高性能接着剤組成物
本明細書では、ナノサイズのコア−シェル粒子を含有するエポキシ樹脂、アミン末端ポリエーテルスルホンを含有する1種以上の熱可塑性強化剤および少なくとも1種の多官能エポキシ樹脂に加えて当該接着剤組成物を400°F以下で完全に硬化させる少なくとも1種のアミン系硬化剤から生じさせた熱硬化性接着剤組成物を提供する。前記組成物は航空宇宙用複合材料/金属/ハニカム構造物を結合させる能力を有する接着フィルムを生じさせる目的で用いるに有用であり、それには、航空機の前または後縁、航空機の前または後縁、音響ナセル構造物、水平および垂直尾翼および他の様々な構造物の結合ばかりでなく他の高性能産業用途も含まれる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題事項は、様々な複合材料または金属基質の結合で用いるに有用でありかつ向上した特性を示す改良エポキシ系熱硬化性接着剤組成物に関する。より詳細には、本主題事項は、ナノサイズのコア−シェル粒子を弾性重合体および/または熱可塑性プラスチックと組み合わせて含有させた熱硬化性組成物に関し、それによって、優れた相乗的じん性、高温せん断特性、高いガラス転移温度および低い水吸収率を示すようにする。そのような新規な組成物は様々な産業において不利な環境および厳しい用途で繊維強化エポキシプレプレグ用の構造用接着剤およびマトリクス樹脂として用いるに適する。
【背景技術】
【0002】
当該技術分野では、複合材料および金属構造物の接着、充填および製造で用いるに有用な接着剤が示すせん断強度、耐衝撃性および他の鍵となる特性を向上させる努力として幅広く多様なエポキシが基になった組成物および他の樹脂および添加剤を製造および使用するための様々な組成物および方法が記述されている。例えば、接着剤組成物配合用成分およびそのような組成物を用いて様々な基質を互いに接着させて構造的強化をもたらすための使用を記述している特許には下記が含まれる:特許文献1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13および14。
【0003】
向上したじん性を示す接着剤組成物および複合材料構造物は以前に開示されはしたが、そのような組成物が示す他の物性に関してはいくらかの犠牲が存在し、そのような犠牲には、例えばガラス転移温度の低下に加えて高温におけるクリープ性の上昇が含まれる。例えば、今日の接着剤組成物は、じん性(引き剥がし)を高くするにつれて高温特性(例えばせん断特性)が低下すると言った欠点を有する。そのよう接着剤組成物および複合材料に関するさらなる困難さには、剛性の損失、異種材料および/または樹脂から生じさせた基質間で起こる接着破壊および耐溶媒性が劣ることによる使用中の特性悪化が含まれ得る。
【0004】
従って、強化複合材料の製造および様々な複合材料および/または金属基質の結合で現在利用可能な接着剤組成物および方法はさらなる改良を必要としている。向上した耐衝撃性を示しかつ高温で向上したじん性およびせん断特性を示す熱硬化性接着剤組成物は当該技術分野における有用な進展になりかつとりわけ航空宇宙および高性能自動車産業で迅速に受け入れられる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,028,478号
【特許文献2】米国特許第5,087,657号
【特許文献3】米国特許第5,242,748号
【特許文献4】米国特許第5,278,257号
【特許文献5】米国特許第5,290,857号
【特許文献6】米国特許第5,605,745号
【特許文献7】米国特許第5,686,509号
【特許文献8】米国特許第5,334,654号
【特許文献9】米国特許第6,015,865号
【特許文献10】米国特許第6,037,392号
【特許文献11】米国特許第6,884,854号
【特許文献12】米国特許第6,776,869号
【特許文献13】米国特許出願公開番号2005/0022929
【特許文献14】米国特許出願公開番号2008/0188609
【発明の概要】
【0006】
本明細書に記述する発明は、1つの面において、ナノサイズのコア−シェル粒子を含有するエポキシ樹脂、アミン末端ポリエーテルスルホンおよび/またはアミン末端ポリスルホンを含有する1種以上の熱可塑性改質剤および少なくとも1種の多官能エポキシ樹脂の反応で生じさせた前反応組成物に加えて当該接着剤組成物を400°F以下で完全に硬化させる少なくとも1種のアミン系硬化剤を有する熱硬化性接着剤組成物に向けたものである。前記ナノサイズのコア−シェル粒子をその示した熱可塑性プラスチックと協力させて用いるとじん性が失われることなく高温せん断特性の予想外な利点がもたらされる。そのようなより高いじん性と高温性能のユニークな組み合わせは、特性に関して新規なパラダイムシフトに相当しかつじん性を高くするにつれて高温特性が低下すると言った欠点を有する従来技術の組成物からの脱却に相当する。
【0007】
1つの態様では、架橋密度を制御する目的で本熱硬化性接着剤組成物の前反応物に更にビスフェノールおよびビスフェノール−エポキシ反応用触媒を含有させることも可能である。
【0008】
別の面として、本発明は、ある品目の製造を例えば様々な基質を一緒に結合させることなどで行う目的で用いるに適した熱硬化性接着フィルムを提供し、そのフィルムに本明細書に記述する如き熱硬化性接着剤組成物を含有させかつそのフィルムの重量を0.02から0.15psfにする。
【0009】
別の面として、本発明は、高温で向上した熱/湿潤特性を示す熱硬化性接着フィルムを製造する方法を提供し、この方法では、本明細書に開示する熱硬化性接着剤組成物の1つを剥離紙の上にフィルムが生じるに充分な温度および重量で塗布することでそれを実施する。
【0010】
更に別の面として、本発明は、1番目の品目と2番目の品目を結合させる方法を提供し、この方法では、本明細書に記述する如き熱硬化性接着剤組成物または熱硬化性接着フィルムを前記1番目と2番目の品目の表面の間の接触点として供給しそして前記1番目と2番目の品目の表面と接触させた状態で前記熱硬化性接着剤組成物または熱硬化性接着フィルムを硬化させることで前記1番目と2番目の品目を結合させることでそれを実施する。
【0011】
本発明の前記および他の目的、特徴および利点が本発明の様々な面の以下の詳細な説明を添付図および実施例と協力させて理解することで明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1に、引き剥がし(またはじん性)を高温におけるラップせん断強度(せん断特性)の関数として示す。示すように、その曲線は、高温におけるせん断特性が上昇するにつれて引き剥がし/じん性が降下することを表している。本明細書に記述しかつ請求する如き本発明に従う組成物は前記曲線を越えた場所に描写されていることで、特性が従来技術の組成物に比べてパラダイムシフトしていることが分かる。
【図2】図2に、本明細書に記述する組成物の中の1つが示した破壊表面および形態の走査電子顕微鏡写真を示す。その破壊された表面の粒径は100nmであることが分かる。
【発明の特定の態様の詳細な説明】
【0013】
この上に要約したように、本開示は、ナノコア−シェル粒子を含有するエポキシ樹脂を
弾性重合体および/または熱可塑性プラスチックと組み合わせて含有させた熱硬化性接着剤組成物に関し、これをアミン系硬化剤によって熱で硬化させると高いじん性および高温せん断特性を示す熱硬化性接着剤組成物がもたらされ得る。そのような組成物は、高温特性が予想外に向上していると共にじん性が改善させていることに加えて、また、その組成物が高い性能が要求される厳しい環境、例えば航空宇宙および自動車産業などで用いるに適するような高いガラス転移温度および低い水吸収率を示すことも特徴とする。
【0014】
エポキシ樹脂
本発明で用いる好適な熱硬化性樹脂配合物は、通常の当業者に良く知られているエポキシ樹脂が基になっている。本発明で使用可能なエポキシ樹脂は、エポキシ基を1分子当たり複数有する硬化性エポキシ樹脂である。一般に、エポキシ基を1分子当たり少なくとも約2個有する数多くのグリシジルエーテルが本発明の組成物でエポキシ樹脂として用いるに適する。そのようなポリエポキシドは、飽和、不飽和、環式または非環式、脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式ポリエポキシド化合物であってもよい。適切なポリエポキシドの例にはポリグリシジルエーテルが含まれ、それの製造は、エピクロロヒドリンまたはエピブロモヒドリンとポリフェノールの反応をアルカリの存在下で起こさせることで実施される。従って、適切なポリフェノールは、例えばレゾルシノール、ピロカテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA(ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン)、ビスフェノールF(ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン)、ビスフェノールS、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、フルオレン4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、ビスフェノールZ(4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール)および1,5−ヒドロキシナフタレンなどである。1つの態様として、そのようなエポキシ樹脂にはEPON 828が含まれる。そのような樹脂は一般に接着剤および/または複合材料を製造する目的で用いられ、商業源から容易に入手可能である。ポリグリシジルエーテルの基礎として用いるに適した他のポリフェノールは、フェノールとホルムアルデヒドまたはアセトアルデヒドの公知のノボラック樹脂型縮合生成物である。
【0015】
原則として適切な他のポリエポキシドは、ポリアルコール、アミノフェノールまたは芳香族ジアミンのポリグリシジルエーテルである。特にビスフェノールAまたはビスフェノールFとエピクロロヒドリンの反応で生じる液状のエポキシ樹脂が好適である。ビスフェノールが基になっていて室温で液状であるエポキシ樹脂のエポキシ当量重量は一般に150から約200である。別法としてか或はまた室温で固体であるエポキシ樹脂も使用可能であり、それらも同様にポリフェノールとエピクロロヒドリンから得ることができ、それの融点は45から130℃、好適には50から80℃である。本組成物に含有させるエポキシ樹脂は典型的に約25から約90重量パーセント(例えば25、30、35、40、45、50、55重量パーセント)であってもよい(特に明記しない限り、本明細書に示す濃度を全部全体としての接着剤組成物を基にした当該成分の重量パーセントで表す)。
【0016】
そのような樹脂のいずれも前反応成分としてナノコア−シェル粒子を含有するか或はそれの中に前以て分散させておいた樹脂としてか或は熱硬化性組成物の2番目のエポキシ樹脂として働き得る。2番目のエポキシ樹脂として用いるに特に好適なエポキシ樹脂には、ノボラック(これらに限定するものでないが、HuntsmanのTactix 71756を包含)、アミンおよびアミノフェノール(例えばp−アミノフェノール、アニリン、フェニレンジアミンおよび4,4’−メチレンジアニリンを包含)のポリグリシジル誘導体が含まれる。メチレンジアニリンの商業的に入手可能な形態のポリグリシジルエーテルにはHuntsmanのMY 9655が含まれる。
【0017】
以下に更に詳細に記述するように、そのようなエポキシ樹脂を単独では使用せず、適切な硬化剤、触媒、流れ調節剤、粘着賦与剤、充填剤、弾性重合体系強化剤、反応性希釈剤
、可溶熱可塑性プラスチックおよび当業者に良く知られている他の添加剤と組み合わせて用いる。
【0018】
コア−シェル粒子
コア−シェル構造を有する粒子が本発明の組成物の追加的成分である。そのような粒子は一般に弾性もしくはゴム特性を有する(即ちガラス転移温度が約0℃未満、例えば約−30℃未満の)高分子材料で構成されているコアを有していてそれが非弾性高分子材料(即ちガラス転移温度が周囲温度以上、例えば約50℃以上の熱可塑性もしくは熱硬化性/架橋重合体)で構成されているシェルで取り囲まれている。例えば、そのようなコアは例えばジエンのホモ重合体または共重合体(例えば、ブタジエンまたはイソプレンのホモ重合体、ブタジエンもしくはイソプレンと1種以上のエチレン系不飽和単量体、例えばビニル芳香族単量体、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリレートなどの共重合体)で構成されていてもよい一方、シェルは1種以上の単量体、例えば(メタ)アクリレート(例えばメタアクリル酸メチル)、ビニル芳香族単量体(例えばスチレン)、ビニルシアニド(例えばアクリロニトリル)、不飽和酸および無水物(例えばアクリル酸)、(メタ)アクリルアミドなどの重合体または共重合体(適切に高いガラス転移温度を示す)で構成されていてもよい。そのようなシェルで用いる重合体または共重合体は、金属のカルボン酸塩を生じる(例えば二価の金属カチオンの塩を生じる)ことでイオン的架橋を形成する酸基を有していてもよい。また、二重結合を1分子当たり2個以上有する単量体を用いることでそのようなシェル用の重合体もしくは共重合体を共有架橋させることも可能である。また、他の弾性重合体をコア用として適切に用いることも可能であり、それらには、ポリアクリル酸ブチルまたはポリシロキサン弾性重合体(例えばポリジメチルシロキサン、特に架橋させたポリジメチルシロキサン)が含まれる。そのような粒子は3層以上の層で構成されていても構わない(例えば、ある弾性重合体材料の中心コアが異なる弾性重合体材料の2番目のコアで取り囲まれていてもよいか或は前記コアが異なる組成を有する2つのシェルで取り囲まれていてもよいか或は当該粒子がソフトコア、ハードシェル、ソフトシェル、ハードシェルの構造を有していてもよい)。例えば、米国特許第5,686,509号(引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)に記述されているように、コアまたはシェルのいずれかまたはコアとシェルの両方が架橋(例えばイオンまたは共有で)していても構わない。シェルをコアにグラフト化させることも可能である。そのようなシェルを構成する重合体は、本発明の組成物の他の成分と相互作用し得る1種以上の異なる種類の官能基(例えばエポキシ基、カルボン酸基)を持っていてもよい。しかしながら、他の態様におけるシェルは、本組成物に存在させる他の成分と反応し得る官能基を持たない。そのようなコアが当該粒子を構成する割合は典型的に約50から約95重量パーセントである一方でシェルが当該粒子を構成する割合は約5から約50重量パーセントであろう。
【0019】
好適には、そのような弾性重合体粒子の大きさを相対的に小さくする。例えば、平均粒径を約30nmから約120nmにしてもよい。本発明の特定の態様では、そのような粒子の平均直径を約80nm未満にする。他の態様では、平均粒径を約100nm未満にする。例えば、コア−シェル粒子の平均直径を50から約100nmの範囲内にしてもよい。
【0020】
コア−シェル構造を有する様々な弾性重合体粒子の製造方法は当該技術分野で良く知られていて、例えば米国特許第3,985,703、4,180,529、4,315,085、4,419,496、4,778,851、5,223,586、5,290,857、5,534,594、5,686,509、5,789,482、5,981,659、6,111,015、6,147,142および6,180,693、6,331,580号および公開米国出願2005−124761(これらは各々引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)などに記述されている。コア−シェル構造を有す
