【0008】
種々の態様において、本開示は、ガス発生剤の製造方法、およびそれによって製造された組成物を提供する。ある態様においては、ガス発生剤の製造方法は、水性混合物を噴霧乾燥して粉末を製造するステップを含む。この水性混合物は、硝酸グアニジンと、塩基性硝酸銅と、二次酸化剤約1%〜約30重量%とを含む。次に得られた粉末を加圧してガス発生剤粒状物にする。ある態様においては、本発明の方法は、噴霧乾燥ステップの前に、硝酸グアニジンと、塩基性硝酸銅と、二次酸化剤とを混合することによって水性混合物を形成するステップをさらに含む。本開示の方法により製造されたガス発生剤粒状物は、実質的に同じ組成を有し、ロール圧密成形、粉砕、および/または機械的混合からなる群から選択される方法によって製造された比較のガス発生剤粒状物の比較の燃焼速度よりも少なくとも約20%速い燃焼速度を有する。
【0009】
種々の態様において、硝酸グアニジンと、塩基性硝酸銅と、過塩素酸カリウムを含む二次酸化剤を約1%〜約30重量%とを含むガス発生剤粒状物が形成される。このガス発生剤粒状物は、約1.5インチ/秒(約38.1mm/秒)以上の平均線燃焼速度を有する。さらに、本開示によると、ガス発生剤のガス発生量が比較的多い。
【0010】
さらに別の態様では、ガス発生剤の製造方法は、シングルオリフィス噴水ノズルを介して水性混合物を噴霧乾燥して粉末を製造するステップを含む。この水性混合物は、硝酸グアニジンと、塩基性硝酸銅と、二次酸化剤約1%〜約30重量%とを含む。次にこの粉末を加圧して、約3,000ポンド/平方インチ(約20,685kPa)の圧力において約1.5インチ/秒(約38.1mm/秒)以上の平均線燃焼速度を有するガス発生剤粒状物を製造する。
【0011】
本発明の方法およびガス発生剤粒状物によっていくつかの利点および利益が得られる。非限定的な例として、このようなものとしては、結果として得られるガス発生剤がアジドを含有しないことができ、それによってアジド化合物に関連する可能性のある毒性を最小限にできることが挙げられる。本開示は、テトラゾール類およびビテトラゾール類などのより高価な成分を使用して製造したガス発生剤と同等の燃焼速度およびガス発生率を有する、より低コストでより安価な材料を使用した急速燃焼するガス発生剤も提供する。さらに、本開示の方法を使用して製造される噴霧乾燥粉末は、加圧して複合的な粒状物、ならびに錠剤またはペレットにより容易にすることができ、この結果得られる粒状物は、破片および空隙をより少なくすることができる。
【0012】
さらなる応用範囲は、本明細書に提供される説明から明らかとなるであろう。説明および具体例は説明の目的のみを意図しており、本開示の範囲の限定を意図するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本開示は、詳細な説明、および添付の図面からより十分に明らかとなるであろう。
【図1】膨張可能なエアバッグ拘束装置のインフレータを含む助手席エアバッグモジュールの一実施形態の部分断面図である。
【図2】代表的な噴霧乾燥方法の簡略図である。
【図3】(A)2ノズル噴霧乾燥、(B)ロール圧密成形および同時粉砕、ならびに(C)噴水ノズル噴霧乾燥によって製造されたガス発生剤粉末を示している。
【図4A】図3の方法(A)により形成された粉末の詳細図(倍率50倍)であり、各粉末の相対的サイズ、外観、および形状を比較している。
【図4B】図3の方法(C)により形成された粉末の詳細図(倍率50倍)であり、各粉末の相対的サイズ、外観、および形状を比較している。
【図5】図3の方法(A)および(C)により形成された粉末を使用して製造したガス発生剤粒状物を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明は、1つ以上の発明の材料、製造、および使用を実際に単に説明しているものであり、本出願、または本出願もしくはそれより発行された特許の優先権を主張するために出願されうる他の出願において主張される、すべての個別の発明の範囲、用途、または使用の限定を意図するものではない。
【0015】
本開示は、組成物および方法に関する。硝酸グアニジンと、塩基性硝酸銅と、二次酸化剤を約1%〜30重量%とを、場合により二酸化ケイ素などのスラグ促進剤とともに含む水性混合物を噴霧乾燥して粉末を製造する。この粉末を加圧して、ガス発生剤の粒状物を製造する。ある実施形態では、本発明の方法は、硝酸グアニジンと、塩基性硝酸銅と、二次酸化剤約1%〜30重量%とを含む水性混合物を形成するステップをさらに含み、このステップは硝酸グアニジンを水性媒体中に加えて硝酸グアニジンを実質的に溶解させることを含む。ある実施形態では、次に、塩基性硝酸銅および二次酸化剤を水性媒体に加え、これを混合して噴霧乾燥用の水性混合物を形成する。
【0016】
ガス発生剤の製造方法は、硝酸グアニジンと、塩基性硝酸銅と、二次酸化剤約1%〜30重量%とを含む水性混合物を形成するステップを含む。ある態様においては、水性混合物は、二酸化ケイ素などのスラグ促進剤約0.1%〜約5.0%も含む。水性混合物を噴霧乾燥して粉末を製造し、その粉末を加圧してガス発生剤の粒状物を製造する。二次酸化剤は、過塩素酸カリウムなどの過塩素酸塩であってもよい。本発明のガス発生剤粒状物は、同じ量の硝酸グアニジン、塩基性硝酸銅、二次酸化剤の各成分を機械的に混合した後にロール圧密成形および粉砕して製造されるガス発生剤、または同じ量の塩基性硝酸銅および硝酸グアニジンの噴霧乾燥した混合物中に同じ量の二次酸化剤を機械的に混合することによって製造されたガス発生剤よりも、少なくとも約20%速い燃焼速度を得ることができる。本発明のガス発生剤は、例えばエアバッグクッションを膨張させる、またはシートベルトテンショナーを作動させる装置またはシステム中に使用することができる。
