説明

高所作業車

【課題】作業者が作業台へ乗降するときに車体上から転落するのを防止した高所作業車を提供する。
【解決手段】走行可能な車体2と、車体2上に旋回自在に設けられた旋回台4と、基端部が旋回台4に枢結されて起伏自在に設けられたブーム5と、ブーム5の先端部に設けられた作業台9とを備え、ブーム5が車体2上に倒伏された状態で格納されるように構成された高所作業車1において、ブーム5が車体2上に格納された状態で、作業者OPの作業台9への乗降経路RTがブーム5に沿った車体2上に設けられ、乗降経路RTに沿ってブーム5の基端部から先端部まで延びるガイドレール40がブーム5に取り付けられるとともに、作業者OPが作業台9へ乗降するときに車体2上から転落するのを防止する転落防止具(安全帯)90の先端の係止部93を係脱可能に係止させる安全器81が、ガイドレール40にスライド移動自在に取り付け可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所作業車に関し、さらに詳しくは、ブームが車体上に倒伏された状態で格
納される高所作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業車には、走行可能な車体と、車体上に旋回自在に設けられた旋回台と、基端部
が旋回台に枢結されて起伏自在に設けられたブームと、ブームの先端部に設けられた作業
台とを備えた構成のものがあり、場所移動等の非作業時にはブームが車体上に倒伏された
状態で格納されるようになっている。ブームを格納する際、例えば、ブームが車体前方に
向けて倒伏されて、ブームの先端に位置する作業台が運転キャブの前方側へ延出するよう
に保持される。
【0003】
そして、このように格納されたブームの先端の作業台に地面側から作業者が乗り込む場
合、及びこの作業台から作業者が地面側へ降りる場合には、作業者はブームの側方に設け
られた車体上の乗降経路を通って移動するようになっている。このような車体上の移動は
転落のおそれがあることから、作業者の乗降経路に並置されているブーム側に手摺を設け
、この手摺を掴むことで安全な乗降を確保する構成が提案されている(例えば、特許文献
1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-1404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、作業者が手摺を掴まずに車体上を移動すると転落する可能性がある。そ
のため、作業者が車体上から転落するのをより確実に防止するための方策が求められてい
た。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、作業者が作業台へ乗降すると
きに車体上から転落するのを防止した高所作業車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的達成のため、本発明では、走行可能な車体と、前記車体上に旋回自在に
設けられた旋回台と、基端部が前記旋回台に枢結されて起伏自在に設けられたブームと、
前記ブームの先端部に設けられた作業台とを備え、前記ブームが前記車体上に倒伏された
状態で格納されるように構成された高所作業車において、前記ブームが前記車体上に格納
された状態で、作業者の前記作業台への乗降経路が前記ブームに沿った前記車体上に設け
られ、前記乗降経路に沿って前記ブームの基端部から先端部まで延びるガイドレールが前
記ブームに取り付けられるとともに、前記作業者が前記作業台へ乗降するときに前記車体
上から転落するのを防止する転落防止具の先端の係止部を係脱可能に係止させる安全器が
、前記ガイドレールにスライド移動自在に取り付け可能となっている。
【0008】
また、上述の発明において、前記ブームは、複数のブーム部材を入れ子式に組み合わせ
て伸縮動自在に構成されており、前記ブームが縮小された状態で前記車体上に格納され、
前記複数のブーム部材のうち基端部が前記旋回台に枢結される基端側ブーム部材に、前記
乗降経路に沿って前記基端側ブーム部材の基端部から先端部まで延びる前記ガイドレール
が取り付けられることが好ましい。
【0009】
なお、上述の発明において、前記安全器が前記ガイドレールにスライド移動自在に取り
付けられて、前記作業者が前記作業台へ乗降するときに前記係止部を前記ガイドレールに
取り付けられた前記安全器に係脱可能に係止させるようにしてもよい。また、前記作業者
