高感度深度プロービングのための磁気抵抗センサ
少なくとも1つの磁気粒子(46)の存在を検出するためのセンサデバイス(40)及び方法が説明される。より詳細には、少なくとも1つの磁場生成手段(41)と少なくとも1つの磁気センサ要素(42)とを有するセンサデバイス(40)が与えられる。センサデバイス(40)は、磁気センサ要素(42)の比較的近傍における磁気粒子又はビーズ(46)を排除するため、センサ表面(45)にあるスペーサ(44b)のような排除ゾーン(44)を更に有する。本発明によるセンサデバイス(40)は、高い深度感度又はバルク感度を示す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体又は固体環境における磁粉を検出するためのセンサデバイス及び方法に関する。そのデバイス及び方法は、標本液体中に含まれるpmol/L及びそれ以下の腫瘍マーカー及び病原体由来物質といったターゲット分子の検出のために使用されることができる。本発明によるセンサは、更に、分子アッセイに使用されることができ、微生物、細胞、細胞片、組織などにおける、要素の検出又はプロセスの検出にも使用されることができる。
【背景技術】
【0002】
バイオセンシングの課題は、背景物質(例えばアルブミンのような蛋白質)がmmol/Lといった高濃度で存在する複雑な混合物に含まれる、小さな濃度の特定のターゲット物質を検出することにある。
【0003】
バイオセンサチップ、生物マイクロチップ、ジーンチップ又はDNAチップとも呼ばれるバイオチップは、その最も単純な形において、多数の異なるプローブ分子がチップ上の明確な領域に付けられる基板からなる。両者が好適に適合する場合、そのプローブ分子に対して、解析されるべきターゲット分子又は分子片が結合することができる。例えば、DNA分子の分片は、1つの固有の相補DNA(c-DNA)分子片と結合する。例えば、蛍光マーカーのような、解析されるべき分子に結合されるラベルを用いて、結合反応(binding reaction)の発生が検出されることができる。これは、多数の異なるターゲット分子又は分子片の少量を並行して短時間に分析する能力を提供する。1つのバイオチップは、1000又はそれ以上の異なる分子片に対するアッセイを保持することができる。バイオチップを使用することから利用可能になる情報の有益性は、ヒトゲノム計画などのプロジェクト並びに遺伝子及び蛋白質の機能に関する追加研究の結果として、次の10年の間に急速に増加するであろうことが予想される。
【0004】
磁気抵抗バイオチップは、感度、選択性(specificity)、統合性、使用容易性及び価格の観点から生体分子診断にとって有望な特徴を持つバイオチップのタイプの1つである。斯かるバイオセンサの例は、国際公開第WO 2003/054566号、国際公開第WO 2003/054523号及びRifeらによるSens.Act.巻107、p.209(2003)に記載される。しかしながら、これらのバイオチップの不都合点は、それらが限られた深度感度しか持たず、そのオーダーは数マイクロメータ又はそれ未満である点である。この限定された深度感度は、チップの表面上センサの近くに位置する磁気ナノ粒子を検出するには好適に適合する。しかし、高比表面積(high-surface-area)バイオセンサ (例えば、側面フローデバイス又はフロースルーチップ)及び国際公開第WO 00/26669号(詳細は参照のこと)に示されるレセプタクルを備えるシステムにおける場合など、磁気ラベルがより深い深度に位置する用途には、深度感度が不十分である。
【0005】
免疫クロマトグラフィ又はストリップ検査とも呼ばれる最もよく知られた側面フローバイオセンサは、妊娠検査のための尿検査棒である。このバイオセンサにおいて、検査液は、一般的にはニトロセルロースである多孔性の紙ストリップに適用され、そこでは、液体が受動的な毛管力で運ばれる。例えば、光学ラベルを備える抗体といった試薬が、液体に溶け、続いてターゲット分子と結合する。それは、妊娠検査のための尿検査棒の場合、妊娠ホルモンhCGとなる。その後、液体は、第2の捕捉抗体が多孔性媒体に結合される領域である、検出領域を通過する。そこで、結合複合体、例えば、第1のラベル付けされた抗体に結合されるターゲットが、固体表面上で捕捉され、表面−抗体−ターゲット−抗体−ラベルのサンドイッチ構造を形成する。側面フローデバイスは、一般的に、光学反射といった光学検出を使用し、それは、例えば、ラテックス粒子、20-nm金ラベル又は蛍光を用いる。
【0006】
フロースルーバイオチップでの2つの例は、Metrigenix(マイクロ多孔シリコン)及びPamgene(ナノ多孔酸化アルミニウム)から知られる。両方の場合において、そのデバイスの多孔高比表面積要素は、厚みが数十から数百マイクロメータであり、液体の流れはチップ本体に垂直に生じる。両方の場合において、その検出は光学的に(蛍光、化学発光で)行われる。
【0007】
上述されたように、側面フロー又はフロースルーバイオセンサは一般的に光学検出を用いる。これらの方法は、例えば、他の蛍光種(fluorescent species)又は自己蛍光といった薬物との干渉、正反射、光学吸収、光学散乱、蛍光ベース検査における信号の消滅、又は、例えば化学発光に必要とされるような追加的な洗浄ステップの要求及び追加的な試薬の必要性といった課題を持つ。結果として、これらの方法は、高比表面積バイオセンサにおける高感度測定には適さない。
【0008】
国際公開第WO 00/26669号は、巨大な磁気抵抗効果を用いて、レセプタクルにおけるバイオケミカル物質を検出することに関係する。その文書は、複数のレセプタクル、抵抗を与えるためのセンサ、機構及びコントローラを含む、複数の与えられた標本のそれぞれのバイオケミカルアッセイを作るためのシステムを提供する。各レセプタクルは、標本を有し、常磁性の粒子(PMP)を結合するための表面を含む。磁場によりバイアスされるとき、巨大な磁気抵抗効果によりPMPの存在がセンサの抵抗に影響を与える。前述の機構は、個別の抵抗を与えるセンサに対する作業近傍(working proximity)に、各個別の表面を配置する。コントローラは、各個別の抵抗のしるし(indicia)を記録するための前述の機構を制御する。
【0009】
図1は、国際公開第WO 00/26669号に基づく、システム300の標本ディスペンサ/デキャンタ116の一部とPMP検出器124の一部との断面図を示す。図1において、標本ディスペンサ/デキャンタ116のアーム310は、標本キャリア103のレセプタクル107内へピペット312及び314を提供する。ピペット314は、PMP除去のためピペット314内に磁場を確立するコイル316を含む。レセプタクル107は、その内側底部表面306に接触する液体標本302を含む。ピペット314は、ピペット314内に主に磁場を持つ磁気トラップ317を含む。磁気トラップ317からの磁束を底部表面306、特に領域338から遠ざけておくことにより、PMPの動きと結合との干渉が減少される。領域338は、レセプタクル102の下に示されるように、レセプタクル103の下に配置されるセンサの感知領域336に対応する。感知領域336は、約1ミリメータx約1ミリメータの表面308上の平面寸法を持ち、約10ミクロンの距離「h」分標本へ広がる。
【0010】
標本キャリア102は標本トレイ104に配置される。標本トレイ104は、複数の標本キャリア102及び103の機械的保護、識別、準備、格納、処理及び廃棄を容易にする。それぞれのストリップ部分が、垂直挿入と標本トレイ104からの垂直除去とを容易にし、標本トレイ104に対する所定距離で各レセプタクル101の基礎105を配置することを容易にする。基礎105は、0.5 mmから1 mmの間の厚み「b」を持つことができる。標本キャリア102及びトレイ104は、各標本を特定する機械的又は電気的特徴、例えば、方向限定及び/又は患者識別子の機械読み取り可能なしるし、レセプタクルシリアル番号、日付、試験シーケンス番号などを含むことができる。トレイ104は、標本キャリア102及び103の上部への便利な液体アクセスを提供し、標本キャリア102及び103の下部を通る便利な電磁アクセスを提供する。標本トレイ104は、PMP検出器124の回路基板330に対して、矢印340で概略的に示される大気圧の力(pressurized atmospheric force)により位置が保持される。標本キャリア102は、内側底部表面308に接触する液体標本304を含むレセプタクル101を含む。センサ332は、回路基板330の上部表面に固定される一方、磁石334は、回路基板330の底部表面に固定される。回路基板330は、標本トレイ104、標本キャリア102及びレセプタクル101の垂直な動きに対して動かないよう保持される。力340は、標本304及びレセプタクル101に対してセンサ332の上部表面から所定距離「d」で表面308に位置するよう動作する。国際公開第WO 00/26669号の様々な側面によれば、センサ332が、単一のPMPの検出確率が50%である距離として、本書において規定されるPMPの存在を感知する領域を示す。例えば、センサ332は、感知領域336内に存在することができる1つ又は複数のPMPの存在を感知する。感知領域336は、センサ332から、センサ332とレセプタクル101との間の隙間(もしあれば)を超えて、レセプタクル101の下部を通り、上部表面308の上に広がる。ある実施形態において、領域336における内部表面308とセンサ332の上部333との間の距離(距離「g」として図示される)は、検出の間、範囲0から約50ミクロンとして設置され維持される。センサ332は、検出の間、上部表面308の領域336の距離「h」が範囲2から20μm、好ましくは約10μmを示すようデザインされ動作される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述されたシステムの不都合点は、そのシステムが0から数十μmの間の大きな距離h及びgと、0.5 mmから1 mmの間の大きな底部厚みbとを有する点である。更に、回路基板の底部に固定された磁石と、好ましくはすべてのGMRセンサの下にある螺旋として形成されるコイルとにより、磁場は適用される。従って、そのようにして、面外磁場(out-of-plane)が適用されると結論付けられることができる。更に、100 Hzから300 Hzの間の低周波で測定が行われる。これらの大きな距離、面外磁場及び低測定周波数が原因で、国際公開第WO 00/26669号のシステムは、粗悪又は低調な検出感度を示すことになる。
【0012】
本発明の目的は、材料を深く、つまり1マイクロメータから300マイクロメータの範囲までプローブすることができ、磁気粒子(magnetic particle)を検出するのに最適であり、かつ、にもかかわらず安価であるセンサを提供することである。従って、センサは化学又は生物分子診断に最適である、又は高い感度を備える生物サンプル分析(例えば、pmol/L及びそれ以下の範囲の濃度の蛋白質)に最適である。高い生物感度に対する目的は、高い磁気ラベル検出感度に対する目的に関連付けられる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的は、本発明による方法及びデバイスにより達成される。本発明は、センサバイスに関し、センサ表面に対して比較的近傍において磁気ビーズの存在を避けるため、このセンサ表面で排除領域を有する。センサデバイスは、高深度又はバルク感度を示す。本発明によるセンサデバイスは、従来技術のセンサデバイスより高い信号対ノイズ比で、磁気ラベル又は磁気粒子の検出を可能にする。
【0014】
本発明の第1の側面において、センサデバイスは、標本液体、つまり、ガスだけでなく液体における磁気粒子の検出と、固体環境における磁気粒子の検出とのため提供される。そのデバイスは:
− 少なくとも1つの磁場又は電場生成手段と、
− 少なくとも1つの磁気センサ要素とを有し、その少なくとも1つのセンサ要素は感知層を有しており、
そのセンサデバイスは、その磁気センサ要素の近傍における磁気粒子の存在を排除するため、少なくとも1つの磁気センサ要素の感知層と磁気粒子との間に排除ゾーンを具備し、その排除ゾーンは、1から300μmの間、好ましくは1から200μmの間、更に好ましくは1から100μmの間の厚みを持つ。
【0015】
ある実施形態において、排除ゾーンは、センサチップの層として、つまりセンサ要素とセンサチップの表面との間の「カバー層」として、又は、別の実施形態においては、センサチップの表面に固定される、例えば、接着される個別のスペーサ層として形成されることができる。
【0016】
本発明の別の実施形態において、排除ゾーンの機能は、磁気粒子若しくはビーズが貼り付くことができない(do not stick)ゾーン、磁気粒子若しくはビーズが除去されることができないゾーン、又は磁気粒子若しくはビーズが機械的な力が原因で入ることができないゾーンを持つことにより実現されることができる。
【0017】
本発明によるセンサの利点は、ターゲット分子又は検出されるべき他の物質をセンサ要素の近傍から排除することにより高深度感度を示すことである。
【0018】
センサデバイスは、1つの磁場又は電場生成手段と、互いに隣接して配置される1つの磁気センサ要素とを有することができる。磁気センサ要素は、例えば、GMR、TMR又はAMRセンサ要素といった磁気抵抗センサ要素とすることができる。磁場又は電場生成手段は、第1の幅を持ち、磁気センサ要素は、第2の幅を持つことができる。第1及び第2の幅は、第1の幅に対する第2の幅の比が1より小さくなるようにされることができる。電流ワイヤ幅に対する磁気センサ要素幅の比を変化させることにより、センサデバイスの結果として生じる感度が、特定の用途に対して必要な感度に基づき決定されることができる。
【0019】
本発明の別の実施形態において、磁場又は電場生成器は、同じz位置における磁気センサ要素の各側に配置されることができる。
【0020】
本発明の追加的な実施形態において、複数の磁場又は電場生成器手段、及び磁気抵抗センサ要素といった磁気センサ要素が、互いに隣接して交互に配置されることができる。電流ワイヤといった複数の磁場又は電場生成器手段、及びGMRセンサ要素といった磁気センサ要素を適用することにより、センサの深度プロービング範囲が更に増加されることができる。
【0021】
ある実施形態において、センサデバイスは更に、スペーサとセンサデバイスの上部表面との間に、少なくとも1つの結合手段を有することができる。結合手段は、フリップチップ技術を介してセンサチップの上部表面に接続されることができる。この結合手段は、外部接続に対するガルバナック、磁気、電気及び/又はRF結合として機能することができる。
【0022】
更に別の実施形態において、センサデバイスは更に:
− 少なくとも1つの多孔性媒体であって、各多孔性媒体が、試薬又は生物捕捉表面を有し、少なくとも1つの多孔性媒体が、センサデバイスの排除ゾーンと一体化される、多孔性媒体と、
− 少なくとも1つの多孔性媒体に対して標本液体を提供する標本液体供給源とを有する。
【0023】
センサデバイスは、第1の試薬又は捕捉層を有する第1の多孔性媒体と、第2の試薬又は捕捉層を有する第2の多孔性媒体とを有することができ、その第1及び第2の試薬は互いに異なる。そのようにして、本発明によるセンサは、同時に異なるターゲット分子の決定又は検出をするのに使用されることができる。
【0024】
少なくとも1つの磁場生成手段は、電流ワイヤといったオンチップ磁場生成手段又は外部コイルとすることができる。
【0025】
本発明は更に、本発明によるセンサデバイスのアレイと、生物又は化学分子診断及び生物標本分析における本発明のセンサデバイスの使用とを提供する。
【0026】
本発明の追加的な側面において、少なくとも1つの磁気粒子の存在を検出する方法が提供される。その方法は:
− 磁気粒子又はビーズを備える標本液体を提供するステップと、
− 標本液体に接触するセンサデバイスであって、
−少なくとも1つの磁場又は電場生成手段と、
−少なくとも1つの磁気センサ要素であって、その少なくとも1つの磁気センサ要素が上部表面を持つ磁気センサ要素とを有するセンサデバイスを提供するステップと、
−磁場又は電場を適用するステップとを有し、
少なくとも1つの磁気センサ要素の直接の近傍(direct vicinity)における磁気粒子の存在が、厚さが1から300μmの間、好ましくは1から200μmの間、更に好ましくは1から100μmの間の排除ゾーンを備えるセンサデバイスを提供することにより回避される。排除ゾーンを与えることは、センサ表面の上部にスペーサを提供することにより行われることができる。
