説明

高所解体機

【課題】破砕機近傍におけるコンパクト化及び部品点数の削減を図った高所解体機を提供する。
【解決手段】アーム27の先端部に回動可能に取り付けられた破砕機30と、この破砕機30をアーム27に対して回動させる破砕機回動用シリンダ34と、この破砕機回動用シリンダ34の変位を破砕機30の回動変位に変換する伝達機構36Aとを有する高所解体機であって、前記破砕機回動用シリンダ34をアーム27の下面27bに配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高所解体機に係り、特に破砕機を設けた高所解体機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンクリート構造物や家屋などの建造物を破砕して高所解体作業を行う高所解体機が知られている。図4及び図5は、従来の高所解体機の一例を示している。図4は高所解体機20の全体構成を示し、図5はアーム27の先端に設けられた破砕機30を示している。
【0003】
図4に示すように、高所解体機120は、クローラを備えた下部走行体22と、この下部走行体22上に旋回自在に搭載された上部旋回体23とを備えている。また、上部旋回体23の前部には、作業アタッチメント24が起伏自在に設けられている。
【0004】
作業アタッチメント24は、先端部にセカンドブーム25を有するブーム26と、このセカンドブーム25の先端部に連結されたアーム27と、アーム27の先端部に設けられた破砕機30等により構成されている。
【0005】
上記ブーム26はブームシリンダ31の伸縮動作によって起伏し、セカンドブーム25はセカンドブームシリンダ32の伸縮動作によって起伏する。アーム27はアームシリンダ33の伸縮動作によって上下方向に揺動し、更に破砕機30は破砕機回動用シリンダ134の伸縮動作によって上下方向に回動する。よって、破砕機30は破砕しようとする建造物STの任意位置に移動し、破砕処理を行うことが可能となる。
【0006】
図5に拡大して示すように、破砕機回動用シリンダ134のロッド146は、伝達機構136を介して破砕機30に接続されている。そして、ロッド146が図中矢印X1方向に移動することにより破砕機30は図中矢印A1方向に回動し、またロッド146が図中矢印X2方向に移動することにより破砕機30は図中矢印A1方向に回動する構成とされていた。
【0007】
従来、破砕機回動用シリンダ134及び伝達機構136は、アーム27の上面27aに配設された構成とされていた(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−074745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、高所解体機120に設けられる破砕機30は、建造物STを破砕するものであるため、強固な構造である必要がある。このため、破砕機30の重量は油圧ショベルのバケット等に比べて非常に重いものである。
【0010】
一方、この破砕機30を駆動する破砕機回動用シリンダ134は、一般にピストン形の単動シリンダが用いられている。このタイプの油圧シリンダでは、ボトム側作動油室の受圧面積に対してロッド側作動油室の受圧面積が小さい。このため、破砕機回動用シリンダ134は、ロッド収縮方向の変位を抑えるためのボトム側作動油室の必要保持圧よりも、ロッド伸張方向の変位を抑えるためのロッド側作動油室の必要保持圧が大きくなる。
【0011】
しかしながら、従来のように破砕機回動用シリンダ134をアーム27の上面27aに配設した構成では、重量物である破砕機30の荷重が破砕機回動用シリンダ134に作用する方向は、ロッド146を伸張させる方向(図中矢印X2で示す方向)となる。このため、重量物である破砕機30の荷重に耐えうるよう構成するため、破砕機回動用シリンダ134として大型の油圧シリンダを用いる必要があるという問題点があった。
【0012】
また、破砕機30を用いて建造物STを破砕する際、大量の破砕物が落下する。従来では、破砕機回動用シリンダ134がアーム27の上面27aに配設されていたため、破砕機回動用シリンダ134にも破砕物が落下するおそれがある。
【0013】
このため、従来では破砕機回動用シリンダ134の上部にシリンダガイド137を配設し、破砕機回動用シリンダ134を破砕物の落下から保護していた。しかしながら、シリンダガイド137を設けることにより部品点数が増大し、また組み立て工数が増大するという問題点があった。