が前記作業台へ乗降するときに前記係止部を係止させた前記安全器を前記ガイドレールに
着脱可能に取り付けるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車体上の乗降経路に沿ってブームの基端部から先端部まで延びるガイ
ドレールがブームに取り付けられるとともに、転落防止具の係止部を係脱可能に係止させ
る安全器が、当該ガイドレールにスライド移動自在に取り付け可能であるため、作業者が
車体上の乗降経路においても転落防止具を使用することができ、作業者が作業台へ乗降す
るときに車体上から転落するのをより確実に防止することが可能になる。
【0011】
また、上述の発明において、ブームが複数のブーム部材を入れ子式に組み合わせて伸縮
動自在に構成される場合、基端側ブーム部材にガイドレールを取り付けるようにすれば、
ガイドレールを取り付けたままブームを伸縮動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】高所作業車の側面図である。
【図2】高所作業車の平面図である。
【図3】高所作業車の後面図である。
【図4】基端ブームおよびガイドレールの側面図である。
【図5】基端ブームおよびガイドレールの第1の断面図である。
【図6】基端ブームおよびガイドレールの第2の断面図である。
【図7】安全装置の斜視図である。
【図8】安全装置の変形例を示す斜視図である。
【図9】基端側レール取付部の変形例を示す断面図である。
【図10】先端側レール取付部の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。本実施形態に係る
高所作業車1を図1〜図3に示している。この高所作業車1は、前後輪3a,3bを有し
て走行可能であり、前部に運転キャブ2aを有したトラック車両をベースに構成される。
このトラック車両の車体2の上に図示しない旋回モータ(油圧モータ)により駆動されて
水平旋回可能に構成された旋回台4が配設されている。この旋回台4に基端部が枢結され
てブーム5が取り付けられており、このブーム5は起伏シリンダ6により起伏動されるよ
うになっている。ブーム5は、基端ブーム5a、中間ブーム5bおよび先端ブーム5cを
入れ子式に組み合わせて、内蔵の伸縮シリンダ(図示せず)により伸縮動可能に構成され
ている。
【0014】
先端ブーム5cは先端にブームヘッド5dを有し、このブームヘッド5dに枢結されて
支持部材8が上下に揺動可能に取り付けられている。この支持部材8は垂直ポスト部(図
示せず)を有し、ブームヘッド5dと支持部材8との間に配設されたレベリングシリンダ
(図示せず)により支持部材8の揺動制御が行われ、ブーム5の起伏の如何に拘わらず垂
直ポスト部が常に垂直に延びて位置するように支持部材8が揺動制御される。このように
常時垂直に保持される垂直ポスト部に水平旋回自在に(首振り自在に)作業台9が取り付
けられており、作業台9はブーム5の起伏に拘わらず常に水平に保持される。
【0015】
なお、支持部材8の上端部に吊り上げ装置10が設けられている。また、車体2の前後
左右の四カ所に下方に伸縮自在なアウトリガ11が設けられており、高所作業を行うとき
には、アウトリガ11を下方に張り出して車体2を持ち上げ支持できるようになっている
。また、本実施形態の高所作業車1は、ブーム5が縮小して車体2上に倒伏された状態で
格納されるように構成される。ブーム5を格納する際、ブーム5が車体2の前方に向けて
倒伏されて、ブーム5の先端に位置する作業台9が運転キャブ2aの前方側へ延出するよ
うに保持される。
【0016】
ところで、車体2上の左側には、各種作業に必要な工具や機材等を収容するための第1
〜第3工具箱21〜23が配設される。第1工具箱21は、密閉型の工具箱であり、車体
2の後部に位置する旋回台4の左側方に配置される。第2工具箱22は、第1工具箱21
と幅が同じで、第1工具箱21よりも長さおよび高さが大きい密閉型の工具箱であり、第
1工具箱21の前方側に隣接するように配置される。第3工具箱23は、第2工具箱22
と幅および長さが同じで、第2工具箱22よりも高さが小さい密閉型の工具箱であり、第
2工具箱22の上に前方側にオフセットするように重ねて配置される。これにより、第1
〜第3工具箱21〜23の上面部(天板)によって階段状の経路が形成される。なお、各
工具箱21〜23は、作業者OPが上に乗っても破損しない程度の十分な強度を有してい