【0027】
本発明による方法は、従来技術の方法より高深度感度を示す。
【0028】
本発明の方法は、生物又は化学分子診断及び生物標本分析において使用されることができる。
【0029】
本分野においては、デバイスに関する一定の改善、変化及び革新が存在するが、本概念は、従来の実践から出発し、結果としてより効率的で信頼性のあるデバイスを本質として提供することを含む、実質的に新規で斬新な改善を表すものと信じられる。
【0030】
本発明のこれら及び他の特性、特徴並びに利点は、例示を介して本発明の原則を説明する対応する図面と共に、以下の詳細な説明より明らかとなるであろう。この説明は、例示のためだけに与えられ、本発明の範囲を限定するものではない。以下に述べられる参照図は、添付された図面を参照する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
異なる図面において、同じ参照番号は、同じ又は類似する要素を参照するものである。
【0032】
本発明は、特定の実施形態に関して、特定の図面を参照して説明されることになるが、本発明はそれに限定されず、本発明は特許請求の範囲に記載される通りである。特許請求の範囲における任意の参照符号は、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。説明される図面は概略的にのみ記載され、限定するものではない。図面において、要素の中にはそのサイズが誇張される場合や、実際の大きさに合わせて描かれない場合があるが、それは説明目的のためである。単語「comprising(有する)」が明細書及び特許請求の範囲で使用されるが、それは、他の構成要素又はステップの存在を排除するものではない。単一の名詞を参照するのに、「a」、「an」又は「the」といった不定冠詞又は定冠詞が使用されるが、これは、特に何か他の記載がなければ、その名詞の複数性を排除するものではない。
【0033】
更に、明細書及び特許請求の範囲における第1、第2、第3等の用語は、同様な要素間を区別するのに使用されるのであり、連続的又は時間上の(chronological)順番を必ずしも述べるものではない。そのように使用される用語は、適切な環境下において入れ替え可能であり、本書で述べられる本発明の実施形態は、本書で説明又は図示されるシーケンスとは別のシーケンスで動作することができることは理解されたい。
【0034】
更に、明細書及び特許請求の範囲において、上部(top)、下部(bottom)、上(over)、下(under)といった用語は、説明目的のために使用されるのであり、必ずしも相対的な位置を述べるものではない。そのように使用される用語は、適切な環境下において入れ替え可能であり、本書で述べられる本発明の実施形態は、本書で説明又は図示される方向とは別の方向で動作することができることは理解されたい。
【0035】
本発明は、高い検出感度で物質を深くまで(1マイクロメータから数ミリメータの範囲で)プローブできる、安価で堅牢な磁気センサデバイス、例えば磁気抵抗センサデバイスを提供する。
【0036】
磁気センサは、標本液体における検体を検出するバイオセンサとすることができるが、本発明はまた、他の化学、生化学、又は生物学的センサに対して適用することができる。例としては、例えば、表面上に生体細胞又は組織を備えるセンサとすることができる。それは、高次元の深度感度を必要とする。なぜなら、生体細胞は、数マイクロメータからミリメータまでの間の直径を持つからである。
【0037】
すでに上述されたように、従来技術の磁気抵抗バイオセンサの多くは、側面フローデバイス又はフロースルーチップといった高比表面積バイオセンサにおける用途に対して十分な深度感度を持っていない。これは、距離と共に磁場が減少するので、これらの磁気抵抗バイオチップ30が、表面32(図3参照)に近いビーズ(bead)又は磁気ナノ粒子31に対して最も感度がよいからである。更に、表面反応信号が、バルク信号を妨害する(減少させる)。この現象は、図2に示されるバイオセンサに関する励起方法を用いて説明されることになるが、しかしながら、面内感度(in-plane sensitivity)を持つすべての磁場センサに適用可能である。結合された励起方法は、3ステッププロセスとして考えられることができる。電流ワイヤ33における電流が磁場36を生成する。磁場は例えば超常磁性ビーズ31を磁化する。超常磁性ビーズはGMRセンサ要素34のアクティブ層において面内磁場要素38を生成する。各連続する処理ステップにおいて磁場要素を計算することにより、GMRセンサ信号が決定される。
【0038】
図2において、座標系が導入されるが、それは、センサデバイス30がxy平面に配置される場合、GMRセンサ要素34が磁場のx成分を本質的に検出することを示すように導入される。つまり、x方向は、センサ要素34の感知方向である。本発明によるGMRセンサ要素34の感知x方向は、図2における矢印35により示される。センサ要素34はz方向又はセンサデバイス30の平面に垂直な方向において全く感度がないので、図2の垂直方向において、電流ワイヤ33を通る電流によりもたらされる磁場36は、センサ要素34により部分的にのみ検出される。磁気ナノ粒子又はビーズ31は、電流ワイヤ33の近傍にあり、それは、図2におけるフィールド線37により示される磁気モーメントを発達させる。すると、磁気モーメントは、センサ要素34の位置で面内磁場要素38を持つ双極性漂遊磁界を生成する。従って、ナノ粒子31は、矢印35(図2)により示されるセンサ要素34の感知x方向における磁場36を偏向させる。センサ要素34の感知x方向にある磁場のx成分は、センサ要素34により検出され、磁気ナノ粒子31の数と、電流ワイヤ33を流れる電流とに依存する。
【0039】
以下、信号とノイズとを決定する要素が議論されることになる。信号は、磁気粒子31の磁気モーメント(従って、粒子の大きさ、磁化率、適用される磁場に依存する)、磁気粒子31の濃度(concentration)又は数、センサ30の感度(単位磁場あたりの抵抗の変化)及びセンサ30を流れるセンス電流(sense-current)に比例する。白色ノイズスペクトラムの場合、センサ30のノイズは、ゼロ磁場GMR抵抗、検出バンド幅(平均時間に逆比例する)及び温度に比例する。
【0040】
簡単化のため、及び本発明のいくつかの実施形態を比較する目的で、以下の値が仮定されることになる:
−粒子が直径130 nmで、ビーズあたりの磁化率がχ = 7.6 10-21m3である。
−GMRセンサ要素の長さが、GMRセンサの幅である3μmよりずっと長い100μm(y方向において)に等しく、センサ要素の長さ/幅比が少なくとも10である。
−GMRセンサ要素34がいくつかの薄いフィルムの積層(stack)からなる。本発明において、磁気的に感応する層がz = 40 nmに位置する。
−センサ感度がSMGR = 0.005Ωm/Aであり、それはA/mあたりのΩ、つまりΩm/Aで表される磁場強度による抵抗変化である。
−GMRセンサ要素のゼロ磁場抵抗が560Ωに等しい。
−GMRセンサにおけるセンス電流が1 mAに等しい。
−磁場生成ワイヤを流れる電流IWIREが10 mAに等しい。
−高い励起周波数が原因で、GMRセンサ要素34の1/fノイズが無視できる。その結果、ノイズがGMRセンサ要素の温度抵抗ノイズにより与えられる。平均時間0.5秒が想定される。従って、560 Ωのセンサ抵抗と室温とを用いて、ノイズレベルが(4kbTRB)1/2 = 3nVと仮定される。
−ビーズの体積密度が1 bead/μm3に等しい。
【0041】
これらの値は、例示としてのみ意味を持ち、従って、本発明を限定するものではないことに留意されたい。
【0042】
上記の値を用いて、本発明による実施形態(以下参照)に対してセンサ信号が計算されることになる。その計算は次のように行われることができる。第1のステップは、磁場生成手段により生成された磁場を計算することである。GMRセンサの物質の相対透磁性による磁場の変動は無視されることができ、そこでμr=1が想定される。第2のステップは、ビーズ31あたりの磁化率を用いて、y軸に沿って位置(x、z)で粒子又はビーズ31の行の磁気双極性モーメントを決定することである。磁気センサ要素34の長さは、その幅よりずっと長い;従って、センサストリップの端での磁場の変動は、無視されることができる。第3のステップにおいて、GMRセンサ要素34の感応層での平均面内磁場強度から生じるGMR信号が計算されることができる。第4のステップにおいて、x軸に沿った積分(integration)が行われる。そのようなものとして、粒子31のxyシートから派生する信号がz-位置の関数として得られる。第5のステップにおいて、z軸に沿った積分又は総和(summation)が行われる。そのようなものとして、粒子31のボリュームから派生するバルク信号UGMR,bulkが得られる。
【0043】
計算されたノイズと計算された信号とを用いて、1に等しい信号対ノイズ比(SNR)に対応することになるナノ粒子31の体積密度が推定されることができる。簡単化のために、SNR = 1に対応する濃度は、検出限界と呼ばれる。これは、任意に選択されるレベルである。なぜなら、それは例えば、センス電流、適用される磁場、又は磁気ナノ粒子のサイズ若しくは磁気モーメントを増加することにより容易に改善されることができるからである。にもかかわらず、本発明の異なる実施形態によれば、計算された値が、センサの性能を比較するのに使用される。
【0044】
例えば、捕捉分子の濃度、高比表面積物質の場合での間隙サイズ、結合(binding)及び結合解除(unbinding)の会合定数及び解離定数、流量パラメタ(混合、ずれ流動)、培養時間、ストリンジェンシーステップ(stringency step)などの追加的な要素が考慮されるとき、生物検出限界が、センサのラベル検出限界に直接関連付けられることに留意されたい。
【0045】
上記パラメタを用いると、図2に示されるセンサに対して、GMR電圧はUGMR,bulk = -0.33μVに等しい。すると、SNR = 1に対する体積密度として規定されるボリューム検出限界は、dbulk = 6.5 10-3 beads/μm3に等しい。
【0046】
電流ワイヤ33における最大許容電流密度は、エレクトロマイグレーションにより制限され、それは、長時間動作のために安全な値として100 nm x 100 nm断面積あたり1 mAに等しいことに留意されたい。例えば、ワイヤ幅が3μmに等しく、ワイヤ厚みが0.35μmに等しい図2の場合には、長時間のエレクトロマイグレーション限界がワイヤ33における最大電流105 mAを与える。これは、検出限界が上述の推定より低い係数11となりうることを意味する。使い捨てバイオセンサの場合のように長時間動作が必要とされないとき、電流は更に増加され、従って検出限界が減少されることができる点に留意されたい。抵抗電流は、電流損失と温度上昇とをもたらす点に留意されたい。特定のアッセイ及び特定の物質に対して、例えば、蛋白質の変性(de-naturing)を避けるため温度変化は抑制される必要がある。これは、許容電流の大きさ、平均時間の長さ及びアッセイの間を測定する間の時間間隔に制限を課すことができる。アッセイの端点において、生物物質が変性することが許容されることができ、それは、電流限界を緩和し、磁気ラベルの非常に敏感な端点測定を可能いにすることになる。
【0047】
図3は、1 bead/μm3体積密度で、均一に配分される超常磁性ビーズのxyシートのz位置の関数として、つまり図2のセンサデバイス30の場合における、シートとセンサ要素34の表面との間の距離の関数として、GMR信号又はGMR電圧を示すものである。シートは、1 bead/μm2の密度でナノ粒子31を有し、連続するシートは互いに1μm間隔が開けられる(図示省略されている)。図3において、1.65μmでゼロクロッシングが生じる(矢印Cで表される)。この図は更に、センサデバイス30の表面32(図3における領域Aで表される)に近いビーズ又はナノ粒子31((矢印で表される)z ≦ 1.65 μm)を起源とする表面信号が正である一方、バルク(図3における領域Bで表される)におけるビーズ31(z ≧ 1.65 μm)からの応答が負値となることを示す。センサは、曲線下の面積を示す深度感度と呼ばれるビーズ31のボリュームに応答するので、(正の)表面信号が深度感度を減少させることになる。これが、センサ表面32に近いビーズ31の効果が除去されるべき第1の理由である。更に、表面信号(領域A)が深度信号又はバルク信号(領域B)よりずっと大きいが、それが、表面32に近いビーズ31の効果を除去する第2の理由である。更に、図2に説明されるようなセンサの深度プロービング範囲はz ≦ 10μmに制限され、それは実際のバルク測定には余りにも小さすぎる。
【0048】
従って、本発明は、例えば血液、組織、細胞培養のような液体標本又は複雑な混合物(complex mixture)における検体を検出するための磁気センサデバイス40と、表面における相対近傍における磁気ビーズを除去することにより、最適化されたバルク又は深度感度での検出法とを提供する。本発明のアイデアは、センサ表面からビーズ又は磁気粒子を除去することである。そうすることにより、ビーズ又は磁気粒子は、等号化された(equal-signed)信号貢献(signal contribution)とバルクにおける粒子の濃度を備える総信号等級尺度(total signal magnitude scale)とを与える。実際、表面からの信号貢献が最小化され、そのことが、バルク濃度の観点からの測定信号の解釈を容易にする。ビーズとセンサ要素との間の距離が大きくなると、センサはますます「見る」ことになるが、信号は益々弱くなる。従って、センサ要素34とビーズ31との間の距離は、あまり大きくはなることができないし、あまり小さくなることもできない。好ましくは、距離は1μmから300μmの間である。それは更に、コスト効率性のため、ターゲットの損失を避けるためなどから、排除ゾーンから試薬及び/又は生体物質を除くことが有利な場合があることに留意されたい。
【0049】
図4に示される本発明による第1の実施形態によれば、本発明による第1の磁気センサデバイス(40)が説明される。本発明の本実施形態による磁気センサデバイス40は、少なくとも1つの磁場又は電場手段41と少なくとも1つの磁気センサ要素42とを有する。本実施形態の説明において、磁場生成手段41は例えば電流ワイヤのようなオンチップ磁場生成手段である。従って、この実施形態において、磁場生成手段41は更に、電流ワイヤ41として参照されることになる。しかしながら、これは本発明を限定するものではない。一般的に磁場生成手段41は例えば外部磁場生成手段又はオンチップ磁場生成手段であり、例えば、電流ワイヤ、電磁石、永久磁石又は外部コイルとすることができる。本発明は、電磁場生成手段が使用される場合にも適用されることができる。磁気センサ要素42は、例えば薄膜磁気センサ、例えば磁気抵抗センサ、ホールセンサ、巨大磁気インピーダンスセンサなどとすることができる。磁気抵抗センサの場合、センサ要素42は、例えばGMR、TMR又はAMRセンサ要素とすることができ、例えば長く狭いストリップジオメトリを持つことができる。本実施形態の説明において、磁気センサデバイス40はGMRセンサ要素を有するものとして説明されることになる。従って、更なる説明においては、磁気センサ要素42は、GMRセンサ要素42として参照されることになる。しかしながら、これは本発明を限定するものではなく、当業者であれば、GMRセンサ要素42に対する記述において説明される原理は、他の磁気抵抗センサ要素を有するセンサ又は他の薄膜磁気センサタイプにも適用されることができる点を理解されたい。
【0050】
第1の実施形態によるセンサデバイス40は、従って、例えば、磁場生成手段としての電流ワイヤ41と、GMRセンサ要素42とを有する。電流ワイヤ41は、与えられた本実施例において、0.35μmの厚み(z方向)と、3μmの幅(x方向)とを持つ。本実施形態において、GMRセンサ要素42の幅(x方向)は3μmである。電流ワイヤ41とGMRセンサ要素42との間の距離(x方向)は、与えられた例において3μmであるが、電流ワイヤ距離に対するセンサ要素が深度反応(depth response)を変化させることになるので、他の任意の適切なサイズを持つことができる。電流ワイヤ41とセンサ要素42との間の距離を変化させることにより、異なる特定の用途に対して必要な深度感度が実現されることができる。
