説明

高性能熱電材料およびそれらの調製方法

本発明は、立方格子構造上のいくつかのCoを、Fe、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、およびPtよりなる群の1つもしくはそれ以上のメンバと置き換えることができ、平面環上のいくつかのSbを、Si、Ga、Ge、およびSnよりなる群の1つもしくはそれ以上のメンバと置き換えることができ、第2のドーパント原子が、Ca、Sc、Zn、Sr、Y、Pd、Ag、Cd、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuよりなる群のメンバから選択されるインジウムドープCoSb12方コバルト鉱組成物を提供する。組成物は、熱電材料として有用である。好ましい実施形態において、組成物は、1.0より大きい性能示数を有する。本発明は、また、組成物の製造のための方法、および組成物を使用する熱電デバイスを提供する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2004年4月14日に出願された米国仮特許出願第60/561,944号の利益を主張するものであり、あらゆる目的のため、その全体を本出願の一部として援用する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、立方格子構造上のいくつかのCoを、場合により、Fe、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、およびPtよりなる群の1つもしくはそれ以上のメンバと置き換えることができ、平面環上のいくつかのSbを、場合により、Si、Ga、Ge、およびSnよりなる群の1つもしくはそれ以上のメンバと置き換えることができ、両方の充填されていないサブセルがドーパント原子で充填され、いくつかのサブセル内のインジウムドーパント原子が、Ca、Sc、Zn、Sr、Y、Pd、Ag、Cd、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuよりなる群のメンバと置き換えられるインジウムドープCoSb12方コバルト鉱組成物を提供する。本発明の組成物は、熱電電気材料として有用である。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、たとえば約573Kの温度で測定されたとき、1.0より大きい性能示数を有する。本発明は、また、組成物の製造のための方法、および組成物を使用する熱電デバイスを提供する。
【背景技術】
【0003】
熱電は、ゼーベック効果による電力の発生、およびペルティエ効果による冷却を引起す熱電変換器と関連する。熱電変換材料の性能は、ZT(性能示数)によって評価され、これは、式ZT=σST/κで表現され、ここで、σ、S、κ、およびTは、材料の、それぞれ、導電性、ゼーベック係数、熱伝導性、および絶対温度である。大きいゼーベック係数および高導電性を有するが、低熱伝導性を有する材料が望ましい。
【0004】
今日現在、BiTeの合金などの、最も一般に使用される熱電材料は、めったに1を超えないZT値を有する。それらは、コンプレッサベースの冷蔵庫と比較されると約10%の劣ったカルノー効率で動作する。
【0005】
非特許文献1は、固相反応、次いでホットプレスによって製造されたインジウムドープコバルトアンチモニドを特徴づける。これらの材料は、何らかの効果を有する熱電材料として使用されているが、より良好な特性を有する熱電材料の必要が残る。
【0006】
特許文献1は、ドープコバルトアンチモニド組成物から部分的に構成される熱電デバイスを製造するのに有用な、方コバルト鉱構造などの半導体材料を開示している。
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,369,314号明細書
【非特許文献1】第17回熱電に関する国際会議の予稿集(the 17th International Conference on Thermoelectrics)におけるアカイ(Akai)ら(1998、ページ105〜108)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
向上された熱電材料の探索の結果として、コバルトアンチモニドがインジウムおよび第2のドーパントでドープされた組成物を、本発明において提供する。本発明の組成物が、それらを、熱電材料としての使用に望ましくする特性を有することがわかっている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態は、コバルト、アンチモン、およびインジウム、ならびにCa、Sc、Zn、Sr、Y、Pd、Ag、Cd、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuよりなる群から選択される1つもしくはそれ以上の元素の組成物である。
【0010】
本発明の別の実施形態は、複数の立方単位格子を含んでなる方コバルト鉱立方格子構造を有する組成物であって、
(a)立方単位格子の立方格子が、Co、またはCoならびにFe、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、およびPtよりなる群の1つもしくはそれ以上のメンバを含んでなり、