【0017】
膨張可能な拘束装置は、シートベルトのプレテンショニングシステムおよびエアバッグモジュール組立体などの様々な種類の拘束システム中に使用される。これらの装置およびシステムは、運転手側、助手席側、側面衝突、カーテン、およびカーペットのエアバッグ組立体などの自動車中の複数の用途に使用することができる。例えば、ボート、飛行機、および列車などの他の種類の乗り物で、膨張可能な拘束装置を使用することができる。さらに、他の種類の安全または保護装置でも、種々の形態の膨張可能な拘束装置を使用することができる。
【0018】
膨張可能な拘束装置は、ガスの発生を促進して、エアバッグの展開またはピストンの作動を行う一連の反応を典型的には含む。エアバッグの場合、エアバッグ組立体システムが作動すると、エアバッグクッションは数ミリ秒以内に膨張しなければならない。図1を参照すると、典型的なエアバッグモジュール30は、手席インフレータ組立体32と、エアバッグ36を保管するための覆われた区画34とを含む。このような装置は、急激な減速および/または衝突が感知されたときに電気的に点火するスクイブまたはイニシエータ40を使用することが多い。通常は、スクイブ40からの放電によって、イニシエータまたは点火材料42に点火されて、急速および発熱的に燃焼し、次にこれによってガス発生剤材料50に点火される。ガス発生剤材料50は燃焼して、多量の気体生成物を生成し、その生成物がエアバッグ36に向かうことで膨張が起こる。
【0019】
ガス発生剤は、点火材料、推進剤、ガス発生材料、および火工品材料としても知られている。ガス発生剤は固体粒状物、ペレット、錠剤などの形態であってもよい。多くの場合、燃焼中にスラグまたはクリンカーがガス発生剤付近に形成される。スラグ/クリンカーは、燃焼中にガス発生剤によって発生する種々の粒子およびその他の化合物の捕捉物質として機能する。ガス中に含まれる粒子を除去するため、およびエアバッグに入るガスの温度を低下させるために、ガス発生剤とエアバッグとの間にフィルターを設けることができる。
【0020】
ガス発生剤は、燃料、酸化剤を含み、点火後に急速に燃焼して気体の反応生成物(例えば、CO、HO、およびN)を形成する他の少量成分を含むことができる。1種類以上の化合物が急速に燃焼して熱を発生し気体生成物を生成する;例えば、ガス発生剤は燃焼して、膨張可能な拘束装置の高温膨張ガスを生成したり、ピストンを作動させたりする。ガス発生剤は、少なくとも1種類の燃料成分を有する酸化還元対を含むことができる。燃料が完全に酸化もしくは自己酸化するか、不十分に酸化するかに依存して、ガス発生組成物は1種類以上の酸化成分を含むことができ、ガス生成物を生成するために、この酸化成分は燃料成分と反応する。
【0021】
燃料成分は窒素含有化合物であってもよい。典型的な燃料としては、テトラゾール類およびそれらの塩(例えば、アミノテトラゾール、テトラゾールの無機塩)、ビテトラゾール類、1,2,4−トリアゾール−5−オン、硝酸グアニジン、ニトログアニジン、硝酸アミノグアニジン、金属硝酸塩などが挙げられる。これらの燃料は、比較的燃焼速度が低いため、ガス発生燃料に一般に分類され、所望の燃焼速度およびガス発生を実現するために1種類以上の酸化剤と併用されることが多い。種々の態様において、本発明のガス発生剤は少なくとも硝酸グアニジンを燃料として含む。
【0022】
ガス発生剤組成物の酸化剤としては、非限定的な例として、アルカリ、アルカリ土類、およびアンモニウムの硝酸塩、亜硝酸塩、および過塩素酸塩;金属酸化物;塩基性金属硝酸塩;硝酸アンモニウムの遷移金属錯体;ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。酸化剤は、燃焼によって比較的高い燃焼速度およびガス発生量が燃料から実現されるガス発生剤が形成されるように、燃料成分とともに選択される。好適な酸化剤の具体例としては、塩基性硝酸銅などの塩基性金属硝酸塩が挙げられる。塩基性硝酸銅は、高い酸素対金属比を有し、燃焼による良好なスラグ形成能力を有する。このような酸化剤は、ガス発生組成物の約50重量%以下の量で存在することができる。
【0023】
他の酸化剤としては、硝酸塩または過塩素酸塩などの水溶性酸化化合物、例えば硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸ストロンチウム、または硝酸カリウム、ならびに過塩素酸アンモニウム、過塩素酸ナトリウム、または過塩素酸カリウムが挙げられる。アンモニウムジニトロアミド、および過塩素酸塩を含有しない酸化剤も挙げられる。ガス発生剤は、複数の酸化剤の組み合わせを含むことができ、例えばこれらの酸化剤は第1酸化剤、第2酸化剤などと名目上見なすことができる。例えば、少なくとも1つの硝酸グアニジンなどの燃料成分を、塩基性硝酸銅および過塩素酸カリウムなどの酸化剤の組み合わせと混合して、ガス発生剤を形成することができる。
【0024】
ガス発生組成物は酸化還元対の水性分散液から形成することができ、この場合、1種類以上の燃料成分を水溶液に加えて実質的に溶解させ、溶液自体に溶解させるか固体粒子の安定分散液として存在するかのいずれかで、酸化剤成分をこの燃料溶液中に分散および安定化させる。この溶液または分散液は、スラリーの形態であってもよい。水性分散液またはスラリーは、液滴の流れを形成するために噴霧ノズルに通すことによって噴霧乾燥される。これらの液滴が熱風と接触することで、水およびあらゆる他の溶媒が液滴から効率的に除去され、その後、ガス発生剤組成物の固体粒子が形成される。
【0025】
水性分散液を形成する成分の混合物はスラリーの形態をとることもでき、この場合スラリーは、微細(比較的小さな粒度)で実質的に不溶性粒子が液体ビヒクルまたは担体中に懸濁した流動性または圧送可能な混合物である。担体中に懸濁した固体材料の混合物も考慮される。ある実施形態においては、スラリーは、約500μm未満、場合により約200μm以下、場合により、約100μm以下の平均最大粒度を有する粒子を含む。
