説明

高所作業車の安全帯係止装置

【課題】作業者が安全帯の係止具を容易に係脱できるとともに、係止状態にある係止具の露出を防止可能な高所作業車の安全帯係止装置を提供する。
【解決手段】作業台40に搭乗した作業者の体に巻き付けられるベルトにロープを介してフックが取付けられる。フック先端の鉤部を開放、閉鎖する開閉キャップを備える安全帯係止装置50を、作業台40に配設されたフックブラケット51と、フックブラケット51に固設されてフックの鉤部を係脱可能な掛止部材55と、フックを挿通可能な切欠孔を有してフックの係止状態を覆うように作業台40に取付けられるカバー部材80とから構成して、フックが係脱するために、鉤部を切欠孔を通してカバー部材80内に挿入し、開閉キャップがカバー部材80外方に位置する係脱位置と、掛止部材55に係止された状態で、フックの鉤部及び開閉キャップがカバー部材80により覆われる位置との間で移動自在となるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所作業車の作業台に搭乗した作業者が高所作業を安全に行うために、作業者の身体に装着した安全帯の係止具を係止させる安全帯係止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業車は、車体上に昇降装置(例えば、ブーム装置等)を介して作業台を備えており、昇降装置を作動させて作業台を所望の位置へ移動させるとともに、この作業台に搭乗した作業者により高所作業を行うことができる。このような高所作業車を使用して高所作業を行う場合には、作業者はいわゆる安全帯と称される身体保持装置を用いて身体を作業台に係留する。この安全帯は、作業者の胴体に巻付けられるベルトと、このベルトに一端が繋がれ他端にはフック(係止具)が設けられたロープとから構成されており、作業者が作業前にこのフックを作業台上に設けられた掛止金具に係止させておくことにより、作業者は安全に高所作業をすることができる。
【0003】
このような構成の安全帯では、作業者がフックを掛止金具へ掛け忘れた場合には安全帯本来の目的を達成することができない。そこで、作業台上にフックの係止状態を検知する安全帯検知装置を設けて、この安全帯検知装置にフックを係止せずに、フックの係止状態が検知されていないときには、昇降装置が作動できないように構成したり、高所作業車のエンジンの始動ができないような構成として、フックの係止を確実に促すことができるような手段が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−60197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業者搭乗用の作業台および安全帯のロープ等は絶縁材料により形成されていることから電気導通を絶縁しているが、上記フックおよび掛止金具は金属製で形成されており、作業台上で露出した状態でフックが掛止金具に係止されていると、誤って作業者がフックに触れることにより感電のおそれがある。また、このフック係止状態の露出を防止するため、係止状態にあるフックを覆うように絶縁カバーを取り付けることとすると、フック係脱の作業性が悪くなり、また、上記カバーの開閉スペースも必要になってしまうという問題があった。
【0005】
以上のような課題に鑑みて、本発明では、作業台に搭乗した作業者が、安全帯の係止具を容易に係脱できるとともに、係止状態にある係止具の露出を防止することが可能な高所作業車の安全帯係止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明に係る高所作業車の安全帯係止装置は、車体に昇降装置(例えば、実施形態におけるブーム30)を介して作業台が設けられた高所作業車に用いられて、作業台に搭乗した作業者の体に巻き付けられるベルト部材に綱状部材(例えば、実施形態におけるロープ92)を介して係止具(例えば、実施形態におけるフック93)が取り付けられ、係止具が、先端に鉤部と、この鉤部を開放、閉鎖する開閉キャップとを備えてなる安全帯の前記係止具を係止させる高所作業車の安全帯係止装置であって、作業台に配設され、係止具の鉤部を係脱可能な掛止手段と、係止具を挿通可能な切欠孔を有して掛止手段を覆うように作業台に取り付けられるカバー部材とから構成されて、切欠孔は、掛止手段に係止された係止具が、掛止手段に係止具を係脱するために、鉤部を切欠孔を通してカバー部材内に挿入し、開閉キャップがカバー部材外方に位置する係脱位置と、掛止手段に係止された状態で、係止具の少なくとも鉤部及び開閉キャップがカバー部材により覆われる作業位置との間で移動自在な形状となるように構成する。