(b)立方単位格子が、8のサブセル内に配列された原子結晶学的サイトを含んでなり、
(c)立方単位格子内の6のサブセルが、Sb、またはSbならびにSi、Ga、Ge、およびSnよりなる群の1つもしくはそれ以上のメンバを含んでなり、
(d)立方単位格子内の第7のサブセルが、Inを含んでなり、そして
(e)立方単位格子内の第8のサブセルが、Ca、Sc、Zn、Sr、Y、Pd、Ag、Cd、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuよりなる群のメンバを含んでなる組成物である。
【0011】
本発明の組成物を、上述された成分を混合することによって調製することができ、発電デバイス、冷却デバイス、加熱デバイス、または温度センサとして使用することができる。
【0012】
本発明は、また、インジウム、コバルト、およびアンチモンのドープ組成物を調製する方法であって、Ca、Sc、Zn、Sr、Y、Pd、Ag、Cd、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuよりなる群の1つもしくはそれ以上のメンバをドーパントとして選択する工程と、場合により、コバルトのいくつかを、Fe、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、およびPtよりなる群の1つもしくはそれ以上のメンバと置き換える工程と、場合により、アンチモンのいくつかを、Si、Ga、Ge、およびSnよりなる群の1つもしくはそれ以上のメンバと置き換える工程と、選択されたドーパントを組成物と混合する工程とを含んでなる方法を提供する。本発明は、また、インジウム、コバルト、およびアンチモンを含んでなる組成物の性能示数を向上させる方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、コバルト、アンチモン、およびインジウムが、Ca、Sc、Zn、Sr、Y、Pd、Ag、Cd、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuよりなる群から選択される1つもしくはそれ以上の元素と混合された金属間組成物を提供する。さまざまな任意の実施形態において、コバルトのいくつかを、Fe、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、およびPtよりなる群の1つもしくはそれ以上のメンバと置き換えることができ、および/または、アンチモンのいくつかを、Si、Ga、Ge、およびSnよりなる群の1つもしくはそれ以上のメンバと置き換えることができる。
【0014】
1つの特定の実施形態において、本発明は、式Co4−mSb12−nInによって一般に示され、ここで、Aは、Fe、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、およびPtよりなる群の1つもしくはそれ以上のメンバから選択され、Xは、Si、Ga、Ge、およびSnよりなる群の1つもしくはそれ以上のメンバから選択され、Mは、Ca、Sc、Zn、Sr、Y、Pd、Ag、Cd、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuよりなる群の1つもしくはそれ以上のメンバから選択され、0≦m≦1、0≦n≦9、0<x<1、0<y<1、および0<x+y≦1である組成物を提供する。あるいは、0<x≦0.3、0<y≦0.3、0≦n≦6、および/または、0≦n≦3である。
【0015】
別の特定の実施形態において、本発明は、
約23.5から約25原子パーセントのCoと、
約70.5から約75原子パーセントのSbと、
In約0.001から約0.06原子パーセントと、
Ca、Sc、Zn、Sr、Y、Pd、Ag、Cd、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuよりなる群から選択される1つもしくはそれ以上の元素約0.001から約0.06原子パーセントとを含んでなる組成物を提供する。
【0016】
この実施形態のさまざまな任意の形態において、コバルトのいくつかを、Fe、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、およびPtよりなる群の1つもしくはそれ以上のメンバと置き換えることができ、および/または、アンチモンのいくつかを、Si、Ga、Ge、およびSnよりなる群の1つもしくはそれ以上のメンバと置き換えることができる。
【0017】
本発明の組成物は、方コバルト鉱として知られている材料の系の一部であり、これらは、複数の立方単位格子から構成される。これらの組成物の結晶構造において、8のコバルト原子が単純立方格子構造に配列されて、立方単位格子を形成する。8のコバルト原子は、8の対称スポット、または単位格子のサブセルを有し、これらのうちの6が、正方形として形成された四員平面環または小板を含有する。平面環を形成する4の原子は、すべてアンチモン、またはアンチモンならびにSi、Ga、Ge、およびSnよりなる群の1つもしくは複数のメンバである。四員平面環を含有する6のサブセルにおいて、6の平面環は、各々2つが、xy平面、yz平面、およびxz平面に配向された状態で配列される。Co単位格子の格子内のサブセルの6のみが、四員平面環で充填されるので、2つが空である。原子が空のサブセル内に配置される場合、組成物は、充填された方コバルト鉱として知られている。本発明の組成物において、いくつかの空のサブセルがインジウムで充填され、いくつかが、Ca、Sc、Zn、Sr、Y、Pd、Ag、Cd、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuよりなる群のメンバで充填される。
