説明

高摩擦摺動材、高摩擦摺動材の製造方法及びそれを用いた駆動装置

【課題】高い摩擦係数と、基板との強い界面強度が両立するカーボンナノチューブを用いた高摩擦摺動材、高摩擦摺動材の製造方法及びそれを用いた駆動装置を提供する。
【解決手段】高摩擦摺動材は、基板と、該基板の少なくとも一方の主面を被覆する接着層と、該基板の主面に対して直立したカーボンナノチューブを含む高摩擦摺動材であって、上記カーボンナノチューブが、閉端部と開端部を有し、該閉端部が上記接着層に埋設されて上記基板に固定され、上記開端部が上記接着層から露出している。高摩擦摺動材の製造方法は、上記接着層の材料を上記基板に塗布した後に、乾燥して複素粘度が600Pa.s〜30000Pa.sの粘性体の層とし、上記粘性体の層に上記閉端部を埋設した後に、この層を固化して接着層を形成する。駆動装置は、上記被駆動部材及び/又は上記駆動部材に、本発明の高摩擦摺動材を適用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高摩擦摺動材、高摩擦摺動材の製造方法及びそれを用いた駆動装置に係り、更に詳細には、弾性ヒステリシス損失を利用した高摩擦摺動材、高摩擦摺動部材の製造方法及びそれを用いた駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2物体間に相対すべりが生じる場合の摩擦力Fは、(1)式で示される。
F = Fa + Fp + Fe ・・・(1)
ここで、Fa:凝着項、Fp:掘り起こし項、Fe:弾性ヒステリシス項である。
Bowden−Taborによる 固体摩擦の基本原理によれば、通常の材料では、(1)式右辺は、FpおよびFeをゼロと見なすことができ、凝着項で表される。すなわち、摩擦係数や耐摩耗性は材料の凝着のし易さにより決定される。
したがって、例えば材料に耐摩耗性を付与する場合には、材料の降伏強度を増加させることが有効となり、高硬度の材料が必要になるし、また、摩擦係数はFaの大きな材料やその組み合わせが必要となる。例えば、自動車のブレーキやフリクションドライブシステムなどにおける摩擦摺動材を考えた場合、高摩擦係数と耐摩耗性を両立する必要がある。
しかしながら、一般に凝着による摩擦摩耗の原理の場合、高摩擦を示す材料は凝着しやすく、材料は摩耗するため、高摩擦と耐摩耗性を両立することは困難である。
【0003】
このような問題を解決するための方策として、(1)式における弾性ヒステリシス損失を積極的に利用することが考えられる。具体的には、摺動する2物体の表面のいずれか一方もしくは両方に、垂直方向とせん断方向の弾性率が異なる薄層を形成し、その薄層に弾性ヒステリシスを発生させる構造である。例えば、薄層として、多数の棒状の物体を基板の垂直方向に配向させ、それらの棒状物体の側面同士が擦れること、或いは棒状物体が長手方向に対して垂直方向にしなることにより弾性ヒステリシス損失を発生させる構造である。この棒状物体として、カーボンナノチューブを用いる方法が非特許文献1に提案されている。
【非特許文献1】大前伸夫、外1名、“カーボンナノチューブの高摩擦材への適応”、 [online]、経済産業省近畿経済産業局「近畿地域における大学・高専研究者技術シリーズ」、インターネット<URL:http://www.innov.kobe-u.ac.jp/sangaku01/2/2_054.pdf>
【0004】
カーボンナノチューブは、基板に垂直方向に配向したときに、他の繊維よりも大きな弾性ヒステリシス損失を発生させることができるので高摩擦摺動材への適用に有利である。なお、カーボンナノチューブを基板上に形成する方法として、代表的には、200nm前後のカーボンナノチューブを形成するSiC熱分解法、数十μmのカーボンナノチューブを形成する熱CVD法があるが、カーボンナノチューブの長さが長いほど摩擦係数が上がるので、熱CVD法によるカーボンナノチューブを高摩擦摺動材に用いるのが適当である。