【0014】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、破砕機近傍におけるコンパクト化及び部品点数の削減を図った高所解体機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題は、第1の観点からは、
アームの先端部に回動可能に取り付けられた破砕機と、
前記破砕機を前記アームに対して回動させる破砕機回動用シリンダと、
前記破砕機回動用シリンダの変位を前記破砕機の回動変位に変換する伝達機構と、
を有する高所解体機であって、
前記破砕機回動用シリンダを前記アームの下面に配置したことを特徴とする高所解体機により解決することができる。
【発明の効果】
【0016】
開示の高所解体機は、破砕機回動用シリンダをアームの下面に配置したことにより、破砕機回動用シリンダの小型化を図ることができる。また、アームが従来のシリンダガイドとして機能するため、破砕機回動用シリンダを破砕物の落下から保護しつつ部品点数の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態である高所解体機の要部を拡大して示す図である。
【図2】図2は、本発明の第2実施形態である高所解体機の要部を拡大して示す図であり、破砕機が下を向いた状態を示す図である。
【図3】図3は、本発明の第2実施形態である高所解体機の要部を拡大して示す図であり、破砕機が上を向いた状態を示す図である。
【図4】図4は、従来の一例である高所解体機の全体構成を示す図である。
【図5】図5は、従来の一例である高所解体機の破砕機近傍を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。
【0019】
図1は、本発明の第1実施形態である高所解体機20Aを示している。
【0020】
なお、第1実施形態に係る高所解体機20A、及び後述する第2実施形態に係る高所解体機20Bにおいて、破砕機回動用シリンダ34及び伝達機構36A,36Bを除く他の構成は、図4及び図5に示した従来の高所解体機120と同一構成である。よって、第1及び第2実施形態に係る高所解体機20A,20Bの説明においては、発明の要部となる破砕機回動用シリンダ34の近傍のみを図示して説明し、また図4及び図5に示した構成と同一構成については同一符号を付してその説明は省略するものとする。
【0021】
高所解体機20Aは、アーム27の先端部に回動可能に取り付けられた破砕機30と、この破砕機30をアーム27に対して回動させる破砕機回動用シリンダ34と、破砕機回動用シリンダ34の駆動力を破砕機30に伝達する伝達機構36A等を有している。
【0022】
破砕機30は、クラッシャー部(剪断刃部)38,38を備えた一対の破砕アーム39,39と、この破砕アーム39,39を開閉自在に支持する支持フレーム40を有している。また、支持フレーム40の両側には油圧シリンダ41が配設され、この油圧シリンダ41の一端は破砕アーム39に接続され、他端は支持フレーム40に接続されている。よって、油圧シリンダ41が伸縮又は短縮動作すると、一対の破砕アーム39,39は互いに接近又は離反動作するよう構成されている。
【0023】
このように、破砕機30は多数の部品により構成されている。また、破砕機30は建造物STを破砕するものであるため、破砕機30を構成する各部品の剛性及び強度は高く設定されている。このため破砕機30は、油圧ショベルのバケット等に比べて重いものであることは前述した通りである。
【0024】
また、支持フレーム40には、取付部材42が設けられている。この取付部材42は、回動ピン43を介して上記アーム27の先端部に回動可能に接続されている。更に取付部材42には、伝達機構36Aを構成する破砕機リンク44Aの一端が破砕機接続ピン48により回転可能に接続されている。
【0025】
破砕機回動用シリンダ34は、本実施形態ではアーム27の上面27aに設けられている。この破砕機回動用シリンダ34はピストン形の単動油圧シリンダであり、ロッド46を図中矢印X1方向或いはX2方向に変位させる。
【0026】
ここで、アーム27の下面27bとは、作業アタッチメント24を地面GR(図4参照)に対して水平状態とした場合、アーム27の地面GRと対向する側の面をいうものとする。また、アーム27の上面27aとは、アーム27の下面27bと対向する反対側の面をいうものとする。
【0027】
