説明

高水分シート状油中水型乳化油脂組成物

【課題】高含水でありながら、折り込み作業性、内層状態、浮き、ボリュームが良好で、しっとりした口ごなれの良い食感のデニッシュペストリーが得られるシート状油中水型乳化油脂組成物及びこれを使用したデニッシュペストリーを提供すること。
【解決手段】水分含量がシート状油中水型乳化油脂組成物全体中30重量%〜50重量%であり、乳化剤、増粘剤及び繊維質を含有することを特徴とするシート状油中水型乳化油脂組成物を用いてペストリー生地を作製し、それを焼成してデニッシュペストリーを得ること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高水分シート状油中水型乳化油脂組成物とこれを用いてなるペストリー生地に関する。
【背景技術】
【0002】
ペストリー生地に用いられる折り込み用のシート状油中水型乳化油脂組成物は、生地に挟み折り込んで伸ばすときに適度な硬さ、伸びがあることで生地と同様に伸びて均一な厚さの層を形成するため、焼成後に内層状態の良好なデニッシュペストリーとなることが知られている。シート状油中水型乳化油脂組成物の良好な硬さと伸びは、含まれる油分の性質と分量により大きく左右される。例えば含有する油脂が結晶の細かい高融点の性質を持つこと、油分の多い油中水型乳化油脂組成物であることなどによりデニッシュペストリーの内層状態を良好とし、浮きやボリュームを増大させることが知られている。デニッシュペストリーにとって内層状態、浮き、ボリュームはパフ感やサクサク感などの食感に大きく影響するため、シート状油中水型乳化油脂組成物の硬さや伸びを適性に保つことが必要である。
【0003】
一方で近年の一般消費者は、デニッシュペストリーの食感にサクサク感やパフ感を求めるだけでなく、しっとりした食感を求める傾向や、油っぽくないものが好まれる傾向があるため、しっとりした食感で内層状態、浮き、ボリュームの良いデニッシュペストリーとなる折り込み用油脂の開発が求められている。このような要求に対応する一つの手段として、高水分のシート状油中水型乳化油脂組成物をペストリー生地に用いることが挙げられ、種々検討がなされているが、内層状態、浮き、ボリュームを良好に保ちながら、しっとりした口ごなれの良い食感のデニッシュペストリーとするには至っていない。
【0004】
例えば特許文献1では、マーガリン中の水/油脂が1/0.8〜2の高水分含有率マーガリンであって、合成乳化剤としてポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、蔗糖脂肪酸エステル及び/又は重合度3以上のポリグリセリン脂肪酸エステルの組み合わせにより、折り込み時の作業性や内層状態、浮き、ボリュームを良好に保つマーガリンが記載されているが、水分離を防ぐ目的でポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを多く使用しているため、デニッシュペストリーの食感は口ごなれの悪い食感となる。特許文献2では特定の乳化剤を併用し、水相75〜50重量%という高水分の油中水型乳化油脂組成物としているが、折り込み作業性は悪く、内層状態と浮き、ボリュームを良好に保てていない。
【0005】
また特許文献3では、合成乳化剤の代わりに、卵黄レシチンや大豆レシチンを使った高水分油中水型乳化油脂組成物を教示しているが(水分量:17〜50重量%)、繊維質を含んでおらず、晶析時に大きな圧力もかけていないため、シート状油中水型乳化油脂組成物の硬さや伸びを適性に保つことができず、結果的に内層状態、浮き、ボリュームの悪いものとなる場合がある。
【0006】
さらに特許文献4では、乳化剤を用いなくても特定の加圧圧力(10〜150MPa)で晶析させることにより、乳化安定な高水分(5〜50重量%)の油中水型乳化油脂組成物としているが、しっとりした口ごなれの良いデニッシュペストリーの食感には至っていない。また何れの文献にも繊維質を使用する記載も示唆もない。
【特許文献1】特開昭61−119137号公報
【特許文献2】特開平5−49398号公報
【特許文献3】特開2006−325502号公報