【0018】
本発明の組成物の単位格子の構造は、図5〜9を参照することによって、よりよく理解される。図5〜7において、単位格子のコーナを形成するコバルト原子、および8のサブセルのコーナは、色が濃く、6の平面環の4のメンバを形成する原子は、色が薄い。図6において、インジウムまたは金属成分Mの付加前の空のサブセルは、陰影によって示されている。図7において、インジウムまたは金属成分Mの付加後の充填されたサブセルは、黒白色パターンを有する球によって示されている。
【0019】
図8および図9は、単位格子50が8のサブセル52、53、54、55、56、57、58、および59を有する典型的な方コバルト鉱結晶格子構造のさらなる分解概略図を示す。サブセル52、53、55、56、58、および59は、これらのサブセルが「充填された」ことを示すために点で示されている。サブセル54および57は、本発明の組成物中のインジウムまたは金属成分Mの付加前の単位格子50の格子構造内の開いたまたは「充填されていない」空隙空間または空孔として示されている。
【0020】
単位格子50の方コバルト鉱結晶格子構造は、コバルト原子62によって部分的に形成された略立方格子を含み、(図9により具体的に示されているように)、それは、8の位置がコバルト原子62によって占有されることができ、24の位置が四員平面環内の半金属および/または非金属原子66(アンチモンおよび/または成分X)によって占有されることができる32の原子結晶学的サイトによって部分的に規定される。コバルト原子62は、互いに協働して、単位格子50のサブセル52〜59を規定する。方コバルト鉱結晶格子構造の単位格子50の寸法は、典型的には、7.7から9.4オングストロームである。
【0021】
単位格子50内に含まれる6の平面環64の各々は、4の非金属および/または半金属原子66によって部分的に規定される。各コバルト原子62は、典型的には、6の隣り合う半金属または非金属原子66を有する。非金属および/または半金属原子66は、各々、2つの隣接した非金属原子66と、2つの隣接したコバルト原子62とを有する。上述されたように、非金属および/または半金属原子66は、主としてアンチモンであるが、また、Si、Ga、Ge、および/またはSnを含むことができる。
【0022】
単位格子50の方コバルト鉱結晶格子が、一般に、6の平面環64のみを有するので、単位格子50と関連するサブセルの2つが、空として図9に示されている。単位格子50は、平面環64で充填されたサブセル52、53、55、56、58、および59とともに示されている。平面環64の寸法は、関連したサブセルのサイズを超えることができ、実際に、その面を超えて延在することができる。サブセル54および57は、充填されていないまたは空として示されており、単位格子50内の空洞または空孔を構成する。各々の通常充填されていないサブセル54および57の中心は、12の非金属および/または半金属原子66によって配位され、というのは、平面環64は、一般に、それらのそれぞれのサブセルの端縁を超えて延在するが、空隙サブセル54および57は、ここで述べられるように選択された少なくとも1つの原子を保持するのに十分大きいからである。
【0023】
この組成物の方コバルト鉱組成物中に含有されたさまざまな単位格子の空サブセルの間のInおよびMの分布を制御するために努力がなされない。したがって、いくつかの単位格子が、空サブセルの両方にInを有することができ、いくつかが、一方のサブセル内にInを有し、他方のサブセル内にM(他のものと同じまたは異なった)を有することができ、いくつかが、空サブセルの両方にM(同じまたは異なった)を有することができる。それにもかかわらず、InおよびMは、両方とも、本発明の組成物中に存在し、組成物中に存在するいかなるIn原子の位置、および存在するいかなるM原子の位置も、単位格子の2つの空サブセルのうちの1つにある。
【0024】
金属成分Mを、Ca、Sc、Zn、Sr、Y、Pd、Ag、Cd、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuよりなる群の1つもしくはそれ以上のメンバとして選択することができるので、1つを超えるMを、組成物中のドーパント素子としてInとともに使用することができる。しかし、上述されたように、組成物中に含有されたいかなるMの正体が何であれ、および使用された異なったMの数に関わらず、存在するいかなるM原子の位置は立方単位格子の2つの空サブセルのうちの1つにある。したがって、Mを、任意のサイズ(たとえば、2、3、または4)の先の群全体のサブグループから選択することができ、サブグループは、上記リストに述べられたような群全体からいずれか1つもしくはそれ以上のメンバを省くことによって形成される。結果として、Mは、そのような場合、上記リストに述べられたような群全体から形成することができる任意のサイズの任意のサブグループから選択することができるだけでなく、Mは、また、サブグループを形成するように群全体から省かれたメンバの不在において選択することができる。上記リストにおける群全体からさまざまなメンバを省くことによって形成されたサブグループは、さらに、群全体の個別のメンバであることができ、Mは、選択された個別のメンバ以外の、群全体のすべての他のメンバの不在において選択される。さまざまな好ましい実施形態において、Mを、Sc、La、Ce、Nd、およびYbよりなる群から、個別のメンバ、または任意のサイズのサブグループとして選択することができる。
