説明

高架道路の雨水遮蔽板

【課題】 道路同士の隙間部分に雨水遮蔽板を取付けて雨水の浸入を防止し、さらに、高架道路の撓みにより道路間に段差が生じる場合であっても、その段差に接触しないようにして確実に雨水の浸入を阻止する。
【解決手段】 隣接走行する道路同士の間に隙間7が形成され、路上を走行する車両等の振動により、隣接走行する道路が独立して撓む構成の高架道路において、前記道路同士の隙間部分に、雨水の浸入を阻止する遮蔽板1を取付け、その遮蔽板1を、道路が振動により下方に撓んだ場合に、隣接道路の淵との間に生じる段差に接触しない空間を確保して取付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高架道路の隙間部分に取付ける雨水遮蔽板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、高速道路等の高架道路では、上下線それぞれ別々に高架橋梁が設けられ、その上に道路が架設されていることが多い。このため、上下線が分離し、中央分離帯部分に隙間が生じている。
そして、上下線の高架橋梁の上を車両が通過したり風が強いと、その振動によりそれぞれの車線に浮き沈みが発生する。この浮き沈みにより、中央分離帯部分の境目では、上下線の道路の間に段差が生じてしまう。
また、このような高架道路では、中央分離帯部分の隙間から雨水が浸入して、コンクリートや内部鉄骨の腐食を引き起こすと共に、高架道路の下に雨漏りが生じるという問題がある。
この雨漏りを防止するために、高架道路の下側に隙間に沿って、樋等の排水路を設けて、雨を受け止めることも可能である。
しかしながら、樋の取付け作業では、道路の裏側への取付けになるため、足場の組み立て作業等により、手間を要するという問題があった。
特に、高架道路の直下には電車やモノレールが通過する場合もあり、そのような足場の組立てスペース、樋の配設スペースを確保することが困難な状況もある。
そこで、このような中央分離帯部分の隙間を閉塞する技術として特開平8−27723号記載の技術が知られている。
【特許文献1】特開平8−27723号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記特開平8−27723号公報記載の技術は、高架道路の隙間からの落下物を防止する技術であり、雨水を有効に遮蔽できないという問題があった。
本発明は係る従来の問題点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、道路同士の隙間部分に雨水遮蔽板を取付けて雨水の浸入を防止し、さらに、高架道路の撓みにより道路間に段差が生じる場合であっても、その段差に接触しないようにして確実に雨水の浸入を阻止する高架道路の雨水遮蔽板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するための手段として、請求項1記載の高架道路の雨水遮蔽板では、隣接走行する道路同士の間に隙間が形成され、路上を走行する車両等の振動により、隣接走行する道路が独立して撓む構成の高架道路において、前記道路同士の隙間部分に、雨水の浸入を阻止する遮蔽板を取付け、その遮蔽板を、道路が振動により下方に撓んだ場合に、隣接道路の淵との間に生じる段差に接触しない空間を確保して取付けた。
【0005】
請求項2記載の高架道路の雨水遮蔽板では、請求項1記載の高架道路の雨水遮蔽板において、道路同士の隙間に沿って一方側の道路へ取付ける取付部と、その取付部から上方に伸びる支持部と、その支持部の上端から水平に折れ曲がって隙間の上方を覆う屋根板とを備えている。
【0006】
請求項3記載の高架道路の雨水遮蔽板では、請求項2記載の高架道路の雨水遮蔽板において、屋根板から、隣接車線側へ斜めに傾斜板を延ばし、傾斜板と反対車線側との間に生じる隙間に弾性部材を配置し、その弾性部材によって、段差に応じて上下する隙間を閉塞した。
【0007】
請求項4記載の高架道路の雨水遮蔽板では、請求項3記載の高架道路の雨水遮蔽板において、傾斜板の裏側にU字状にゴム板を湾曲させて取付け、U字部の開口を下向きとした。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、前記構成を採用することにより、以下の効果が得られる。