【0051】
電流ワイヤ41とGMRセンサ要素42とを有するセンサデバイス40の上述された部分は、センサチップ43として以下の説明において参照されることになる。
【0052】
粒子がセンサにあまり近づきすぎることを適切に防ぐため、磁気センサデバイス40は更に排除ゾーン44を有する。この実施形態において、排除ゾーン44は、2つの部分を有することができる。つまり、(i)本発明ではz = 40 nmとすることができるセンサ要素42の磁気的に感知可能な層とセンサチップ43の表面45との間の「カバー層」44a及び(ii)センサチップ43の表面45の上部のスペーサ44bを有することができる。従って、排除ゾーン44はGMRセンサ要素42の上に位置する。
【0053】
スペーサ44bは、好ましくは、センサチップ43に一体化され、センサチップ43の層として、又はセンサチップの表面45に固定される、例えばラミネート加工又は接着される個別のスペーサ層44bとして形成される。また、スペーサ44bは、例えば、プリンティング、スパッタリング、蒸着、ディップコーティング又はスピンコーティングといった当業者により知られたいずれかの適切な従来の沈殿技術により沈殿されることができる。排除ゾーン44は、1から300μmの間の厚み、好ましくは1から200μmの間、もっと好ましくは1から100μmの間の厚みを持つことができる。z寸法(図4において矢印47で示される)は、センサ要素42の下部から測定される。排除ゾーン44もまた、センサ要素42の下部から規定される。従って、厳密に言えば、排除ゾーン44の厚みは、スペーサ44bの厚み、「カバー層」44aの厚み及び通常10 nmとすることができるその感知層の上のセンサ要素42の厚みの合計に等しい。しかしながら、説明の簡単化のために、追加的な説明において、排除ゾーン44は、「カバー層」44aとスペーサ44bとを有するものとして参照されることになる。しかしながら、その感知層の上のセンサ要素42の厚みはまた、排除ゾーン44の厚みが議論されるとき含まれる点に留意されたい。
【0054】
スペーサ44bは、センサチップ43の表面45の直接の近傍における磁気粒子又はビーズ46の存在を避ける。そのようにして、GMRセンサ要素42の上部表面の近傍におけるビーズの46の存在がまた回避される。他の実施形態において、GMRセンサ要素42の上部表面の近傍におけるビーズ46の存在は、センサ要素42とセンサチップ43の表面45との間の「カバー層」44aの厚みを増加させることにより同様に回避されることができる。スペーサ44bは好ましくは非磁気物資から形成されることができ、例えば、プラスチック物質を有することができる。スペーサ44bは、センサチップ43の表面45に機械的に結合されることができる箔物質を有することもできる。また、箔物質はセンサチップ43の表面45に向かって圧縮されることができ、その物質とセンサ表面45との間には隙間があってよい。
【0055】
図4に示される磁気センサデバイス40に対して、GMR電圧はUGMR,bulk = -1.61μVであり、この手法における検出限界がdlimit,bulk = 1.4 10-3 beads/μm3となることをもたらす。つまり、図2に関して説明されたセンサデバイスより低い係数4.6をもたらす。
【0056】
本発明による磁気センサデバイス40の利点は、側面フローバイオチップの商業提供者の製品ラインにそのセンサデバイス40を非常に組み込み易い点にある。なぜなら既存の側面フロー製品は、機械的な目的のため、例えば機械的な支持部材として、プラスチック箔でラミネート加工されたニトロセルロース・ストリップを既に持つからである。
【0057】
本発明の第2の実施形態において、別の可能な磁気センサデバイス40が説明され、図5に示される。本実施形態におけるセンサデバイス40は、第1の実施形態に説明されるセンサデバイス40と同じ構成を持つが、ここでは、センサチップ43が、磁場生成手段として幅50μmの電流ワイヤ41を有することができる。それは第1の実施形態における電流ワイヤ41より約17倍広い。GMRセンサ要素42は、それでも幅3μmである。電流ワイヤ41とGMRセンサ要素42との間の距離もまだ3μmである。第2の実施形態によるセンサデバイス40は、更に、第2の実施形態において例えば、「カバー層」44aとスペーサ44bとを有することができる排除ゾーン44を有する。この実施形態においてスペーサ44bは、厚み5μmを持つことができ、センサチップ43の上部表面45に配置される。
【0058】
排除ゾーン44は、GMRセンサ要素42の感知層の近傍におけるビーズ又は磁気粒子46の存在を回避する。本実施形態における排除ゾーン44は、第1の実施形態に関してよりも厚くすることができる。しかしながら、それでも1から300μmの範囲、好ましくは1から200μmの間、もっと好ましくは1から100μmの間に含まれることができる。厚いスペーサ44bは、ビーズのシート46とセンサ要素42との間の距離を増加させ、従って、更に焦点深度をも増加させる。シートビーズ46とセンサ要素42との間の距離は、図4及び図5における矢印47により示される。
【0059】
図6は、第2の実施形態による磁気センサデバイス40で達成可能な増加された深度プロービング範囲を説明する。その図は、ビーズ46とセンサ要素42との間の距離として規定される、ビーズ46のシートのz位置の関数として、1 bead/μm3体積密度でのGMR電圧を示す。図5において、ビーズ46のシートのz位置は矢印47により示される。以前に示されたのと同じパラメタ値を仮定すれば、GMR電圧はUGMR,bulk = -0.74μVであり、それは、上記に与えられるようなパラメータを用いて計算される、この手法におけるボリューム検出限界がdlimit,bulk = 2.9 10-3 beads/μm3であることをもたらす。この実施形態において、電流密度は第1の実施形態よりずっと低い。なぜなら、同じ電流がより広い電流ワイヤ41を通って流されるからである。50μm幅の電流ワイヤ41が原因で、エレクトロマイグレーションにより制限される最大電流は、少なくとも1.75Aに増加されることができる。従って、検出限界は、上述の推定に比べて係数175分改善することになる。つまり、検出限界は、1.65 10-5 beads/μm3となる。
【0060】
本発明の第3の実施形態によれば、センサチップ43は、第1及び第2の磁場生成手段、例えば第1及び第2のコンダクタ41a、41bと、GMRセンサ要素42のようなMRセンサ要素とを有することができ、各コンダクタ41a、41bは、磁気抵抗センサ要素42(図7)の平面に関して、同じ位置にある磁気抵抗センサ要素42の反対側に隣接して位置されることができる。両方の電流ワイヤ41a、bは、幅50μmを持つことができ、及び各電流ワイヤ41a、bと磁気抵抗センサ要素42との間の距離が、本実施形態では、例えば3μmとすることができる。この実施形態において、排除ゾーン44は、「カバー層」44aと、センサ要素42の表面の上部に配置され、本実施形態においては通常1から300μm、例えば7μmの範囲にあるスペーサ44bとを有する。矢印47は、ビーズ又は磁気粒子46と、センサ要素42の下部との間の距離を示す。
【0061】
すでに上述されたように、センサデバイス40がxy平面に配置されると、GMRセンサ要素42が特定の方向における磁場の成分、例えば磁場のx成分を本質的に検出する。つまり、x方向は、センサ要素42の感度方向である。本実施形態によれば、こうして磁場は、組み込まれた電流ワイヤ41a、bにおける電流の流れを用いて、磁気粒子又はビーズ46に適用される。好ましくは、電流ワイヤ41a、bは、それらが、磁気粒子又はビーズ46が存在するようなボリュームにおける磁場を生成するような態様で配置されることができる。例えば、図7に示されるように、正のy方向における電流I_w1及びI_w2を電流ワイヤ41a、41bにそれぞれ適用することにより、正のx方向において合成(resultant)磁場が本質的に生成される。そうして電流I_w1及びI_w2を選択することにより、磁気粒子又はビーズ46の数に関する情報(和信号)が取得されることができる。図8は、GMR信号(和信号)をビーズ46のx位置の関数として示し、50の位置、センサチップ43の表面45(z方向)から6μmにおいて、I__w1 = I_w2 = 10 mAである。和信号は、磁気粒子46の総数及びその磁化(直径、透磁率)に対する尺度である。
【0062】
ワイヤ41a、41bにおける電流方向の1つを反転させることにより、磁場は、センサデバイス40の右と左とで反対のx磁場を備える非対称になる。電流I_w1及びI_w2をそのように選択することにより、磁気粒子又はビーズ46の位置及び不均一性に関する情報が取得されることができる。その場合において、一様な表面密度又は体積密度に対してGMR電圧はゼロに等しいことを留意されたい。
【0063】
図9において、図7のセンサデバイス40の深度プロービング範囲が表される。その図は、矢印47で示されるz位置の関数として1 bead/μm3体積密度でのGMR電圧を示す。GMR電圧は、UGMR,bulk = -0.27μVに等しい。これは、この手法におけるボリューム検出限界をdlimit,bulk = 8 10-3beads/μm3とすることをもたらす。従って、第2の実施形態に関して、2つの電流ワイヤ41a、41bを磁場生成手段として適用することにより、深度プロービング範囲が更に拡張されることができる。zビーズの関数としての信号貢献は図6と比べると図9においてはそれほど急速には減少しない。この理由は、図7のセンサデバイス40の場合、2倍の電流を使用することを犠牲にして、より多くのボリュームにおいて磁場が生成される点にある。更に、本実施形態における深度プロービング感度は、第2の実施形態と比べてより一定であり、それは利点となる。
【0064】
本発明の追加的な実施形態において、更に別のセンサ構成が説明される。本発明による磁気センサデバイス40は、電流ワイヤ41a‐fのような磁場生成手段と、GMRセンサ42a‐eのようなMRセンサ要素とを交互に複数有することができる(図10参照)。本実施形態において、電流ワイヤ41a‐fは、すべて同じ形状及び大きさを持つことができ、幅は3μmである。しかしながら、他の実施形態において、電流ワイヤ41a‐fは異なる形状及び大きさを持つことができる。各電流ワイヤ41a‐fと連続するGMRセンサ要素42a‐eとの間の距離は例えば3μmとすることができる。しかしながら、他の実施形態において、各電流ワイヤ41a‐fと連続するGMRセンサ要素42a‐eとの間の距離は同じである必要はない。
【0065】
複数の電流ワイヤ41a‐fとGMRセンサ要素42a‐fとを適用することにより、センサデバイス40の深度プロービング範囲は更に以前の実施形態に関して増加されることができる。排除ゾーン44は、センサ要素42の上部に位置され、その排除ゾーンは、「カバー層」44aとスペーサ44bとを有する。排除ゾーン44の厚みは、1から300μmの間、好ましくは1から200μmの間、更に好ましくは1から100μmの間とすることができる。理想的には排除ゾーン44は、すべての磁気粒子又はビーズ46が同じ符号の信号に貢献するよう決定されることができる。
【0066】
この実施形態及び以前のすべての実施形態に対して、電流及びGMR信号は、並列だけでなく、時分割で動作されることができる点に留意されたい。
【0067】
本発明の第5の実施形態において、排除ゾーン44は、「カバー層」44aと、厚みが1から300μm、例えば10μmの範囲内の厚みのスペーサ44bとの形式とすることができる。本実施形態において、スペーサ44bは、センサチップ43の上部表面45に直接与えられないが、外部接続に対するガルバニック、磁気、電気、光学及び/又はRF結合のための少なくとも1つの結合手段48を有することができる(図11参照)。例えば、磁気結合の場合にインダクタを形成するため、RF結合の場合にアンテナを形成するため、及び容量結合の場合に導電表面(コンデンサの1つのプレート)を形成するため、導電物質がスペーサ44bの上部に溶着されることができる。更に、光学結合の場合、結合手段48は、フォトセンシティブ(フォトダイオード)、フォトエミッティング(LED、ポリLED)又はフォトアクティブ(例えばLCD、エレクトロクロミック)物質を有することができる。更に、光学/RF結合手段のような組み合わせが可能である。
【0068】
結合手段48は、例えば、ガルバニック接続49を用いた、例えばフリップチップ技術を介してセンサチップ43の表面45に接続されることができる。センサチップ43は、以前の実施形態で説明されたセンサチップ43とすることができる。図11において、センサデバイス40の検出ボリュームは、参照番号50により示される。
【0069】
結合手段48は、磁気抵抗センサデバイス40と読み出しシステム(図示省略)との間の電気信号(データ及び電力)を交換するのに使用されることができる。必要とされる電子機器は、センサチップ43に含まれることができる。結合手段48と、センサチップ43及び読み出しステーション(図示省略)で必要とされる電子機器とは、当業者にはよく知られており、それらは、電力と、センサデバイス40及び読み出しステーション(図示省略)間での双方向データとを転送することができる。例えば、無線タグ用のMIFARE送信標準規格(誘導型、13.56MHz)及び日立ミューチップ(RF、2.45GHz)がある。本発明によれば、結合手段48は、センサチップ43自身に組み込まれることができる点に留意されたい。例えば、光学又はRF結合手段とすることができる。しかしながら、必要とされる電子機器は、センサチップ43上に与えられる代わりに、個別のチップ、つまり図12に示されるように電子チップ51上に与えられることもできる。電子チップ51は、結合手段48とスペーサ44bとが与えられるセンサチップ43の表面45の反対にある、センサチップ43の表面52に接続されることができる。これは、例えばフリップチップ技術により行われることができる。
【0070】
本発明の第6の技術において、側面フローバイオセンサシステム60が与えられる(図13)。この図において、側面フローアッセイの例が与えられる。システム60は、解析されるターゲット分子を有する試験液体を有することができる標本液体供給源61と、ラベル又は磁気粒子46を具備する抗体のような試薬又は捕捉層を有し、例えばニトロセルロースのような多孔性媒体62と、本発明によるセンサデバイス40とを有する。試験液体は、毛細血管力により駆動され、多孔性媒体62を通って動く。試薬が、試験液体中に溶け、続いて、ターゲット分子に結合し、それからそれは感応領域で捕捉され、固定化されたビーズ63を形成する。結合複合体、つまり、第1のラベル付けされた検体に結合されたターゲット分子が、サンドイッチ構造、つまり表面−抗体−ターゲット−抗体−ラベル構造により固定表面上で捕捉される。高比表面積物質、例えば、多孔性媒体62及びセンサデバイス40は共に、単一使用使い捨て製品用に、接近して一体化されることができる、又は再利用のため分離可能である。必要とされる電子機器は、図13に示されるシステム60の場合同様、センサチップ43上に組み込まれることができる。しかしながら、必要とされる電子機器は、図12に関して述べられたのと同じように、個別のチップ上にあるとすることもできる。側面フローバイオセンサシステム60の構築は、図13に示されるように、高比表面積結合領域を備える非常に便利なマイクロ流体光学デザインを与える。大きな深度感度を備えるセンサデバイス40がこの構造を可能にする。
【0071】
図14は、側面フローバイオセンサシステム60において使用されることができる単一のセンサモジュール70の可能な構成の上面図を示す。センサモジュール70は、それぞれ第1及び第2の電流ワイヤ41a及び41b、電流ワイヤ41a、41bの間に位置するGMRセンサ要素42、電流ワイヤ41a、bとGMRセンサ要素42との両方を越えて広がり試薬を有する多孔性媒体62を有し、(図14において図示省略された)スペーサが、一方で多孔性媒体62の間に存在し、他方で電流ワイヤ41a、41bとGMRセンサ要素42との間に存在する。
【0072】