【0025】
Mに関して上述されたのと同じように、任意の成分Xを、同様に、Si、Ga、Ge、およびSnの群全体から、任意のサイズの任意のサブグループとして選択することができる。さらに、方コバルト鉱組成物の立方格子構造に関する上の説明が、立方単位格子を形成するとしてCo原子に言及したが、Co原子のいくつかを、場合により、Fe、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、およびPtよりなる群の1つもしくはそれ以上のメンバと置き換えることができる。したがって、本発明の説明は、Coだけへの言及が、上に挙げられた置き換え原子の1つもしくはそれ以上の任意の存在を除くように解釈されるべきでないという理解で読まれるべきである。したがって、Mに関して上述されたのと同じように、任意の成分Aを、同様に、Fe、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、およびPtの群全体から、任意のサイズの任意のサブグループとして選択することができる。
【0026】
n型熱電材料としての本発明の組成物を使用して、Ce0.9FeCoSb12、Si−Ge合金、またはテルル/アンチモン/ゲルマニウム/銀材料などのp型熱電材料との電気的配列において、冷蔵庫、暖房機、または温度センサを製造することができる。本発明の組成物は、先に知られている熱電材料と同じようにこの目的のために使用することができる。熱電デバイスの例が、たとえば、米国特許第5,064,476号明細書、米国特許第5,441,576号明細書、および米国特許第5,576,512号明細書に説明されている。
【0027】
単純な熱電デバイスのためのアセンブリは、一般に、N型およびP型熱電半導体素子などの2つの異なる材料を含む。熱電デバイスでの加熱および冷却は、熱電素子が電気的に直列に結合され、かつ熱的に並列に結合された状態で、熱電素子を交互のN素子およびP素子電気的構成に配列することによって生じる。ペルティエ効果は、N型およびP型素子に印加されたDC電圧が、直列の電気的接続を通る電流の流れ、ならびに並列の熱的接続のN型およびP型素子を横切る熱伝達をもたらすとき、熱電デバイスにおいて生じる。典型的な熱電素子アレイにおいて、熱電素子を通る正味の電流の流れの方向は、熱伝達の方向を定める。
【0028】
熱電冷却器が、n型およびp型半導体材料から形成された熱電対のマトリックスを含む。熱電対は、電気的に直列に接続され、かつ熱的に並列に接続される。熱電対は、2つのセラミックプレートの間に挟まれる。2つのセラミックプレートは、dc電圧の接続によって、低温側または高温側を規定する。正のdc電圧がn型サーモエレメントに印加されて、電子が、p型サーモエレメントからn型サーモエレメントに進み、低温側温度は、熱が吸収されるにつれて減少する。冷却は、電流、および熱電対の数に比例し、電子がp型サーモエレメントの低エネルギーレベルからn型サーモエレメントのより高いエネルギーレベルに進むときに生じる。次に、熱は、サーモエレメントを介して高温側に伝導され、電子がp型サーモエレメントのより低いエネルギーレベルに戻ると放出される。デバイスを働かせ続けるために、高温側で消散された熱を除去することが必要である。したがって、ヒートシンクが、熱除去のために高温側に取付けられる。
【0029】
図10は、熱電アセンブリ14の斜視図を示す。熱電アセンブリ14は、熱伝達プレート144および145を含み、熱電素子146が熱伝達プレート144および145の間に配置される。図10の熱伝達プレート145は、熱電素子146の配列を見ることができるように、部分的にかつ高くされて示されている。熱電素子146は、熱伝達プレート144間の直列の電気的接続および並列の熱的接続にある。熱電アセンブリ14は、2つの熱電デバイス18および20に分けられる。熱電アセンブリ14のいくつかの実施形態において、熱伝達プレート145は、熱電デバイス18および20の間の界面において分けられた2つの別個のプレートである。熱電デバイス18は導体34および36によって供給され、熱電デバイス20は導体38のおよび40によって供給される。熱電アセンブリ14の熱電素子146の数は、熱電アセンブリ14のための所望の電力定格を達成するように変えることができる。
【0030】