請求項1記載の高架道路の雨水遮蔽板においては、道路同士の隙間部分に、雨水の浸入を阻止する遮蔽板を取付けるので、隙間部分からの雨水の浸入を阻止し、構造物内部の腐食、劣化を防止する。
そして、遮蔽板の屋根板を、ある程度の高さを確保して取付けたので、道路が振動により下方に撓んだ場合でも、隣接道路の段差に接触しない。
【0009】
請求項2記載の高架道路の雨水遮蔽板においては、道路同士の隙間に沿って一方側の道路へ取付ける取付部と、その取付部から上方に伸びる支持部と、その支持部の上端から水平に折れ曲がって隙間の上方を覆う屋根板とを備えているので、道路の一連の溝に沿って取付けることが可能となり、支持部によって常に一定の高さを確保して屋根板を取付けることができる。
【0010】
請求項3記載の高架道路の雨水遮蔽板においては、傾斜板と反対車線側との間に生じる隙間を弾性部材によって閉塞したので、風に乗って吹き上げる雨水の浸入を防止する。
また、弾性部材が段差に対応して伸縮するので、確実に隙間を閉塞することができる。
【0011】
請求項4記載の高架道路の雨水遮蔽板においては、傾斜板の裏側にU字状にゴム板を湾曲させて取付けたので、ゴム板の反発力を利用した確実な閉塞構造が構築される。
また、ゴム板を湾曲させることによって、形成されるU字部の開口を下向きとしたことにより、雨水がU字部に溜まらずに排水される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
一般的に、高速道路等の高架道路では、上下線それぞれ別々に高架橋梁が設けられ、その上に道路が架設されていることが多い。このため、上下線が分離し、中央分離帯部分に隙間7が生じている。
このような道路は、中央分離帯によって、上下線が仕切られ、この中央分離帯は、コンクリート材が台形に隆起し、そのコンクリート材の上面に支柱14が突設され、その支柱14にガードレール15が架け渡されている。
前記台形のコンクリート材は、図1、2に示すように、道路を仕切る分離壁8を構成し、路面から50〜60cmの高さを有している。
この分離壁8は車線の側部を隆起させたものであり、斜めに隆起して、上面は水平に形成され、その水平部分が連続して、いずれか一方側にガードレールの支柱14が突設されている。
これらの分離壁8の端面は垂直にカットされ、その垂直の端面同士がすり合わされ、分離壁同士が対面してその間に溝(隙間7)が形成され、溝(隙間7)を境に当接している。そして、隣接する分離壁同士の頂点は水平にカットされている。
道路に振動のない状態では、分離壁8同士の頂点は水平に維持されるが、振動が起こると、この水平部分に段差が生じることになる。
【実施例1】
【0013】
以下、本発明の具体的実施例を説明する。
第1実施例に係る雨水遮蔽板1は、図1〜図3に示すように、道路へ固定する固定部2と、その固定部2から上方に延びた側板3と、その側板3の上端から水平に折りまがった屋根板4と、その屋根板4から斜め下方に折りまがった傾斜板5と、その傾斜板5の裏側に取付けられたゴム板6を有し、この雨水遮蔽板1を一つのユニットとして、このユニットを横に連続設置して、隙間7からの雨水浸水を防止するものである。
【0014】
遮蔽板本体1はFRPによる樹脂板によって構成され、固定部2、側板3、傾斜板5は一体的に樹脂成形されている。
遮蔽板1の厚さは1〜2cm程度であり、大きさは適用する道路の形状等によって設定されるが、一例として、長さ4m程度とされ、この4mの遮蔽板が横に連続して隙間7を閉塞する構成となっている。
また、素材はFRPに限らず、他の合成樹脂、金属等によることも可能である。
【0015】
前記固定部2は、中央分離帯の隙間7の淵に沿って一方側車線の分離壁8の上面に固定する部位であり、水平板面に所定間隔で取付け孔9が形成されている。この取付け孔9を分離壁8の上面に突設したアンカーボルト10に挿通して、アンカーボルト10の頭部にナット11を締結して道路に固定する。このとき、固定部2とコンクリート材の間にゴム材を介在させて取付け性を向上させ、必要に応じ防水処理を施す。
【0016】
前記側板3は固定部2から上方に折り曲がって延びる支持脚であり、段差に接触しない高さを保持して屋根板4を支持する。側板3の上端は水平に折り曲がり屋根板4を構成し、その屋根板4は所定の水平幅を確保して、その先端が斜下方に折り曲がっている。この折り曲がり角度は分離壁8の傾斜角度に相応したものとなっている。
側板3の高さは固定部2から10〜20cm程度であり、この高さによって、隣接道路との間に段差が生じても、屋根板4と分離壁8の頂点が衝突しない空間が確保されている。