る弾性重合体粒子はまたいくつかの商業源からも入手可能である。以下のコア−シェル粒子が本発明で用いるに適し、例えばWacker Chemieから商標GENIOPERL(GENIOPERL P22、P23、P52およびP53を包含)の下で粉末形態で入手可能なコア−シェル粒子[これらを前記供給業者は架橋ポリシロキサンのコア、エポキシ官能化ポリメタアクリル酸メチルのシェルを有していて、ポリシロキサン含有量は約65重量パーセントであり、DSC/DMTAで測定した時の軟化点は約120℃でありそして一次粒径は約100nmであると記述している]、Rohm & Haasから商標PARALOID、特にPARALOID EXL 2600/3600シリーズの製品の下で入手可能なコア−シェルゴム粒子[これらはポリブタジエンのコアを含有していてそれにスチレン/メタアクリル酸メチル共重合体がグラフト化しているグラフト化重合体であり、それの平均粒径は約0.1から約0.3ミクロンである]、Roehm GmbHまたはRoehm America,Inc.が商標DEGALANの下で販売しているコア−シェルゴム粒子[例えばDEGALAN 4899F(これのガラス転移温度は約95℃であると報告されている)]、Nippon Zeonが商標F351の下で販売しているコア−シェルゴム粒子、およびGeneral Electricが商標BLENDEXの下で販売しているコア−シェルゴム粒子などが適する。
【0021】
コア−シェル構造を有する弾性重合体粒子の調製はマスターバッチとして実施可能であり、その場合、当該粒子を1種以上のエポキシ樹脂、例えばビスフェノールAのジグリシジルエーテルなどの中に入れて分散させる。例えば、その粒子の調製を典型的には水性分散液または乳液として実施する。そのような分散液または乳液を所望のエポキシ樹脂またはエポキシ樹脂混合物と一緒にした後、水および他の揮発性物質を蒸留などで除去してもよい。そのようなマスターバッチを調製する1つの方法がヨーロッパ特許出願EP 1632533(引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)の中に詳細に記述されている。例えば、ゴム粒子の水性ラテックスを水にある程度溶解する有機媒体と接触させた後、この1番目の有機媒体よりも水中部分溶解度が低い別の有機媒体と接触させることで水を分離しかつ前記ゴム粒子が2番目の有機媒体に入っている分散液を生じさせてもよい。次に、その分散液を所望のエポキシ樹脂1種または2種以上と混合した後、揮発性物質を蒸留などで除去することでマスターバッチを生じさせてもよい。コア−シェル構造を有する弾性重合体粒子がエポキシ樹脂マトリクスの中に安定に分散しているマスターバッチを調製する他の方法が米国特許第4,778,851号および6,111,015号(各々引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)に記述されている。好適には、その粒子をエポキシ樹脂マトリクスの中に安定に分散させる、即ちコア−シェル粒子が分離した個別の粒子として存在したままであることでそのマスターバッチを室温に放置して老化させた時に粒子の凝集がほとんどまたは全く起こることも粒子がマスターバッチから沈澱(沈降)することもないままであるようにする。そのような弾性重合体粒子のシェルに有利には当該マスターバッチの安定性が向上するような官能化を受けさせてもよいが、別の態様では前記シェルに官能化を受けさせない[即ち、本接着剤組成物を硬化させた時に本組成物の他の成分(例えばエポキシ樹脂または硬化剤)のいずれかと反応する官能基を全く含有させない]。コア−シェル構造を有する粒子がエポキシ樹脂マトリクスの中に分散している特に適切な分散液をKaneka Corporationから入手することができ、それには例えばKANE ACE MX 120(登録商標)が含まれる。
【0022】
コア−シェル構造を有する弾性重合体粒子の製造は当該技術分野で公知のいずれかの方法で実施可能であり、例えば乳化重合、懸濁重合、ミクロ懸濁重合などで実施可能である。特に、乳化重合を伴う方法が好適である。コア−シェル粒子をエポキシ樹脂中のマスターバッチの形態で接着剤組成物に導入すべき本発明の態様では、そのゴム粒子の濃度に特に制限はない。そのようなマスターバッチを生じさせる目的で用いるエポキシ樹脂1種または2種以上は本組成物の中に別に導入するエポキシ樹脂1種または2種以上と同じまた
は異なってもよい。1つの態様では、本発明の接着剤組成物に含めるエポキシ樹脂の全部をマスターバッチの形態でコア−シェル粒子と一緒に導入する。そのマスターバッチ中のエポキシ樹脂とゴム粒子の総量が100重量%であると仮定して、当該コア−シェル粒子の含有量を例えば0.5から80重量%、好適には1から70重量%、より好適には3から60重量%、更により好適には20から40重量%にしてもよい。1つの態様では、ナノコア−シェル粒子を含有するか或はそれと一緒に前以て分散させておいたエポキシ樹脂の重量パーセントを当該熱硬化性組成物の総重量の40%から50%にする。
【0023】
本発明の配合物では、そのようなコアシェルゴムを用いると、本配合物の硬化で用いる温度1種または2種以上と関係なく、本配合物の強化が起こる。即ち、本配合物ではコア−シェルゴムが理由で固有の2相分離が起こる[例えば、当該配合物に混和またはある程度混和するか或は混和しないことさえある液状ゴム(これは当該配合物の硬化で用いられる温度とは異なる温度で固化する可能性がある)とは対照的に]ことから、当該マトリクスの特性が邪魔される度合は最小限である、と言うのは、本配合物内で起こる相分離は現実にしばしば実質的に均一であることが観察されるからである。加うるに、そのように分散が実質的に均一であることから、予測可能な強化(硬化に向かう温度中立性の観点で)も達成可能である。
【0024】
相分離した粒子がエポキシ樹脂の中に分散している形態でKanekaから入手可能なコア−シェルゴム構造物の多くは(メタ)アクリレート−ブタジエン−スチレンの共重合体で出来ているコアを有すると考えており、その中のブタジエンがコア中の共重合体の主成分である。コア−シェルゴム粒子がエポキシ樹脂の中に分散している他の市販マスターバッチには、Wacker Chemie GmbHから入手可能なGENIOPERL
M23A(ビスフェノールAのジグリシジルエーテルが基になった芳香族エポキシ樹脂の中にコア−シェル粒子が30重量パーセント分散していて、そのコア−シェル粒子の平均直径は約100nmであり、架橋シリコーン弾性重合体のコアを含有していて、それにエポキシ官能アクリレート共重合体がグラフト化しており、そのシリコーン弾性重合体のコアがコア−シェル粒子の約65重量パーセントを占めている)が含まれる。
【0025】
本接着剤組成物に含有させるコア−シェル構造を有する弾性重合体粒子の量は典型的に約5から約25重量パーセント(1つの態様では約8から約20重量パーセント)であってもよい。異なるコア−シェル粒子の組み合わせも本発明で有利に使用可能である。そのようなコア−シェル粒子は、例えば粒径、個々のコアおよび/またはシェルが示すガラス転移温度、個々のコアおよび/またはシェルで用いられている重合体の組成、個々のシェルの官能化などの点で異なっている可能性がある。そのコア−シェル粒子の一部を当該粒子がエポキシ樹脂マトリクスの中に安定に分散しているマスターバッチの形態で本接着剤組成物に供給しそして別の一部を乾燥粉末(即ち、如何なるエポキシ樹脂も他のマトリクス材料も入っていない)の形態で本接着剤組成物に供給してもよい。例えば、本接着剤組成物の調製は平均粒径が約0.1から約10ミクロン(より好適には、約0.2から約2ミクロン)の乾燥粉末形態の1番目の種類のコア−シェル粒子および平均粒径が約25から約100nmのコア−シェル粒子が液状のビスフェノールA ジグリシジルエーテルのマトリクスの中に約5から約50重量%の濃度で安定に分散している2番目の種類のコア−シェル粒子の両方を用いることなどで実施可能である。その1番目の種類:2番目の種類のコア−シェルゴム粒子の重量比を例えば約1.5:1から約0.3:1にしてもよい。Nippon Zeonが商標名F351の下で販売しているコア−シェルゴムを例えば1番目の種類のコア−シェルゴム粒子として用いそしてKaneka Corporationが商標名KANACE MX120(登録商標)およびKANACE MX156(登録商標)の下で販売しているコア−シェルゴムを例えば2番目の種類のコア−シェルゴム粒子の源として用いてもよい。
【0026】
強化剤
適切な強化剤は幅広く多様な物質から選択可能であるが、一般的に言って、そのような物質は性質がポリマー状またはオリゴマー状であり、本発明の組成物を熱で硬化させた時に本組成物の他の成分と反応し得る官能基、例えばエポキシ基、カルボン酸基、アミノ基および/またはヒドロキシル基などを有する(しかしながら、別の強化剤はそのような反応性官能基を持たない可能性がある)。
【0027】
1種以上のアミン末端重合体、例えばアミン末端ポリエーテルおよびアミノシラン末端重合体などと1種以上のエポキシ樹脂の反応で得たエポキシが基になったプレポリマーが特に好適な種類の強化剤に相当する。そのような目的で用いるに有用なエポキシ樹脂は、本明細書の上に記述したエポキシ樹脂の中から選択可能であるが、特にポリフェノール、例えばビスフェノールAおよびビスフェノールFなどのジグリシジルエーテルが好適である(例えば、エポキシ当量重量が約150から約1000の)。固体状と液状のエポキシ樹脂の混合物も適切に使用可能である。
【0028】
そのようなエポキシが基になったプレポリマーをアミン末端ポリエーテルから生じさせる方法は当該技術分野で良く知られていて、例えば米国特許第5,084,532号および6,015,865号(これらは各々引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)などに記述されている。一般的に言って、反応させるアミン末端ポリエーテル:エポキシ樹脂の比率をエポキシ基がアミン基に対して過剰に存在することで後者の官能基が完全に反応する(即ち、エポキシが基になったプレポリマーが遊離のアミン基を本質的に全く含有しない)ように調整するのがしばしば好ましいであろう。二官能と三官能のアミン末端ポリエーテルの混合物を用いることも可能である。また、オキシエチレンとオキシプロピレン繰り返し単位の両方を含有するアミン末端ポリエーテル(例えばエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合体、この共重合体はブロック、キャップドまたはランダム構造を有する)もアミノ末端ポリエーテルとして使用可能である。そのアミノ末端ポリエーテルが1分子当たりに含有するアミン基は好適には少なくとも2個である。そのアミン基は好適には第一級アミン基である。
【0029】
当該エポキシ樹脂とアミン末端ポリエーテルを反応させる時、好適にはエポキシ基の方がアミノ基より過剰になるように用いることで後者がエポキシド基と完全に反応するようにする。アミン末端ポリエーテルが有する活性水素当量(AHEW)に対するエポキシ基の過剰度が典型的には1.5から10倍の過剰度、例えば3.5倍の過剰度になるようにする。本発明に従う組成物を製造する時、当該エポキシが基になったプレポリマー成分を好適には1番目の段階として最初に調製する。この目的で、好適には、当該エポキシ樹脂とアミン末端ポリエーテルを所望の比率で反応させる。この反応を好適には高温、好適には90°から130℃、例えば約120℃で例えば3時間実施する。
【0030】
他の適切な強化剤には非晶質のポリスルホン、即ち、主にエーテルとスルホン基を含有していてそれらがアリーレン残基の間に分散している重合体が含まれる。そのようなポリスルホン(時にはポリエーテルスルホンとも呼ぶ)の調製は、例えば米国特許第4,175,175号および特に米国特許第3,647,751号に教示されている方法を用いて実施可能である。スルホン基に加えてエーテルおよびアルキレン基を含有するポリスルホンは主に非晶質であり、本主題発明の実施で用いるに適した候補品である。そのようなポリスルホン(ポリエーテルスルホン)が示すガラス転移温度Tgは150℃以上、好適には175℃以上、最も好適には190℃以上である。好適なアミン末端ポリエーテルスルホンであるKM 180(Cytec Industries Inc.(Woodland Park NJ)が製造)が示すTgは約200℃である。
【0031】
当該エポキシが基になった前反応物を生じさせようとする時、例えば以下の化合物を用
いてもよい:線状アミン末端ポリオキシエチレンエーテル、線状アミン末端ポリオキシプロピレンエーテル、三官能化合物、アミノシランキャップド重合体、アミン末端ポリエーテルスルホンおよびアミン末端ポリスルホン。好適な態様におけるアミン末端ポリエーテルスルホンはKM 170および/またはKM 180(Cytec Industries,Inc.から入手可能)であり得る。
【0032】
アミン末端重合体またはアミノシラン末端重合体とエポキシ樹脂の反応で生じさせた前述前反応物に加えて、エポキシ系接着剤技術分野で公知の他の強化剤または衝撃改良剤を用いることも可能である。一般的に言って、そのような強化剤および衝撃改良剤はガラス転移温度が−30℃から300℃の範囲であることを特徴とする。そのような強化剤および衝撃改良剤の例には、これらに限定するものでないが、ブタジエンのエポキシ反応性共重合体の反応生成物、特にブタジエンと相対的に極性のある共重合用単量体、例えば(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸またはアクリル酸アルキルなどのエポキシ反応性共重合体、例えばカルボキシル末端ブタジエン−ニトリルゴムなどが含まれる。他の例には、ポリイミド、例えばHuntsmanが供給しているMatrimid 9725など、ポリエーテルイミド、例えばGEが供給しているUltemなどが含まれる。
【0033】
様々な補助的衝撃改良剤/強化剤の混合物を用いることも可能である。本発明の硬化性組成物に入れる補助的衝撃改良剤/強化剤の量は実質的に多様であり得るが、典型的には約0.1から約20重量パーセント、例えば約5から約15重量パーセントである。1つの態様では、そのような強化剤を全体の約10から約15重量%の量で存在させることを意図する。
【0034】
別の態様では、本明細書で提供する熱硬化性接着剤組成物に、カルボキシ末端アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアミド、ポリイミドおよびアミド−アミドから選択した2番目の強化剤も含有させる。そのようなカルボキシ末端アクリロニトリル−ブタジエン共重合体には例えばNIPOL 1472が含まれ得る一方、ポリアミドには例えばナイロンが含まれ得る。適切なポリイミドは通常の当業者に公知であり、それには例えば米国特許第5,605,745号に詳述されているそれらが含まれる。特にそのようなポリイミドが好適であり、それの二無水物またはジアミン、特に後者が非対照的であることが理由で、それらが示す結晶化度は低いか或は全体として非晶質である。BTDAおよびAATIが基になったポリイミドが好適である。そのようなポリイミドはCiba−Geigy Corporationから商標MATRIMID(登録商標) 5218の下で入手可能であり、それをN−メチルピロリドンに0.5重量パーセントの濃度で入れて25℃で測定した時の固有粘度は>0.62dl/gである。そのような最も好適なポリイミドが示す分子量は20,000ダルトン以上、好適には50,000ダルトン以上、最も好適には約100,000ダルトンの域である。
