説明

高性能タンジェンシャルフローフィルトレーションを用いるタンパク質分画方法

目的分子を含有する混合物から該分子を分離するためのプロセスおよび装置が提供される。このプロセスは該混合物に高性能タンジェンシャルフローフィルトレーション(HPTFF)の改善された方法を施すことを含む。本発明のHPTFFを使用することで、目的分子の大きさと電荷の両方に基づき目的分子を除去するために様々な供給流の浄化および処理を行った。好ましい実施形態によると、トランスジェニック乳の供給流が安定化され、脂肪、カゼインミセルおよび細菌などの粒状物質が除去される。本発明で使用されるHPTFFの方法では、温度、膜間差圧、分子の電荷、分子の大きさ、クロスフロー速度、および乳濃度を含む最適化されたプロセスパラメータが利用される。膜の長寿命化を保証するのに、洗浄および保存の手順も開発された。浄化されたトランスジェニック乳の供給流中に残存する任意の細菌を除去するのに、無菌ろ過工程も開発された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、2004年3月4日に出願された米国特許出願第60/550,137号に基づく優先権を主張するものであり、その内容は参照として本願明細書に援用される。
【0002】
本発明は、特定の標的分子を初期の供給流中に見出される汚染物質から浄化する改善された方法およびシステムを提供する。より詳細には、本発明の方法は、望ましい分子の所定の供給流からの浄化、濃縮および分画を促進する高性能タンジェンシャルフローフィルトレーションの改善された方法を介する試料溶液の処理について提供する。
【背景技術】
【0003】
本発明は、目的分子の所定の供給流から分画する改善された方法を対象とする。ヒトおよび動物の医薬品製剤、タンパク質、酵素、抗体および他の特殊化学製品の製造において、大量の比較的純粋な生物活性分子の生成は経済的に重要であることに注目する必要がある。様々な組換えDNA技術は、多数のポリペプチド、抗体およびタンパク質の生成における選択法となっている。というのは、それらの方法はかかるタンパク質の大規模な生成を可能にするからである。かかる生成のために利用可能な様々な「プラットフォーム」とは、細菌、酵母、昆虫または哺乳類の細胞培養物およびトランスジェニック動物を含む。トランスジェニック動物系において、好ましい動物タイプは哺乳類の中から得られるが、このプラットフォームの生成方法では、外因性タンパク質、抗体、またはそれらの断片もしくは融合物を生成するのに鳥またはトランスジェニック植物さえ用いることも検討される。
【0004】
組換えタンパク質の生成は、組換えタンパク質または他の目的分子の発現に適する条件下で、宿主細胞に同タンパク質をコードするDNAをトランスフェクトし、宿主細胞、トランスジェニック動物または植物を成長させることを含む。原核生物の大腸菌(E.coli)は、高収率で組換えタンパク質を生成させることが可能であることから好ましい宿主系となっている。しかし、大腸菌からウシにかけて種々の発現プラットフォームが開発されてきていることに対し、タンパク質をコードするDNAの一般的発現に関して極めて多くの米国特許が存在する。
【0005】
かくして生成される生物製剤および医薬品に対する精製および回収プロセスを促進し、より効率化するための新技術を開発するのに、生物系からの外因性タンパク質または他の目的分子の生成における改善に伴い、産業界への圧力が増大し続けている。すなわち、新規生成物のパイプラインの増大に伴い、これらの治療方法を市販規模で速やかに市場に導入するための方法を考案することへの関心が高い。同時に、乳、血液および尿を含む様々な体液からのトランスジェニックタンパク質および抗体の回収に対する新規プロセスの開発の観点からみると、業界は新たな困難に直面しつつある。生産規模が大きくなると、これらの課題はより複雑になることが多い。生物学的に有用な医薬品の生産を監督する様々な政府機関の要求を満たす必要がありうるDNAおよび宿主細胞のタンパク質など、生成物の純度および安全性、特にウイルスの安全性および残留汚染物質の充足の観点で更なる課題が課されている。
【0006】
タンパク質などの生物学的目的分子をこれらの混合物から分離するのに、現在いくつかの方法が利用可能である。かかる重要な技術の一つがアフィニティークロマトグラフィーである。ここでは望ましい分子のアフィニティーマトリックスまたはゲルへの特異的および選択的結合に基づいて分子を分離する一方、望ましくない分子で非結合で残存するものを系外に移すことが可能である。アフィニティーゲルは、典型的にはゲル支持体上に固定化されるリガンド結合部分からなる。例えば、特許文献1では、天然ヘモグロビンがポリ−アニオン部分の特定のファミリーに特異的に結合するという事実に基づき、ヘモグロビンおよびその化学的に修飾された誘導体を精製するのにアフィニティークロマトグラフィーが利用される。捕捉として、これらの部分はゲル自体に固定化される。このプロセスでは、修飾されていないヘモグロビンはアフィニティーゲルによって保持される一方、修飾されたヘモグロビンは、そのポリ−アニオン結合部位が変性剤によって共有結合的に占有されることからゲルに結合できず系から除去される。アフィニティークロマトグラフィーカラムは、高度に特異的であることから極めて純粋な生成物が得られる。しかしながら、アフィニティークロマトグラフィーは比較的高価なプロセスであるために、商業実施において導入することは極めて困難である。
【0007】
典型的には、遺伝子操作されるバイオ医薬品が多種多様な宿主細胞の汚染物質を含有する上清から精製される。逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)は、構造または重量によって互いに非常に酷似する分子種を効率的に分離することが可能なことからタンパク質の精製に利用可能である。多数の分子に対し、RP−HPLCを利用する手順が公開されている(非特許文献1;非特許文献2)。
【0008】
さらに、いくつかの同じ課題に直面する別の産業では新たな答えが求められる。乳漿の濃縮および分画ならびに排水処理が開始されて以来、乳業は同技術を用いた分画、浄化および精製に対する膜システムを利用する一大支持者となっている。1980年代に乳業における研究者らは、標準化されていないチーズの生産で使用される乳を濃縮するのに膜の使用を開始した。近年では、改善された技術によって膜で濃縮される乳が従来と比べて魅力的なものになりつつある。同時に、膜物質、プロセスエンジニアリングおよび乳成分の機能性における技術的進歩により、乳処理のほぼ全ての段階で膜分離プロセスが実用的かつ有用なものになっている。これらの実施についてはまだ乳業のあらゆる側面に適用可能ではないが、それらの可能性は莫大なものがある。
【0009】
例えば、膜分離はほとんどエネルギーを必要とせずに処理の間にいかなる生成物も破壊しないことから、将来における流体乳プロセッサに対して特に魅力的なものでありうる。膜ろ過の4つの基本タイプ、すなわち逆浸透(PC)、ナノろ過(NF)、限外ろ過(UF)および精密ろ過(MF)は、乳業において応用される可能性を示し、それぞれ異なる目的に役立つ。一部の応用プロセスでは単一の膜のみが必要とされるが、高度なアプローチでは、所定の応用において2つ以上の膜プロセスが用いられている。しかし、これらのプロセスは有用であっても、乳業、調理業およびトランスジェニック動物でのバイオ医薬品生産における一部の態様に関しては依然として制約がある。
【0010】
バイオテクノロジー産業と乳業ではいずれにしても、限外ろ過は、タンパク質分子量の比率が少なくとも約10〜1でなければならない場合のタンパク質混合物のサイズに基づく分離において従来から利用されている。これは、産業界全体、特にトランスジェニック哺乳動物の乳におけるバイオ医薬品の回収において、多数の産業用途における限定因子となっている。生理化学的条件(すなわちpHおよびイオン強度)の変更による限外ろ過システムの最適化における研究が盛んに行われ、より高い選択性が達成されている(ヴァン・レイス(Van Reis)ら、(1997年))。本発明の方法によると、pHおよびイオン強度に対して条件をより最適化するのに改善が施されることで、乳を含む様々な供給流における高性能タンジェンシャルフローフィルトレーション(high-performance tangential flow filtration)(HPTFF)の開発が可能になっている。
【0011】
HPTFFでは、分離性能を最大化するのに多様な現象が利用される。これらには、溶質の有効な容量における差を最大にするための溶液のpHおよびイオン強度の操作ならびに孔径が制御された膜の使用が含まれる。
【0012】
前述のように、精製、濃縮および緩衝液交換に対する3つの別々の工程において、現行の産業プロセスおよびバイオ医薬品プロセスは、イオン交換クロマトグラフィー、UFおよびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を利用することが多い。しかし、これらのプロセスは、たとえ互いに接続させてもそれらが分離できるものの観点から制約を受ける。たとえ限外ろ過(UF)であっても、一般に少なくともサイズが10倍異なる溶質の分離に制限される。加えて、電荷が類似する分子種も分離が極めて困難な可能性がある。HPTFFは、生体分子のサイズと電荷の両方の特性における差を利用する二次元精製法である。しかるに、同じ分子量を有する生体分子を分離することが可能である。1個の生体分子を、より大きな分子量の種を、膜を介して通過させる間に保持することさえ可能である。
【0013】
サイズの差が3倍未満の分子は、高度に選択的な帯電膜の使用および緩衝液と流体力学の細かい最適化を介して分離することが可能である。望ましい目的分子の等電点(pI)を知ることは、HPTFFにおける主な因子である。これによって膜の設定、ならびに膜や孔径、流れ特性といった固有の荷電特性が決定されることになる。さらに、HPTFFによって単一のユニット操作でこれらの工程の全てが実行可能になり、これにより生成コストが低減される。さらにHPTFFは、既にUFにおいて確立されたものと同じ線形のスケールアップの原則を用いる。膜間差圧を最適化することもHPTFFにとって役立つ。
【0014】
それは膜タイプによって精密ろ過または限外ろ過として分類可能である。0.1〜10μmの孔径を有する精密ろ過膜は、典型的には微粒子の浄化、滅菌、除去または細胞の採取に対して使用される。それよりもはるかに小さい0.001〜0.1μmの孔径を有する限外ろ過膜は、溶解分子(タンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物、および他の生体分子)の析出および濃縮、緩衝液の交換、および全分画に対して使用される。
【0015】
しかしながら、限外ろ過において達成可能なタンパク質の精製度については限界がある。これらの限界は、主に濃度分極、ファウリング、および大部分の膜の孔径における広範な分布といった現象に起因する。したがって、溶質の識別に弱点があることが多い。例えば非特許文献3を参照のこと。溶質の分極層が追加フィルタとして作用し、本質的に元の限外フィルタに連続して作用する。この作用は、所定の溶媒のろ過に対して顕著な抵抗性を示す。供給において保持される溶質濃度の増大に伴い、分極度は増大し、それが実際のシステムにおける多数の外見上の異常なまたは予測不可能な影響を招く可能性がある。例えば、高度に分極した条件下では、極性を与えられていない条件とは対照的に、圧力の増大に伴い、圧力によって通常線形であるろ過速度がほんのわずかであるが増大する可能性がある。分極層はろ過に対して示す抵抗性が限られていることから、通過面が広がり流束が高まる膜の使用によってろ過速度が増大する可能性はない。保持される溶質と溶出される溶質の間の相互作用によって状況はさらに複雑になる。濃度分極およびファウリングのプロセスの結果によると、血漿タンパク質などの高分子混合物の大規模な溶解に対して限外ろ過膜の高分子分画能を有効に利用することができない。非特許文献4を参照のこと。
【0016】
TFFおよびHPTFFは、分離される成分の大きさに基づくカテゴリにさらに細分化されうる。タンパク質処理において、これらは無傷細胞のサイズから緩衝塩までの範囲でありうる。下の表1は、膜によって保持されるであろう典型的成分と、各区分において膜を通過するであろう典型的成分を列挙する。さらにそれは、一般に各カテゴリに分類される膜孔径の評価または公称分画分子量(NMWL)の範囲を示す。
【表1】