【0026】
スラリーは、流動性および/または圧送可能な懸濁固体およびその他の材料を担体中に含有する。好適な担体としては、大部分が水であってもよい水溶液が挙げられるが、担体は1種類以上の有機溶媒またはアルコール類を含有することもできる。ある実施形態では、担体は共沸混合物を含むことができ、共沸混合物は、特定の温度および圧力において一定の化学量論比で望ましくは蒸発する、水およびある種のアルコール類などの2種類以上の液体の混合物を意味する。有害反応を回避し、さらに、スラリーを形成する数種類の成分の溶解性を最大限にするために、担体は、燃料および酸化剤成分との適合性により選択されるべきである。好適な担体の非限定的な例としては、水、イソプロピルアルコール、nプロピルアルコール、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0027】
スラリーの粘度は、噴霧乾燥プロセス中に注入または圧送が可能となる濃度である。ある実施形態では、例えば水および/または溶媒の含有率を最小限にするために粘度が比較的高く維持され、それによって、噴霧乾燥中に担体を除去するために必要なエネルギーが少なくなる。しかし、より高圧での噴霧乾燥のために圧送速度を増加させやすくするために、粘度を下げることができる。このような調節は、霧化ならびに所望の噴霧乾燥液滴および粒度を選択および調整する場合に行うことができる。
【0028】
ある実施形態では、スラリーは、約15重量%以上の含水率を有し、約20%以上、30%以上、または40重量%以上であってもよい。ある実施形態では、スラリーの含水率は約15重量%〜85重量%である。含水率が増加すると、スラリーの粘度が低下し、それによって圧送および取り扱いがより容易になる。ある実施形態では、スラリーは約50,000〜250,000センチポアズの範囲の粘度を有する。このような粘度は、加えられる圧力かでスラリーが流動できるが、スラリーが依然として安定となることもできる好適なレオロジー特性を得るために望ましいと考えられる。
【0029】
ある実施形態では、ある量のシリカ(SiO)が水性分散液中に含まれ、このシリカは、酸化剤成分として機能することができるが、分散液の粘度を高くし、分散液および液滴全体の中で固体酸化剤粒子の移動を軽減または防止する機能を果たすこともできる。シリカは、酸化還元反応中に酸化剤と反応してガラス状スラグを形成することもでき、このガラス状スラグは、ガス発生剤が点火することによって生成されるガスから容易に濾過される。シリカは好ましくは非常に微細な形態である。ある実施形態では、シリカの好ましいグレードとしては約7nm〜約20nmの粒度を有するグレードが挙げられ、ある態様においては、最大約50μmの粒子サイズを有するシリカを使用することもできる。同等および同様に有用なスラグおよび粘度調整/促進剤としては、酸化セリウム、酸化第二鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ビスマス、酸化モリブデン、酸化ランタンなどが挙げられる。酸化還元不活性な酸化物は、個別に使用することができるし、2種類以上の個別の成分の混合物として使用することもできる。例えば、一方の酸化物が混合物スラリーの粘度の改善に有用となる非常に微細な形態(例えば約20nm未満の粒度)を有する場合、より大きな粒度を有するより粗い別の酸化物を、燃焼速度に干渉したり悪影響を与えたりすることなくスラグ形成特性を改善するために混合物に加えることができる。
【0030】
ある態様においては、ガス発生剤は、少なくとも1種類の燃料(例えば、硝酸グアニジン)を約30〜70重量部、より好ましくは40〜50重量部と、酸化剤(例えば、塩基性硝酸銅および過塩素酸カリウム)を約30〜60重量部と、シリカ(SiO)またはその同等物などのスラグ形成剤を約0〜5重量部とを含むことができる。水性分散液を形成する場合、組成物を、噴霧温度で燃料成分全体を実質的に溶解させるのに十分な水溶液と混合するが、ある態様においては、噴霧乾燥プロセスで蒸発させるべき水の量を最小限にするために好都合な最小限に水の量を制限することが望ましい。例えば、分散液は、燃料成分を約30〜45重量部に対して水約100重量部以下を有することができる。
【0031】
酸化剤成分は、激しい撹拌によって燃料溶液中に均一に分散させて分散液を形成することができ、この場合、酸化剤の粒子は、安定な分散液を形成するのに十分な程度で分離する。水不溶性酸化剤の場合、完全またはほぼ完全に分散した状態になったときに粘度が最小となる。酸化剤粒子を効率的に分散させるために高剪断ミキサーを使用することができる。分散液の粘度は、混合物中の固体粒子の実質的な移動(すなわち、降下または沈殿)を防止するのに十分高い粘度であるべきである。
【0032】
噴霧乾燥プロセスは、粒子の形成および材料の乾燥のために使用される。このプロセスは、ガス発生剤を製造するための酸化還元対成分の液体原料を使用して、粉末、顆粒、または凝集粒子の形態の乾燥固体の連続的製造に適している。噴霧乾燥は、液体溶液、分散液、エマルジョン、スラリー、および圧送可能な懸濁液に対して行うことができる。乾燥した最終生成物を厳密な品質基準および物理的特性に調整するために、噴霧乾燥パラメーターを変動させることができる。このような基準および特性としては、粒度分布、残留含水率、かさ密度、および粒子の形態が挙げられる。
【0033】
