説明

高架橋の化粧構造および化粧構造施工方法

【課題】軽量、施工容易で、仕上がりも美しい高架橋の化粧構造および化粧構造施工方法を提供すること。
【解決手段】高架橋1は、表面の床材2、梁3、橋脚4、足材5、下地材7、および膜材6とから構成される。表面の床材2はコンクリート製で、表面にアスファルトが敷かれる等で車道を構成する。梁3、および橋脚4は、高架橋1の強度メンバである。この発明に係る高架橋の化粧構造では、梁3の裏面が膜材6で覆われる。膜材6を美しく張るためには、同図に示すように、下地材7、および線状(直線状)の足材5が架設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高架橋の化粧構造および化粧構造施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、高架高速道路橋における道路面の裏側や、鉄道の高架橋における鉄道線路面の裏側(下側)は、梁を構成する鉄骨やコンクリートがむき出しになっている。そして、当該裏側には、隙間を縫うように排水管、照明用の電線ケーブル等が張り巡らされている。たとえば、我が国の首都高速道路の高架橋は、大半が昭和30年代後半の基礎設計のまま、必要な補強、設備を事後的に付与して現在に至っている。そして、付与機能を重視するあまり、外観として補強部材が煩雑に露出して美観を損ねており、さらに、それらは長年の排ガスで汚れていたり、鳥類による糞害も生じているのが現状である。この問題に対し、当該高架橋の裏面を化粧板で覆ったり、金属製のルーバーで均一に塞ぐ技術が知られている(たとえば、特許文献1、2)。
【0003】
【特許文献1】特開平6−41921号公報
【特許文献2】特開平11−100811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記化粧板は、重量が大きく、高架橋の構造要素としては好ましいものではなかった。また、ルーバーは、金属加工によって成形されるので、さまざまな曲率のカーブを含んで建設される高架橋の裏面に合わせて曲線状に形成することは実質的に困難である。そして、当該ルーバーもまた、重量が大きく、高架の上に配置するものとして好ましいものではない。また、設置作業においても、手間と時間とコストがかかる。
【0005】
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、軽量で曲線路にも施工が容易となり、かつ新たな美観を供与でき、これによりコスト抑制を図ることができる高架橋の化粧構造および化粧構造施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、この発明による高架橋の化粧構造は、高架橋の裏面を覆う膜材を有するようにしたものである。
【0007】
高架道路橋、高架鉄道橋等の高架橋の裏面が膜材で覆われることにより、梁や配管等がむき出しになっていた裏面の煩雑構造や汚れた外装が覆い隠され、当該高架橋に新たな美観を供与することができる。また、膜材は、化粧版やルーバーと比較して、軽量なので、施工も容易となる。また、膜材が軽量であることから、既存の高架橋の橋脚等に重量増加のための補強も不要で、膜材張設計画の促進に寄与できる。なお、膜材の張設は、直にボルトで張ってもよいし、段差をつけたり、よりテンションを付与して張るには、床板や主桁に付設される線状にあてがうように張ればよい。
【0008】
つぎの発明による高架橋の化粧構造は、前記高架橋の化粧構造において、前記膜材は、前記高架橋の側面も覆うようにしたものである。
【0009】
通常、高架道路橋、高架鉄道橋等の高架橋の裏面は、幅方向中央部に窪みが形成されている。この発明では、当該窪みのみを覆うのではなく、両側面および裏面を覆うので、当該高架橋元来の形状によらず、新たな美観を供与できるようになる。つまり、外観形状からすれば、表面の道路や鉄道レール面のみ同じで、側面、裏面は、それまでとは全く異なる形状、色彩、質感を付与することができる。
【0010】
つぎの発明による高架橋の化粧構造は、前記高架橋の化粧構造において、前記膜材は、帯状に分割して張設されるようにしたものである。
【0011】
膜材が帯状に分割されていれば、それをロールに巻いて現地までトレーラまたはトラックで搬送することができる。そして、膜材全体を帯状に分割して張設できると、当該ロールを解放して張設すれば済むので施工上便利となる。また、将来、膜材を張り替えるときでも、分割された一部の膜材を張り替えればよいので、この点でも有利である。また、部分的に傷ついたり、汚れがひどくなった場合も、最小構成となる当該部分の帯状膜材を張り替えればよく、経済的である。
【0012】
つぎの発明による高架橋の化粧構造は、前記高架橋の化粧構造において、帯状に分割して張られた前記膜材は、互いに密着されるようにしたものである。
【0013】
膜同士は、帯状に分割して張られるが、そのままでは、互いに分離している。この発明では、これらの隙間をなくすために互いの膜材の縁部が縫合、接着、溶着その他の方法で密着される。これにより、分割して張られた膜材が一体化し、隙間からの塵、ほこりの侵入が防止される。
【0014】
つぎの発明による高架橋の化粧構造は、前記高架橋の化粧構造において、前記高架橋等の前記膜材が張られる面に複数の足材が設けられ、当該足材の先端に設けられる係合手段に、膜材側と一体になった被係合手段が係合されるようにしたものである。
【0015】
この発明による係合手段により、膜材の張設が容易となる。特に帯状の膜材の所定位置に設けられる被係合手段を係合手段にはめ込むだけで施工が完了する。
【0016】
つぎの発明による高架橋の化粧構造は、前記高架橋の化粧構造において、前記帯状の膜材は、前記高架橋の長手方向に対して直角方向に張設されるようにしたものである。
【0017】