【0017】
物質の分離においてタンジェンシャルフローフィルトレーションが用いられることは知られている。マリナッチオ(Marinaccio)らの特許文献2では、血漿交換用に血液成分などの生物学的液体の分離における使用に対するプロセス(「クロスフロー」と称される)が開示されている。このプロセスでは、血液を有機高分子の微孔性フィルタ膜にタンジェンシャルに(すなわち交差して)通過させ、粒状物質が除去される。本技術の別の例では、ビール溶液のろ過(1987年1月14日に公開されたシャクルトン(Shackleton)の特許文献3)、特に酵母細胞などの微粒子および他の懸濁固体の除去に対するタンジェンシャルフローフィルトレーションが開示されている。1987年2月17日に発行されたコーテ(Kothe)らの特許文献4では、乳または初乳からの免疫グロブリンの精製におけるこのプロセスの利用が開示され、1983年12月13日に発行されたカスティーノ(Castino)の特許文献5では、インターフェロンなどの抗ウイルス物質をこれらの物質を含有する培養液ならびにウイルス粒子およびそれらの由来となる細胞培養物の残留物から分離する場合のその利用が記載されている。
【0018】
細胞残屑からの細菌酵素の分離においてTFFユニットが利用されている(非特許文献5)。この技術を用い、クァーク(Quirk)らは、従来の遠心分離技術を用いる場合よりも高収率でかつ短時間に単離することができた。非特許文献6では、注射用滅菌水のろ過、溶媒系の浄化、ならびに培養液および細菌培養物からの酵素のろ過を含む、医薬品分野におけるいくつかの応用におけるタンジェンシャルフローフィルトレーションの利用について概説されている。
【特許文献1】英国特許第2,178,742号明細書
【特許文献2】米国特許第4,888,115号明細書
【特許文献3】欧州特許第0,208,450号明細書
【特許文献4】米国特許第4,644,056号明細書
【特許文献5】米国特許第4,420,398号明細書
【非特許文献1】マクドナルド(McDonald)およびビドリングマイヤー(Bidlingmeyer)、「Strategies for Successful Preparative Liquid Chromatography」、Preparative Liquid Chromatography,Brian A.Bidlingmeyer(NewYork:Elsevier Science Publishing、1987年)、第38巻、1−104頁
【非特許文献2】リー(Lee)ら、Preparative HPLC.8th Biotechnology Symposium,Pt.1、593−610頁(1988年)
【非特許文献3】ポーター(Porter)編、HANDBOOK OF INDUSTRIAL MEMBRANE TECHNOLOGY(Noyes Publications、パークリッジ、ニュージャージー州、1990年)、164−173頁
【非特許文献4】ミカエルズ(Michaels)、「Fifteen Years of Ultrafiltration:Problems and Future Promises of an Adolescent Technology」,in ULTRAFILTRATION MEMBRANES AND APPLICATIONS,POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY,13(Plenum Press、ニューヨーク、1979年、Anthony R.Cooper編)、1−19頁
【非特許文献5】クァーク(Quirk)ら、1984年、ENZYME MICROB.TECHNOL.、6(5):201頁
【非特許文献6】ジェノヴェシ(Genovesi)(1983年、J.PARENTER.Aci.TECHNOL.、37(3):81頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、同技術の商用アプリケーションにとって必要な粒径の正確な制御が困難であり、一般に成功してきてはいない。本発明では、商用的に効率的で重要なプロセスでサイズおよび電荷による粒子の分離を行うのに、タンジェンシャルフローフィルトレーションの利用が改善されている。浄化および分画への取り組みをまさにTFFによって得られるレベルから改善するのに、本発明を通して得られるHPTFFシステムが利用される。選択された大きさのフィルタの使用、さらに異なる大きさのフィルタの順次使用または連続装着(すなわちろ過システム)が粒子の分離に対して開示されることで、特に望ましいサイズ範囲の粒子が得られる。
【0020】
細胞培養液またはトランスジェニック乳供給流から精製可能なかかる目的分子の1つがヒト組換えアルファフェトプロテインである。他の目的分子として、ヒトアルブミン、抗体、抗体のFc断片および融合分子が挙げられるがこれらに限定されない。ここでヒトアルブミンまたはアルファフェトプロテインタンパク質の断片は担体分子として作用する。
【0021】
本発明の方法は、フィルタの正確な組み合わせおよび目的分子の所定の供給流からの収率の最適化を可能にする条件をも提供する。これらの方法では、pHおよび温度などの重要なプロセスパラメータが正確に操作される。
【0022】
生物製剤産業では、生成物の安全性および純度ならびに物品コストがますます注目されつつある。本発明によるHPTFFの利用は、生体分子の分離にとって迅速でより効率的な方法である。それは免疫学、タンパク質化学、分子生物学、生化学、および微生物学などの広範囲にわたる生物学分野に適用可能である。
【課題を解決するための手段】
【0023】
手短に述べると、本発明の目的は、HPTFF技術を用いてより効率的なタンパク質分画を得ることである。すなわちHPTFFを利用して目的タンパク質の汚染タンパク質からの分離を改善するのが目的である。例として使用される目的タンパク質である組換えヒトアルファフェトプロテインは、分子量が約66KDのタンパク質であり、アルブミンの構造に類似する構造を有する。本発明の方法の目標は、標的タンパク質(rhAFP)を保持し、可能な限り最も効率的な方法で主要な汚染乳タンパク質を通過させることである。本発明によると、汚染乳タンパク質には、IgG、ラクトフェリン、アルブミン、カゼイン、ラクトグロブリン、およびラクトアルブミンが含まれる。本発明の好ましい実施形態によると、100KDのタンジェンシャルフロー膜の方法を用いて組換えヒトアルファフェトプロテインおよびヤギアルブミン以外の全ての濃度が有効に低下する。汚染タンパク質の濃度を低下させることにより、保持される組換えヒトアルファフェトプロテインは、純度と安定性の両方が高められ、従来のクロマトグラフィーをより効率的に用いてさらに精製することが可能である。
【0024】
本発明の方法は、例としてrhAFPを使用するが、他の目的タンパク質に対して使用可能である。100KDのMWCO膜を用いて組換えヒトアルファフェトプロテインが保持され、次いで20mMのリン酸塩緩衝液を用いて溶液を継続的にダイアフィルトレーションする際に他のタンパク質が膜を自由に通過する。
【0025】
浄化された乳中の初期の組換えヒトアルファフェトプロテインタンパク質の純度は、SDSページによると約5〜7パーセントの純度であった。タンパク質分画後、相対純度が85%の収率で約30パーセントに上昇する。本発明のこの初期の分画は、タンパク質が、種々の供給流から、好ましくはトランスジェニック哺乳類の乳からヒト治療用タンパク質、タンパク質断片、または抗体の処理を促進する半精製状態に達する際に、下流のプロセス効率を改善させる。
【0026】
したがって、本発明の好ましい実施形態では、本明細書において開発され提供されるろ過技術は、乳の天然成分またはその汚染物質から望ましい組換えタンパク質または他の目的分子の浄化、濃縮および分画を行うプロセスを提供する。得られる浄化されたバルク中間体は、生成物をその最終調製物および純度に至らせるのに、HPTFFプロセスの下流で利用されるクロマトグラフィーなどの従来の精製技術に適する供給物質である。
【0027】
本発明の好ましいプロトコルは、目的分子を含有する所定のトランスジェニック乳容量から同生成物の浄化、濃縮、および分画を行う3つのろ過ユニットの工程を利用する。浄化工程では、脂肪球およびカゼインミセルなどのより大きな粒状物質が生成物から除去される。その後の濃縮および分画工程では、乳糖、ミネラルおよび水を含む最小分子が除去されることで、純度が上昇し、得られる生成組成物の容量が低下する。HPTFFプロセスの生成物は、最適な下流精製および全体的な生成物の安定性に適するレベルまで調整濃縮される。次いでこの濃縮生成物は無菌ろ過され、最小のバイオバーデンが保証され、長時間にわたって生成物の安定性が高められる。バルク生成物は65%〜85%の純度を実現し、アルブミン、乳漿タンパク質(βラクトグロブリン、αラクトアルブミン、およびBSA)、ならびに低濃度の残留脂肪およびカゼインなどの成分を含有しうる。この部分的に精製された生成物は、従来の下流のクロマトグラフィー技術にとって理想的な出発供給物質である。
【0028】
処理のために本発明を利用可能な生成物に特有なものは、アルファフェトプロテイン、IgG1抗体、融合タンパク質(例えばエリトロポエチン−ヒトアルブミン融合物−「HEAP」もしくはヒトアルブミン−エリトロポエチン;ベータ−インターフェロン−アルファフェトプロテイン融合物)、アンチトロンビンIII、アルファ−1−抗トリプシン、IgG4、IgM、IgA、Fc部分、免疫グロブリン断片に結合されたペプチドもしくはポリペプチドを含有する融合分子などを際限なく含む、遺伝子導入によって生成される目的タンパク質である。本発明によって処理可能な他のタンパク質として、組換えタンパク質、外因性ホルモン、内因性タンパク質または後に処理されることで生物学的機能を回復可能な生物活性のないタンパク質が挙げられる。これらのプロセスの中には、ヒト生長ホルモン、組換えヒトアルブミン、デコリン、ヒトアルファフェトプロテインウロキナーゼ、tPAおよびプロラクチンなどが際限なく含まれる。
【0029】
さらに本発明によると、食塩(NaCl)濃度の変更および2つのダイアフィルトレーション工程は、先行技術と異なり、本発明の方法を用いることによって得られる純度を高めるのに役立つ。
【0030】
粒子や分子などの種を大きさによって分離するためのより高効率の高性能タンジェンシャルフローフィルトレーション方式を提供することが本発明の目的である。かかるプロセスは目的種に対して選択性を有することで、それらのより高倍率の精製がもたらされる。
【0031】
タンパク質などの生体高分子を分離するための限外ろ過法を含む改善されたろ過法を提供することが別の目的であり、同法は濃度分極を最小化して流束を上昇させない。
【0032】
大きさが10倍未満の倍率で異なる種を大きさによって分離可能なろ過プロセスを提供することが別の目的であり、ろ過に先立って混合物の希釈を必要としない。
【0033】
当業者にとってはこれらや他の目的が明確になるであろう。添付の図面を参照することで、以下の本発明の好ましい実施形態の詳細な説明における本発明の他の特徴および利点が明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本明細書では、以下の略語は規定の意味を有する。
【0035】
主要な略語:
BSA ウシ血清アルブミン
CHO チャイニーズハムスター卵巣細胞
CV クロスフロー速度
DFF 直接フローろ過
DV ダイアフィルトレーション容量
IEF 等電点電気泳動
GMH 質量流束(グラム/m/時間)−Jも同様
LMH 液体流束(リットル/m/時間)−Jも同様
LPM リットル/分
M モル濃度
MF 精密ろ過
NMWCO 公称分子量カットオフ
NWP 標準化水透過性
PES ポリ(エーテル)−スルホン
pH 周知の科学的パラメータによる化学物質または化合物の水素−イオン活性を示すのに用いられる用語
PPM パーツパーミリオン
SDS−PAGE SDS(ナトリウムドデシルサルフェート)ポリ−アクリルアミドゲル電気泳動
SEC サイズ排除クロマトグラフィー
TFF タンジェンシャルフローフィルトレーション
PEG ポリエチレングリコール
TMP 膜間差圧
UF 限外ろ過
用語の説明:
浄化
溶液が0.2μmの膜を通過可能なようにして溶液から粒状物質を除去すること。
【0036】
コロイド
キャピラリー壁を交差して容易に通過しない大分子を示す。これらの化合物は、膠質の(すなわちそれらは流体を引き付ける)負荷を与え、血管内容量を回復させ組織灌流を改善するのに通常投与される。
【0037】
濃縮
保持される分子の小分子に対する比率が上昇するように膜によって水と小分子を除去すること。
【0038】
濃度分極
膜間差圧、クロスフロー速度、試料粘度、および溶質濃度といった因子の組み合わせによって膜の表面上で保持される分子の蓄積(ゲル層)。
【0039】
クロスフロー速度
膜の表面上を交差する流体の速度。CF=Pi−Po(式中、Piは流入口での圧力、Poは流出口での圧力であり、MF保持液の流速に関係する。)
ダイアフィルトレーション
膜を通過するより小さい分子を洗浄し、MF保持液中により大きな目的分子を残存させる分画プロセス。それは、食塩を除去または交換し、洗剤を除去し、結合分子から遊離させて分離し、低分子量物質を除去し、あるいはイオンまたはpHの環境を速やかに変化させるための便利かつ効率的な技術である。同プロセスでは、典型的にはスラリー濃度を一定に維持する間に目的生成物をスラリーから除去するのに利用される精密ろ過膜が利用される。
【0040】
供給流(feedstream)
処理または方法において提供され、目的タンパク質を含有し、微生物、ウイルスおよび細胞断片を含む様々な汚染物質も含有する場合がある原料または原液。本発明の好ましい供給流は、目的の外因性タンパク質を含有するトランスジェニック乳である。
【0041】
ろ過流束(J)
試料の一部が膜を通過している時の速度。
【0042】
流速(V)
流体が膜表面を通過する時の速度は、流体の流速であると考えられる。生成物の流束は、流速が変化するものとして測定されることになる。2つの変数間の関係によって流れに対する最適な操作窓を決定できるであろう。
【0043】
分画
物理的または化学的部分に基づく分子の選択分離。
【0044】
ゲル層
顕微鏡下で見られる、膜の上に形成可能な分子の薄層。それは、膜表面を詰まらせることによって分子の保持に影響を与え、それによってろ液の流れを低下させることが可能である。
【0045】
高性能タンジェンシャルフローフィルトレーション
HPTFFは、サイズと電荷の両方に基づいてタンパク質−タンパク質の分離を実施可能な高解像度のプロセスであり、クロマトグラフィーに類似する生成物収率および精製係数をもたらす。HPTFFにおいて使用される膜のNMWLは10kD〜300kDの範囲である。
【0046】
膜孔径の評価(MPSR)
典型的にはマイクロメートル値として与えられる膜孔径の評価によると、同評価より大きい粒子は膜によって保持されることが示される。
【0047】
公称分子量カットオフ(NMWCO)
限外ろ過膜におけるサイズ(キロダルトン)の意味。NMWCOは、膜によって90%保持される球状タンパク質の分子量として定義される。
【0048】
公称分画分子量(NMWL)
極めて溶解性が高く、NMWLよりも分子量が大きい高分子およびNMWLよりも分子量が小さい一部の高分子が対象の膜によって保持されることを示す膜評価システム。
【0049】
標準化透水性(NWP)
TFF装置の初期洗浄の間に特定の再循環速度において確定されるろ過水の流速。膜の回復を算出するのにこの値が用いられる。
【0050】
目的分子
液体を例とする流体中の溶液または懸濁液から分離されるべき粒子または他の分子種。流体、およびほとんどの場合、流体中の他の粒子または分子から目的の粒子または分子が分離される。分離されるべき目的分子の大きさは、用いるべき膜孔径を決定することになる。好ましくは、目的分子は、生物学もしくは生化学に由来するか、トランスジェニックもしくはin vitroでのプロセスによって生成され、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、抗体もしくは抗体断片を含む。好ましい供給流の供給源の例として、哺乳類の乳、哺乳類の細胞培養物ならびに細菌、真菌、および酵母などの微生物の細胞培養物が挙げられる。ろ過によって除去されるべき種として、望ましくないポリペプチド、タンパク質、細胞性成分、DNA、コロイド、マイコプラズマ、内毒素、ウイルス、炭水化物、およびグリコシル化されるか否かといった生物学的関心のある他の分子が挙げられることも注目すべきである。
【0051】
タンジェンシャルフローフィルトレーション
逆拡散に対する物質移動係数を増大させるのに、ろ過によって分離されるべき成分を含有する流体混合物が膜面にタンジェンシャルな高速度で再循環されるプロセス。かかるろ過では、フィルタを通して流体およびろ過可能な溶質の流れを引き起こすのに、膜の長さ方向に沿って圧力差が適用される。このろ過は、バッチプロセスならびに連続フロープロセスとして適切に行われる。例えば、フィルタを通過するその流体が持続的に分離ユニット内に導かれるかまたは溶液が膜全体にわたって一度通されてフィルタを通過する流体が連続的に下流で処理される間、溶液を膜全体に繰り返し通過させてもよい。
【0052】
膜間圧
フィルタを通して流体およびろ過可能な溶質の流れを引き起こすのにろ過膜の長さ方向に沿って適用される圧力差勾配。タンジェンシャルフローシステムでは、最高のTMP有するものは流入口(流れチャンネルの開始)で最高で、流出口(流れチャンネルの終了)で最低である。TMPは、流入口、流出口、およびろ液ポートの平均圧力として算出される。
【0053】
回収
処理後に回収可能な目的分子の量。通常、出発物質の百分率または収率として表される。
【0054】
MF保持液
濃縮物としても知られる膜を通過しない試料の一部。TFFの間、MF保持液は再循環されつつある。
【0055】
タンジェンシャルフローフィルトレーションの基本
全てのタンジェンシャルフローデバイスに関与する2つの重要な変数、すなわち膜間差圧(TMP)とクロスフロー速度(CF)がある。膜間差圧(TMP)とは、実際にはフィルタの孔を介して分子を押す力である。クロスフロー速度は、溶液が膜を交差する流速である。それは膜を詰まらすことによってプロセスの有効性を低下させうるより大きな分子を洗い流す力を与える。実際には、流体の供給流を、フィルタにおいて膜表面を交差する(クロスフロー)試料容器の供給源からポンピングし、MF保持液として試料供給容器内に戻す。クランプによってMF保持液チューブに加えられる逆圧は、フィルタを介して膜孔よりも小さい分子を駆動してろ液(または透過液)分画中に至らせる膜間差圧を創出する。クロスフローは、膜の表面上に保持されるより大きい分子を一掃してMF保持液として供給側に戻す。TFFプロトコルの実施に成功するための第一の目標は、膜を詰まらせるゲルを生成することなく試料の最大容量をろ過可能であるようにTMPおよびCFを最適化することである。TMPが一般に約10psiを超える、好ましくは約5psiを超える平均のTMPによって膜の長さ方向に増減しない場合、TMPは「実質的に一定」である。TMPは、ろ過全体にわたるTMPのレベルに関し、濃縮工程の間に一定に保持されるかまたは低下することでより高い濃度での選択性が保持される。したがって、「実質的に一定のTMP」とは、膜の長さに対するTMPであってろ過時間に対するものではないことを示す。
【0056】
概要
本発明の好ましい実施形態によると、トランスジェニック(「TG」)乳は、精密ろ過を用いて初期に浄化されることで、脂肪球およびカゼインミセルが除去される。精密ろ過からの透過液は、乳タンパク質が保持される30kDのTFFカセットシステムを介して再循環される。すなわち食塩と糖は膜を通過し、ダイアフィルトレーション用緩衝液として精密ろ過のMF保持液へ再循環される。組換えヒトアルファフェトプロテイン生成物は、30KDの膜によって保持される浄化された乳内に存在する。組換えヒトアルファフェトプロテインは、ここでは乳タンパク質の複合混合物を有する溶液中に、一部は大量の溶液中に存在する。汚染乳タンパク質の量を低下させ、クロマトグラフィーを用いた精製のために組換えヒトアルファフェトプロテインを調製するのに、100kDのタンパク質分画工程が設計される。
【0057】
100kDの分画が実施されうる前に、乳中に見出される食塩を除去するのに、目的タンパク質を含有する浄化された乳の緩衝液を交換しなければならない。したがって一旦浄化が完了すると、次いでpH6.5で20mMのリン酸塩緩衝液の場合と同じ30kDのTFFカセットを使用し、目的タンパク質(例えば組換えヒトアルファフェトプロテイン)を5回ダイアフィルトレーションすることが可能である。浄化された乳の食塩濃度を低下させるのに、この初期ダイアフィルトレーションが必要である。食塩濃度を低下させることにより、組換えヒトアルファフェトプロテインの流体力学的半径は増加し、同タンパク質が100kD MWCOのHPTFF膜によって容易に保持されうる。他の乳タンパク質(ヤギアルブミンを例外とする)は、組換えヒトアルファフェトプロテインと同様の影響を受けることはない。したがって、それらは100KDの膜を自由に通過し、除去され、廃棄物として廃棄されることになる。
【0058】
100kDのタンパク質分画の目標は、クロマトグラフィーに先立って不要な乳タンパク質、脂質、および低分子量の汚染物質を除去することである。ダイアフィルトレーションを用いて汚染物質を有効に除去することにより、プロセスの残りのクロマトグラフィー工程にかかる負荷は低下する。
【0059】
供給流としての乳
本発明の好ましい実施形態によると、HPTFFプロセスは、乳供給流から生成物の浄化、濃縮、および分画を行う3つのろ過ユニットの工程を用いる。この乳は、バイオ医薬品または他の目的分子を含有するトランスジェニック哺乳動物の生成物でありうる。好ましい実施形態では、目的分子に対して高度に選択的であるようにシステムが設計される。浄化工程では、脂肪球およびカゼインミセルなどのより大きな粒状物質が乳供給流から除去される。濃縮/分画工程では、乳糖、ミネラルおよび水を含む最小分子が除去されることで、純度が増大し、生成物の容量が低下する。その後で、TFFプロセスの生成物は、最適な下流での精製および全体的な生成物の安定性に適するレベルに濃縮される。次いで、目的分子を含有するこの濃縮生成物は、無菌的にろ過されることで、最小のバイオバーデン(すなわち内毒素)が保証され、長期間にわたって目的分子の安定性が高まる。本発明の好ましい実施形態によると、バルク生成物は、65%〜85%の純度を実現することになり、ヤギ抗体(トランスジェニックヤギ由来)、乳漿タンパク質(βラクトグロブリン、αラクトアルブミン、およびBSA)ならびに低レベルの残存する脂肪およびカゼインなどの成分を含有しうる。この部分的に精製された生成物は、乳中に生成される組換えタンパク質、乳中に生成される免疫グロブリン、または融合タンパク質などを際限なく含みうる目的分子をさらに選択して単離する、従来の下流のクロマトグラフィー技術にとって理想的な出発供給物質である。
【0060】
工程番号1(浄化)
図1を参照すると、好ましくはヤギまたはウシ由来のトランスジェニック哺乳動物乳がバッチに適した精密ろ過を利用して浄化される。乳は供給タンク内に入れられ、ループ内でポンピングされることで、乳MF保持液が2倍に濃縮される(図1中の流れ図を参照)。乳MF保持液が一旦濃縮されると、ダイアフィルトレーションが施され、これにより生成物および小分子量のタンパク質、糖、およびミネラルが適切な大きさの膜を通過することが可能になる。本発明によると、この工程は現在2〜3時間かかるように設計され、1日あたり1000リットルの乳を処理することになる。本発明の技術および方法は拡張可能であり、生成可能な生成物の全容量は、特定の目的分子に対する商業的および/または治療的需要に依存している。
【0061】
工程番号2(濃縮/分画)
再び図1を参照すると、第1の工程からの浄化された透過液は、限外ろ過(「UF」)を用いて濃縮されて分画される。浄化された透過液は、UF供給タンク内に流れ、ループ内でポンピングされることで、生成物が2倍に濃縮される。一旦濃縮工程が開始すると、UFからの透過液は、第1の工程における浄化供給タンク内の乳MF保持液中に入れられる。第1および第2の工程は、同時に処理されるように大きさと時間が調節される。UFからの透過液は、膜を通過する小分子量タンパク質、糖、およびミネラルを含有する。一旦生成物の95%がUFのMF保持液中に蓄積されると、浄化が停止され、UF物質の濃縮/ダイアフィルトレーションが開始される。生成物は、初期乳容量の5〜10倍に濃縮され、緩衝液がUFの供給タンクに添加される。これは小分子量タンパク質、糖、およびミネラルの大部分を洗い流す。この工程は、現在2.5〜3.5時間かかるように設計され、1日最大500リットルの浄化された透過液を処理することが可能である。上記の如く、本発明の技術および方法は拡張可能であり、生成可能な生成物の全容量は、この濃縮/分画プロセスに依存し、特定の目的分子に対する商業的および/または治療的需要に依存している。
【0062】
工程番号3(無菌ろ過)
図1および本発明によると、そこでは浄化されたバルク濃縮物は無菌的に精密ろ過される。大部分のバイオバーデンを除去し、長期間にわたって生成物の安定性を高めるために、生成される50〜100リットルのUFMF保持液は、デッドエンドの0.2μmのMF絶対ろ過システムを介してポンピングされる供給タンク内に入れられる。生成物を本発明のろ過システムを介してポンピングし、次いで直接に最終の実装構成内に充填してもよい。クリーンルーム仕様(例えば、クラス100条件)の満足を容易にするGMPにおいて目的分子を処理するための条件下。この工程は現在0.5〜1時間かかるように設計され、1日あたり100リットルの浄化されたバルク中間体を処理することになる。上記の如く、本発明の技術および方法は拡張可能であり、生成可能な生成物の全容量は、この濃縮/分画プロセスに依存し、特定の目的分子に対する商業的および/または治療的需要に依存している。
【実施例】
【0063】
実施例1
目的分子の浄化における供給流としての乳
下記データは、生乳供給流から遺伝子導入によって生成される目的タンパク質(例えば、ヒト組換えアルファフェトプロテイン)の浄化、濃縮、および分画を行うための膜をベースとするプロセスを提供する本発明の応用を提供する。本発明のこの実施例によると、処理するための乳を提供するトランスジェニック哺乳動物はヤギであったが、ウシ、ウサギ、マウス、ならびにヒツジおよびブタを含む他の哺乳動物も利用可能である。
【0064】
タンパク質分画における出発物質を、精密ろ過を用いて既に浄化してから初期の膜の最適化研究のために蓄えていた。これらの各パラメータの効果を評価し、汚染乳タンパク質からの組換えヒトアルファフェトプロテインの分離における最適条件を特定するのに、一連の実験を設計した。最初に各変数が最適化されるまで1変数を1回に変化させ、同変数は分画に適する一連の条件を示した。分画実験のために、以下のパラメータ範囲を選択した。
【0065】
I.膜の分子量カットオフ(MWCO) 50〜100kD
II.膜間差圧(TMP) 5〜30psi
III.浄化した乳のpHおよびイオン強度(20mMのリン酸塩、pH6.5)
0M〜1.0M NaCl
IV.浄化した乳の濃縮係数(CFac) 1倍〜4倍
V.ダイアフィルトレーション容量数 12〜20DV
VI.浄化した乳ロット (物質を参照)
VII.膜の回復 (セクションVIIを参照)
TFFシステムを、0.1M NaOHを用いて清浄化し、USP水で流し、pH6.5で20mM リン酸ナトリウム緩衝液を用いて平衡化した。初期水の透過速度を測定して記録した。まず4リットルの浄化した乳を倍率の係数分だけ濃縮し、容量を1リットルに低下させた。次いで、pH6.5で20mMのリン酸ナトリウム緩衝液を用い、濃縮した浄化した乳をダイアフィルトレーションした。ダイアフィルトレーション容量の定数分だけ乳をダイアフィルトレーションするのではなく、代わりに280nmで4.0のO.D.までダイアフィルトレーションした。この吸光度は、6g/lの全タンパク質と大まかな相関関係がある。以下のクロマトグラフィー工程によるプロセスに制限が課されるために、全タンパク質のこの濃度を選択した。一旦ダイアフィルトレーションが完了すると、系を排出させ、その際に最終MF保持液と組み合わせた1リットルのリン酸塩緩衝液で流した。次いで、0.2μmのカプセルフィルタを用いて分画した組換えヒトアルファフェトプロテインを無菌ろ過した。
【0066】
次いで分画した組換えヒトアルファフェトプロテインを、RPCを用いて全タンパク質、AFP濃度、および汚染タンパク質について分析した。さらに、SDSゲルを実施することで、残存する汚染タンパク質をさらに評価した。
【0067】
本発明のHPTFFシステムは、2つの蠕動ポンプを具備するポール(Pall) Centramateの4つのゲージシステムからなる。MF保持液を再循環させるのに第1のポンプ、透過液を再循環させるのに第2のポンプを使用した。このポンピングスキームはコカレントな(Co−Current)流れとして知られている。図1および図2を参照のこと。膜の全経路長に沿ってTMPの均衡を保つことは最も一般に用いられ、これによってより均一な分画が保証される。
【0068】
結果
I.膜の分子量カットオフ(MWCO)