噴霧乾燥としては、水性混合物の霧化、例えば、酸化還元対成分の液体分散液の液滴スプレーへの霧化が挙げられる。次に、液滴を乾燥室中で熱風と接触させる。制御された温度および気流の条件下で、液滴から水分が蒸発し、乾燥粒子の形成が進行する。粉末は、乾燥室から連続的に排出し、例えば、サイクロンまたはバッグフィルターを使用して廃棄ガスから回収することができる。全体のプロセスには数秒以下しか要さないであろう。ある実施形態では、霧化前に液体分散液またはスラリーが加熱される。
【0034】
噴霧乾燥装置は、液体分散液のための供給ポンプ、アトマイザー、空気加熱器、空気分散機、乾燥室、粉末回収システム、排気清浄システム、およびプロセス制御システムを典型的には含む。設備、プロセス特性、および品質要求は、個別の仕様に基づいて調整することができる。霧化は、結果として得られる粉末の仕様に適合できるような所望の液滴サイズ分布を有するスプレーを形成することを含む。アトマイザーは種々の液滴形成方法を使用することができ、回転(ホイール)アトマイザー、および様々な種類の噴霧ノズルを含むことができる。例えば、回転ノズルは、遠心エネルギーを使用して霧化し、圧力ノズルは、圧力エネルギーを使用して霧化され、二流体ノズルは、運動エネルギーを使用して霧化する。
【0035】
乾燥機中の蒸発速度および生成物温度を制御する目的で、スプレー液滴と乾燥空気との間の初期接触を制御するために、気流調整を使用することができる。並流気流は、乾燥空気と液滴/粒子とを同じ方向で乾燥機を通過させる。並流気流中、乾燥機から排出された生成物の温度は排気温度よりも低く、そのためこの方法は熱に敏感な生成物に適している。向流気流は、乾燥空気と液滴または粒子とを反対方向で乾燥室を通過させ、乾燥中の熱処理が必要な生成物に有用である。向流気流乾燥から出た粉末の温度は排気温度よりも通常は高い。混合流では、並流と向流との気流が組み合わされ、そのため液滴または粒子は両方の種類の気流にさらされる。混合流方法は、より粗い粉末の要求のためにノズルアトマイザーの使用が必要な場合に、熱安定性生成物に使用される。混合流方法は、流入する気流中に上方に噴霧することを含み、または、熱に敏感な粒子の場合には、アトマイザーは一体となった流体床に向かって下方に噴霧し、典型的には空気の入口および出口は乾燥室の上部に配置される。
【0036】
ガス発生剤成分の水性分散液は、噴霧ノズルを使用して霧化することによって、直径約0.5mm〜2.5mmの1つ以上のオリフィスを有するノズルからの圧力下に液滴がさらされることにより、直径約40μm〜200μmの液滴を形成することができる。液滴は、約80℃〜250℃、好ましくは約80℃〜180℃の範囲内の温度の熱風流に液滴が落下したり他の方法で接触することによって噴霧乾燥することができる。気流の出口温度および入口温度は、液滴の乾燥に必要な熱伝達を実現するために異なっている場合がある。前述の例の空気温度範囲は、それぞれの出口温度および入口温度の例をさらに示している。
【0037】
本発明の方法は、当分野で公知の種々の噴霧乾燥機を使用することができる。例えば、好適な噴霧乾燥装置および付属装置としては、アンハイドロ・インコーポレイテッド(Anhydro Inc.)(イリノイ州オリンピアフィールズ(Olympia Fields,IL))、ビュッヒ・コーポレーション(BUCHI Corporation)(デラウェア州ニューキャッスル(New Castle,DE))、マリオット・ウォーカー・コーポレーション(Marriott Walker Corporation)(ミシガン州バーミングハム(Birmingham,MI))、ニロ・インコーポレイテッド(Niro Inc.)(メリーランド州コロンビア(Columbia,MD))、およびスプレー・ドライング・システムズ・インコーポレイテッド(Spray Drying Systems,Inc.)(メリーランド州エルダーズバーグ(Eldersburg,MD))によって製造されるものが挙げられる。ある態様においては、粉末または粒子状材料を形成するのに好適な噴霧乾燥プロセスの1つとして、チャン(Chan)らに付与された米国特許第5,756,930号明細書(この関連部分が参照により本明細書に組み込まれる)に記載のプロセスが挙げられる。
【0038】
噴霧乾燥した液滴から製造される粒子は、最小寸法が約0.5μm〜約5μm、好ましくは約0.5μm〜約1μmの一次結晶サイズを有する、ガス発生剤成分の非常に微細な混晶の凝集体を含むことができる。しかし、水不溶性酸化剤成分は、非常に小さい粒度で得ることができ、溶解した燃料成分の水溶液中に含まれて分散液を形成するため、水性媒体に必要な含水率を低下させることができるので、水不溶性酸化剤成分が好ましい。
【0039】
ガス発生剤の乾燥粒子は、酸化剤と実質的に完全に反応するために必要な範囲内の狭いサイズ分布を有する燃料の結晶(例えば硝酸グアニジン結晶)の実質的に球状の微孔性凝集体の形態をとることができる。例えば、球状微孔性凝集体は、直径約20μm〜約100μmであってもよく、燃料の一次結晶の最小寸法が約0.5μm〜約5μm、一般に約0.5μm〜約1μmであってもよい。一般に、固体酸化剤の粒子は、燃料の結晶によって封入され、この場合、酸化剤粒子は燃料成分結晶の結晶成長部位として機能する。噴霧乾燥プロセスでは、後の加工作業において有害となりうる非常に微細なダストが生成される。
【0040】