【0007】
上記高所作業車の安全帯係止装置においては、掛止手段に設けられて掛止手段に係止具が係止され、かつ、係止具が作業位置に位置したことを検出する係止検出手段(例えば、実施形態における光電センサ70)と、係止検出手段により係止具が掛止手段に係止され、かつ、作業位置に位置したことを検出したときに、昇降装置の作動を許可する制御手段(例えば、実施形態におけるコントローラ72)とを備えるように構成されることが好ましい。
【0008】
さらに、掛止手段が、係止具を遊挿可能な開口部を有して作業台に配設されたブラケット(例えば、実施形態におけるフックブラケット51)と、このブラケットの開口部内に設けられて係止具を係止可能な掛止部材と、係止具を作業位置に位置させたときに、係止具が作業位置から移動することを規制するストッパー部材(例えば、実施形態における板バネ60および規制部材61)とから構成されることが好ましい。
【0009】
また、ストッパー部材が、一端部がブラケットの外側部から突出するように他端部がブラケットの外側部に取り付けられた揺動付勢部材(例えば、実施形態における板バネ60)と、ブラケットの開口部を覆うようにして揺動付勢部材の一端部に取り付けられて、揺動付勢部材の付勢力により開口部を開閉するように揺動する規制部材とから構成されて、ストッパー部材を外側に押し広げるように揺動させて、係止部を開口部に入出自在に構成されることが好ましい。
【0010】
さらに、カバー部材の切欠孔が、係止具より小幅に形成されて、少なくとも切欠孔の外周縁部が弾性部材から形成されているため、切欠孔を係止具より小幅に形成しても、弾性部材の弾性変形により、切欠孔が拡張自在に拡開して係止具を挿通可能に構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に関する高所作業車の安全帯係止装置によれば、カバー部材が掛止手段に係止状態にある安全帯の係止具を覆って露出させることがないので、係止具が電線や電柱等の障害物に接触することを防止でき、作業者の感電を防止することができる。また、作業者の邪魔になることはなく、係止具を掛止手段より容易に係止解除するのを防止(不安全作業の防止)でき、かつ、係止具の着脱する様子が地上から視認することができる。さらに、掛止手段に係止具を係止させた後、作業位置まで移動させないと昇降装置の作動が行えないので、安全帯の係止具を掛止手段へ確実に係止させることができる。そして、作業開始時には、カバー部材の切欠孔を通して係止具の係脱が容易にできるため作業性を損なうことはなく、係止具を掛止手段に係止させるためにカバー部材を開閉する必要もないため、カバー部材の開閉スペースを設ける必要もない。さらに、外部から振動を受けてもストッパー部材があるので、係止状態の係止具が不必要に揺動することはない。
【0012】
また、上記ストッパー部材を揺動付勢部材および規制部材から構成すると、係止具の係脱の際には係止具をフックブラケット開口部に入出自在になるように規制部材が一方に揺動するとともに、係止具が開口部に入出後は揺動付勢部材の付勢力により係止具を規制する位置に戻るよう規制部材が他方へ揺動されるため、ストッパー部材が係止具の係脱を妨げることがない。
【0013】
さらに、上記カバー部材の切欠孔の外周縁部を弾性部材から構成すると、切欠孔を係止具に対して小さく設けても、弾性部材の弾性変形により切欠孔が拡開自在に広がるため係止具を切欠孔から挿通できるとともに、カバー部材表面の開口を最小限にして安全性をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。図2は本発明の一実施形態に係る安全帯係止装置を備えた高所作業車1を示す。本発明に係る安全帯係止装置の説明をする前に、先ずこの高所作業車1の構成について説明する。
【0015】
高所作業車1は、図2に示すように、走行用車輪11,11,…を備えて運転キャビン12から走行運転が可能なトラック式の走行体10と、走行体10上に設けられた旋回台20と、この旋回台20から上方に延びて設けられた支柱21の上部にフートピン22を介して基端部が支持されたブーム(伸縮ブーム)30と、このブーム30の先端部に取り付けられた作業者搭乗用の作業台40とを有して構成される。
【0016】
旋回台20は走行体10の後部に上下軸まわり360度回動自在に取り付けられている。走行体10の内部には旋回モータ(油圧モータ)23が設けられており、この旋回モータ23を回転作動させることにより、図示しないギヤを介して旋回台20を水平旋回動させることができる。
【0017】