側面フローバイオセンサシステム60において使用されることができる単一のセンサモジュール70の別の可能な構成が図15に説明される。この構成は、第1の電流ワイヤ41aの上部に、第1の試薬を有する第1の多孔性媒体62aが与えられ、第2の電流ワイヤ41bの上部に、捕捉層を有する第2の多孔性媒体62bが与えられ、一方で電流ワイヤ41aと41bとの間に、他方で多孔性媒体62aとbとの間に排除ゾーン44(図15において図示省略)が存在する点で、図14とは異なる。電流ワイヤ41aと41bとの間に、GMRセンサ要素42が、第1又は第2の多孔性媒体62a、62bのいずれかにより覆われない状態で配置される。本発明は、それぞれが異なる捕捉層を有する2つの多孔性媒体に限定されない点を理解されたい。この構成は、標本液体における異なる種類のターゲット分子を同時に分析する可能性を提供する。
【0073】
図14又は図15のいずれかによる多数のセンサモジュール70は、図16に示されるように単一のセンサチップ43上に配置されることができる。センサチップ43は、増幅、電流生成、変調などに必要とされる電子機器(図示省略)と共に、センサモジュール70を有することができる。また、データを通信し、読み出しステーションから電力を収集するため、オンチップアンテナ64がセンサチップ43に組み込まれることができる。複数の相互接続されたチップもまた可能であることは明らかであろう。
【0074】
本発明の追加的な実施形態において、以前の実施形態におけるオンチップ磁場生成手段41の代わりに、外部磁場が外部磁場生成手段65により適用されることができる。本実施形態において、外部磁場生成手段65は、2つの外部コイル65a及び65bを有することができる(図17(断面図)及び図18(上面図)参照)。磁場生成手段としての2つの外部コイル65a及び65bの使用は、説明目的にすぎず、本発明を限定するものではない。センサチップ43は、2つの外部コイル65a、65bの間に配置されることができ、以前の実施形態と比べると、ここでは、例えば磁気抵抗センサ要素(例えば、GMR、TMR又はAMRセンサ要素)といった少なくとも1つの磁気センサ要素42のみを有することができる。センサチップ43の上部表面には、スペーサ44bが与えられる。排除ゾーン44の上部、従ってスペーサ44bの上部には、例えば、抗体を有するニトロセルロース(紙)といった多孔性媒体62が与えられる。磁気励起場(magnetic excitation field)が外部コイル65a、bを介して適用される。この第7の実施形態によるセンサ構成の断面図、概略図が図17に示される。そのジオメトリは、以下を満たすよう選択される:
− コイル場が原因によるセンサデバイス40での信号を最小化するよう、GMRセンサ要素42の感応層66における、コイル場による平面内(in-plane)磁化が最小化される。そして、
− 高比表面積結合領域のバルクにおける磁場が主に水平を向く。
【0075】
本発明によるセンサデバイス40の利点は、それが、高深度感度を備える測定に対して、高比表面積バイオセンサにおける感度のよい磁気検出を可能にする点にある。本発明によるセンサデバイス40は、中電流(moderate current)、短い平均時間(1秒未満)、及びサブマイクロメータビーズに対して、μm3あたり10-3 beadsのオーダーの感度を示す。更に、マルチプレキシング又はマルチターゲット検出を可能にしつつ、センサデバイス40は正確であり、扱い易く、安価である。信号対ノイズ比の更なる増加のために、磁気操作が:
− アッセイの速度を増加するため、
− 磁気ストリンジェンシー(stringency)を適用するため、
− ラベル回転分光法を適用するため
に使用されることができる。
【0076】
本発明によるセンサデバイス40は、チップの外側にある磁場生成器65a、65bを用いると共に、オンチップ電流ワイヤ41を介して適用される磁場で適用されることができる。更に、本発明による磁気センサデバイス40は、免疫性及び毛細血管クロマトグラフィ試験ストリップに一体化されることができる。それ故に、既存のマーケットにおける製品を改良することができ、それは、磁気センシング技術にとって魅力的な市場参入を提供することができる。
【0077】
更に、磁気センサデバイス40のジオメトリを変化させることにより、つまり、電流ワイヤ幅に対するGMR幅の比を1より小さくする、または言い換えると、電流ワイヤ41の幅がGMRセンサ要素42の幅より大きくなるよう電流ワイヤ41を選択することにより、大きな深度プロービング範囲が本発明によるセンサデバイス40で達成される。電流ワイヤ幅に対するGMR幅の比は、好ましくは1より小さく、より好ましくは0.5より小さい。その比は、GMRセンサ要素42による磁場の感知検出を可能にするよう、あまりに小さすぎるべきではない。この電流ワイヤ幅に対するGMR幅の比は、深度感度範囲を最適化するようなされることができる。理想的には、その比は、ある深度範囲において均一な感度が達成されるようなものである。
【0078】
本発明によるセンサデバイス40は、高周波数での磁気励起のため一体化されたワイヤ41を用いる。その一体化されたワイヤ41は、主に平面内磁場を生成する。これは、従来技術において使用される平面外磁場及び低測定周波数と対称的である。更に、本発明によるセンサデバイス40において、粒子対センサ要素距離が好ましくは1μmから300μmの間であり、より好ましくは1から200μmの間であり、もっと好ましくは1から100μmの間になることが、排除ゾーン44の提供により適用される。上述の要素の組み合わせが、比較的粒子対センサ距離が大きくても、高い検出感度をもたらす。
【0079】
磁場が生成される領域のボリュームが磁気粒子又はビーズ46が存在する領域によくマッチするとき、そのシステムは最小のインダクタンスを持ち、それは、高周波数及び比較的高い磁場での低出力動作にとって有益である。
【0080】
本発明の方法は、様々なデバイス構造及び診断用途に適用されることができる。そのデバイスは、例えば、単一のセンサ、又はバイオセンサのアレイ、又はいわゆるバイオチップとすることができる。センサデバイス40は、使い捨てデバイスの一部とすることができ、又は再利用型読み出し機の一部とすることができる。例えば、センサデバイス40は、液体チャネル、容器、試薬などを含む、カートリッジ又は研究所内デバイス(lab-in-a-device)の一部とするか、又はそれと共に使用されることができる。センサデバイス40はまた、使い捨てピペットチップ(disposable pipette tip)又はアフィニティカラムの一部とする、又はそれと共に使用されることができる。センサデバイス40は、例えば、ウェルプレート又はマイクロ層プレートといった、ウェル若しくは複数のウェル内に、又は、ウェル若しくは複数のウェルへ適用されることもできる。
【0081】
更に、センサデバイス40は分子アッセイのために使用されることができるが、マイクロ組織、細胞、細胞培養、生体又は死体物質、細胞片、組織などの検出のため(又は、それらにおける成分若しくはプロセスの検出のため)に使用されることもできる。結合アッセイ、結合解除アッセイ、サンドイッチアッセイ、競合アッセイ、移動アッセイ、比較混成アッセイ、クラスタアッセイ、磁気回転アッセイ、拡散アッセイなどの複数のアッセイのタイプが使用されることができる。
【0082】
本発明によるセンサデバイス40に関して、物質と共に、好ましい実施形態、特定の構造及び構成が、本書において議論されてきたが、形式及び詳細における様々な変化又は変形が、本発明の範囲及び精神から逸脱することなくなされることができることを理解されたい。例えば、本発明は、センサ表面45から、ビーズ又は磁気粒子46を除去する排除ゾーン44を形成する、GMRセンサ要素42の上のスペーサ44bを提供することを用いて説明されてきた。本発明による別の実施形態において、排除ゾーン44の一部は、センサデバイス40と磁気粒子46との間に配置される流体媒体(ガス、液体、真空)を伴う隙間とすることができる。本発明による別の実施形態において、排除ゾーン44は、センサ基板においてより深いところに磁気センサ要素42を埋めることによっても提供されることができる。更に、本発明による別の実施形態において、排除ゾーン44の機能は、磁気粒子又はビーズ46が貼り付かない場所、磁気粒子又はビーズ46が除去されることができる場所、又は磁気粒子又はビーズ46が機械的な力が原因で入ることができない場所であるゾーンを持つことにより実現されることができる。一例において、磁気粒子又はビーズ46の排除ゾーン44からの排除は、磁気粒子又はビーズ46へ機械的な力を加えることにより、従って、測定の間、センサ表面45の近傍における磁気粒子又はビーズ46の存在を回避又は除去することにより、実現され、又は部分的に実現されることができる。機械的な力は、例えば、磁場又は磁場グラジエントによる、磁気派生又は電気派生とするものを持つ。また、力は、流体の流れ、圧力グラジエント、毛細血管力、せん断力などにより生成されることができる。別の例において、磁気粒子又はビーズ46は、捕捉又は結合層の不存在が原因で、センサ表面につかない。すると、センサ付近の結合フリー領域又はボリュームが、排除ゾーン44を実現する。磁気粒子46は流体の流れ又は他の力により排除ゾーン44から除去されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】従来技術による、標本ディスペンサ/デキャンタ及びPMP検出器の一部の断面を示す図である。
【図2】磁気抵抗センサを示す図である。
【図3】図2の磁気抵抗センサ用のセンサ表面に対する、粒子密度1 bead/μm2で磁気粒子のシートの距離の関数としてGMR電圧を図式的に説明する図である。
【図4】本発明の一実施形態による磁気抵抗センサ構成を説明する図である。
【図5】本発明の第2の実施形態による磁気抵抗センサ構成を説明する図である。
【図6】図5の磁気抵抗センサ用のセンサ表面に対する、磁気粒子の距離の関数として、GMR電圧を図式的に示す図である。
【図7】本発明の第3の実施形態による磁気抵抗センサ構成を説明する図である。
【図8】図7の磁気抵抗センサ用のビーズの位置の関数としてGMR電圧を図式的に示す図である。
【図9】図7の磁気抵抗センサ用のセンサ表面に対する磁気粒子の距離の関数として、GMR電圧を図式的に示す図である。
【図10】本発明の第4の実施形態による磁気抵抗センサ構成を示す図である。
【図11】本発明の第5の実施形態による磁気抵抗センサ構成を示す図である。
【図12】本発明の第5の実施形態による磁気抵抗センサ構成を示す図である。
【図13】本発明の第6の実施形態による磁気抵抗センサ構成を示す図である。
【図14】本発明の第6の実施形態による磁気抵抗センサ構成を示す図である。
【図15】本発明の第6の実施形態による磁気抵抗センサ構成を示す図である。
【図16】本発明の第6の実施形態による磁気抵抗センサ構成を示す図である。
【図17】本発明の第7の実施形態による磁気抵抗センサ構成を示す図である。
【図18】本発明の第7の実施形態による磁気抵抗センサ構成を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体又は固体環境における磁粉を検出するためのセンサデバイス及び方法に関する。そのデバイス及び方法は、標本液体中に含まれるpmol/L及びそれ以下の腫瘍マーカー及び病原体由来物質といったターゲット分子の検出のために使用されることができる。本発明によるセンサは、更に、分子アッセイに使用されることができ、微生物、細胞、細胞片、組織などにおける、要素の検出又はプロセスの検出にも使用されることができる。
【背景技術】
【0002】
バイオセンシングの課題は、背景物質(例えばアルブミンのような蛋白質)がmmol/Lといった高濃度で存在する複雑な混合物に含まれる、小さな濃度の特定のターゲット物質を検出することにある。
【0003】
バイオセンサチップ、生物マイクロチップ、ジーンチップ又はDNAチップとも呼ばれるバイオチップは、その最も単純な形において、多数の異なるプローブ分子がチップ上の明確な領域に付けられる基板からなる。両者が好適に適合する場合、そのプローブ分子に対して、解析されるべきターゲット分子又は分子片が結合することができる。例えば、DNA分子の分片は、1つの固有の相補DNA(c-DNA)分子片と結合する。例えば、蛍光マーカーのような、解析されるべき分子に結合されるラベルを用いて、結合反応(binding reaction)の発生が検出されることができる。これは、多数の異なるターゲット分子又は分子片の少量を並行して短時間に分析する能力を提供する。1つのバイオチップは、1000又はそれ以上の異なる分子片に対するアッセイを保持することができる。バイオチップを使用することから利用可能になる情報の有益性は、ヒトゲノム計画などのプロジェクト並びに遺伝子及び蛋白質の機能に関する追加研究の結果として、次の10年の間に急速に増加するであろうことが予想される。
【0004】
磁気抵抗バイオチップは、感度、選択性(specificity)、統合性、使用容易性及び価格の観点から生体分子診断にとって有望な特徴を持つバイオチップのタイプの1つである。斯かるバイオセンサの例は、国際公開第WO 2003/054566号、国際公開第WO 2003/054523号及びRifeらによるSens.Act.巻107、p.209(2003)に記載される。しかしながら、これらのバイオチップの不都合点は、それらが限られた深度感度しか持たず、そのオーダーは数マイクロメータ又はそれ未満である点である。この限定された深度感度は、チップの表面上センサの近くに位置する磁気ナノ粒子を検出するには好適に適合する。しかし、高比表面積(high-surface-area)バイオセンサ (例えば、側面フローデバイス又はフロースルーチップ)及び国際公開第WO 00/26669号(詳細は参照のこと)に示されるレセプタクルを備えるシステムにおける場合など、磁気ラベルがより深い深度に位置する用途には、深度感度が不十分である。
【0005】
免疫クロマトグラフィ又はストリップ検査とも呼ばれる最もよく知られた側面フローバイオセンサは、妊娠検査のための尿検査棒である。このバイオセンサにおいて、検査液は、一般的にはニトロセルロースである多孔性の紙ストリップに適用され、そこでは、液体が受動的な毛管力で運ばれる。例えば、光学ラベルを備える抗体といった試薬が、液体に溶け、続いてターゲット分子と結合する。それは、妊娠検査のための尿検査棒の場合、妊娠ホルモンhCGとなる。その後、液体は、第2の捕捉抗体が多孔性媒体に結合される領域である、検出領域を通過する。そこで、結合複合体、例えば、第1のラベル付けされた抗体に結合されるターゲットが、固体表面上で捕捉され、表面−抗体−ターゲット−抗体−ラベルのサンドイッチ構造を形成する。側面フローデバイスは、一般的に、光学反射といった光学検出を使用し、それは、例えば、ラテックス粒子、20-nm金ラベル又は蛍光を用いる。
【0006】
フロースルーバイオチップでの2つの例は、Metrigenix(マイクロ多孔シリコン)及びPamgene(ナノ多孔酸化アルミニウム)から知られる。両方の場合において、そのデバイスの多孔高比表面積要素は、厚みが数十から数百マイクロメータであり、液体の流れはチップ本体に垂直に生じる。両方の場合において、その検出は光学的に(蛍光、化学発光で)行われる。
【0007】
上述されたように、側面フロー又はフロースルーバイオセンサは一般的に光学検出を用いる。これらの方法は、例えば、他の蛍光種(fluorescent species)又は自己蛍光といった薬物との干渉、正反射、光学吸収、光学散乱、蛍光ベース検査における信号の消滅、又は、例えば化学発光に必要とされるような追加的な洗浄ステップの要求及び追加的な試薬の必要性といった課題を持つ。結果として、これらの方法は、高比表面積バイオセンサにおける高感度測定には適さない。
【0008】
国際公開第WO 00/26669号は、巨大な磁気抵抗効果を用いて、レセプタクルにおけるバイオケミカル物質を検出することに関係する。その文書は、複数のレセプタクル、抵抗を与えるためのセンサ、機構及びコントローラを含む、複数の与えられた標本のそれぞれのバイオケミカルアッセイを作るためのシステムを提供する。各レセプタクルは、標本を有し、常磁性の粒子(PMP)を結合するための表面を含む。磁場によりバイアスされるとき、巨大な磁気抵抗効果によりPMPの存在がセンサの抵抗に影響を与える。前述の機構は、個別の抵抗を与えるセンサに対する作業近傍(working proximity)に、各個別の表面を配置する。コントローラは、各個別の抵抗のしるし(indicia)を記録するための前述の機構を制御する。
【0009】