しかし、熱CVD法では、基板とその上に形成したカーボンナノチューブの密着力、すなわち界面強度が弱いため繰り返しの摺動に耐えることができないという問題がある。そのため、例えば接着剤等の補強剤を用いて、基板とカーボンナノチューブの密着力を向上させることが考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、接着剤等を用いて基板とカーボンナノチューブを接合した場合、毛管現象によってカーボンナノチューブ内に基板から接着剤が吸い上げられ、カーボンナノチューブが接合すべき基板の領域において、接合部と未接合部が混在した界面強度の弱い構造となり、上述の構成によって本来得られるはずの高摩擦特性が得られないといった問題があった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高い摩擦係数と、基板との強い界面強度が両立するカーボンナノチューブを用いた高摩擦摺動材、高摩擦摺動材の製造方法及びそれを用いた駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、接着層に被覆された基板の主面に対して直立し、所定の方向で固定されたカーボンナノチューブを高摩擦摺動材に用いることで上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の高摩擦摺動材は、基板と、該基板の少なくとも一方の主面を被覆する接着層と、該基板の主面に対して直立したカーボンナノチューブを含み、
上記カーボンナノチューブが、閉端部と開端部を有し、該閉端部が上記接着層に埋設されて上記基板に固定され、上記開端部が上記接着層から露出している。
【0009】
また、本発明の高摩擦摺動材の製造方法は、本発明の高摩擦摺動材を製造するに当たり、上記接着層の材料を上記基板に塗布した後に、乾燥して複素粘度が600Pa.s〜30000Pa.sの粘性体の層とし、
上記粘性体の層に上記閉端部を埋設した後に、この層を固化して接着層を形成する。
【0010】
また、本発明の駆動装置は、所定の方向に移動可能な被駆動部材と、該方向に対して垂直な押付け力により該被駆動部材と摩擦係合する駆動部材と、該駆動部材に当接し、該駆動部材を上記方向に往復運動させる駆動力を該駆動部材に入力する駆動源を備えた駆動装置において、
上記被駆動部材、上記駆動部材のいずれか一方又は双方に、本発明の高摩擦摺動材を適用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、接着層に被覆された基板の主面に対して直立し、所定の方向で固定されたカーボンナノチューブを高摩擦摺動材に用いることで、高い摩擦係数と、基板との強い界面強度が両立するカーボンナノチューブを用いた高摩擦摺動材、高摩擦摺動材の製造方法及びそれを用いた駆動装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の高摩擦摺動材、高摩擦摺動材の製造方法及びそれを用いた駆動装置につき詳細に説明する。
なお本発明においては、摩擦係数が1を超える摩擦摺動材を、高摩擦特性を有する「高摩擦摺動材」とする。摩擦材として一般的な製品としては、例えばブレーキパッドがあるが、普通車やスポーツ車に使用されるブレーキパッドの摩擦係数はそれぞれ0.35〜0.4程度(普通車)と、0.4〜0.5程度(スポーツ車)であるので、摩擦係数が1を超えると高摩擦と言うことができるからである。
【0013】
(1)高摩擦摺動材及び駆動装置
図1は、本発明の高摩擦摺動材の一実施形態を示すSEM断面図である。この断面図は、基板10の主面11に対して垂直方向に切断したものである。
本実施形態の高摩擦摺動材は、基板10と、該基板の主面11を被覆する接着層20と、該主面に対して直立した多数のカーボンナノチューブ30を含む高摩擦摺動材であり、該カーボンナノチューブは、図示しない閉端部と開端部31を有し、該閉端部が接着層20に埋設されて、カーボンナノチューブ30は基板10に固定されている。また開端部31は接着層20から露出している。
【0014】
基板10は、通常は、後に詳述する本発明の製造方法に従って、カーボンナノチューブを成長させた成長基板からカーボンナノチューブを転写させた基板であり、例えばSi基板である。基板10は接着層20により被覆されている。ここで「被覆」とは、接着層が基板とほぼ密着して存在している状態をいい、例えば、接着層が毛細管現象などによりカーボンナノチューブに吸い上げられて、その部分の接着層が剥がれて浮いたり、無くなったりしているような箇所がほとんど無い状態をいう。このような状態で接着層が存在することにより、カーボンナノチューブと基板との強い界面強度が担保されている。
【0015】
接着層20は、特には限定されないが、エポキシ樹脂などの樹脂を含むことが好ましい。炭素繊維であるカーボンナノチューブとの濡れ性が良いため、より高い接合強度を得ることができるからである。