る。
【0017】
車体2の左後端部には、作業者OPが地面側から車体2(第1工具箱21)の上へ乗降
可能な第1ステップ24が設けられる。車体2上における第3工具箱23と運転キャブ2
aとの間には、運転キャブ2aの上部(後述の第3ステップ26)と同じ高さを有した第
2ステップ25が配設され、第3工具箱23の上に乗った作業者OPがこの第2ステップ
25を利用して運転キャブ2aの上へ乗降可能に構成される。運転キャブ2aの上部左側
には、運転キャブ2aの前方側へ延出する第3ステップ26が配設され、運転キャブ2a
の上の第3ステップ26に乗った作業者OPが作業台9へ乗降可能に構成される。これに
より、ブーム5が車体2上に格納された状態で、第1ステップ24から、第1〜第3工具
箱21〜23、第2ステップ25、および第3ステップ26に亘って、作業者OPの作業
台9への乗降経路RTがブーム5に沿った車体2上に設けられる。
【0018】
なお、車体2の左側端部には、第1〜第3サイドフェンス27〜29が取り付けられる
。第1サイドフェンス27は、第1ステップ24と第1工具箱21の左側端部に取り付け
られており、作業者OPが地面側から車体2(第1工具箱21)の上へ乗降する際に掴む
ことができるようになっている。第2サイドフェンス28は、第1工具箱21の左側端部
に取り付けられて、第1サイドフェンス27の前方側に隣接するように配置され、第1工
具箱21または第2工具箱22の上に乗った作業者OPが転落するのを防止している。第
3サイドフェンス29は、第3工具箱23の左側端部に取り付けられ、第3工具箱23の
上に乗った作業者OPが転落するのを防止している。また、第3ステップ26の左側端部
には、第4サイドフェンス30が取り付けられ、第3ステップ26(運転キャブ2a)の
上に乗った作業者OPが転落するのを防止している。
【0019】
ブーム5のうち基端部が旋回台4に枢結される基端ブーム5aには、ブーム5が車体2
上に格納された状態において、上述した乗降経路RTに沿って基端ブーム5aの基端部か
ら先端部まで延びるガイドレール40が取り付けられる。このガイドレール40は、アル
ミ合金等の金属材料からなる2本のレール部材を金属製のジョイントにより繋ぎ合わせて
形成され、基端側レール取付部50、中間レール取付部60、および先端側レール取付部
70により基端ブーム5aの左側方に取り付けられる。図4に示すように、ガイドレール
40には、基端側から順に、基端ブーム5aに対して垂直下方に延びる第1直線部41と
、第1直線部41に繋がる1/4円弧形の曲線部42と、曲線部42に繋がって基端ブー
ム5aに対し略平行に延びる第2直線部43と、第2直線部43に繋がって第2直線部4
3(基端ブーム5a)に対し上方に傾斜して延びる傾斜部44と、傾斜部44に繋がって
基端ブーム5aに対し略平行に延びる第3直線部45とが形成される。
【0020】
基端側レール取付部50は、図5に示すように、第1のブラケット51と、第1の下部
プレート52と、第1のサイドプレート53と、第1のアームプレート54と、第1の取
り付け金具55とを有して構成され、基端ブーム5aの基端部近傍に取り付けられる。第
1のブラケット51は、複数の金属板材を溶接等により接合させて形成され、基端ブーム
5aの上面および左側面の一部を覆うとともに、ガイドレール40を支持可能に構成され
る。基端ブーム5aの上面と第1のブラケット51との間にはゴム板57aが挟まれてお
り、基端ブーム5aの左側面と第1のブラケット51との間にもゴム板57bが挟まれて
いる。
【0021】
第1の下部プレート52は、金属材料を用いて基端ブーム5aの下面の一部を覆う板状
に形成され、ボルトおよびナット等の締結部材56aを用いて、第1のブラケット51の
下端部と連結される。基端ブーム5aの下面と第1の下部プレート52との間には3つの
ゴム板57c,57d,57eが挟まれている。第1のサイドプレート53は、金属材料
を用いて基端ブーム5aの右側面の一部を覆う板状に形成され、下端部が締結部材56b
を用いて第1の下部プレート52と連結されるとともに、上端部が締結部材56cを用い
て第1のブラケット51と連結される。基端ブーム5aの右側面と第1のサイドプレート
53との間にはゴム板57fが挟まれている。そして、第1のブラケット51、第1の下
部プレート52、および第1のサイドプレート53が、3つの締結部材56a,56b,
56cの締結力により基端ブーム5aを締め付けるようにして、基端側レール取付部50
