説明

高比重及び高屈折率を有する人造大理石チップ用樹脂組成物の製造方法

高比重及び高屈折率を有するマーブルチップ用樹脂組成物の製造方法が開示される。前記方法は、ハロゲン化エポキシ樹脂を(メタ)アクリル酸と反応させてハロゲン化エポキシアクリレート樹脂バインダーを調製する段階と、反応性モノマーを添加して前記ハロゲン化エポキシアクリレート樹脂バインダーを希釈する段階と、を含む。本発明の方法によって製造されたマーブルチップは、サンディング性及び硬度が人造大理石を形成する母材と同様であるため母材との結合力に優れる。本発明のマーブルチップを用いた人造大理石は、人造大理石の表面上のマーブルチップの分散性に優れ、均一な模様、良好な耐薬品性、良好な熱加工性、および良好な表面平滑性を示しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高比重及び高屈折率を有する人造大理石チップ用樹脂組成物の製造方法に関する。より具体的には、本発明は、ハロゲン化エポキシアクリレート樹脂バインダーを反応性モノマーで希釈することによって調製される、人造大理石チップ用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、人造大理石は、構成する樹脂材料により2つのグループに分類することができる:1つはアクリル系人造大理石であり、もう1つは不飽和ポリエステル系人造大理石である。不飽和ポリエステル系人造大理石と較べると、優れた外観、高級な質感、優れた耐候性を有しているので、近年、アクリル系人造大理石が、各種カウンター、テーブル及びインテリアの素材として広く用いられてきている。
【0003】
アクリル系人造大理石は、メチルメタクリレート(Methyl methacrylate)モノマーとポリメチルメタクリレート(Polymethyl methacrylate)とを混合したシロップ(syrup)と、無機充填剤と、種々の模様及び色を人造大理石に付与する粒子(以下、本明細書にて‘マーブルチップ’とも称する)と、を混合し、重合開始剤を混合物中に溶解してスラリーを形成させた後、スラリーを適正な温度で成形(casting)して製造されることが一般的である。
【0004】
人造大理石の製造の間、人造大理石の多様な模様及び色を具現化するために、多様な種類のマーブルチップが投入される。特に、マーブルチップを中に有する人造大理石の外観が、商品の価値に大きい影響を及ぼす。
【0005】
マーブルチップは、硬化した人造大理石を種々のサイズのマーブルチップに粉砕することによって得ることができる。マーブルチップを製造するための材料用に、通常、人造大理石の母材(matrix)と同一の材質であるアクリル系樹脂が用いられる。
【0006】
近年で、さもなくばありふれた人造大理石に、軽快で洗練された印象を与える宝石のような外観を付与するために、透明なマーブルチップが用いられてきている。この開発を背景に、透明なマーブルチップの需要が最近増えてきている。
【0007】
これまで透明なマーブルチップは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)系樹脂又は不飽和ポリエステル系樹脂から製造されてきた。しかし、ポリメチルメタクリレート系樹脂や不飽和ポリエステル系樹脂から製造された透明マーブルチップは、比重が1.15〜1.24であり、人造大理石の母材の比重より低い。相対的に低い比重により、かような透明マーブルチップが母材の上層表面に浮かぶ現象が発生し、結果として、反対側、すなわち人造大理石の下層表面には透明マーブルチップが存在せず、人造大理石製品において、中のマーブルチップが均一に分散していない状態となる。また、相対的に低い比重の透明マーブルチップを用いて、人造大理石の反対表面にまで母材中に透明マーブルチップを分散させるためには、別のやり方で用いられうる透明マーブルチップの量の2倍以上添加する必要がある。これによって得られる人造大理石の厚さを調整し難くなる。
【0008】
マーブルチップの比重を母材の水準に高めるために、アルミニウムトリハイドレート、硫酸バリウム、シリカなどの無機充填剤をマーブルチップの製造に用いられる製剤に添加することができる。しかし、このような無機充填剤の添加により、問題が生ずる場合がある。例えば、マーブルチップの透明性が顕著に落ちる。
【0009】
石英、硅砂、水晶のような天然シリカ、またはガラス、溶融ガラスなどのガラス質化したシリカを用いたエンジニアドストーン(Engineered stone:e−stone)タイプの人造大理石は、透明チップを有しうる。しかしながら、これらのe−stoneタイプの人造大理石は、欠点も有する。例えば、透明チップが沈降しやすく、透明チップのサンディング性が良好ではないため、既存の連続生産方式を用いてかようなe−stoneを製造することが非常に困難である。
【0010】
この点に関し、e−stone用の母材材料として用いられるアクリル樹脂のモース硬度は、透明チップであるシリカまたはシリカ化合物のような材料のモース硬度と異なる。その結果、e−stoneタイプの人造大理石は、良好な均一性と平滑性が出てこない。
【0011】