ブーム30は基端ブーム30a、中間ブーム30bおよび先端ブーム30cが入れ子式に構成されており、内部に設けられた伸縮シリンダ(油圧シリンダ)31の伸縮作動により各ブーム30a,30b,30cを相対的に移動させてブーム30全体を軸方向に伸縮動させることができる。また、基端ブーム30aと旋回台20の支柱21との間には起伏シリンダ(油圧シリンダ)24が跨設されており、この起伏シリンダ24を伸縮作動させることによりブーム30全体を上下面内で起伏動させることができる。
【0018】
先端ブーム30cの先端部にはブームヘッド32が取り付けられており、このブームヘッド32により垂直ポスト33の下端部が枢支されている。この垂直ポスト33はブーム30内に設けられた図示しないレベリング装置により、ブーム30の起伏角度によらず常時垂直姿勢が保持される構成となっている。
【0019】
作業台40はFRPにより箱形状に形成されて、外部に突出して設けられた作業台保持ブラケット41を介して垂直ポスト33の上端部に回動自在に取り付けられている。作業台保持ブラケット41の内部には首振りモータ(油圧モータ)42が設けられており、この首振りモータ42を回転作動させることにより、作業台40全体を垂直ポスト33まわりに首振り動(水平旋回動)させることができる。ここで、垂直ポスト33は上述のように常時垂直姿勢が保たれるため、結果として作業台40の床面はブーム30の起伏角度によらず常時水平に保持される。また、FRPは周知のものであり、合成樹脂に補強用のガラス繊維や炭素繊維が混入された電気絶縁性材料である。
【0020】
作業台40には、図3に示すように、操作装置48が備えられており、作業台40に搭乗した作業者OPは、この操作装置48からレバー類を操作することにより、起伏シリンダ24、伸縮シリンダ31、旋回モータ23および首振りモータ42の作動入力を行うことができる。このレバー類の操作により出力される作動入力信号はブーム30内を通る信号伝送腺(図示せず)を介して旋回台20上方に備えられたコントローラ72に入力され、このコントローラ72によるバルブ駆動制御を介して上記起伏シリンダ24、伸縮シリンダ31、旋回モータ23および首振りモータ42が油圧駆動される。
【0021】
このため作業者OPは、作業台40上からのレバー操作によりブーム30の起伏、伸縮、旋回動作と、作業台40の首振り動作とを行うことができ、自らの意思で所望の位置に移動して作業を行うことが可能である。なお、図2に示すように、走行体10の前後左右4箇所には車体10を持ち上げ支持可能なジャッキ15が設けられており、これらを下方に張り出して車体10を安定支持させておくことにより、車体10に作用する転倒モーメントが大きい場合でも転倒することなく作業を行うことができるようになっている。
【0022】
作業台40に搭乗した作業者OPには転落防止のため、図3に示すように、安全帯90
を身に付けることが必要となっている。この安全帯90は、作業者OPが自身に取り付けるベルト91と、一端部がベルト91に取り付けられたロープ92と、ロープ92の他端部に取り付けられたフック93とから構成される。このフック93は、先端に鉤部93aと、鉤部93aを閉鎖する開閉キャップ93bと、その回動を制御する安全キャップ93cとを有するものである。フック93を係止させるときは、開閉キャップ93bおよび安全キャップ93cを掌で同時に握ることにより、鉤部93aが開放して係止が可能となる。係止が済めば、掌を離すことにより、開閉キャップ93bおよび安全キャップ93cとも図示しないバネの弾力で鉤部93aが閉鎖された常態位置へと復帰するものである。
【0023】
作業者OPには作業台40に搭乗したときは必ずフック93を作業台40に設けられた後述する安全帯係止装置50の一部を構成する掛止部材55に引っ掛けて係止させることが求められている。これにより作業者OPは作業中に万一作業台40から転落した場合であっても、地上にまで落ちることはなく作業の安全性が確保される。ここでフック93は強度や磨耗等を考慮して金属製であることが好ましく、ロープ92は作業者OPの感電防止を考慮して電気絶縁性材料からなっていることが好ましい。
【0024】
次に、上記高所作業車1に備えられた安全帯係止装置について説明する。高所作業車1に備えられた安全帯係止装置50は、図1に示すように、作業台40の作業台ブラケット43に配設されたフックブラケット51、掛止部材55、左右一対の板バネ60、左右一対の規制部材61、光電センサ70およびカバー部材80から構成される。ここで図1は、作業者が複数(2人)搭乗しても、各作業者OPがそれぞれ身体に装着した安全帯90のフック93を安全帯係止装置50に係止可能なように、作業台40に左右一対に安全帯係止装置50を備えたものとして、説明の便宜上、図1には、左方側にはカバー部材80を取り付けた状態を示し、右方側はカバー部材80を取り付ける前の状態を示している。
