説明

高水分散性粉末とその製造方法

【課題】水難溶性成分を含有するにもかかわらず高水分散性を示し、しかも高水分散性が経時的に安定な高水分散性粉末とその製造方法の提供。
【解決手段】水難溶性成分と、保護コロイド能を有する水溶性高分子と、サポニン類とを含有する高水分散性粉末により解決される。この高水分散性粉末は、保護コロイド能を有する水溶性高分子とサポニン類との存在下で、水難溶性成分を水性溶媒中で乳化して、エマルジョンを調製する乳化工程と、エマルジョンを乾燥する乾燥工程とを有する方法により製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばユビキノン、脂溶性ビタミン類などの水難溶性成分を含有し、例えばサプリメントや健康食品などへの添加に好適な高水分散性粉末とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
補酵素Qの1種として知られるユビキノンは、広く生物界に分布するものであるが、そのなかでもイソプレン単位数が10であるコエンザイムQ10(以下、CoQ10という。)は、心臓病薬などに汎用される他、最近では、サプリメント、健康食品などの食品分野でも広く使用されるようになってきている。
ところが、CoQ10は水に難溶性であるため、食品に添加しにくく、その使用が制限されやすいという問題があった。また、水に難溶性であるビタミンEなどの脂溶性ビタミン類やルテインなどのカロテノイド類についても、同様の問題があった。
【0003】
そこで、このような水難溶性成分を食品に添加しやすくするために、界面活性作用を有する脂肪酸エステル類、例えばグリセリン脂肪酸エステル類を使用することで、水性溶媒中に水難溶性成分の微粒子が分散した乳化物の形態とすることが検討されている(例えば特許文献1(請求項4など。)、特許文献2および3参照。)。
しかしながら、このような乳化物の形態では、食品への添加しやすさの点で未だ不十分である。よって、より添加しやすい高水分散性の粉末状にすることが求められる。高水分散性の粉末を得る方法としては、上述のようにして得られた乳化物を乾燥して溶媒を除去する方法も考えられるが、グリセリン脂肪酸エステル類を使用して水難溶性成分を粉末化する場合、一般的には高HLBのグリセリン脂肪酸エステル類を使用することが多く、この高HLBのグリセリン脂肪酸エステル類は、常温では一般にロウ状ないし粘稠性を有している。よって、たとえ上述の乳化物から溶媒を除去したとしても、流動性が悪くべたつきのある粉末となるか、あるいは粉末状にはならない。
【0004】
グリセリン脂肪酸エステル類以外の物質を使用して、水難溶性成分を粉末化する技術としては、水溶性物質の溶液中に難溶性物質を分散させた乳化物を調製し、この乳化物から水分を除去することで、粉末を得る方法が開示されている(例えば特許文献4(請求項2など。)参照。)。また、水溶性物質とグリセリン脂肪酸エステル類とを併用して、難溶性物質を粉末状にする方法も検討され、例えば特許文献5、特許文献6(請求項8など。)、特許文献7(請求項8など。)には、体内への吸収性を高めることを目的としたものが開示されている。
また、サポニン類を使用し、場合によってはさらにグリセリン脂肪酸エステル類を併用して、難溶性物質を粉末状にする方法も検討されている(例えば特許文献8参照。)。
【特許文献1】特開2003−238396号公報
【特許文献2】特開2004−196781号公報
【特許文献3】特開2005−139122号公報
【特許文献4】特開2003−313145号公報
【特許文献5】特開昭59−161314号公報
【特許文献6】特開昭58−13508号公報
【特許文献7】特開昭58−77810号公報
【特許文献8】特開昭60−64919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、水溶性物質を使用した乳化物から水分を除去して得られた粉末は、粉末状ではあるものの、水への分散性が十分ではないため、やはり食品などに添加しにくく、その使用が制限される場合が多かった。