が基端ブーム5aの基端部近傍に取り付けられる(図1および図4を参照)。
【0022】
第1のアームプレート54は、金属材料を用いて基端ブーム5aの左右方向に延びる板
状に形成され、2つの締結部材56d,56eを用いて第1のブラケット51の上端部に
連結される。第1の取り付け金具55は、金属材料を用いてブロック状に形成され、締結
部材56fを用いて、2つの第1の取り付け金具55,55が上下からガイドレール40
を挟む状態で第1のアームプレート54の先端部に取り付けられる。これにより、ガイド
レール40における第2直線部43の基端側が基端側レール取付部50に取り付け保持さ
れる(図1および図4を参照)。
【0023】
中間レール取付部60は、基端側レール取付部50と同様の構成であり、図1および図
4に示すように、基端ブーム5aの中間部に取り付けられる。そして、基端側レール取付
部50の場合と同様にして、ガイドレール40における第2直線部43の先端側が中間レ
ール取付部60に取り付け保持される。
【0024】
先端側レール取付部70は、図6に示すように、第2のブラケット71と、第2の下部
プレート72と、第2のサイドプレート73と、第2のアームプレート74と、第2の取
り付け金具75とを有して構成され、基端ブーム5aの先端部近傍に取り付けられる。第
2のブラケット71は、複数の金属板材を溶接等により接合させて形成され、基端ブーム
5aの上面および左側面の一部を覆うとともに、ガイドレール40を支持可能に構成され
る。基端ブーム5aの上面と第2のブラケット71との間にはゴム板77aが挟まれてお
り、基端ブーム5aの左側面と第2のブラケット71との間にもゴム板77bが挟まれて
いる。
【0025】
第2の下部プレート72は、金属材料を用いて基端ブーム5aの下面の一部を覆う板状
に形成され、ボルトおよびナット等の締結部材76aを用いて、第2のブラケット71の
下端部と連結される。基端ブーム5aの下面と第2の下部プレート72との間には3つの
ゴム板77c,77d,77eが挟まれている。第2のサイドプレート73は、金属材料
を用いて基端ブーム5aの右側面の一部を覆う板状に形成され、下端部が締結部材76b
を用いて第2の下部プレート72と連結されるとともに、上端部が締結部材76cを用い
て第2のブラケット71と連結される。基端ブーム5aの右側面と第2のサイドプレート
73との間にはゴム板77fが挟まれている。そして、第2のブラケット71、第2の下
部プレート72、および第2のサイドプレート73が、3つの締結部材76a,76b,
76cの締結力により基端ブーム5aを締め付けるようにして、先端側レール取付部70
が基端ブーム5aの先端部近傍に取り付けられる(図1および図4を参照)。
【0026】
第2のアームプレート74は、金属材料を用いて基端ブーム5aの左右方向に延びる板
状に形成され、2つの締結部材76d,76eを用いて第2のブラケット71の上端部に
連結される。第2の取り付け金具75は、金属材料を用いてブロック状に形成され、締結
部材76fを用いて、2つの第2の取り付け金具75,75が上下からガイドレール40
を挟む状態で第2のアームプレート74の先端部に取り付けられる。これにより、ガイド
レール40の第3直線部45が先端側レール取付部70に取り付け保持される(図1およ
び図4を参照)。このようにして、基端側レール取付部50、中間レール取付部60、お
よび先端側レール取付部70により、ガイドレール40が基端ブーム5aの左側方に取り
付けられる。そのため、ガイドレール40を取り付けたままブーム5を伸縮動させること
が可能である。また、各レール取付部50,60,70が薄板状の部材を用いて基端ブー
ム5aの周部に巻き付くように取り付けられるため、ガイドレール40を取り付けたまま
、他の部材に衝突することなく、ブーム5を起伏動および旋回動させることが可能である

【0027】
基端側レール取付部50、中間レール取付部60、および先端側レール取付部70によ
り基端ブーム5aの左側方に取り付けられたガイドレール40に対して、図1および図7
に示すように、転落防止用の安全装置80に備えられた安全器81をスライド移動自在に
取り付けることができる。この安全装置80は、安全器81と、連結器85とを有して構
成される。なお、ガイドレール40は、高所作業車1の製造過程で、または高所作業車1
の製造完成後に、基端ブーム5aの左側方に取り付けられる。
【0028】