上記点に鑑み、人造大理石に用いられる透明チップは、母材中に沈まないように、そして硬化時間とは関係なく人造大理石中で透明チップが均一に分散するように、母材と同様の比重を有するべきであり、人造大理石が良好な均一性と平滑性を示すように、母材と同様の研磨性を有するべきであり、そして高い屈折率を有するべきであると理解されるであろう。また、高級製品に使用できる宝石のような外観を提供しうる、屈折率が高い透明マーブルチップの製造方法が要求されている。
【0012】
上記の問題を解決するために、不飽和ポリエステル樹脂をハロゲン化する段階を含む、透明チップの比重を高める方法が提案された。しかしながら、このような方法では、不飽和ポリエステル樹脂の炭素−炭素二重結合の分布が不規則となり、樹脂中の二重結合の数を調節することが難しくなる。その結果、二重結合の密度が高い部分で不飽和ポリエステル樹脂の硬化時の収縮が増加し、クラック(割れ)が生じる。このような硬化時の収縮を抑制するために、直鎖状高分子にバインダーを混合する方法が通常採用されている。しかしながら、直鎖状高分子の混合には、透明チップが乳白色になり、これによって透明チップの透明性が低下するという重大な欠点がある。収縮を抑制するために、他の方法として、バインダー樹脂中の二重結合の数を減らす方法が提案されている。しかしながら、このような方法では、得られた硬化物の硬度が低く、マーブルチップの製造に使用することができない。
【0013】
したがって、本発明者らは、ハロゲン化エポキシアクリレート及び反応性モノマーの樹脂組成物を用いることによって、人造大理石の母材と同様のサンディング性及び硬度を有し、母材との結合力に優れるとともに、高比重、高屈折率、および高透明性を有するマーブルチップ用樹脂組成物を開発するに至ったものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、高比重を有するマーブルチップ用樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、硬化時間や成形時間に拘らずに均一な模様を人造大理石に付与するマーブルチップ用樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【0016】
本発明のまた他の目的は、高い透明性及び高い屈折率を有するマーブルチップ用樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【0017】
本発明のまた他の目的は、サンディング性及びモース硬度が人造大理石を形成するために用いられる母材(matrix)と同様であるマーブルチップ用樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【0018】
本発明のまた他の目的は、人造大理石を形成に用いられる母材との結合力に優れたマーブルチップ用樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【0019】
本発明のまた他の目的は、耐薬品性に優れたマーブルチップ用樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【0020】
本発明のまた他の目的は、熱加工性に優れたマーブルチップ用樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【0021】
本発明のまた他の目的は、平滑性に優れたマーブルチップ用樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【0022】
本発明のまた他の目的は、人造大理石の表面上の分散性に優れたマーブルチップ用樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【0023】
本発明の他の目的および利点は、後述する開示及び添付の特許請求の範囲から明白であろう。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の一実施形態は、マーブルチップ用樹脂組成物の製造方法を提供する。前記方法は、ハロゲン化エポキシ樹脂を(メタ)アクリル酸と反応させてハロゲン化エポキシアクリレート樹脂バインダーを調製する段階と、前記ハロゲン化エポキシアクリレート樹脂バインダーに反応性モノマーを添加して前記ハロゲン化エポキシアクリレート樹脂バインダーを希釈する段階と、を含む。
【0025】
一つの具体例においては、前記ハロゲン化エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型樹脂又はフェノール−ホルムアルデヒドノボラック型樹脂であり、エポキシ当量が約250〜約950でありうる。
【0026】
一つの具体例においては、ハロゲン化エポキシ樹脂/(メタ)アクリル酸の当量比が約1〜約1.2で、(メタ)アクリル酸及び反応触媒の混合溶液を前記ハロゲン化エポキシ樹脂に滴下することによって調製することができる。
【0027】
一つの具体例においては、前記反応触媒は、(メタ)アクリル酸に対して、約1.5〜約4.0重量%の量で(メタ)アクリル酸と混合することができる。
【0028】