図1は、国際公開第WO 00/26669号に基づく、システム300の標本ディスペンサ/デキャンタ116の一部とPMP検出器124の一部との断面図を示す。図1において、標本ディスペンサ/デキャンタ116のアーム310は、標本キャリア103のレセプタクル107内へピペット312及び314を提供する。ピペット314は、PMP除去のためピペット314内に磁場を確立するコイル316を含む。レセプタクル107は、その内側底部表面306に接触する液体標本302を含む。ピペット314は、ピペット314内に主に磁場を持つ磁気トラップ317を含む。磁気トラップ317からの磁束を底部表面306、特に領域338から遠ざけておくことにより、PMPの動きと結合との干渉が減少される。領域338は、レセプタクル102の下に示されるように、レセプタクル103の下に配置されるセンサの感知領域336に対応する。感知領域336は、約1ミリメータx約1ミリメータの表面308上の平面寸法を持ち、約10ミクロンの距離「h」分標本へ広がる。
【0010】
標本キャリア102は標本トレイ104に配置される。標本トレイ104は、複数の標本キャリア102及び103の機械的保護、識別、準備、格納、処理及び廃棄を容易にする。それぞれのストリップ部分が、垂直挿入と標本トレイ104からの垂直除去とを容易にし、標本トレイ104に対する所定距離で各レセプタクル101の基礎105を配置することを容易にする。基礎105は、0.5 mmから1 mmの間の厚み「b」を持つことができる。標本キャリア102及びトレイ104は、各標本を特定する機械的又は電気的特徴、例えば、方向限定及び/又は患者識別子の機械読み取り可能なしるし、レセプタクルシリアル番号、日付、試験シーケンス番号などを含むことができる。トレイ104は、標本キャリア102及び103の上部への便利な液体アクセスを提供し、標本キャリア102及び103の下部を通る便利な電磁アクセスを提供する。標本トレイ104は、PMP検出器124の回路基板330に対して、矢印340で概略的に示される大気圧の力(pressurized atmospheric force)により位置が保持される。標本キャリア102は、内側底部表面308に接触する液体標本304を含むレセプタクル101を含む。センサ332は、回路基板330の上部表面に固定される一方、磁石334は、回路基板330の底部表面に固定される。回路基板330は、標本トレイ104、標本キャリア102及びレセプタクル101の垂直な動きに対して動かないよう保持される。力340は、標本304及びレセプタクル101に対してセンサ332の上部表面から所定距離「d」で表面308に位置するよう動作する。国際公開第WO 00/26669号の様々な側面によれば、センサ332が、単一のPMPの検出確率が50%である距離として、本書において規定されるPMPの存在を感知する領域を示す。例えば、センサ332は、感知領域336内に存在することができる1つ又は複数のPMPの存在を感知する。感知領域336は、センサ332から、センサ332とレセプタクル101との間の隙間(もしあれば)を超えて、レセプタクル101の下部を通り、上部表面308の上に広がる。ある実施形態において、領域336における内部表面308とセンサ332の上部333との間の距離(距離「g」として図示される)は、検出の間、範囲0から約50ミクロンとして設置され維持される。センサ332は、検出の間、上部表面308の領域336の距離「h」が範囲2から20μm、好ましくは約10μmを示すようデザインされ動作される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述されたシステムの不都合点は、そのシステムが0から数十μmの間の大きな距離h及びgと、0.5 mmから1 mmの間の大きな底部厚みbとを有する点である。更に、回路基板の底部に固定された磁石と、好ましくはすべてのGMRセンサの下にある螺旋として形成されるコイルとにより、磁場は適用される。従って、そのようにして、面外磁場(out-of-plane)が適用されると結論付けられることができる。更に、100 Hzから300 Hzの間の低周波で測定が行われる。これらの大きな距離、面外磁場及び低測定周波数が原因で、国際公開第WO 00/26669号のシステムは、粗悪又は低調な検出感度を示すことになる。
【0012】
本発明の目的は、材料を深く、つまり1マイクロメータから300マイクロメータの範囲までプローブすることができ、磁気粒子(magnetic particle)を検出するのに最適であり、かつ、にもかかわらず安価であるセンサを提供することである。従って、センサは化学又は生物分子診断に最適である、又は高い感度を備える生物サンプル分析(例えば、pmol/L及びそれ以下の範囲の濃度の蛋白質)に最適である。高い生物感度に対する目的は、高い磁気ラベル検出感度に対する目的に関連付けられる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的は、本発明による方法及びデバイスにより達成される。本発明は、センサバイスに関し、センサ表面に対して比較的近傍において磁気ビーズの存在を避けるため、このセンサ表面で排除領域を有する。センサデバイスは、高深度又はバルク感度を示す。本発明によるセンサデバイスは、従来技術のセンサデバイスより高い信号対ノイズ比で、磁気ラベル又は磁気粒子の検出を可能にする。
【0014】
本発明の第1の側面において、センサデバイスは、標本液体、つまり、ガスだけでなく液体における磁気粒子の検出と、固体環境における磁気粒子の検出とのため提供される。そのデバイスは:
− 少なくとも1つの磁場又は電場生成手段と、
− 少なくとも1つの磁気センサ要素とを有し、その少なくとも1つのセンサ要素は感知層を有しており、
そのセンサデバイスは、その磁気センサ要素の近傍における磁気粒子の存在を排除するため、少なくとも1つの磁気センサ要素の感知層と磁気粒子との間に排除ゾーンを具備し、その排除ゾーンは、1から300μmの間、好ましくは1から200μmの間、更に好ましくは1から100μmの間の厚みを持つ。
【0015】
ある実施形態において、排除ゾーンは、センサチップの層として、つまりセンサ要素とセンサチップの表面との間の「カバー層」として、又は、別の実施形態においては、センサチップの表面に固定される、例えば、接着される個別のスペーサ層として形成されることができる。
【0016】
本発明の別の実施形態において、排除ゾーンの機能は、磁気粒子若しくはビーズが貼り付くことができない(do not stick)ゾーン、磁気粒子若しくはビーズが除去されることができないゾーン、又は磁気粒子若しくはビーズが機械的な力が原因で入ることができないゾーンを持つことにより実現されることができる。
【0017】
本発明によるセンサの利点は、ターゲット分子又は検出されるべき他の物質をセンサ要素の近傍から排除することにより高深度感度を示すことである。
【0018】
センサデバイスは、1つの磁場又は電場生成手段と、互いに隣接して配置される1つの磁気センサ要素とを有することができる。磁気センサ要素は、例えば、GMR、TMR又はAMRセンサ要素といった磁気抵抗センサ要素とすることができる。磁場又は電場生成手段は、第1の幅を持ち、磁気センサ要素は、第2の幅を持つことができる。第1及び第2の幅は、第1の幅に対する第2の幅の比が1より小さくなるようにされることができる。電流ワイヤ幅に対する磁気センサ要素幅の比を変化させることにより、センサデバイスの結果として生じる感度が、特定の用途に対して必要な感度に基づき決定されることができる。
【0019】
本発明の別の実施形態において、磁場又は電場生成器は、同じz位置における磁気センサ要素の各側に配置されることができる。
【0020】
本発明の追加的な実施形態において、複数の磁場又は電場生成器手段、及び磁気抵抗センサ要素といった磁気センサ要素が、互いに隣接して交互に配置されることができる。電流ワイヤといった複数の磁場又は電場生成器手段、及びGMRセンサ要素といった磁気センサ要素を適用することにより、センサの深度プロービング範囲が更に増加されることができる。
【0021】
ある実施形態において、センサデバイスは更に、スペーサとセンサデバイスの上部表面との間に、少なくとも1つの結合手段を有することができる。結合手段は、フリップチップ技術を介してセンサチップの上部表面に接続されることができる。この結合手段は、外部接続に対するガルバナック、磁気、電気及び/又はRF結合として機能することができる。
【0022】
更に別の実施形態において、センサデバイスは更に:
− 少なくとも1つの多孔性媒体であって、各多孔性媒体が、試薬又は生物捕捉表面を有し、少なくとも1つの多孔性媒体が、センサデバイスの排除ゾーンと一体化される、多孔性媒体と、
− 少なくとも1つの多孔性媒体に対して標本液体を提供する標本液体供給源とを有する。
【0023】
センサデバイスは、第1の試薬又は捕捉層を有する第1の多孔性媒体と、第2の試薬又は捕捉層を有する第2の多孔性媒体とを有することができ、その第1及び第2の試薬は互いに異なる。そのようにして、本発明によるセンサは、同時に異なるターゲット分子の決定又は検出をするのに使用されることができる。
【0024】
少なくとも1つの磁場生成手段は、電流ワイヤといったオンチップ磁場生成手段又は外部コイルとすることができる。
【0025】
本発明は更に、本発明によるセンサデバイスのアレイと、生物又は化学分子診断及び生物標本分析における本発明のセンサデバイスの使用とを提供する。
【0026】
本発明の追加的な側面において、少なくとも1つの磁気粒子の存在を検出する方法が提供される。その方法は:
− 磁気粒子又はビーズを備える標本液体を提供するステップと、
− 標本液体に接触するセンサデバイスであって、
−少なくとも1つの磁場又は電場生成手段と、
−少なくとも1つの磁気センサ要素であって、その少なくとも1つの磁気センサ要素が上部表面を持つ磁気センサ要素とを有するセンサデバイスを提供するステップと、
−磁場又は電場を適用するステップとを有し、
少なくとも1つの磁気センサ要素の直接の近傍(direct vicinity)における磁気粒子の存在が、厚さが1から300μmの間、好ましくは1から200μmの間、更に好ましくは1から100μmの間の排除ゾーンを備えるセンサデバイスを提供することにより回避される。排除ゾーンを与えることは、センサ表面の上部にスペーサを提供することにより行われることができる。
【0027】
本発明による方法は、従来技術の方法より高深度感度を示す。
【0028】
本発明の方法は、生物又は化学分子診断及び生物標本分析において使用されることができる。
【0029】
本分野においては、デバイスに関する一定の改善、変化及び革新が存在するが、本概念は、従来の実践から出発し、結果としてより効率的で信頼性のあるデバイスを本質として提供することを含む、実質的に新規で斬新な改善を表すものと信じられる。
【0030】
本発明のこれら及び他の特性、特徴並びに利点は、例示を介して本発明の原則を説明する対応する図面と共に、以下の詳細な説明より明らかとなるであろう。この説明は、例示のためだけに与えられ、本発明の範囲を限定するものではない。以下に述べられる参照図は、添付された図面を参照する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
異なる図面において、同じ参照番号は、同じ又は類似する要素を参照するものである。
【0032】
本発明は、特定の実施形態に関して、特定の図面を参照して説明されることになるが、本発明はそれに限定されず、本発明は特許請求の範囲に記載される通りである。特許請求の範囲における任意の参照符号は、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。説明される図面は概略的にのみ記載され、限定するものではない。図面において、要素の中にはそのサイズが誇張される場合や、実際の大きさに合わせて描かれない場合があるが、それは説明目的のためである。単語「comprising(有する)」が明細書及び特許請求の範囲で使用されるが、それは、他の構成要素又はステップの存在を排除するものではない。単一の名詞を参照するのに、「a」、「an」又は「the」といった不定冠詞又は定冠詞が使用されるが、これは、特に何か他の記載がなければ、その名詞の複数性を排除するものではない。
【0033】
更に、明細書及び特許請求の範囲における第1、第2、第3等の用語は、同様な要素間を区別するのに使用されるのであり、連続的又は時間上の(chronological)順番を必ずしも述べるものではない。そのように使用される用語は、適切な環境下において入れ替え可能であり、本書で述べられる本発明の実施形態は、本書で説明又は図示されるシーケンスとは別のシーケンスで動作することができることは理解されたい。
【0034】
更に、明細書及び特許請求の範囲において、上部(top)、下部(bottom)、上(over)、下(under)といった用語は、説明目的のために使用されるのであり、必ずしも相対的な位置を述べるものではない。そのように使用される用語は、適切な環境下において入れ替え可能であり、本書で述べられる本発明の実施形態は、本書で説明又は図示される方向とは別の方向で動作することができることは理解されたい。
【0035】
本発明は、高い検出感度で物質を深くまで(1マイクロメータから数ミリメータの範囲で)プローブできる、安価で堅牢な磁気センサデバイス、例えば磁気抵抗センサデバイスを提供する。
【0036】
磁気センサは、標本液体における検体を検出するバイオセンサとすることができるが、本発明はまた、他の化学、生化学、又は生物学的センサに対して適用することができる。例としては、例えば、表面上に生体細胞又は組織を備えるセンサとすることができる。それは、高次元の深度感度を必要とする。なぜなら、生体細胞は、数マイクロメータからミリメータまでの間の直径を持つからである。
【0037】
すでに上述されたように、従来技術の磁気抵抗バイオセンサの多くは、側面フローデバイス又はフロースルーチップといった高比表面積バイオセンサにおける用途に対して十分な深度感度を持っていない。これは、距離と共に磁場が減少するので、これらの磁気抵抗バイオチップ30が、表面32(図3参照)に近いビーズ(bead)又は磁気ナノ粒子31に対して最も感度がよいからである。更に、表面反応信号が、バルク信号を妨害する(減少させる)。この現象は、図2に示されるバイオセンサに関する励起方法を用いて説明されることになるが、しかしながら、面内感度(in-plane sensitivity)を持つすべての磁場センサに適用可能である。結合された励起方法は、3ステッププロセスとして考えられることができる。電流ワイヤ33における電流が磁場36を生成する。磁場は例えば超常磁性ビーズ31を磁化する。超常磁性ビーズはGMRセンサ要素34のアクティブ層において面内磁場要素38を生成する。各連続する処理ステップにおいて磁場要素を計算することにより、GMRセンサ信号が決定される。
【0038】
図2において、座標系が導入されるが、それは、センサデバイス30がxy平面に配置される場合、GMRセンサ要素34が磁場のx成分を本質的に検出することを示すように導入される。つまり、x方向は、センサ要素34の感知方向である。本発明によるGMRセンサ要素34の感知x方向は、図2における矢印35により示される。センサ要素34はz方向又はセンサデバイス30の平面に垂直な方向において全く感度がないので、図2の垂直方向において、電流ワイヤ33を通る電流によりもたらされる磁場36は、センサ要素34により部分的にのみ検出される。磁気ナノ粒子又はビーズ31は、電流ワイヤ33の近傍にあり、それは、図2におけるフィールド線37により示される磁気モーメントを発達させる。すると、磁気モーメントは、センサ要素34の位置で面内磁場要素38を持つ双極性漂遊磁界を生成する。従って、ナノ粒子31は、矢印35(図2)により示されるセンサ要素34の感知x方向における磁場36を偏向させる。センサ要素34の感知x方向にある磁場のx成分は、センサ要素34により検出され、磁気ナノ粒子31の数と、電流ワイヤ33を流れる電流とに依存する。
【0039】
以下、信号とノイズとを決定する要素が議論されることになる。信号は、磁気粒子31の磁気モーメント(従って、粒子の大きさ、磁化率、適用される磁場に依存する)、磁気粒子31の濃度(concentration)又は数、センサ30の感度(単位磁場あたりの抵抗の変化)及びセンサ30を流れるセンス電流(sense-current)に比例する。白色ノイズスペクトラムの場合、センサ30のノイズは、ゼロ磁場GMR抵抗、検出バンド幅(平均時間に逆比例する)及び温度に比例する。
【0040】