つぎの発明による高架橋の化粧構造は、前記高架橋の化粧構造において、前記帯状の膜材は、前記高架橋の長手方向に対して平行に張設されるようにしたものである。
【0018】
この発明における膜材は、帯状なので、前記高架橋の長手方向(一般には橋軸方向という。)に対して直角方向でも平行方向でも張設することができる。直角方向にするか、平行方向にするかは、対象となる高架橋の構造特性によって判断する。たとえば、幅が狭い高架橋で、長手方向に長い構造を対象とするならば、当該幅と同幅の帯状とした膜材を当該高架橋の長手方向に平行に張設すれば、施行時間が大幅に短縮される。また、片側2車線以上、鉄道複々線のように比較的幅の広い高架橋であれば、橋軸に直角方向で膜材を張設する。
【0019】
つぎの発明による高架橋の化粧構造は、前記高架橋の化粧構造において、前記膜材は、ガラス繊維にポリ塩化ビニル樹脂が被覆されるようにしたものである。
【0020】
ガラス繊維にポリ塩化ビニル樹脂を被覆した膜材は、高い透光性を有する。これにより、膜材の内側に照明を設けて、間接照明とすることもできる。また、当該膜材は、拡散性も有することから、照明輝度の緩和、照度の均一化、および照明の種類との組み合わせで省エネも実現できる。また、当該膜材は、引っ張り強さが大きいので、縁部を固定してやれば、十分その上に人間が載って作業することができ、足場が不要となる。また、引っ張り強さが大きいので、テンションを付与すれば、膜材の大きなだぶつきを抑えることができ、仕上がりが綺麗で、美観の供与に資する。
【0021】
つぎの発明による高架橋の化粧構造は、前記高架橋の化粧構造において、前記膜材は、ガラス繊維にフッ素樹脂が被覆されるようにしたものである。
【0022】
ガラス繊維にフッ素樹脂が被覆されると、引っ張り強さが、極めて大きくなる。したがって、大きなテンションを付与することができ、膜の平面度を上げることも可能となる。これにより、膜材のだぶつきもない綺麗な仕上がりとなる。また、フッ素樹脂の被覆により、撥水性もよくなり、汚れがつきにくくなるという性質も付加される。
【0023】
つぎの発明による高架橋の化粧構造は、前記高架橋の化粧構造において、前記膜材は、最表層に光触媒微粒子を含有されているようにしたものである。
【0024】
最上層へ光触媒微粒子を含有されれば、光(紫外線)が当たることにより、汚れ成分が分解され、長期間の使用でも、汚れ方が少なく、美観を保つという発明の目的をより効率よく実現できる。なお、最表層とは、膜の最上層であって、最も表面にある層の意味である。
【0025】
つぎの発明による高架橋の化粧構造施工方法は、先端に被係合手段を有する線状足材を、高所作業車で高架橋の裏面に取り付ける工程と、テンションを加えながら膜材と一体になった係合手段を前記被係合手段に係合する工程と、を含むようにしたものである。
【0026】
高架橋の裏面に何かを取り付けるときには、通常裏面全面に足場を組み、当該足場の上で作業をする必要がある。それに対し、この発明では、主として高所作業車での作業で、高架橋の裏面に膜材を張設することもできる。これにより、高架橋の下が道路であった場合の車線規制が最小限で済み、施工時の交通渋滞を抑制することができる。
【0027】
つぎの発明による高架橋の化粧構造は、最終的に形作る膜材形状と同形状の骨組みであるフレームと、前記フレームに巻き付けられる膜材と、前記フレーム端部に付設され、前記膜材にテンションを付与した状態で固定するテンショナーと、高架橋の裏面の主桁に設けられる固定手段と、前記フレームに設けられ、前記固定手段に固定される被固定手段と、を有するようにしたものである。
【0028】
つぎの発明による高架橋の化粧構造施工方法は、最終的に形作る膜材形状と同形状の骨組みであるフレームに、膜材を巻き付ける工程と、前記フレームに付設されるテンショナーで前記膜材にテンションを付与して固定する工程と、前記膜材が巻き付けられた前記フレームを高架橋の主桁に固定する工程と、を含むようにしたものである。
【0029】
フレームに巻き付けられる膜材は、テンショナーで締め付けられ、当該フレームと膜材とは一体のユニットとなる。このユニットを工場で組み立て、高架橋の現場に搬送し、吊り上げて、主桁の固定手段にフレームの被固定手段が固定されれば、施工が極めて短時間で済む。短時間で済むということは、交通規制を引かねばならない時間が少なくなるから、下が道路である高架橋の施工としては、交通渋滞を抑制することができる優れた工法となる。
【0030】
つぎの発明による高架橋の化粧構造施工方法は、橋桁と橋桁の間の一部であって、主桁の直下にステージを設ける工程と、前記ステージ上で、前記主桁に平行に付設する複数あるレールの溝に、膜材に付設する係合手段を通し、当該膜材を押し広げる工程と、前記膜材にテンションを与える工程と、を含むようにしたものである。
【0031】
従来の高架橋裏面作業と異なり、本発明は、高架橋の橋桁間の一部にステージを設けるのみで、膜の張設作業ができるから、占有する領域が少なくて済む。その結果、交通規制を引かねばならない領域が少なくできるから、下が道路である高架橋の施工としては、交通渋滞を抑制することができる優れた工法となる。
【0032】
つぎの発明による高架橋の化粧構造施工方法は、前記化粧構造施工方法において、前記膜材にテンションを付与する工程は、複数ある前記レールの溝に前記膜材の前記係合手段を通すとき以前であるようにしたものである。
【0033】
この発明では、レールの溝に膜材の係合手段を通すときに、膜材にテンションが付与されているから、次々に膜材の係合手段を通していくだけで、当該膜材は押し広げられ、作業が容易となる。なお、ステージ上でテンションを付与するので、新たな足場が不要である。その結果、交通規制を引かねばならない領域が少なくできるから、下が道路である高架橋の施工としては、交通渋滞を抑制することができる優れた工法となる。
【0034】