ガス発生剤の乾燥粒子を加圧することによって、膨張可能な拘束装置、例えばエアバッグ中のガス発生充填材料として使用するためのペレットまたは粒状物を容易に得ることができる。この加圧作業は、噴霧乾燥したガス発生剤粒子を、ある量の水、または非限定的な例として黒鉛粉末、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、および/または黒鉛状窒化ホウ素などの他のプレス助剤と混合することによって促進することができる。水は、水および疎水性ヒュームドケイ素の混合物の形態で提供することができ、これを高剪断ミキサーの使用によって粒子と混合することができる。次に、組成物を加圧して、ペレットまたは粒状物などの種々の形態にすることができる。ある実施形態では、好適なガス発生剤粒状物の密度は、約1.8g/cc以上および約2.2g/cc以下である。これらのペレットおよび顆粒の形態は、電気スクイブなどの点火装置により容易に点火され、ある態様においては、火工品シート材料を含む発火性ブースターによってより効率的に点火される。火工品シート材料は、酸化性フィルムから、例えば、グラハム(Graham)らに付与された欧州特許出願公開第0505024号明細書(この関連部分が参照により組み込まれる)に記載されるようなマグネシウムなどの易酸化性金属の層が被覆されたポリテトラフルオロエチレンフィルムから形成することができる。
【0041】
ある実施形態では、ガス発生剤の製造方法には、噴霧乾燥によって後に加工されるガス発生剤配合物を調製するために、混合タンクなどの加工容器が使用される。例えば、加工容器には、水と、硝酸グアニジンと、塩基性硝酸銅および過塩素酸カリウムなどの酸化剤とを投入することができ、これらが混合されて水性分散液が形成される。スラリーの温度は、約1時間、約80℃〜90℃において平衡化させることができる。追加の燃料成分、酸化剤成分、スラグ形成助剤などの添加剤および成分を、この時点で反応混合物に加えることができる。この結果得られた水性分散液は、次に噴霧乾燥機に圧送されて、乾燥粉末または顆粒のガス発生剤生成物が形成される。次に、ブレンド、加圧、点火剤の被覆などのさらなる加工ステップを、標準手順により行うことができる。
【0042】
本発明の噴霧乾燥方法は、硝酸グアニジンと、塩基性硝酸銅と、過塩素酸カリウムなどの共酸化剤約1%〜約15重量%とを含有するガス発生剤組成物の場合に予想外に高い燃焼速度が得られる。これらの燃焼速度は、同じ成分を使用して形成され、実質的に同じ組成を有するが、異なる方法を使用して調製された比較のガス発生剤と比較すると驚くべきものである。例えば、これらの混合物噴霧乾燥によって、ガス発生剤粒状物の形成に使用される従来方法である、個々の成分の機械的混合の後、ロール圧密成形、粉砕、および/または過塩素酸カリウムを、塩基性硝酸銅と硝酸グアニジンとの噴霧乾燥混合物と機械的に混合することから選択される方法によって調製された実質的に同じ組成を有する比較のガス発生剤の燃焼速度よりも少なくとも約20%速い燃焼速度を示す組成物を得ることができる。ある態様においては、本発明の噴霧乾燥方法によって調製されたガス発生剤組成物は、安価な成分を使用しながら、ビテトラゾールおよびアミノテトラゾールなどの高価な成分を混入することによって従来実現された燃焼速度と同等の燃焼速度を示すことができる。本発明の方法および配合物は、発生剤の燃焼中にスラグ形成を促進するシリカまたは類似の不活性酸化物などの追加の添加剤を含むこともできる。
【0043】
したがって、種々の態様において、本発明の教示によって、硝酸グアニジンと、塩基性硝酸銅と、二次酸化剤約1%〜約30重量%とを含むガス発生剤粒状物が得られ、このガス発生剤粒状物は、約3,000ポンド/平方インチ(約20.7MPa)の圧力において約1インチ/秒(約38.1mm/秒)以上の線燃焼速度を有する。ある態様においては、ガス発生剤は、約3,000ポンド/平方インチ(psi)(約20.7MPa)の圧力において、約1.1インチ/秒(約28mm/秒)以上;場合により約1.2インチ/秒(約30.5mm/秒)以上;場合により約1.3インチ/秒(約33mm/秒)以上;場合により約1.4インチ/秒(約36mm/秒)以上;場合により約1.5インチ/秒(約38mm/秒)以上;場合により約1.6インチ/秒(約41mm/秒)以上;場合により約1.7インチ/秒(約43mm/秒)以上;場合により約1.8インチ/秒(約46mm/秒)以上;場合により約1.9インチ/秒(約48mm/秒)以上の線燃焼速度を有する。ある実施形態では、ガス発生剤の線燃焼速度は、約3,000psi(約20.7MPa)の圧力において約2.0インチ/秒(約51mm/秒)以上である。ある実施形態では、ガス発生剤の燃焼速度は、3,000psi(約20.7MPa)の圧力において約2.1インチ/秒(約53mm/秒)以下である。
【0044】
さらに、本開示によると、ガス発生剤のガス発生量が比較的多い。例えば、ある実施形態では、ガス発生量は、約3モル/ガス発生剤100g以上である。ある実施形態では、ガス発生量は、約3.1モル/ガス発生剤100g以上、場合により約3.2モル/ガス発生剤100g以上である。
【0045】
ガス発生剤の他の従来の製造方法を考慮すると、噴霧乾燥した組成物で線燃焼速度の増加が観察されることは、驚くべきことで予想外である。これらの方法に基づく向上は、2つの比較例および本開示により形成された実施例(1)を形成する3つの異なる方法を使用して調製されたガス発生剤配合物から得られるデータ例を比較することで観察することができる。3つの方法は以下のものを含む:
(1)硝酸グアニジン、塩基性硝酸銅、および過塩素酸カリウムの成分の乾式混合の後、ガス発生剤生成物のロール圧密成形および粉砕(比較例1)。
(2)硝酸グアニジンおよび塩基性硝酸銅の成分の噴霧乾燥の後、過塩素酸カリウムを上記混合物中に機械的に混合することにより、ガス発生剤生成物を形成(比較例2)。
(3)硝酸グアニジン、塩基性硝酸銅、および過塩素酸カリウムの成分を1つの水性混合物として噴霧乾燥してガス発生剤生成物を形成(実施例1)。
【0046】