安全器81は、図7に示すように、安全器本体82と、4つのガイドローラ83,83
,…とを有して構成される。安全器本体82は、ステンレス等の金属材料を用いて、中央
に溝部を有するブロック状に形成され、この安全器本体82の溝部にガイドレール40の
一部(凸部)が挿通されるようになっている。4つのガイドローラ83,83,…は、安
全器本体82の四隅に回転自在に取り付けられ、安全器本体82の溝部に挿通されたガイ
ドレール40の凸部と係合して回転可能に構成される。このように、ガイドレール40を
基端部もしくは先端部から安全器本体82の溝部に挿通させることで、ガイドレール40
に対し安全器81をスライド移動自在に取り付けることができる。また、安全器81には
、ガイドレール40上での安全器81のスライド移動を規制するロック機構(図示せず)
が内蔵されており、常には、このロック機構によってガイドレール40上での安全器81
のスライド移動が規制され、安全器81に設けられたロック解除ボタン(図示せず)を押
し操作しているときだけ、ロック機構の作動が解除されて安全器81をスライド移動させ
ることができるようになっている。
【0029】
なお、図4に示すように、ガイドレール40の基端部には、安全器81がガイドレール
40の基端部から抜けないように基端側ストッパ46が取り付けられる。また、ガイドレ
ール40の先端部には、安全器81がガイドレール40の先端部から抜けないように先端
側ストッパ47が取り付けられる。基端側ストッパ46および先端側ストッパ47は、詳
細な図示を省略するが、ガイドレール40に取り付けられた支持部材と、支持部材によっ
て、安全器81のスライド移動を規制するスライド規制位置と、安全器81のスライド移
動を可能にするスライド可能位置との間で変位可能に支持されたストッパ部材と、ストッ
パ部材をスライド規制位置に位置させるための付勢力を与える付勢部材とを有して構成さ
れる。そして、常にはストッパ部材が付勢部材によりスライド規制位置に位置して安全器
81のスライド移動を規制し、安全器81をガイドレール40に取り付けるとき、もしく
はガイドレール40から取り外すときには、付勢部材からの付勢力に抗してストッパ部材
をスライド可能位置に変位させる。
【0030】
連結器85は、図7に示すように、金属材料を用いてチェーン状に構成され、基端部が
安全器81と揺動自在に連結される。そして、連結器85の先端部は、図1に示すように
、転落防止具(安全帯)90のロープ92に設けられたロープ用係止具93が係脱可能に
構成される。なお、本実施形態では、連結器85の先端部が円環状に形成されているが、
鉤状に構成されてもよい。
【0031】
転落防止具(安全帯)90は、作業者OPが作業台9へ乗降するときに車体2上から転
落するのを防止するために、作業者OPに装着されるものであり、図1に示すように、作
業者OPに装着される安全ベルト91と、安全ベルト91に連結されたロープ92と、ロ
ープ92の先端部に設けられたロープ用係止具93とを有して構成される。ロープ用係止
具93は、詳細な図示を省略するが、鉤部と、鉤部の先端を開放・閉鎖する開閉キャップ
等を有しており、安全装置80の連結器85に係脱可能に構成される。
【0032】
以上のように構成される高所作業車1において、作業者OPが地面側からブーム5が格
納された状態の作業台9へ乗り込むには、まず、基端側ストッパ46もしくは先端側スト
ッパ47のストッパ部材(図示せず)をスライド可能位置に変位させて、安全装置80の
安全器81をガイドレール40に取り付ける。次に、作業者OPは、ガイドレール40に
取り付けられた安全装置80(安全器81)の連結器85に、転落防止具(安全帯)90
の先端のロープ用係止具93を係止させる。このとき、ブーム5が車体2上に格納された
状態で、ガイドレール40の基端部(第1直線部41)が下方に曲がって延びるように形
成されるため、安全器81をガイドレール40の基端部(基端側ストッパ46)までスラ
イド移動させておくことで、ロープ用係止具93を連結器85に容易に係止させることが
できる。これにより、作業者OPに装着された転落防止具90が、連結器85を介して、
ガイドレール40に取り付けられた安全器81と連結される。
【0033】
次に、作業者OPは、車体2の左後端部の第1ステップ24を利用して、地面側から車
体2の上へ乗り込み、車体2上の乗降経路RT(すなわち、第1〜第3工具箱21〜23