【特許文献4】特開2003−325103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高含水でありながら、折り込み作業性、内層状態、浮き、ボリュームが良好で、しっとりした口ごなれの良い食感のデニッシュペストリーが得られるシート状油中水型乳化油脂組成物及びこれを使用したデニッシュペストリーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の組成を有し、特定の圧力で加圧晶析した高水分のシート状油中水型乳化油脂組成物が、折り込み作業性を良好に保つとともに、デニッシュペストリーの内層状態、浮き、ボリュームを良好に保つことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の第一は、水分含量がシート状油中水型乳化油脂組成物全体中30重量%〜50重量%であり、乳化剤、増粘剤及び繊維質を含有することを特徴とするシート状油中水型乳化油脂組成物に関する。好ましい実施態様は、増粘剤及び繊維質が水相部に含有される上記記載のシート状油中水型乳化油脂組成物に関する。より好ましくは、シート状油中水型乳化油脂組成物全体中、増粘剤の含有量が0.05重量%〜1重量%であり、繊維質の含有量が0.05重量%〜2重量%である上記記載のシート状油中水型乳化油脂組成物、更に好ましくは、水相部に乳化剤としてHLB7〜16のショ糖ステアリン酸エステルをシート状油中水型乳化油脂組成物全体中0.1重量%〜2重量%含有することを特徴とする上記記載のシート状油中水型乳化油脂組成物、特に好ましくは、繊維質が不溶性食物繊維である上記記載のシート状油中水型乳化油脂組成物、最も好ましくは、5MPa〜150MPaの範囲で加圧晶析して得られることを特徴とする上記記載のシート状油中水型乳化油脂組成物、に関する。本発明の第二は、上記記載のシート状油中水型乳化油脂組成物を用いたペストリー生地に関する。本発明の第三は、請求項7に記載のペストリー生地を焼成してなる食品に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に従えば、高含水でありながら、折り込み作業性、内層状態、浮き、ボリュームが良好で、しっとりした口ごなれの良い食感のデニッシュペストリーが得られるシート状油中水型乳化油脂組成物及びこれを使用したデニッシュペストリーを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明のシート状油中水型乳化油脂組成物は、水分含量が高く、水分含量がシート状油中水型乳化油脂組成物全体中30重量%〜50重量%であることが好ましく、30〜40重量%がより好ましい。30重量%より少ないと、デニッシュペストリーの焼成後の水分量が減り、結果的にしっとり感が損なわれる場合がある。また50重量%より多いと加圧晶析時に水が分離することがあり、安定製造が困難な場合がある。そして、該シート状油中水型乳化油脂組成物は、乳化剤、増粘剤及び繊維質を含有することを特徴とする。ただし本発明のシート状油中水型乳化油脂組成物は、特に口ごなれなどの食感を損ねるポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステルをシート状油中水型乳化油脂組成物全体中0.1重量%以下しか含まない。
【0012】
本発明において、油相に添加する乳化剤の種類は、油相に溶解すれば特に限定がないが、モノグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセライド、ジグリセリンエステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種が用いられ、油溶性のものを用いることが好ましい。
【0013】
本発明において、水相に添加する乳化剤は、HLB7〜16のショ糖ステアリン酸エステルが好ましく、該ショ糖ステアリン酸エステルの含有量は、シート状油中水型乳化油脂組成物全体中0.1重量%〜2重量%が好ましく、0.3重量%〜1重量%がより好ましい。0.1重量%より少ないと、デニッシュペストリーの焼成後の水分量とボリュームが減る場合があり、しっとり感やサクサク感が損なわれる場合がある。また2重量%より多いとエマルションが油中水型乳化から水中油型乳化へ転相する場合がある。
【0014】