II.膜間差圧(TMP)
タンパク質分画工程の進行の中に、再循環モードで100KD HPTFF膜を使用するプロセスの最適化を含めた。まずTMPと流束とを比較することでプロセス条件を特性化した(下記参照)。出発物質は、pH6.5で20mMのリン酸塩緩衝液を用いてダイアフィルトレーションを施した浄化した乳であった。低い食塩濃度がrhAFP分子の保持を増大させる際、緩衝液条件はこの分画に適合した。最適化とは、発明者らにとって最適なTMPが12〜20psiである必要があり、それは膜で制御される領域を超え、膜が層状に制御される場合の遷移域(transition zone)内にあることを示す。クロスフロー速度のさらなる最適化を行わなかったが、その代わり製造者によって推奨される0.6L/分/ftで保持した。

一旦最適化が完了すると、HPTFF分画に対する操作パラメータセットを確定することができた。タンパク質分画のために確定したこれらの操作パラメータは、再生可能プロセスを維持するのに重要である。監視を必要とする重要なパラメータには、膜間差圧、クロスフロー速度、および緩衝液条件が含まれる。
【0069】
III.浄化した乳のpHおよびイオン強度


IV.浄化した乳の濃縮係数(CFac)
容量を低下させてダイアフィルトレーションに必要な緩衝液の量を保つのに、タンパク質分画を4倍の初期濃縮で構成した。進行プロセスの間、濃縮工程を初期には用いなかったが、1倍でのダイアフィルトレーションに必要とされる緩衝液の容量が過剰であった際、後に必要であることが判明した。次いで、濃縮した浄化した乳を10〜20の容量でダイアフィルトレーションした。
【0070】
1倍での分画
pH6.5で20mM リン酸ナトリウム緩衝液を使用し、初期に浄化した乳を12回ダイアフィルトレーションした。一旦ダイアフィルトレーションが開始すると、汚染タンパク質がMF保持液から除去されるにつれて流束は増加し始める。


【表2】

【表3】

【0071】
4倍での分画
初期に倍率の係数分だけ浄化した乳を濃縮し、出発容量の25%に容量を低下させた。濃縮の間に流束における初期低下がグラフのDVの0ポイントで見られる。次いで、pH6.5で20mMのリン酸ナトリウム緩衝液を用い、濃縮した浄化した乳を20回ダイアフィルトレーションした。一旦ダイアフィルトレーションが開始すると、汚染タンパク質がMF保持液から除去されるにつれて流束が増加し始める。次いで最終の4倍の濃縮物を緩衝液と等しい容量でTFFシステムから流出させ、出発容量の2倍に至るまで最終濃度を低下させる。

