説明

高比重EPDM組成物

【課題】 高比重EPDM組成物において、比重が高く軟らかい上に、ブルーミングを抑制し、強度、耐候性、耐熱耐加湿特性の向上を図る。
【解決手段】 EPDMを主成分とするゴム組成物にて、ゴム100体積%に対して、銅粉末あるいは酸化第I銅粉末を30体積%以上150体積%以下の割合で含有させ、比重が3.0以上6.0以下とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高比重EPDM組成物に関し、詳しくは、高比重である上に、耐候性、柔軟性、成形性に優れたEPDM組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、スポーツ用品のウエイト部材、バランスウエイト等に代表される、高比重で、かつ、ある程度の柔軟性を必要とする製品には、主として鉛等の金属材料が用いられてきた。しかし、近年、環境に対して安全で、耐蝕性に優れ、加工が容易であるため、上記のような高比重材料として、種々のポリマーに高比重金属等を充填させた高分子材料が提案され、種々の分野において使用されている。
【0003】従来、高比重とした上記高分子材料のほとんどが熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーを用いたものである。例えば、特開2000−154323号では、熱可塑性エラストマーあるいは熱可塑性樹脂にタングステン粉末を分散させたタングステン含有高比重組成物が提案されている。また、特開平10−158507号では、ポリアミド樹脂にタングステン粉末を分散させたポリアミド樹脂を主成分とする高比重樹脂組成物が提案されている。さらに、特開2000−129036号では、スチレン系熱可塑性エラストマーに高比重無機充填剤を配合している遮音シート用組成物が提案されている。さらには、特開2000−256569号では、粉粒状の重金属と熱可塑性樹脂とを混合させた高比重熱可塑性樹脂組成物が提案されている。
【0004】一方、高比重とした高分子材料においてゴムを用いたものも挙げられ、特開平10−153687号ではタングステンを分散させた加硫フッ素ゴムとEPDMゴムが提案されていると共に、タングステンをクロロプレンゴムに分散させた放射線遮蔽材も提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記した特開2000−154323号、特開平10−158507号、特開2000−129036号、特開2000−256569号の高比重樹脂材料は、金属粉末を分散しているため高比重であると共に、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマー等を主成分としているためゴム弾性や柔軟性を有するものの、融点が低いために高温となる条件下では使用することができないという問題がある。
【0006】また、融点の高いナイロン、ポリエチレン等を用いることも考えられるが、これらは硬い物質であるために、組成物に柔軟性を持たせることができないという問題がある。
【0007】さらに、特開平10−153687号では、フッ素ゴムは接着性が悪いため他の材料と組み合わせた加工が難しいという問題がある。EPDMゴムは一般にゴム弾性を持ち、強度・耐候性に優れており、接着性もフッ素ゴムより優れているため、接着剤や他の材料との加工が可能であるが、高比重金属粉末を分散させた場合に、成形性に問題があると共に、加工性や耐候性が不十分である。特に、夏の屋外や海水中で使用されるような非常に厳しい環境下にさらされた場合、添加剤等がゴム表面ににじみ出すブルーミングを生じる恐れがあり、耐熱耐加湿特性が不十分である。
【0008】スポーツ用品のウエイト部材、バランスウエイト、制振遮音シート、防音部材等に使用される高比重組成物としては、高比重で軟らかい材料が望まれている上に、屋外で使用される場合には、上記のような耐熱耐加湿特性が要求される。特に、車中の高温下に放置されたりすると、高温高湿状態になりブルーミングが生じ組成物表面がべたつくため、使用時に組成物に触れると使用者が不快感を感じることがあり問題となっている。さらに、各種バランスウエイト、スポーツ用のウエイト部材等に用いられる場合には、人体に触れる可能性が高いため、より軟らかい必要があり、かつ、落としたり、ぶつけたりして壊れることがないように、ある程度の強度を有する材料が望まれている。
