説明

高比粘度の無水マレイン酸及びアルキルビニルエーテルの共重合体を製造する方法

無水マレイン酸及びアルキルビニルエーテルの高比粘度共重合体を、無水マレイン酸及びアルキルビニルエーテルの単量体を添加アセチレンの存在下に共重合することによって製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)(1.発明の分野)本発明は、無水マレイン酸及びアルキルビニルエーテルの共重合体を製造するための方法、及びより一層詳しくは、有利に高い比粘度のかかる共重合体の作製のための製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(2.従来技術の記載)英国特許第906,230号明細書は、溶媒としてベンゼンにおいて無水マレイン酸及びメチルビニルエーテルの共重合体の調製を記述した。例1はまた、溶媒の不存在下での共重合処理(プロセス、製造方法)を開示し、そこでは、粉末の無水マレイン酸、メチルビニルエーテル及び開始剤を、加圧容器(オートクレイブ)中に予備負荷し、及び55℃で反応させたが、生成物の比粘度(S)は単に3.45であった(1%メチルエチルケトン、MEKにおいて)。
【0003】
以前に記述された他の処理及び共重合体生成物は、米国特許第4,952,558号、第5,034,488号、第5,047,490号、第5,874,510号、第6,624,271号、第6,184,325号、及び再発行特許第36,657号明細書のものが包含される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これらの処理のどれも、そのような共重合体の有利に高い比粘度(及び、付随して、高分子量)のものを製造するのに適切でない。
【0005】
したがって、本発明の目的は、無水マレイン酸及びアルキルビニルエーテルの高比粘度を持つ共重合体を製造するための処理を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の特長は、共重合を、添加アセチレンの存在下において遂行することにおけるそのような共重合体を製造するための処理である。
【0007】
本発明の別の特長は、少なくとも7、なるべくなら10(メチルエチルケトン(MEK)において1%、25℃)の比粘度を持つ、未架橋又は架橋される、無水マレイン酸及びメチルビニルエーテルの共重合体の提供である。
【0008】
本発明のこれらの及び他の目的並びに特長は、次の説明から明らかにされる。
(発明の概要)
【0009】
本明細書において提供するものは、無水マレイン酸及びC1-C4アルキルビニルエーテル(AVE)の交互共重合体の微細白色粉体であり、分子構造(A-B)nを持ち、式中、Aは無水マレイン酸であり、及びBはアルキルビニルエーテルであり、及びnはその分子量を表す整数であり、少なくとも7、なるべくなら10の比粘度(SV)(1%重量/容量のメチルエチルケトン(MEK)25℃において)を持つ。
【0010】
本発明の別の特長としては、無水マレイン酸及びアルキルビニルエーテル(AVE)、例は、メチルビニルエーテル(MVE)の高比粘度共重合体を製造するための方法を提供することであり、無水マレイン酸及びアルキルビニルエーテルを、添加アセチレンの存在において共重合する工程による。
【0011】
好ましくは、処理は溶媒、例は、酢酸イソプロピル、シクロヘキサン、酢酸エチル、ベンゼン、そしてその混合物において遂行され、及び添加アセチレンを溶媒において溶解する。
【0012】
代わりに、アセチレンは前記アルキルビニルエーテル単量体において直に溶解し得る。
【0013】
適切には、処理は約40-90℃で遂行される。
【0014】
本発明において、処理は、添加アセチレンが少なくとも7、好ましくは10の比粘度(SV)(1%の重量/容量のMEK、25℃において)を持つ共重合体が生成されるのに十分な量において存在することにおいて特徴付けられる。
【0015】
本発明の適切な具体例では、無水マレイン酸を、溶媒として、酢酸イソプロピルにおいて添加し、メチルビニルエーテル(MVE)の1部分及び溶媒を予備負荷し、遊離基開始剤が合計単量体に基づく重量によって約0.01-0.5%の量において存在し、及びそれが過酸化デカノイルである。