【表4】

【表5】

【0072】
V.ダイアフィルトレーション容量数
ダイアフィルトレーション容量の定数を用いて浄化した乳を分画する一代替案は、MF保持液が280nmでO.D.に低下するまでダイアフィルトレーションを行う代わりとなる。ダイアフィルトレーションを停止させる正確な点を280nmでのMF保持液の吸光度によって決定する。目標の吸光度は、4倍濃縮で4.0AUであった。この280nmでの吸光度4.0は、RPCによる6mg/mlの全タンパク質と大まかに相関する。これはプロセスが初期濃度とは無関係に同じ全タンパク質濃度で分画した生成物を常に生成することを可能にする。最終の全タンパク質濃度に対して設定される目標は、一旦20mMのリン酸塩緩衝液の流出に伴って1:1に希釈される場合、2.8〜3.2mg/mlである。

【0073】
グラフは、ダイアフィルトレーション容量に対する流束およびダイアフィルトレーション容量に対する吸光度の傾向を直接に示す。ダイアフィルトレーションが進行するにつれて、吸光度はやや指数関数的に減衰することになる。一旦通過するタンパク質の大部分が除去されていると、保持されるタンパク質は最終の分画した生成物を構成する。この最終生成物は、典型的には主に組換えヒトアルファフェトプロテインタンパク質、アルブミン、およびカゼインを含有する。
【表6】

【0074】
RPC分析は、2つの重要なデータ片、すなわち組換えヒトアルファフェトプロテイン濃度および全タンパク質濃度を示す。上の表は、分画開始前に初期組換えヒトアルファフェトプロテイン濃度が0.61mg/mlであることを示す。分画後では、濃縮係数が2倍の時に最終濃度は0.94mg/mlである。2倍の濃縮係数を目標とすると、以下のようにして最終収率を算出しうる。
【0075】
%収率=((最終濃度/濃縮係数)/初期濃度)×100
%収率=((0.94mg/ml/2)/061mg/ml)×100=78%収率
*注意:用いられる濃縮係数が目標値にすぎないことからこの収率は近似値にすぎない。
【表7】

【0076】
rpcを用い、最終の組換えヒトアルファフェトプロテイン試料をその全タンパク質濃度について試験する。これはカラム充填において後に用いられる情報である。最終の分画した組換えヒトアルファフェトプロテインに対する目標の全タンパク質濃度は、初期には4倍濃縮で6mg/mlを目標とした。次いで、分画した組換えヒトアルファフェトプロテインを流出用緩衝液(flush buffer)に等しい容量で希釈し、最終目標として全タンパク質濃度を3.0mg/mlに至らせる。
【0077】
タンパク質の純度(RPCおよびSDS PAGEによる)
次いで、RPCを用い、分画した組換えヒトアルファフェトプロテインを汚染タンパク質について分析した。加えてSDS PAGEを実施することで、残存する汚染タンパク質についてさらに評価した。

【0078】
上記RPCクロマトグラムは、100KDのタンジェンシャルフロー膜によって行われるタンパク質分画を明らかにするのに役立つ。第1のRPCクロマトグラムは、1.0mg/mlの組換えヒトアルファフェトプロテインが4.2分の溶出時間で参照を精製したことを示す。第2のRPCクロマトグラムは、タンパク質を分画する前の浄化した出発乳を示す。第3のRPCクロマトグラムは、分画した組換えヒトアルファフェトプロテイン(ピーク数6)および残存する汚染乳タンパク質を示す。ピーク1および2は未確認の乳タンパク質、ピーク3および5はカゼイン、ピーク数4はヤギ血清アルブミン、ならびにピーク7は高分子量の乳タンパク質である。第2および第3のクロマトグラムの間の差は、タンパク質分画の工程によって除去される汚染タンパク質の相対量を示す。

【表8】

【0079】

【0080】

【0081】
VI.膜の回復
標準化水透過性(NWP)とは、実施間の膜性能の回復の指標である。膜の洗浄の有効性を測定するための手段がない場合、膜寿命に至るまでの期間に性能が失われる可能性があろう。新たな膜のNWPは、測定され、さらなる全ての記録されるNWPデータに対する参照点として役立つ。元のNWPの90%を超える分が回復されている場合、膜は典型的には「洗浄(clean)」であると考えられる。以下のグラフは、進行過程に使用した1つのポール(Pall) OS100C12カセットの傾向を示す。

【0082】
適切に洗浄されていないカセットを使用する影響を示す最も有効な方法は、汚れた膜を用いてプロセスを実際に実施させることである。以下のグラフは、膜のNWPが元のNWPの60%を超えるほどに回復していない場合の3つの別々の実施のプロセス流束を示す。実施番号の081403A、081403B、081503A、および081503Bは、いずれも50〜70LMHの範囲におけるプロセス流束を示す。一旦これらの4つの実施が完了すると、50℃で0.5MのNaOHおよび400ppmのNaOClを用いて膜を徹底的に洗浄した。NWPを測定し、NWPが元のNWPの90%を超えるほどに回復されることを示した。実施番号の081803A、081803B、081903Aは、いずれも110〜130LMHの範囲におけるプロセス流束を示す。これらのプロセス流束は、082003Aの実施によって明らかな如く、新たな膜のプロセス流束に対応する。
【0083】
SDS Pageを用いて各実施からの最終の分画した生成物を比較した。汚れた膜を用いる場合、プロセス流束はかなり低下したが、分画が相当な影響を受けるようには見られない。このデータが前述のNWPの回復モデルを支持することは確かであり、この分画プロセスにおいて利用可能である。
【0084】