【0025】
フックブラケット51は、図1および図4に示すように、L字状に折り曲げられた鋼板の一端に平板状の鋼板を溶接して略U字状に形成されることにより、作業者OPの身体に巻き付けられる安全帯90のフック93を遊挿可能な開口部51aを有して形成されている。このフックブラケット51の両側部にはそれぞれ、掛止部材55を挿通可能な貫通孔と、板バネ60をボルト75により取り付けるためのネジ孔と、光電センサ70から照射される光が通過するスリット孔54とが設けられている。なお、フックブラケット51はこの構造に限られず、一枚の鋼板を折り曲げて略U字状に形成してもよい。
【0026】
掛止部材55は、安全帯90のフック93を係脱可能なようにロッド状に形成されており、フックブラケット51の両側部にそれぞれ形成された貫通孔に挿通されて、溶接によりフックブラケット51に固設されている。
【0027】
板バネ60は弾性変形自在であり、一端部60aはフックブラケット55の外側部にボルト75により取り付けられて、他端部60bには規制部材61がボルト76により取り付けられている。板バネ60は他端部60bがフックブラケット51の外側部から突出した状態で、一端部60bがフックブラケット51の外側部に当接支持されるようにしてボルト75により取り付けられているため、板バネ60に生じる弾性力は一端部60aを中心として、他端部60bがフックブラケット51の外側部に対して左右に揺動可能となっている。
【0028】
規制部材61は、平面視において略L字状に屈曲してなり、一方部61aにはボルト76を挿通可能な貫通孔およびボルト76の頭部が収まるような座グリ孔が形成され、このボルト76を一方部61aの外側でナット79により螺合させて板バネ60に一方部61aが当接するようにして連結されている。そして、左右一対の規制部材61の他方部61bはフックブラケット51の開口部51aの前面でそれぞれが向き合うようにして、この左右一対の他方部61b間に安全帯90のフック93よりも小幅な隙間を生じるようにして位置している(以降の説明では、この位置を「規制位置」と呼ぶ)。また、この他方部61b間の隙間は、板バネ60の弾性変形により左右一対の規制部材61をそれぞれ外側へ揺動させて拡開可能となっているため、この隙間を安全帯90のフック93より小幅に設けても規制部材61はフック93が通過可能な位置に揺動することができる(以降の説明では、この位置を「揺動位置」と呼ぶ)。また、この他方部61bの内側角部はR面取り加工が施されており、安全帯90のフック93を左右一対の他方部61b間に無理なく通過させることができるようにされている。
【0029】
光電センサ70は、投光器70aと受光器70bとを備えており、この投光器70aおよび受光器70b間の光軸がフックブラケット51の一対のスリット孔54間を通過されるようにフックブラケット51の両側部にセンサ取付ブラケット71を介して取り付けられている。このため、投光器70aからの光(信号光)はフックブラケット51に設けられた一対のスリット孔54を介して、受光器70bに向けて照射されることとなる。一般に光電センサ70においては、一対のスリット孔54間に投光器70aから照射される信号光を遮る物体が入ると、信号光が遮られたことを受光器70bが検出してオン信号が出力され、信号光が遮られなくなって受光器70bで受光されるとオフ信号が出力される。
【0030】
フック93が掛止部材55に非係止にあるときは、光電センサ70の投光器70aから照射される信号光はフック93により遮られることなく受光器70bに受光されて、フック非係止状態にあることを検出して、車体10に備えられたコントローラ72にオフ信号を出力する。このオフ信号をコントローラ72が入力することにより、コントローラ72によるバルブ駆動制御の規制がされてブーム30の旋回、起伏および伸縮動などができなくなる。
【0031】
また、フック93が掛止部材55に係止されてフックブラケット51の開口部51aにあるときには、フック93が投光器70aから照射される信号光を遮ることにより、受光器70bが信号光を遮られたことを検出(フック係止状態を検出)して、車体10に備えられたコントローラ72にオン信号を出力する。このオン信号をコントローラ72が入力することにより、コントローラ72によるバルブ駆動制御の規制が解除されて、ブーム30の旋回、起伏および伸縮動などが可能となる。
【0032】