つぎの発明による高架橋の化粧構造施工方法は、前記化粧構造施工方法において、前記膜材にテンションを付与する工程は、複数ある前記レールの溝に前記膜材の前記係合手段を通し、前記膜材を押し広げた後、前記レール同士の幅を変えてテンションを付与するようにしたものである。
【0035】
テンションの加え方は様々であるが、この発明では、膜材の係合手段を次々にレールの溝に通していき、通し終わったあとで、牽引用具、例えばレバーブロック(登録商標)等のチェーンレバーホイストを使ってレールを左右にずらす。これにより、膜材の幅が変わり、テンションを付与できる。なお、レール同士の幅を変えてテンションを付与する際、作業者は、レールの両端部、またはレールに一定間隔におかれる定位置に行く必要があるが、膜材は、引っ張り強度が十分あるので、係合手段がレールの溝に係合されていれば、当該膜材の上を作業員が歩いて端部または当該定位置まで行くことができ、テンションを付与する作業にも足場が不要である。その結果、交通規制を引かねばならない領域が少なくできるから、下が道路である高架橋の施工としては、交通渋滞を抑制することができる優れた工法となる。
【0036】
つぎの発明による高架橋の化粧構造施工方法は、前記化粧構造施工方法において、前記膜材にテンションを付与する工程は、複数ある前記レールの溝に前記膜材の前記係合手段を通し、前記膜材を押し広げた後、定位置でテンショナーを締めてテンションを付与するようにしたものである。
【0037】
この発明では、膜材を押し広げた後、定位置でテンショナーを締めてテンションを付与する。膜材を押し広げた後にテンションを付与すると、膜材のしわや、テンションの具合を具体的に見ながら作業できるので、膜材張設の施工としては、より美しい仕上がりを得ることができる。なお、テンションを付与する際、作業者は、定位置に行く必要があるが、膜材は、引っ張り強度が十分あるので、係合手段がレールの溝に係合されていれば、当該膜材の上を作業員が歩いて定位置まで行くことができ、テンションを付与する作業にも足場が不要である。その結果、交通規制を引かねばならない領域が少なくできるから、下が道路である高架橋の施工としては、交通渋滞を抑制することができる優れた工法となる。
【発明の効果】
【0038】
以上説明したように、この発明に係る高架橋の化粧構造および化粧構造施工方法によれば、高架橋が裏面(道路や鉄道の使用に供される面を表面としたときの裏面)を覆う膜材を有するので、梁や配管等がむき出しになっていた裏面の煩雑構造や汚れた外装が覆い隠され、当該高架橋に美観を供与することができる。また、膜材は、化粧板や金属ルーバーと比較して、軽量なので、施工も容易で、材料の安さもあって、総合的にコストの抑制が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるものが含まれるものとする。
【実施例1】
【0040】
図1は、この発明の実施例1に係る高架橋の断面構成を示す断面図である。この高架橋1は、我が国の首都高速道路の例である。高架橋1は、表面の床材2、梁3、橋脚4、足材5、下地材7、および膜材6とから構成される。表面の床材2はコンクリート製で、表面にアスファルトが敷かれる等で車道を構成する。梁3、および橋脚4は、高架橋1の強度メンバである。この発明に係る実施例1では、梁3の裏面が膜材6で覆われる。膜材6を美しく張るためには、同図に示すように、下地材7、および直線状の足材5が架設される。
【0041】
図2は、下地材7、および足材5を示す平面図である。ここでは、下地材7が、直線状の足材5と格子を形成しているが、この発明の実施に必ずしも下地材7は必要でない。膜材6は、直線状の足材5にあてがわれる、またはガイドされる形で、高架橋の裏面(一部であってもよいし、全部であってもよい)および美観の付与等のために必要であれば、側面までを覆う。
【0042】
図3は、図1のA部の拡大図である。足材5の先端にはファスナー8(係合手段)が付設される箇所があり、膜材6に一体となったエッジロープ13(ロープ状部材で被係合手段)がくわえ込まれて固定される(図6参照)。膜材6の最縁部は、足材5に付設される固定材9で固定される。図4は、図3の固定材9の拡大図であり、図5は、固定材9のB方向から見た外観図である。膜材6の最縁部にも、エッジロープ10があり、それが固定材9にボルト12で結合されるプレート11に押さえ込まれ、抜けないようになっている。
【0043】
図6は、図3のファスナー8を示す拡大図である。図7は、図6のC方向から見た外観を示す外観図、図8は、図7の外観を上から見たときの外観を示す外観図である。ファスナー8は、膜材6と一体のエッジロープ13をロープエッジクランプ14でくわえる構造である。そして、ロープエッジクランプ14は、ボルト16でプレート15に固定され、当該プレート15は、足材5に固定される。
【0044】
このように、高架橋が裏面(道路や鉄道の使用に供される面を表面としたときの裏面)を覆う膜材を有すると、梁や配管等がむき出しになっていた裏面の煩雑構造や汚れた外装が覆い隠され、当該高架橋に美観を供与することができる。また、膜材は、化粧板や金属ルーバーと比較して、軽量なので、施工も容易で、材料の安さもあって、総合的にコストの抑制が可能となる。
【0045】
具体的な重さを比較してみると、従来、アルミ製の化粧版を用いた場合、1平方メートルあたり30〜50kgfの重さだったのが、この発明にかかる膜材の使用では、1平方メートルあたり10kgf(下地材、足材を含める)の重さで済む。これにより、1平方メートルあたりの施工費用は、甲殻構造と比べ軽い膜材料を使用することによって、主構造に与える影響が少なくなり、ユニット、または、システム化も容易であり、施工時間・工期の短縮も図れることから2割以上安くなる。
【0046】