一つの具体例においては、反応触媒は、トリエチルアミン、エチルトリフェニルアンモニウムブロマイド、ジメチルベンジルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジメチルフェニルベンジルアミン、テトラメチルアンモニウムクロライド、クロミウムアセチルアセテート、トリフェニルスチフィン、ジメチルフェニルベンジルアンモニウムクロライド、トリフェニルホスフィン、エチルメチルイミダゾール、ジメチルイミダゾール、およびこれらの混合物からなる群から選択されうる。
【0029】
一つの具体例においては、前記ハロゲン化エポキシアクリレート樹脂バインダーは、前記ハロゲン化エポキシアクリレート樹脂バインダー約60〜約95重量部に、反応性モノマー約5〜約40重量部を添加して希釈されうる。
【0030】
一つの具体例においては、前記混合溶液の滴下の前に、前記ハロゲン化エポキシ樹脂を溶融し、約0.001〜約0.04重量部の重合防止剤及び約0.005〜約0.02重量部の色相改善剤を溶融したハロゲン化エポキシ樹脂に添加する段階をさらに含んでもよい。混合溶液の滴下は1分以内に開始されうる。
【0031】
一つの具体例においては、前記滴下後、反応温度を約105〜約125℃に上昇させて、その後、等温反応を行ってもよい。
【0032】
一つの具体例においては、前記ハロゲン化エポキシアクリレート樹脂バインダーを希釈する段階の後、反応温度を約60℃以下に冷却してもよい。
【0033】
一つの具体例においては、前記反応性モノマーを添加する段階の前に、重合防止剤約0.001〜約0.04重量部を前記ハロゲン化エポキシアクリレート樹脂バインダーに添加することができる。
【0034】
一つの具体例においては、前記重合防止剤は、ハイドロキノン、トルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、パラベンゾキノン、ジメチルパラベンゾキノン、p−tert−ブチルカテコール、およびこれらの混合物からなる群から選択されうる。
【0035】
一つの具体例においては、前記ハロゲン化エポキシアクリレート樹脂バインダーは、硬化調節剤として金属石鹸塩をさらに含みうる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明に係るマーブルチップ用樹脂組成物の製造方法は、ハロゲン化エポキシ樹脂を(メタ)アクリル酸と反応させてハロゲン化エポキシアクリレート樹脂バインダーを調製する段階と、反応性モノマーを添加して前記ハロゲン化エポキシアクリレート樹脂バインダーを希釈する段階と、を含む。
【0037】
本発明においては、ハロゲン化エポキシアクリレート樹脂はバインダーとして用いられうる。高い比重および透明性を有するマーブルチップを得るための方法として、従来はハロゲン化不飽和ポリエステルを用いる方法が採用されていた。しかしながら、このようなハロゲン化不飽和ポリエステルは、例えば、得られたマーブルチップの内部にクラックが発生しうるなどの問題点がある。本発明においては、ハロゲン化エポキシアクリレートをマーブルチップ用樹脂組成物として採用する。これによって、高い比重および高い透明性を有するマーブルチップが形成されうる。
【0038】
(A)ハロゲン化エポキシアクリレート樹脂バインダーの調製
段階(a):ハロゲン化エポキシ樹脂の溶融
例えばビスフェノールA型樹脂又はフェノール−ホルムアルデヒドノボラック型樹脂などのハロゲン化エポキシ樹脂であって、エポキシ当量が約250〜約950であるハロゲン化エポキシ樹脂約50〜約80重量部を、撹拌機、温度計、充填冷却器及び滴下漏斗が設置された反応器に投入する。次いで、カバーガスとして窒素又は空気を供給しながら反応器の温度を上昇させてハロゲン化エポキシ樹脂を溶融させる。ハロゲン化エポキシ樹脂の溶融が確認されると、反応器の内容物を約85〜約95℃に加熱する。
【0039】
段階(a):重合防止剤及び色相改善剤の投入
前記ハロゲン化エポキシ樹脂が完全に溶融されて撹拌が円滑になった後、窒素ガス又は空気のカバーガスの供給を停止する。重合防止剤及び色相改善剤を反応器に投入することができる。前記重合防止剤の量は、約0.001〜約0.04重量部であり、前記色相改善剤の量は、約0.005〜約0.02重量部でありうる。前記重合防止剤および前記色相改善剤の添加後、再び窒素ガス又は空気のカバーガスを供給しながら、前記反応器の内容物を撹拌する。
【0040】
前記重合防止剤は、ハイドロキノン、トルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、パラベンゾキノン、ジメチルパラベンゾキノン及びp−tert−ブチルカテコールおよびこれらの混合物からなる群から選択されうる。
【0041】
前記色相改善剤としては、亜リン酸又はリン化合物が用いられうる。前記リン化合物としては、Metyl Gesellschaft AGから市販されているNaphthobin KX−405が挙げられる。前記酸化防止剤としては、CIBA−Geigy社からIGANOX−1010、および1076の商品名で市販されている酸化防止剤もまた用いられうる。
【0042】
段階(a):滴下反応
重合防止剤及び色相改善剤を添加した後、滴下漏斗を用いて、(メタ)アクリル酸と反応触媒との混合溶液を、ハロゲン化エポキシ樹脂/(メタ)アクリル酸の当量比が約1〜約1.2になるように反応器に滴下して添加する。混合溶液をハロゲン化エポキシ樹脂に滴下することで、ハロゲン化エポキシ樹脂の末端のグリシジル基を開環反応させる。