また、水溶性物質とグリセリン脂肪酸エステル類とを併用した場合には、水溶性物質による乳化作用が保護コロイド作用であるのに対しグリセリン脂肪酸エステル類による乳化作用がミセル形成作用であり、両者の乳化作用が異なるためと考えられるが、得られた粉末は経時的に水への分散性が低下してしまう傾向があった。
さらに、グリセリン脂肪酸エステル類を用いた粉末は、経時的にグリセリン脂肪酸エステル類が酸化され、酸敗臭が発生するなど、安定性に問題があった。
また、サポニン類のみ、またはサポニン類とグリセリン脂肪酸エステル類とを併用した場合でも、水への分散性が良好で、その分散性が経時的に安定な粉末は得られ難かった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、水難溶性成分を含有するにもかかわらず水への高い分散性(高水分散性)を示し、しかも高水分散性が経時的に安定な高水分散性粉末とその製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討した結果、水難溶性成分とともに、保護コロイド能を有する水溶性高分子とサポニン類とを併用することによって、高水分散性を有し、しかも高水分散性が経時的に安定な高水分散性粉末を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の高水分散性粉末は、水難溶性成分と、保護コロイド能を有する水溶性高分子と、サポニン類とを含有することを特徴とする。
前記水難溶性成分100質量部に対して、前記保護コロイド能を有する水溶性高分子が15〜200質量部で、前記サポニン類が4〜30質量部であることが好ましい。
本発明の高水分散性粉末の製造方法は、保護コロイド能を有する水溶性高分子とサポニン類との存在下で、水難溶性成分を水性溶媒中で乳化して、エマルジョンを調製する乳化工程と、前記エマルジョンを乾燥する乾燥工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、水難溶性成分を含有するにもかかわらず高水分散性を示し、しかも高水分散性が経時的に安定な高水分散性粉末を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の高水分散性粉末は、水難溶性成分と、保護コロイド能を有する水溶性高分子と、サポニン類とを含有するものであって、経時的に安定な高水分散性を示すものである。
水難溶性成分としては、例えば薬物などであり、具体例としては、ユビキノン、脂溶性ビタミン類、カロテノイド類、精製魚油などが挙げられる。これらのなかでもCoQ10、ビタミンE、ルテインは、サプリメント、健康食品などの食品に幅広く添加されるものであって、好適に使用され、特にCoQ10が好適に使用される。また、水難溶性成分は、これらの物質が常温液状の油相に分散または溶解したものであってもよい。高水分散性粉末を製造する際には、詳しくは後述するが、水難溶性成分が油状の状態で水性溶媒中に分散した状態とすることが好ましいため、水難溶性成分としては、融点が水の沸点以下、好ましくは95℃以下のものを使用するか、上述したように常温液状の油相に分散または溶解したものを使用することが好ましい。
【0010】
保護コロイド能を有する水溶性高分子(以下、保護コロイド高分子という。)とは、保護コロイドとして作用することのできる水溶性高分子のことであって、保護コロイドとは、疎水性コロイドの表面を取り囲んで親水化することのできる親水コロイドのことを言う。
このような保護コロイド高分子としては、可食性を備えたものであれば特に制限はないが、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース誘導体;アラビアゴム、トラガントゴム、ゼラチンなどの天然高分子物質などが挙げられる。保護コロイド高分子としては、これらのうち1種以上を使用できる。