これら3つの方法の結果を表1および2にまとめている。これらから分かるように、上記例の方法(1)および(2)では、水溶性燃料および主酸化剤が噴霧乾燥されるかどうかとは無関係にほぼ同じ結果が得られた。方法(2)の噴霧乾燥によって、方法(1)の乾式混合方法を使用して得られた場合よりも線燃焼速度が増加すると予測されたが、本発明の教示の方法(3)によるように過塩素酸カリウムの少量の酸化剤成分が他の成分とともに水性混合物中に含まれ噴霧乾燥された場合にのみ、燃焼速度の顕著な改善が実現される。このことは、過塩素酸カリウムの水に対する溶解性はわずかであり、方法(3)により形成された実施例(1)で噴霧乾燥された水性混合物が硝酸グアニジンに関しても飽和しているので、さらに予想外である。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
表1および2を参照すると、本発明の方法を使用して、他の従来方法によって製造された比較のガス発生剤よりも増加した燃焼速度を有するガス発生剤を製造することができる。ある実施形態では、本発明の方法を使用して、同じ量の硝酸グアニジン、塩基性硝酸銅、および二次酸化剤を機械的混合、ロール圧密成形、および粉砕することによって製造された比較のガス発生剤、または同じ量の塩基性硝酸銅および硝酸グアニジンの噴霧乾燥混合物に同じ量の二次酸化剤を機械的に混合することによって製造されたガス発生剤よりも少なくとも約20%速い燃焼速度が得られるガス発生剤粒状物が製造される。
【0050】
したがって、本発明の方法は、驚くべき予期せぬ燃焼速度を有するガス発生剤が得られる、硝酸グアニジン、主酸化剤(例えば、塩基性硝酸銅)、および二次酸化剤の噴霧乾燥が考慮される。比較例(1)で実施した乾式混合方法、または比較例(2)の形成に使用した後混合方法と比較した。本発明の教示によると、実施例(1)は、3つすべての主要ガス発生剤成分を噴霧乾燥する方法によって調製され、これによって3,000psiにおいて少なくとも約25%だけ燃焼速度を増加させることができる(例えば上記の表2の燃焼速度を参照)。これらの燃焼速度の増加は、ある態様においてはすべての成分を乾式混合する場合よりも利点があったとしてもあまり見られない、硝酸グアニジンおよび主酸化剤を噴霧乾燥した後、二次酸化剤を噴霧乾燥粉末中に乾式混合する方法とは対照的である。したがって、本発明の方法および組成物は、噴霧乾燥プロセスにおいて二次酸化剤を含めることによる特有の利点を示している。
【0051】
硝酸グアニジン、主酸化剤(例えば、塩基性硝酸銅)、および二次酸化剤(例えば、過塩素酸カリウム)の混合物の噴霧乾燥は、種々の噴霧乾燥技術および装置を使用して行うことができる。単純化した噴霧乾燥システムの一例を図2に示す。スラリー源52は、ガス発生剤の個々の成分を含むスラリーを含有し、混合室54に供給される。熱風の向流に対して高速で1つ以上の霧化ノズル56を介してスラリーが押し出される。スラリーはこうして霧化され、水が除去される。熱風は、空気源58から、熱伝達流62も受け取る熱交換器60に供給されることによって発生する。熱伝達流62は、1つ以上のヒーター64を通過することができる。混合室54中でスラリーが霧化されることによって、急速に乾燥した粉末が得られ、これは流出流70中に取り込まれる。排出流70は、バグハウスまたは静電集塵器などの集塵ユニット72に通すことができ、これによって粉末/粒子がガスから分離される。粉末74は収集ユニット74から回収され、次にペレット化、圧密化、またはその他の方法で膨張装置中のガス発生剤としての使用に適した形状にすることができる。分離ユニット72からの排出流76は、必要であれば、スクラバーシステム80などの下流の1つ以上のプロセスに場合により通すことができる。
【0052】
理論によって束縛しようとするものではないが、噴霧乾燥による粒子形成中に二次酸化剤を含めることで、好都合な燃焼速度に起因する構造を有する粒子および/または結晶が得られると考えられる。噴霧乾燥、例えば本明細書に記載されるような回転ノズル、圧力ノズル、および二流体ノズルを使用して行うことができ、圧力、流量、および気流などのパラメーターは、所望の粒度が得られるように最適化することができる。したがって、改善された燃焼速度を有するガス発生剤は、硝酸グアニジン、主酸化剤、および二次酸化剤を使用して種々の噴霧乾燥技術によって製造することができる。
【0053】
ある態様においては、本発明のガス発生剤製造方法は、使用される噴霧乾燥技術の選択に基づいて予期せぬさらなる利点が得られる。特に、シングルオリフィスまたは噴水ノズルスプレーヘッドを使用した噴霧乾燥方法は、ある態様においては、他の噴霧乾燥技術を使用して形成された粉末または粒子よりも、取り扱いおよびさらなる加工が容易なガス発生剤生成物を製造するのに特に好都合となる。例えば、ある態様においては、シングルオリフィス噴水ノズルを使用して製造した粉末は、錠剤化および加圧特性がより優れている。しかし、本発明の教示は、シングルオリフィス噴水噴霧乾燥に加えて二流体ノズルを使用した噴霧乾燥などの種々の噴霧乾燥技術においても利点が得られ、これらも考慮されている。
【0054】
シングルオリフィス噴水ノズルは一般には液体材料のみを噴霧する。二流体ノズルスプレーオリフィスの一例は、チャンらに付与された米国特許第5,756,930号明細書に記載されており、これも、加工される組成物の線燃焼速度挙動を最大化するために発生剤が加工される本発明の教示により使用することができる。チャンらにおいて使用されている二流体ノズルスプレーオリフィスは、互いに噴霧される空気ノズルと液体ノズルとが組み合わされている。この二流体ノズルは、設計として、流体流に非常に高い剪断力を付与することを意図しており、最小の生成物粒度が得られる。
【0055】