【0016】
したがって、好適な処理は、溶媒及び遊離基開始剤の1部分を、随意にアルキルビニルエーテルを含めて、予備負荷する工程、アルキルビニルエーテル及び無水マレイン酸を、随意に前記溶媒において供給する工程、アセチレンを予備負荷物中に又は反応混合物中に添加する工程、及び単量体を、添加アセチレンの存在下に、一方でそれに連続的な部分の開始剤を含めて、共重合させ、予め定める高比粘度の前記単量体の共重合体を生成させる工程を備える。
【0017】
別の具体例において、重合混合物は、溶媒及び遊離基開始剤及びアルキルビニルエーテル単量体の1部分及び添加アセチレンを予備負荷する工程、別にアルキルビニルエーテルの残部、及び溶媒における無水マレイン酸を反応混合物中に供給する工程を備える。
【0018】
本明細書において共重合体は架橋することができ、又は未架橋でよい。
【0019】
本発明にかかる共重合処理の生成物は、重合体の溶媒における溶液であり、概して約12-60重量%の固形分を伴う。適切な重合体は溶液から溶媒を除去する工程によって粉体として提供し得る。
(発明の詳細な記載)
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明に従って、本明細書では、無水レイン酸(MA)及びアルキルビニルエーテル(AVE)、例は、メチルビニルエーテル(MVE)の非常に高い比粘度の対応する高分子量の共重合体を作製する優れた方法を提供する。これらの有利な結果は、本発明において、共重合を添加アセチレンの存在において遂行することによって得られる。
【0021】
重合の間のアセチレンの機能は、共重合体の鎖が、鎖終止剤、例は、遊離基開始剤によって実質抑制されることなく成長するのを可能にすることである。概して、より一層多くのアセチレンが反応混合物において存在すると、得られる共重合体がより一層高い比粘度(分子量)になる。通常、共重合は酢酸イソプロピル(IPAc)のような溶媒において遂行され、及びアセチレンを溶媒において溶解する。代わりに、反応は、溶媒なし(フリー)で及びアルキルビニルエーテル単量体において直接溶解されるアセチレンであり得る。反応の間に利用可能にされるアセチレンの最大量は溶媒及び/又はアルキルビニルエーテル単量体におけるアセチレンの溶解度(溶解性)である。
【0022】
1具体例において、処理はIPAcにおけるMVEの部分を約40-90℃にまで加熱される反応機(リアクタ)において予備負荷すること、及び次いで別の流れの(i)IPAcにおけるMAの溶液、(ii)MVEの残部、及び(iii)IPAcにおける溶解する遊離基開始剤を反応機中に供給することによって遂行される。
【0023】
添加アセチレンは、予備負荷される反応機中に、又は代わりに、重合の間に導入され得る。好ましくは、それは予備負荷される反応機中に直接導入される。このようにして添加されるアセチレンの最大濃度は、溶媒及び/又はアルキルビニルエーテル単量体におけるアセチレンの溶解度によって予め定められる。反応混合物におけるアセチレンの適切な重量%は、混合物の重量によって、約0.1から2までの%、好ましくは約0.4から1.8までの%に及ぶ。約0.4%のアセチレンの濃度は、10のSVを持つ共重合体を提供する一方、約1.8%の濃度は50のSVを持つ共重合体を提供する。
【0024】
遊離基開始剤は、適切には、例は、過酸化ジアセチル、過酸化ジベンゾイル及び過酸化ジラウリルのような過酸化アシル、第3(ターシャリ)-ブチル過ピバル酸(perpivalate)、及び第3-ブチルペル-2-エチルヘキサノアートのような過エステル(perester)、過酸化デカノイルのジ-第3-ブチル過酸化物のような過酸化物、ジシクロヘキシルパーオキシジカルボナートのような過炭酸塩、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス-(2,4-ジメチル-吉草酸ニトリル)、1,1'-アゾビス-(1-シクロヘキサンカルボニトリル)又はジメチル-2,2'-アゾビス-(イソ酪酸)のようなアゾ化合物であり得る。好適な開始剤は過酸化デカノイルである。
【実施例】
【0025】
本発明を次に、以下のものの例を参照して説明する。
(対照(無アセチレン))
【0026】
【表1】