さらには、デニッシュペストリーのしっとり感とサクサク感を更に向上するために、増粘剤と繊維質を水相に添加することが好ましい。
【0015】
前記増粘剤としては、グァーガム、キサンタンガム、ローカストビンガム、カラギナン、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、ジェランガム、ゼラチン、寒天からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。増粘剤の含有量は、シート状油中水型乳化油脂組成物全体中0.05重量%〜1重量%が好ましく、0.1重量%〜0.5重量%がより好ましい。0.05重量%より少ないとデニッシュペストリーのしっとり感が減少する場合があり、1重量%より多いとデニッシュペストリーのサクサク感が減少する場合がある。
【0016】
前記繊維質としては、不溶性食物繊維が例示でき、不溶性ペクチン、セルロース、ヘミセルロース、リグニン等からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。繊維質の含有量は、シート状油中水型乳化油脂組成物全体中0.05重量%〜2重量%が好ましく、0.1〜0.5重量%がより好ましい。0.1重量%より少ないと、デニッシュペストリーのしっとり感とサクサク感が損なわれる場合がある。また1重量%より多いと、シート状油中水型乳化油脂組成物の保型性が悪化し、折り込み作業性の悪化に繋がり、結果的にボリュームの小さいデニッシュペストリーとなる場合がある。
【0017】
本発明のシート状油中水型乳化油脂組成物に使用される油脂は、マーガリンやショートニングに用いられる油脂であれば、いかなる油脂でも使用可能であり、例えば、亜麻仁油、桐油、サフラワー油、かや油、胡桃油、芥子油、向日葵油、綿実油、菜種油、大豆油、辛子油、カポック油、米糠油、胡麻油、落花生油、オリーブ油、椿油、茶油、ひまし油、椰子油、パーム油、パーム核油、葡萄油、カカオ脂、シア脂、コクム脂、ボルネオ脂等の植物油脂や、魚油、鯨油、牛脂、豚脂、鶏油、卵黄油、羊油等の動物油脂からが挙げられ、また、これらの油脂をエステル交換したものや、硬化、分別したもの等、通常食用に供される全ての油脂を用いることができ、それらの群より選ばれる少なくとも1種が用いられる。油脂の含有量は、シート状油中水型乳化油脂組成物全体中70重量%〜50重量%であることが好ましく、70〜60重量%がより好ましい。
【0018】
本発明のシート状油中水型乳化油脂組成物の製造は、以下のような方法に従うことが好ましい。まず所定量の水に所定量のショ糖ステアリン酸エステル、増粘剤、繊維質を加えて均一に分散した後、加熱殺菌して水相とする。所定の油脂と所定の乳化剤を所定量調合した油相に、前記水相を添加してから70℃に加温して温調し、プロペラミキサーで攪拌混合して、融解したエマルションを得る。これに所定の条件で加圧晶析を行い、更に機械的に練る工程である捏和を行う。油中水型乳化油脂組成物の晶析と捏和は同時に行っても良く、晶析、捏和後にシート状に成型し、本発明のシート状油中水型乳化油脂組成物を得る。なお、シート状に成型する方法は特に限定しないが、工業的にはレスティングチューブ等の熟成ユニットの開口部から所定の厚さで連続的に押し出された油脂組成物を所定の長さにカットして得る方法が好ましい。
【0019】
本発明における加圧晶析とは、融解したエマルションを冷却晶析させる時に強制的に加圧することをいう。加圧晶析により得た油中水型乳化油脂組成物は油脂結晶やエマルションが微細化されるため、シート状油中水型乳化油脂組成物の伸びやコシが得られ結果的に折り込み作業性が向上する。加圧晶析の方法は特に限定されないが、容器内に加熱融解したエマルションを投入し、冷却と加圧を同時に行う方法が一般的である。冷却方式は冷媒式、空冷式のいずれでもよいが、冷媒式が好ましい。加圧圧力と時間、冷媒温度はシート状油中水型乳化油脂組成物の原料組成により最適値が異なるため一概に規定できないが、加圧圧力は通常5〜150MPaが好ましく、10〜50MPaがより好ましい。加圧時間は通常1〜60分間が好ましく、2〜10分間がより好ましい。冷媒温度は−30〜10℃の範囲で処理することが好ましく、−25〜−5℃がより好ましい。−30℃未満であると、晶析中にエマルションから水が分離する場合があり、10℃を超えると晶析が不十分となり、シート状油中水型乳化油脂組成物の伸びやコシが得られない場合がある。