【0009】本発明は上記した問題に鑑みてなされたものであり、比重が高く、軟らかい上に、耐候性、耐熱耐加湿特性にも優れ、かつ、十分な強度を有する高比重EPDM組成物を提供することを課題としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本発明は、EPDMを主成分とし、ゴム100体積%に対して、銅粉末あるいは酸化第I銅粉末を30体積%以上150体積%以下の割合で含有しており、比重が3.0以上6.0以下であることを特徴とする高比重EPDM組成物を提供している。
【0011】本発明者は、鋭意研究の結果、ゴム弾性を持ち耐候性に優れるEPDMに、銅粉末あるいは酸化第I銅粉末を分散させ、ゴムに対する該粉末の体積%を上記のように規定することにより、高熱高温度の条件下でも、組成物表面から添加剤等がブルーミングしないことを見出した。より比重の高い組成物とするために、より多くの金属粉末を分散させる必要があるが、シートや様々な形状に成形し強度を保持するには含有できる金属の体積量に限界がある。このため、本発明者は、実験を積み重ね、EPDMに上記金属粉末を上記規定の体積%で含有させるのが最適であることを見出した。上記のような配合とすることにより、比重が高く、軟らかい上に、耐候性、耐熱耐加湿特性にも優れ、かつ、十分な強度を有する高比重EPDM組成物を得ることができる。
【0012】本発明の高比重EPDM組成物においては、ゴム100体積%に対して、銅粉末あるいは酸化第I銅粉末を30体積%以上150体積%以下、好ましくは60体積%以上120体積%以下、さらに好ましくは77体積%以上119体積%以下の割合で含有している。上記範囲としているのは、30体積%より小さいと比重が小さくなりすぎるためスポーツ用品用のおもり等として必要な重量を付加するには、体積を大きくしなければならないことに因る。一方、150体積%より大きいと銅粉末あるいは酸化第I銅粉末の表面をEPDMで覆うことができなくなり、強度が低下したりシート等への成形性が困難になることに因る。このように、金属粉末として、銅あるいは酸化第I銅を用いることにより、耐候性、耐熱耐加湿特性を向上することができる。なお、銅あるいは酸化第I銅の配合量、及び、各種添加剤の種類や配合量を適宜調整することにより、金属粉末自身の色を利用し、上記高比重EPDM組成物を赤色等に着色することも可能である。
【0013】本発明の高比重EPDM組成物においては、その比重は3.0以上6.0以下、好ましくは4.0以上5.0以下の範囲としている。上記範囲としているのは、比重が3.0より小さいと、スポーツ用品用のおもり等として用いる際に、比重が小さいため体積が大きくなり使用の邪魔になる場合があることに因る。一方、比重が6.0より大きいと、銅粉末あるいは酸化第I銅粉末を多く含有させることが必要となり、そのため加工が困難となることに因る。
【0014】EPDMに銅粉末あるいは酸化第I銅粉末を良く分散させ、より強度を上げるためには、上記粉末の平均粒子径は50μm以下が好ましい。より好ましくは、20μm以下が良い。また、粒子径が小さいものと大きいものを併用することにより、例えば、5μm以下のものと27μm以上のものを併用することにより、流動性や成形性を上げることができる。
【0015】上記EPDMはパーオキサイドにより加硫することが好ましい。銅粉末あるいは酸化第I銅粉末をEPDM中に分散させ加硫を行う際に、硫黄加硫ではなく、パーオキサイド加硫を行うことにより、高比重EPDM組成物の強度や耐候性を向上させることができる。
【0016】上記パーオキサイドとしては、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等が挙げられる。中でも耐候性に優れるため、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイドが好ましい。特に、ジクミルパーオキサイドを用いると引張強度が向上するため好ましい。
【0017】上記パーオキサイドと共に架橋助剤を配合することが好ましい。トリアリルイソシアヌレート、多官能性メタクリレートモノマー等の架橋助剤を配合することにより、高比重EPDM組成物の引張強度および引裂強度を向上させることができる。
【0018】EPDMには分子量、ジエン量やエチレン量により特性の異なる種類があるが、ジエン量、エチレン量、ムーニー粘度を上記範囲に規定したEPDMを使用することにより、耐候性、成形性、強度面に優れ、かつ軟らかい高比重EPDM組成物を得ることができる。
【0019】EPDMのジエン量は4.5重量%以下(EPDMの原料全体におけるジエン成分の重量%)の範囲であり、好ましくは3.5重量%以下である。ジエン量が多いEPDMを使用すると、屋外暴露試験(太陽光)や紫外線を浴びせるサンシャインウェザオメータ試験やキセノン試験において、銅粉末あるいは酸化第I銅粉末や添加剤がブルーミングしやすいが、EPDM中のジエン量を上記4.5重量%以下に低減することにより、ブルーミングの発生を抑制でき、耐候性を向上させることができる。