【0085】

【0086】
本発明では、HPTFFを用いて目的タンパク質を汚染タンパク質から分離する目的を明らかにした。この分画の目標は、標的タンパク質(AFP)を保持し、主な汚染乳タンパク質を通過させることである。RPC、全タンパク質、およびSDSゲルの結果は、汚染乳タンパク質の濃度が有効に低下しうることを確定的に示した。l00kDのタンジェンシャルフロー膜および本発明の方法を用いると、組換えヒトアルファフェトプロテインおよびCSA以外の全ての濃度は有効に低下する。
【0087】
膜の分子量カットオフ(MWCO)
膜孔径および化学的性質は、分画の有効性において重要な役割を担う。30KD、50KD、70KDおよび100KDを含むいくつかのMWCO膜を評価した。MWCOが30KDの場合と同程度に低い場合、いかなる操作条件を用いても汚染タンパク質は保持される。この孔径を用いる分画であれば、組換えヒトアルファフェトプロテインタンパク質から汚染タンパク質が有効に分画されないであろう。より大きい孔径の各々を、その保持品質および選択性について評価した。30kd、50kd、および70kdの膜の全てが多数の汚染乳タンパク質を保持することが判明し、この分画に対して有効に使用することができなかった。l00kdの膜では、最適化前の初期にかなりの生成物が失われることを示した。この膜孔径は、使用可能な最大のサイズであるが、依然として組換えヒトアルファフェトプロテインタンパク質を保持可能であることが判明した。
【0088】
再生セルロース、ポリアクリロニトリル(PAN)、および修飾されたポリエーテルスルホン(PES)を含む様々な膜タイプ。各膜は、それ固有の一連の特性を有し、分画に影響を与えうる。一旦適切な膜孔径を選択してから、膜のタイプまたは化学的性質を評価した。ポール(Pall Corp.)の修飾されたポリエーテルスルホン(PES)膜であるオメガ(Omega)が均一な孔径および中性の膜電荷を有する故にそれを選択した。
【0089】
膜間差圧(TMP)
再循環モードで100KD HPTFF膜を用いて最適な膜間差圧を決定した。出発物質は、pH6.5で20mMのリン酸塩緩衝液でダイアフィルトレーションした浄化した乳であった。低い食塩濃度がrhAFP分子の保持を増大させることから、緩衝液条件はこの分画に適合した。最適化曲線は、TMPのプロセスがちょうど遷移域内にある約12〜20psiである必要があることを示した。膜で制御される領域におけるより低いTMPにより、汚染乳タンパク質とそれらの透過を低下させる膜の間の電荷相互作用が増幅される。ゲル層で制御される領域におけるより高いTMPにより、全てのタンパク質が表面まで駆動され、バルク溶液の物質移動係数が増大する。これにより、組換えヒトアルファフェトプロテインタンパク質の回収が低下し、分画の有効性がより低下する。クロスフロー速度をさらに最適化しなかったが、代わりに製造者によって推奨される0.6L/分/ftで同速度を保持した。
【0090】
浄化した乳のpHおよびイオン強度
組換えヒトアルファフェトプロテインの等電点は約5.0であり、膜の等電点は7.0である。組換えヒトアルファフェトプロテインの保持を最大にするために、緩衝溶液のphを6.0〜6.5であるように選択した。これらの条件下では、膜と組換えヒトアルファフェトプロテイン分子の両方が負電荷を有し、互いに反発することになる。イオン強度は、組換えヒトアルファフェトプロテインのタンパク質分子の保持特性において重要な役割を担った。食塩条件を上昇させた(>1.0mlのNaCl)条件下では、分子はほぼ全ての操作条件下で100kdの膜の孔をより自由に通過した。食塩が低下した条件下ではその逆は真である。すなわち組換えヒトアルファフェトプロテインのタンパク質分子の大部分が保持される。この現象に寄与している2つの因子が知られている。食塩濃度の低下によってタンパク質と膜の間での電荷の影響が増大する。さらに食塩濃度の低下は、組換えヒトアルファフェトプロテインタンパク質周囲の水層の「膨張(swelling)」効果を引き起こす。これらを組み合わせた効果は、通常では起こらないと思われる100KDの膜による分子の保持を引き起こす。
【0091】
浄化した乳の濃縮係数(CFac)
浄化した乳の濃縮係数は、乳全体で初期には2倍の濃度である。次いで、本発明の100KD HPTFF膜システムを用い、浄化した乳を分画する。典型的には、最大のゲル層濃度(C)倍の値を掛けてC/eにすることにより、ダイアフィルトレーションの最適点(C)を決定する。
【0092】
=C/e=0.37C
浄化した乳が濃縮されるにつれて大量のタンパク質が除去されることから、分画のダイアフィルトレーション部分における最適濃度は容易に算出されない。したがって、バルクタンパク質濃度が半対数プロット上で予測されるように増加しないことからCは常に変化している。
【0093】
したがって、ダイアフィルトレーションの最適点には実験的に到達させた。浄化した乳を1倍、2倍、および4倍でダイアフィルトレーションした。分画前に濃縮係数を増加させる影響により、同じレベルの純度に至らせるのに必要なダイアフィルトレーション容量数が増加した。しかし4倍に濃縮することの利点は、ダイアフィルトレーション容量数が2倍になっても必要とされる緩衝液を50%低下させることが可能であることであった。
【0094】
ダイアフィルトレーション容量数
除去されている汚染タンパク質の量が透過液中で失われている組換えヒトアルファフェトプロテイン量未満であった点により、組換えヒトアルファフェトプロテインを分画するのに使用されるダイアフィルトレーション容量数を決定した。SDS PAGEの情報を観察することにより、その点を評価することが可能である。1倍の濃度で必要とされる初期のダイアフィルトレーション容量数は約10DVであり、4倍では20DVであった。最も効率的なスキームが20DVで4倍の濃度の後者であることが判明した。
【0095】
初期Q−カラム展開後にダイアフィルトレーションの終点に変化を施した。実施間での全タンパク質の量を監視し、それは使用するダイアフィルトレーション容量の正確な数を予測するのにより有効な方法であることが判明した。
【0096】
分画に対して選択される最終的な方法は、MF保持液が280nmで測定されたO.D.より下に低下するまでダイアフィルトレーションすることである。280nmでのMF保持液の吸光度によってダイアフィルトレーションを停止させる正確な点を決定した。目標の吸光度が4倍濃縮で4.0AUであることを見出した。280nmでのこの4.0の吸光度は、RPCによる約6mg/mlの全タンパク質に大まかに対応する。これはプロセスが出発濃度とは無関係の同じ全タンパク質濃度で分画した生成物を常に生成することを可能にする。後続するアニオン交換クロマトグラフィー工程によるプロセスに課される制約が理由で、この全タンパク質濃度を選択した。汚染タンパク質のAFPに対する比率は、Q−カラムの充填に作用することから、実施間で一貫性を保たなければならない。Q−充填の最終的な全タンパク質濃度に対して設定される目標は、一旦20mMのリン酸塩緩衝液で1:1に希釈される場合、2.8〜3.2mg/mlである。
【0097】
浄化した乳ロット
分画に対して使用される浄化したロットは、同終点(O.D.280nm)に達するのに必要なダイアフィルトレーション量に影響を与える。泌乳において先に収集した浄化した乳は、泌乳の最後で収集したロットより全タンパク質を50%多く含むことが多かった。しかし、浄化したロットにおける生成物量は一定を維持することが多かった。タンパク質濃度における差は、泌乳において初期に汚染乳タンパク質の量が高まることに起因する可能性があった。言い換えると、これらの初期の浄化した乳ロットは、後のものより約50%多いダイアフィルトレーションを必要とした。RPC、SDS PAGEを含んだ分析およびブラッドフォード(Bradford)全タンパク質試験のいずれもが、使用した浄化した物質とは無関係に、分画した全ロット間で同様の結果を示す。
【0098】
膜の回復−標準化水透過性(NWP)
HPTFFカセットシステムを最大で1年間再利用されるように設計する。したがって、各実施後に膜を有効に洗浄することは重要である。100KDの膜に使用した洗浄溶液は、40〜50℃で1時間にわたる0.5MのNaOHおよび400ppmの漂白剤であった。この洗浄レジーム(cleaning regime)は膜の標準化水透過性(NWP)を回復させるのに有効であることが判明した。膜のNWPは、カセットが新しい場合に得られる元のNWPの90%以内であるならば「回復した(recovered)」と考えられる。サイクル番号に対するNWPのグラフは、膜が少なくとも60回の実施の予想寿命を有する必要があることを示す。
【0099】
タンパク質分画が大掛かりな作業であり、膜の回復によって膜の性能が予測可能であることをさらに検証するのに、膜を意図的に汚してからタンパク質分画において膜を3回使用した。プロセスの流束は、その洗浄相手(clean counterpart)の約半分であったが、分画効率は驚くほどに変化がなかった。RPCおよびSDS PAGEを用いて分画した物質を分析することで均一性を示した。このデータは、水の流束がそれに課されている90%の回復という仕様をはるかに下回る可能性があることを示す。
【0100】
この実験から得られるデータは、100kD MWCOを用いるタンパク質分画であるHPTFFシステムが、本発明に関し、汚染乳タンパク質の濃度を有効に低下させることが可能であることを示した。プロセスは80〜100LMHの液体流束で効率的に稼動し、クロマトグラフィーなどの他の上流の精製法と比較した場合、必要とされる主要な機器は最小限である。相対的な組換えヒトアルファフェトプロテインのタンパク質純度は、初期には浄化した乳中で6〜10%に始まり、分画後に30%の純度にまで上昇する。歩留まりは、一貫して80%の範囲内にあり、後続する精製工程に匹敵する。
【0101】
本発明に従う実験戦略とは、生成物の通過、保持および品質に対して、大規模に制御可能なろ過におけるプロセス変数(CM、V、TMP、T)の間の関係を決定することであった。ここでVは流速である。個々のベンチスケール実験のマトリックスを介して関係を決定し、操作の最適なウインドウを確認した。これらの最適パラメータを、全体の収率および質量バランスが検討される一連の実験内に組み合わせる。生成物の収率、清澄度、および流束効率によって性能を判定した。個々のベンチスケール実験のマトリックスにおいて以下のプロセス変数を検討する。
【0102】
濃度(Cm) 実験によって得られる生成物の通過データを用いて最適な乳濃縮係数を決定する必要があった。一定の時間内の1平方メートルあたりの生成物の通過速度は生成物流束(Jp)と称される。生成物流束については、浄化工程(ユニット操作番号1)の間の濃縮係数と関連させて測定することになる。
【0103】
再び図1を参照し、下記に本発明の要素について説明を加える。
【0104】
図1 要素
プロセス流れの説明
流れ番号 説明
1a 生tg乳
1b 精密ろ過CIP溶液
2a ダイアフィルトレーション後に流出する精密ろ過MF保持液
2b 使用される流出するCIP溶液
3 プロセス内のMF保持液(ループ)
4 MF CIP再循環(ループ)
5 精密ろ過液
6 限外ろ過CIP溶液
7 使用される流出するCIP溶液
8 限外ろ過の供給(精密ろ過液)
9 プロセス内のUFMF保持液(ループ)
10 限外ろ過の透過液(MF保持液をダイアフィルトレーションする)
11 濃縮された浄化したバルク
12 UF CIP再循環(ループ)
13 AF CIP溶液
14 無菌フィルタ供給
15 バイオバーデンが低下した濃縮された浄化したバルク
16 使用される流出するCIP溶液
本発明における最も広範な態様では、本明細書で提供される本発明によって検討される高性能タンジェンシャルフローフィルトレーション方式は、TMPおよび流束の特定の条件下で、HPTFFタイプのシステムに対して設計される装置またはモジュール内の1つもしくは複数のろ過膜を介し、分離されるべき複数の種の混合物を通過させることを含む。流束−TMP曲線(flux versus TMP curve)の圧力依存領域の範囲、すなわち転移点でのTMP値と同程度の大きさの範囲でTMPを保持する。したがって、転移点流束の約5%から最大で100%の範囲の流束でろ過を操作する。転移点を含む流束−TMP曲線を示す下記グラフAおよびBを参照のこと。その結果、より小さい種がろ液として膜を通過する、または目的種がろ液として膜を通過しかつ混合物中の汚染物質が膜によって保持される間、目的種はMF保持液として膜によって選択的に保持される。限外ろ過における目的種が、好ましくは少なくとも約1000ダルトンの分子量を有する生体高分子、最も好ましくはポリペプチドおよびタンパク質であることに注目すべきである。目的種が、分離されるべき種すなわち汚染物質よりも10倍未満の倍率で大きい、または分離されるべき種よりも10倍未満の倍率で小さいことがさらに好ましい。
【0105】
本明細書で用いられるように、「ろ過室内で流体の方向に平行にろ液室を介してろ液を再循環させるための手段」とは、流体流れが近隣のろ過室をその流入口から流出口へ通過する際、ろ液室からの流体の一部を平行にかつ実質的に同じ方向に導く(流れ中でいくつかの渦の発生を可能にする)機構または装置について言及する。好ましくは、この手段はポンピング手段である。
【0106】
TMPはろ過時間とともに上昇せず、ろ過を通して必ずしも一定に保持されないことが注目される。TMPは、時間とともにほぼ一定に保持されるかまたはろ過が進行するにつれて低下しうる。保持される種が濃縮されつつあるならば、濃縮工程の間にTMPを低下させることが好ましい。
【0107】
各膜は、好ましくは最大で約10マイクロメートル、より好ましくは1kDa〜10マイクロメートルのサイズを有する種を保持する孔径を有する。限外ろ過によって分離可能な種の例として、タンパク質、ポリペプチド、コロイド、免疫グロブリン、融合タンパク質、免疫グロブリン断片、マイコプラズマ、内毒素、ウイルス、アミノ酸、DNA、RNA、および炭水化物が挙げられる。精密ろ過によって分離可能な種の例として、哺乳類細胞および細菌などの微生物が挙げられる。
【0108】
膜フィルタが完全でなく、一部の意図されるMF保持液分子の通過を可能にするのに十分に大きい孔または凹凸を有する可能性があることから、本明細書における好ましい態様とは、同じ孔径を有する1つ以上の膜を利用することである。ここで膜は互いに平行に層状になるように、好ましくは一方が他方の上になるように設けられる。好ましくは、この目的に対する膜数は2つである。
【0109】
上記プロセスにおいて圧力が維持される時の流束が約5〜100%の適切な範囲を有する一方で、流束が低下するにつれて膜の表面積が拡大することが要求される。したがって、膜のコストを最小にするのに、流束がスペクトルのより高い限界にあるようにある圧力で操作することが好ましい。好ましい範囲は転移点流束の約50〜100%であり、より好ましい範囲はその約75〜100%である。
【0110】
TMPを膜表面に沿って実質的に一定に維持する必要がないが、TMPを実質的に一定に維持することは好ましい。かかる条件は、一般に膜のろ液側で圧力勾配を作り出すことによって得られる。したがって、ろ過装置のろ過液区画における混合物の流れと同じ方向でかつ平行の同装置のろ液区画を介してろ液を再循環する。ろ液区画を交差する圧力低下がろ過液区画を交差する圧力低下に匹敵するように、再循環される物質の流入口と流出口の圧力を調節する。
【0111】
このろ液の圧力勾配を得るのに、いくつかの実際的手段を利用することができる。好ましい実施形態のいくつかの例は、図2Aおよび2Bに示す構成である。これらの構成によると、分離すべき生成物が発酵培養液中にある場合、その分離すべき溶質は発酵タンク(図示せず)と連絡する流入口の導管36を介して装置に入る。それは細胞培養システム内で細胞を採取した後にトランスジェニック(Tg)乳の供給源または細胞溶解液または上清を保持する導管(図示せず)とも連絡しうる。ポンピング手段40を介して導管36内の流速を調節する。ポンプは当業者に既知の任意の適切なポンプであり、流速は当業者が精通するろ過の性質に従って調節可能である。
【0112】
本発明の精密ろ過ユニット30では、ポンピング手段40からの流れの流入口圧力を測定するのに、場合によって圧力ゲージ45を利用する。流入口導管36内の流体は、ろ過ユニット50に入る。このろ過ユニット50は、その入口上部のろ過室51および出口部分のろ液室52を含む。これら2つの区画は、ろ過膜55によって分割される。流入口の流体は、ろ過室51内部のろ過膜55に平行な方向に流れる。上部のろ過室51は、目的分子を含有する溶質を含有する混合物を受け取る。分子は標的分子が膜55を通過してろ液中に入るかまたはチャンバー52から出ることが可能である程度に小さい。濃縮されたMF保持液は、収集されて精密ろ過(MF)膜65によってさらに処理されうる場合、ろ過ユニット50から流出口導管60経由で通過することで、必要に応じて追加膜を介する移動を含む望ましい目的種が得られる。この全体プロセスの間、品質制御を目的に、本発明によって一連の試料点99を検討することで、分子濃度、pHおよび汚染の監視が可能になる(「経路B」)。あるいは、MF保持液流れを循環させて混合物の供給源からタンクまたは発酵槽35すなわち「経路A」に戻し、さらに精製する間に流入口導管36を介して再循環させる。
【0113】
MF保持液流体が流出口導管60経由で流出する際、膜55を通過してろ液室52内に入る目的分子を含有する溶液は、ろ過ユニット50の同じ端で流出口導管70経由でろ過ユニット50を通過することも可能である。また一方、流出口導管70を介して流れる溶液および目的分子をタンク35に送り戻し、更に処理する間、圧力ゲージ72によって測定する。
【0114】
同様に、図2Bに示すように、本発明におけるデュアルTFFシステム80について検討する。
【0115】
図2Aに示す構成では、膜をチャンバー51および52と連携するように設けることで、膜を交差する指定の流速と圧力における差をもたらす必要がある。本発明のプロセスにおいて有用な膜は、一般にフラットシート、ロールアップシート、シリンダ、同心円シリンダ、様々な断面のダクトおよび他の構成の形態をとり、単独でまたは組になって組み立てられ、ろ過ユニット内部で連続にまたは平行に接続される。一般にろ過室およびろ液室が膜の長さに達するように装置を構成する。
【0116】
適切な膜とは、実質的な目詰まりの問題を生じることなくかつシステムの連続実施にとって十分な速度で、混合物中で望ましい種を望ましくない種から分離する膜である。例として、典型的に0.1〜10マイクロメートルの孔径を有する微孔性膜が挙げられ、定格サイズより大きな全ての粒子を保持するようにそれらを作製可能である。好ましくは例として、本発明による精密ろ過の使用とTFFの使用の両方においてセラミックが挙げられる。限外ろ過膜は、より小さい孔を有し、保持されるタンパク質の大きさによって特徴づけられる。それらは1000〜1,000,000ダルトンの公称分画分子量の増加分の中から得られる。
【0117】
限外ろ過膜は、本発明のプロセスにおける使用に適するものとして最も一般的である。限外ろ過膜は通常、それらの分離力を担う上流の表面上の薄膜またはスキンと非対称をなす。同膜は一般に再生セルロースまたはポリスルホンからなる。
【0118】
タンジェンシャルフローフィルトレーションシステム80における膜フィルタは、処理されるべき液体の容量に依存する様々な構成ユニットとしてかつ種々の孔径において利用可能である。比較的大規模な本発明における使用に特に適するものは、既知で市販のタンジェンシャルフローフィルトレーションユニットである。
【0119】
代替の好ましい装置では、上記理由のため、図2Aの精密ろ過ユニット30は、複数、好ましくは2つ、すなわち膜56および膜57のろ過膜を含む。これらの膜を平行な構成で層状にする。
【0120】
本発明は、上記プロセスからのろ液が第2のタンジェンシャルフローフィルトレーション装置内で第1の装置の膜よりも小さい孔径を有するろ過膜を通過し、この第2のろ過からのろ液を再循環させて第1の装置に戻し、プロセスを繰り返すという多段階カスケードプロセスについても検討する。
【0121】
本発明によるプロセスに適する1つのタンジェンシャルフローシステム80または精密ろ過ユニット30と連携させる使用について図2Bに示す。ここでは第1の容器85を、流入口導管90を経由してろ過ユニット95内部に配置したろ過室96に接続する。第1の入力ポンピング手段100を第1の容器85とろ過室96の間に配置する。ろ過室96を、流出口導管110を経由して第1の容器85に接続する。ろ過室96を、第1のろ過膜115により、ろ過ユニット95内部のその直下に位置する第1のろ液室97から分離する。第1のろ液室97は、導管98内に配置するろ液ポンピング手段120を備える同ろ液室97の流入口に接続される流出口導管98を備える。流出口導管98に接続される導管45を第2の容器120にも接続する。
【0122】
この容器120を、流入口導管125経由で第2のろ過ユニット130内部に配置した第2のろ過室127に接続する。第2の入力ポンピング手段133を第2の容器120とろ過室127の間に配置する。ろ過室127を、第2のろ過膜128により、ろ過ユニット130内部のその直下に位置する第2のろ液室129から分離する。第2のろ液室129は、導管135内に配置したろ液ポンピング手段140を備える同ろ液室129の流入口に接続される流出口導管135を備える。流出口導管135に接続される導管125を第3の容器150にも接続する。
【0123】
この容器150を、流入口導管155を介して第3のろ過ユニット160内部に配置した第3のろ過室157に接続する。第3の入力ポンピング手段165を第3の容器150とろ過室157の間に配置する。ろ過室157を、第3のろ過膜165により、ろ過ユニット160内部のその直下に位置する第3のろ液室159から分離する。第3のろ液室159は、第1の容器150に接続される導管155に接続される流出口導管170を備えることで、ろ液の元のタンクへの再循環を可能にする。プロセスならびに圧力ゲージ175の監視のために試料点99も設ける。
【0124】
本発明のプロセスは、商業規模での利用においてよく適合する。それはバッチ式または連続実施式あるいは半連続式での実施が可能である。例えば、ろ過段階の間に洗浄工程を挿入し、望ましい種を含有する溶液の連続流れに基づいて大規模なバッチ全体がろ過されてしまうまでタンジェンシャル−フローフィルタを通すなどである。次いで、溶液の新鮮なバッチを処理することができる。この方法では、連続サイクルプロセスを実施することで、相対的に短期間にわたって好ましい純粋な形態で大量の望ましい生成物が得られる。
【0125】
フィルタの目詰まりがなく固体を含有する溶液の連続ろ過をもたらす能力を有する本明細書において記載のタンジェンシャルフローフィルトレーションの固有の特徴により、連続ベースおよび商用規模で利用する場合、生物学的反応生成物の分離および精製において高度に有利なプロセスがもたらされる。さらに同プロセスを、トランスジェニック由来のタンパク質生成物、抗体、細胞断片および細胞培養溶解物を例とする広範囲の生物学的分子に適用可能である。
【0126】
以下の例は、本発明をさらに詳細に明らかにするが限定することを意図していない。これらの例では、引用される全ての参考文献の開示が参照として明示的に援用される。
【0127】
浄化モジュール
本発明に有用な膜を、いくつかの形式で生成モジュール内に作製することができる。タンジェンシャルフローフィルトレーションにおいて使用される最も共通な形式は以下の通りである。
【0128】
・平板
・渦巻き(Spiral wound)
・中空糸(Hollow fiber)
これらの各モジュールにおける基本的な流れ経路を図3に示す。これは異なるHPTFFおよびTFFモジュールを通る供給流における流体の流れ経路を明らかにしている。
【0129】
チャンネル内の乱流を増大させて濃度分極を低下させるのに、渦巻きおよび平板モジュールにおいてスクリーンを供給および/またはろ液チャンネル内に挿入することが多い。これは中空糸モジュールの場合には選択されない。乱流が促進されるチャンネルは、より低いクロスフロー速度でより高い物質移動係数を有する。これは、ポンピングに対する要求を低下させてもより高い流束が得られることを意味する。したがって、乱流が促進される供給チャンネルは開いたチャンネルよりも効率が良い。平板モジュールにおいて浮遊(suspended)スクリーンを使用することにより、開いたチャンネルと乱流が促進されるチャンネルの両方における何らかの利点が得られる。図7はチャンネル構成の異なるタイプを図示する。
【0130】
平板
(カセットとして言及されることが多い)平板膜モジュールにおいて、各膜の層をセパレータスクリーンの層と互い違いにするしないにかかわらず共に堆積させ、次いでパッケージ内に密封する。供給流体をポンピングさせてスタックの一端で交互のチャンネル内に入れ、ろ液は膜を通過し、ろ液チャンネル内に入る。平板モジュールは、一般に高い実装密度(フロア空間の面積あたりの膜面積)を有し、直線状に拡張可能で、開いたチャンネルまたは乱流が促進されるチャンネルを選択できるものもある。
【0131】
渦巻き
渦巻きモジュールでは、膜およびセパレータスクリーンの交互の層を空洞の中央コアの周囲に巻く。供給流を1つの終端までポンピングし、カートリッジの軸に沿って流下させる。ろ液は膜を通過し、コアまで旋回し、そこで除去される。セパレータスクリーンは流れ経路内の乱流を増大させることで、中空糸よりも高効率なモジュールが得られる。供給流経路の長さ(カートリッジ長)またはろ液の流れ経路の長さ(カートリッジ幅)を規模に収まるように変化させなければならないという理由で、渦巻きモジュールに対する欠点の1つはそれらを線状に拡張できないことである。
【0132】
中空糸
中空糸モジュールは、典型的には0.1〜2.0mmの範囲の小さい直径を有する1束の膜管からなる。中空糸モジュールでは、供給流がチューブのルーメン(内部)内にポンピングされ、ろ液が膜を通過してシェル側に達し、そこで除去される。供給流経路が著しく開いていることから、中程度のクロスフロー速度によっても低剪断が生じる。これは高度に剪断感受性がある生成物にとって有用でありうるが、競合的流束(competitive fluxes)を得るのに極めて高いポンピング容量が要求されることから、それは一般にモジュールの効率を低下させる。
【0133】
精密ろ過システムで行われるフィードアンドブリード(feed−and−breed)実験を除く全ての実験において、使用機器は以下の通りであった。
【0134】
ポンプ(ポンプ曲線)と相関させるのに調整される60lpmのポンプ
1”ODのステンレス鋼製サニタリーパイプ
孔径0.2μmの0.2sqftもしくは1.5sqftのセラミック膜
1本の1/2”流出口ポートを有するステンレス鋼製サニタリー膜ホルダ
1/4”IDの柔軟性に富む透過液配管
MF保持液ライン上のダイアフラム弁
2つの圧力ゲージ
鋼1.2Lの供給リザーバ
3/4”IDの柔軟性に富むMF保持液配管
全てのHPTFF実験では、先の機器を以下の機器と連結させた。
【0135】
最大出力800mLPMを有するダイアフラムポンプ
全てのライン上の1/4”IDの柔軟性に富む耐圧配管
供給圧力測定用の1つの圧力ゲージ
MF保持液および透過液のライン上の2つのダイアフラム弁
0.2sqftもしくは1sqftの、30kDaのNMWCOのポール(Pall) Filtron Centramate PES膜
ステンレス鋼製のポール(Pall) Filtron Centramateの膜ホルダ
透過液ポートに接続する1つのステンレス鋼製U字管パイプ
膜選択
本発明のHPTFFシステムに対して選択される膜を、様々な構成および公称分子量カットオフを有する膜群から選択した。先行研究では、浄化工程における高分子をベースとするMWCOの高いUF膜ならびにセラミックの利用について検討された。乳を2倍にまで濃縮してからHPTFFの実施により全ての膜に負荷をかけた。次いで複数の実施および洗浄によって負荷をかけることにより、膜の再利用性について分析した。次のプロセスにおいて標準化水流束が未使用膜の80%を超えて維持された場合、膜が回復したと考えた。フラットシートの高分子膜カセットの中に3回使用後に目標の水流束の回復を維持したものが全くなかった一方で、セラミック膜は60回を超えても回復した。これは、より高い化学物質濃度およびより高い温度というより厳しい条件を用いた場合のセラミックに対する洗浄能に起因した。30kDaの限外ろ過膜は、20サイクルを超える高度な水流束の回復を維持した。
【0136】
0.2μmの公称セラミック管状膜を用い、乳を浄化し目的タンパク質を通過させるのに用いられる第1のユニットについて試験した。目的タンパク質を捕捉するのに用いられる第2のシステムを、分子量カットオフ30kDaのフラットシートの限外ろ過膜を用いて試験した。
【0137】
分析法
プロテインAのHPLCによる組換えヒトアルファフェトプロテイン(rhAFP)の含量、SDS−PAGEによる分解、等電点電気泳動(IEF)による修飾、およびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による凝集に対して、各実験試料から得た試料を分析した。
【0138】
手順
プロセスの操作上の関係を理解したいという要望の中で、分子量カットオフ0.2μmのセラミック精密ろ過膜を利用して一連の制御実験を行った。生成物流束(Jp)が、流速(u)、膜間差圧(TMP)、温度(t)、および乳濃度(c)に関係することからそれを測定した。一旦関係が定まると、最適な操作窓を決定し、作り上げたプロセスについて試験した。試料を得てマスバランスデータを収集し、初期生成物収率およびスループットについて分析した(図2Aおよび2Bを参照のこと)。
【0139】
温度実験
目的は0.2μm、3mmチャンネルのセラミックMF膜を介して最低容量で最適なrhAFP流束を与える実施温度範囲を決定することであった。処理の間にSDS PAGEおよびウエスタンブロットによってrhAFPの分解を分析するのに、乳のプーリングに先立って各乳部分のpHを得た。乳をMFの供給タンク内にプールし、全容量を記録する。この際、MF用ポンプコントローラを20Hzから45Hzへ(約5L/分から約20Lへ)上昇させる。あらゆる連続する時点で、温度、圧力、クロスフロー速度、透過液流速、および容量などの全てのパラメータを記録する。このMFループを再循環過程(経路A)で5分間実施する。膜間差圧を12psigに調節し、5分間再循環させる(経路A)(20℃の温度を維持した)。乳が元の乳容量の2倍に濃縮されるまで、透過液ラインを排出へ導く(透過液を収集した)。温度を20℃で維持した。供給リザーバおよび透過液ラインから試料2および3を採取した。次いで透過液ラインを経路Aに戻し、10分間再循環させた。試料4および5を採取した。温度を25℃に上昇可能にした。次いでシステムを10分間再循環させ、試料6および7を採取した。温度を30℃に上昇可能にした。次いでシステムを10分間再循環させ、試料8および9を採取した。温度を35℃に上昇可能にした。次いでシステムを10分間再循環させ、試料10および11を採取した。温度を40℃に上昇可能にした。次いでシステムを10分間再循環させ、試料12および13を採取した。次いでポンプを止め、試料を2〜8℃で保存し、定量のために送り出した。IEFによって試料を分析した。
【0140】
MF乳濃度の実験
本発明の好ましい実施形態によるこの実験の目的は、0.2μm、3mmチャンネルのセラミックMF膜を介して最低容量で最適な目的タンパク質の流束をもたらす初期乳の濃度範囲を決定することであった。
【0141】
手順からみると、乳のプーリングに先立って各乳部分のpHを得た。乳をMF供給タンク内にプールし、全容量を記録する。この時、MF用ポンプコントローラを20Hzから45Hzへ(約5L/分から約20Lへ)上昇させる。あらゆる連続する時点で、温度、圧力、クロスフロー速度、透過液流速、および容量などの全てのパラメータを記録する。このMFループを再循環過程(経路A)で5分間実施する。膜間差圧を12psigに調節し、5分間再循環させる(経路A)(20℃の温度を維持する)。膜間差圧を15psigに調節し、5分間再循環させる(経路A)。乳が濃縮されるまで透過液ラインを排出に導き、550mlの透過液を収集し、次いで透過液ラインを経路Aに戻した。(10分間再循環させて)供給リザーバおよび透過液ラインから試料2および3をそれぞれ採取した。
【0142】
透過液ラインを経路Bに導き、600mlの乳を供給リザーバに添加した。乳が濃縮されるまで透過液ラインを排出に導き、500mlの透過液を収集し、次いで透過液ラインを経路Aに戻した。(10分間再循環させて)供給リザーバおよび透過液ラインから試料4および5をそれぞれ採取した。次いで透過液ラインを経路Bに導き、500mlの乳を供給リザーバに添加した。乳が濃縮されるまで透過液ラインを排出に導き、500mlの透過液を収集し、次いで透過液ラインを経路Aに戻した。(10分間再循環させて)供給リザーバおよび透過液ラインから試料6および7をそれぞれ採取した。次いで透過液ラインを経路Bに導き、380mlの乳を供給リザーバに添加した。乳が濃縮されるまで透過液ラインを排出に導き、400mlの透過液を収集し、次いで透過液ラインを経路Aに戻した。(10分間再循環させて)供給リザーバおよび透過液ラインから試料8および9をそれぞれ採取した。次いでポンプを止めた。試料を2〜8℃で保存し、プロテインAの分析、分解および凝集におけるSDS PAGEおよびウエスタン、凝集におけるSEC、ならびに等電点シフトにおけるIEFによって目的タンパク質を定量するために試料を送り出した。
【0143】
生乳由来の脂肪、カゼインミセル、および細菌などの粒状物質を除去することによって乳マトリックス中のrhAFPを浄化し安定化させるためのプロセスとしてHPTFFを実施した。バイオテクノロジーおよび乳業の両方においては、不純物および濃縮生成物を除去するのにHPTFFを限定された方法で利用する。本発明によると、HPTFFを有効に利用するために、適切な膜を選択し、生成物の流束を高めるためにプロセスパラメータ(温度、膜間差圧、クロスフロー速度、および乳濃度)を最適化し、膜寿命を確実に延ばすのに洗浄および保存の手順を開発したことは重要である。本明細書において、本発明の実験的マトリックスのパラメータを説明し、トランスジェニックヤギの乳に適用することで、先の操作パラメータを確認する。膜の洗浄および保存の条件についても検討した。無菌ろ過工程を開発することで、HPTFFプロセスの完了後、残存する任意の細菌を、目的タンパク質を含有する浄化した乳生成物から除去した。次いで、プロセス情報をパイロットスケール機器に移し、初期のエンジニアリングラン(engineering runs)を行った。注射用の水、長い膜寿命、高収率、および短い処理時間に対する要求を妨げる添加剤を全く使用せずに、いくつかのプロセス設計基準を導入した。本発明のプロセスをパイロットおよび製造工程に対して拡張可能であるようにより望ましい設計を行った。
【0144】
非トランスジェニックフィードアンドブリード実験
非トランスジェニック乳を豊富に供給することが可能であることから、0.2μmのセラミック精密ろ過膜を用いて濃縮の間での液体流束の低下を分析するのに非トランスジェニック乳を使用した。この実験において使用される機器として精密ろ過実験において説明したものと同じ機器を含めたが、第2の供給リザーバおよび供給ポンプによって補完することで、透過液が膜から外部に流れているのと同じ速度で乳を精密ろ過システムの供給リザーバ内に流した。機器の概略図を以下に示す。