【0035】
本発明で提供する硬化した組成物は−55℃から+180℃の範囲の温度で高い引き剥がしおよびせん断強度を示し得る。本接着剤は硬化した状態の時に数多くの最終使用用途、特に航空機構造物および高性能自動車の製造に必要な性能を示す。架橋密度の変化がもたらされるように例えばエポキシ樹脂の官能性(二官能、三官能または四官能)を変えることなどで当該樹脂マトリクスが示すじん性を調整することができる。本発明のエポキシが基になった前反応物および他の強化剤をナノコア−シェル粒子と組み合わせて用いることで、硬化後の本接着剤が示すじん性およびせん断特性を顕著に向上させることができる。
【0036】
硬化剤
用語硬化剤はエポキシ官能基と反応する能力またはエポキシ官能基を重合させる能力のいずれかを有する反応性成分を意味する。本発明の組成物は好適にはワンパート(one
−part)または単一成分組成物でありかつ高温で硬化させる必要があることから、それらにまた本接着剤を室温より充分に高い温度に加熱した時に特定の接着剤成分の架橋または硬化を達成させる能力を有する1種以上の硬化剤(固化剤)も含有させる。即ち、そのような硬化剤は加熱によって活性化される。硬化剤は触媒作用様式で機能し得るか或は本発明のいくつかの態様では本接着剤の成分の中の1種以上と反応することで硬化過程に直接参与し得る。
【0037】
本発明の接着剤組成物用の熱活性化もしくは潜在的硬化剤として、例えばグアニジン、置換グアニジン、置換尿素、メラミン樹脂、グアナミン誘導体、ブロック化アミン、芳香族アミンおよび/またはこれらの混合物を用いることができる。そのような硬化剤は硬化反応に化学量論的に関与する可能性があるが、しかしながら、それらはまた触媒活性も示し得る。置換グアニジンの例は、メチルグアニジン、ジメチルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラ−メチルグアニジン、メチルイソビグアニジン、ジメチルイソビグアニジン、テトラメチルイソビグアニジン、ヘキサメチルイソビグアニジン、ヘプタメチルイソビグアニジン、より特別にはシアノグアニジン(ジシアンジアミド)である。挙げることができる適切なグアナミン誘導体の代表例は、アルキル化ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂またはメトキシメチルエトキシメチルベンゾグアナミンである。単一成分の熱硬化性接着剤の場合の選択基準は、勿論、そのような物質が室温の樹脂系中で低い溶解度を示すことであることから、固体状の微粉砕硬化剤が好適であり、特にジシアンジアミドが適切である。それによって、本組成物が良好な貯蔵安定性を示すことが確保される。使用する硬化剤の量は数多くの要因に依存し、そのような要因には、当該硬化剤が触媒として働くか或は本組成物の架橋に直接参与するか、本組成物中のエポキシ基および他の反応性基の濃度、所望の硬化速度などが含まれる。本組成物に含有させる硬化剤の量は典型的にエポキシ分子1当量当たり約0.5から約1当量である。
【0038】
一般に、そのような硬化剤は相対的に低い分子量および反応官能性を有し、そのような官能性はフェノールのヒドロキシル、アミン、アミドまたは無水物である。好適な硬化剤は、モノマー状およびオリゴマー状のアミン官能ポリアリーレンであり、アリーレン基の間に簡単な共有ブリッジ(例えばジアミノジフェニルの場合のように)または炭素原子数が1−8のアルキレン、エーテル、スルホン、ケトン、カーボネート、カルボキシレート、カルボキサミドなどから成る群より選択される連結基が存在する。
【0039】
特にアミン官能ポリアリーレンが好適であり、その場合の連結基はアルキレン、エーテル、スルホンおよびケトンである。そのようなポリアリーレンおよびそれらを生じさせるための合成方法を米国特許第4,175,175号および4,656,208号(これらは引用することによって本明細書に組み入れられる)に見ることができる。そのような好適な硬化剤の分子量は約800未満、好適には約600未満、最も好適には約450未満である。特に3,3’−ジアミノジフェニルスルホンおよび4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、特に後者が硬化剤として好適である。また、そのような硬化剤の混合物を用いることも可能である。アミノ−水素/エポキシ基の化学量が好適には0.5から1.1、より好適には0.7から1.0、最も好適には約0.8から1.0の範囲になるように調整する。
【0040】
1つの態様におけるアミン系硬化剤は、ジシアンジアミド(DICY)とビス尿素の混合物であり、その場合には本組成物を120℃で硬化させる。別の態様のアミン系硬化剤はジアミノジフェニルスルホン(DDS)であり、その場合の硬化温度は180℃である。特定の態様における硬化剤はDICYとDDSの組み合わせである。
【0041】
他の添加剤
本発明の組成物にまた公知の充填剤、例えば様々な粉砕もしくは沈澱チョーク、石英粉
末、アルミナ、アルミニウム金属粉末、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化カルシウム、銀フレーク、ドロマイト、グラファイト、グラナイト、炭素繊維、ガラス繊維、織物用繊維、重合体繊維、二酸化チタン、溶融シリカ、ナノおよび疎水グレードのシリカ(例えばTS720)、砂、カーボンブラック、酸化カルシウム、炭酸カルシウムマグネシウム、重晶石、特にアルミニウムマグネシウムカルシウムのケイ酸塩型のケイ酸塩様充填剤、例えば珪灰石および緑泥石なども含有させてもよい。本発明の組成物に含有させる充填剤の量は典型的に約0.5から約40重量パーセントであってもよい。
【0042】
別の態様では、本組成物に追加的に1種以上の板状充填剤、例えば雲母、タルク、粘土(例えばカオリン)なども含有させる。本発明に従う接着剤組成物にまた他の一般的アジュバントおよび添加剤、例えば可塑剤、反応性および/または非反応性希釈剤、流れ助剤、カップリング剤(例えばシラン)、接着促進剤、湿潤剤、粘着賦与剤、難燃剤、チキソトロピーおよび/または流れ調節剤(例えばフュームドシリカ、混合鉱物チキソトロープ)、老化および/または腐食抑制剤、安定剤および/または着色用顔料なども含有させてもよい。接着剤の加工特性、柔軟性、必要な硬化作用および接着剤と基質の接着に関してそれの用途に求められる要求に応じて、個々の成分の相対的比率を比較的幅広い範囲内で変えてもよい。
【0043】
いくつかの最終使用では、また、染料、顔料、安定剤、チキソトロピー剤なども含有させる方が好ましい可能性がある。前記および他の添加剤を必要に応じて本明細書に記述する熱硬化性接着剤組成物に複合材料技術で通常実施される濃度で含有させてもよい。そのような添加剤のいずれかを含有させた本熱硬化性接着剤組成物を硬化させると実質的に単一の連続した硬質相が形成されるであろう。
【0044】
フィルム
本明細書に開示する本発明の組成物はまた複合材料、金属またはハニカム構造物から選択した2つ以上の基質を一緒に結合させる目的で用いるに適した接着フィルムとしても使用可能である。1つの態様における熱硬化性組成物は、重量が0.02から0.15psfの接着フィルムである。そのようなフィルムに更に担体、例えばガラス、ポリエステル、ナイロンまたは他の適切な高分子材料から生じさせた織もしくは編マットまたはランダムマットなどを含有させることも可能である。そのような担体はボンドライン(bondline)の厚みの調節で用いるに有用である。また、本発明の組成物を非担持型フィルムとして塗布することも可能である。非担持型フィルムは一般に航空機ナセルのための音響用途で用いられるハニカムまたは穴開き金属もしくは複合材料シートへの細網化の目的で考案されたフィルムである。
【0045】
方法
本発明の樹脂系成分をエポキシ樹脂技術分野の技術者に公知の通常方法に従って混合およびブレンドする。本発明の強化エポキシ樹脂系はフィルム接着剤としてか或は繊維強化プレプレグを生じさせるためのマトリクス樹脂として使用可能であり、それらに関する方法は複合材料技術の技術者に公知である。
【0046】
従って、1つの面として、本発明は、高温で向上した熱/湿潤特性を有する熱硬化性接着フィルムを製造する方法を提供し、この方法では、ナノコア−シェル粒子を含有するエポキシ樹脂に加えて少なくとも1種のアミン末端ポリスルホンもしくはポリエーテルスルホンを含有させた混合物を前反応物が生じるに充分な温度で充分な時間反応させ、少なくとも1種の他のエポキシ樹脂および少なくとも1種のアミン系硬化剤を前記前反応物に添加しそしてその結果として得た混合物を剥離紙の上にフィルムが生じるに充分な温度および重量で塗布することでそれを実施する。
【0047】
1つの態様では、前記反応段階を250−300°Fで30分から2時間実施する。特別な態様では、前記反応段階を300°Fで1時間実施する。特定の態様では、前記段階を真空下で実施してもよい。混合および添加段階を15から60分の範囲の時間かけて実施してもよい。
【0048】
1つの態様では、前記塗布段階を100−200°Fで実施してもよくかつ塗布をフィルム重量が0.02−0.15psfになるように実施してもよい。特別な態様では、前記塗布段階を150°Fの温度で実施しかつフィルム重量が0.06psfになるようにする。
【0049】
いくつかの態様では、そのような反応混合物に更にビスフェノールおよびビスフェノール−エポキシ反応用の触媒も含有させる。また、少なくとも1種の他のエポキシ樹脂および/または有機充填剤も含有させてもよい。
【0050】
本発明の組成物は、異なる材料(金属または非金属)で出来ている部品を一緒に結合させる目的で用いるに適し、そのような材料には、例えば木、金属、塗装もしくは前処理された金属、プラスチック、充填剤含有プラスチック、熱硬化性材料、例えばシート成形用コンパウンドおよびファイバーグラスなどおよびハニカム構造物が含まれる。本接着剤を用いて結合させるべき基質は同じまたは互いに異なってもよい。本発明の組成物を当該技術分野で公知のいずれかの技術を用いて基質表面に塗布してもよい。一般に、本接着剤を結合させるべき基質の片面または両面に塗布する。これらの基質を本接着剤がその一緒に結合させるべき基質の間に位置するように接触させる。その後、本接着剤組成物に圧力および熱を熱硬化性もしくは潜在的硬化剤がエポキシ樹脂含有組成物の硬化を開始させる温度になって開始が起こる時間かける。
【0051】
従って、別の面として、本発明は、1番目の品目と2番目の品目を結合させる方法を提供し、この方法では、本明細書に記述する如き熱硬化性接着剤組成物または接着フィルムを前記1番目の品目の表面と前記2番目の品目の表面の接触点として供給しそしてその一緒にした品目を前記熱硬化性接着剤の完全な硬化が起こるに充分な温度および圧力で充分な時間硬化させて前記1番目と2番目の品目を一緒に結合させることでそれを実施する。
【0052】
1つの態様における前記1番目および2番目の品目は、金属、非金属、モノリスまたはサンドイッチ型構造物であってもよく、それらを複合材料、金属およびハニカム構造物から選択する。このように、一緒に結合させる品目は複合材料/複合材料、金属/金属、複合材料/金属、ハニカム/金属、ハニカム/複合材料およびハニカム/ハニカムであってもよい。典型的な金属製ハニカム構造物には、チタンまたはアルミニウム製のそれらが含まれる。典型的な非金属製ハニカム構造物には、ポリアミド(Nomax/Kevlar)、グロス−フェノール樹脂(gloss−phenolic)およびポリイミドが含まれる。
【0053】
前記硬化段階は25−100psiの圧力下325−400°Fの温度で60−120分の時間実施可能である。特別な態様では、前記硬化段階を40psi下350°Fの温度で90分間実施する。
【0054】
他の態様
1. 熱硬化性接着剤組成物であって、
a)i)ナノコア−シェル粒子を含有するエポキシ樹脂、
ii)アミン末端ポリエーテルスルホンおよびアミン末端ポリスルホンから選択される少なくとも1種の強化剤、および
iii)少なくとも1種の多官能エポキシ樹脂、
の反応で生じた前反応組成物、および
b)前記接着剤組成物の完全な硬化を400°F以下の温度で起こさせる少なくとも1種のアミン系硬化剤、
を含有して成っていて高いガラス転移温度、向上した破壊じん性および350°F以下の温度で向上したせん断特性を示すことを特徴とする熱硬化性接着剤組成物。
2. 前記前反応組成物が更に
iv)ビスフェノール、および
v)ビスフェノール−エポキシ反応用の触媒、
も含有して成る態様1に従う熱硬化性接着剤組成物。
3. 前記ビスフェノールがビスフェノールA、Bis F、Bis Sおよびフルオレンから選択される態様2に従う熱硬化性接着剤組成物。
4. 前記触媒がトリフェニルホスフィンである態様2または3のいずれか1項に従う熱硬化性接着剤組成物。
5. 前記ナノコア−シェル粒子を含有するエポキシ樹脂がビスフェノールAのジグリシジルエーテルである態様1から4のいずれか1項に従う熱硬化性接着剤組成物。
6. 前記ナノコア−シェル粒子の大きさが10から100nmである態様1から5のいずれか1項に従う熱硬化性接着剤組成物。
7. 前記ナノコア−シェルがブタジエンのコアおよびポリメタアクリル酸メチル(PMMA)のシェルを含有して成る前態様のいずれかに従う熱硬化性接着剤組成物。
8. 前記ナノコア−シェルがブタジエン−スチレン共重合体のコアおよびPMMAのシェルを含有して成る前態様のいずれかに従う熱硬化性接着剤組成物。
9. 前記ナノコア−シェルがポリシロキサンのコアおよびPMMAのシェルを含有して成る前態様のいずれかに従う熱硬化性接着剤組成物。
10. 前記ナノコア−シェル粒子を含有するエポキシ樹脂がKANE ACE(登録商標) MX 120である前態様のいずれかに従う熱硬化性接着剤組成物。
11. 前記強化剤が分子量(Mn)が8000から14000のポリエーテルスルホンである前態様のいずれかに従う熱硬化性接着剤組成物。
12. 更にカルボキシ末端アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアミド、ポリイミドおよびアミド−アミドから選択される2番目の強化剤も含有して成る前態様のいずれかに従う熱硬化性接着剤組成物。
13. 前記カルボキシ末端アクリロニトリル−ブタジエン共重合体がNIPOL(登録商標) 1472である態様12に従う熱硬化性接着剤組成物。
14. 前記ポリアミドがナイロンである態様12に従う熱硬化性接着剤組成物。
15. 前記ポリイミドがMATRIMID(登録商標) 9725である態様12に従う熱硬化性接着剤組成物。
16. 前記多官能エポキシ樹脂がメチレンジアニリンのテトラグリシジルエーテルおよびノボラックエポキシから選択される前態様のいずれかに従う熱硬化性接着剤組成物。
17. 前記メチレンジアニリンのテトラグリシジルエーテルがMY9655でありそして前記ノボラックエポキシがHuntsman Tactix XP(登録商標) 71756である態様16に従う熱硬化性接着剤組成物。
18. 前記アミン系硬化剤がジアミノジフェニルスルホン(DDS)、ジシアンジアミド(DICY)、ブロック化ビス尿素、アミンおよびこれらの混合物から選択される前態様のいずれかに従う熱硬化性接着剤組成物。
19. 前記アミン系硬化剤がDICY/ビス尿素でありそして硬化温度が250°Fである態様18に従う熱硬化性接着剤組成物。
20. 前記アミン系硬化剤がDDSまたはDICYとDDSの組み合わせでありそして硬化温度が350°Fである態様18に従う熱硬化性接着剤組成物。
21. 更に酸化アルミニウム、アルミニウム金属粉末、ナノおよび疎水グレードのシリカおよび酸化カルシウムまたは銀フレークから選択される1種以上の無機充填剤も含有して成る前態様のいずれかに従う熱硬化性接着剤組成物。
22. 更に疎水性の非晶質シリカおよび親水性の非晶質シリカから選択される1種以上の流れ調節剤も含有して成る前態様のいずれかに従う熱硬化性接着剤組成物。
23. 前記疎水性の非晶質シリカがCAB−O−SIL(登録商標) TS 720である態様22に従う熱硬化性接着剤組成物。
24. 更にTiO2およびZnOから選択される1種以上の顔料も含有して成る前態様のいずれかに従う熱硬化性接着剤組成物。
25. 前記ナノコア−シェル粒子を含有するエポキシ樹脂の重量パーセントが全体の40%から50%である前態様のいずれかに従う熱硬化性接着剤組成物。
26. 前記強化剤の重量パーセントが全体の1%から30%である前態様のいずれかに従う熱硬化性接着剤組成物。
27. 前記多官能エポキシ樹脂の重量パーセントが全体の5%から25%である前態様のいずれかに従う熱硬化性接着剤組成物。
28. 複合材料、金属およびハニカム構造物の中の1種以上から選択される基質を結合させるに適した熱硬化性接着フィルムであって、態様1から27のいずれかに従う熱硬化性接着剤組成物を含有して成っていてフィルム重量が0.02から0.15psfである熱硬化性接着フィルム。
29. 更にガラス、ポリエステルおよびナイロンの中の1種以上から選択される高分子量担体も含有して成る態様28に従う熱硬化性接着フィルム。
30. 熱/溶融または溶媒和方法で生じさせた態様28または態様29に従う熱硬化性接着フィルム。
31. 高温で向上した熱/湿潤特性を示す熱硬化性接着フィルムを生じさせる方法であって、
a)ナノコア−シェル粒子を含有するエポキシ樹脂および少なくとも1種のアミン末端ポリスルホンもしくはポリエーテルスルホンを含有して成る混合物を前反応物が生じるに充分な温度で充分な時間反応させ、
b)少なくとも1種の他のエポキシ樹脂および少なくとも1種のアミン系硬化剤を前記前反応物に添加し、そして
c)段階(b)の混合物を剥離紙の上にフィルムが生じるに充分な温度および重量で塗布することで、高温で向上した熱/湿潤特性を示す熱硬化性接着フィルムを生じさせる、
ことを含んで成る方法。
32. 前記反応段階を250−300°Fで0.5から2時間実施する態様31に従う方法。
33. 前記温度を300°Fにしそして時間を1時間にする態様32に従う方法。
34. 段階(b)および(c)を真空下で実施しそして前記少なくとも1種の他のエポキシ樹脂およびアミン系硬化剤を前記前反応物と15から60分間混合する態様31から33のいずれかに従う方法。
35. 段階(c)を100から200°Fで実施しかつ塗布をフィルム重量が0.02から0.15psfになるように実施する態様31から34のいずれかに従う方法。
36. 前記温度を150°Fにしそしてフィルム重量を0.06psfにする態様35に従う方法。
37. 前記反応混合物に更にビスフェノール、ビスフェノール−エポキシ反応用触媒および少なくとも1種の他のエポキシ樹脂も含有させる態様31から36のいずれか1項に従う方法。
38. 段階(b)に更に少なくとも1種の無機充填剤を前記反応混合物に添加することも含める態様31から37のいずれか1項に従う方法。
39. 1番目の品目と2番目の品目を結合させる方法であって、
a)態様1から27のいずれかに従う熱硬化性接着剤組成物または態様28から30のいずれかに従う熱硬化性接着フィルムまたは態様31から38のいずれかに従って調製した熱硬化性接着フィルムを前記1番目と2番目の品目の表面の間の接触点として供給し、そして
b)前記1番目と2番目の品目の表面と接触させた状態にしながら前記熱硬化性接着剤組成物または熱硬化性接着フィルムを完全な硬化が起こるに充分な温度および圧力で充分な時間硬化させることで前記1番目と2番目の品目を結合させる、
ことを含んで成る方法。
40. 前記1番目および2番目の品目(1番目の品目/2番目の品目)を複合材料/複合材料、金属/金属、複合材料/金属、金属/複合材料、ハニカム/複合材料、ハニカム/金属およびハニカム/ハニカムから選択する態様39に従う方法。
41. 前記金属をチタンおよび/またはアルミニウムから選択する態様40に従う方法。
42. 前記複合材料をポリアミドおよび/またはグロス−フェノール樹脂およびポリイミドから選択する態様40に従う方法。
43. 段階(b)を25から100psiの圧力下325から400°Fの温度で60から120分の時間実施する態様39から42のいずれか1項に従う方法。
44. 前記温度を350°Fにし、圧力を40psiにしそして時間を90分にする態様43に従う方法。
【実施例】
【0055】
以下の実施例は当業者が本発明の特定の態様を更に理解するようにする補助で示すものである。本実施例は例示の目的を意図したものであり、本発明の様々な態様の範囲を限定するとして解釈されるべきでない。
【実施例1】
【0056】
80gのKANACE MX 120(登録商標)(Kanekaが供給、ナノコアシェルゴムがEPON 828エポキシ樹脂に25重量%入っている)、20gのテトラブロモビスフェノールA(TBBA)、20gのParaloid 2691(Rohm&Hass)および0.1gのトリフェニルホスフィンを含有させた混合物を300°Fで1時間反応させる。前記前反応混合物を160°Fに冷却し、35gのメチレンジアニリンのテトラグリシジルエーテル(Huntsmanが供給しているMY 9655)を添加した後、真空下で15分間混合する。この混合物に硬化剤であるジアミノジフェニルスルホンを20gおよびDICYを2.5gおよび流れ調節剤である非晶質シリカを2g加える。この混合物を真空下で15分間撹拌する。
【0057】
前記混合物を剥離紙の上に150°Fでフィルム重量が0.06psfになるように塗布する。このフィルムに機械的性能に関する評価を結合およびラップせん断、引き剥がしおよびガラス転移温度を試験することで受けさせる。このフィルムを40psiの圧力下350°Fで90分間硬化させる。
【実施例2】
【0058】
KANACE MX 120(登録商標)樹脂の代わりに60gのEPON 828(登録商標)および25gのParaloid 2691(登録商標)を用いる以外は実施例1と同じ手順に従う。次に、その前反応混合物を実施例1に記述した如き追加的エポキシ樹脂および硬化剤と一緒に用いる。次に、その混合物をフィルムとして塗布した後、それに機械的性能に関する試験を実施例1に示したようにして受けさせる。
【0059】
試験結果を表1に示し、この結果によりKANACE MX 120(登録商標)樹脂を用いると予想外に性能が向上することが分かる。
【0060】
【表1】
【実施例3】
【0061】
KANACE MX 120(登録商標)が80gでKM Polymer(ポリエーテルスルホン)が10gの混合物を250°Fで1時間反応させる。この前反応物にノボラックエポキシを50g加えた後、実施例1に示した如き硬化剤および15gのKM 180重合体を加える。フィルムの塗布およびアルミニウム基質を用いた機械的特性の試験を実施例1に示したようにして実施する。KANACE MX 120(登録商標)樹脂を用いない比較配合物を実施例4に示す。
【実施例4】
【0062】
前反応物が60gのEPON 828(登録商標)と20gのParaloid 2691(登録商標)(KANACE MX 120(登録商標)樹脂の代わり)と10gのKM 180から成る以外は実施例3と同じ手順に従う。この配合物の残りは実施例3に示したそれと同じである。フィルムの塗布を0.05psfになるように行いそして機械的特性に関する試験を行う。KANACE MX 120(登録商標)含有樹脂系とそれを置き換えた系(EPON 828(登録商標)+Paraloid 2691(登録商標))の間の比較試験データを表2に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
表2に示したデータから分かるであろうように、ナノコア−シェルゴム粒子を含有させた配合物(実施例3)はより高い引き剥がし力を示すばかりでなくまた高温で予想外により高いせん断特性も示す。
【実施例5】
【0065】
実施例3と同じ手順に従う。次に、ランダムマット担体を用いて0.05psfになるように塗布した接着フィルムを用いてCYCOM 977−2 エポキシ/炭素複合材料基質を結合させる。共結合させる幅広い面積のラップせん断試験では、以下に示すように、8−10層の1つの複合材料スキン(被着体)を350°Fで予備硬化させておきそしてもう一方の8−10層の被着体を前記接着フィルムと一緒に共硬化させる:
【0066】
【0067】
二次結合試験では、両方の被着体を予備硬化させておく。共結合試験の硬化サイクルは、85psi下350°Fで2時間から成る。二次結合試験の硬化サイクルは40psiの圧力下350°Fで90分間である。次に、結合させた後の試験片にASTM D 3165に従う試験を160°Fの水に2000時間浸漬させる前および後に受けさせる。ラップせん断試験の結果を表3に示す。
【0068】
【表3】
【0069】
表3に示したデータは、実施例5の組成物は乾燥および湿潤両方の条件下で高いせん断強度を有することを特徴とすることを示しており、このことは、水分に対する抵抗が優れていることを表している。湿気にさらされた後の特性の保持は二次結合試験片の場合には90%以上でありそして共結合試験片の場合には85%以上である。このデータは、本発明の組成物は水分の影響を受けないで水浸漬条件に長時間さらされた後でも強度の大部分を保持していることを示している。
【0070】
本出願の全体に渡って様々な特許および/または科学文献を言及してきた。そのような出版物の開示はそのような開示が本発明と矛盾しない度合であたかも本明細書に記述する如く引用することによって全体が本明細書に組み入れられる(そのように引用することによって組み入れることが許容されるあらゆる権限に関して)。通常の当業者はこの上で行った説明および実施例を考慮することで請求する如き本発明を過度の実験なしに実施することができるであろう。
【0071】
この上で行った説明で本教示の新規な基本的特徴を示し、記述しそして指摘してきたが、当業者は本教示の範囲から逸脱することなくその例示および説明した如き組成物および
方法の形態に関して様々な省略、置換および変更を行うことができることは理解されるであろう。従って、本教示の範囲をこの上で行った説明に限定すべきでなく、添付請求項によって限定すべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明の主題事項は、様々な複合材料または金属基質の結合で用いるに有用でありかつ向上した特性を示す改良エポキシ系熱硬化性接着剤組成物に関する。より詳細には、本主題事項は、ナノサイズのコア−シェル粒子を弾性重合体および/または熱可塑性プラスチックと組み合わせて含有させた熱硬化性組成物に関し、それによって、優れた相乗的じん性、高温せん断特性、高いガラス転移温度および低い水吸収率を示すようにする。そのような新規な組成物は様々な産業において不利な環境および厳しい用途で繊維強化エポキシプレプレグ用の構造用接着剤およびマトリクス樹脂として用いるに適する。
【背景技術】
【0002】
当該技術分野では、複合材料および金属構造物の接着、充填および製造で用いるに有用な接着剤が示すせん断強度、耐衝撃性および他の鍵となる特性を向上させる努力として幅広く多様なエポキシが基になった組成物および他の樹脂および添加剤を製造および使用するための様々な組成物および方法が記述されている。例えば、接着剤組成物配合用成分およびそのような組成物を用いて様々な基質を互いに接着させて構造的強化をもたらすための使用を記述している特許には下記が含まれる:特許文献1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13および14。
【0003】
向上したじん性を示す接着剤組成物および複合材料構造物は以前に開示されはしたが、そのような組成物が示す他の物性に関してはいくらかの犠牲が存在し、そのような犠牲には、例えばガラス転移温度の低下に加えて高温におけるクリープ性の上昇が含まれる。例えば、今日の接着剤組成物は、じん性(引き剥がし)を高くするにつれて高温特性(例えばせん断特性)が低下すると言った欠点を有する。そのよう接着剤組成物および複合材料に関するさらなる困難さには、剛性の損失、異種材料および/または樹脂から生じさせた基質間で起こる接着破壊および耐溶媒性が劣ることによる使用中の特性悪化が含まれ得る。
【0004】
従って、強化複合材料の製造および様々な複合材料および/または金属基質の結合で現在利用可能な接着剤組成物および方法はさらなる改良を必要としている。向上した耐衝撃性を示しかつ高温で向上したじん性およびせん断特性を示す熱硬化性接着剤組成物は当該技術分野における有用な進展になりかつとりわけ航空宇宙および高性能自動車産業で迅速に受け入れられる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,028,478号
【特許文献2】米国特許第5,087,657号
【特許文献3】米国特許第5,242,748号
【特許文献4】米国特許第5,278,257号
【特許文献5】米国特許第5,290,857号
【特許文献6】米国特許第5,605,745号
【特許文献7】米国特許第5,686,509号
【特許文献8】米国特許第5,334,654号
【特許文献9】米国特許第6,015,865号
【特許文献10】米国特許第6,037,392号
【特許文献11】米国特許第6,884,854号
【特許文献12】米国特許第6,776,869号
【特許文献13】米国特許出願公開番号2005/0022929
【特許文献14】米国特許出願公開番号2008/0188609
【発明の概要】
【0006】
本明細書に記述する発明は、1つの面において、ナノサイズのコア−シェル粒子を含有するエポキシ樹脂、アミン末端ポリエーテルスルホンおよび/またはアミン末端ポリスルホンを含有する1種以上の熱可塑性改質剤および少なくとも1種の多官能エポキシ樹脂の反応で生じさせた前反応組成物に加えて当該接着剤組成物を400°F以下で完全に硬化させる少なくとも1種のアミン系硬化剤を有する熱硬化性接着剤組成物に向けたものである。前記ナノサイズのコア−シェル粒子をその示した熱可塑性プラスチックと協力させて用いるとじん性が失われることなく高温せん断特性の予想外な利点がもたらされる。そのようなより高いじん性と高温性能のユニークな組み合わせは、特性に関して新規なパラダイムシフトに相当しかつじん性を高くするにつれて高温特性が低下すると言った欠点を有する従来技術の組成物からの脱却に相当する。
【0007】
1つの態様では、架橋密度を制御する目的で本熱硬化性接着剤組成物の前反応物に更にビスフェノールおよびビスフェノール−エポキシ反応用触媒を含有させることも可能である。
【0008】
別の面として、本発明は、ある品目の製造を例えば様々な基質を一緒に結合させることなどで行う目的で用いるに適した熱硬化性接着フィルムを提供し、そのフィルムに本明細書に記述する如き熱硬化性接着剤組成物を含有させかつそのフィルムの重量を0.02から0.15psfにする。
【0009】
別の面として、本発明は、高温で向上した熱/湿潤特性を示す熱硬化性接着フィルムを製造する方法を提供し、この方法では、本明細書に開示する熱硬化性接着剤組成物の1つを剥離紙の上にフィルムが生じるに充分な温度および重量で塗布することでそれを実施する。
【0010】
更に別の面として、本発明は、1番目の品目と2番目の品目を結合させる方法を提供し、この方法では、本明細書に記述する如き熱硬化性接着剤組成物または熱硬化性接着フィルムを前記1番目と2番目の品目の表面の間の接触点として供給しそして前記1番目と2番目の品目の表面と接触させた状態で前記熱硬化性接着剤組成物または熱硬化性接着フィルムを硬化させることで前記1番目と2番目の品目を結合させることでそれを実施する。
【0011】
本発明の前記および他の目的、特徴および利点が本発明の様々な面の以下の詳細な説明を添付図および実施例と協力させて理解することで明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1に、引き剥がし(またはじん性)を高温におけるラップせん断強度(せん断特性)の関数として示す。示すように、その曲線は、高温におけるせん断特性が上昇するにつれて引き剥がし/じん性が降下することを表している。本明細書に記述しかつ請求する如き本発明に従う組成物は前記曲線を越えた場所に描写されていることで、特性が従来技術の組成物に比べてパラダイムシフトしていることが分かる。
【図2】図2に、本明細書に記述する組成物の中の1つが示した破壊表面および形態の走査電子顕微鏡写真を示す。その破壊された表面の粒径は100nmであることが分かる。
【発明の特定の態様の詳細な説明】
【0013】
この上に要約したように、本開示は、ナノコア−シェル粒子を含有するエポキシ樹脂を
弾性重合体および/または熱可塑性プラスチックと組み合わせて含有させた熱硬化性接着剤組成物に関し、これをアミン系硬化剤によって熱で硬化させると高いじん性および高温せん断特性を示す熱硬化性接着剤組成物がもたらされ得る。そのような組成物は、高温特性が予想外に向上していると共にじん性が改善させていることに加えて、また、その組成物が高い性能が要求される厳しい環境、例えば航空宇宙および自動車産業などで用いるに適するような高いガラス転移温度および低い水吸収率を示すことも特徴とする。
【0014】
エポキシ樹脂
本発明で用いる好適な熱硬化性樹脂配合物は、通常の当業者に良く知られているエポキシ樹脂が基になっている。本発明で使用可能なエポキシ樹脂は、エポキシ基を1分子当たり複数有する硬化性エポキシ樹脂である。一般に、エポキシ基を1分子当たり少なくとも約2個有する数多くのグリシジルエーテルが本発明の組成物でエポキシ樹脂として用いるに適する。そのようなポリエポキシドは、飽和、不飽和、環式または非環式、脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式ポリエポキシド化合物であってもよい。適切なポリエポキシドの例にはポリグリシジルエーテルが含まれ、それの製造は、エピクロロヒドリンまたはエピブロモヒドリンとポリフェノールの反応をアルカリの存在下で起こさせることで実施される。従って、適切なポリフェノールは、例えばレゾルシノール、ピロカテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA(ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン)、ビスフェノールF(ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン)、ビスフェノールS、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、フルオレン4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、ビスフェノールZ(4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール)および1,5−ヒドロキシナフタレンなどである。1つの態様として、そのようなエポキシ樹脂にはEPON 828が含まれる。そのような樹脂は一般に接着剤および/または複合材料を製造する目的で用いられ、商業源から容易に入手可能である。ポリグリシジルエーテルの基礎として用いるに適した他のポリフェノールは、フェノールとホルムアルデヒドまたはアセトアルデヒドの公知のノボラック樹脂型縮合生成物である。
【0015】
原則として適切な他のポリエポキシドは、ポリアルコール、アミノフェノールまたは芳香族ジアミンのポリグリシジルエーテルである。特にビスフェノールAまたはビスフェノールFとエピクロロヒドリンの反応で生じる液状のエポキシ樹脂が好適である。ビスフェノールが基になっていて室温で液状であるエポキシ樹脂のエポキシ当量重量は一般に150から約200である。別法としてか或はまた室温で固体であるエポキシ樹脂も使用可能であり、それらも同様にポリフェノールとエピクロロヒドリンから得ることができ、それの融点は45から130℃、好適には50から80℃である。本組成物に含有させるエポキシ樹脂は典型的に約25から約90重量パーセント(例えば25、30、35、40、45、50、55重量パーセント)であってもよい(特に明記しない限り、本明細書に示す濃度を全部全体としての接着剤組成物を基にした当該成分の重量パーセントで表す)。
【0016】
そのような樹脂のいずれも前反応成分としてナノコア−シェル粒子を含有するか或はそれの中に前以て分散させておいた樹脂としてか或は熱硬化性組成物の2番目のエポキシ樹脂として働き得る。2番目のエポキシ樹脂として用いるに特に好適なエポキシ樹脂には、ノボラック(これらに限定するものでないが、HuntsmanのTactix 71756を包含)、アミンおよびアミノフェノール(例えばp−アミノフェノール、アニリン、フェニレンジアミンおよび4,4’−メチレンジアニリンを包含)のポリグリシジル誘導体が含まれる。メチレンジアニリンの商業的に入手可能な形態のポリグリシジルエーテルにはHuntsmanのMY 9655が含まれる。
【0017】
以下に更に詳細に記述するように、そのようなエポキシ樹脂を単独では使用せず、適切な硬化剤、触媒、流れ調節剤、粘着賦与剤、充填剤、弾性重合体系強化剤、反応性希釈剤
、可溶熱可塑性プラスチックおよび当業者に良く知られている他の添加剤と組み合わせて用いる。
【0018】
コア−シェル粒子
コア−シェル構造を有する粒子が本発明の組成物の追加的成分である。そのような粒子は一般に弾性もしくはゴム特性を有する(即ちガラス転移温度が約0℃未満、例えば約−30℃未満の)高分子材料で構成されているコアを有していてそれが非弾性高分子材料(即ちガラス転移温度が周囲温度以上、例えば約50℃以上の熱可塑性もしくは熱硬化性/架橋重合体)で構成されているシェルで取り囲まれている。例えば、そのようなコアは例えばジエンのホモ重合体または共重合体(例えば、ブタジエンまたはイソプレンのホモ重合体、ブタジエンもしくはイソプレンと1種以上のエチレン系不飽和単量体、例えばビニル芳香族単量体、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリレートなどの共重合体)で構成されていてもよい一方、シェルは1種以上の単量体、例えば(メタ)アクリレート(例えばメタアクリル酸メチル)、ビニル芳香族単量体(例えばスチレン)、ビニルシアニド(例えばアクリロニトリル)、不飽和酸および無水物(例えばアクリル酸)、(メタ)アクリルアミドなどの重合体または共重合体(適切に高いガラス転移温度を示す)で構成されていてもよい。そのようなシェルで用いる重合体または共重合体は、金属のカルボン酸塩を生じる(例えば二価の金属カチオンの塩を生じる)ことでイオン的架橋を形成する酸基を有していてもよい。また、二重結合を1分子当たり2個以上有する単量体を用いることでそのようなシェル用の重合体もしくは共重合体を共有架橋させることも可能である。また、他の弾性重合体をコア用として適切に用いることも可能であり、それらには、ポリアクリル酸ブチルまたはポリシロキサン弾性重合体(例えばポリジメチルシロキサン、特に架橋させたポリジメチルシロキサン)が含まれる。そのような粒子は3層以上の層で構成されていても構わない(例えば、ある弾性重合体材料の中心コアが異なる弾性重合体材料の2番目のコアで取り囲まれていてもよいか或は前記コアが異なる組成を有する2つのシェルで取り囲まれていてもよいか或は当該粒子がソフトコア、ハードシェル、ソフトシェル、ハードシェルの構造を有していてもよい)。例えば、米国特許第5,686,509号(引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)に記述されているように、コアまたはシェルのいずれかまたはコアとシェルの両方が架橋(例えばイオンまたは共有で)していても構わない。シェルをコアにグラフト化させることも可能である。そのようなシェルを構成する重合体は、本発明の組成物の他の成分と相互作用し得る1種以上の異なる種類の官能基(例えばエポキシ基、カルボン酸基)を持っていてもよい。しかしながら、他の態様におけるシェルは、本組成物に存在させる他の成分と反応し得る官能基を持たない。そのようなコアが当該粒子を構成する割合は典型的に約50から約95重量パーセントである一方でシェルが当該粒子を構成する割合は約5から約50重量パーセントであろう。
【0019】
好適には、そのような弾性重合体粒子の大きさを相対的に小さくする。例えば、平均粒径を約30nmから約120nmにしてもよい。本発明の特定の態様では、そのような粒子の平均直径を約80nm未満にする。他の態様では、平均粒径を約100nm未満にする。例えば、コア−シェル粒子の平均直径を50から約100nmの範囲内にしてもよい。
【0020】
コア−シェル構造を有する様々な弾性重合体粒子の製造方法は当該技術分野で良く知られていて、例えば米国特許第3,985,703、4,180,529、4,315,085、4,419,496、4,778,851、5,223,586、5,290,857、5,534,594、5,686,509、5,789,482、5,981,659、6,111,015、6,147,142および6,180,693、6,331,580号および公開米国出願2005−124761(これらは各々引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)などに記述されている。コア−シェル構造を有す
る弾性重合体粒子はまたいくつかの商業源からも入手可能である。以下のコア−シェル粒子が本発明で用いるに適し、例えばWacker Chemieから商標GENIOPERL(GENIOPERL P22、P23、P52およびP53を包含)の下で粉末形態で入手可能なコア−シェル粒子[これらを前記供給業者は架橋ポリシロキサンのコア、エポキシ官能化ポリメタアクリル酸メチルのシェルを有していて、ポリシロキサン含有量は約65重量パーセントであり、DSC/DMTAで測定した時の軟化点は約120℃でありそして一次粒径は約100nmであると記述している]、Rohm & Haasから商標PARALOID、特にPARALOID EXL 2600/3600シリーズの製品の下で入手可能なコア−シェルゴム粒子[これらはポリブタジエンのコアを含有していてそれにスチレン/メタアクリル酸メチル共重合体がグラフト化しているグラフト化重合体であり、それの平均粒径は約0.1から約0.3ミクロンである]、Roehm GmbHまたはRoehm America,Inc.が商標DEGALANの下で販売しているコア−シェルゴム粒子[例えばDEGALAN 4899F(これのガラス転移温度は約95℃であると報告されている)]、Nippon Zeonが商標F351の下で販売しているコア−シェルゴム粒子、およびGeneral Electricが商標BLENDEXの下で販売しているコア−シェルゴム粒子などが適する。
【0021】
コア−シェル構造を有する弾性重合体粒子の調製はマスターバッチとして実施可能であり、その場合、当該粒子を1種以上のエポキシ樹脂、例えばビスフェノールAのジグリシジルエーテルなどの中に入れて分散させる。例えば、その粒子の調製を典型的には水性分散液または乳液として実施する。そのような分散液または乳液を所望のエポキシ樹脂またはエポキシ樹脂混合物と一緒にした後、水および他の揮発性物質を蒸留などで除去してもよい。そのようなマスターバッチを調製する1つの方法がヨーロッパ特許出願EP 1632533(引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)の中に詳細に記述されている。例えば、ゴム粒子の水性ラテックスを水にある程度溶解する有機媒体と接触させた後、この1番目の有機媒体よりも水中部分溶解度が低い別の有機媒体と接触させることで水を分離しかつ前記ゴム粒子が2番目の有機媒体に入っている分散液を生じさせてもよい。次に、その分散液を所望のエポキシ樹脂1種または2種以上と混合した後、揮発性物質を蒸留などで除去することでマスターバッチを生じさせてもよい。コア−シェル構造を有する弾性重合体粒子がエポキシ樹脂マトリクスの中に安定に分散しているマスターバッチを調製する他の方法が米国特許第4,778,851号および6,111,015号(各々引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)に記述されている。好適には、その粒子をエポキシ樹脂マトリクスの中に安定に分散させる、即ちコア−シェル粒子が分離した個別の粒子として存在したままであることでそのマスターバッチを室温に放置して老化させた時に粒子の凝集がほとんどまたは全く起こることも粒子がマスターバッチから沈澱(沈降)することもないままであるようにする。そのような弾性重合体粒子のシェルに有利には当該マスターバッチの安定性が向上するような官能化を受けさせてもよいが、別の態様では前記シェルに官能化を受けさせない[即ち、本接着剤組成物を硬化させた時に本組成物の他の成分(例えばエポキシ樹脂または硬化剤)のいずれかと反応する官能基を全く含有させない]。コア−シェル構造を有する粒子がエポキシ樹脂マトリクスの中に分散している特に適切な分散液をKaneka Corporationから入手することができ、それには例えばKANE ACE MX 120(登録商標)が含まれる。
【0022】
コア−シェル構造を有する弾性重合体粒子の製造は当該技術分野で公知のいずれかの方法で実施可能であり、例えば乳化重合、懸濁重合、ミクロ懸濁重合などで実施可能である。特に、乳化重合を伴う方法が好適である。コア−シェル粒子をエポキシ樹脂中のマスターバッチの形態で接着剤組成物に導入すべき本発明の態様では、そのゴム粒子の濃度に特に制限はない。そのようなマスターバッチを生じさせる目的で用いるエポキシ樹脂1種または2種以上は本組成物の中に別に導入するエポキシ樹脂1種または2種以上と同じまた
は異なってもよい。1つの態様では、本発明の接着剤組成物に含めるエポキシ樹脂の全部をマスターバッチの形態でコア−シェル粒子と一緒に導入する。そのマスターバッチ中のエポキシ樹脂とゴム粒子の総量が100重量%であると仮定して、当該コア−シェル粒子の含有量を例えば0.5から80重量%、好適には1から70重量%、より好適には3から60重量%、更により好適には20から40重量%にしてもよい。1つの態様では、ナノコア−シェル粒子を含有するか或はそれと一緒に前以て分散させておいたエポキシ樹脂の重量パーセントを当該熱硬化性組成物の総重量の40%から50%にする。
【0023】
本発明の配合物では、そのようなコアシェルゴムを用いると、本配合物の硬化で用いる温度1種または2種以上と関係なく、本配合物の強化が起こる。即ち、本配合物ではコア−シェルゴムが理由で固有の2相分離が起こる[例えば、当該配合物に混和またはある程度混和するか或は混和しないことさえある液状ゴム(これは当該配合物の硬化で用いられる温度とは異なる温度で固化する可能性がある)とは対照的に]ことから、当該マトリクスの特性が邪魔される度合は最小限である、と言うのは、本配合物内で起こる相分離は現実にしばしば実質的に均一であることが観察されるからである。加うるに、そのように分散が実質的に均一であることから、予測可能な強化(硬化に向かう温度中立性の観点で)も達成可能である。
【0024】
相分離した粒子がエポキシ樹脂の中に分散している形態でKanekaから入手可能なコア−シェルゴム構造物の多くは(メタ)アクリレート−ブタジエン−スチレンの共重合体で出来ているコアを有すると考えており、その中のブタジエンがコア中の共重合体の主成分である。コア−シェルゴム粒子がエポキシ樹脂の中に分散している他の市販マスターバッチには、Wacker Chemie GmbHから入手可能なGENIOPERL