冷蔵庫において、熱電材料は、典型的には、典型的にはセラミックなどの材料から製造された2つの熱伝達プレートの間に装着される。一方のプレートは、冷却されるべき領域に配置される。他方のプレートは、熱が排除されるべきところに配置される。適切な極性の電流が熱電材料を通過され、所望の位置を冷却する。電流の極性が逆にされると、先に冷却されたプレートは加熱され、したがってヒータを提供し、熱を排除するプレートは冷却される。熱電材料を発電機として使用するために、熱電材料は、再び、2つのプレートの間に装着される。1つのプレートは高温源に曝され、第2のプレートはより低い温度で維持される。電力を、温度勾配における熱電材料のサイドを横切る電気的接続から得ることができる。
【0031】
本発明の組成物は、次の手順によって合成することができる。Co、Sb、In、ならびにCa、Sc、Zn、Sr、Y、Pd、Ag、Cd、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuよりなる群から選択される1つもしくはそれ以上の金属の、好ましくは高純度の粉末を、化学量論比で完全に混合する。任意の成分AおよびXが存在する場合、それらも混合物に加える。成分を任意の順序で混合物に加えることができる。出発材料の混合粉末をアルミナるつぼに入れ、これをアルミナボートに入れる。Sbの蒸発を補償するために、純Sb金属を収容する別のるつぼもボートに入れる。次に、Sb収容るつぼがガス入口に面する状態で、ボートを石英反応器に挿入する。粉末を、約5体積%のHおよび約95体積%のArのガス混合物下で、約610℃で約12時間か焼し、次に、約675℃で約36時間か焼する。か焼された粉末を再粉砕し、直径が約12.8mmであり厚さが約1から2mmであるディスクにプレスする。ディスクを、約675℃で約4時間同じガス混合物下で焼結する。か焼工程および焼結工程の両方において、加熱速度は、室温からか焼温度または焼結温度まで約240℃/時間である。所望の反応時間後、サンプルを室温に炉冷却する。たとえば室温(25C)で得られたシンクロトロンX線粉末回折データが、組成物のIn相、金属相、Co相、およびSb相がすべて、立方Im−3構造に結晶化することを示す。本発明の組成物に組入れられるべき成分の粉末は、アルドリッチ(Aldrich)、ジョンソン・マッセイ(Johnson Matthey)、フィッシャー(Fisher)、またはアルファ(Alfa)などの供給業者から購入することができる。
【0032】
熱電材料の電気抵抗率は、カリフォルニア州マウンテンヴューのMMRテクノロジーズ・インコーポレイテッド(MMR Technologies Inc. of Mountain View, CA)から得られる市販の装置を使用して、ファン・デル・ポー技術によって、約300から600Kの範囲内で測定することができる。銀塗料を使用して、リードをペレットに取付ける。熱電材料のゼーベック係数は、同じ温度範囲内で測定することができる。ペレットを、互いに電気的に絶縁された銀電極の間に配置する。1つの電極を抵抗ヒータによって加熱して、サンプルを横切る熱勾配を生じさせ、これは、各温度設定点において5から10度ケルビン変わる。テストアセンブリを、Ar下で温度制御オーブン内に配置する。発生した電圧は、オハイオ州クリーブランドのケースレーインスツルメンツ(Keithley Instruments of Cleveland, OH)によって製造されたケースレー(Keithley)181ナノボルトメータで測定することができる。測定されたゼーベック係数が負である場合、n型伝導が示される。熱電材料の熱伝導性は、ネッチ・レーザ・マイクロフラッシュ(Netzsch Laser Microflash)で、1mmまたは2mm金スパッタリング黒鉛コーティングパイレックス(Pyrex)ガラスの基準材料で、定めることができる。この器具は、マサチューセッツ州バーリントンのネッチ・インスツルメンツ・インコーポレイテッド(Netzsch Instruments Inc. of Burlington, Mass)によって製造される。
【0033】
本発明の有利な効果は、以下で説明されるように、一連の実施例によって実証される。実施例が基く、本発明の実施形態は、例示にすぎず、本発明の範囲を限定しない。
【実施例】
【0034】
実施例1〜8
式InCoSb12の組成物を、次の手順を用いて実施例1〜8で製造する。実施例ごとに、表1に示されているような出発金属In、M、Co、およびSbの量を、化学量論比に従って重量測定し、めのう乳鉢内で完全に混合する。使用される出発材料の2グラムサンプルサイズについてのグラム量は、表1に示されている。
【0035】
【表1】

【0036】
各実施例において、混合粉末を、約5体積%のHおよび約95体積%のArのガス混合物下で、約610℃で約12時間焼成し、次に、約675℃で約36時間焼成し、次に、室温に炉冷却する。X線粉末回折パターンを記録し、データは、すべてのサンプルが立方Im−3構造に結晶化したことを示す。か焼された粉末を再粉砕し、直径が12.8mmであり厚さが1から2mmであるディスク内にプレスする。ディスクを、約675℃で約4時間同じガス混合物下で焼結し、次に、熱伝導性測定のために使用する。約1.5×1.5×7mmのサイズのバーを、抵抗率およびゼーベック係数測定のために切断する。
【0037】
約300〜600Kの温度範囲内の、選択されたサンプルについての、測定されたゼーベック係数、電気抵抗率、および熱伝導性は、それぞれ、図1、図2、および図3に示されている。計算されたZT値は、図4に示されている。これらの値は、上述された方法によって定める。