なお、デキストリン、シクロデキストリンなどのデンプン系の水溶性高分子や、糖類、グリセリン脂肪酸エステル類などは、保護コロイド能を有さないため、本発明において保護コロイド高分子の効果はない。ただし、グリセリン脂肪酸エステル類以外のデンプン系水溶性高分子や、糖類などは、保護コロイド高分子の保護コロイド能に対する阻害は少なく、後述する賦形剤として使用することができる。
【0011】
サポニン類としては、トリテルペン系サポニンやステロイド系サポニンがあり、具体的には、キラヤサポニン、ユッカサポニン、エンジュサポニン、ダイズサポニン、酵素処理ダイズサポニン、チャ種子サポニン、ビートサポニンなどが挙げられるが、これらのなかではキラヤサポニンまたはユッカサポニンのうちの少なくとも1種を使用することが、より優れた高水分散性を示す高水分散性粉末を製造できる点で好ましく、キラヤサポニンを使用することがより好ましい。もちろん、これらのサポニン類は2種以上を使用しても差し支えない。
【0012】
高水分散性粉末には、上述した水難溶性成分と、保護コロイド高分子と、サポニン類の他、必要に応じて任意成分が含まれていてもよい。任意成分としては、例えば、賦形剤、水難溶性成分の安定化剤、香料、着色料などの各種添加剤が挙げられる。賦形剤としては、特に制限はないが水溶性粉末が好ましく、例えば、デキストリン、シクロデキストリンなどのデンプン系水溶性高分子や、マンニトールなどの糖アルコール類、乳糖などの糖類などを目的に応じて1種以上使用できる。安定化剤としては、例えば水難溶性成分がCoQ10である場合には、リンゴ酸などの有機酸が好ましく使用される。
【0013】
高水分散性粉末中の各成分の比率には特に制限はないが、より優れた高水分散性を示し、しかも高水分散性が経時的に安定な高水分散性粉末を提供するためには、水難溶性成分100質量部に対して、保護コロイド高分子が5〜500質量部の比率で含まれていることが好ましく、より好ましくは15〜200質量部である。また、サポニン類は、水難溶性成分100質量部に対して1〜50質量部の比率で含まれていることが好ましく、より好ましくは4〜30質量部である。
また、高水分散性粉末100質量%中における水難溶性成分の含有量は、1〜70質量%が好ましく、より好ましくは5〜50質量%である。
【0014】
このような高水分散性粉末は、保護コロイド能を有する水溶性高分子とサポニン類との存在下で、水難溶性成分を水性溶媒中で乳化して、エマルジョンを調製する乳化工程と、得られたエマルジョンを乾燥する乾燥工程とを有する方法により製造できる。
乳化工程では、水難溶性成分が油状の状態で水性溶媒中に分散した状態とすることが好ましいため、水難溶性成分の融点以上の温度において、エマルジョンを調製することが好適である。具体的な一例としては、まず、使用する水難溶性成分の融点以上の温度に温度調整された水性溶媒を用意し、この中に保護コロイド高分子と、サポニン類とを加え、溶解する。ついで、その温度を維持したまま、この中に水難溶性成分を添加、混合し、この混合液をホモジナイザー、好ましくは高圧ホモジナイザーを通過させる。これにより、水難溶性成分が保護コロイド高分子とサポニン類の作用により乳化された微細で均一なエマルジョンが得られる(乳化工程)。
なお、水難溶性成分として、例えばユビキノン、脂溶性ビタミン類、カロテノイド類、精製魚油などが常温液状の油相に分散または溶解したものを使用する場合には、常温でエマルジョンを調製することができる。
【0015】
水性溶媒としては、通常、精製水などの水が使用され、場合によっては、エチルアルコールなどがともに使用されてもよい。乳化工程で調製するエマルジョンの濃度は、特に限定されるものではなく、水難溶性薬物の種類などに応じて適宜設定すればよいが、微細で均一なエマルジョンが得られる濃度であることが好ましい。また、保護コロイド高分子とサポニン類の量は、水難溶性成分に対して、先に述べた比率となるような量とすればよい。