また、膜材は、鋼材や、アルミ材よりも寸法公差に対するフレキシビリティがあり、足材との相対位置は、鋼材等よりもシビアにする必要がないという特徴もある。たとえば、アルミ製パネルであれば、取り付け穴が5mmずれてしまうと、取り付け不可能となるが、膜材であれば、5mmの違いは、テンションを利用して吸収可能である。また、膜材は、工場での寸法裁断が容易で、扇型にすることも容易である。これにより、カーブした高架橋にも容易に対応可能となる。
【0047】
また、従来、化粧板設置の場合は、重み対策として、橋梁に補強が必要となっていたが、この膜材を使用するのであれば、軽量なので、当該補強は不要となり、経済的である。
【0048】
膜材は、足材次第で、三次元的で立体的な造形が容易となるのも、この発明の特徴の一つである。膜材であれば、プリントや、フィルム貼り付けにより、地域景観に合わせたり、天候によらず、常に清々しい青空を描いたり、投射することが可能で、上空の高架橋の圧迫感さえ、軽減させることも可能である。また、商業的には、地域ブランド、名産品等の宣伝広告効果を持たせることが容易となる。さらに、膜材の最表層への樹脂コーティングにより、ラメを入れたり、玉虫色、虹色のように色の変化を持たせるようにすることもできる。
【0049】
さらに、照明を膜材の内側に配置したり、当該膜材に照明を当てて間接照明にすることが可能で、高架橋の桁下を走る自動車のドライバーに優しい光を提供できる。また、膜材に蓄光機能を付加することにより、夜間でも光を発するようにすることも可能である。さらに、膜材の最表層に光触媒微粒子を含有させることにより、窒素酸化化合物(NOx)を除去し空気浄化の性能も有するようになることから省エネ、環境にも寄与できる。
【0050】
高架道路橋、高架鉄道橋等の高架橋の裏面は、幅方向中央部に窪みが形成されているのが通常である。この発明では、当該窪みのみを覆うのではなく、両側面および裏面まで覆うこともできるので、当該高架橋元来の形状によらず、新たな造形による美観を供与することもできる。なお、本明細書にて「膜材」という場合には、建築基準法37条1号2号の要件を満たす、建築材料としての「膜材」を考えればよい。
【0051】
図9−1〜9−3は、この発明の実施例にかかる化粧構造の施工方法を示す説明図である。膜材の張設は、高架橋の軸方向(これを橋軸方向という。)に直角となるように帯状に分割して行う方法と、当該橋軸方向で平行に分割して行う場合がある。まず、直角に分割して行う方法について説明する。
【0052】
まず、高架橋1の裏面に、先端に被係合手段(ファスナー)を有する足材(直線状の足材)5を取り付ける。足材5は、橋軸に平行となる方向を長手方向として取り付ける。これは高所作業車20で行うことができる(図9−1)。従来ならば、裏面全体に鉄骨やアルミで足場を組まなくてはならなかったが、この発明は膜材を利用するので、軽量で、足材への定着が良く、足材5や下地材は、最小限で済むか、または不要である。
【0053】
次に、膜材6と一体になった被係合手段(エッジロープ)を係合手段(ファスナー)に係合しながら、ロール状で搬入される膜材6を一気に橋軸方向と直角方向に引き出していく。これも高所作業車20で行う(図9−2)。最後に、膜材にテンションを付与して、膜材6の所望形状への形成が完了する(図9−3)。
【0054】
膜材が帯状に分割されていれば、それをロールに巻いて現地までトレーラまたはトラックで搬送することができる。そして、膜材全体を帯状に分割して張設できると、当該ロールを解放して張設すれば済むので施工上便利となる。また、将来、膜材を張り替えるときでも、分割された一部の膜材を張り替えればよいので、この点でも有利である。また、部分的に傷ついたり、汚れがひどくなった場合も、最小構成となる当該部分の帯状膜材を張り替えればよく、経済的となる。
【0055】
また、上記のように、この発明では、高所作業車での作業のみで、高架橋の裏面に膜材を張設することができる。これにより、高架橋の下が道路であった場合の車線規制が最小限で済み、施工時の交通渋滞を抑制することができる。高速道路や鉄道路に関する施行、特に都心や大都市での施行において、交通渋滞の抑制は、施行日程、費用に影響する重要なファクターである。
【0056】
帯状に分割して張られた前記膜材は、互いに密着されるようにしてもよい。密着させない場合は、風通しがよくなり、膜材内部のカビが繁殖しにくいというメリットもあるが、虫や鳥がすきまから侵入するのを防止するためには、分割されて帯状となった膜材同士の隙間に防虫、防鳥ネットを架設するようにしてもよい。さらに、帯状の膜材同士の隙間をなくすために互いの膜材の縁部を縫合、接着、溶着その他の方法で密着させる。これにより、分割して張られた膜材が一体化し、隙間からの塵、ほこりの侵入が防止されるという効果が生じる。
【0057】
膜材を高架橋の長手方向(一般には橋軸方向という。)に対して直角方向にするかどうかは、対象となる高架橋の構造特性によって判断する。たとえば、片側2車線以上、鉄道複々線のように比較的幅の広い高架橋であれば、橋軸に直角方向で膜材を張設する方が一般にテンションを付与しやすい。
【0058】
図10−1〜10−3は、この発明の実施例にかかる化粧構造の施工方法を示す説明図である。ここでは、当該橋軸方向に平行で分割して行う場合を説明する。まず、高架橋1の橋脚21間の裏面に、先端に被係合手段(ファスナー)を有する足材(線状の足材)22を取り付ける。これも高所作業車20で行うことができる(図10−1)。従来ならば、裏面全体に鉄骨やアルミで足場を組まなくてはならなかったが、この場合も、図9−1の場合と同様に足材5や下地材は、最小限で済む。
【0059】
次に、膜材6と一体になった被係合手段(エッジロープ)を係合手段(ファスナー)に係合しながら、ロール状で搬入される膜材6を一気に橋軸方向と平行に引き出していく。これも高所作業車20で行う(図10−2)。最後に、膜材にテンションを付与して、膜材6の所望形状への形成が完了する(図10−3)。この発明では、高所作業者での作業のみで、高架橋1の裏面に膜材6を張設することができる。これにより、高架橋1の下が道路であった場合の車線規制が最小限で済み、交通渋滞を抑制することができるという効果がある。