【0020】
本発明のシート状油中水型乳化油脂組成物は、デニッシュペストリーの作製等の用途に用いられる。
【実施例】
【0021】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0022】
<デニッシュ作製時の折り込み時作業性評価法>
実施例、比較例において、折り込み作業時の作業性について評価した。その際の評価基準は以下の通りである。○:油脂の伸びが良好で、油脂が均一な層を形成している、△:油脂の伸びは良好だが、油脂の層が均一でない、×:油脂の伸びが悪く、油切れを起こす。
【0023】
<デニッシュの比容積評価法>
実施例、比較例で作製したシート状油中水型乳化油脂組成物を用いて作製したデニッシュの重量を計測した後、体積をアステックス社製レーザー体積計測機「型番WinVM2000」を用いて計測し、比容積を算出した。
【0024】
<デニッシュの内層状態評価法>
実施例、比較例で作製したシート状油中水型乳化油脂組成物を用いて作製したデニッシュを底面に対して垂直に切断し、切断面の状態を目視で評価した。その際の評価基準は以下の通りである。○:気泡が均一に配置され、大きい、△:気泡が均一に配置されているが、小さい、×:気泡の配置に均一さが無く、大きさにバラツキがある。
【0025】
<デニッシュのしっとり感評価法>
実施例、比較例で作製したシート状油中水型乳化油脂組成物を用いて作製したデニッシュを10人からなる熟練のパネラーに以下の評価基準に従って官能評価を行った。◎:10人中8人以上がしっとりしていると評価、○:10人中6〜7人がしっとりしていると評価、△:10人中4〜5人がしっとりしていると評価、×:10人中0〜3人がしっとりしていると評価。
【0026】
<デニッシュの口ごなれ評価法>
実施例、比較例で作製したシート状油中水型乳化油脂組成物を用いて作製したデニッシュを10人からなる熟練のパネラーに以下の評価基準に従って官能評価を行った。◎:10人中8人以上が口ごなれが良いと評価、○:10人中6〜7人が口ごなれが良いと評価、△:10人中4〜5人が口ごなれが良いと評価、×:10人中0〜3人が口ごなれが良いと評価。
【0027】
(製造例1) 比較例5調合油の作製
ハイエルシン極度硬化油50部、椰子油50部を、ナトリウムメチラート(対油0.4%)を触媒として80℃で30分間エステル交換反応を行った。その後、定法に従って精製し、比較例5に用いる油脂を得た。
【0028】
(実施例1〜4)
表1に示す配合で油相部と水相部を乳化し、この乳化液を直列につながれた3台からなる急冷捏和装置へピストンポンプを用いて送液した。続いて2番目、3番目の急冷捏和装置の出口圧力をギアポンプにより調節すると同時に、出口温度が14℃となるよう冷媒温度を調節した。急冷捏和装置での滞留時間を5分として、高さ10mm、幅230mmの成型ノズルを介して押し出して成型した。連続的に押し出される油中水型乳化油脂組成物を長さ230mmにカットしてシート状油中水型乳化油脂組成物を得た。この時の3番目の急冷捏和装置の出口圧力と得られたシート状油中水型乳化油脂組成物の水分離の有無を表1にまとめた。
【0029】
【表1】

【0030】
(比較例1〜3)
表1に示す配合で油相部と水相部を乳化し、実施例1〜4の工程と同様にしてシート状油中水型乳化油脂組成物を得た。この時の3番目の急冷捏和装置の出口圧力と得られたシート状油中水型乳化油脂組成物の水分離の有無を表1にまとめた。
【0031】
(比較例4) 先行技術との比較(特開2003−325103号公報実施例2準拠)
表1の配合で油相部と水相部を乳化し、実施例1〜4の工程と同様にしてシート状油中水型乳化油脂組成物を得た。この時の3番目の急冷捏和装置の出口圧力と得られたシート状油中水型乳化油脂組成物の水分離の有無を表1にまとめた。
【0032】
(比較例5) 先行技術との比較(特開2006−325502号公報実施例4準拠)
表1の配合で油相部と水相部を乳化し、実施例1〜4の工程と同様にしてシート状油中水型乳化油脂組成物を得た。この時の3番目の急冷捏和装置の出口圧力と得られたシート状油中水型乳化油脂組成物の水分離の有無を表1にまとめた。