【0020】高比重EPDMゴムを所要の強度で成形するためには、特に、EPDM中のエチレン量とムーニー粘度の値の範囲の最適化が重要であり、エチレン量が多く、上記ムーニー粘度が高いEPDMを使用するのが好ましい。
【0021】よって、EPDMの原料全体におけるエチレン成分の重量%が、58重量%以上80重量%以下の範囲とし、好ましくは64重量%以上80重量%以下、さらに好ましくは64重量%以上70重量%以下、最適範囲は64重量%以上66重量%以下とする。エチレン量を上記範囲としているのは、58重量%未満のEPDMではより強度が低くなるため、銅粉末あるいは酸化第I銅粉末を分散させた後に、シートとして成形する場合に、その成形性が低下することに因る。一方、80重量%よりも大きいEPDMでは、より硬くなるために銅粉末あるいは酸化第I銅粉末の均一な混合分散がより難しくなり、薄いシート等に成形する場合に、その成形性が低下しやすくなるとともに、成形後の高比重材料はより硬くなりスポーツ用品等としての使用時に人体への当たりがきつくなり易いためである。
【0022】EPDMの125℃におけるムーニー粘度:ML1+4(125℃)は50以上170以下の範囲とし、好ましくは100以上170以下、さらに好ましくは150以上165以下とする。なお、ここで、ムーニー粘度とは、JIS K6300に規定された方法によって測定され、粘度を表す指標として用いられる。ML1+4において、MはムーニーのM、Lはローター形状のL、(1+4)は予熱時間の1分とローターの回転時間の4分を意味している。上記範囲としているのは、125℃でのムーニー粘度が50未満であるEPDMでは、強度がより小さくなるために銅粉末あるいは酸化第I銅粉末を分散させた後の成形性が低下し易くなるからである。一方、125℃でのムーニー粘度が170よりも大きいEPDMでは、より硬くなるために銅粉末あるいは酸化第I銅粉末の均一な混合分散がより難しくなり薄いシート状に成形する際の成形性が低下しやすくなるとともに、成形後の高比重材料はより硬くなり人体への当たりがきつくなり易いことに因る。EPDMの分子量の大きさは、ムーニー粘度の大きさである程度判断可能であり、上記ムーニー粘度が大きいほど、分子量は大きくなり、上記ムーニー粘度が50の場合、分子量は30万〜40万、上記ムーニー粘度が170の場合、分子量は約60万となる。
【0023】上記ゴム100重量部に対して、軟化剤を150重量部以下、好ましくは50重量部以上100重量部以下の割合で添加しているこのように、軟化剤を配合することにより、柔軟性を向上することができ、人体と接触する可能性のある製品等に使用される場合に、特に有用である。上記範囲としているのは、ゴム100重量部に対して、軟化剤が150重量部より少ないと、加工がしにくくなる場合があるためである。一方、軟化剤が150重量部よりも多くなると、耐候性試験等においてブルーミングが生じ易いためである。
【0024】上記軟化剤として用いるオイルは特に限定しないが、EPDMと相溶性の高いパラフィン系オイルやナフテン系オイルが好ましい。特にパラフィン系オイルは揮発性が小さいため取り扱いやすく定量した量を確実に添加することができるので好ましい。その他、例えば芳香族系等の鉱物油や炭化水素系オリゴマーからなるそれ自体公知の合成油、またはプロセスオイルを用いることができる。合成油としては、例えば、α−オレフィンとのオリゴマー、ブテンのオリゴマー、エチレンとα−オレフィンとの非晶質オリゴマーが好ましい。
【0025】EPDMには、ゴム成分のみからなる非油展タイプのEPDMと、ゴム成分と共にオイルを含む油展タイプのEPDMとが存在するが、いずれのタイプのものも使用可能である。ただし、油展タイプのEPDM中のオイルの添加重量は、軟化剤の添加重量(オイル量)として扱う。
【0026】また、本発明の高比重EPDM組成物において、JIS K−6253(試験機デュロメータタイプA)に規定された方法によって測定された上記高比重EPDM組成物の加硫後の表面硬度は95以下であるのが好ましい。上記硬度が95よりも大きいと、硬すぎて、他の部材との一体成形が難しくなるためである。なお、他の要求特性を満たせば、上記硬度の値は小さいほどよい。
【0027】さらに、本発明の高比重EPDM組成物において、その引張強度は1.5MPa以上とするのが望ましい。これは、引張強度が1.5MPaよりも小さいと、成形時や使用時にひび割れや破壊が生じ易くなるためである。なお、他の要求特性を満たせば1.5MPa以上であれば大きいほど良い。