【0043】
前記滴下は、約1分以内に開始されるべきである。反応触媒の量は、好ましくは約1.5〜約4.0重量%である。前記滴下は、反応器の温度を約85〜約100℃に維持しながら、約1〜約4時間にわたって行われる。
【0044】
前記反応触媒の例としては、トリエチルアミン、エチルトリメチルアンモニウムブロマイド、ジメチルベンジルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジメチルフェニルベンジルアミン、テトラメチルアンモニウムクロライド、クロミウムアセチルアセテート、トリフェニルスチフィン、ジメチルフェニルベンジルアンモニウムクロライド、トリフェニルホスフィン、エチルメチルイミダゾール、ジメチルイミダゾール、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0045】
段階(a):等温反応
前記滴下反応後、反応器の内容物を約105〜約125℃に加熱する。次いで、温度を維持して、数平均分子量が約1,000〜4,000であり、酸価が約15未満、好ましくは約7〜約15である、ハロゲン化エポキシアクリレート樹脂バインダーを得る。酸価が約15を超える場合、反応性モノマーとの反応の際にゲル化するため、マーブルチップの製造が不可能になる場合がある。
【0046】
(B)反応性モノマーの添加
前記で調製されたハロゲン化エポキシアクリレート樹脂バインダー(A)を約105〜約100℃に冷却する。その後、窒素ガス又は空気のカバーガスの供給を停止する。前記段階(a)の重合防止剤約0.001〜約0.04重量部をさらに添加し、その後約95〜約90℃に冷却する。次いで、反応性モノマー約5〜約40重量部を前記バインダーに添加することによって前記ハロゲン化エポキシアクリレート樹脂バインダーを希釈する。
【0047】
一実施形態においては、前記ハロゲン化エポキシアクリレート樹脂バインダー(A)の量は、約60〜約95重量部であり、前記反応性モノマーの量は、約5〜約40重量部である。好ましくは、前記ハロゲン化エポキシアクリレート樹脂バインダーの量は、約65〜約90重量部であり、前記反応性モノマーの量は、約10〜約35重量部である。より好ましくは、前記ハロゲン化エポキシアクリレート樹脂バインダーの量は、約70〜約90重量部であり、前記反応性モノマーの量は、約10〜約30重量部である。
【0048】
前記バインダーの量が、約60重量部未満の場合は、得られるマーブルチップが高い比重を有さない場合がある。一方、前記バインダーの量が約95重量部を超えると、樹脂組成物の粘度が高くなり、加工の制御が困難になる場合がある。
【0049】
一実施形態においては、前記バインダーは、ハロゲン化ウレタンアクリレートをさらに含む。
【0050】
前記反応性モノマーは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、クロロフェニル(メタ)アクリレート、メトキシフェニル(メタ)アクリレート、ブロモフェニル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコール(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコール(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルフタレート、ジアリルカーボネート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、グリシジルメタクリル酸のエポキシアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリロールトリ(メタ)アクリレート、メチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、スチレン、ハロゲン化スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマー及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0051】
マーブルチップ用樹脂組成物は、約60℃以下まで冷却することによって硬化される。この段階において、硬化調節のために、硬化調節剤が用いられうる。前記硬化調節剤としては、金属石鹸塩が用いられうるが、これに制限されるものではない。前記硬化調節剤の使用量は、約0.00005〜約0.0002重量部でありうる。前記金属石鹸塩の例としては、銅、コバルト、カリウム、カルシウム、ジルコニウムおよび亜鉛の石鹸塩が挙げられる。前記金属石鹸塩は、単独で用いてもよく2種類を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
本発明の樹脂組成物は、消泡剤、カップリング剤、顔料、色素、紫外線吸収剤、光拡散剤、重合防止剤、硬化調節剤、帯電防止剤、難燃剤、熱安定剤など、およびこれらの混合物から選択される添加剤をさらに含みうる。
【0053】