【0033】
(実施例5〜8、比較例6〜10) 製パン試験
実施例1〜4及び比較例1〜5で得られたシート状油中水型乳化油脂組成物を用いて、表2に示す配合に従って製パン試験を行った。
【0034】
【表2】

【0035】
折り込み生地作製は、縦型ミキサー(関東ミキサー、20リッターボール)とフックを用い、ショートニング及びシート状油中水型乳化油脂組成物以外の材料を投入し、低速(回転数116rpm)3分間、中高速(回転数268rpm)2分間にてミキシングを行った後、ショートニングを投入して低速3分間、中高速3分間ミキシングして捏ね上げ温度25℃とした。この生地をフロアータイム30分間とった後、3℃のリターダーで5時間冷やしてからシート状油中水型乳化油脂組成物の折り込み作業を行った。折り込み作業は上記生地でシート状油中水型乳化油脂組成物を包み込み、リバースシーターを用いて厚さ10mmまで段階的に伸ばし、3つ折りを1回行った後、再度段階的に生地を厚さ10mmまで伸ばし、この生地を3つ折りした状態で3℃のリターダーで16時間リタードした。続いて、段階的に生地厚さを10mmまで伸ばし、3つ折りを1回行い、段階的に生地厚さを5mmまで伸ばし、成型前の折り込み生地を得た。成型前の折り込み生地の状態を観察して作業性評価を行った後、100mm×100mmの正方形に生地をカットして、筒状に折りたたみ、生地両端の接合部分を下にして天板に成型生地を設置し、37.5℃湿度75%の恒温槽にて最終発酵を行った。発酵時間を50分間とった後、200℃のオーブンにて14分間焼成を行い、各種評価に用いるデニッシュを得た。各種評価結果を表3に示す。
【0036】
【表3】

【0037】
実施例1〜4で得られたシート状油中水型乳化油脂組成物の折り込み時の作業性は生地と油脂が同様に伸び、リタード16時間後の油脂の割れもなく、成型前生地の層状態は均一なものであった。比較例1の折り込み時の作業性は非常に悪く、シート状油中水型乳化油脂組成物が脆いため、成型前生地の層状態は不均一で油切れを起こしていた。実施例5〜7のデニッシュの比容積は比較例9と比較例10のデニッシュの比容積よりも大きい値となり、特に実施例5と実施例6で大きい値となった。内層状態は実施例5〜8、比較例9、比較例10のデニッシュで良好であったが、比較例6のデニッシュでは特に悪い内層であった。食感はしっとり感、口ごなれともに実施例5〜8のデニッシュで良い結果となり、特に実施例6及び実施例8で大変良い結果となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分含量がシート状油中水型乳化油脂組成物全体中30重量%〜50重量%であり、乳化剤、増粘剤及び繊維質を含有することを特徴とするシート状油中水型乳化油脂組成物。
【請求項2】
増粘剤及び繊維質が水相部に含有される請求項1に記載のシート状油中水型乳化油脂組成物。
【請求項3】
シート状油中水型乳化油脂組成物全体中、増粘剤の含有量が0.05重量%〜1重量%であり、繊維質の含有量が0.05重量%〜2重量%である請求項1又は2に記載のシート状油中水型乳化油脂組成物。
【請求項4】
水相部に乳化剤としてHLB7〜16のショ糖ステアリン酸エステルをシート状油中水型乳化油脂組成物全体中0.1重量%〜2重量%含有することを特徴とする請求項1〜3何れかに記載のシート状油中水型乳化油脂組成物。
【請求項5】
繊維質が不溶性食物繊維である請求項1〜4何れかに記載のシート状油中水型乳化油脂組成物。
【請求項6】
5MPa〜150MPaの範囲で加圧晶析して得られることを特徴とする請求項1〜5何れかに記載のシート状油中水型乳化油脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6何れかに記載のシート状油中水型乳化油脂組成物を用いたペストリー生地。
【請求項8】
請求項7に記載のペストリー生地を焼成してなる食品。

【公開番号】特開2010−63366(P2010−63366A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229799(P2008−229799)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】