【0016】
乳化工程の後、得られたエマルジョンを流動層造粒装置、噴霧乾燥機(スプレードライヤ)などに投入して乾燥することにより、高水分散性粉末が得られる(乾燥工程)。
なお、流動層造粒装置を使用した場合には、顆粒状のものが得られる場合もあるが、顆粒状のものも本明細書においては粉末の範疇とする。
【0017】
高水分散性粉末に賦形剤を含有させる場合には、乳化工程または乾燥工程において、賦形剤を添加すればよい。具体的には、乾燥工程を流動層造粒装置で行う場合には、あらかじめ賦形剤を装置内で流動させておき、その中に乳化工程で得られたエマルジョンを噴霧する方法が好ましい。乾燥工程を噴霧乾燥機で行う場合には、保護コロイド高分子やサポニン類とともに、水性溶媒中に賦形剤を添加溶解して、賦形剤を含有するエマルジョンを調製し、このエマルジョンを噴霧乾燥すればよい。
水難溶性成分の安定化剤などの任意成分を含有させる場合には、これらをエマルジョンに添加しておけばよい。
【0018】
なお、保護コロイド高分子、サポニン類、任意成分は、いずれも水または水に少量のエチルアルコールを加えた水性溶媒中に溶解または分散した液状物の形態のものを使用してもよい。
【0019】
このように製造された高水分散性粉末は、水難溶性成分を含有するにもかかわらず高水分散性を示し、しかも高水分散性が経時的に持続し、水への分散性が低下しにくい。そのため、この高水分散性粉末は、サプリメント、健康食品などの食品に添加しやすく、幅広い用途に使用できる。具体的には、健康食品などの食品への添加用として高水分散性粉末を提供できる他、例えば、この高水分散性粉末を健康食品あるいはサプリメントとしてそのまま販売し、消費者がこれをそのままあるいは水に分散させて摂取することも可能である。
【0020】
本発明によれば、以上説明したように、経時的に安定な高水分散性を示す高水分散性粉末を提供できるが、これは、保護コロイド高分子とサポニン類とを併用していることに起因する。
すなわち、サポニン類が高いミセル形成作用により水難溶性成分を微細化し、このように微細化された水難溶性成分を保護コロイド高分子がその網目構造中に効率的かつ安定に取り込むために、経時的に安定な高水分散性が発現するものと考えられる。ここで仮にサポニン類を使用しない場合には、得られた粉末は経時的に安定な高水分散性を発揮しないし、ミセル形成作用を奏するもののサポニン類以外の物質(例えばグリセリン脂肪酸エスエル類など。)を使用した場合には、その乳化機序がサポニン類とは異なることからか、水難溶性高分子は効率的かつ安定には保護コロイド高分子中に取り込まれないため、得られた粉末は経時的に安定な高水分散性を発揮しない。
このように本発明によれば、保護コロイド高分子とサポニン類とを併用することによる相乗効果により、優れた効果が得られるのである。
【実施例】
【0021】
[実施例1]
約60℃まで加温した精製水50gに、アラビアゴム(伊奈食品工業(株)製、商品名:イナゲル アラビアガムA)12g、キラヤサポニン(丸善製薬(株)製、商品名:キラヤニンS−100、キラヤサポニン含有量25質量%)4gを溶解した。ついで、この温度を維持しながら、これに融点が約50℃であるCoQ10(康源(株)製)10gを添加して混合し、さらに高圧ホモジナイザー(処理圧力750kg/cm,2回)を通過させ、微細かつ均一なエマルジョンを得た。
ついで、流動層造粒装置(フロイント産業(株):型式FL−MINI型)を用いてデキストリン(松谷化学工業(株)製、商品名:パインフロー)77gを流動させた流動層中に、得られたエマルジョンを噴霧し、橙黄色の粉末〜顆粒状の10質量%CoQ10含有高水分散性粉末を得た。
この例における各成分の質量比率は、水難溶性成分(CoQ10):保護コロイド高分子(アラビアゴム):サポニン類(キラヤサポニン)=100:120:10である。
【0022】
[実施例2]