カバー部材80は箱形状をなし、図1に示すように、カバー本体部材81およびゴムカバー部材85から構成されて、フックブラケット51を覆うようにして、カバー本体部材81の第1正面部81aに形成された挿通穴にボルト77を通して、作業台ブラケット43のステー47のネジ孔に螺合させることにより、作業台ブラケット43に対して脱着可能に取り付けられている。
【0033】
カバー本体部材81はFRPから形成されており、第1正面部81aと、この第1正面部81aの上端からフックブラケット51の上面を覆うように屈曲してなる第1上面部81bと、第1正面部81aの左右端から屈曲してなる一対の第1側面部81cと、第1正面部81aの上部中央にて窪むようにして形成された凹部81dとから構成される。
また、カバー本体部材81には、ゴムカバー部材85を装着するための係合孔が、凹部81dから上方に延びて第1上面部81bへ屈曲するようにして設けられており、この係合孔にゴムカバー部材85を嵌め込んで装着できるようにされている。
【0034】
ゴムカバー部材85は弾性変形可能な材質のゴムから形成されており、上述のようにカバー本体部材81の係合孔内に装着されて、フックブラケット51の前面および上面を覆うようにしてカバー本体部材81の係合孔に装着される。ゴムカバー部材85は、カバー本体部材81の係合孔内において第1正面部81aの上端部中央に位置する第2正面部85aと、第2正面部85aの上端から屈曲してなる第2上面部85bと、第2正面部85aの下端から屈曲してなるテーパ部85cとから構成される。
【0035】
また、ゴムカバー部材85には、長手方向中心軸に沿って形成された切欠孔87がゴムカバー部材85の弾性変形により拡開可能に設けられており、この切欠孔87はテーパ部85cに形成されたスロット状の第1切欠孔87aと、第1切欠孔87の上端中央から上方に延びて第2上面部85b内にまで屈曲して延びる第2切欠孔87bとから構成されている。第2切欠孔87bは、カバー部材80表面の開口を小さくするためにフック93に対して小さく形成されているが、第1切欠孔87aは、フック93の係脱作業の際に係止位置の確認が容易なようにフック93に対して大きく形成されている。
【0036】
さらに、第2上面部85bに、第2切欠孔87bと垂直に交差するような補助切欠孔88をそれぞれ平行して一対に形成することにより、この補助切欠孔88が第2切欠孔87bの拡開をさらに大きくすることを可能として、カバー部材80内において安全帯90のフック93を係止させたときでも、フック93の一端に取り付けられて上方に延びたロープ92がこの第2切欠孔87bに挿通可能としている。
【0037】
本発明の一実施形態に係る安全帯係止装置50は上記の如く構成されるものであり、次に使用の態様について説明する。
【0038】
作業台40に搭乗した作業者OPは作業に入る前に、先ず、自身の胴体に安全帯90のベルト91を巻き付けて、フック93を安全帯係止装置50に係止させるべく、図5(A)に示すように、フック93を鉤部93a側からゴムカバー部材85の第1切欠孔87aに挿通させて、開閉キャップ93bおよび安全キャップ93cを押し込むように同時に握ることにより鉤部93aを開放させる。そして、図5(B)に示すように、フックブラケット51に固設された掛止部材55にフック93を係止させる(以降の説明では、この位置を「係脱位置P1」と呼ぶ)。このとき、第1切欠孔87aは上述のようにフック93の係脱作業に支障が出ないようにフック93より大きく形成されているため、作業者OPはこの第1切欠孔87aから容易に掛止部材55の位置を確認して係止することができる。
【0039】
次に、図5(C)に示すように、掛止部材55の係止部を中心として、フック93を上方に揺動させて、フック93を開閉キャップ93b側からゴムカバー部材85の第2切欠孔87bに挿通させる。このとき、第2切欠孔87bは、フック93から押圧されたゴムカバー部材85の弾性変形により拡開されるためフック93を容易に挿通させることができる。
【0040】
また、フック93を上方に揺動させるとフック93が左右一対の規制部材61間の隙間に入り込んで、規制位置にある一対の規制部材61それぞれを外側に向けて押圧する。このとき規制部材60に取り付けられた板バネ60は弾性変形することにより、規制部材61はそれぞれ外側に揺動されてこの規制部材61間の隙間が広がる。そして規制部材61が揺動位置へ揺動されるため、フック93がこの規制部材61間を通過することができることとなる。また、それぞれ外側に揺動された規制部材61は板バネ60の付勢力(換言すれば復元力)により内側に揺動されて、元の状態である規制位置に戻される。
【0041】