【0028】EPDMは主鎖が飽和炭化水素からなり、主鎖に二重結合を含まないため、高濃度オゾン雰囲気、光線照射等の環境下に長時間曝されても、分子主鎖切断が起こりにくく、耐候性を高めることができる。なお、EPDMには、ジエン成分の種類等が異なるものがあるが、種類は特に限定されるものではない。
【0029】本発明の高比重EPDM組成物中のゴム成分は、上記したように耐候性の点より、EPDM100%であることが好ましいが、EPDM以外に、他のゴム成分を1種又は2種以上適宜混合することも可能である。EPDMと他のゴム成分とをブレンドする場合、高比重EPDM組成物中、全ゴム成分に占めるEPDMの比率は、80重量%以上、さらには90重量%以上であることが好ましい。なお、EPDMには、ジエン成分(第3成分)の種類等が異なるものがあるが、種類は特に限定されるものではない。
【0030】EPDMゴム以外のゴム成分としては、エチレンプロピレンゴム(EPR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(ACM、ANM)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(Si)等を用いることができ、上記ゴム成分から選択される1種または2種以上を混合使用することができる。
【0031】高比重EPDM組成物の機械的強度を向上させるために、ゴムの柔軟性を低下させない範囲内で必要に応じて、充填剤を配合することができる。充填剤としては、例えば、シリカ、カーボンブラック、クレー、タルク等の粉体を挙げることができる。充填剤を配合することにより、ゴムの引っ張り強度及び引き裂き強度を向上することができる。
【0032】また、高比重EPDM組成物中には上記の配合剤以外に、必要に応じて、老化防止剤、ワックス等を配合することができる。老化防止剤としては、例えば、2−メルカプトベンゾイミダゾールなどのイミダゾール類、フェニル−α−ナフチルアミン、N,N−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミンなどのアミン類などが挙げられる。
【0033】また、本発明の高比重EPDM組成物は、上記パーオキサイド以外にも、粉末硫黄等により加硫することもできる。粉末硫黄を用いる際は、加硫促進剤を配合することが好ましく、消石灰、マグネシア(MgO)、リサージ(PbO)等の無機促進剤や以下に記す有機促進剤を用いることができる。有機促進剤としては、2−メルカプト・ベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェン等のチアゾール系、n−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、プロピルアミン等の脂肪族第1アミンと2−メルカプト・ベンゾチアゾールとの酸化縮合物、ジシクロヘキシルアミン、ピロリジン、ピペリジン等の脂肪族第2アミンと2−メルカプト・ベンゾチアゾールとの酸化縮合物、脂環式第1アミンと2−メルカプト・ベンゾチアゾールとの酸化縮合物、モリフォリン系化合物と2−メルカプト・ベンゾチアゾールとの酸化縮合物等のスルフェンアミド系、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸テルル等のジチオカルバミン酸塩系を適宜組み合わせていることが好ましい。
【0034】本発明の高比重EPDM組成物は、シート状、ブロック状、球状、角形状等の種々の形状に成形することにより、スポーツ用品のウエイト部材(テニス、ゴルフ等のウエイト部材、トレーニング用品)、バランスウエイト、その他各種おもり、制振遮音シート、防音部材等の高比重で軟らかく、耐候性等が要求される部材として好適に用いることができる。
【0035】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。本発明の第一実施形態の高比重EPDM組成物は、ゴム成分として、ジエン量が4.0重量%、エチレン量が66重量%、125℃におけるムーニー粘度が165であるEPDMを用いている。
【0036】上記EPDMは油展EPDMであり、EPDM100重量部に対して、100重量部のオイルが油展されている。その他、カーボン、老化防止剤、架橋助剤を所要量配合し、密閉型混練機で混練し、パーオキサイドである2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンにより加硫してベース材を得ている。
【0037】さらに、上記ベース材に対し、平均粒子径24.4μm、比重8.94の銅(Cu)粉末を添加し、密閉型混練機で練り、高比重EPDM組成物を得ている。高比重EPDM組成物中、EPDM100体積%に対して、銅粉末は81体積%の割合で含有させている。高比重EPDM組成物の比重は4.5としている。