【0017】
前記傾斜板5は、分離壁8の形状に合わせて、斜め下に延長したものであり、屋根板4が隙間7の上部を被覆し、側板3及び傾斜板5が隙間7の側部を被覆する。この傾斜板5と分離壁8との間には隙間12が生じているので、この隙間12から雨水が吹き込むおそれがある。そこで、本発明では、傾斜板5の裏側に、ゴム板6(弾性部材)を配置し、この隙間12を閉塞している。
前記ゴム板6は、遮蔽板1と同一長さを有する一連の板状材であり、このゴム板を長さ方向にU字状に折り曲げて、傾斜板5と分離壁8の間に挟み込んだ状態とされている。
傾斜板5の中央帯には、ビス13の挿通孔が所定間隔で形成され、その孔にビス13を通し、傾斜板5の裏側のゴム板6を貫通して、ビスの先端にナットを締着して、ゴム板6の一端を固定する。
ゴム板6は取付け部から傾斜板5の裏面に沿って斜め上に伸びながら徐々に下向きに湾曲し、その先方面が分離壁8の傾斜面に当接している。
このように、ゴム板6はU字状に湾曲しながら、その反発力によって、分離壁8の傾斜面に当接している。従って、道路の浮き沈みにより、段差が生じてもU字部分が伸縮して、傾斜板5と分離壁8の空間を確実に閉塞する。
【0018】
また、前記ゴム板6は、U字部の開口を下向にして取付けられているので、ビス13の挿通孔から雨水が浸入することがあっても、その雨水は自然に外部空間に排出され、U字の湾曲部分に水が溜まることはない。
また、本実施例では、上述したゴム板6を採用したので、道路の浮き沈みに柔軟に対応して確実に隙間を閉塞し、水の浸入により、雨水遮蔽板本体の劣化等も生じない。
【0019】
以上、実施例を説明したが、本発明の具体的な構成は前記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、前記実施例では、並行走行する上下線道路について説明したが、上下線に限らず、隣接走行する道路であれば適用可能である。
また、前記実施例で説明した、ゴム板6に代わる他の閉塞構造を採用する場合であっても本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】雨水遮蔽板の使用状態を示す斜視図である。
【図2】雨水遮蔽板の使用状態を示す断面図である。
【図3】雨水遮蔽板の平面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 雨水遮蔽板
2 固定部
3 側板
4 屋根板
5 傾斜板
6 ゴム板
7 隙間
8 分離壁
9 取付け孔
10 アンカーボルト
11 ナット
12 隙間
13 ビス
14 支柱
15 ガードレール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接走行する道路同士の間に隙間が形成され、路上を走行する車両等の振動により、隣接走行する道路が独立して撓む構成の高架道路において、
前記道路同士の隙間部分に、雨水の浸入を阻止する遮蔽板を取付け、
その遮蔽板を、道路が振動により下方に撓んだ場合に、隣接道路の淵との間に生じる段差に接触しない空間を確保して取付けたことを特徴とする高架道路の雨水遮蔽板。
【請求項2】
道路同士の隙間に沿って一方側の道路へ取付ける取付部と、その取付部から上方に伸びる支持部と、その支持部の上端から水平に折れ曲がって隙間の上方を覆う屋根板とを備えたことを特徴とする請求項1記載の高架道路の雨水遮蔽板。
【請求項3】
屋根板から、隣接車線側へ斜めに傾斜板を延ばし、傾斜板と反対車線側との間に生じる隙間に弾性部材を配置し、その弾性部材によって、段差に応じて上下する隙間を閉塞したことを特徴とする請求項2記載の高架道路の雨水遮蔽板。
【請求項4】
傾斜板の裏側にU字状にゴム板を湾曲させて取付け、U字部の開口を下向きとしたことを特徴とする請求項3記載の高架道路の雨水遮蔽板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−169771(P2006−169771A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−361841(P2004−361841)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(504458482)
【Fターム(参考)】