簡単化のため、及び本発明のいくつかの実施形態を比較する目的で、以下の値が仮定されることになる:
−粒子が直径130 nmで、ビーズあたりの磁化率がχ = 7.6 10-21m3である。
−GMRセンサ要素の長さが、GMRセンサの幅である3μmよりずっと長い100μm(y方向において)に等しく、センサ要素の長さ/幅比が少なくとも10である。
−GMRセンサ要素34がいくつかの薄いフィルムの積層(stack)からなる。本発明において、磁気的に感応する層がz = 40 nmに位置する。
−センサ感度がSMGR = 0.005Ωm/Aであり、それはA/mあたりのΩ、つまりΩm/Aで表される磁場強度による抵抗変化である。
−GMRセンサ要素のゼロ磁場抵抗が560Ωに等しい。
−GMRセンサにおけるセンス電流が1 mAに等しい。
−磁場生成ワイヤを流れる電流IWIREが10 mAに等しい。
−高い励起周波数が原因で、GMRセンサ要素34の1/fノイズが無視できる。その結果、ノイズがGMRセンサ要素の温度抵抗ノイズにより与えられる。平均時間0.5秒が想定される。従って、560 Ωのセンサ抵抗と室温とを用いて、ノイズレベルが(4kbTRB)1/2 = 3nVと仮定される。
−ビーズの体積密度が1 bead/μm3に等しい。
【0041】
これらの値は、例示としてのみ意味を持ち、従って、本発明を限定するものではないことに留意されたい。
【0042】
上記の値を用いて、本発明による実施形態(以下参照)に対してセンサ信号が計算されることになる。その計算は次のように行われることができる。第1のステップは、磁場生成手段により生成された磁場を計算することである。GMRセンサの物質の相対透磁性による磁場の変動は無視されることができ、そこでμr=1が想定される。第2のステップは、ビーズ31あたりの磁化率を用いて、y軸に沿って位置(x、z)で粒子又はビーズ31の行の磁気双極性モーメントを決定することである。磁気センサ要素34の長さは、その幅よりずっと長い;従って、センサストリップの端での磁場の変動は、無視されることができる。第3のステップにおいて、GMRセンサ要素34の感応層での平均面内磁場強度から生じるGMR信号が計算されることができる。第4のステップにおいて、x軸に沿った積分(integration)が行われる。そのようなものとして、粒子31のxyシートから派生する信号がz-位置の関数として得られる。第5のステップにおいて、z軸に沿った積分又は総和(summation)が行われる。そのようなものとして、粒子31のボリュームから派生するバルク信号UGMR,bulkが得られる。
【0043】
計算されたノイズと計算された信号とを用いて、1に等しい信号対ノイズ比(SNR)に対応することになるナノ粒子31の体積密度が推定されることができる。簡単化のために、SNR = 1に対応する濃度は、検出限界と呼ばれる。これは、任意に選択されるレベルである。なぜなら、それは例えば、センス電流、適用される磁場、又は磁気ナノ粒子のサイズ若しくは磁気モーメントを増加することにより容易に改善されることができるからである。にもかかわらず、本発明の異なる実施形態によれば、計算された値が、センサの性能を比較するのに使用される。
【0044】
例えば、捕捉分子の濃度、高比表面積物質の場合での間隙サイズ、結合(binding)及び結合解除(unbinding)の会合定数及び解離定数、流量パラメタ(混合、ずれ流動)、培養時間、ストリンジェンシーステップ(stringency step)などの追加的な要素が考慮されるとき、生物検出限界が、センサのラベル検出限界に直接関連付けられることに留意されたい。
【0045】
上記パラメタを用いると、図2に示されるセンサに対して、GMR電圧はUGMR,bulk = -0.33μVに等しい。すると、SNR = 1に対する体積密度として規定されるボリューム検出限界は、dbulk = 6.5 10-3 beads/μm3に等しい。
【0046】
電流ワイヤ33における最大許容電流密度は、エレクトロマイグレーションにより制限され、それは、長時間動作のために安全な値として100 nm x 100 nm断面積あたり1 mAに等しいことに留意されたい。例えば、ワイヤ幅が3μmに等しく、ワイヤ厚みが0.35μmに等しい図2の場合には、長時間のエレクトロマイグレーション限界がワイヤ33における最大電流105 mAを与える。これは、検出限界が上述の推定より低い係数11となりうることを意味する。使い捨てバイオセンサの場合のように長時間動作が必要とされないとき、電流は更に増加され、従って検出限界が減少されることができる点に留意されたい。抵抗電流は、電流損失と温度上昇とをもたらす点に留意されたい。特定のアッセイ及び特定の物質に対して、例えば、蛋白質の変性(de-naturing)を避けるため温度変化は抑制される必要がある。これは、許容電流の大きさ、平均時間の長さ及びアッセイの間を測定する間の時間間隔に制限を課すことができる。アッセイの端点において、生物物質が変性することが許容されることができ、それは、電流限界を緩和し、磁気ラベルの非常に敏感な端点測定を可能いにすることになる。
【0047】
図3は、1 bead/μm3体積密度で、均一に配分される超常磁性ビーズのxyシートのz位置の関数として、つまり図2のセンサデバイス30の場合における、シートとセンサ要素34の表面との間の距離の関数として、GMR信号又はGMR電圧を示すものである。シートは、1 bead/μm2の密度でナノ粒子31を有し、連続するシートは互いに1μm間隔が開けられる(図示省略されている)。図3において、1.65μmでゼロクロッシングが生じる(矢印Cで表される)。この図は更に、センサデバイス30の表面32(図3における領域Aで表される)に近いビーズ又はナノ粒子31((矢印で表される)z ≦ 1.65 μm)を起源とする表面信号が正である一方、バルク(図3における領域Bで表される)におけるビーズ31(z ≧ 1.65 μm)からの応答が負値となることを示す。センサは、曲線下の面積を示す深度感度と呼ばれるビーズ31のボリュームに応答するので、(正の)表面信号が深度感度を減少させることになる。これが、センサ表面32に近いビーズ31の効果が除去されるべき第1の理由である。更に、表面信号(領域A)が深度信号又はバルク信号(領域B)よりずっと大きいが、それが、表面32に近いビーズ31の効果を除去する第2の理由である。更に、図2に説明されるようなセンサの深度プロービング範囲はz ≦ 10μmに制限され、それは実際のバルク測定には余りにも小さすぎる。
【0048】
従って、本発明は、例えば血液、組織、細胞培養のような液体標本又は複雑な混合物(complex mixture)における検体を検出するための磁気センサデバイス40と、表面における相対近傍における磁気ビーズを除去することにより、最適化されたバルク又は深度感度での検出法とを提供する。本発明のアイデアは、センサ表面からビーズ又は磁気粒子を除去することである。そうすることにより、ビーズ又は磁気粒子は、等号化された(equal-signed)信号貢献(signal contribution)とバルクにおける粒子の濃度を備える総信号等級尺度(total signal magnitude scale)とを与える。実際、表面からの信号貢献が最小化され、そのことが、バルク濃度の観点からの測定信号の解釈を容易にする。ビーズとセンサ要素との間の距離が大きくなると、センサはますます「見る」ことになるが、信号は益々弱くなる。従って、センサ要素34とビーズ31との間の距離は、あまり大きくはなることができないし、あまり小さくなることもできない。好ましくは、距離は1μmから300μmの間である。それは更に、コスト効率性のため、ターゲットの損失を避けるためなどから、排除ゾーンから試薬及び/又は生体物質を除くことが有利な場合があることに留意されたい。
【0049】
図4に示される本発明による第1の実施形態によれば、本発明による第1の磁気センサデバイス(40)が説明される。本発明の本実施形態による磁気センサデバイス40は、少なくとも1つの磁場又は電場手段41と少なくとも1つの磁気センサ要素42とを有する。本実施形態の説明において、磁場生成手段41は例えば電流ワイヤのようなオンチップ磁場生成手段である。従って、この実施形態において、磁場生成手段41は更に、電流ワイヤ41として参照されることになる。しかしながら、これは本発明を限定するものではない。一般的に磁場生成手段41は例えば外部磁場生成手段又はオンチップ磁場生成手段であり、例えば、電流ワイヤ、電磁石、永久磁石又は外部コイルとすることができる。本発明は、電磁場生成手段が使用される場合にも適用されることができる。磁気センサ要素42は、例えば薄膜磁気センサ、例えば磁気抵抗センサ、ホールセンサ、巨大磁気インピーダンスセンサなどとすることができる。磁気抵抗センサの場合、センサ要素42は、例えばGMR、TMR又はAMRセンサ要素とすることができ、例えば長く狭いストリップジオメトリを持つことができる。本実施形態の説明において、磁気センサデバイス40はGMRセンサ要素を有するものとして説明されることになる。従って、更なる説明においては、磁気センサ要素42は、GMRセンサ要素42として参照されることになる。しかしながら、これは本発明を限定するものではなく、当業者であれば、GMRセンサ要素42に対する記述において説明される原理は、他の磁気抵抗センサ要素を有するセンサ又は他の薄膜磁気センサタイプにも適用されることができる点を理解されたい。
【0050】
第1の実施形態によるセンサデバイス40は、従って、例えば、磁場生成手段としての電流ワイヤ41と、GMRセンサ要素42とを有する。電流ワイヤ41は、与えられた本実施例において、0.35μmの厚み(z方向)と、3μmの幅(x方向)とを持つ。本実施形態において、GMRセンサ要素42の幅(x方向)は3μmである。電流ワイヤ41とGMRセンサ要素42との間の距離(x方向)は、与えられた例において3μmであるが、電流ワイヤ距離に対するセンサ要素が深度反応(depth response)を変化させることになるので、他の任意の適切なサイズを持つことができる。電流ワイヤ41とセンサ要素42との間の距離を変化させることにより、異なる特定の用途に対して必要な深度感度が実現されることができる。
【0051】
電流ワイヤ41とGMRセンサ要素42とを有するセンサデバイス40の上述された部分は、センサチップ43として以下の説明において参照されることになる。
【0052】
粒子がセンサにあまり近づきすぎることを適切に防ぐため、磁気センサデバイス40は更に排除ゾーン44を有する。この実施形態において、排除ゾーン44は、2つの部分を有することができる。つまり、(i)本発明ではz = 40 nmとすることができるセンサ要素42の磁気的に感知可能な層とセンサチップ43の表面45との間の「カバー層」44a及び(ii)センサチップ43の表面45の上部のスペーサ44bを有することができる。従って、排除ゾーン44はGMRセンサ要素42の上に位置する。
【0053】
スペーサ44bは、好ましくは、センサチップ43に一体化され、センサチップ43の層として、又はセンサチップの表面45に固定される、例えばラミネート加工又は接着される個別のスペーサ層44bとして形成される。また、スペーサ44bは、例えば、プリンティング、スパッタリング、蒸着、ディップコーティング又はスピンコーティングといった当業者により知られたいずれかの適切な従来の沈殿技術により沈殿されることができる。排除ゾーン44は、1から300μmの間の厚み、好ましくは1から200μmの間、もっと好ましくは1から100μmの間の厚みを持つことができる。z寸法(図4において矢印47で示される)は、センサ要素42の下部から測定される。排除ゾーン44もまた、センサ要素42の下部から規定される。従って、厳密に言えば、排除ゾーン44の厚みは、スペーサ44bの厚み、「カバー層」44aの厚み及び通常10 nmとすることができるその感知層の上のセンサ要素42の厚みの合計に等しい。しかしながら、説明の簡単化のために、追加的な説明において、排除ゾーン44は、「カバー層」44aとスペーサ44bとを有するものとして参照されることになる。しかしながら、その感知層の上のセンサ要素42の厚みはまた、排除ゾーン44の厚みが議論されるとき含まれる点に留意されたい。
【0054】
スペーサ44bは、センサチップ43の表面45の直接の近傍における磁気粒子又はビーズ46の存在を避ける。そのようにして、GMRセンサ要素42の上部表面の近傍におけるビーズの46の存在がまた回避される。他の実施形態において、GMRセンサ要素42の上部表面の近傍におけるビーズ46の存在は、センサ要素42とセンサチップ43の表面45との間の「カバー層」44aの厚みを増加させることにより同様に回避されることができる。スペーサ44bは好ましくは非磁気物資から形成されることができ、例えば、プラスチック物質を有することができる。スペーサ44bは、センサチップ43の表面45に機械的に結合されることができる箔物質を有することもできる。また、箔物質はセンサチップ43の表面45に向かって圧縮されることができ、その物質とセンサ表面45との間には隙間があってよい。
【0055】
図4に示される磁気センサデバイス40に対して、GMR電圧はUGMR,bulk = -1.61μVであり、この手法における検出限界がdlimit,bulk = 1.4 10-3 beads/μm3となることをもたらす。つまり、図2に関して説明されたセンサデバイスより低い係数4.6をもたらす。
【0056】
本発明による磁気センサデバイス40の利点は、側面フローバイオチップの商業提供者の製品ラインにそのセンサデバイス40を非常に組み込み易い点にある。なぜなら既存の側面フロー製品は、機械的な目的のため、例えば機械的な支持部材として、プラスチック箔でラミネート加工されたニトロセルロース・ストリップを既に持つからである。
【0057】
本発明の第2の実施形態において、別の可能な磁気センサデバイス40が説明され、図5に示される。本実施形態におけるセンサデバイス40は、第1の実施形態に説明されるセンサデバイス40と同じ構成を持つが、ここでは、センサチップ43が、磁場生成手段として幅50μmの電流ワイヤ41を有することができる。それは第1の実施形態における電流ワイヤ41より約17倍広い。GMRセンサ要素42は、それでも幅3μmである。電流ワイヤ41とGMRセンサ要素42との間の距離もまだ3μmである。第2の実施形態によるセンサデバイス40は、更に、第2の実施形態において例えば、「カバー層」44aとスペーサ44bとを有することができる排除ゾーン44を有する。この実施形態においてスペーサ44bは、厚み5μmを持つことができ、センサチップ43の上部表面45に配置される。
【0058】
排除ゾーン44は、GMRセンサ要素42の感知層の近傍におけるビーズ又は磁気粒子46の存在を回避する。本実施形態における排除ゾーン44は、第1の実施形態に関してよりも厚くすることができる。しかしながら、それでも1から300μmの範囲、好ましくは1から200μmの間、もっと好ましくは1から100μmの間に含まれることができる。厚いスペーサ44bは、ビーズのシート46とセンサ要素42との間の距離を増加させ、従って、更に焦点深度をも増加させる。シートビーズ46とセンサ要素42との間の距離は、図4及び図5における矢印47により示される。
【0059】
図6は、第2の実施形態による磁気センサデバイス40で達成可能な増加された深度プロービング範囲を説明する。その図は、ビーズ46とセンサ要素42との間の距離として規定される、ビーズ46のシートのz位置の関数として、1 bead/μm3体積密度でのGMR電圧を示す。図5において、ビーズ46のシートのz位置は矢印47により示される。以前に示されたのと同じパラメタ値を仮定すれば、GMR電圧はUGMR,bulk = -0.74μVであり、それは、上記に与えられるようなパラメータを用いて計算される、この手法におけるボリューム検出限界がdlimit,bulk = 2.9 10-3 beads/μm3であることをもたらす。この実施形態において、電流密度は第1の実施形態よりずっと低い。なぜなら、同じ電流がより広い電流ワイヤ41を通って流されるからである。50μm幅の電流ワイヤ41が原因で、エレクトロマイグレーションにより制限される最大電流は、少なくとも1.75Aに増加されることができる。従って、検出限界は、上述の推定に比べて係数175分改善することになる。つまり、検出限界は、1.65 10-5 beads/μm3となる。
【0060】