他方、シングルオリフィス噴水ノズルによって製造された生成物は、二流体ノズルから製造される生成物よりも実質的に大きい粒度を一般に有し、さらなる加工を行わない錠剤化(すなわち、加圧または加圧下での圧密化)に特に適している。ある態様においては、このことは、後に錠剤化が可能な材料を製造するために、噴霧乾燥後にさらにロール圧密成型および再粉砕が一般に必要となる二流体ノズルによって製造される粉末よりも好都合となる。二流体ノズル噴霧乾燥およびシングルオリフィス噴水ノズルのいずれも本開示による使用に適しているが、ある態様においては、シングルオリフィス噴水ノズル噴霧乾燥方法を使用して製造した材料を加圧することによって製造したガス発生剤粒状物は、圧密化、密度、および均質性において一般に優れているという点で、特に適している。これら3つの粉末の外観の例、および同じ粉末を使用して製造した発生剤粒状物の例を図3および4A〜4Bに示す。
【0056】
ある実施形態では、各ガス発生剤が同じ硝酸グアニジン、塩基性硝酸銅、および過塩素酸カリウムの水性混合物を使用して製造される場合、シングルオリフィス噴水ノズルで噴霧乾燥することによって製造したガス発生剤は、二流体ノズルで噴霧乾燥して製造したガス発生剤と同様の燃焼速度を有する。しかし、シングルオリフィス噴水ノズルを使用して製造した材料では、図4Aおよび4Bの比較図によって示されるように、取り扱いおよび加圧がより容易なより丸みを帯びた粒子が得られる。図4Aは、二流体ノズルで噴霧乾燥することで形成された粉末を示しており、図4Bは、噴水ノズルで噴霧乾燥することによって形成された粉末であり、比較的大きい粒度およびより丸みを帯びた形状を有する粉末を示している。噴水ノズル噴霧乾燥方法で形成された生成物などの約100μm〜200μmの噴霧乾燥生成物粒度は、取り扱いおよび錠剤成形機への供給がより容易になりうる。
【0057】
種々の態様において、本発明の方法は、高燃焼速度のガス硝酸グアニジンと、塩基性硝酸銅と、過塩素酸カリウムなどの二次酸化剤約1%〜30重量%とを含む発生剤組成物を製造するために使用することができる。この組成物は、二酸化ケイ素などのスラグ促進剤を最大約5重量%含むこともできる。本発明の方法は、最初に硝酸グアニジンを完全に溶解させ、次に塩基性硝酸銅および過塩素酸カリウムを水性混合物に加えてスラリーを形成することによって成分の水性混合物を形成するステップを含む。このスラリーをシングルオリフィス噴水ノズルで噴霧乾燥することで、易流動性粉末が製造される。この結果得られた粉末は、錠剤、円筒形、またはその他の形状に加圧することで、膨張可能な拘束システム中のガス発生剤としての使用に適した粒状物が製造される。
【0058】
ある実施形態では、水性混合物は、塩基性硝酸銅に加えて、酸化第二銅、酸化モリブデン、酸化鉄、酸化ビスマスなどの1種類以上の追加の金属酸化物を含むことができる。過塩素酸カリウムに加えて、またはその代わりに、過塩素酸アンモニウム、硝酸カリウム、亜硝酸ストロンチウム、および硝酸ナトリウムなどの共酸化剤を使用することができる。使用可能な別のスラグ促進剤としては、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化セリウム、および類似の化合物が挙げられる。ステアリン酸カルシウムまたはステアリン酸マグネシウム、黒鉛、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素、およびそれらの混合物などのプレス剤(pressing agent)を、錠剤化または加圧の前に加えることもできる。
【0059】
シングルオリフィス噴水ノズルからの材料を使用して製造した結果得られた錠剤およびペレットは、ガス発生剤粒状物またはペレットの空隙および破片などの物理的欠陥が、二流体ノズルで得た材料を使用して製造した錠剤およびペレットよりも少ない。図5に示されるように、二ノズル噴霧乾燥から形成された粉末を加圧することによって形成されたガス発生剤粒状物100は、ある加工条件下で製造した場合に、ある程度の空隙および破片の欠陥110を有することがあり、噴水ノズル噴霧乾燥により形成した粉末を加圧することによって形成したガス発生剤粒状物120がこのような物理的欠陥を有さないことと比較される(図5)。
【0060】
実施例2
以下の表3は、本開示のガス発生剤組成物の一実施形態における他の金属酸化物を微細シリカ(表1および2の配合物中に使用したSiO)の代わりに使用した影響を示している。これらの組成物は、硝酸グアニジン57重量%、塩基性硝酸銅26重量%、20μm過塩素酸カリウム14重量%、および不活性酸化物材料3%を水と混合し、その混合物を70℃で乾燥させることによって調製される。乾燥後、材料の燃焼速度を測定する。表3に示されるように、非常に微細なシリカおよび微細なアルミナは、発生剤の燃焼速度が他の添加剤よりも抑制されている。したがって、ある態様においては、微細なシリカまたはアルミナと1種類以上の他の金属酸化物との組み合わせを選択することが、所望の燃焼速度を実現する性能の観点からは望ましい場合がある。
【0061】
【表3】

【0062】
以上の実施例およびその他の実施形態は、本発明の技術の組成物および方法の範囲全体を説明することにおいて限定を意図したものではない。特定の実施形態、材料、組成物、および方法の、実質的に類似の結果が得られる同等の変更、修正、および変形を本開示の範囲内で行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス発生剤の製造方法であって:
水性混合物を噴霧乾燥して粉末を製造するステップであって、前記水性混合物が硝酸グアニジンと、塩基性硝酸銅と、約1〜30重量%の二次酸化剤を含み;
前記粉末を加圧してガス発生剤粒状物を製造する
ステップを含む方法。
【請求項2】