また、以下の説明において、ロッド46の矢印X1方向への変位を「収縮」といい、矢印X2方向への変位を「伸張」というものとする。
【0028】
ロッド46の先端部(X2方向側の先端部)は、伝達機構36Aに接続されている。伝達機構36Aは、破砕機リンク44Aとアームリンク47Aとを有している。
【0029】
破砕機リンク44Aは、一端部が破砕機30(取付部材42)に破砕機接続ピン48を介して回転可能に接続されている。また破砕機リンク44Aの他端部は、シリンダ接続ピン45を介してロッド46及びアームリンク47Aに回転可能に接続されている。
【0030】
一方、アームリンク47Aは、一端部がアーム27にアーム接続ピン49を介して回転可能に接続されている。また、アームリンク47Aの他端部は、シリンダ接続ピン45を介してロッド46及び破砕機リンク44Aに回転可能に接続されている。
【0031】
本実施形態の伝達機構36Aでは、シリンダ接続ピン45が、破砕機リンク44Aと破砕機回動用シリンダ34(ロッド46)とを接続する機能と、破砕機リンク44Aとアームリンク47Aとを接続する機能との二つの機能を併せ持つ構成とされている。
【0032】
上記構成とされた高所解体機20Aにおいて、破砕機回動用シリンダ34がロッド46を伸張動作(X2方向に変位させる動作)させると、破砕機30は伝達機構36Aを介して図中矢印A2方向に回動し、図中一点鎖線で示す上を向いた位置に移動する。
【0033】
逆に、破砕機回動用シリンダ34がロッド46を収縮動作(X1方向に変位させる動作)させると、破砕機30は伝達機構36Aを介して図中矢印A1方向に回動し、図中実線で示す下を向いた位置に移動する。
【0034】
本実施形態に係る高所解体機20Aは、上記のように破砕機回動用シリンダ34をアーム27の下面27bに配設したことを特徴としている。この構成とすることにより、重量物である破砕機30の自重は、伝達機構36Aを介してロッド46を収縮させる方向(矢印X1方向)に印加される。
【0035】
前記のように、本実施形態に係る高所解体機20Aは、破砕機回動用シリンダ34としてピストン形の単動油圧シリンダを用いており、また破砕機30の自重が印加される方向は受圧面積が広く耐圧が高いロッド46を収縮させる方向とされている。このため、従来のように破砕機30の自重が伸張する方向である構成に比べ、破砕機回動用シリンダ34の小型化を図ることができる。
【0036】
また、高所解体機20Aにより建造物STを破砕することにより、アーム27に破砕物が落下しても、本実施形態ではアーム27が従来のシリンダガイド137として機能し、破砕機回動用シリンダ34が損傷するようなことはない。このため本実施形態による高所解体機20Aによれば、従来必要とされたシリンダガイド137が不要となるため、部品点数の削減及び組み立て工数の低減を図ることができる。
【0037】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0038】
図2及び図3は、第2実施形態である高所解体機20Bの要部を拡大して示す図である。本実施形態に係る高所解体機20Bは、第1実施形態に係る高所解体機20Aと同様に破砕機回動用シリンダ34をアーム27の下面27bに配設している。
【0039】
しかしながら、第1実施形態に係る高所解体機20Aでは伝達機構36Aを構成する破砕機リンク44Aをアーム27の下面側に配置する構成としたのに対し、本実施形態では破砕機リンク44Bをアーム27の上面側に配置したことを特徴としている。
【0040】
以下、伝達機構36Bの詳細について説明する。
【0041】
伝達機構36Bは、破砕機リンク44Bとアームリンク47Bとを有した構成とされている。破砕機リンク44Bは、一端部が破砕機30の取付部材42に破砕機接続ピン48を介して回転可能に接続されている。また、破砕機リンク44Bの他端部は、リンク接続ピン52を介してアームリンク47Bの一端部に回転可能に接続されている。
【0042】
アームリンク47Bは、その略中心位置をアーム接続ピン50により回転可能に軸承されている。このアームリンク47Bのアーム27の上面側の端部には、破砕機リンク44Bがリンク接続ピン52を介して回転可能に接続されている。また、アームリンク47Bのアーム27の下面側の端部には、破砕機回動用シリンダ34のロッド46がシリンダ接続ピン51を介して回転可能に接続されている。
【0043】