本発明の第3の実施形態によれば、センサチップ43は、第1及び第2の磁場生成手段、例えば第1及び第2のコンダクタ41a、41bと、GMRセンサ要素42のようなMRセンサ要素とを有することができ、各コンダクタ41a、41bは、磁気抵抗センサ要素42(図7)の平面に関して、同じ位置にある磁気抵抗センサ要素42の反対側に隣接して位置されることができる。両方の電流ワイヤ41a、bは、幅50μmを持つことができ、及び各電流ワイヤ41a、bと磁気抵抗センサ要素42との間の距離が、本実施形態では、例えば3μmとすることができる。この実施形態において、排除ゾーン44は、「カバー層」44aと、センサ要素42の表面の上部に配置され、本実施形態においては通常1から300μm、例えば7μmの範囲にあるスペーサ44bとを有する。矢印47は、ビーズ又は磁気粒子46と、センサ要素42の下部との間の距離を示す。
【0061】
すでに上述されたように、センサデバイス40がxy平面に配置されると、GMRセンサ要素42が特定の方向における磁場の成分、例えば磁場のx成分を本質的に検出する。つまり、x方向は、センサ要素42の感度方向である。本実施形態によれば、こうして磁場は、組み込まれた電流ワイヤ41a、bにおける電流の流れを用いて、磁気粒子又はビーズ46に適用される。好ましくは、電流ワイヤ41a、bは、それらが、磁気粒子又はビーズ46が存在するようなボリュームにおける磁場を生成するような態様で配置されることができる。例えば、図7に示されるように、正のy方向における電流I_w1及びI_w2を電流ワイヤ41a、41bにそれぞれ適用することにより、正のx方向において合成(resultant)磁場が本質的に生成される。そうして電流I_w1及びI_w2を選択することにより、磁気粒子又はビーズ46の数に関する情報(和信号)が取得されることができる。図8は、GMR信号(和信号)をビーズ46のx位置の関数として示し、50の位置、センサチップ43の表面45(z方向)から6μmにおいて、I__w1 = I_w2 = 10 mAである。和信号は、磁気粒子46の総数及びその磁化(直径、透磁率)に対する尺度である。
【0062】
ワイヤ41a、41bにおける電流方向の1つを反転させることにより、磁場は、センサデバイス40の右と左とで反対のx磁場を備える非対称になる。電流I_w1及びI_w2をそのように選択することにより、磁気粒子又はビーズ46の位置及び不均一性に関する情報が取得されることができる。その場合において、一様な表面密度又は体積密度に対してGMR電圧はゼロに等しいことを留意されたい。
【0063】
図9において、図7のセンサデバイス40の深度プロービング範囲が表される。その図は、矢印47で示されるz位置の関数として1 bead/μm3体積密度でのGMR電圧を示す。GMR電圧は、UGMR,bulk = -0.27μVに等しい。これは、この手法におけるボリューム検出限界をdlimit,bulk = 8 10-3beads/μm3とすることをもたらす。従って、第2の実施形態に関して、2つの電流ワイヤ41a、41bを磁場生成手段として適用することにより、深度プロービング範囲が更に拡張されることができる。zビーズの関数としての信号貢献は図6と比べると図9においてはそれほど急速には減少しない。この理由は、図7のセンサデバイス40の場合、2倍の電流を使用することを犠牲にして、より多くのボリュームにおいて磁場が生成される点にある。更に、本実施形態における深度プロービング感度は、第2の実施形態と比べてより一定であり、それは利点となる。
【0064】
本発明の追加的な実施形態において、更に別のセンサ構成が説明される。本発明による磁気センサデバイス40は、電流ワイヤ41a‐fのような磁場生成手段と、GMRセンサ42a‐eのようなMRセンサ要素とを交互に複数有することができる(図10参照)。本実施形態において、電流ワイヤ41a‐fは、すべて同じ形状及び大きさを持つことができ、幅は3μmである。しかしながら、他の実施形態において、電流ワイヤ41a‐fは異なる形状及び大きさを持つことができる。各電流ワイヤ41a‐fと連続するGMRセンサ要素42a‐eとの間の距離は例えば3μmとすることができる。しかしながら、他の実施形態において、各電流ワイヤ41a‐fと連続するGMRセンサ要素42a‐eとの間の距離は同じである必要はない。
【0065】
複数の電流ワイヤ41a‐fとGMRセンサ要素42a‐fとを適用することにより、センサデバイス40の深度プロービング範囲は更に以前の実施形態に関して増加されることができる。排除ゾーン44は、センサ要素42の上部に位置され、その排除ゾーンは、「カバー層」44aとスペーサ44bとを有する。排除ゾーン44の厚みは、1から300μmの間、好ましくは1から200μmの間、更に好ましくは1から100μmの間とすることができる。理想的には排除ゾーン44は、すべての磁気粒子又はビーズ46が同じ符号の信号に貢献するよう決定されることができる。
【0066】
この実施形態及び以前のすべての実施形態に対して、電流及びGMR信号は、並列だけでなく、時分割で動作されることができる点に留意されたい。
【0067】
本発明の第5の実施形態において、排除ゾーン44は、「カバー層」44aと、厚みが1から300μm、例えば10μmの範囲内の厚みのスペーサ44bとの形式とすることができる。本実施形態において、スペーサ44bは、センサチップ43の上部表面45に直接与えられないが、外部接続に対するガルバニック、磁気、電気、光学及び/又はRF結合のための少なくとも1つの結合手段48を有することができる(図11参照)。例えば、磁気結合の場合にインダクタを形成するため、RF結合の場合にアンテナを形成するため、及び容量結合の場合に導電表面(コンデンサの1つのプレート)を形成するため、導電物質がスペーサ44bの上部に溶着されることができる。更に、光学結合の場合、結合手段48は、フォトセンシティブ(フォトダイオード)、フォトエミッティング(LED、ポリLED)又はフォトアクティブ(例えばLCD、エレクトロクロミック)物質を有することができる。更に、光学/RF結合手段のような組み合わせが可能である。
【0068】
結合手段48は、例えば、ガルバニック接続49を用いた、例えばフリップチップ技術を介してセンサチップ43の表面45に接続されることができる。センサチップ43は、以前の実施形態で説明されたセンサチップ43とすることができる。図11において、センサデバイス40の検出ボリュームは、参照番号50により示される。
【0069】
結合手段48は、磁気抵抗センサデバイス40と読み出しシステム(図示省略)との間の電気信号(データ及び電力)を交換するのに使用されることができる。必要とされる電子機器は、センサチップ43に含まれることができる。結合手段48と、センサチップ43及び読み出しステーション(図示省略)で必要とされる電子機器とは、当業者にはよく知られており、それらは、電力と、センサデバイス40及び読み出しステーション(図示省略)間での双方向データとを転送することができる。例えば、無線タグ用のMIFARE送信標準規格(誘導型、13.56MHz)及び日立ミューチップ(RF、2.45GHz)がある。本発明によれば、結合手段48は、センサチップ43自身に組み込まれることができる点に留意されたい。例えば、光学又はRF結合手段とすることができる。しかしながら、必要とされる電子機器は、センサチップ43上に与えられる代わりに、個別のチップ、つまり図12に示されるように電子チップ51上に与えられることもできる。電子チップ51は、結合手段48とスペーサ44bとが与えられるセンサチップ43の表面45の反対にある、センサチップ43の表面52に接続されることができる。これは、例えばフリップチップ技術により行われることができる。
【0070】
本発明の第6の技術において、側面フローバイオセンサシステム60が与えられる(図13)。この図において、側面フローアッセイの例が与えられる。システム60は、解析されるターゲット分子を有する試験液体を有することができる標本液体供給源61と、ラベル又は磁気粒子46を具備する抗体のような試薬又は捕捉層を有し、例えばニトロセルロースのような多孔性媒体62と、本発明によるセンサデバイス40とを有する。試験液体は、毛細血管力により駆動され、多孔性媒体62を通って動く。試薬が、試験液体中に溶け、続いて、ターゲット分子に結合し、それからそれは感応領域で捕捉され、固定化されたビーズ63を形成する。結合複合体、つまり、第1のラベル付けされた検体に結合されたターゲット分子が、サンドイッチ構造、つまり表面−抗体−ターゲット−抗体−ラベル構造により固定表面上で捕捉される。高比表面積物質、例えば、多孔性媒体62及びセンサデバイス40は共に、単一使用使い捨て製品用に、接近して一体化されることができる、又は再利用のため分離可能である。必要とされる電子機器は、図13に示されるシステム60の場合同様、センサチップ43上に組み込まれることができる。しかしながら、必要とされる電子機器は、図12に関して述べられたのと同じように、個別のチップ上にあるとすることもできる。側面フローバイオセンサシステム60の構築は、図13に示されるように、高比表面積結合領域を備える非常に便利なマイクロ流体光学デザインを与える。大きな深度感度を備えるセンサデバイス40がこの構造を可能にする。
【0071】
図14は、側面フローバイオセンサシステム60において使用されることができる単一のセンサモジュール70の可能な構成の上面図を示す。センサモジュール70は、それぞれ第1及び第2の電流ワイヤ41a及び41b、電流ワイヤ41a、41bの間に位置するGMRセンサ要素42、電流ワイヤ41a、bとGMRセンサ要素42との両方を越えて広がり試薬を有する多孔性媒体62を有し、(図14において図示省略された)スペーサが、一方で多孔性媒体62の間に存在し、他方で電流ワイヤ41a、41bとGMRセンサ要素42との間に存在する。
【0072】
側面フローバイオセンサシステム60において使用されることができる単一のセンサモジュール70の別の可能な構成が図15に説明される。この構成は、第1の電流ワイヤ41aの上部に、第1の試薬を有する第1の多孔性媒体62aが与えられ、第2の電流ワイヤ41bの上部に、捕捉層を有する第2の多孔性媒体62bが与えられ、一方で電流ワイヤ41aと41bとの間に、他方で多孔性媒体62aとbとの間に排除ゾーン44(図15において図示省略)が存在する点で、図14とは異なる。電流ワイヤ41aと41bとの間に、GMRセンサ要素42が、第1又は第2の多孔性媒体62a、62bのいずれかにより覆われない状態で配置される。本発明は、それぞれが異なる捕捉層を有する2つの多孔性媒体に限定されない点を理解されたい。この構成は、標本液体における異なる種類のターゲット分子を同時に分析する可能性を提供する。
【0073】
図14又は図15のいずれかによる多数のセンサモジュール70は、図16に示されるように単一のセンサチップ43上に配置されることができる。センサチップ43は、増幅、電流生成、変調などに必要とされる電子機器(図示省略)と共に、センサモジュール70を有することができる。また、データを通信し、読み出しステーションから電力を収集するため、オンチップアンテナ64がセンサチップ43に組み込まれることができる。複数の相互接続されたチップもまた可能であることは明らかであろう。
【0074】
本発明の追加的な実施形態において、以前の実施形態におけるオンチップ磁場生成手段41の代わりに、外部磁場が外部磁場生成手段65により適用されることができる。本実施形態において、外部磁場生成手段65は、2つの外部コイル65a及び65bを有することができる(図17(断面図)及び図18(上面図)参照)。磁場生成手段としての2つの外部コイル65a及び65bの使用は、説明目的にすぎず、本発明を限定するものではない。センサチップ43は、2つの外部コイル65a、65bの間に配置されることができ、以前の実施形態と比べると、ここでは、例えば磁気抵抗センサ要素(例えば、GMR、TMR又はAMRセンサ要素)といった少なくとも1つの磁気センサ要素42のみを有することができる。センサチップ43の上部表面には、スペーサ44bが与えられる。排除ゾーン44の上部、従ってスペーサ44bの上部には、例えば、抗体を有するニトロセルロース(紙)といった多孔性媒体62が与えられる。磁気励起場(magnetic excitation field)が外部コイル65a、bを介して適用される。この第7の実施形態によるセンサ構成の断面図、概略図が図17に示される。そのジオメトリは、以下を満たすよう選択される:
− コイル場が原因によるセンサデバイス40での信号を最小化するよう、GMRセンサ要素42の感応層66における、コイル場による平面内(in-plane)磁化が最小化される。そして、
− 高比表面積結合領域のバルクにおける磁場が主に水平を向く。
【0075】
本発明によるセンサデバイス40の利点は、それが、高深度感度を備える測定に対して、高比表面積バイオセンサにおける感度のよい磁気検出を可能にする点にある。本発明によるセンサデバイス40は、中電流(moderate current)、短い平均時間(1秒未満)、及びサブマイクロメータビーズに対して、μm3あたり10-3 beadsのオーダーの感度を示す。更に、マルチプレキシング又はマルチターゲット検出を可能にしつつ、センサデバイス40は正確であり、扱い易く、安価である。信号対ノイズ比の更なる増加のために、磁気操作が:
− アッセイの速度を増加するため、
− 磁気ストリンジェンシー(stringency)を適用するため、
− ラベル回転分光法を適用するため
に使用されることができる。
【0076】
本発明によるセンサデバイス40は、チップの外側にある磁場生成器65a、65bを用いると共に、オンチップ電流ワイヤ41を介して適用される磁場で適用されることができる。更に、本発明による磁気センサデバイス40は、免疫性及び毛細血管クロマトグラフィ試験ストリップに一体化されることができる。それ故に、既存のマーケットにおける製品を改良することができ、それは、磁気センシング技術にとって魅力的な市場参入を提供することができる。
【0077】
更に、磁気センサデバイス40のジオメトリを変化させることにより、つまり、電流ワイヤ幅に対するGMR幅の比を1より小さくする、または言い換えると、電流ワイヤ41の幅がGMRセンサ要素42の幅より大きくなるよう電流ワイヤ41を選択することにより、大きな深度プロービング範囲が本発明によるセンサデバイス40で達成される。電流ワイヤ幅に対するGMR幅の比は、好ましくは1より小さく、より好ましくは0.5より小さい。その比は、GMRセンサ要素42による磁場の感知検出を可能にするよう、あまりに小さすぎるべきではない。この電流ワイヤ幅に対するGMR幅の比は、深度感度範囲を最適化するようなされることができる。理想的には、その比は、ある深度範囲において均一な感度が達成されるようなものである。
【0078】
本発明によるセンサデバイス40は、高周波数での磁気励起のため一体化されたワイヤ41を用いる。その一体化されたワイヤ41は、主に平面内磁場を生成する。これは、従来技術において使用される平面外磁場及び低測定周波数と対称的である。更に、本発明によるセンサデバイス40において、粒子対センサ要素距離が好ましくは1μmから300μmの間であり、より好ましくは1から200μmの間であり、もっと好ましくは1から100μmの間になることが、排除ゾーン44の提供により適用される。上述の要素の組み合わせが、比較的粒子対センサ距離が大きくても、高い検出感度をもたらす。
【0079】
磁場が生成される領域のボリュームが磁気粒子又はビーズ46が存在する領域によくマッチするとき、そのシステムは最小のインダクタンスを持ち、それは、高周波数及び比較的高い磁場での低出力動作にとって有益である。
【0080】
本発明の方法は、様々なデバイス構造及び診断用途に適用されることができる。そのデバイスは、例えば、単一のセンサ、又はバイオセンサのアレイ、又はいわゆるバイオチップとすることができる。センサデバイス40は、使い捨てデバイスの一部とすることができ、又は再利用型読み出し機の一部とすることができる。例えば、センサデバイス40は、液体チャネル、容器、試薬などを含む、カートリッジ又は研究所内デバイス(lab-in-a-device)の一部とするか、又はそれと共に使用されることができる。センサデバイス40はまた、使い捨てピペットチップ(disposable pipette tip)又はアフィニティカラムの一部とする、又はそれと共に使用されることができる。センサデバイス40は、例えば、ウェルプレート又はマイクロ層プレートといった、ウェル若しくは複数のウェル内に、又は、ウェル若しくは複数のウェルへ適用されることもできる。