【0027】
【表2】

(例1)
(発明の方法)
【0028】
【表3】

【0029】
【表4】

【0030】
(例2)
例1の処理を、1.684%の添加アセチレンを用いて繰返した。SVは16.08であった。
【0031】
(例3)
例1の処理を、1.17%の添加アセチレンを用いて繰返した。共重合体のSVは29.84であった。収率117g。
【0032】
(例4)
例1の処理を、1.48%の添加アセチレンを用いて繰返した。MA/MVE共重合体は33.012のSVを持った。
【0033】
(例5)
例1の処理を、1.784%の添加アセチレンを用いて繰返した。SVは50.867であった。
【0034】
【表5】

【0035】
本発明に従う高い比粘度のMA/MVE共重合体は、特に個人的な手当て(パーソナルケア)、薬学上、農学上、飲料及び建築材料の生産物における適用が見出される。かかる重合体の有利な使用は義歯接着剤としてのものである。
【0036】
本発明を、特に、その特定の具体例を参照して説明したが、一方で、変形及び修飾を行い得、それがこの技術の熟練の範囲内にあることが理解される。したがって、次の通り、以下の請求の範囲によって拘束されることだけを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無水マレイン酸及びC1-C4アルキルビニルエーテルの交互共重合体の微細白色粉体であり、分子構造(A-B)nを持ち、式中、Aは無水マレイン酸であり、及びBはアルキルビニルエーテルであり、及びnはその分子量を表す整数であり、少なくとも7の比粘度(SV)(1%重量/容量のメチルエチルケトン(MEK)25℃において)を持つ、粉体。
【請求項2】
無水マレイン酸及びアルキルビニルエーテルの高比粘度共重合体を製造する方法であり、無水マレイン酸及び前記アルキルビニルエーテルを、添加アセチレンの存在下に共重合する工程を備える、方法。
【請求項3】
溶媒中で遂行される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
アセチレンが前記溶媒において溶解する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
アセチレンが前記アルキルビニルエーテルにおいて溶解する、請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒が、酢酸イソプロピル、シクロヘキサン、酢酸エチル、ベンゼン、そしてその混合物である、請求項2記載の方法。
【請求項7】
約40-90℃で遂行される、請求項2記載の方法。
【請求項8】
前記アセチレンが少なくとも7の比粘度(SV)(1%重量/容量のメチルエチルケトン(MEK)25℃において)を持つ共重合体が生成されるのに十分な量において存在する、請求項2記載の方法。
【請求項9】
前記無水マレイン酸を溶媒として酢酸イソプロピルにおいて添加する、請求項2記載の方法。
【請求項10】
前記メチルビニルエーテル(MVE)の1部分及び溶媒を予備負荷する、請求項2記載の方法。
【請求項11】
遊離基開始剤が合計単量体に基づく重量によって約0.01-0.5%の量において存在する、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記比粘度(SV)が少なくとも10である、請求項8記載の方法。
【請求項13】
前記アルキルビニルエーテルがメチルビニルエーテルである、請求項2記載の方法。
【請求項14】
溶媒及び遊離基開始剤の1部分を、随意にアルキルビニルエーテルを含めて、予備負荷する工程、アルキルビニルエーテル及び無水マレイン酸を、随意に前記溶媒において供給する工程、アセチレンを予備負荷物中に又は反応混合物中に添加する工程、及び単量体を、それに連続的な部分の開始剤を含めて共重合させ、及びアセチレンの存在下に予め定める分子量の前記単量体の共重合体を生成させる工程を備える、請求項2記載の方法。
【請求項15】
溶媒及び遊離基開始剤及びアルキルビニルエーテル単量体の1部分及び添加アセチレンを予備負荷する工程、別にアルキルビニルエーテルの残部、及び溶媒における無水マレイン酸を反応混合物に供給する工程を備える、請求項14記載の方法。
【請求項16】
溶媒が酢酸イソプロピルであり、遊離基開始剤が合計単量体に基づく重量によって0.01-0.5%の量において存在する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
請求項1の共重合体を含む、組成物。
【請求項18】
個人的な手入れ、薬学上、農学上、飲料又は建築材料の生成物である、請求項17の組成物。
【請求項19】
義歯接着剤である、請求項18の組成物。
【請求項20】
12-60重量%の固形分を持つ、請求項2の方法の反応生成物。
【請求項21】
請求項2の方法に従って製造される溶液。
【請求項22】
請求項2の方法、次いで溶液から溶媒を除去する工程に従って製造される、粉体。
【請求項23】
少なくとも10の比粘度(SV)を持つ、請求項1に従う粉体。

【公表番号】特表2009−501805(P2009−501805A)
【公表日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518240(P2008−518240)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/023132
【国際公開番号】WO2007/001858
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(596121138)アイエスピー インヴェストメンツ インコーポレイテッド (24)
【氏名又は名称原語表記】ISP INVESTMENTS INC.
【Fターム(参考)】