前記水性混合物が前記二次酸化剤を約1〜15重量%含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記二次酸化剤が過塩素酸塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記二次酸化剤が過塩素酸カリウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記二次酸化剤が、過塩素酸アンモニウム、硝酸カリウム、硝酸ストロンチウム、硝酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記水性混合物が少なくとも1種類の添加剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記添加剤が金属酸化物である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記金属酸化物が、酸化第二銅、酸化モリブデン、酸化鉄、酸化ビスマス、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される化合物を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記水性混合物が約5重量%以下のスラグ促進剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記スラグ促進剤が、二酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化セリウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される化合物を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
加圧の前に、5重量%以下のスラグ促進剤を前記粉末に加えるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記スラグ促進剤が、二酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化セリウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される化合物を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
実質的に同じ組成を有し、ロール圧縮成形、粉砕、および/または機械的混合からなる群から選択されるプロセスによって製造された比較のガス発生剤粒状物の比較の燃焼速度よりも少なくとも約20%速い燃焼速度を有する、請求項1に記載の方法によって製造したガス発生剤粒状物。
【請求項14】
噴霧乾燥の前に、硝酸グアニジンを水性媒体に添加し;
塩基性硝酸銅および二次酸化剤を前記水性媒体に添加し;そして、
前記水性媒体を混合して前記水性混合物を形成することによって、硝酸グアニジンと、塩基性硝酸銅と、約1〜30重量%の前記二次酸化剤とを含む混合物を形成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
水性媒体が水を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法により製造された、ガス発生剤。
【請求項17】
前記水性混合物を噴霧乾燥して粉末を製造するステップが、シングルオリフィス噴水ノズルを使用して行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法によって製造された、ガス発生剤。
【請求項19】
前記粉末を加圧するステップで、錠剤または円筒形から選択される形状を有するガス発生剤粒状物が形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
圧縮して前記ガス発生剤粒状物を形成するステップの前に、前記粉末にプレス剤を加えるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記プレス剤が、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、黒鉛、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法によって製造された、ガス発生剤。
【請求項23】
硝酸グアニジンと、塩基性硝酸銅と、過塩素酸カリウムを含む二次酸化剤約1%〜約30重量%とを含み、約3,000ポンド/平方インチ(約20,685kPa)の圧力において約1.5インチ/秒(約38.1mm/秒)以上の平均線燃焼速度を有する、ガス発生剤粒状物。
【請求項24】
約3モル/ガス発生剤100g以上のガス発生量を有する、請求項23に記載のガス発生剤。
【請求項25】
ガス発生剤の製造方法であって:
シングルオリフィス噴水ノズルを介して水性混合物を噴霧乾燥して粉末を製造するステップであって、前記水性混合物が、硝酸グアニジンと、塩基性硝酸銅と、二次酸化剤約1〜30重量%とを含むステップと;
粉末を加圧して、約3,000ポンド/平方インチ(約20,685kPa)の圧力において約1.5インチ/秒(約38.1mm/秒)以上の平均線燃焼速度を有するガス発生剤粒状物を製造するステップを含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−516395(P2011−516395A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504149(P2011−504149)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/039895
【国際公開番号】WO2009/126702
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(597065363)オートリブ エーエスピー,インコーポレイティド (87)