【0081】
更に、センサデバイス40は分子アッセイのために使用されることができるが、マイクロ組織、細胞、細胞培養、生体又は死体物質、細胞片、組織などの検出のため(又は、それらにおける成分若しくはプロセスの検出のため)に使用されることもできる。結合アッセイ、結合解除アッセイ、サンドイッチアッセイ、競合アッセイ、移動アッセイ、比較混成アッセイ、クラスタアッセイ、磁気回転アッセイ、拡散アッセイなどの複数のアッセイのタイプが使用されることができる。
【0082】
本発明によるセンサデバイス40に関して、物質と共に、好ましい実施形態、特定の構造及び構成が、本書において議論されてきたが、形式及び詳細における様々な変化又は変形が、本発明の範囲及び精神から逸脱することなくなされることができることを理解されたい。例えば、本発明は、センサ表面45から、ビーズ又は磁気粒子46を除去する排除ゾーン44を形成する、GMRセンサ要素42の上のスペーサ44bを提供することを用いて説明されてきた。本発明による別の実施形態において、排除ゾーン44の一部は、センサデバイス40と磁気粒子46との間に配置される流体媒体(ガス、液体、真空)を伴う隙間とすることができる。本発明による別の実施形態において、排除ゾーン44は、センサ基板においてより深いところに磁気センサ要素42を埋めることによっても提供されることができる。更に、本発明による別の実施形態において、排除ゾーン44の機能は、磁気粒子又はビーズ46が貼り付かない場所、磁気粒子又はビーズ46が除去されることができる場所、又は磁気粒子又はビーズ46が機械的な力が原因で入ることができない場所であるゾーンを持つことにより実現されることができる。一例において、磁気粒子又はビーズ46の排除ゾーン44からの排除は、磁気粒子又はビーズ46へ機械的な力を加えることにより、従って、測定の間、センサ表面45の近傍における磁気粒子又はビーズ46の存在を回避又は除去することにより、実現され、又は部分的に実現されることができる。機械的な力は、例えば、磁場又は磁場グラジエントによる、磁気派生又は電気派生とするものを持つ。また、力は、流体の流れ、圧力グラジエント、毛細血管力、せん断力などにより生成されることができる。別の例において、磁気粒子又はビーズ46は、捕捉又は結合層の不存在が原因で、センサ表面につかない。すると、センサ付近の結合フリー領域又はボリュームが、排除ゾーン44を実現する。磁気粒子46は流体の流れ又は他の力により排除ゾーン44から除去されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】従来技術による、標本ディスペンサ/デキャンタ及びPMP検出器の一部の断面を示す図である。
【図2】磁気抵抗センサを示す図である。
【図3】図2の磁気抵抗センサ用のセンサ表面に対する、粒子密度1 bead/μm2で磁気粒子のシートの距離の関数としてGMR電圧を図式的に説明する図である。
【図4】本発明の一実施形態による磁気抵抗センサ構成を説明する図である。
【図5】本発明の第2の実施形態による磁気抵抗センサ構成を説明する図である。
【図6】図5の磁気抵抗センサ用のセンサ表面に対する、磁気粒子の距離の関数として、GMR電圧を図式的に示す図である。
【図7】本発明の第3の実施形態による磁気抵抗センサ構成を説明する図である。
【図8】図7の磁気抵抗センサ用のビーズの位置の関数としてGMR電圧を図式的に示す図である。
【図9】図7の磁気抵抗センサ用のセンサ表面に対する磁気粒子の距離の関数として、GMR電圧を図式的に示す図である。
【図10】本発明の第4の実施形態による磁気抵抗センサ構成を示す図である。
【図11】本発明の第5の実施形態による磁気抵抗センサ構成を示す図である。
【図12】本発明の第5の実施形態による磁気抵抗センサ構成を示す図である。
【図13】本発明の第6の実施形態による磁気抵抗センサ構成を示す図である。
【図14】本発明の第6の実施形態による磁気抵抗センサ構成を示す図である。
【図15】本発明の第6の実施形態による磁気抵抗センサ構成を示す図である。
【図16】本発明の第6の実施形態による磁気抵抗センサ構成を示す図である。
【図17】本発明の第7の実施形態による磁気抵抗センサ構成を示す図である。
【図18】本発明の第7の実施形態による磁気抵抗センサ構成を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの磁気粒子の存在を検出するためのセンサデバイスであって、
−少なくとも1つの磁場又は電場生成手段と、
−感知層を持つ少なくとも1つの磁気センサ要素とを有し、
前記センサデバイスが、前記少なくとも1つの磁気センサ要素の近傍における前記少なくとも1つの磁気粒子の存在を排除するため、前記少なくとも1つの磁気センサ要素の前記感知層と、前記少なくとも1つの磁気粒子との間に排除ゾーンを具備し、前記排除ゾーンは、1から300μmの間の厚みを持つ、センサデバイス。
【請求項2】
前記センサデバイスが、センサ表面を有し、前記排除ゾーンは、前記センサ表面の上部に与えられるスペーサを有する、請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項3】
前記センサデバイスが、互いに隣接して配置される、1つの磁場又は電場生成手段と1つの磁気センサ要素とを有する、請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項4】
前記磁場又は電場生成手段が、第1の幅を持ち、前記磁気センサ要素は、第2の幅を持ち、前記第1及び第2の幅が、該第1の幅に対する該第2の幅の比が1より小さいようになされる、請求項3に記載のセンサデバイス。
【請求項5】
磁場又は電場生成手段が、前記磁気センサ要素の各側に配置される、請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項6】
複数の磁場又は電場生成手段と磁気センサ要素とが、互いに隣接して交互に配置される、請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項7】
前記センサデバイスが、前記スペーサと前記センサデバイスの前記センサ表面との間に少なくとも1つの結合手段を更に有する、請求項2に記載のセンサデバイス。
【請求項8】
前記結合手段が、フリップチップ技術を介して前記センサ表面に接続される、請求項7に記載のセンサデバイス。
【請求項9】
前記センサデバイスが、
−少なくとも1つの多孔性媒体であって、各多孔性媒体が試薬又は捕捉表面を有し、前記少なくとも1つの多孔性媒体が、前記センサデバイスの前記排除ゾーンに一体化される、多孔性媒体と、
−前記少なくとも1つの多孔性媒体に標本液体を供給する標本液体供給源とを更に有する、請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項10】
前記センサデバイスが、
−少なくとも1つの多孔性媒体であって、各多孔性媒体が試薬又は捕捉表面を有し、前記少なくとも1つの多孔性媒体が、前記センサデバイスの前記排除ゾーンに一体化される、多孔性媒体と、
−前記多孔性媒体に標本液体を供給する標本液体供給源とを更に有する、請求項7に記載のセンサデバイス。
【請求項11】
前記センサデバイスが、第1の試薬又は捕捉層を有する第1の多孔性媒体と、第2の試薬又は捕捉層を有する第2の多孔性媒体とを有し、前記第1及び第2の試薬又は捕捉層は互いに異なる、請求項9に記載のセンサデバイス。
【請求項12】
前記センサデバイスが、第1の試薬又は捕捉層を有する第1の多孔性媒体と、第2の試薬又は捕捉層を有する第2の多孔性媒体とを有し、前記第1及び第2の試薬又は捕捉層は互いに異なる、請求項10に記載のセンサデバイス。
【請求項13】
前記少なくとも1つの磁場生成手段が、オンチップ磁場生成手段である、請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項14】
前記オンチップ磁場生成手段が、電流ワイヤである、請求項13に記載のセンサデバイス。
【請求項15】
前記少なくとも1つの磁場生成手段が、外部コイルである、請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項16】
前記磁気センサ要素が、磁気抵抗センサ要素である、請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項17】
請求項1に記載のセンサデバイスを複数有するセンサデバイスのアレイ。
【請求項18】
請求項9に記載のセンサデバイスを複数有するセンサデバイスのアレイ。
【請求項19】
請求項10に記載のセンサデバイスを複数有するセンサデバイスのアレイ。
【請求項20】
化学若しくは生物分子診断又は生物標本分析における、請求項1に記載のセンサデバイスの使用。
【請求項21】
化学若しくは生物分子診断又は生物標本分析における、請求項9に記載のセンサデバイスの使用。
【請求項22】
化学若しくは生物分子診断又は生物標本分析における、請求項10に記載のセンサデバイスの使用。
【請求項23】
少なくとも1つの磁気粒子の存在を検出するための方法において、
−少なくとも1つの磁気粒子を備える標本液体を与えるステップと、
−前記標本液体に接触するセンサデバイスであって、
−少なくとも1つの磁場又は電場生成手段と、
−上部表面を持つ少なくとも1つの磁気センサ要素とを有するセンサデバイスを与えるステップと、
−電場又は磁場を適用するステップとを有し、
前記少なくとも1つの磁気センサ要素の近傍における少なくとも1つの磁気粒子の存在が、1から300μmの間の厚みを持つ排除ゾーンを備える前記センサデバイスを与えることにより回避される、方法。
【請求項24】
前記センサデバイスが、センサ表面を持ち、前記排除ゾーンを備える前記センサデバイスを提供するステップは、前記センサ表面の上部にスペーサを与えることにより行われる、請求項23に記載の方法。
【請求項1】
少なくとも1つの磁気粒子の存在を検出するためのセンサデバイスであって、
−少なくとも1つの磁場又は電場生成手段と、
−感知層を持つ少なくとも1つの磁気センサ要素とを有し、
前記センサデバイスが、前記少なくとも1つの磁気センサ要素の近傍における前記少なくとも1つの磁気粒子の存在を排除するため、前記少なくとも1つの磁気センサ要素の前記感知層と、前記少なくとも1つの磁気粒子との間に排除ゾーンを具備し、前記排除ゾーンは、1から300μmの間の厚みを持つ、センサデバイス。
【請求項2】
前記センサデバイスが、センサ表面を有し、前記排除ゾーンは、前記センサ表面の上部に与えられるスペーサを有する、請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項3】
前記センサデバイスが、互いに隣接して配置される、1つの磁場又は電場生成手段と1つの磁気センサ要素とを有する、請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項4】
前記磁場又は電場生成手段が、第1の幅を持ち、前記磁気センサ要素は、第2の幅を持ち、前記第1及び第2の幅が、該第1の幅に対する該第2の幅の比が1より小さいようになされる、請求項3に記載のセンサデバイス。
【請求項5】
磁場又は電場生成手段が、前記磁気センサ要素の各側に配置される、請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項6】
複数の磁場又は電場生成手段と磁気センサ要素とが、互いに隣接して交互に配置される、請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項7】
前記センサデバイスが、前記スペーサと前記センサデバイスの前記センサ表面との間に少なくとも1つの結合手段を更に有する、請求項2に記載のセンサデバイス。
【請求項8】
前記結合手段が、フリップチップ技術を介して前記センサ表面に接続される、請求項7に記載のセンサデバイス。
【請求項9】
前記センサデバイスが、
−少なくとも1つの多孔性媒体であって、各多孔性媒体が試薬又は捕捉表面を有し、前記少なくとも1つの多孔性媒体が、前記センサデバイスの前記排除ゾーンに一体化される、多孔性媒体と、
−前記少なくとも1つの多孔性媒体に標本液体を供給する標本液体供給源とを更に有する、請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項10】
前記センサデバイスが、
−少なくとも1つの多孔性媒体であって、各多孔性媒体が試薬又は捕捉表面を有し、前記少なくとも1つの多孔性媒体が、前記センサデバイスの前記排除ゾーンに一体化される、多孔性媒体と、
−前記多孔性媒体に標本液体を供給する標本液体供給源とを更に有する、請求項7に記載のセンサデバイス。
【請求項11】
前記センサデバイスが、第1の試薬又は捕捉層を有する第1の多孔性媒体と、第2の試薬又は捕捉層を有する第2の多孔性媒体とを有し、前記第1及び第2の試薬又は捕捉層は互いに異なる、請求項9に記載のセンサデバイス。
【請求項12】
前記センサデバイスが、第1の試薬又は捕捉層を有する第1の多孔性媒体と、第2の試薬又は捕捉層を有する第2の多孔性媒体とを有し、前記第1及び第2の試薬又は捕捉層は互いに異なる、請求項10に記載のセンサデバイス。
【請求項13】
前記少なくとも1つの磁場生成手段が、オンチップ磁場生成手段である、請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項14】
前記オンチップ磁場生成手段が、電流ワイヤである、請求項13に記載のセンサデバイス。
【請求項15】
前記少なくとも1つの磁場生成手段が、外部コイルである、請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項16】
前記磁気センサ要素が、磁気抵抗センサ要素である、請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項17】
請求項1に記載のセンサデバイスを複数有するセンサデバイスのアレイ。
【請求項18】
請求項9に記載のセンサデバイスを複数有するセンサデバイスのアレイ。
【請求項19】
請求項10に記載のセンサデバイスを複数有するセンサデバイスのアレイ。
【請求項20】
化学若しくは生物分子診断又は生物標本分析における、請求項1に記載のセンサデバイスの使用。
【請求項21】
化学若しくは生物分子診断又は生物標本分析における、請求項9に記載のセンサデバイスの使用。
【請求項22】
化学若しくは生物分子診断又は生物標本分析における、請求項10に記載のセンサデバイスの使用。
【請求項23】
少なくとも1つの磁気粒子の存在を検出するための方法において、
−少なくとも1つの磁気粒子を備える標本液体を与えるステップと、
−前記標本液体に接触するセンサデバイスであって、
−少なくとも1つの磁場又は電場生成手段と、
−上部表面を持つ少なくとも1つの磁気センサ要素とを有するセンサデバイスを与えるステップと、
−電場又は磁場を適用するステップとを有し、
前記少なくとも1つの磁気センサ要素の近傍における少なくとも1つの磁気粒子の存在が、1から300μmの間の厚みを持つ排除ゾーンを備える前記センサデバイスを与えることにより回避される、方法。
【請求項24】
前記センサデバイスが、センサ表面を持ち、前記排除ゾーンを備える前記センサデバイスを提供するステップは、前記センサ表面の上部にスペーサを与えることにより行われる、請求項23に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2008−500548(P2008−500548A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517557(P2007−517557)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【国際出願番号】PCT/IB2005/051588
【国際公開番号】WO2005/116661
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【国際出願番号】PCT/IB2005/051588
【国際公開番号】WO2005/116661
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
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