【0060】
膜材を橋軸に平行とするかは、対象となる高架橋の構造特性によって判断する。たとえば、幅が狭い高架橋で、長手方向に長い構造を対象とするならば、当該幅と同幅の帯状とした膜材を、当該高架橋の長手方向に平行に張設すれば、施行時間が大幅に短縮される。
【0061】
ここで、膜材の材質について説明する。図18は、膜材の構造の例を示す断面図である。膜材62は、特に限定されないが、強化材料として繊維材料65、66に、被覆層64が被覆されたものを一般に使用できる。たとえば、繊維材料65、66として麻や綿、ケナフ等の天然繊維、ナイロンや高強度ポリエステル系合成繊維、ガラス繊維、金属繊維や炭素繊維等の無機繊維が利用でき、被覆層としてポリ塩化ビニル樹脂やフッ素樹脂、シリコン樹脂、シリコンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム等の合成樹脂や合成ゴムが被覆されるものを使用できる。さらに、これらの最表層63にフッ素樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の高分子化合物による防汚処理がなされているものや、光触媒微粒子63aが含有されるもの等、その他、建築基準法37条1号2号の要件を満たし、建築構造物に使用されるものを利用できる。
【0062】
ガラス繊維にポリ塩化ビニル樹脂を被覆した膜材は、高い透光率を有する。これにより、膜材の内部に設けた照明が間接照明となり、下部を通る車のドライバーがまぶしくなくなる。また、施工時で言えば、高架橋の裏面で作業をする者が外からの光を利用することもできるので、作業しやすくなる。たとえば、裏面にある配管の工事、電気ボックスの工事等を昼間にしなければならないとき、膜材で閉じた空間であっても作業がしやすい。また、膜材を張設する施工時でも同様に、当該膜材自身の上に載って作業する際、外からの光が遮断されず、作業がしやすくなる。当該膜材は、引っ張り強度が大きいので、縁部を固定してやれば、十分その上に人間が載って作業することができる。また、引っ張り強さが大きいことから、テンションを加えれば、膜材のだぶつきを抑えることができ、仕上がりが綺麗で、美観の供与に資する。
【0063】
ガラス繊維にフッ素樹脂が被覆されると、引っ張り強度が、極めて大きくなる。このため、大きなテンションをかけることができ、膜の平面度を上げることも可能となる。これにより、膜材のだぶつきもない綺麗な仕上がりとなる。また、フッ素樹脂の被覆により、撥水性もよくなり、汚れがつきにくくなるという性質も付加される。
【0064】
また、膜材の最表層63にフッ素樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の高分子化合物による防汚処理がなされているものを採用すれば、長い年月の使用でも、汚れにくく、クリーニングも容易で、経済的にも実用的である。さらに、最表層へ光触媒微粒子を含有するようにすれば、光(紫外線)が当たることにより、汚れ成分が分解され、長期間の使用でも、汚れ方が少なく、美観を保つという発明の目的をより効率よく実現できる。
【実施例2】
【0065】
図11〜17は、この発明の実施例2にかかる化粧構造、および化粧構造施工方法を示す説明図である。具体的に、図11は、膜材を張設するフレームの例を示す外観図、図12は、図11のフレームに膜材を巻き付けたものを示す外観図、図13は、ユニットとなった膜材を高架橋の裏面の主桁に取り付けた状態を示す断面図、図14は、膜材にテンションをかける構造の例を示す断面図、図15は、ユニットの搬入、取り付け施工方法の例を示す説明図、図16は、ユニットの搬入、取り付け施工方法の別の例を示す説明図、および図17は、一定距離の高架橋に対する理想的な膜材構成を示す説明図である。
【0066】
この実施例2では、膜材と、それが巻き付けられるフレームとをユニット化して、それを施工現場で容易に高架橋裏面に取り付けられるようにした構造および施工方法を説明する。施工にあたり、まず、最終的に形作る膜材形状と同形状の骨組みであるフレーム30を用意する(図11参照)。これはアルミ材、鋼材等の金属製を溶接して構成したものに限らず、後述するテンションに耐えられるのであれば、樹脂でもよいし、または金属と樹脂の組み合わせでもよい。部位にかかる荷重、方向を考えれば、接合方法は、溶接でなくても、ボルト結合でもよい。
【0067】
このフレーム30の端部には、後で膜材にテンションを付与するためのテンショナー31が付設される。図のように折れ曲がった概W字状に形成するには、屈折部分に膜材を係合させるためのファスナーも設けるようにする。さらに、後述するように、高架橋の主桁に固定するためのボルト穴、ボルト、またはステーその他の被固定手段をフレームの適当な箇所に設けておく。なお、このフレームは、概W字状に屈曲しているが、高架橋では、床板のひび割れ等で漏水がある場合がないとは言えないので、その場合にW字の勾配で水を集め、底にドレン穴を設けて抜きやすくするための工夫である。
【0068】
フレーム30は、どの部分も同じ太さで形成する必要はなく、膜材のテンションに耐えられるように、端部32は相対的に太く、中央部33は、相対的に細くして材料費を節約することもできる。中央部33は、ほとんど圧縮応力しか受けないからである。フレームが完成したら、つぎに、当該フレームに膜材を巻き付ける(図12参照)。
【0069】
膜材34の巻き付け方としては、取り付け後に上側になる側を省いて巻き付ける方式(シングル方式)と、当該上側および下側の両方に巻き付ける方式(ダブル方式)とがある。なお、このユニットの幅35は、3.5m以下にすると、トラックで輸送するのに適した大きさとなる。
【0070】