【0038】
本発明の組成物は、約300〜600Kの温度範囲内で、CoSbより低い電気抵抗率、低い熱伝導性、および高いゼーベック係数を有する。これは、たとえば約573Kの温度で測定されたとき、0.2(x+y=0)から1.0(x+y>0)より高くへの性能示数の向上をもたらす。
【0039】
いかなる理論にも縛られることを望まないが、本発明の組成物において、原子の1つもしくはそれ以上がオーバサイズの原子ケージ内に弱く結合された三元または四元半導体を準備することによって、熱伝導性の低減を達成することができると考えられる。空サブセル内のケージ原子の「活発な運動(rattling motion)」は、熱伝達フォノンを効果的に分散させ、熱伝導性への格子寄与を著しく低減し、しかも、同時に、フレームワーク原子は、良好な導電を維持する。
【0040】
本発明の組成物が、特定の成分を含んでなる、含む、含有する、有すると記載または説明される場合、記載または説明がそれと反対に明確に規定しない限り、明確に記載または説明されたものに加えて1つもしくはそれ以上の成分が、組成物中に存在してもよいことが理解されるべきである。しかし、代替実施形態において、本発明の組成物は、特定の成分から本質的になると記載または説明してもよく、この実施形態において、動作の原理または組成物の際立った特徴を実質的に変更する成分がその中に存在しない。さらなる代替実施形態において、本発明の組成物は、特定の成分からなると記載または説明してもよく、この実施形態において、不純物以外の成分がその中に存在しない。
【0041】
本発明の組成物中の成分の存在の記載または説明に対して不定冠詞(「a」または「an」)が使用される場合、記載または説明がそれと反対に明確に規定しない限り、そのような不定冠詞の使用が、組成物中の成分の存在を数で1に限定しないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】300〜600Kの温度範囲内の、選択された材料の測定されたゼーベック係数のチャートである。
【図2】300〜600Kの温度範囲内の、選択された材料の測定された電気抵抗率のチャートである。
【図3】300〜600Kの温度範囲内の、選択された材料の測定された熱伝導性のチャートである。
【図4】300〜600Kの温度範囲内の、選択された材料の計算された性能示数ZTのチャートである。
【図5】方コバルト鉱組成物の構造を示す。
【図6】方コバルト鉱組成物の構造を示す。
【図7】方コバルト鉱組成物の構造を示す。
【図8】方コバルト鉱組成物の構造を示す。
【図9】方コバルト鉱組成物の構造を示す。
【図10】熱電デバイスを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の立方単位格子を含んでなる方コバルト鉱立方格子構造を有する組成物であって、
(a)立方単位格子の立方格子が、Co、またはCoならびにFe、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、およびPtよりなる群の1つもしくはそれ以上のメンバを含んでなり、
(b)立方単位格子が、8のサブセル内に配列された原子結晶学的サイトを含んでなり、
(c)第1の立方単位格子内の6のサブセルが、Sb、またはSbならびにSi、Ga、Ge、およびSnよりなる群の1つもしくはそれ以上のメンバを含んでなり、
(d)第1の立方単位格子内の第7のサブセルが、Inを含んでなり、そして
(e)第1の立方単位格子内の第8のサブセルが、Ca、Sc、Zn、Sr、Y、Pd、Ag、Cd、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuよりなる群のメンバを含んでなる組成物。
【請求項2】
第8のサブセルが、Ca、Sc、Zn、Sr、Y、Pd、Ag、Cd、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuよりなる群の、第1の立方単位格子内の第8のサブセルと異なったメンバを含んでなる第2の立方単位格子をさらに含んでなる請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
第8のサブセルがInを含んでなる第2の立方単位格子をさらに含んでなる請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
第7および第8のサブセルが、両方とも、Ca、Sc、Zn、Sr、Y、Pd、Ag、Cd、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuよりなる群のメンバを含んでなる第2の立方単位格子をさらに含んでなる請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
第7および第8のサブセルが、Ca、Sc、Zn、Sr、Y、Pd、Ag、Cd、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuよりなる群の同じメンバを含んでなる請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