、第2ステップ25、および第3ステップ26)を通って作業台9へ向かう。このとき、
作業者は、安全器81のロック解除ボタン(図示せず)を押し操作しながら、作業者OP
の転落防止具(安全帯)90と連結された安全器81をスライド移動させる。そうすると
、安全器81は、作業者OPが作業台9へ向かって車体2上の乗降経路RTを移動するの
に伴って、ガイドレール40の第1直線部41、曲線部42、第2直線部43、傾斜部4
4、および第3直線部45を順にスライド移動する。このように、作業者OPが車体2上
の乗降経路RTを移動する間、作業者OPの転落防止具90がガイドレール40に取り付
けられた安全器81と連結されているため、作業者OPが作業台9へ乗降するときに車体
2上から転落するのを防止することができる。
【0034】
そして、第3ステップ26(運転キャブ2a)の上に達した作業者OPは、そこから作
業台9へ乗り込み、転落防止具(安全帯)90のロープ用係止具93を安全装置80の連
結器85から離脱させて、作業台9に設けられた掛止部(図示せず)に係止させる。この
とき、ガイドレール40の中間部分に傾斜部44を形成して、ガイドレール40の先端部
(第3直線部45)の高さ位置を作業台9の高さ位置に合わせるようにしてあるため、作
業者OPが作業台9に乗り込んだまま容易に、ロープ用係止具93を連結器85に対して
係脱させることができる。
【0035】
一方、作業台9に搭乗した作業者OPが地面側へ降りるには、作業者OPが作業台9へ
乗り込む場合と逆の動作を行えばよい。このようにして、作業者OPが地面側から格納状
態の作業台9へ乗降することができる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態によれば、車体2上の乗降経路RTに沿って基端ブー
ム5aの基端部から先端部まで延びるガイドレール40が基端ブーム5aに取り付けられ
るとともに、転落防止具90の係止部93を係脱可能に係止させる安全器81が、当該ガ
イドレール40にスライド移動自在に取り付け可能であるため、作業者OPが車体2上の
乗降経路RTにおいても転落防止具90を使用することができ、作業者OPが作業台9へ
乗降するときに車体2上から転落するのをより確実に防止することが可能になる。
【0037】
また、基端ブーム5aにガイドレール40を取り付けるようにすれば、ガイドレール4
0を取り付けたままブーム5を伸縮動させることができる。
【0038】
なお、上述の実施形態において、ブーム5が伸縮動自在に構成されているが、これに限
られるものではなく、ブームが車体2上に倒伏された状態で格納される構成であれば、伸
縮動しなくてもよい。
【0039】
また、上述の実施形態において、作業者OPが作業台9へ乗降するときに、転落防止具
(安全帯)90のロープ用係止具93を、安全器81と連結された連結器85の先端部に
係脱させているが、これに限られるものではない。例えば、図8に示すように、連結器8
5の先端部に緩衝体86を連結し、緩衝体86の先端部に連結された緩衝体用係止具87
にロープ用係止具93を係脱させるようにしてもよい。なお、緩衝体86は、詳細な図示
を省略するが、折り畳まれて縫い合わされたベルトを主体に構成される。このベルトは熱
収縮チューブで被覆されており、緩衝体86は、所定以上の衝撃荷重が加わると、折り畳
まれたベルトが伸ばされて、その衝撃を吸収する機能を有している。すなわち、ベルトが
伸びた状態での緩衝体86の長さは、作業者OPが車体2上から転落しても地面に衝突し
ない長さに設定される。また、緩衝体用係止具87は、緩衝体86の先端部に連結されて
、ロープ用係止具93が係脱可能な鉤状に構成されているが、円環状に構成されてもよい

【0040】
また、上述の実施形態において、作業者OPが作業台9へ乗降するときに、転落防止具
(安全帯)90のロープ用係止具93を、ガイドレール40に取り付けられた安全装置8
0(安全器81)の連結器85に係止させているが、これに限られるものではなく、ロー
プ用係止具93を連結器85(上述の緩衝体用係止具87でもよい)に係止させた安全器
81を、(取り付け・取り外し時に、基端側ストッパ46もしくは先端側ストッパ47の
ストッパ部材(図示せず)をスライド可能位置に変位させて)ガイドレール40に着脱可
能に取り付けてもよい。
【0041】
また、上述の実施形態において、第1のブラケット51、第1の下部プレート52、お
よび第1のサイドプレート53が、3つの締結部材56a,56b,56cの締結力によ