【0145】
グラフAで見られるように、供給リザーバを1500mlの乳で満たし、45Hzでポンプを始動させた。MF保持液の圧力のない状態でシステムを再循環過程で10分間実施した。全てのパラメータを記録した。次いで、11psigの膜間差圧に対してMF保持液の圧力を10psigに上昇させた。MF保持液弁(retentate valve)を調節することにより、実験を通してこの膜間差圧を一定に保持した。透過液を送って流出させ、第2のポンプを始動させることで、透過液が除去されるのと同じ速度で供給リザーバ内に新鮮な乳をポンピングし、供給リザーバ内の容量を一定に保持した。5〜10分の間隔で全てのパラメータを記録し、第2のポンプ速度を調節することで供給リザーバ内の乳のレベルを一定に保持した。乳が5.37倍もしくは82%に濃縮されるまで実験を実施した。
【0146】
膜の洗浄
サイクル間の膜における水流束の高度な回復を保証するために、厳しい洗浄レジームを用いた。バイオ医薬品の実施態様を考慮して、乳業における標準的な膜の洗浄を再現するように洗浄工程を設計した。適切なpH値および導電率値のために残留化学物質を流出させる一方、水の使用を最小にするのに水流出工程を最適化した。下の表1および表2に示される各処理工程の後に以下の洗浄サイクルを実施した。