本発明は、下記の実施例を参照することによりさらによく理解できるが、下記の実施例は、本発明の例示目的のためのものであり、添付された特許請求の範囲によって規定される本発明の保護範囲を制限するように解釈されるべきではない。次の実施例において、他に示されない限り、全ての部およびパーセンテージ(%)は、重量である。
【実施例】
【0054】
実施例1
臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(Dow Chemical社の製D.E.R.542)28.4重量部及び他の臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(Dow Chemical社製D.E.R.560)39.5重量部を、撹拌機、温度計、充填冷却器、および滴下漏斗が設置された反応器に投入し、カバーガスとして窒素ガスを導入しながら反応温度の85〜95℃まで加熱した。色相改善剤(Naphthobin KX−405)を0.01重量部、重合防止剤として、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.003重量部及びトルハイドロキノン0.009重量部を添加した。1分以内に、滴下漏斗に入れた、アクリル酸15.2重量部とジメチルベンジルアミン0.3重量部との混合溶液を滴下して添加した。次いで、反応容器の内容物の温度を、発熱反応で生じた熱で110℃に上昇させ、数平均分子量が2900であり、酸価15未満である、臭素化エポキシアクリレート樹脂バインダーを得た。
【0055】
上記で得られた臭素化エポキシアクリレート樹脂バインダーを105℃に冷却した。窒素ガスの供給を停止した。ハイドロキノンモノメチルエーテル0.004重量部を添加して、その後90℃に冷却した。前記臭素化エポキシアクリレート樹脂バインダーを、スチレンモノマー4.2重量部、メチルメタクリレート13.8重量部及びナフテン酸銅0.00007重量部を含む混合溶液で希釈し、次いで60℃未満でクエンチして樹脂を得た。
【0056】
実施例2
臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(HEXION社から市販、bakelite523)67.8重量部、Naphthobin KX−405を0.01重量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.005重量部、トルハイドロキノン0.006重量部、アクリル酸14.2重量部及びジメチルベンジルアミン0.32重量部をバインダーの調製に用いたことを除いては、前記実施例1と同様に実施した。
【0057】
臭素化エポキシアクリレート樹脂バインダーを100℃に冷却した。カバーガスである窒素ガスの供給を停止し、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.004重量部を添加し、その後95℃に冷却した。前記臭素化エポキシアクリレート樹脂バインダーを、メチルメタクリレート19.8重量部を添加することによって希釈し、次いで60℃未満でクエンチして樹脂を得た。
【0058】
実施例3
臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(韓国国都化学社製、YDB−400)65.9重量部、Naphthobin KX−405を0.01重量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.006重量部、トルハイドロキノン0.009重量部、メタクリル酸15.9重量部、ジメチルベンジルアミン0.32重量部をバインダーの調製に用いたことを除いては、前記実施例1と同様に実施した。
【0059】
臭素化エポキシアクリレート樹脂バインダーを105℃に冷却した。カバーガスである窒素ガスの供給を停止し、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.004重量部を添加し、その後95℃にさらに冷却した。前記臭素化エポキシアクリレート樹脂バインダーを、スチレンモノマー1.2重量部とメチルメタクリレート18.3重量部との混合溶液で希釈し、次いで60℃未満でクエンチして樹脂を得た。
【0060】
比較例1
ハロゲン化されていないビスフェノールA型エポキシ樹脂(韓国国都化学社製、YD−128)18.9重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(韓国国都化学社製、YD−012)43.3重量部、およびアクリル酸18.2重量部をバインダーの調製に用いたことを除いては、前記実施例1と同様に実施した。
【0061】
エポキシアクリレート樹脂バインダーを105℃に冷却した。窒素ガス又は空気の供給を停止した。p−tert−ブチルカテコール0.004重量部を添加し、その後95℃に冷却した。前記エポキシアクリレート樹脂バインダーに、スチレンモノマー19.2重量部とナフテン酸銅0.00007重量部とを投入した後、60℃未満でクエンチして樹脂を得た。
【0062】
比較例2