第7および第8のサブセルが、Ca、Sc、Zn、Sr、Y、Pd、Ag、Cd、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuよりなる群の異なったメンバを含んでなる請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
式Co4−mSb12−nInによって示され、ここで、Aは、Fe、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、およびPtよりなる群の1つもしくはそれ以上のメンバから選択され、Xは、Si、Ga、Ge、およびSnよりなる群の1つもしくはそれ以上のメンバから選択され、Mは、Ca、Sc、Zn、Sr、Y、Pd、Ag、Cd、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuよりなる群の1つもしくはそれ以上のメンバから選択され、0≦m≦1、0≦n≦9、0<x<1、0<y<1、および0<x+y≦1である請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
約23.5から約25原子パーセントの、Co、またはCoならびにFe、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、およびPtよりなる群の1つもしくはそれ以上のメンバと、
約70.5から約75原子パーセントの、Sb、またはSbならびにSi、Ga、Ge、およびSnよりなる群の1つもしくはそれ以上のメンバと、
In約0.001から約0.06原子パーセントと、
Ca、Sc、Zn、Sr、Y、Pd、Ag、Cd、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuよりなる群の1つもしくはそれ以上のメンバ約0.001から約0.06原子パーセントとを含んでなる請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
立方単位格子の立方格子が、Coを含んでなる請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
6のサブセルが、Sbを含んでなる四員平面環を含んでなる請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
第8のサブセルがScを含んでなる請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
第8のサブセルがLaを含んでなる請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
第8のサブセルがCeを含んでなる請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
第8のサブセルがYbを含んでなる請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
第8のサブセルがNdを含んでなる請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
第8のサブセルがPdを含んでなる請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
第8のサブセルがYを含んでなる請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
少なくとも2つの熱伝達プレートと、熱伝達プレート間に配置された請求項1に記載の組成物と、熱伝達プレート間に配置されたp型熱電材料と、ヒートシンクと、請求項1に記載の組成物およびp型熱電材料に接続された電源とを含んでなる冷却デバイス。
【請求項19】
少なくとも2つの熱伝達プレートと、熱伝達プレート間に配置された請求項1に記載の組成物と、熱伝達プレート間に配置されたp型熱電材料と、請求項1に記載の組成物およびp型熱電材料に接続された電源とを含んでなる加熱デバイス。
【請求項20】
少なくとも2つの熱伝達プレートと、熱伝達プレート間に配置された請求項1に記載の組成物と、熱伝達プレート間に配置されたp型熱電材料と、請求項1に記載の組成物およびp型熱電材料に接続された導体とを含んでなる発電デバイスであって、第1の熱伝達プレートが、第1の温度に曝され、第2の熱伝達プレートが、第1の温度と異なった第2の温度に曝される発電デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−500451(P2008−500451A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508641(P2007−508641)
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/013282
【国際公開番号】WO2005/104255
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
2.PYREX
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY