説明

高性能断熱材およびその製造方法

【課題】使用に当たって水分を吸収したような場合であっても、そして後で乾燥されるようなことがあっても収縮の起こらない高性能断熱材を提供すること、およびそうした高性能断熱材を製造する方法を提案すること。
【解決手段】超微細ヒュームド酸化物を主原料とする断熱材であって、細孔径の大きさが0.01〜0.1μmの範囲および10〜1000μmの範囲にそれぞれピークが存在する細孔を有するが、細孔径が0、1〜10μmの範囲内に細孔分布のピークをもつ細孔は有しない細孔構造をもつ高性能断熱材、および圧縮成形体を、水中に浸漬し、次いで乾燥する処理を予め行うことにより、細孔径が0.1〜10μmの範囲内に細孔分布のピークをもつ細孔を消滅させる高性能断熱材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温で使用される高性能断熱材、特に、耐水性にも優れる高性能断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料が使用できないような高温(≧500℃)で使用することができ、静止空気に近い低熱伝導率を示す断熱材としては、従来、ヒュームドシリカなどの微細粉末を主成分とする微細多孔質成形体(以下、これを「高性能断熱材」という)を用いたものがある(非特許文献1、特許文献1))。
【0003】
この文献に開示された高性能断熱材は、超微細固体粒子(数nm〜数10nm)で構成されているため、熱伝導が微細粒子の点接触に依存すること、気孔率が高く(80vol%以上)、その気孔も微細で気体の平均自由工程よりも小さい(100nm以下)気孔を多く含み、かつ赤外線を反射する材料を含むために、低熱伝導率であることが特徴である。
【0004】
前記超微細固体粒子としては、ヒュームド酸化物、例えば、ヒュームドシリカが代表的であり、ドイツのデグサ社製アエロジル(登録商標)などが知られている。かかるヒュームド酸化物は、金属酸化物を原料に火炎加水分解法(MCln+2mH+mO、ここでM=Si、Al、Ti、Zrなど;Siの場合1000℃程度)によって得ることができる。このようにして得られるヒュームド酸化物、例えば、ヒュームドシリカは、BET比表面積5〜600m2/g、1次粒子径5〜50nm、密度2.2g/cc、見掛比容積1000〜2000ml/100gで、鎖状の集塊粒子からなるものが代表的なものである。
【0005】
前記ヒュームド酸化物の成形材料は、断熱材として有望視されているが、この成形材料は液体(水分)と接触したとき収縮するという問題があった。これは、断熱材の場合で云えば、このような収縮が起きると、厚みの減少による熱抵抗の低下を招くと同時に、厚みと垂直方向に収縮して断熱材間に隙間を生じる結果、その隙間より熱が漏れるという致命的な問題が生じる。例えば、このような断熱材を冶金炉などの断熱ライニングとして使用する場合、熱遮蔽域に隙間を生じて熱流路を形成したり、ライニングが縮んで弛みが出るという問題が生じる。そのため、従来は、かかるヒュームドシリカなどを主原料とする高性能断熱材については、アルミ蒸着フイルムなどの耐水性材料で被覆包装したり、撥水性材料による処理をして使用するということで対応していた。しかし、耐水性包装および撥水処理剤等は、耐熱性が500℃程度以下であるため、高温用用途に使用する場合において、一度、高温で使用すると、耐水性を失うという問題があった。
【0006】
以上説明したように、従来、高温域で使用するための耐水性の良好な高性能断熱材は、有効なものがないのが実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−104110号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】(文献:配管技術、Vol.40、No.11、1998、P179;特開2000−104110)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、使用に当たって水分を吸収したような場合であっても、そして後で乾燥されるようなことがあっても収縮の起こらない高性能断熱材を提供すること、およびそうした高性能断熱材を製造する方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは、従来技術が抱えている上述した問題点のない高性能断熱材、とくに、施工後に水分吸収と乾燥という条件に曝されても収縮の起こらない高性能断熱材の構成について、鋭意検討した結果、本発明に係る下記の高性能断熱材の開発に成功した。
即ち、本発明は、超微細ヒュームド酸化物を主原料として含み、その他にセラミック超微粉、セラミックファイバーのいずれか少なくとも一種を含む原料を圧縮成形してなる断熱材であって、細孔径分布のグラフ上において、細孔径の大きさが0.01〜0.1μmの範囲および10〜1000μmの範囲にはそれぞれ、山形のピークが存在するが、該細孔径分布のグラフ上において、細孔径の大きさが0.1〜10μmの範囲内には山形のピークがない細孔分布を示す粒子構造を有することを特徴とする高性能断熱材である。
【0011】
また、本発明は、超微細ヒュームド酸化物を主原料として含み、その他にセラミック超微粉、セラミックファイバーのいずれか少なくとも一種を含み、細孔径分布のグラフ上において、細孔径の大きさが0.01〜0.1μm、10〜1000μmおよび0.1〜10μmの範囲内にそれぞれ、山形のピークが存在する細孔分布をもつ粒子からなる原料を圧縮成形し、得られた成形体を予め水中に浸漬して吸湿させ、次いで、乾燥することにより、該細孔径分布のグラフ上において、細孔径の大きさが0.1〜10μmの範囲内に山形のピークをもつ細孔を消滅させることを特徴とする高性能断熱材の製造方法を提案する。
【0012】
なお、本発明において、超微細ヒュームド酸化物は、ヒュームドシリカ、ヒュームドアルミナ、ヒュームドチタニアおよびヒュームドジルコニアのうちから選ばれるいずれか1種以上であることが、好ましい解決手段である。なお、セラミック超微粉としてはSiC超微粉などが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
前記のように構成された本発明に係る高性能断熱材によれば、500℃以上というような高温雰囲気で使用されるものが、水分(湿分)と接触したような場合でも収縮が起こらない。従って、この断熱材を施工した場合、断熱材の収縮に起因して隙間を生じさせて熱流が洩れたり、該断熱材からなるライニング自体が縮んで弛みを生じたりすることがなく、また、厚み減少による断熱性の低下も生じないものが得られる。とくに、冶金炉などの溶湯容器や熱交換器などの高温雰囲気で使われる断熱材料として好適なものが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】乾燥収縮による細孔径分布の変化を示すグラフである。
【図2】乾燥収縮による細孔径分布の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る高性能断熱材は、水銀圧入法で測定した細孔径分布のグラフ上において、細孔径の大きさが0.01〜0.1μm範囲および10〜1000μmの範囲にそれぞれ、山形のピーク(極大値)が存在する細孔分布を示すものの、該細孔径分布のグラフにおいて、細孔径の大きさが0.1〜10μmの範囲内には、そのピークがない細孔分布をもつ粒子構造を有することが特徴的な構成である。
【0016】
水銀圧入法では、大気圧から徐々に圧力を上げて試料に水銀を浸入させ、各圧力における水銀の浸入量から試料の細孔径分布を測定する方法である。水銀は物質を濡らすことはないが、加圧することにより物質の細孔に浸入する性質がある。このとき、圧力を上げるに従い、大きな孔から順に小さな孔へ水銀が浸入するので、圧力を上げながら累積浸入量を順次に、測定し、その圧力値を細孔径に換算することで、一定の径以上の累積細孔体積を求めることができる。通常、細孔径分布は、ある細孔径より大きい(または小さい)細孔の単位試料重量当たり体積を細孔径に対してプロットして表す場合(積分型)と、ある微小細孔径範囲に属する細孔の単位試料重量当たり体積を細孔径に対してプロットしヒストグラムとして表す場合(微分型)とがある。いずれの場合も、細孔径は対数で表される。
【0017】
本発明で言うピークとは、微分型で表した細孔径分布のグラフ上に山形に見られるところ、極大値である。通常、横軸の細孔径を1桁当たり3〜10程度に分割したヒストグラムで表わすので、その極大値の有無は容易に判別できる。
【0018】
この点、従来の高性能断熱材は、細孔径の大きさが0.01〜0.1μm、0.1〜10μmおよび10〜1000μm範囲内の3つの領域に分かれて、それぞれの範囲内に細孔分布の前記ピークの位置が存在するような細孔分布を示す粒子構造をもつもので構成されている。即ち、高性能断熱材において、細孔径が0.01〜0.1μmの範囲内にピークをもつ細孔というのは、原料となるヒュームド酸化物からなる1次粒子が凝集し2次粒子を構成している1次粒子間に生じている空隙に相当し、原料粒子固有の形状を反映している。また、このピークは非常にシャープな山形を示し、この山形は細孔径でおおよそ0.5桁程度の範囲に収まる。
【0019】
一方、細孔径が0.1〜10μmの範囲内の位置にピークが存在する細孔というのは、前述の2次粒子間の隙間に相当するものであり、2次粒子の充填状態を反映しているものである。これは上記小径側のピークに比較して、ブロードでやや低い山形を示し、山形の裾に相当する2つ谷の部分(極小値)の幅は1〜3桁程度と広いものとなる。具体的には、「細孔径の大きさが0.1〜10μmの範囲内には山形のピークがない細孔分布」とは、細孔径が0.1μmでの浸入量と10μmでの浸入量の高い方の値に対して、細孔径の大きさが0.1μm〜10μmの範囲内での浸入量の値がそれ以下である場合を言う。
【0020】
そして、細孔径が10〜1000μmの範囲内の位置にピークをもつ細孔というのは、マクロな亀裂や、欠陥に相当する空隙と考えられており、最も低い山形を示す。
以上のことから、本発明の高性能断熱材というのは、粒子相互の間に生じている空隙がないということであり、そうした粒子構造をもつものと云うことができる。
【0021】
ところで、発明者らの研究によると、従来の高性能断熱材については、この断熱材にまず水分を吸収させ、その後に乾燥を行うと、該断熱材は一定の収縮を起こし、とりわけ細孔径の大きさが0.1〜10μmの範囲内にピークが存在するような細孔が消失することを発見した。しかし、細孔径の大きさが0.01〜0.1μmの範囲内のピークを持つ細孔にはほとんど変化が無く、10〜1000μmの範囲内にピークが存在する細孔はわずかに増加し、いずれも消失しないことも判った。
【0022】
またこうした高性能断熱材というのは、これを乾燥すると、上述のような収縮を起こして、外形の変化を招くが、熱伝導率はわずかに増加するものの影響は小さいことも判った。ただし、こうした断熱材は厚みが減ることで、厚みに比例する熱抵抗も小さくなっていく現象が見られる。
【0023】
さらに、発明者らが知見したところによると、前述の粒子構造(0.1〜10μmの範囲内にピークをもたないもの)を有する高性能断熱材については、これに水分の吸収と乾燥の処理を繰り返し施した場合でも、その後は、吸温、加熱の履歴には関係なく上記の細孔径分布にほとんど変化がなく、さらなる収縮は起こらないことを究明した。即ち、成形体(断熱材)を水分吸収や乾燥した場合に消失する細孔は、細孔径の大きさが0.1〜10μmの範囲内に細孔分布のピークが存在する細孔のみであって、細孔径の大きさが0.01〜0.1μmおよび10〜1000μmの範囲内に細孔分布のピークが存在するような細孔については消失するようなことはないことが判ったのである。
【0024】
多孔質体中に浸透した液体を乾燥除去しようとする場合、細孔径の逆数に比例する浸透圧相当の力が、細孔を収縮させる方向に働く。したがって、小さい細孔ほど収縮しやすく、大きい細孔ほど収縮しづらくなる。一方、細孔の強度が収縮に抗する力となるため、強度のある細孔は収縮せず、強度のない細孔は収縮する。
【0025】
すなわち、高性能断熱材については、前述の通り、0.01〜0.1μmの範囲内にピークをもつ細孔というのは、原料粒子固有の形状を反映する隙間に相当し、浸透圧が原料粒子を壊すほど大きくないため、収縮することはない。一方、0.1〜10μmの範囲内の位置にピークが存在する細孔というのは、原料粒子の充填状態を反映しており、浸透圧によって充填状態が密になり、結果として消失する。さらに、10〜1000μmの範囲内の位置にピークをもつ細孔というのは、マクロな亀裂や、欠陥に相当する空隙と考えられ、収縮力が最も小さい。そのため、より強力な原料粒子の充填状態の緻密化が完全に均質化しない結果として、マクロな亀裂がむしろ増加するようになるため、10〜1000μmの範囲内の位置にピークをもつ細孔量は増加すると考えられる。
【0026】
以上の知見に基づき、ヒュームド酸化物を主原料として含む高性能断熱材用圧縮成形体については、まずこれに水分吸収を行わせ、その後、引続き乾燥する処理を予め行うことによって、細孔径の大きさが0.1〜10μmの範囲内に細孔分布のピークがくるような細孔を、予め消滅させておくことによって、この断熱材が再び水分を吸収し、あるいはさらに乾燥されるようなことがあっても、再び収縮するようなことのない高性能断熱材にすることが有効であると考えられる。
【0027】
以上の説明から明らかなように、本発明に係る高性能断熱材とは、ヒュームド酸化物を主原料として含み、その他にセラミック超微粉やセラミックファイバーなどのいずれか少なくとも一種を含む原料を圧縮成形したものであって、細孔径の大きさが0.01〜0.1μm、10〜1000μmおよび0.1〜10μmの範囲内にはそれぞれ細孔分布のピーク位置がくるような細孔構造をもつものについて、その圧縮成形体を、まず水中に浸漬し、次いでこれを乾燥する処理を予め行うことによって、細孔径の大きさが0.1〜10μmの範囲内にピーク位置が来るような細孔を消滅させてなる断熱材であると云うことができる。
【0028】
本発明の高性能断熱材を得るための吸湿ならびに乾燥の処理は、処理前の圧縮成形体の厚さにもよるが、数時間から数日間、水中に静置して吸湿させた後、110〜200℃の温度域に数時間〜数日間保持して乾燥する方法が好適である。なお、この処理に当たっては、処理すべき圧縮成形体が水中で膨らむことがあるので、ガラスクロス入りの高性能断熱材などを使用することが推奨される。
【0029】
なお、本発明の高性能断熱材において、主原料として用いられるヒュームド酸化物の例としては、シリカやアルミナやチタニア、ジルコニアなどであり、その他の補助成分として含むセラミック超微粉の例はSiCが好ましく、そしてセラミックファイバーの例としては、アルミナやシリカなどが好ましい。
【0030】
上記の原料を、例えば、ヒュームドシリカを60〜95mass%、SiCを5〜40mass%係る混合粉をガラスクロスなどに充填したり、成形枠内に充填し、油圧もしくは圧空などの圧縮成形機を使って、比重:0.15〜0.5程度になるように圧縮成形して成形体とする。例えば、混合粉の配合としては、
(1)ヒュームドジルコニアを10〜40mass%、ヒュームドアルミナを10〜40mass%、残部をヒュームドシリカとした配合、
(2)ヒュームドチタニアを10〜50mass%、ヒュームドアルミナを5〜20mass%、残部をヒュームドシリカとした配合、
(3)ヒュームドシリカを1〜10mass%、ヒュームドジルコニアを10〜50mass%、残部をヒュームドアルミナとした、
配合例が好ましい。
【0031】
なお、従来の高性能断熱材の粒子構造は、未使用の状態で、細孔径の大きさが0.01〜0.2μmの範囲内のものが0.3〜1.0ml/g、細孔径の大きさが0.1〜10μmの範囲内のものが0.7〜3.0ml/g、細孔径の大きさが10〜1000μmの範囲内のものが0.6〜1ml/g程度の細孔が存在する細孔径分布となっている。
【0032】
これに対し、本発明の高性能断熱材は、細孔径の大きさが0.01〜0.1μmの範囲内のものおよび10〜1000μmの範囲内にある細孔の量は従来のものと大差がないが、細孔径の大きさが0.1〜10μmの範囲内にある細孔については、0.5ml/g以下、好ましくは0.3ml/g以下である。その結果、本発明の高性能断熱材は、成形体の吸水、乾燥の処理時に消失する0.1〜10μmの範囲内にピークのある細孔分布を示す細孔の量が少ないため、寸法安定性も高く、熱抵抗が劣化するようなことがない。
【実施例】
【0033】
2種の高性能断熱材を用意し、これらを常温の水中に6時間浸漬した後、110℃で18時間乾燥して発明例1、2の高性能断熱材とした。その発明例1、2に係る高性能断熱材および従来の高性能断熱材(比較例1、2)を、再び常温の水中に6時間浸漬した後、110℃で18時間乾燥する試験を両者に対して行った(水中浸漬と乾燥を2回繰り返した)。この試験の結果について、熱伝導率を表1に、そして、細孔径分布を図1、図2に示した。なお、熱伝導率についてはホットディスク法(京都電子工業製)、細孔径分布は水銀ポロシメータにて測定した。
【0034】
上記の試験において、断熱材に水分を吸収させた後に乾燥する処理を行ったもの(発明例1、2)は、細孔分布のグラフ上において、細孔径の大きさが0.1〜10μmの範囲内にピーク位置がくる細孔については消失していたが、細孔径の大きさが0.01〜0、1μmおよび10〜1000μmの範囲内にピークが存在する細孔については消失していなかった。即ち、本発明の高性能断熱材は、細孔径の大きさが0.01〜0.1μmおよび10〜1000μmの範囲内にそれぞれピーク位置が存在する細孔のみを含み、圧縮成形体の収縮の原因となる0.1〜10μmの範囲内に細孔径分布のピークがくるような細孔が消失しており、それ故に、たとえその後に、再び水分吸収や乾燥を行っても、もはや細孔径分布が変化するようなことがなくなることがわかった。
【0035】
ただし、水分吸収−乾燥による収縮の結果、厚みが小さくなることで、厚みに比例する熱抵抗が少し小さくなる。
【0036】
これに対し、従来の高性能断熱材は、厚さで20%、厚さと垂直方向の長さで6%の収縮があった。一方、本発明の高性能断熱材の収縮は、厚さおよび長さともに1%未満(測定誤差の範囲内)であった。従来の高性能断熱材シートは、これを隙間なく貼り付け、水分と接触させたのち乾燥すると、収縮の結果として面積は88%になり、面積の12%の部分が高性能断熱材で覆われなくなってしまい、加えて、厚みが減少する結果として熱抵抗が20%も低下した。一方、本発明の高性能断熱材については、収縮はなく、高性能断熱材間に隙間ができることもなく、熱抵抗も劣化することはなかった。
【0037】
【表1】

【0038】
本発明の高性能断熱材は、500℃以上で使用した後も、また、水分と接触させた後、乾燥が起こっても収縮することがないので、施工後の使用中に、収縮によって熱流がもれたり、隙間が開いてライニング層が弛んだりすることもなく、厚み減少による断熱性の劣化もない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の高性能断熱材は、冶金炉や取鍋などの溶湯容器のライニングの他、熱交換器等の各種熱機器の断熱材料として用いられるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超微細ヒュームド酸化物を主原料として含み、その他にセラミック超微粉、セラミックファイバーのいずれか少なくとも一種を含む原料を圧縮成形してなる断熱材であって、細孔径分布のグラフ上において、細孔径の大きさが0.01〜0.1μmの範囲および10〜1000μmの範囲にはそれぞれ、山形のピークが存在するが、該細孔径分布のグラフ上において、細孔径の大きさが0.1〜10μmの範囲内には山形のピークがない細孔分布を示す粒子構造を有することを特徴とする高性能断熱材。
【請求項2】
超微細ヒュームド酸化物は、ヒュームドシリカ、ヒュームドアルミナ、ヒュームドチタニアおよびヒュームドジルコニアのうちから選ばれるいずれか1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の高性能断熱材。
【請求項3】
超微細ヒュームド酸化物を主原料として含み、その他にセラミック超微粉、セラミックファイバーのいずれか少なくとも一種を含み、細孔径分布のグラフ上において、細孔径の大きさが0.01〜0.1μm、10〜1000μmおよび0.1〜10μmの範囲内にそれぞれ、山形のピークが存在する細孔分布をもつ粒子からなる原料を圧縮成形し、得られた成形体を予め水中に浸漬して吸湿させ、次いで、乾燥することにより、該細孔径分布のグラフ上において、細孔径の大きさが0.1〜10μmの範囲内に山形のピークをもつ細孔を消滅させることを特徴とする高性能断熱材の製造方法。
【請求項4】
超微細ヒュームド酸化物は、ヒュームドシリカ、ヒュームドアルミナ、ヒュームドチタニアおよびヒュームドジルコニアのうちから選ばれるいずれか1種以上であることを特徴とする請求項4に記載の高性能断熱材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−1204(P2011−1204A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143107(P2009−143107)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【出願人】(000001971)品川リフラクトリーズ株式会社 (112)
【Fターム(参考)】