図5(D)に示すように、規制部材61間をフック93が通過してフックブラケット51の開口部51a内に入り込むと、フック93の一端に取り付けられたロープ92がゴムカバー部材85の第2上面部85b内の第2切欠孔87bまで達することとなる(以降の説明では、この位置を「作業位置P2」と呼ぶ)。このとき、第2切欠孔87bはロープ92から押圧されて、第2切欠孔87bは補助切欠孔88に沿って押し広げられるようにして拡開されるため、ロープ92を容易に挿通させることができる。
【0042】
さらに、フック93が掛止部材55に係止されフックブラケット51の開口部51a内に収容されると、板バネ60の付勢力により規制位置に戻された規制部材61がフック93を開口部51a内に留めるようフック93の動きを規制する。また、フックブラケット51の両側部に設けられた光電センサ70において、投光器70aから照射された信号光がフック93によって遮られることにより、受光器70bはフック93が作業位置P2にあることを検出してオン信号を出力する。そして、このオン信号によってコントローラ72によるバルブ駆動制御の規制が解除されることによりブーム30の旋回、起伏および伸縮動などが可能となり、作業者OPは高所作業を行うことができることとなる。
【0043】
このようにして、金属製のフック93を露出させることなく掛止部材55に係止させて、カバー部材80内に収容させることができるため、作業者が誤ってフック93に触れて感電することが防止される。そして、フック93をカバー部材80内に挿通するための切欠孔88をフック93に対して小さく形成しても、ゴムカバー部材85の弾性変形により拡開可能にフック93を挿通させることができるため、フック93の係脱の作業性を損なうことなくカバー部材80の開口を小さくして安全性を確保することができる。また、作業中に外部から振動等を受けてフック93が揺動されようとしても、規制部材61が規制位置にあるため、フック93をフックブラケット51の開口部51a内に留めることができる。なお、規制部材61は平面視において略L字状に形成されているが、これに限られるものではなく、平面視において略三角形状に形成されてもよい。
【0044】
反対に、フック93の係止を解除する場合には、作業位置P2にあるフック93をフックブラケット51の開口部51a内から規制部材61がそれぞれ外側へ揺動するように押圧して、一対の規制部材61間の隙間を通過させる。次に、フックブラケット51の開口部51a内から出たフック93の上部側を、第2切欠孔87bを押し広げるように通して、下方に揺動させてカバー部材80の外部へ出す。そして、係脱位置P1にあるフック93において、開閉キャップ93bおよび安全キャップ93cを同時に押し込むように握って、フック93と掛止部材55の係止を外すことによりフック93を第1切欠孔87aから抜き出すことができる。フック非係止状態を検出した光電センサ70は、オフ信号をコントローラ72に出力して、コントローラ72によるバルブ駆動制御の規制がされることによりブーム30の旋回、起伏および伸縮動などができなくなる。このように、フック非係止状態ではブーム30の作動が規制されるため、フック93の係止忘れを喚起することができ、転落の危険を防ぐことができる。
【0045】
また、ブーム30の作動を規制するとともに、車体10または作業台40に警報器を設けて警報が発せられるようにしてもよい。この警報器はスピーカ等により警報音を発するものでも、警告灯により光を発するものでもよく、パネル等により色や文字により警報を発するものでもよい。これによりフック93の係止忘れを聴覚的或いは視覚的にも注意を喚起することができ、安全性が一層向上する。
【0046】
さらに、上記実施形態におけるボルト75,76,77を電気絶縁性のボルト(例えば樹脂ボルト)として構成してもよい。
【0047】
また、上記実施形態においては高所作業車1のブーム30は長手方向に伸縮する直伸式のものであったが、これは屈伸式のもの等であってもよく、更には、作業台40の昇降装置は、上記ブーム30のように作業台40を3次元的に移動ができるものに限られず、シザース装置のように作業台の垂直昇降のみができるもの等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態に係る高所作業車の安全帯係止装置を示す斜視図である。
【図2】上記安全帯係止装置が適用される高所作業車の側面図である。
【図3】上記安全帯係止装置が適用される高所作業車の作業台の部分断面図である。
【図4】上記安全帯係止装置においてカバー部材を取り付け前の状態を示す斜視図である。