【0038】JIS K−6253(試験機デュロメータタイプA)に規定された方法によって測定された上記高比重EPDM組成物の加硫後の表面硬度は67であり、引張強度は3.1MPaである。
【0039】上記のような配合で作成された高比重EPDM組成物は、適度に軟らかく、強度に問題がない上に、ブルーミングの発生もなく耐候性と耐熱耐加湿特性に優れており、高温、高湿度環境下での使用が可能であるため、屋外等で使用されるスポーツ用品のウエイト部材等の材料として好適に用いることができる。
【0040】以下、本発明の高比重EPDM組成物の実施例1〜12、及び比較例1について詳述する。
【0041】まず、EPDM、その他添加剤等の各成分を、下記の表1に記載の各重量部に設定し、加硫方法の異なる3つのベース配合(ベースA、ベースB、ベースC)にて配合した。ベースAは2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンによるパーオキサイド加硫、ベースBはジクミルパーオキサイドによるパーオキサイド加硫、ベースCは硫黄加硫とした。ゴム成分はEPDMのみとした。
【0042】
【表1】


【0043】上記表1の各ベース配合を小型の密閉型混練機(ミックスラボSW、株式会社モリヤマ製)で練りベース材とした。各ベース配合(ベースA、ベースB、ベースC)で練られたベース材に、銅粉末あるいは酸化第I銅粉末を加え密閉型混練機で練り、下記の表2に示すように、各実施例及び比較例について、高比重EPDM組成物を得た。上記高比重EPDM組成物を金型に仕込んで、170℃で20分間プレスし、厚み0.6mmのシートを作成した。
【0044】
【表2】


【0045】(実施例1)ベース配合はベースBとし、EPDMとして、住友化学工業(株)製エスプレン670F(油展EPDM)を使用した。ジエン量は4.0重量%、エチレン量は66重量%、125℃におけるムーニー粘度は165であった。なお、エスプレン670F中にはEPDM100重量部に対してオイル100重量部が添加されていた。平均粒子径24.4μm、比重8.94の銅(Cu)粉末を添加し、高比重EPDM組成物中、EPDM100体積%に対して、銅粉末は71体積%の割合で含有させた。比重は4.5とした。
【0046】(実施例2)パラフィンオイルPW380(出光興産(株)製)をEPDM100重量部に対して50重量部添加し、総オイル量を150重量部とした。比重は4.5とした。その他は実施例1と同様とした。
【0047】(実施例3)EPDM100体積%に対して、銅粉末を150体積%の割合で含有させた。比重は5.9とした。その他は実施例1と同様とした。
【0048】(実施例4)EPDM100体積%に対して、銅粉末を32体積%の割合で含有させた。比重は3.2とした。その他は実施例1と同様とした。
【0049】(実施例5)ベース配合をベースAとした。比重は4.5とした。その他は実施例1と同様とした。
【0050】(実施例6)ベース配合をベースCとした。比重は4.5とした。その他は実施例1と同様とした。
【0051】(実施例7)平均粒子径4.8μm、比重6.0の酸化第I銅(CuO)粉末を添加した。EPDM100体積%に対して、酸化第I銅(CuO)粉末は66体積%の割合で含有させた。比重は3.2とした。その他は実施例1と同様とした。
【0052】(実施例8)EPDM100体積%に対して、酸化第I銅(CuO)粉末を141体積%の割合で含有させた。比重は4.1とした。その他は実施例7と同様とした。
【0053】(実施例9)ベース配合をベースAとした。比重は3.2とした。その他は実施例7と同様とした。
【0054】(実施例10)ベース配合をベースCとした。比重は3.2とした。その他は実施例7と同様とした。
【0055】(実施例11)EPDM100重量部に対して、パラフィンオイルPW380(出光興産(株)製)を100重量部の割合で含有させ、総オイル量をEPDM100重量部に対して200重量部とした。比重は4.3とした。その他は実施例1と同様とした。
【0056】(実施例12)EPDMとして、非油展であるエスプレン532(住友化学工業(株)製)を使用した。エスプレン532は、エチレン量が51重量%であった。EPDM100重量部に対して、パラフィンオイルPW380(出光興産(株)製)を100重量部の割合で含有させた。比重は4.7とした。その他は実施例1と同様とした。
【0057】(比較例1)EPDM100体積%に対して、銅粉末を173体積%の割合で含有させた。比重は6.2とした。その他は実施例1と同様とした。