ここで、シングル方式(片面巻き)を採用するときのテンションの付与方法を説明する(図14参照)。フレーム32には、ステー42を介して固定板39が固定される。この固定板39には、膜材34のエッジロープ41をくわえるロープエッジクランプ40が固定される。ロープエッジクランプ40は、膜材34をくわえた後、固定板39に対してボルトで引き込められ、これにより膜材34にテンションが付与される。ダブル方式(両面巻き)では、端部のフレーム32を、その内側のフレームから外側に押し出す(ねじで両フレーム間隔を広げる)ようにしてやればよい。なお、どちらの方式であっても、膜材34の上にグラスウール48を載設、挟設、充填すれば、遮音機能を付加することができる。
【0071】
ユニット43の搬入方法としては、トラック44を高架橋37の橋軸に直角に横着けさせる方法がある。この場合、ユニットをそのままウィンチ46およびワイヤーケーブル45で吊り上げ、図13の主桁36に固定すれば施工が完了する(図15参照)。また、トラック44を高架橋37の橋軸に平行に着けさせる方法もある。この場合、ユニットをウィンチ46およびワイヤーケーブル45で吊り上げ、上空で90度回転させ、さらに所定位置にワイヤーケーブルを使って誘導し、固定する(図16参照)。このとき、トラック44は、桁下の道路の1車線しか使わず、あとは上空での作業のため、交通規制も最小で済むというメリットがある。
【0072】
フレームに巻き付けられ、テンショナー31によりテンションが付与されてユニットとなった膜材34は、高架橋37の主桁36に設けられるボルト等の固定手段と、フレームに設けられるボルト穴、ステー等の被固定手段とが結合されて、当該高架橋37の主桁36に固定される。もちろん、主桁36にもボルト穴、フレーム側にも穴で、双方を貫くボルトで固定してもよい。
【0073】
このように、ユニットを工場で組み立て、高架橋37の現場に搬送し、吊り上げて、主桁36の固定手段にフレームの被固定手段が固定されれば、施工が極めて短時間で済む。短時間で済むということは、交通規制を引かねばならない時間が少なくなるから、下が道路である高架橋の施工として、交通渋滞を抑制することができる。
【0074】
実際の施工現場で、最も交通規制を抑制したい箇所は交差点である。このため、膜材50の張設施工時間が最も短くて済むユニット取り付け方法、すなわち、吊り上げて、そのまま固定すればよいユニット54〜57を使う施工方法を交差点部51で、その他の一般部52は、1車線のみの交通規制でよいユニット58〜60を利用する施工方法と分けて施工するのも現実的である(図17参照)。
【実施例3】
【0075】
図19は、この発明の実施例3にかかる化粧構造施工方法を示す説明図である。同図に示すように、この実施例3では、まず、高架橋70の橋脚71と橋脚71の間の一部、通常は橋桁付近であって、主桁75の直下にステージ72を設ける。そして、ステージ72上で、主桁75に平行に付設される複数のレール(図20、21参照)の溝に、膜材74に付設する係合手段を通し、膜材74を桁下一杯に押し広げる。その後、膜材74にテンションを付与する。
【0076】
従来の高架橋裏面作業と異なり、この実施例3にかかる化粧構造施工方法は、高架橋の橋桁間の一部にステージを設けるのみで、膜の張設作業ができるから、占有する領域が少なくて済む。その結果、交通規制を引かねばならない領域が少なくできるから、下が道路である高架橋の施工としては、交通渋滞を抑制することができる優れた工法となる。
【0077】
図20は、膜材にテンションを付与した状態で、主桁のレールに通し、押し広げる構造を示す断面図である。主桁75には、レール兼支持金具76が付設される。膜材の縁部は、縁部固定治具77が取り付けられることで一定のテンションが付与された状態となる。その状態の膜材は、当該縁部固定治具77と一緒に当該レール兼支持金具76に通され、レール兼支持金具76に沿って押し広げられる。この工程は、複数あるレール兼支持金具76に対して行われる。なお、レール兼支持金具76と、縁部固定治具77とは図示した形状のものに限らず、係合し、かつ、縁部固定治具76が落下しないものであればよい。また、縁部固定治具77は、さらに、テンションの調整ができるように、ボルトによって伸縮自在となる部分をその構造に付設しておくのが好ましい。
【0078】
この発明では、レールの溝に膜材の係合手段を通すときに、膜材にテンションが付与されているから、次々に膜材の係合手段を通していくだけで、当該膜材は押し広げられ、作業が容易となる。なお、ステージ上でテンションを付与するので、新たな足場が不要である。その結果、交通規制を引かねばならない領域が少なくできるから、下が道路である高架橋の施工としては、交通渋滞を抑制することができる優れた工法となる。
【0079】
図21は、主桁のレールに通し、押し広げた後で、膜材にテンションを加える構造を示す断面図である。この施工に用いる具体的な構造は、一般に複数ある主桁75側にレール兼支持金具76が固定され、膜材85側に係合手段78が設けられる構造である。膜材85の縁部に固定される係合手段は、レール兼支持金具76が水平方向に移動しても抜けないように係合している。
【0080】
施工は、レール兼支持金具76の溝に膜材85の係合手段78を通し、膜材85を桁下に押し広げた後、レール兼支持金具76同士の幅を変えて膜材にテンションを付与する。そのため、レール兼支持金具76は、主桁75に完全に固定されるのではなく、左右からボルトで固定され、左を緩めて右を締めるというように、水平方向位置が微調整できるようにしておく。
【0081】
レール同士の幅を変えてテンションを付与する際、作業者は、レールの両端部、またはレールに一定間隔におかれる定位置に行く必要があるが、膜材は、引っ張り強さが十分あるので、係合手段がレールの溝に係合されていれば、当該膜材の上を作業員が歩いて端部または当該定位置まで行くことができ、テンションを付与する作業にも足場が不要である。その結果、交通規制を引かねばならない領域が少なくできるから、下が道路である高架橋の施工としては、交通渋滞を抑制することができる優れた工法となる。