M23A(ビスフェノールAのジグリシジルエーテルが基になった芳香族エポキシ樹脂の中にコア−シェル粒子が30重量パーセント分散していて、そのコア−シェル粒子の平均直径は約100nmであり、架橋シリコーン弾性重合体のコアを含有していて、それにエポキシ官能アクリレート共重合体がグラフト化しており、そのシリコーン弾性重合体のコアがコア−シェル粒子の約65重量パーセントを占めている)が含まれる。
【0025】
本接着剤組成物に含有させるコア−シェル構造を有する弾性重合体粒子の量は典型的に約5から約25重量パーセント(1つの態様では約8から約20重量パーセント)であってもよい。異なるコア−シェル粒子の組み合わせも本発明で有利に使用可能である。そのようなコア−シェル粒子は、例えば粒径、個々のコアおよび/またはシェルが示すガラス転移温度、個々のコアおよび/またはシェルで用いられている重合体の組成、個々のシェルの官能化などの点で異なっている可能性がある。そのコア−シェル粒子の一部を当該粒子がエポキシ樹脂マトリクスの中に安定に分散しているマスターバッチの形態で本接着剤組成物に供給しそして別の一部を乾燥粉末(即ち、如何なるエポキシ樹脂も他のマトリクス材料も入っていない)の形態で本接着剤組成物に供給してもよい。例えば、本接着剤組成物の調製は平均粒径が約0.1から約10ミクロン(より好適には、約0.2から約2ミクロン)の乾燥粉末形態の1番目の種類のコア−シェル粒子および平均粒径が約25から約100nmのコア−シェル粒子が液状のビスフェノールA ジグリシジルエーテルのマトリクスの中に約5から約50重量%の濃度で安定に分散している2番目の種類のコア−シェル粒子の両方を用いることなどで実施可能である。その1番目の種類:2番目の種類のコア−シェルゴム粒子の重量比を例えば約1.5:1から約0.3:1にしてもよい。Nippon Zeonが商標名F351の下で販売しているコア−シェルゴムを例えば1番目の種類のコア−シェルゴム粒子として用いそしてKaneka Corporationが商標名KANACE MX120(登録商標)およびKANACE MX156(登録商標)の下で販売しているコア−シェルゴムを例えば2番目の種類のコア−シェルゴム粒子の源として用いてもよい。
【0026】
強化剤
適切な強化剤は幅広く多様な物質から選択可能であるが、一般的に言って、そのような物質は性質がポリマー状またはオリゴマー状であり、本発明の組成物を熱で硬化させた時に本組成物の他の成分と反応し得る官能基、例えばエポキシ基、カルボン酸基、アミノ基および/またはヒドロキシル基などを有する(しかしながら、別の強化剤はそのような反応性官能基を持たない可能性がある)。
【0027】
1種以上のアミン末端重合体、例えばアミン末端ポリエーテルおよびアミノシラン末端重合体などと1種以上のエポキシ樹脂の反応で得たエポキシが基になったプレポリマーが特に好適な種類の強化剤に相当する。そのような目的で用いるに有用なエポキシ樹脂は、本明細書の上に記述したエポキシ樹脂の中から選択可能であるが、特にポリフェノール、例えばビスフェノールAおよびビスフェノールFなどのジグリシジルエーテルが好適である(例えば、エポキシ当量重量が約150から約1000の)。固体状と液状のエポキシ樹脂の混合物も適切に使用可能である。
【0028】
そのようなエポキシが基になったプレポリマーをアミン末端ポリエーテルから生じさせる方法は当該技術分野で良く知られていて、例えば米国特許第5,084,532号および6,015,865号(これらは各々引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)などに記述されている。一般的に言って、反応させるアミン末端ポリエーテル:エポキシ樹脂の比率をエポキシ基がアミン基に対して過剰に存在することで後者の官能基が完全に反応する(即ち、エポキシが基になったプレポリマーが遊離のアミン基を本質的に全く含有しない)ように調整するのがしばしば好ましいであろう。二官能と三官能のアミン末端ポリエーテルの混合物を用いることも可能である。また、オキシエチレンとオキシプロピレン繰り返し単位の両方を含有するアミン末端ポリエーテル(例えばエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合体、この共重合体はブロック、キャップドまたはランダム構造を有する)もアミノ末端ポリエーテルとして使用可能である。そのアミノ末端ポリエーテルが1分子当たりに含有するアミン基は好適には少なくとも2個である。そのアミン基は好適には第一級アミン基である。
【0029】
当該エポキシ樹脂とアミン末端ポリエーテルを反応させる時、好適にはエポキシ基の方がアミノ基より過剰になるように用いることで後者がエポキシド基と完全に反応するようにする。アミン末端ポリエーテルが有する活性水素当量(AHEW)に対するエポキシ基の過剰度が典型的には1.5から10倍の過剰度、例えば3.5倍の過剰度になるようにする。本発明に従う組成物を製造する時、当該エポキシが基になったプレポリマー成分を好適には1番目の段階として最初に調製する。この目的で、好適には、当該エポキシ樹脂とアミン末端ポリエーテルを所望の比率で反応させる。この反応を好適には高温、好適には90°から130℃、例えば約120℃で例えば3時間実施する。
【0030】
他の適切な強化剤には非晶質のポリスルホン、即ち、主にエーテルとスルホン基を含有していてそれらがアリーレン残基の間に分散している重合体が含まれる。そのようなポリスルホン(時にはポリエーテルスルホンとも呼ぶ)の調製は、例えば米国特許第4,175,175号および特に米国特許第3,647,751号に教示されている方法を用いて実施可能である。スルホン基に加えてエーテルおよびアルキレン基を含有するポリスルホンは主に非晶質であり、本主題発明の実施で用いるに適した候補品である。そのようなポリスルホン(ポリエーテルスルホン)が示すガラス転移温度Tgは150℃以上、好適には175℃以上、最も好適には190℃以上である。好適なアミン末端ポリエーテルスルホンであるKM 180(Cytec Industries Inc.(Woodland Park NJ)が製造)が示すTgは約200℃である。
【0031】
当該エポキシが基になった前反応物を生じさせようとする時、例えば以下の化合物を用
いてもよい:線状アミン末端ポリオキシエチレンエーテル、線状アミン末端ポリオキシプロピレンエーテル、三官能化合物、アミノシランキャップド重合体、アミン末端ポリエーテルスルホンおよびアミン末端ポリスルホン。好適な態様におけるアミン末端ポリエーテルスルホンはKM 170および/またはKM 180(Cytec Industries,Inc.から入手可能)であり得る。
【0032】
アミン末端重合体またはアミノシラン末端重合体とエポキシ樹脂の反応で生じさせた前述前反応物に加えて、エポキシ系接着剤技術分野で公知の他の強化剤または衝撃改良剤を用いることも可能である。一般的に言って、そのような強化剤および衝撃改良剤はガラス転移温度が−30℃から300℃の範囲であることを特徴とする。そのような強化剤および衝撃改良剤の例には、これらに限定するものでないが、ブタジエンのエポキシ反応性共重合体の反応生成物、特にブタジエンと相対的に極性のある共重合用単量体、例えば(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸またはアクリル酸アルキルなどのエポキシ反応性共重合体、例えばカルボキシル末端ブタジエン−ニトリルゴムなどが含まれる。他の例には、ポリイミド、例えばHuntsmanが供給しているMatrimid 9725など、ポリエーテルイミド、例えばGEが供給しているUltemなどが含まれる。
【0033】
様々な補助的衝撃改良剤/強化剤の混合物を用いることも可能である。本発明の硬化性組成物に入れる補助的衝撃改良剤/強化剤の量は実質的に多様であり得るが、典型的には約0.1から約20重量パーセント、例えば約5から約15重量パーセントである。1つの態様では、そのような強化剤を全体の約10から約15重量%の量で存在させることを意図する。
【0034】
別の態様では、本明細書で提供する熱硬化性接着剤組成物に、カルボキシ末端アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアミド、ポリイミドおよびアミド−アミドから選択した2番目の強化剤も含有させる。そのようなカルボキシ末端アクリロニトリル−ブタジエン共重合体には例えばNIPOL 1472が含まれ得る一方、ポリアミドには例えばナイロンが含まれ得る。適切なポリイミドは通常の当業者に公知であり、それには例えば米国特許第5,605,745号に詳述されているそれらが含まれる。特にそのようなポリイミドが好適であり、それの二無水物またはジアミン、特に後者が非対照的であることが理由で、それらが示す結晶化度は低いか或は全体として非晶質である。BTDAおよびAATIが基になったポリイミドが好適である。そのようなポリイミドはCiba−Geigy Corporationから商標MATRIMID(登録商標) 5218の下で入手可能であり、それをN−メチルピロリドンに0.5重量パーセントの濃度で入れて25℃で測定した時の固有粘度は>0.62dl/gである。そのような最も好適なポリイミドが示す分子量は20,000ダルトン以上、好適には50,000ダルトン以上、最も好適には約100,000ダルトンの域である。
【0035】
本発明で提供する硬化した組成物は−55℃から+180℃の範囲の温度で高い引き剥がしおよびせん断強度を示し得る。本接着剤は硬化した状態の時に数多くの最終使用用途、特に航空機構造物および高性能自動車の製造に必要な性能を示す。架橋密度の変化がもたらされるように例えばエポキシ樹脂の官能性(二官能、三官能または四官能)を変えることなどで当該樹脂マトリクスが示すじん性を調整することができる。本発明のエポキシが基になった前反応物および他の強化剤をナノコア−シェル粒子と組み合わせて用いることで、硬化後の本接着剤が示すじん性およびせん断特性を顕著に向上させることができる。
【0036】
硬化剤
用語硬化剤はエポキシ官能基と反応する能力またはエポキシ官能基を重合させる能力のいずれかを有する反応性成分を意味する。本発明の組成物は好適にはワンパート(one
−part)または単一成分組成物でありかつ高温で硬化させる必要があることから、それらにまた本接着剤を室温より充分に高い温度に加熱した時に特定の接着剤成分の架橋または硬化を達成させる能力を有する1種以上の硬化剤(固化剤)も含有させる。即ち、そのような硬化剤は加熱によって活性化される。硬化剤は触媒作用様式で機能し得るか或は本発明のいくつかの態様では本接着剤の成分の中の1種以上と反応することで硬化過程に直接参与し得る。
【0037】
本発明の接着剤組成物用の熱活性化もしくは潜在的硬化剤として、例えばグアニジン、置換グアニジン、置換尿素、メラミン樹脂、グアナミン誘導体、ブロック化アミン、芳香族アミンおよび/またはこれらの混合物を用いることができる。そのような硬化剤は硬化反応に化学量論的に関与する可能性があるが、しかしながら、それらはまた触媒活性も示し得る。置換グアニジンの例は、メチルグアニジン、ジメチルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラ−メチルグアニジン、メチルイソビグアニジン、ジメチルイソビグアニジン、テトラメチルイソビグアニジン、ヘキサメチルイソビグアニジン、ヘプタメチルイソビグアニジン、より特別にはシアノグアニジン(ジシアンジアミド)である。挙げることができる適切なグアナミン誘導体の代表例は、アルキル化ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂またはメトキシメチルエトキシメチルベンゾグアナミンである。単一成分の熱硬化性接着剤の場合の選択基準は、勿論、そのような物質が室温の樹脂系中で低い溶解度を示すことであることから、固体状の微粉砕硬化剤が好適であり、特にジシアンジアミドが適切である。それによって、本組成物が良好な貯蔵安定性を示すことが確保される。使用する硬化剤の量は数多くの要因に依存し、そのような要因には、当該硬化剤が触媒として働くか或は本組成物の架橋に直接参与するか、本組成物中のエポキシ基および他の反応性基の濃度、所望の硬化速度などが含まれる。本組成物に含有させる硬化剤の量は典型的にエポキシ分子1当量当たり約0.5から約1当量である。
【0038】
一般に、そのような硬化剤は相対的に低い分子量および反応官能性を有し、そのような官能性はフェノールのヒドロキシル、アミン、アミドまたは無水物である。好適な硬化剤は、モノマー状およびオリゴマー状のアミン官能ポリアリーレンであり、アリーレン基の間に簡単な共有ブリッジ(例えばジアミノジフェニルの場合のように)または炭素原子数が1−8のアルキレン、エーテル、スルホン、ケトン、カーボネート、カルボキシレート、カルボキサミドなどから成る群より選択される連結基が存在する。
【0039】
特にアミン官能ポリアリーレンが好適であり、その場合の連結基はアルキレン、エーテル、スルホンおよびケトンである。そのようなポリアリーレンおよびそれらを生じさせるための合成方法を米国特許第4,175,175号および4,656,208号(これらは引用することによって本明細書に組み入れられる)に見ることができる。そのような好適な硬化剤の分子量は約800未満、好適には約600未満、最も好適には約450未満である。特に3,3’−ジアミノジフェニルスルホンおよび4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、特に後者が硬化剤として好適である。また、そのような硬化剤の混合物を用いることも可能である。アミノ−水素/エポキシ基の化学量が好適には0.5から1.1、より好適には0.7から1.0、最も好適には約0.8から1.0の範囲になるように調整する。
【0040】
1つの態様におけるアミン系硬化剤は、ジシアンジアミド(DICY)とビス尿素の混合物であり、その場合には本組成物を120℃で硬化させる。別の態様のアミン系硬化剤はジアミノジフェニルスルホン(DDS)であり、その場合の硬化温度は180℃である。特定の態様における硬化剤はDICYとDDSの組み合わせである。
【0041】
他の添加剤
本発明の組成物にまた公知の充填剤、例えば様々な粉砕もしくは沈澱チョーク、石英粉
末、アルミナ、アルミニウム金属粉末、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化カルシウム、銀フレーク、ドロマイト、グラファイト、グラナイト、炭素繊維、ガラス繊維、織物用繊維、重合体繊維、二酸化チタン、溶融シリカ、ナノおよび疎水グレードのシリカ(例えばTS720)、砂、カーボンブラック、酸化カルシウム、炭酸カルシウムマグネシウム、重晶石、特にアルミニウムマグネシウムカルシウムのケイ酸塩型のケイ酸塩様充填剤、例えば珪灰石および緑泥石なども含有させてもよい。本発明の組成物に含有させる充填剤の量は典型的に約0.5から約40重量パーセントであってもよい。
【0042】
別の態様では、本組成物に追加的に1種以上の板状充填剤、例えば雲母、タルク、粘土(例えばカオリン)なども含有させる。本発明に従う接着剤組成物にまた他の一般的アジュバントおよび添加剤、例えば可塑剤、反応性および/または非反応性希釈剤、流れ助剤、カップリング剤(例えばシラン)、接着促進剤、湿潤剤、粘着賦与剤、難燃剤、チキソトロピーおよび/または流れ調節剤(例えばフュームドシリカ、混合鉱物チキソトロープ)、老化および/または腐食抑制剤、安定剤および/または着色用顔料なども含有させてもよい。接着剤の加工特性、柔軟性、必要な硬化作用および接着剤と基質の接着に関してそれの用途に求められる要求に応じて、個々の成分の相対的比率を比較的幅広い範囲内で変えてもよい。