また接着層は、その材料を基板10の主面11に塗布した後、乾燥して複素粘度を600Pa.s〜30000Pa.s、より好ましくは7200Pa.s〜25000Pa.sの粘性体の層に調製した後に、カーボンナノチューブの端部を埋設して固化形成されることが好ましい。カーボンナノチューブを埋設する直前の複素粘度をこの範囲とすることで、接着層の原料が毛管現象によりカーボンナノチューブ内に吸い上げられることを効果的に抑制し得るからである。
なお、複素粘度とは、動的粘弾性測定(ずりモード)によって測定された粘度のことをいう。
【0016】
カーボンナノチューブ30は、通常、林立しており、基板の主面11に対して直立して接合されている。ここで「直立」とは厳密な意味ではなく、ほぼ直立であればよい。「ほぼ直立」とは、本発明の作用効果を奏する程度に垂直であることをいう。
またカーボンナノチューブ自体も、完全な直線である必要はなく、例えば100倍の低倍率で観察した場合には直線性良く林立してみえるカーボンナノチューブであっても、例えば4000倍の高倍率で観察した場合には、カーボンナノチューブ同士が絡み合った状態で存在することが確認されてもよい。本発明の作用効果を奏することができるからである。
【0017】
本発明で用いられるカーボンナノチューブは、ラマン分光分析法で測定されるID/IGが0.01〜1.5であることが好ましい。
一般的にカーボンナノチューブ自体の強度は、グラファイトの結晶性化度に比例するとされており、グラファイトの結晶性化度の指標であるID/IGが低い程、欠陥が少なく結晶性が良い。結晶性が良いと濡れ性が低くなる傾向があるため、ID/IGが1.5を超えるカーボンナノチューブを用いる場合に比べて、接着層の原料が毛管現象によってカーボンナノチューブ内に吸い上げられることをより抑制し得る。
【0018】
カーボンナノチューブ30の構造は、単層であっても多層であってもよいが、多層であることが好ましい。多層カーボンナノチューブの層間に働く分子間力を利用することができるので、さらなる高摩擦化が可能となり得るからである。
【0019】
カーボンナノチューブ30は、その両端の一方が「開端部」であり、他方が「開端部」である。
すなわち、本発明ではカーボンナノチューブを熱CVD法により形成することが好ましく、この方法では、触媒を成長基板に担持させた後、触媒と炭素源とを反応させることでカーボン堆積を行ってカーボンナノチューブを成長させる。その結果、形成されたカーボンナノチューブを成長基板から剥離すると、成長基板に接合していた端部は開いている。一方、伸長していた端部は閉じている。本明細書中では前者を「開端部」、後者を「閉端部」と呼ぶ。なお、熱CVD法以外の方法で形成されたカーボンナノチューブであっても、「閉端部」と「開端部」を有し得る。
成長基板上に形成されたカーボンナノチューブは、通常、このまま接着層20に被覆された基板10に転写されるため、成長基板上での上下の方向が反対になり、閉端部が接着層20に埋設され、開端部31が接着層20から露出した形になる。
【0020】
カーボンナノチューブ30のうち接着層20から露出した部分の長さは85μm〜120μmであることが好ましい。露出部の長さが短くなると、摩擦係数が小さくなる傾向があり、長さが85μm未満になると摩擦係数は1未満となってしまう。また、この長さの制御は、接着層の材料の複素粘度を、上述のように600Pa.s〜30000Pa.sとすることで、より容易となる。
【0021】
このような本発明の高摩擦摺動材を用いた駆動装置とは、ブレーキパッドやクラッチプレートなど、所定の方向に移動可能な被駆動部材と、該方向に対して垂直な押付け力により該被駆動部材と摩擦係合する駆動部材と、該駆動部材に当接し、該駆動部材を上記方向に往復運動させる駆動力を該駆動部材に入力する駆動源を備えた駆動装置について、被駆動部材、上記駆動部材のいずれか一方又は双方に、本発明の高摩擦摺動材を適用した駆動装置である。
【0022】
(2)高摩擦摺動材の製造方法
図2は、本発明の高摩擦摺動材の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
本実施形態においては、まずSi基板等の基板10の主面11上に、粘性体の層22を形成する。
具体的には、基板10に、例えばエポキシ樹脂等の常温硬化型接着剤などの接着層の材料21を滴下し(図2(a))、スピンコートなどによって塗布する(図2(b))。このときの厚さは、20μm〜55μmであることが好ましい。その後、この接着層の材料21の複素粘度が600Pa.s〜30000Pa.s、好ましくは7200Pa.s〜25000Pa.sとなるように乾燥し、粘性体の層22を得る(図2(c))。
【0023】
上記工程とは別にカーボンナノチューブを合成する。具体的には、成長基板上で例えば、Cを用いた熱CVD法により、カーボンナノチューブを形成する。カーボンナノチューブは、多層カーボンナノチューブであることが好ましく、また直径は20nm〜200nm、長さは100μm〜300μmであることが好ましい。
このようにして成長基板上に形成されたカーボンナノチューブ30を、成長基板100から基板10に転写するように、カーボンナノチューブの閉端部32を粘性体の層22に埋設する(図2(d))。
次いで、粘性体の層22を完全に固化し、その後、成長基板を開端部31から剥離することで、本実施形態の高摩擦摺動材が得られる(図2(e))。
【0024】
なお、熱CVD法によるカーボンナノチューブを用いた摩擦摺動材だけではなく、他の製法によるカーボンナノチューブや、炭素繊維など他の繊維状物質を用いた摩擦摺動材を製造する場合においても、それらの繊維状物質を、被覆した接着層を介して基板に接合する際に、本発明の製造法を応用することができる。すなわち、接着層の材料を基板に塗布した後に、その複素粘度を600Pa.s〜30000Pa.sとすることで、これらの繊維状物質に接着層の材料が毛管現象によって吸い上げられることを抑制できるので、繊維状物質と基板の界面強度向上の強い摩擦摺動材を得ることができる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0026】
(実施例1)
図2に示す製造方法の手順に沿って、摩擦摺動材を作製した。
(a)まず、基板となるSi基板にエポキシ樹脂(3M社製、DP−460)を滴下し、(b)スピンコートを用いて厚さを約30μmに調整してエポキシ樹脂塗布し、(c)その後、複素粘度が25000Pa.sとなるまで乾燥し、(d)Cを用いた熱CVD法により合成された多層カーボンナノチューブ(直径:20nm、長さ:100μm)の先端(閉端部)を接着層に埋設し、(e)完全に硬化した後、カーボンナノチューブの成長基板を剥離して本実施例の摩擦摺動材を得た。
【0027】
なお、複素粘度すなわち動的粘弾性の測定は、非共振強制伸張振動法と呼ばれる測定手法を用いた。この測定手法は試験片に定常的な正弦波変位(ひずみ)を強制的に与えた際、その応答としての荷重(応力)および位相のずれを検出することにより、粘弾性体の力学特性を評価する手法である。
【0028】
(実施例2)
実施例1で示した工程(c)において、複素粘度を7200Pa.sとしたこと以外は実施例1と同様の工程により本実施例の摩擦摺動材を得た。
【0029】
(実施例3)
実施例1で示した工程(c)において、複素粘度を600Pa.sとしたこと以外は実施例1と同様の工程により本実施例の摩擦摺動材を得た。
【0030】
(比較例)
を用いた熱CVD法により合成された多層カーボンナノチューブ(直径:20nm、長さ:100μm)と、その成長基板そのもの(すなわち、実施例1のd工程において、閉端部を接着層に埋設する前のカーボンナノチューブと成長基板)を本例の摩擦摺動材とした。
【0031】
[評価]
上述のようにして得られた実施例及び比較例の摩擦摺動材につき下記の評価を行った。
【0032】
(毛管現象抑制効果の評価)
摩擦摺動材を基板主面に対し垂直方向に切断し、その断面をSEM(Scanning Ion Microscopy)により観察することにより、毛管現象の抑制効果の確認を行った。実施例1の結果及び比較例の結果を、それぞれ図1、図3に示す。
図1においては、約30μmの接着層12が形成されており、エポキシ樹脂の吸上げは確認できなかった。それに対して、図3ではエポキシ樹脂24が吸上がっていることが確認できた。実施例2、3についても同様に観察を行った。
【0033】
実施例1〜3及び比較例の観察結果のまとめを図4に示す。図4において、実施例3では吸上げ長さが比較例の6%程度に抑制されたことが示されている。また、実施例1及び2では、吸上げ長さはほぼ無く、著しく吸上げが抑制されていることが確認できた。
これにより、実施例1〜3では接着層が基板の主面を被覆していること、ひいては界面強度を高く維持していることが確認された。
【0034】