り基端ブーム5aを締め付けるようにして、基端側レール取付部50が基端ブーム5aの
基端部近傍(中間レール取付部60の場合、基端ブーム5aの中間部)に取り付けられて
いるが、これに限られるものではない。例えば、図9に示すように、第1のブラケット1
51を基端ブーム5aの側面に溶接することで、基端側レール取付部150を基端ブーム
5aの基端部近傍(中間レール取付部の場合、基端ブーム5aの中間部)に取り付けるよ
うにしてもよい。なお、図9に示す基端側レール取付部150は、基端ブーム5aに溶接
される第1のブラケット151のほか、上述の実施形態と同じ構成の第1のアームプレー
ト54および第1の取り付け金具55を有して構成される。
【0042】
また、上述の実施形態において、第2のブラケット71、第2の下部プレート72、お
よび第2のサイドプレート73が、3つの締結部材76a,76b,76cの締結力によ
り基端ブーム5aを締め付けるようにして、先端側レール取付部70が基端ブーム5aの
先端部近傍に取り付けられているが、これに限られるものではない。例えば、図10に示
すように、第2のブラケット171を基端ブーム5aの側面に溶接することで、先端側レ
ール取付部170を基端ブーム5aの先端部近傍に取り付けるようにしてもよい。なお、
図10に示す先端側レール取付部170は、基端ブーム5aに溶接される第2のブラケッ
ト171のほか、上述の実施形態と同じ構成の第2のアームプレート74および第2の取
り付け金具75を有して構成される。
【符号の説明】
【0043】
1 高所作業車
2 車体
4 旋回台
5 ブーム(5a 基端ブーム、5b 中間ブーム、5c 先端ブーム)
9 作業台
40 ガイドレール
80 安全装置
81 安全器
85 連結器
86 緩衝体
87 緩衝体用係止具
90 転落防止具
91 安全ベルト
92 ロープ
93 ロープ用係止具
OP 作業者
RT 乗降経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な車体と、前記車体上に旋回自在に設けられた旋回台と、基端部が前記旋回台
に枢結されて起伏自在に設けられたブームと、前記ブームの先端部に設けられた作業台と
を備え、前記ブームが前記車体上に倒伏された状態で格納されるように構成された高所作
業車において、
前記ブームが前記車体上に格納された状態で、作業者の前記作業台への乗降経路が前記
ブームに沿った前記車体上に設けられ、
前記乗降経路に沿って前記ブームの基端部から先端部まで延びるガイドレールが前記ブ
ームに取り付けられるとともに、
前記作業者が前記作業台へ乗降するときに前記車体上から転落するのを防止する転落防
止具の先端の係止部を係脱可能に係止させる安全器が、前記ガイドレールにスライド移動
自在に取り付け可能であることを特徴とする高所作業車。
【請求項2】
前記ブームは、複数のブーム部材を入れ子式に組み合わせて伸縮動自在に構成されてお
り、
前記ブームが縮小された状態で前記車体上に格納され、
前記複数のブーム部材のうち基端部が前記旋回台に枢結される基端側ブーム部材に、前
記乗降経路に沿って前記基端側ブーム部材の基端部から先端部まで延びる前記ガイドレー
ルが取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の高所作業車。
【請求項3】
前記安全器が前記ガイドレールにスライド移動自在に取り付けられて、
前記作業者が前記作業台へ乗降するときに前記係止部を前記ガイドレールに取り付けら
れた前記安全器に係脱可能に係止させることを特徴とする請求項1または2に記載の高所
作業車。
【請求項4】
前記作業者が前記作業台へ乗降するときに前記係止部を係止させた前記安全器を前記ガ
イドレールに着脱可能に取り付けることを特徴とする請求項1または2に記載の高所作業
車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−43721(P2013−43721A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180866(P2011−180866)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000116644)株式会社アイチコーポレーション (168)
【出願人】(000222015)株式会社ユアテック (26)
【Fターム(参考)】