【0147】
乳を浄化するためのパイロットプラントにおいて使用される機器で多数のエンジニアリングランを行った後、清浄な浄化した乳を常に生成するのに使用する機器および手順を改良する必要があることは明確であった。大規模な試験に対応するのに、機器をパイロットプラントのGMP環境から開発研究所に移した。システムに対して行った改良が透過液配管を削減してシステム内の弁の位置を変化させることを含むことで、洗浄(cleaning)および清浄化(sanitization)工程の間でより簡単なすすぎを促進させた。洗浄プロトコルをやや改良することで、洗浄効率を改善し水の使用を削減した。プロセス温度範囲を決定した。最終的にGMP文書においてプロセスパラメータをより十分に規定した。
【0148】
当初の設計では、ステンレス鋼で実験機器の全体構成を行った。処理モードから洗浄モードに分解するのに多数の長さの長いパイプが必要であったことから、この設計は洗浄にとって扱いにくいものであった。UF用透過液配管の長さおよび内径が理由で、洗浄プロトコルの間の洗浄またはすすぎは有効ではなかった。多数の要素をMFシステムに加えることで洗浄が容易になったが、それらの構成が原因で残留物の蓄積にとっての死角ができた。1/4”の内径の配管を有する長いUF用透過液配管を取り替えることにより、これらの問題を改善した。MF膜の上部ポートが膜の透過液側の洗浄のために使用されるように洗浄の設定を変更し、他の要素を加える必要性を除いた。そうすることでUF用透過液配管が洗浄の間にUFにおいて存続する。また、システムのMF部分に大規模な熱交換器を設置していたことからMFにおける細かい温度制御が可能になったが、それは処理に適する範囲内でのUF温度の制御を阻止した。熱交換器をシステムから取り出し、冷却装置の設定を調節することで、両方のシステムを適切な温度範囲内で適切に冷却した。最終設計は以下の通りである。保存、清浄化および処理を目的に機器を組み立てた。本発明の好ましい実施形態における機器の構成を下のグラフOおよびPに示す。
【0149】
洗浄および清浄化における変化
施した機器の変化には、洗浄および清浄化のプロトコルを変更する必要があった。上の表では各実施後に洗浄プロトコルを実施した。弁とリザーバの間に長い死区間(dead leg)があることから、各すすぎ工程の間で適切なすすぎを促進するのにMF上のMF保持液弁の左側を半開きにする必要があった。実施4の後、洗浄プロトコルを実施し、水の消費を追跡した(ノートブック 10586)。実施5、6および7の後、この実験で用いた水について検証し、GMP処理における使用について推奨した。先に述べたように、機器の変更によってシステムを処理モードで洗浄することも可能になる。このことを試験した。システムから清浄化剤(sanitant)をすすぐのに必要なUSP水についても判定した。
【0150】
操作
以下の項目では、HPTFFを用いて乳処理を実行するのに考慮される実際の工程について説明する。これらはシステムの清浄化から処理、洗浄、および保存までの全体プロセスを含む。同手順を実施5〜7の間に開発研究所内の機器に対して用い、それにより清浄な浄化した乳を生成した。
【0151】
清浄化
0.2μmのセラミック精密ろ過膜および30kdaの限外ろ過膜を用いてHPTFFを実施してトランスジェニックヤギの乳の浄化および濃縮を行うには、システムを0.1Mの水酸化ナトリウムで清浄化しなければならない。上記の如く、清浄化および処理のために機器を組み立てる。MF上の15LPMのクロスフローおよびUF上の1LPMのクロスフローにより、USP水を用いて作成した0.1M 水酸化ナトリウム2Lをポンピングして各システムに通す。5psiの圧力をUFのMF保持液に加える間、MFにはMF保持液の圧力を全く加えない。透過液弁(permeate valves)を完全に開くことで水酸化ナトリウムの全システムまわりの再循環を可能にする。再循環を15分間行い、次いで溶液をタンクとポンプの間のブリード弁を介してシステムから排出させる。必要がある場合には常にタンクをUSP水で完全に満たすことにより、USP水を使用してシステムのすすぎ出しを行う。各ブリード弁から水1Lを排出させる。MF上のMF保持液弁を半分閉じ、透過液弁を完全な廃棄へと導く。UF上のMF保持液弁および透過液弁を完全な廃棄へと導く。USP水12Lを20LPMのクロスフロー速度でMF保持液を介して流す。USP水4Lを15〜20LPMのクロスフロー速度および6〜8psiのTMPでMFの透過液を介して流す。USP水7Lを1LPMのクロスフロー速度でUFのMF保持液および透過液ラインを介して流し、次いで3Lを追加して透過液を流す。
【0152】
USP水を使用し(必要があればさらに加えて)、MFを20LPMでポンピングし、透過液圧がない状態でTMPが15psiに達するまでMF保持液の圧力を増大させ、次いで15LPMのポンプ速度でクロスフローの速度を調節する。温度(25〜28℃でなければならない)、圧力、およびクロスフロー速度を記録する。透過液のドレン弁を介して透過液流速を測定する。1LPMのクロスフローおよび5psigのMF保持液圧を用いかつ透過液に圧力を加えずに(約10psigのTMP)、UFについて繰り返す。透過液流速を膜における未使用水の透過速度と比較する。透過速度が元の値の80%未満であるならば、膜を再度洗浄するかまたは膜を取り替える。
【0153】
乳処理
乳をプールし、15〜20℃に上昇させなければならない。MFリザーバ内で乳をプールし、次いでMF用透過液弁を閉じ、MF保持液弁を開き、クロスフローを20LPMにするためにポンプをオンにする。5分後、初期乳試料を採取する。次いでTMPが15psigおよびクロスフロー速度が15LPMになるように圧力を上昇させる。乳温度が20℃に達するまで再循環を継続させる。次いで冷却装置を10℃でオンにし、MF用透過液弁を開き、セラミック膜の透過液を収集することにより、精密ろ過システムにおいて乳をその元の半分の容量に濃縮することを可能にする。膜間差圧を15psiにした状態で15lpmのクロスフロー速度でMFを実施する。MFの温度を26℃±2.0まで上昇させ、同温度で維持する必要がある。次いで限外ろ過システムを0.8〜1LPM/sqftのクロスフロー速度で開始させなければならない。各膜の透過液流速を、透過液弁を介して測定する。この透過液流速がMFの透過液流速に一致するようにするには、UFのMF保持液および透過液の圧力を調節しなければならない。一度UFの透過液流速をMFのそれと一致させる。5〜6のダイアフィルトレーション容量と絡めてシステムを実施する必要がある。
【0154】
一旦ダイアフィルトレーションが完了すると、システムの接続を断ってMFをオフにし、排出および洗浄を行い、UFの供給リザーバ内の浄化したバルク濃縮物容量が全体を4倍に濃縮した場合のその容量の半分に濃縮されるまでUF透過液を排出に導く。次いでUFを排出させ、浄化したバルク濃縮物を無菌ろ過し、UFを洗浄する。
【0155】
洗浄および保存のプロトコル
目的タンパク質の分画を可能にする現行の装置の要素を適切に洗浄しかつ保存するのに、まず供給流の流入からのシステムの接続を断つ。MF保持液弁を半分開けて、MFを20Lの熱い軟水(45〜65℃)ですすぎ、透過液を排出に導く。溶液を再循環させて供給リザーバに戻すように弁を誘導し、400ppmの次亜塩素酸ナトリウムを含む熱い0.5Mの水酸化ナトリウム2Lを5分間再循環させる。溶液をシステムから排出させ、同化学物質2Lと交換する。新鮮な溶液を30分間再循環させ、次いでブリード弁を介して排出する。システムを半分開いたMF保持液弁を介して20Lの熱い軟水で流す。6〜8psiのTMP、20lpmで膜のMF保持液側で水を再循環させるだけで、透過液を介して4Lを流す。ブリード弁を介して残留水を排出させる。6〜8psiのTMP、20LPMで30分間、熱い0.5Mのクエン酸2Lをシステムの中を通して再循環させる。次いでブリード弁を介してクエン酸を排出させる。軟水15Lを用いてMF保持液側をすすぎ出し、腐食工程後に行ったように4Lを用いて透過液側をすすぎ出す。次いで、400pmの漂白剤を含む熱い0.05Mの水酸化ナトリウム2LをMFを介して15分間再循環させ、排出させ、腐食工程後に行ったようにMF保持液側で水10Lおよび透過液を介して4Lを用いてすすぎ出す。
【0156】
初期流水では、MF保持液弁を排出に導きかつ透過液ライン全体を(弁によってでなく)排出に導くことにより、UFのMF保持液および透過液ラインを排出に導く。常にポンプを1LPMで実施する、すなわちMF保持液圧が上昇するならば、1LPMを維持するためにポンプ速度も上昇させなければならない。両方のラインを介してUSP水4Lをすすぐ。両方のラインを介し、USP水によって作成した250ppmの次亜塩素酸ナトリウムを含む0.5Mの水酸化ナトリウム2Lを流す。供給リザーバに取り付けた透過液ラインおよび同リザーバに対して開いたMF保持液弁を有するシステムを介し、新鮮な溶液2Lを60分間再循環させる。ブリード弁を介して溶液を排出させる。初期流出などの場合、両方のラインを排出に導く。リザーバをUSP水で満たし、ブリード弁を介して1Lを排出させる。両方のラインを介して8L、5psiのMF保持液圧で透過液ラインを介してさらに4Lを流す。次いで、0.4Mのクエン酸2Lをシステムの中を通して60分間再循環させる。ブリード弁を介して酸性溶液を排出させ、次いでリザーバをUSP水で満たし、ブリード弁を介して1Lを排出させる。次いでMF保持液および透過液の両ラインを介して水8Lを流し、5psiのMF保持液圧、膜を交差する1LPMのクロスフローで、追加の8Lを透過液を介して流す。
【0157】
両方のシステムに洗浄およびすすぎを施す場合、保存のためにそれらを組み立てる(上図)。0.1Mの水酸化ナトリウム2Lを各供給容器内に注ぎ、再循環において開いて廃棄において閉じる、MF保持液弁および透過液弁を備える両システムの中を通して2分間ポンピングする。次いで容器を覆い、清浄な状態と見なし、0.1Mの水酸化ナトリウム中に保存する。
【0158】
プロセスパラメータは均一な物質の生成に重要であることが判明している。浄化に対して使用する膜は、CerCor 0.2μmの孔径を有するセラミック膜で1.5sqftおよび30kDaのNMWCO ポール(Pall) Filtron PESカセット、2sq.ft.(2カセット)である。精密ろ過システムの温度を、最適な目的タンパク質の清澄性および流束に対して26〜29℃に保持する必要がある。15psigの膜間差圧、14LPM(42cm/s)のMF保持液流速で精密ろ過システムを実施する必要がある。乳を元のプールの40〜70%の容量にまで濃縮する必要がある(1.5〜2.5倍)。20〜30psigの供給圧力、1.6〜2LPMのMF保持液流速でシステムの限外ろ過部を実施する必要がある。透過液圧を調節することにより、透過液流速を精密ろ過システムの流速に一致させる必要がある。最終的な浄化したバルク濃縮物は、元の乳プールの容量の1/4である必要がある(4倍濃縮)。
【0159】
組換え体の生成
治療および診断を用途とする組換えタンパク質の開発がますます増加しつつある。しかし、これらのタンパク質の多くは、従来の方法を用いて機能的形態および/または必要量で生成するのに困難を伴うかまたは費用がかかる。従来の方法は、特定のタンパク質の生成を担う遺伝子を細菌、酵母、またはCOSもしくはCHO細胞を例とする哺乳類細胞などの宿主細胞内に挿入し、次いで培地内で細胞を成長させることを含む。次いで培養細胞は望ましいタンパク質を合成する。従来の細菌系または酵母系は、機能的形態で多数の複合タンパク質を生成できない可能性がある。哺乳類細胞は複合タンパク質を再生可能である一方、一般に成長が困難で高くつき、生成するタンパク質の量はmg/Lにすぎない場合が多い。さらに非分泌タンパク質は、培地内に分泌されない時に原核生物または哺乳類細胞から精製するのが比較的困難である。
【0160】
概して遺伝子導入技術は、通常分泌されないタンパク質(非分泌タンパク質)を作製し分泌させる方法を特徴とする。本方法は、
(a)プロモーター、例えば乳房上皮に特異的なプロモーター、例えば乳タンパク質プロモーターと;
(b)タンパク質の分泌を指示可能なシグナル配列、例えば乳に特異的なタンパク質由来のシグナル配列と;
(c)場合により、例えばトランスジェニック哺乳動物の乳における非分泌タンパク質の分泌を可能にする、乳中に分泌されたタンパク質を例とする分泌タンパク質のアミノ末端コーディング領域の十分な部分をコードする配列と;
(d)非分泌タンパク質をコードする配列と、
を含み、要素(a)、(b)、場合によって(c)および(d)が好ましくは動作可能なように列挙した順序で連結される、核酸構築物から該タンパク質を発現する工程を含む。
【0161】
好ましい実施形態では、要素a、b、c(存在する場合)およびdが同一の遺伝子から得られ;該要素a、b、c(存在する場合)およびdは2種類以上の遺伝子から得られる。
【0162】
好ましい実施形態では、該分泌物はトランスジェニック哺乳動物の乳中に存在する。
【0163】
好ましい実施形態では、該シグナル配列はβ−カゼインのシグナル配列であり;該プロモーターはβ−カゼインのプロモーター配列である。
【0164】
好ましい実施形態では、非分泌タンパク質のコーディング配列は、ヒト由来であり;切断された核または細胞質のポリペプチドをコードし;ヒト血清アルブミンまたは他の望ましい目的タンパク質をコードする。
【0165】
本発明の実施では、他に指定がない限り、当該技術の範囲内での細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA、および免疫学といった従来の技術が利用されるであろう。参考文献ではかかる技術が記載されている。例えば、「Molecular Cloning A Laboratory Manual」、第2版、サムブルック(Sambrook)、フリッツ(Fritsch)およびマニアティス(Maniatis)編(Cold Spring Harbor Laboratory Press:1989年);「DNA Cloning」、Volumes I and II(D.N.グローバー(D.N.Glover)編、1985年);「Oligonucleotide Synthesis」(M.J.ガイト(M.J.Gait)編、1984年);ムリス(Mullis)ら、米国特許第4,683,195号明細書;「Nucleic Acid Hybridization」(B.D.ハメス(B.D.Hames)&S.J.ヒギンズ(S.J.Higgins)編、1984年);「Transcription And Translation」(B.D.ハメス(B.D.Hames)&S.J.ヒギンズ(S.J.Higgins)編、1984年);「Culture Of Animal Cells」(R.I.フレシュニー(R.I.Freshney)、アラン R.(Alan R.)、リス(Liss,Inc.)、1987年);「Immobilized Cells And Enzymes」(IRL Press、1986年);B.パーバル(B.Perbal)、「A Practical Guide To Molecular Cloning」(1984年);the treatise、「Methods In Enzymology」(Academic Press,Inc.、ニューヨーク);「Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells」(J.H.ミラー(J.H.Miller)およびM.P.カロス(M.P.Calos)編、1987年、Cold Spring Harbor Laboratory);「Methods In Enzymology」、第154巻および第155巻(ウー(Wu)ら編)、「Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology」(メイヤー(Mayer)およびウォーカー(Walker)編、Academic Press、ロンドン、1987年);「Handbook Of Experimental Immunology」、I−IV巻(D.M.ウェイル(D.M.Weir)およびC.C.ブラックウェル(C.C.Blackwell)編、1986年);「Manipulating the Mouse Embryo」、(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor、ニューヨーク、1986年)を参照のこと。
【0166】
乳に特異的なプロモーター
本発明の実施に有用な転写プロモーターは、カゼイン、ベータラクトグロブリン(クラーク(Clark)ら、(1989年) BIO/Technology 7:487−492頁)、乳漿酸性タンパク質(ゴルトン(Gorton)ら、(1987年) Bio/Technology 5:1183−1187頁)、およびラクトアルブミン(スーリエ(Soulier)ら、(1992年) FEBS LETTS.297:13頁)などの乳タンパク質をコードする遺伝子を制御するプロモーターを含む、乳房上皮細胞で選択的に活性化される同プロモーターである。カゼインプロモーターは、任意の哺乳類種のアルファ、ベータ、ガンマもしくはカッパーカゼイン遺伝子由来である場合があり、好ましいプロモーターはヤギベータカゼイン遺伝子(ディトゥリオ(DiTullio)、(1992年) Bio/Technology 10:74−77頁)由来である。乳に特異的なタンパク質プロモーターまたは乳房組織内で特異的に活性化されるプロモーターは、cDNAまたはゲノム配列由来でありうる。好ましくは、それらの起源はゲノムである。
【0167】
DNA配列情報は、上に挙げる乳腺に特異的な遺伝子の全部、少なくとも1種類、および多くは数種類の生物において利用可能である。例えば、リチャーズ(Richards)ら、J.Biol.Chem.256、526−532頁(1981年)(α−ラクトアルブミンラット);キャンベル(Campbell)ら、「Nucleic Acids Res.」12、8685−8697頁(1984年)(ラットWAP);ジョーンズ(Jones)ら、「J.Biol.Chem.」260、7042−7050頁(1985年)(ラットβ−カゼイン);ユー・リー(Yu−Lee)&ローゼン(Rosen)、J.Biol.Chem.258、10794−10804頁(1983年)(ラットγ−カゼイン);ホール(Hall)、「Biochem.J.」242、735−742頁(1987年)(a−ラクトアルブミンヒト);スチュワート(Stewart)、「Nucleic Acids Res.」12、389頁(1984年)(ウシαslおよびKカゼインcDNA);ゴロデツキー(Gorodetsky)ら、Gene 66、87−96頁(1988年)(ウシβカゼイン);アレキサンダー(Alexander)ら、「Eur.J.Biochem.」178、395−401頁(1988年)(ウシκカゼイン);ブリグノン(Brignon)ら、「FEBS Lett.」188、48−55頁(1977年)(ウシαS2カゼイン);ジャミエソン(Jamieson)ら、「Gene」 61、85−90頁(1987年)、イヴァノフ(Ivanov)ら、「Biol.Chem.Hoppe−Seyler」 369、425−429頁(1988年)、アレキサンダー(Alexander)ら、「Nucleic Acids Res.」17、6739頁(1989年)(ウシβラクトグロブリン);ヴィロッテ(Vilotte)ら、「Biochimie」 69、609−620頁(1987年)(ウシα−ラクトアルブミン)を参照のこと。様々な乳タンパク質遺伝子の構造および機能は、メルシエ(Mercier)およびヴィロッテ(Vilotte)、「J.Dairy Sci.」76、3079−3098頁(1993年)(あらゆる目的でその全体が参照によって援用される)によって再検討されている。追加の配列データが必要とされうる程度まで、既存の配列をプローブとして用い、既に得られた領域のフランキング配列を容易にクローニングすることが可能であろう。同様に異なる生物由来の乳腺に特異的な調節配列を、既知の同系ヌクレオチド配列を用いたかかる生物由来のライブラリまたはタンパク質をプローブとして認識する抗体をスクリーニングすることによって得る。
【0168】
理解のために図面および実施例を手段として先行発明を少し詳しく説明しているが、特定の変化および変形を施すことが可能であることは当業者にとって明らかであろう。したがって、説明および実施例は、添付の特許請求の範囲によって示される本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0169】
したがって、高収率の目的分子を所定の供給流から生成するための高性能タンジェンシャルフローフィルトレーションの改善された方法を提供する、本明細書における発明の実施形態が、本発明の原理を応用したものを例示するにすぎないことが理解されることになる。形態における変化、利用方法、および開示内容の要素の応用が本発明の趣旨または添付の特許請求の範囲から逸脱することなく訴求されうることは、先述から明らかであろう。
【参考文献】
【0170】
参照として援用される先行技術の引用文献