【図5】安全帯のフックが上記安全帯係止装置に収容されるまでの状態を示す側面図であり、(A)は上記安全帯係止装置にフックを係止させる直前の状態を示し、(B)は上記安全帯係止装置にフックを係止させて係脱位置にある状態を示し、(C)はフックを上記安全帯係止装置の規制部材間に挿通させる直前の状態を示し、(D)は上記安全帯係止装置にフックが収容されて作業位置にある状態を示す。
【符号の説明】
【0049】
1 高所作業車
30 ブーム(昇降装置)
40 作業台
43 作業台ブラケット
50 安全帯係止装置
51 フックブラケット
51a 開口部
55 掛止部材
60 板バネ(揺動付勢部材)
61 規制部材
70 光電センサ(係止検出手段)
72 コントローラ
80 カバー部材
81 カバー本体部材
85 ゴムカバー部材
87 切欠孔
90 安全帯
91 ベルト
92 ロープ(綱状部材)
93 フック(係止具)
93a 鉤部
93b 開閉キャップ
OP 作業者
P1 係脱位置
P2 作業位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に昇降装置を介して作業台が設けられた高所作業車に用いられて、前記作業台に搭乗した作業者の体に巻き付けられるベルト部材に綱状部材を介して係止具が取り付けられ、前記係止具が、先端に鉤部と、前記鉤部を開放、閉鎖する開閉キャップとを備えてなる安全帯の前記係止具を係止させる高所作業車の安全帯係止装置であって、
前記作業台に配設され、前記係止具の前記鉤部を係脱可能な掛止手段と、
前記係止具を挿通可能な切欠孔を有して前記掛止手段を覆うように前記作業台に取り付けられるカバー部材とから構成されて、
前記切欠孔は、前記掛止手段に係止された前記係止具が、前記掛止手段に前記係止具を係脱するために、前記鉤部を前記切欠孔を通して前記カバー部材内に挿入し、前記開閉キャップが前記カバー部材外方に位置する係脱位置と、前記掛止手段に係止された状態で、前記係止具の少なくとも前記鉤部及び前記開閉キャップが前記カバー部材により覆われる作業位置との間で移動自在な形状であることを特徴とする高所作業車の安全帯係止装置。
【請求項2】
前記掛止手段に設けられ、前記掛止手段に前記係止具が係止され、かつ、前記係止具が前記作業位置に位置したことを検出する係止検出手段と、
前記係止検出手段により、前記係止具が前記掛止手段に係止され、かつ、前記作業位置に位置したことを検出したときに、前記昇降装置の作動を許可する制御手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の高所作業車の安全帯係止装置。
【請求項3】
前記掛止手段が、
前記係止具を遊挿可能な開口部を有して、前記作業台に配設されたブラケットと、
前記ブラケットの前記開口部内に設けられて前記係止具を係止可能な掛止部材と、
前記係止具を前記作業位置に位置させたときに、前記係止具が前記作業位置から移動することを規制するストッパー部材とから構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の高所作業車の安全帯係止装置。
【請求項4】
前記ストッパー部材が、
一端部が前記ブラケットの外側部から突出するように他端部が前記ブラケットの外側部に取り付けられた揺動付勢部材と、
前記開口部を覆うようにして前記揺動付勢部材の前記一端部に取り付けられて、前記揺動付勢部材の付勢力により前記開口部を開閉するように揺動する規制部材とから構成されて、
前記ストッパー部材を外側に押し広げるように揺動させて、前記係止部を前記開口部に入出自在にしたことを特徴とする請求項3に記載の高所作業車の安全帯係止装置。
【請求項5】
前記カバー部材の前記切欠孔が、
前記係止具より小幅に形成されて、少なくとも前記切欠孔の外周縁部が弾性部材から形成されているため、前記切欠孔を前記係止具より小幅に形成しても、前記弾性部材の弾性変形により、前記切欠孔が拡張自在に拡開して前記係止具を挿通可能に構成されたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の高所作業車の安全帯係止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−297055(P2008−297055A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−143839(P2007−143839)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(000116644)株式会社アイチコーポレーション (168)
【出願人】(000141060)株式会社関電工 (115)
【Fターム(参考)】