【0043】
いくつかの最終使用では、また、染料、顔料、安定剤、チキソトロピー剤なども含有させる方が好ましい可能性がある。前記および他の添加剤を必要に応じて本明細書に記述する熱硬化性接着剤組成物に複合材料技術で通常実施される濃度で含有させてもよい。そのような添加剤のいずれかを含有させた本熱硬化性接着剤組成物を硬化させると実質的に単一の連続した硬質相が形成されるであろう。
【0044】
フィルム
本明細書に開示する本発明の組成物はまた複合材料、金属またはハニカム構造物から選択した2つ以上の基質を一緒に結合させる目的で用いるに適した接着フィルムとしても使用可能である。1つの態様における熱硬化性組成物は、重量が0.02から0.15psfの接着フィルムである。そのようなフィルムに更に担体、例えばガラス、ポリエステル、ナイロンまたは他の適切な高分子材料から生じさせた織もしくは編マットまたはランダムマットなどを含有させることも可能である。そのような担体はボンドライン(bondline)の厚みの調節で用いるに有用である。また、本発明の組成物を非担持型フィルムとして塗布することも可能である。非担持型フィルムは一般に航空機ナセルのための音響用途で用いられるハニカムまたは穴開き金属もしくは複合材料シートへの細網化の目的で考案されたフィルムである。
【0045】
方法
本発明の樹脂系成分をエポキシ樹脂技術分野の技術者に公知の通常方法に従って混合およびブレンドする。本発明の強化エポキシ樹脂系はフィルム接着剤としてか或は繊維強化プレプレグを生じさせるためのマトリクス樹脂として使用可能であり、それらに関する方法は複合材料技術の技術者に公知である。
【0046】
従って、1つの面として、本発明は、高温で向上した熱/湿潤特性を有する熱硬化性接着フィルムを製造する方法を提供し、この方法では、ナノコア−シェル粒子を含有するエポキシ樹脂に加えて少なくとも1種のアミン末端ポリスルホンもしくはポリエーテルスルホンを含有させた混合物を前反応物が生じるに充分な温度で充分な時間反応させ、少なくとも1種の他のエポキシ樹脂および少なくとも1種のアミン系硬化剤を前記前反応物に添加しそしてその結果として得た混合物を剥離紙の上にフィルムが生じるに充分な温度および重量で塗布することでそれを実施する。
【0047】
1つの態様では、前記反応段階を250−300°Fで30分から2時間実施する。特別な態様では、前記反応段階を300°Fで1時間実施する。特定の態様では、前記段階を真空下で実施してもよい。混合および添加段階を15から60分の範囲の時間かけて実施してもよい。
【0048】
1つの態様では、前記塗布段階を100−200°Fで実施してもよくかつ塗布をフィルム重量が0.02−0.15psfになるように実施してもよい。特別な態様では、前記塗布段階を150°Fの温度で実施しかつフィルム重量が0.06psfになるようにする。
【0049】
いくつかの態様では、そのような反応混合物に更にビスフェノールおよびビスフェノール−エポキシ反応用の触媒も含有させる。また、少なくとも1種の他のエポキシ樹脂および/または有機充填剤も含有させてもよい。
【0050】
本発明の組成物は、異なる材料(金属または非金属)で出来ている部品を一緒に結合させる目的で用いるに適し、そのような材料には、例えば木、金属、塗装もしくは前処理された金属、プラスチック、充填剤含有プラスチック、熱硬化性材料、例えばシート成形用コンパウンドおよびファイバーグラスなどおよびハニカム構造物が含まれる。本接着剤を用いて結合させるべき基質は同じまたは互いに異なってもよい。本発明の組成物を当該技術分野で公知のいずれかの技術を用いて基質表面に塗布してもよい。一般に、本接着剤を結合させるべき基質の片面または両面に塗布する。これらの基質を本接着剤がその一緒に結合させるべき基質の間に位置するように接触させる。その後、本接着剤組成物に圧力および熱を熱硬化性もしくは潜在的硬化剤がエポキシ樹脂含有組成物の硬化を開始させる温度になって開始が起こる時間かける。
【0051】
従って、別の面として、本発明は、1番目の品目と2番目の品目を結合させる方法を提供し、この方法では、本明細書に記述する如き熱硬化性接着剤組成物または接着フィルムを前記1番目の品目の表面と前記2番目の品目の表面の接触点として供給しそしてその一緒にした品目を前記熱硬化性接着剤の完全な硬化が起こるに充分な温度および圧力で充分な時間硬化させて前記1番目と2番目の品目を一緒に結合させることでそれを実施する。
【0052】
1つの態様における前記1番目および2番目の品目は、金属、非金属、モノリスまたはサンドイッチ型構造物であってもよく、それらを複合材料、金属およびハニカム構造物から選択する。このように、一緒に結合させる品目は複合材料/複合材料、金属/金属、複合材料/金属、ハニカム/金属、ハニカム/複合材料およびハニカム/ハニカムであってもよい。典型的な金属製ハニカム構造物には、チタンまたはアルミニウム製のそれらが含まれる。典型的な非金属製ハニカム構造物には、ポリアミド(Nomax/Kevlar)、グロス−フェノール樹脂(gloss−phenolic)およびポリイミドが含まれる。
【0053】
前記硬化段階は25−100psiの圧力下325−400°Fの温度で60−120分の時間実施可能である。特別な態様では、前記硬化段階を40psi下350°Fの温度で90分間実施する。
【0054】
他の態様
1. 熱硬化性接着剤組成物であって、
a)i)ナノコア−シェル粒子を含有するエポキシ樹脂、
ii)アミン末端ポリエーテルスルホンおよびアミン末端ポリスルホンから選択される少なくとも1種の強化剤、および
iii)少なくとも1種の多官能エポキシ樹脂、
の反応で生じた前反応組成物、および
b)前記接着剤組成物の完全な硬化を400°F以下の温度で起こさせる少なくとも1種のアミン系硬化剤、
を含有して成っていて高いガラス転移温度、向上した破壊じん性および350°F以下の温度で向上したせん断特性を示すことを特徴とする熱硬化性接着剤組成物。
2. 前記前反応組成物が更に
iv)ビスフェノール、および
v)ビスフェノール−エポキシ反応用の触媒、
も含有して成る態様1に従う熱硬化性接着剤組成物。
3. 前記ビスフェノールがビスフェノールA、Bis F、Bis Sおよびフルオレンから選択される態様2に従う熱硬化性接着剤組成物。
4. 前記触媒がトリフェニルホスフィンである態様2または3のいずれか1項に従う熱硬化性接着剤組成物。
5. 前記ナノコア−シェル粒子を含有するエポキシ樹脂がビスフェノールAのジグリシジルエーテルである態様1から4のいずれか1項に従う熱硬化性接着剤組成物。
6. 前記ナノコア−シェル粒子の大きさが10から100nmである態様1から5のいずれか1項に従う熱硬化性接着剤組成物。
7. 前記ナノコア−シェルがブタジエンのコアおよびポリメタアクリル酸メチル(PMMA)のシェルを含有して成る前態様のいずれかに従う熱硬化性接着剤組成物。
8. 前記ナノコア−シェルがブタジエン−スチレン共重合体のコアおよびPMMAのシェルを含有して成る前態様のいずれかに従う熱硬化性接着剤組成物。
9. 前記ナノコア−シェルがポリシロキサンのコアおよびPMMAのシェルを含有して成る前態様のいずれかに従う熱硬化性接着剤組成物。
10. 前記ナノコア−シェル粒子を含有するエポキシ樹脂がKANE ACE(登録商標) MX 120である前態様のいずれかに従う熱硬化性接着剤組成物。
11. 前記強化剤が分子量(Mn)が8000から14000のポリエーテルスルホンである前態様のいずれかに従う熱硬化性接着剤組成物。
12. 更にカルボキシ末端アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアミド、ポリイミドおよびアミド−アミドから選択される2番目の強化剤も含有して成る前態様のいずれかに従う熱硬化性接着剤組成物。
13. 前記カルボキシ末端アクリロニトリル−ブタジエン共重合体がNIPOL(登録商標) 1472である態様12に従う熱硬化性接着剤組成物。
14. 前記ポリアミドがナイロンである態様12に従う熱硬化性接着剤組成物。
15. 前記ポリイミドがMATRIMID(登録商標) 9725である態様12に従う熱硬化性接着剤組成物。
16. 前記多官能エポキシ樹脂がメチレンジアニリンのテトラグリシジルエーテルおよびノボラックエポキシから選択される前態様のいずれかに従う熱硬化性接着剤組成物。
17. 前記メチレンジアニリンのテトラグリシジルエーテルがMY9655でありそして前記ノボラックエポキシがHuntsman Tactix XP(登録商標) 71756である態様16に従う熱硬化性接着剤組成物。
18. 前記アミン系硬化剤がジアミノジフェニルスルホン(DDS)、ジシアンジアミド(DICY)、ブロック化ビス尿素、アミンおよびこれらの混合物から選択される前態様のいずれかに従う熱硬化性接着剤組成物。
19. 前記アミン系硬化剤がDICY/ビス尿素でありそして硬化温度が250°Fである態様18に従う熱硬化性接着剤組成物。
20. 前記アミン系硬化剤がDDSまたはDICYとDDSの組み合わせでありそして硬化温度が350°Fである態様18に従う熱硬化性接着剤組成物。
21. 更に酸化アルミニウム、アルミニウム金属粉末、ナノおよび疎水グレードのシリカおよび酸化カルシウムまたは銀フレークから選択される1種以上の無機充填剤も含有して成る前態様のいずれかに従う熱硬化性接着剤組成物。
22. 更に疎水性の非晶質シリカおよび親水性の非晶質シリカから選択される1種以上の流れ調節剤も含有して成る前態様のいずれかに従う熱硬化性接着剤組成物。
23. 前記疎水性の非晶質シリカがCAB−O−SIL(登録商標) TS 720である態様22に従う熱硬化性接着剤組成物。
24. 更にTiO2およびZnOから選択される1種以上の顔料も含有して成る前態様のいずれかに従う熱硬化性接着剤組成物。
25. 前記ナノコア−シェル粒子を含有するエポキシ樹脂の重量パーセントが全体の40%から50%である前態様のいずれかに従う熱硬化性接着剤組成物。
26. 前記強化剤の重量パーセントが全体の1%から30%である前態様のいずれかに従う熱硬化性接着剤組成物。
27. 前記多官能エポキシ樹脂の重量パーセントが全体の5%から25%である前態様のいずれかに従う熱硬化性接着剤組成物。
28. 複合材料、金属およびハニカム構造物の中の1種以上から選択される基質を結合させるに適した熱硬化性接着フィルムであって、態様1から27のいずれかに従う熱硬化性接着剤組成物を含有して成っていてフィルム重量が0.02から0.15psfである熱硬化性接着フィルム。
29. 更にガラス、ポリエステルおよびナイロンの中の1種以上から選択される高分子量担体も含有して成る態様28に従う熱硬化性接着フィルム。
30. 熱/溶融または溶媒和方法で生じさせた態様28または態様29に従う熱硬化性接着フィルム。
31. 高温で向上した熱/湿潤特性を示す熱硬化性接着フィルムを生じさせる方法であって、
a)ナノコア−シェル粒子を含有するエポキシ樹脂および少なくとも1種のアミン末端ポリスルホンもしくはポリエーテルスルホンを含有して成る混合物を前反応物が生じるに充分な温度で充分な時間反応させ、
b)少なくとも1種の他のエポキシ樹脂および少なくとも1種のアミン系硬化剤を前記前反応物に添加し、そして
c)段階(b)の混合物を剥離紙の上にフィルムが生じるに充分な温度および重量で塗布することで、高温で向上した熱/湿潤特性を示す熱硬化性接着フィルムを生じさせる、
ことを含んで成る方法。
32. 前記反応段階を250−300°Fで0.5から2時間実施する態様31に従う方法。
33. 前記温度を300°Fにしそして時間を1時間にする態様32に従う方法。
34. 段階(b)および(c)を真空下で実施しそして前記少なくとも1種の他のエポキシ樹脂およびアミン系硬化剤を前記前反応物と15から60分間混合する態様31から33のいずれかに従う方法。
35. 段階(c)を100から200°Fで実施しかつ塗布をフィルム重量が0.02から0.15psfになるように実施する態様31から34のいずれかに従う方法。
36. 前記温度を150°Fにしそしてフィルム重量を0.06psfにする態様35に従う方法。
37. 前記反応混合物に更にビスフェノール、ビスフェノール−エポキシ反応用触媒および少なくとも1種の他のエポキシ樹脂も含有させる態様31から36のいずれか1項に従う方法。
38. 段階(b)に更に少なくとも1種の無機充填剤を前記反応混合物に添加することも含める態様31から37のいずれか1項に従う方法。
39. 1番目の品目と2番目の品目を結合させる方法であって、
a)態様1から27のいずれかに従う熱硬化性接着剤組成物または態様28から30のいずれかに従う熱硬化性接着フィルムまたは態様31から38のいずれかに従って調製した熱硬化性接着フィルムを前記1番目と2番目の品目の表面の間の接触点として供給し、そして
b)前記1番目と2番目の品目の表面と接触させた状態にしながら前記熱硬化性接着剤組成物または熱硬化性接着フィルムを完全な硬化が起こるに充分な温度および圧力で充分な時間硬化させることで前記1番目と2番目の品目を結合させる、
ことを含んで成る方法。
40. 前記1番目および2番目の品目(1番目の品目/2番目の品目)を複合材料/複合材料、金属/金属、複合材料/金属、金属/複合材料、ハニカム/複合材料、ハニカム/金属およびハニカム/ハニカムから選択する態様39に従う方法。
41. 前記金属をチタンおよび/またはアルミニウムから選択する態様40に従う方法。
42. 前記複合材料をポリアミドおよび/またはグロス−フェノール樹脂およびポリイミドから選択する態様40に従う方法。
43. 段階(b)を25から100psiの圧力下325から400°Fの温度で60から120分の時間実施する態様39から42のいずれか1項に従う方法。
44. 前記温度を350°Fにし、圧力を40psiにしそして時間を90分にする態様43に従う方法。
【実施例】
【0055】
以下の実施例は当業者が本発明の特定の態様を更に理解するようにする補助で示すものである。本実施例は例示の目的を意図したものであり、本発明の様々な態様の範囲を限定するとして解釈されるべきでない。
【実施例1】
【0056】
80gのKANACE MX 120(登録商標)(Kanekaが供給、ナノコアシェルゴムがEPON 828エポキシ樹脂に25重量%入っている)、20gのテトラブロモビスフェノールA(TBBA)、20gのParaloid 2691(Rohm&Hass)および0.1gのトリフェニルホスフィンを含有させた混合物を300°Fで1時間反応させる。前記前反応混合物を160°Fに冷却し、35gのメチレンジアニリンのテトラグリシジルエーテル(Huntsmanが供給しているMY 9655)を添加した後、真空下で15分間混合する。この混合物に硬化剤であるジアミノジフェニルスルホンを20gおよびDICYを2.5gおよび流れ調節剤である非晶質シリカを2g加える。この混合物を真空下で15分間撹拌する。
【0057】
前記混合物を剥離紙の上に150°Fでフィルム重量が0.06psfになるように塗布する。このフィルムに機械的性能に関する評価を結合およびラップせん断、引き剥がしおよびガラス転移温度を試験することで受けさせる。このフィルムを40psiの圧力下350°Fで90分間硬化させる。
【実施例2】
【0058】
KANACE MX 120(登録商標)樹脂の代わりに60gのEPON 828(登録商標)および25gのParaloid 2691(登録商標)を用いる以外は実施例1と同じ手順に従う。次に、その前反応混合物を実施例1に記述した如き追加的エポキシ樹脂および硬化剤と一緒に用いる。次に、その混合物をフィルムとして塗布した後、それに機械的性能に関する試験を実施例1に示したようにして受けさせる。