参照として援用される米国特許および出願特許

【図面の簡単な説明】
【0171】
【図1】注入と完了を意図する、HPTFFの中を通る供給流からの物質の流れに対するプロセス流れ図を示す。
【図2】図2Aは精密ろ過におけるプロセスおよび機器の設定について示す。図2BはTFFにおけるプロセスおよび機器の設定について示す。
【図3】異なるTFFおよびHPTFFモジュールを介する流体の流れ経路を示す。
【図4】ろ過プロセスの流れ図を示す。
【図5】DNA構築物から目的の組換えタンパク質を含有する浄化された乳の生成に至る遺伝子導入研究の展開プロセスを示す。
【図6】本発明の方法におけるプロセス機器の概略図を示す。
【図7】HPTFFモジュールタイプ内の開いたかつ乱流が促進される供給チャンネルを示す。
【図8】本発明のHPTFFシステムを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的タンパク質を供給流から分離する方法であって、
(a)流束−TMP曲線での圧力依存領域における転移点流束の約5〜100%の範囲のレベルに流束を維持しながら、前記目的タンパク質の孔径および電荷に基づいて前記供給流から目的分子種を分離する高性能タンジェンシャルフローフィルトレーションによって前記供給流をろ過する工程であって、膜間差圧が、ろ過の転移点での膜間差圧以下のレベルで前記膜に沿って実質的に一定に保持され、それによって、前記目的タンパク質がその生物学的活性を保持するように前記供給流から選択的に分離される工程と、
(b)前記供給流を限外ろ過法によってろ過する工程と、を含み、
前記目的タンパク質の転移点流束を超えて前記ろ過が生じ、
前記目的分子種が1〜1000kDaの分子量を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記供給流を分画する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記供給流を浄化する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記供給流をダイアフィルトレーションする工程をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記ろ過の前半において膜間差圧を上昇させかつ流束を低下させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記ろ過の後半において膜間差圧を低下させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記供給流がろ過前に濃縮されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記目的タンパク質は、前記供給流中の第2の目的タンパク質よりも分子量が10倍未満の倍率で大きいかまたは小さいことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記目的タンパク質は、前記供給流中の第2の目的タンパク質よりも分子量が10倍未満の倍率で大きいかまたは小さいが、同一電荷または等電点を有することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記供給流を濃縮する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項11】
全てのろ過工程が限外ろ過であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記供給流が乳であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記供給流が細胞溶解液であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記タンパク質がバイオ医薬品であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記乳の状態が、
a)生の状態、
b)希釈された状態、
c)緩衝溶液で処理された状態、
d)化学的に処理された状態、および
e)部分的に濃縮された状態のうちの1つから選択されることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項16】
前記分画工程が、セラミックろ過膜を利用することを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項17】
前記浄化工程が、セラミックろ過膜を利用することを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項18】
前記分画工程が、特定の等電性を有する高分子ろ過膜を利用することを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項19】
前記浄化工程が、高分子ろ過膜を利用することを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項20】
前記分画工程が、セルロースろ過膜を利用することを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項21】
前記浄化工程が、セルロースろ過膜を利用することを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項22】
系統パラメータを最適化する工程をさらに含むことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項23】
前記系統パラメータが、温度と、供給流の流速と、膜間差圧と、供給流の濃度と、ダイアフィルトレーション容量とを含むことを特徴とする請求項22記載の方法。
【請求項24】
系統パラメータを最適化する工程をさらに含むことを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項25】
前記系統パラメータが、温度と、供給流の流速と、膜間差圧と、供給流の濃度と、ダイアフィルトレーション容量とを含むことを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記目的分子種が、タンパク質、免疫グロブリン、ポリペプチド、ペプチド、糖タンパク質、RNAおよびDNAよりなる群から選択される生物学的存在物であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項27】
最適温度範囲が15℃〜50℃であることを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項28】
最適温度範囲が20℃〜35℃であることを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項29】
最適温度範囲が25℃〜29℃であることを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項30】
最適温度範囲が15℃〜50℃であることを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項31】
最適温度範囲が20℃〜35℃であることを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項32】
最適温度範囲が25℃〜29℃であることを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項33】
前記供給流の流速が10cm/秒〜100cm/秒であることを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項34】
前記供給流の流速が20cm/秒〜60cm/秒であることを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項35】
前記供給流の流速が25cm/秒〜45cm/秒であることを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項36】
前記供給流の流速が10cm/秒〜100cm/秒であることを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項37】
前記供給流の流速が20cm/秒〜60cm/秒であることを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項38】
前記供給流の流速が25cm/秒〜45cm/秒であることを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項39】
前記膜間差圧が2psi〜40psiの範囲であることを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項40】
前記膜間差圧が5psi〜30psiの範囲であることを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項41】
前記膜間差圧が10psi〜20psiの範囲であることを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項42】
前記膜間差圧が2psi〜40psiの範囲であることを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項43】
前記膜間差圧が5psi〜30psiの範囲であることを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項44】
前記膜間差圧が10psi〜20psiの範囲であることを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項45】
前記供給流の濃度が0.25倍〜4倍の天然乳であることを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項46】
前記供給流の濃度が0.5倍〜3倍の天然乳であることを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項47】
前記供給流の濃度が1.0倍〜2倍の天然乳であることを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項48】
前記供給流の濃度が0.25倍〜4倍の天然乳であることを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項49】
前記供給流の濃度が0.5倍〜3倍の天然乳であることを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項50】
前記供給流の濃度が1.0倍〜2倍の天然乳であることを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項51】
前記ダイアフィルトレーション容量の範囲が、濃縮されたMF保持液の1倍〜20倍の容量であることを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項52】
前記ダイアフィルトレーション容量の範囲が、濃縮されたMF保持液の3倍〜15倍の容量であることを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項53】
前記ダイアフィルトレーション容量の範囲が、濃縮されたMF保持液の5倍〜10倍の容量であることを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項54】
前記ダイアフィルトレーション容量の範囲が、濃縮されたMF保持液の1倍〜20倍の容量であることを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項55】
前記ダイアフィルトレーション容量の範囲が、濃縮されたMF保持液の3倍〜15倍の容量であることを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項56】
前記ダイアフィルトレーション容量の範囲が、濃縮されたMF保持液の5倍〜10倍の容量であることを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項57】
全てのろ過工程において限外ろ過膜が使用されることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項58】
全てのろ過工程において限外ろ過膜が使用されることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項59】
前記乳が、
a)水、
b)緩衝食塩水、
c)キレート剤、
d)酸性溶液、および
e)アルカリ性溶液、
よりなる群から選択される溶液で処理されることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項60】
前記ダイアフィルトレーションが、限外ろ過の透過液を利用することを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項61】
前記ダイアフィルトレーションが、水を利用することを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項62】
前記ダイアフィルトレーションが、緩衝食塩水を利用することを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項63】
使用される前記膜が、20℃を超える温度の溶液で洗浄されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項64】
使用される前記膜が、20℃〜70℃の温度範囲の溶液で洗浄されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項65】
使用される前記膜が、40℃〜60℃の温度範囲の溶液で洗浄されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項66】
使用される前記膜が、酸性溶液で洗浄されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項67】
使用される前記膜が、アルカリ性溶液で洗浄されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項68】
使用される前記膜が、次亜塩素酸溶液で洗浄されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項69】
前記選択された溶液の使用後に水でのすすぎをさらに含むことを特徴とする請求項66、67または68記載の方法。
【請求項70】
使用される前記膜が、使用前に水酸化物溶液で清浄化されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項71】
使用される前記膜が、使用前にアルコール溶液で清浄化されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項72】
使用される前記膜が、使用前に次亜塩素酸溶液で清浄化されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項73】
使用される前記膜が、20分〜45分の期間にわたって洗浄されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項74】
前記第1のろ過工程で使用された膜より小さい孔径を有する膜を介する第2のタンジェンシャルフローフィルトレーション工程において前記ろ過からのろ液をろ過する工程と、この第2のろ過工程のろ液を前記第1のろ過工程に戻して再循環させる工程と、をさらに含み、これによりプロセスが繰り返されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項75】
目的タンパク質を供給流から分離する方法であって、
(a)流束−TMP曲線での圧力依存領域における転移点流束の約5〜100%の範囲のレベルに流束を維持しながら、前記目的タンパク質の孔径および電荷に基づいて前記供給流から目的分子種を分離する高性能タンジェンシャルフローフィルトレーションによって前記供給流をろ過する工程であって、膜間差圧が、ろ過の転移点での膜間差圧以下のレベルで前記膜に沿って実質的に一定に保持され、それによって、前記目的タンパク質がその生物学的活性を保持するように前記供給流から選択的に分離される工程と、
(b)前記供給流を限外ろ過法によってろ過する工程と、
(c)前記ろ過の前半において膜間差圧を上昇させかつ流束を低下させる工程と、
(d)流束を低下させた後、前記ろ過が進行するにつれて流束を上昇させるかまたは維持する工程と、を含み、
前記目的タンパク質の転移点流束を超えて前記ろ過が生じ、
前記目的分子種は1〜1000kDaの分子量を有することを特徴とする方法。
【請求項76】
前記目的タンパク質が組換えヒトアルファフェトプロテインであることを特徴とする請求項1または75記載の方法。
【請求項77】
前記目的タンパク質が組換えヒトアルブミンであることを特徴とする請求項1または75記載の方法。
【請求項78】
前記目的タンパク質が、トランスジェニック哺乳動物の乳を供給源とすることを特徴とする請求項1または75記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−526302(P2007−526302A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501797(P2007−501797)
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/004332
【国際公開番号】WO2005/091801
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(501400987)ジーティーシー バイオセラピューティックス インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】