上記のように、アームリンク47Bは、その略中心位置をアーム接続ピン50により軸承されている。このため、シリンダ接続ピン51が配設される下端部をアーム27の下面側に位置させると共に、リンク接続ピン52が配設される上端部をアーム27の上面側に位置させることができる。また、このようにアームリンク47Bの上端部がアーム27の上面側に位置することにより、破砕機リンク44Bをアーム27の上面側に配置することができる。
【0044】
上記構成とされた高所解体機20Bにおいて、破砕機回動用シリンダ34がロッド46を伸張動作(X2方向に変位させる動作)させると、アームリンク47Bはアーム接続ピン50を中心として時計方向に回動を行う。これに伴い、リンク接続ピン52も時計方向に回動を行い、これにより破砕機リンク44Bを介して破砕機30は図中矢印A2方向へ移動していく。図3は、上記の動作により破砕機30が上を向いた状態を示している。
【0045】
この図3に示す状態からロッド46を収縮動作させると、アームリンク47Bはアーム接続ピン50を中心として反時計方向に回転し、破砕機30は矢印A1方向に移動して再び図2に示す下を向いた状態となる。
【0046】
ここで、第1実施形態に係る高所解体機20Aと第2実施形態に係る高所解体機20Bの破砕機30が下を向いた状態を比較する。
【0047】
第1実施形態に係る高所解体機20Aにおいては、破砕機30の矢印A1方向への回動限度位置は、破砕機リンク44Aの長さにより決まる。即ち、破砕機リンク44Aの長さを短くするほど、破砕機30の回動限度位置はA1方向に移動する。しかしながら、破砕機リンク44Aの長さを小さくすると、破砕機30を上向きとする場合に所望する向きまで移動させることができなくなる。
この破砕機30の回動限度位置までの回動量は、抱え込み量といわれるものである。建造物の破砕現場によっては、この抱え込み量が大きい高所解体機が望まれる場合がある。しかしながら、上記の理由から第1実施形態に係る高所解体機20Aでは、このような破砕現場には不適となる。
【0048】
これに対して第2実施形態に係る高所解体機20Bは、破砕機リンク44Bがアーム27の上面側に配置されており、ロッド46と破砕機リンク44Bはアームリンク47Bにより接続された構成とされている。このため、第1実施形態に係る高所解体機20Aの構成に比べ、破砕機リンク44Bの長さ設定の自由度を高めることが可能となり、よって所望の抱え込み量を容易に実現することが可能となる。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上記した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能なものである。
【符号の説明】
【0050】
20A,20B 高所解体機
25 セカンドブーム
26 ブーム
27 アーム
27b 下面
30 破砕機
34 破砕機回動用シリンダ
134 破砕機回動用シリンダ
36A,36B 伝達機構
42 取付部材
43 回動ピン
44A,44B 破砕機リンク
45,51 シリンダ接続ピン
46 ロッド
47A,47B アームリンク
48 破砕機接続ピン
49,50 アーム接続ピン
52 リンク接続ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームの先端部に回動可能に取り付けられた破砕機と、
前記破砕機を前記アームに対して回動させる破砕機回動用シリンダと、
前記破砕機回動用シリンダの変位を前記破砕機の回動変位に変換する伝達機構と、
を有する高所解体機であって、
前記破砕機回動用シリンダを前記アームの下面に配置したことを特徴とする高所解体機。
【請求項2】
前記伝達機構を、一端部が前記破砕機に接続される破砕機リンクと、該破砕機リンクの他端部と前記破砕機回動用シリンダとの間に配設され中間部位で前記アームの端部に回転可能に支持されるアームリンクとを有する構成とし、
前記破砕機リンクを、前記アームの上面側に配置したことを特徴とする請求項1記載の高所解体機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−104275(P2013−104275A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250789(P2011−250789)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(502246528)住友建機株式会社 (346)
【Fターム(参考)】