【0082】
図22〜24は、膜材を押し広げた後にテンションをかける別の構造を示す断面図である。図22に示す構造では、主桁75をレールとして主桁と平行に移動可能で、主桁を挟み込む挟み込み手段79が設けられる。当該挟み込み手段79には、ロールガイド80とロープエッジクランプ81(テンショナー)が固定されている。したがって、この構造を採用する場合、膜材を押し広げた後、ロープエッジクランプ81の箇所まで、膜材上を作業員が歩いていき、ロープエッジクランプ81を締めることになる。なお、挟み込み手段79は、すべりをよくするために、テフロン(登録商標)等のフッ素樹脂板82を主桁との間に挟んでおくとよい。
【0083】
図23は、複数の作業員が膜材を広げた後、ロープエッジクランプ84の箇所に複数の作業員が待機し、ロープエッジクランプ84を締めて膜材92にテンションを加える構造を示している。また、図24は、図22の変形で、ロープエッジクランプ90を締める方向を水平方向にして作業性を向上させたものである。この場合も図22に示す構造と同様に、主桁75を挟み込む挟み込み手段88、それに固定される固定板89、当該固定板89に固定されるロープエッジクランプ90、およびロールガイド91が設けられる。
【0084】
膜材を押し広げた後にテンションを付与すると、膜材のしわや、テンションの具合を具体的に見ながら作業できるので、膜材張設の施工としては、より美しい仕上がりを得ることができる。なお、テンションを付与する際、作業者は、定位置に行く必要があるが、膜材は、引っ張り強度が十分あるので、係合手段がレールの溝に係合されていれば、当該膜材の上を作業員が歩いて定位置まで行くことができ、テンションを付与する作業にも足場が不要である。その結果、交通規制を引かねばならない領域が少なくできるから、下が道路である高架橋の施工としては、交通渋滞を抑制することができる優れた工法となる。
【0085】
図25は、この発明にかかる高架橋の化粧構造、および化粧構造施工方法による完成例を示す外観図である。同図は、高架橋の裏面を正面として見たときの図である。また、橋脚93の間の主桁95を残して膜材を張設した例を示している。膜材は、必要に応じて足材94にガイドされながら、押し広げられ、最終的に、エッジロープクランプやチェーンレバーホイスト等の牽引手段で固定され、しわ一つ無い美しい仕上がりで、高架橋の裏面を化粧する。
【0086】
また、この化粧構造(施工方法)では、主桁95を隠すように膜材を張ることも可能である。その場合は、牽引手段でテンションをかける掴み部96を縁部よりもやや内側にして、テンショナー自体が膜材で隠れるようにしてもよいし、膜同士が隣り合わせになる箇所では、膜材同士を縫合、接着、溶着その他密着して互いに張力をかけ合う構造とすればよい。なお、膜材に張力が付与されていることを示すために極端に描いているが、実際には、図のような三日月状の隙間はほとんど無いに等しい。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上のように、本発明にかかる高架橋の化粧構造および化粧構造施工方法は、高架橋の裏側の化粧に有用であり、特に、老朽化した道路、鉄道高架橋の裏面化粧に適している。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】この発明の実施例1に係る高架橋の断面構成を示す断面図である。
【図2】下地材7、および足材5を示す平面図である。
【図3】図1のA部の拡大図である。
【図4】図3の固定材9の拡大図である。
【図5】固定材9のB方向から見た外観図である。
【図6】図3のファスナー8を示す拡大図である。
【図7】図6のC方向から見た外観を示す外観図である。
【図8】図7の外観を上から見たときの外観を示す外観図である。
【図9−1】この発明の実施例にかかる化粧構造の施工方法を示す説明図である。
【図9−2】この発明の実施例にかかる化粧構造の施工方法を示す説明図である。
【図9−3】この発明の実施例にかかる化粧構造の施工方法を示す説明図である。
【図10−1】この発明の実施例にかかる化粧構造の施工方法を示す説明図である。
【図10−2】この発明の実施例にかかる化粧構造の施工方法を示す説明図である。
【図10−3】この発明の実施例にかかる化粧構造の施工方法を示す説明図である。
【図11】膜材を張設するフレームの例を示す外観図である。
【図12】図11のフレームに膜材を巻き付けたものを示す外観図である。
【図13】ユニットとなった膜材を高架橋の裏面の主桁に取り付けた状態を示す断面図である。
【図14】膜材にテンションをかける構造の例を示す断面図である。
【図15】ユニットの搬入、取り付け施工方法の例を示す説明図である。
【図16】ユニットの搬入、取り付け施工方法の別の例を示す説明図である。
【図17】一定距離の高架橋に対する理想的な膜材構成を示す説明図である。
【図18】膜材の構造の例を示す断面図である。
【図19】この発明の実施例3にかかる化粧構造施工方法を示す説明図である。
【図20】膜材にテンションを付与した状態で、膜材を押し広げる構造を示す断面図である。
【図21】膜材を押し広げた後で、膜材にテンションを加える構造を示す断面図である。
【図22】膜材を押し広げた後にテンションをかける別の構造を示す断面図である。
【図23】膜材を押し広げた後にテンションをかける別の構造を示す断面図である。
【図24】膜材を押し広げた後にテンションをかける別の構造を示す断面図である。
【図25】高架橋の化粧構造、および化粧構造施工方法による完成例を示す外観図である。
【符号の説明】
【0089】
1、37、70 高架橋
2 床材
3 梁
4、21、71、93 橋脚