【0059】
試験結果を表1に示し、この結果によりKANACE MX 120(登録商標)樹脂を用いると予想外に性能が向上することが分かる。
【0060】
【表1】
【実施例3】
【0061】
KANACE MX 120(登録商標)が80gでKM Polymer(ポリエーテルスルホン)が10gの混合物を250°Fで1時間反応させる。この前反応物にノボラックエポキシを50g加えた後、実施例1に示した如き硬化剤および15gのKM 180重合体を加える。フィルムの塗布およびアルミニウム基質を用いた機械的特性の試験を実施例1に示したようにして実施する。KANACE MX 120(登録商標)樹脂を用いない比較配合物を実施例4に示す。
【実施例4】
【0062】
前反応物が60gのEPON 828(登録商標)と20gのParaloid 2691(登録商標)(KANACE MX 120(登録商標)樹脂の代わり)と10gのKM 180から成る以外は実施例3と同じ手順に従う。この配合物の残りは実施例3に示したそれと同じである。フィルムの塗布を0.05psfになるように行いそして機械的特性に関する試験を行う。KANACE MX 120(登録商標)含有樹脂系とそれを置き換えた系(EPON 828(登録商標)+Paraloid 2691(登録商標))の間の比較試験データを表2に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
表2に示したデータから分かるであろうように、ナノコア−シェルゴム粒子を含有させた配合物(実施例3)はより高い引き剥がし力を示すばかりでなくまた高温で予想外により高いせん断特性も示す。
【実施例5】
【0065】
実施例3と同じ手順に従う。次に、ランダムマット担体を用いて0.05psfになるように塗布した接着フィルムを用いてCYCOM 977−2 エポキシ/炭素複合材料基質を結合させる。共結合させる幅広い面積のラップせん断試験では、以下に示すように、8−10層の1つの複合材料スキン(被着体)を350°Fで予備硬化させておきそしてもう一方の8−10層の被着体を前記接着フィルムと一緒に共硬化させる:
【0066】
【0067】
二次結合試験では、両方の被着体を予備硬化させておく。共結合試験の硬化サイクルは、85psi下350°Fで2時間から成る。二次結合試験の硬化サイクルは40psiの圧力下350°Fで90分間である。次に、結合させた後の試験片にASTM D 3165に従う試験を160°Fの水に2000時間浸漬させる前および後に受けさせる。ラップせん断試験の結果を表3に示す。
【0068】
【表3】
【0069】
表3に示したデータは、実施例5の組成物は乾燥および湿潤両方の条件下で高いせん断強度を有することを特徴とすることを示しており、このことは、水分に対する抵抗が優れていることを表している。湿気にさらされた後の特性の保持は二次結合試験片の場合には90%以上でありそして共結合試験片の場合には85%以上である。このデータは、本発明の組成物は水分の影響を受けないで水浸漬条件に長時間さらされた後でも強度の大部分を保持していることを示している。
【0070】
本出願の全体に渡って様々な特許および/または科学文献を言及してきた。そのような出版物の開示はそのような開示が本発明と矛盾しない度合であたかも本明細書に記述する如く引用することによって全体が本明細書に組み入れられる(そのように引用することによって組み入れることが許容されるあらゆる権限に関して)。通常の当業者はこの上で行った説明および実施例を考慮することで請求する如き本発明を過度の実験なしに実施することができるであろう。
【0071】
この上で行った説明で本教示の新規な基本的特徴を示し、記述しそして指摘してきたが、当業者は本教示の範囲から逸脱することなくその例示および説明した如き組成物および
方法の形態に関して様々な省略、置換および変更を行うことができることは理解されるであろう。従って、本教示の範囲をこの上で行った説明に限定すべきでなく、添付請求項によって限定すべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性接着剤組成物であって、
a)i)ナノコア−シェル粒子を含有するエポキシ樹脂、
ii)アミン末端ポリエーテルスルホンおよびアミン末端ポリスルホンから選択される少なくとも1種の強化剤、および
iii)少なくとも1種の多官能エポキシ樹脂、
の反応で生じた前反応組成物、および
b)前記接着剤組成物の完全な硬化を400°F以下の温度で起こさせる少なくとも1種のアミン系硬化剤、
を含有して成っていて高いガラス転移温度、向上した破壊じん性および350°F以下の温度で向上したせん断特性を示すことを特徴とする熱硬化性接着剤組成物。
【請求項2】
前記前反応組成物が更に
iv)ビスフェノール、および
v)ビスフェノール−エポキシ反応用の触媒、
も含有して成る請求項1記載の熱硬化性接着剤組成物。
【請求項3】
前記ナノコア−シェル粒子の大きさが10から100nmである請求項1から2のいずれか1項記載の熱硬化性接着剤組成物。
【請求項4】
前記強化剤が分子量(Mn)が8000から14000のポリエーテルスルホンである前請求項のいずれか記載の熱硬化性接着剤組成物。
【請求項5】
更にカルボキシ末端アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアミド、ポリイミドおよびアミド−アミドから選択される2番目の強化剤も含有して成る前請求項のいずれか記載の熱硬化性接着剤組成物。
【請求項6】
前記アミン系硬化剤がDICY/ビス尿素でありかつ硬化温度が250°Fである前請求項のいずれか1項記載の熱硬化性接着剤組成物。
【請求項7】
前記アミン系硬化剤がDDSまたはDICYとDDSの組み合わせでありかつ硬化温度が350°Fである前請求項のいずれか1項記載の熱硬化性接着剤組成物。
【請求項8】
更にi)酸化アルミニウム、アルミニウム金属粉末、ナノおよび疎水グレードのシリカおよび酸化カルシウムまたは銀フレークの中の1種以上から選択される無機充填剤、ii)疎水性非晶質シリカおよび親水性非晶質シリカの中の1種以上から選択される流れ調節剤およびiii)TiO2およびZnOの中の1種以上から選択される顔料の中の1種以上も含有して成る前請求項のいずれか記載の熱硬化性接着剤組成物。
【請求項9】
複合材料、金属およびハニカム構造物の中の1種以上から選択される基質を結合させるに適した熱硬化性接着フィルムであって、請求項1から8のいずれか記載の熱硬化性接着剤組成物を含有して成っていてフィルム重量が0.02から0.15psfである熱硬化性接着フィルム。
【請求項10】
更にガラス、ポリエステルおよびナイロンの中の1種以上から選択される高分子量担体も含有して成る請求項9記載の熱硬化性接着フィルム。
【請求項11】
高温で向上した熱/湿潤特性を示す熱硬化性接着フィルムを生じさせる方法であって、a)ナノコア−シェル粒子を含有するエポキシ樹脂および少なくとも1種のアミン末端ポ
リスルホンもしくはポリエーテルスルホンを含有して成る混合物を前反応物が生じるに充分な温度で充分な時間反応させ、
b)少なくとも1種の他のエポキシ樹脂および少なくとも1種のアミン系硬化剤を前記前反応物に添加し、そして
c)段階(b)の混合物を剥離紙の上にフィルムが生じるに充分な温度および重量で塗布することで、高温で向上した熱/湿潤特性を示す熱硬化性接着フィルムを生じさせる、
ことを含んで成る方法。
【請求項12】
前記反応段階を250−300°Fで0.5から2時間実施する請求項11記載の方法。
【請求項13】
段階(c)を100から200°Fで実施しかつ塗布をフィルム重量が0.02から0.15psfになるように実施する請求項11から12のいずれか記載の方法。
【請求項14】
前記反応混合物に更にビスフェノール、ビスフェノール−エポキシ反応用触媒および少なくとも1種の他のエポキシ樹脂も含有させる請求項11から13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
段階(b)に更に少なくとも1種の無機充填剤を前記反応混合物に添加することも含める請求項11から14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
1番目の品目と2番目の品目を結合させる方法であって、
a)請求項1から8のいずれか記載の熱硬化性接着剤組成物または請求項9から10のいずれか記載の熱硬化性接着フィルムまたは請求項11から15のいずれかに従って調製した熱硬化性接着フィルムを前記1番目と2番目の品目の表面の間の接触点として供給し、そして
b)前記1番目と2番目の品目の表面と接触させた状態にしながら前記熱硬化性接着剤組成物または熱硬化性接着フィルムを完全な硬化が起こるに充分な温度および圧力で充分な時間硬化させることで前記1番目と2番目の品目を結合させる、
ことを含んで成る方法。
【請求項17】
前記1番目および2番目の品目(1番目の品目/2番目の品目)を複合材料/複合材料、金属/金属、複合材料/金属、金属/複合材料、ハニカム/複合材料、ハニカム/金属およびハニカム/ハニカムから選択する請求項16記載の方法。
【請求項18】
段階(b)を25から100psiの圧力下325から400°Fの温度で60から120分の時間実施する請求項16から17のいずれか1項記載の方法。
【請求項1】
熱硬化性接着剤組成物であって、
a)i)ナノコア−シェル粒子を含有するエポキシ樹脂、
ii)アミン末端ポリエーテルスルホンおよびアミン末端ポリスルホンから選択される少なくとも1種の強化剤、および
iii)少なくとも1種の多官能エポキシ樹脂、
の反応で生じた前反応組成物、および
b)前記接着剤組成物の完全な硬化を400°F以下の温度で起こさせる少なくとも1種のアミン系硬化剤、
を含有して成っていて高いガラス転移温度、向上した破壊じん性および350°F以下の温度で向上したせん断特性を示すことを特徴とする熱硬化性接着剤組成物。
【請求項2】
前記前反応組成物が更に
iv)ビスフェノール、および
v)ビスフェノール−エポキシ反応用の触媒、
も含有して成る請求項1記載の熱硬化性接着剤組成物。
【請求項3】
前記ナノコア−シェル粒子の大きさが10から100nmである請求項1から2のいずれか1項記載の熱硬化性接着剤組成物。
【請求項4】
前記強化剤が分子量(Mn)が8000から14000のポリエーテルスルホンである前請求項のいずれか記載の熱硬化性接着剤組成物。
【請求項5】
更にカルボキシ末端アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアミド、ポリイミドおよびアミド−アミドから選択される2番目の強化剤も含有して成る前請求項のいずれか記載の熱硬化性接着剤組成物。
【請求項6】
前記アミン系硬化剤がDICY/ビス尿素でありかつ硬化温度が250°Fである前請求項のいずれか1項記載の熱硬化性接着剤組成物。
【請求項7】
前記アミン系硬化剤がDDSまたはDICYとDDSの組み合わせでありかつ硬化温度が350°Fである前請求項のいずれか1項記載の熱硬化性接着剤組成物。
【請求項8】
更にi)酸化アルミニウム、アルミニウム金属粉末、ナノおよび疎水グレードのシリカおよび酸化カルシウムまたは銀フレークの中の1種以上から選択される無機充填剤、ii)疎水性非晶質シリカおよび親水性非晶質シリカの中の1種以上から選択される流れ調節剤およびiii)TiO2およびZnOの中の1種以上から選択される顔料の中の1種以上も含有して成る前請求項のいずれか記載の熱硬化性接着剤組成物。
【請求項9】
複合材料、金属およびハニカム構造物の中の1種以上から選択される基質を結合させるに適した熱硬化性接着フィルムであって、請求項1から8のいずれか記載の熱硬化性接着剤組成物を含有して成っていてフィルム重量が0.02から0.15psfである熱硬化性接着フィルム。
【請求項10】
更にガラス、ポリエステルおよびナイロンの中の1種以上から選択される高分子量担体も含有して成る請求項9記載の熱硬化性接着フィルム。
【請求項11】
高温で向上した熱/湿潤特性を示す熱硬化性接着フィルムを生じさせる方法であって、a)ナノコア−シェル粒子を含有するエポキシ樹脂および少なくとも1種のアミン末端ポ
リスルホンもしくはポリエーテルスルホンを含有して成る混合物を前反応物が生じるに充分な温度で充分な時間反応させ、
b)少なくとも1種の他のエポキシ樹脂および少なくとも1種のアミン系硬化剤を前記前反応物に添加し、そして
c)段階(b)の混合物を剥離紙の上にフィルムが生じるに充分な温度および重量で塗布することで、高温で向上した熱/湿潤特性を示す熱硬化性接着フィルムを生じさせる、
ことを含んで成る方法。
【請求項12】
前記反応段階を250−300°Fで0.5から2時間実施する請求項11記載の方法。
【請求項13】
段階(c)を100から200°Fで実施しかつ塗布をフィルム重量が0.02から0.15psfになるように実施する請求項11から12のいずれか記載の方法。
【請求項14】
前記反応混合物に更にビスフェノール、ビスフェノール−エポキシ反応用触媒および少なくとも1種の他のエポキシ樹脂も含有させる請求項11から13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
段階(b)に更に少なくとも1種の無機充填剤を前記反応混合物に添加することも含める請求項11から14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
1番目の品目と2番目の品目を結合させる方法であって、
a)請求項1から8のいずれか記載の熱硬化性接着剤組成物または請求項9から10のいずれか記載の熱硬化性接着フィルムまたは請求項11から15のいずれかに従って調製した熱硬化性接着フィルムを前記1番目と2番目の品目の表面の間の接触点として供給し、そして
b)前記1番目と2番目の品目の表面と接触させた状態にしながら前記熱硬化性接着剤組成物または熱硬化性接着フィルムを完全な硬化が起こるに充分な温度および圧力で充分な時間硬化させることで前記1番目と2番目の品目を結合させる、
ことを含んで成る方法。
【請求項17】
前記1番目および2番目の品目(1番目の品目/2番目の品目)を複合材料/複合材料、金属/金属、複合材料/金属、金属/複合材料、ハニカム/複合材料、ハニカム/金属およびハニカム/ハニカムから選択する請求項16記載の方法。
【請求項18】
段階(b)を25から100psiの圧力下325から400°Fの温度で60から120分の時間実施する請求項16から17のいずれか1項記載の方法。
【図1】
【図2】
【図2】
【公表番号】特表2013−503249(P2013−503249A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526982(P2012−526982)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/046798
【国際公開番号】WO2011/025873
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(594060532)サイテク・テクノロジー・コーポレーシヨン (36)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/046798
【国際公開番号】WO2011/025873
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(594060532)サイテク・テクノロジー・コーポレーシヨン (36)
【Fターム(参考)】
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