イソフタル酸13.9重量部、無水フタル酸16.6重量部、無水マレイン酸17.1重量部、プロピレングリコール19.5重量部及びネオペンチルグリコール22.3重量部を、撹拌機、温度計、窒素入口ダクト、充填冷却器、および冷却器が設置された反応器にカバーガスである窒素ガスを導入しながら添加した。反応温度を、発熱反応で生じた熱で160〜170℃に上昇させ、縮合水を反応器から排出しながらさらに170〜180℃に加熱した。温度が210℃に達すると、温度を維持し、数平均分子量が4300であり、酸価が25未満であり、スチレン中の粘度が100ポアズ(poise)である、不飽和ポリエステル樹脂バインダーを得た。
【0063】
上記で得られた不飽和ポリエステル樹脂バインダーを190℃に冷却し、重合防止剤としてトルハイドロキノン0.009重量部を添加し、その後160℃に冷却した。前記不飽和ポリエステル樹脂バインダーを、スチレンモノマー19.2重量部、p−tert−ブチルカテコール0.001重量部及びナフテン酸銅0.00007重量部の溶液で希釈した後、60℃未満でクエンチして樹脂を製造した。
【0064】
前記実施例1〜3及び比較例1〜2の樹脂の物性を下記の表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
前記物性は、下記の方法で測定した。
【0067】
(1)引張弾性率及び屈曲弾性率は、ISO R3268に準拠して測定した。
【0068】
(2)屈曲強度は、ISO R3286に準拠して測定した。
【0069】
(3)伸び率は、ISO R257に準拠して測定した。
【0070】
(4)比重は、25℃において比重瓶で測定した。
【0071】
(5)屈折率は、25℃においてABBE屈折計(3T)で測定した。
【0072】
表1に示されるように、比較例の樹脂は、実施例の樹脂に比べて屈曲強度が低い。比較例2の屈曲弾性率もまた低かった。特に、比較例のマーブルチップは、比重が顕著に低かった。
【0073】
前記実施例1〜3及び比較例1〜2で得られた樹脂をそれぞれ0.1〜5mmの粒径に粉砕してマーブルチップを調製した。マーブルチップ100重量部、ポリメチルメタクリレートとメチルメタクリレートとからなるシロップ100重量部、およびアルミニウムトリハイドレート150重量部を混合し、硬化して、人造大理石を形成した。
【0074】
得られた人造大理石について下記の方法で評価し、人造大理石の物性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0075】
【表2】

【0076】
(1)サンディング性:人造大理石の表面をサンドペーパーでサンディング後、マーブルチップの外観を肉眼で評価した。
【0077】
(2)熱加工性:人造大理石を180℃で20分間加熱して曲面加工を行った。熱加工性は、マーブルチップのクラックまたは突出が発生しない最小半径を測定することによって評価した。
【0078】
(3)耐薬品性:1.0Nの塩酸、および1.0Nのアンモニア水に、25℃で48時間浸漬させた後に、マーブルチップの表面を評価した。
【0079】
(4)表面平滑性:人造大理石の表面をサンディング後、マーブルチップと母材との境界面平滑性を肉眼で評価した。
【0080】
比較例1及び2で得られたマーブルチップは、比重が低く、人造大理石の表面上のマーブルチップの分散性が低かった。また、比較例1及び2のそれぞれのマーブルチップを用いた人造大理石の熱加工性も低かった。一方、実施例1〜3で得られたマーマーブルチップは、比重が高いのでマーブルチップが浮かぶ現象十分に防止することができ、高い屈折率を有する。さらに、実施例1〜3は、半径150mmの優れた熱加工性、均一なマーブルチップの分散、良好な耐薬品性、および優れた表面平滑性を示した。
【0081】
本発明は、当業者によって容易に行われうる。本発明の単なる変形ないし変更は、下記特許請求の範囲によって規定される本発明の領域に含まれるとみなされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン化エポキシ樹脂を(メタ)アクリル酸と反応させてハロゲン化エポキシアクリレート樹脂バインダーを調製する段階と、
前記ハロゲン化エポキシアクリレート樹脂バインダーに反応性モノマーを添加して前記ハロゲン化エポキシアクリレート樹脂バインダーを希釈する段階と、
を含む、マーブルチップ用樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記ハロゲン化エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型樹脂又はフェノール−ホルムアルデヒドノボラック型樹脂であり、エポキシ当量が約250〜約950である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ハロゲン化エポキシアクリレート樹脂バインダーは、ハロゲン化エポキシ樹脂/(メタ)アクリル酸の当量比が約1〜約1.2になるように、(メタ)アクリル酸及び反応触媒の混合溶液を前記ハロゲン化エポキシ樹脂に滴下することによって調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記反応触媒は、約1.5〜約4.0重量%の量で(メタ)アクリル酸と混合される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記反応触媒は、トリエチルアミン、エチルトリフェニルアンモニウムブロマイド、ジメチルベンジルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジメチルフェニルベンジルアミン、テトラメチルアンモニウムクロライド、クロミウムアセチルアセテート、トリフェニルスチフィン、ジメチルフェニルベンジルアンモニウムクロライド、トリフェニルホスフィン、エチルメチルイミダゾール、ジメチルイミダゾール、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記反応性モノマーは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、クロロフェニル(メタ)アクリレート、メトキシフェニル(メタ)アクリレート、ブロモフェニル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコール(メタ)アクリレート、1、3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコール(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルフタレート、ジアリルカーボネート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、グリシジルメタクリル酸のエポキシアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、メチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、スチレン、ハロゲン化スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマー及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ハロゲン化エポキシアクリレート樹脂バインダーは、前記ハロゲン化エポキシアクリレート樹脂バインダー約60〜約95重量部に、反応性モノマー約5〜約40重量部を添加して希釈される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記滴下の前に、前記ハロゲン化エポキシ樹脂を溶融し、溶融したハロゲン化エポキシ樹脂に約0.001〜約0.04重量部の重合防止剤及び約0.005〜約0.02重量部の色相改善剤を添加する段階をさらに含み、前記滴下は1分以内に開始される、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記滴下後、反応温度を約105〜約125℃に上昇させて、その後等温反応を行う段階をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記ハロゲン化エポキシアクリレート樹脂バインダーを希釈する段階の後、反応を約60℃以下に冷却する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記反応性モノマーを添加する段階の前に、前記ハロゲン化エポキシアクリレート樹脂バインダーに重合防止剤約0.001〜約0.04重量部を添加する段階をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ハロゲン化エポキシアクリレート樹脂バインダーは、硬化調節剤として金属石鹸塩をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記重合防止剤は、ハイドロキノン、トルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、パラベンゾキノン、ジメチルパラベンゾキノン、p−tert−ブチルカテコール、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項8または11に記載の方法。
【請求項14】
前記バインダーは、ハロゲン化ウレタンアクリレート樹脂をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ハロゲン化エポキシアクリレート樹脂バインダーは、約1〜約15の酸価を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記樹脂組成物は、消泡剤、カップリング剤、顔料、色素、紫外線吸収剤、光拡散剤、重合防止剤、硬化調節剤、帯電防止剤、難燃剤、熱安定剤及びこれらの混合物からなる群から選択される添加剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2009−544793(P2009−544793A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521688(P2009−521688)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【国際出願番号】PCT/KR2006/005708
【国際公開番号】WO2008/013346
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【Fターム(参考)】