【0058】上記実施例1〜12及び、比較例1の内、シートを作成することができた実施例、比較例について、硬度(規格A)を測定し、及び、引張試験により引張強度を測定した。また、耐候性テストを行いブルーミングの有無を評価した。各試験・評価方法については、後述する。各評価結果を上記表2に示す。
【0059】(硬度測定)JIS K−6253(試験機デュロメータタイプA)に規定された方法によって、加硫後の高比重EPDM組成物の表面硬度を測定した。
【0060】(引張試験)JIS3号ダンベル形状にて、引張速度500mm/minの条件下で引張試験を行い、破壊時の強度(MPa)を測定した。
【0061】(耐候性テスト)スーパーキセノンウェザーメーター(SX75、スガ試験機(株)製)で耐候性テストを行い、1週間後と2週間後にブルーミングと変色の有無を確認した。
【0062】(耐熱耐加湿性テスト)80℃90%hのオーブン内で2週間の耐熱耐加湿性テストを行い、ブルーミングの有無を確認した。
【0063】なお、表2中の銅(Cu)粉末、酸化第I銅(CuO)粉末の平均粒子径は、(株)堀場製作所レーザー回折/散乱式粒度分布測定想定(LA−910)でエタノールを溶媒として測定した。
【0064】実施例1〜10は、EPDM組成物中に、銅粉末あるいは酸化第I銅粉末を、ゴム100体積%に対して規定範囲内の最適な体積で含有させているため、適度に軟らかく、強度に問題がない上に、ブルーミングの発生もなく耐候性と耐熱耐加湿特性に優れた高比重EPDM組成物となっていることが確認できた。一方、比較例1は、銅粉末の添加量が多すぎたためにシートを作成できなかった。実施例11、12は、1週間までの耐候性には問題ないが、2週間後には、ひび割れとブルーミングと変色が発生した。
【0065】また、ベース配合のみが異なる同じ比重の実施例1,5,6、及び、実施例7,9,10をそれぞれの引張強度を対比すると、硫黄加硫のベースCに比べ、パーオキサイド加硫のベースA、ベースBの方が強度が高く、特に、ジクミルパーオキサイドにより加硫すると強度が高くなることが確認できた。
【0066】以上より、EPDM組成物中に、銅粉末あるいは酸化第I銅粉末を、ゴム100体積%に対して規定範囲内の最適な体積で含有させ、高比重とすると共に、最適な条件のEPDMを用い、最適な量の軟化剤を添加し、パーオキサイド加硫を行うことにより、適度に軟らかく、成形性に優れ、強度に問題がなく、ブルーミングが発生しない非常に高性能な高比重材料を作成可能であることが確認できた。
【0067】
【発明の効果】以上の説明より明らかなように、本発明によれば、EPDM組成物中に、銅粉末あるいは酸化第I銅粉末を、ゴム100体積%に対して規定範囲内の最適な体積で含有させているため、比重が高く、軟らかい上に、ブルーミングの発生もなく耐候性、耐熱耐加湿特性にも優れた高比重EPDM組成物を得ることができる。
【0068】また、EPDMをパーオキサイド加硫することにより、耐候性、強度をさらに向上することができ、特に、ジクミルパーオキサイドにより加硫すると、いっそう強度を高めることができる。
【0069】さらに、ジエン量、エチレン量、125℃におけるムーニー粘度を規定したEPDMを用い、軟化剤の量を規定することにより、さらに軟らかい上に、ブルーミングの発生を抑制でき、耐候性、耐熱耐加湿特性を向上することができる。従って、スポーツ用品のウエイト部材等の柔軟性と重量感及び耐候性等を必要とされる各種製品に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 EPDMを主成分とし、ゴム100体積%に対して、銅粉末あるいは酸化第I銅粉末を30体積%以上150体積%以下の割合で含有しており、比重が3.0以上6.0以下であることを特徴とする高比重EPDM組成物。
【請求項2】 上記EPDMをパーオキサイドにより加硫している請求項1に記載の高比重EPDM組成物。
【請求項3】 上記パーオキサイドとしてジクミルパーオキサイドを用いている請求項2に記載の高比重EPDM組成物。
【請求項4】 上記EPDMのジエン量を4.5重量%以下、エチレン量を58重量%以上80重量%以下、125℃におけるムーニー粘度:ML1+4(125℃)を50以上170以下とし、上記ゴム100重量部に対して、軟化剤を150重量部以下の割合で添加している請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の高比重EPDM組成物。
【請求項5】 JIS K6253(試験機デュロメータタイプA)に規定された方法により測定された表面硬度が95以下であり、引張強度が1.5MPa以上である請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の高比重EPDM組成物。