なお、図4の縦軸に示した「基準面からの吸い上げ長さ」とは、図5に示すように、基板平面にエポキシ樹脂を塗布する工程後のエポキシ樹脂の表面を基準面とし、SEM観察におけるエポキシ樹脂の基準面からの高さを意味している。
【0035】
(摩擦特性評価)
実施例1及び比較例で得られた摩擦材に対し、Hysitron Inc.製 High Load tribo Indenterを用い、先端半径84.5μmのダイヤモンド製球形圧子を用いたスクラッチ評価(単一引っ掻き測定)を実施し、摩擦特性を評価した。
結果を表1に示す。この結果より、実施例1の摩擦材は、比較例に比べて摩擦係数がより高く、高摩擦係数を維持していることが確認できた。
【0036】
【表1】

【0037】
以上、本発明を若干の実施例及び比較例を用いて説明したが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の高摩擦摺動材の一実施形態である実施例1の高摩擦摺動材を示すSEM断面図である。
【図2】本発明の高摩擦摺動材の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図3】比較例の摩擦摺動材のSEM断面図である。
【図4】毛管現象抑制効果の評価の結果を示すグラフである。
【図5】「基準面からの吸い上げ長さ」の定義を示す説明図である。
【符号の説明】
【0039】
10 基板
11 主面
20 接着層
21 接着層の材料
22 粘性体の層
24 エポキシ樹脂
30 カーボンナノチューブ
31 開端部
32 閉端部
100 成長基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板の少なくとも一方の主面を被覆する接着層と、該基板の主面に対して直立したカーボンナノチューブを含む高摩擦摺動材であって、
上記カーボンナノチューブが、閉端部と開端部を有し、該閉端部が上記接着層に埋設されて上記基板に固定され、
上記開端部が上記接着層から露出している
ことを特徴とする高摩擦摺動材。
【請求項2】
上記カーボンナノチューブを上記基板に固定する際に、
上記接着層の材料を上記基板に塗布した後に、乾燥して複素粘度が600Pa.s〜30000Pa.sの粘性体の層とし、
上記粘性体の層に上記閉端部を埋設した後に、この層を固化して接着層を形成する処理を施されて成る
ことを特徴とする請求項1に記載の高摩擦摺動材。
【請求項3】
上記複素粘度が7200Pa.s〜25000Pa.sであることを特徴とする請求項2に記載の高摩擦摺動材。
【請求項4】
上記カーボンナノチューブは、ラマン分光分析法で測定されるID/IGが0.01〜1.5であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の高摩擦摺動材。
【請求項5】
上記カーボンナノチューブが、多層カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の高摩擦摺動材。
【請求項6】
上記接着層が、樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の高摩擦摺動材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つの項に記載の高摩擦摺動材を製造するに当たり、
上記接着層の材料を上記基板に塗布した後に、乾燥して複素粘度が600Pa.s〜30000Pa.sの粘性体の層とし、
上記粘性体の層に上記閉端部を埋設した後に、この層を固化して接着層を形成する
ことを特徴とする高摩擦摺動材の製造方法。
【請求項8】
所定の方向に移動可能な被駆動部材と、該方向に対して垂直な押付け力により該被駆動部材と摩擦係合する駆動部材と、該駆動部材に当接し、該駆動部材を上記方向に往復運動させる駆動力を該駆動部材に入力する駆動源を備えた駆動装置において、
上記被駆動部材及び/又は上記駆動部材に、請求項1〜6のいずれか1つの項に記載の高摩擦摺動材を適用したことを特徴とする駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−70587(P2010−70587A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−236358(P2008−236358)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】