5、22、94 足材
6、34、62、74、85、92 膜材
7 下地材
8 ファスナー
9 固定材
10、13、41 エッジロープ
11、15 プレート
12、16 ボルト
14、40、81、84、90 ロープエッジクランプ
20 高所作業車
30 フレーム
31 テンショナー
32 端部
33 中央部
35 幅
36、75、95 主桁
39 固定板
42 ステー
43、54、55、56、57、58、59、60 ユニット
44 トラック
45 ワイヤーケーブル
46 ウィンチ
48 グラスウール
51 交差点部
52 一般部
63 最表層
63a 光触媒微粒子
64 被覆層
65、66 繊維材料
72 ステージ
76 レール兼支持金具
77 縁部固定治具
78 係合手段
79 被係合手段
80 ロールガイド
82 板
88 挟み込み手段
89 固定板
91 ロールガイド
96 掴み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高架橋の裏面を覆う膜材を有することを特徴とする高架橋の化粧構造。
【請求項2】
前記膜材は、前記高架橋の側面も覆うことを特徴とする請求項1に記載の高架橋の化粧構造。
【請求項3】
前記膜材は、帯状に分割して張設されることを特徴とする請求項1または2に記載の高架橋の化粧構造。
【請求項4】
帯状に分割して張られた前記膜材は、互いに密着されることを特徴とする請求項3に記載の高架橋の化粧構造。
【請求項5】
前記高架橋の前記膜材が張られる面に複数の足材が設けられ、当該足材の先端に設けられる係合手段に、膜材側と一体になった被係合手段が係合されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の高架橋の化粧構造。
【請求項6】
前記帯状の膜材は、前記高架橋の長手方向に対して直角方向に張設されることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一つに記載の高架橋の化粧構造。
【請求項7】
前記帯状の膜材は、前記高架橋の長手方向に対して平行に張設されることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一つに記載の高架橋の化粧構造。
【請求項8】
前記膜材は、ガラス繊維にポリ塩化ビニルが被覆されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の高架橋の化粧構造。
【請求項9】
前記膜材は、ガラス繊維にフッ素樹脂が被覆されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の高架橋の化粧構造。
【請求項10】
前記膜材は、最表層に防汚処理がなされた膜材であることを特徴とする請求項8または9に記載の高架橋の化粧構造。
【請求項11】
先端に被係合手段を有する線状足材を、高所作業車で高架橋の裏面に取り付ける工程と、
テンションを加えながら膜材と一体になった係合手段を前記被係合手段に係合する工程と、
を含むことを特徴とする高架橋の化粧構造施工方法。
【請求項12】
最終的に形作る膜材形状と同形状の骨組みであるフレームと、
前記フレームに巻き付けられる膜材と、
前記フレーム端部に付設され、前記膜材にテンションを付与した状態で固定するテンショナーと、
高架橋の裏面の主桁に設けられる固定手段と、
前記フレームに設けられ、前記固定手段に固定される被固定手段と、
を有することを特徴とする高架橋の化粧構造。
【請求項13】
最終的に形作る膜材形状と同形状の骨組みであるフレームに、膜材を巻き付ける工程と、
前記フレームに付設されるテンショナーで前記膜材にテンションを付与して固定する工程と、
前記膜材が巻き付けられた前記フレームを高架橋の主桁に固定する工程と、
を含むことを特徴とする高架橋の化粧構造施工方法。
【請求項14】
橋桁と橋桁の間の一部であって、主桁の直下にステージを設ける工程と、
前記ステージ上で、前記主桁に平行に付設する複数あるレールの溝に、膜材に付設する係合手段を通し、当該膜材を押し広げる工程と、
前記膜材にテンションを与える工程と、
を含むことを特徴とする高架橋の化粧構造施工方法。
【請求項15】
前記膜材にテンションを付与する工程は、複数ある前記レールの溝に前記膜材の前記係合手段を通すとき以前であることを特徴とする請求項14に記載の高架橋の化粧構造施工方法。
【請求項16】
前記膜材にテンションを付与する工程は、複数ある前記レールの溝に前記膜材の前記係合手段を通し、前記膜材を押し広げた後、前記レール同士の幅を変えてテンションを付与することを特徴とする請求項14に記載の高架橋の化粧構造施工方法。
【請求項17】
前記膜材にテンションを付与する工程は、複数ある前記レールの溝に前記膜材の前記係合手段を通し、前記膜材を押し広げた後、定位置でテンショナーを締めてテンションを付与することを特徴とする請求項14に記載の高架橋の化粧構造施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図9−3】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図10−3】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2007−291779(P2007−291779A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−122586(P2006−122586)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(506122246)三菱重工橋梁エンジニアリング株式会社 (111)
【出願人】(000204192)太陽工業株式会社 (174)
【Fターム(参考)】