約60℃まで加温した精製水60gに、ゼラチン(マルハ(株)製、商品名:ゼライス)5g、ユッカサポニン(丸善製薬(株)製、商品名:サラキープALS、ユッカサポニン含有量20質量%)5g、リンゴ酸(扶桑化学工業(株)製、商品名:リンゴ酸フソウ)2gを溶解した。ついで、この温度を維持しながら、これに実施例1で使用したものと同じCoQ1010gを添加して混合し、さらに高圧ホモジナイザー(処理圧力750kg/cm,2回)を通過させ、微細かつ均一なエマルジョンを得た。
ついで、実施例1で使用したものと同じ流動層造粒装置を用いて実施例1で使用したものと同じデキストリン82gを流動させた流動層中に、得られたエマルジョンを噴霧し、橙黄色の粉末〜顆粒状の10質量%CoQ10含有高水分散性粉末を得た。
この例における各成分の質量比率は、水難溶性成分(CoQ10):保護コロイド高分子(ゼラチン):サポニン類(ユッカサポニン)=100:50:10である。
【0023】
[実施例3]
ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達(株)製、商品名:セルニー−L、以下HPCという。)5g、実施例1で使用したものと同じキラヤサポニン10gを常温の精製水160gに溶解した。ついで、これに常温液状であるビタミンE(タマ生化学(株)製、E−MIX−α−1000)20gを添加して混合し、さらに冷却しながら高圧ホモジナイザー(処理圧力500kg/cm,2回)を通過させ、微細かつ均一なエマルジョンを得た。
ついで、実施例1で使用したものと同じ流動層造粒装置を用いて実施例1で使用したものと同じデキストリン72.5gを流動させた流動層中に、得られたエマルジョンを噴霧し、淡黄白色の粉末〜顆粒状の20質量%ビタミンE含有高水分散性粉末を得た。
この例における各成分の質量比率は、水難溶性成分(ビタミンE):保護コロイド高分子(HPC):サポニン類(キラヤサポニン)=100:25:12.5である。
【0024】
[実施例4]
約60℃まで加温した精製水3000gに、実施例1で使用したものと同じアラビアゴム560g、キラヤサポニン(丸善製薬(株)製、商品名:キラヤニンC−100、キラヤサポニン含有量25質量%)160gを溶解した。ついで、この温度を維持しながら、これに実施例1で使用したものと同じCoQ10400gを添加して混合し、さらに高圧ホモジナイザー(処理圧力750kg/cm,2回)を通過させ、微細かつ均一なエマルジョンを得た。
ついで、流動層造粒装置(フロイント産業(株):型式FL−5型)を用いて実施例1で使用したものと同じデキストリン1500gと、マンニトール(日研化成(株)製、商品名:マンニトール日研)1500gを流動させた流動層中に、得られたエマルジョンを噴霧し、橙黄色の粉末〜顆粒状の10質量%CoQ10含有高水分散性粉末を得た。
この例における各成分の質量比率は、水難溶性成分(CoQ10):保護コロイド高分子(アラビアゴム):サポニン類(キラヤサポニン)=100:140:10である。
【0025】
[実施例5]
実施例3で使用したものと同じHPC100g、実施例1で使用したものと同じキラヤサポニン100g、β−シクロデキストリン(塩水港精糖(株)製、商品名:デキシパールβ−100)675gを常温の精製水2000gに溶解した。ついで、これの中に、油相にルテインが分散、懸濁している常温液状のルテイン製剤((株)光洋商会製、商品名:フローラGLOルテイン20質量%懸濁液)200gを分散させ、ホモジナイザー(4000rpm,5分間)により乳化させ、さらに高圧ホモジナイザー(処理圧力500kg/cm,2回)を通過させ、微細かつ均一なエマルジョンを得た。
ついで、このエマルジョンをスプレードライヤ(大川原加工機(株):型式L−8型)を用いて噴霧乾燥(入口温度:170℃、出口温度:110℃)し、淡茶白色の20質量%ルテイン製剤含有高水分散性粉末を得た。
この例における各成分の質量比率は、水難溶性成分(ルテイン):保護コロイド高分子(HPC):サポニン類(キラヤサポニン)=100:50:12.5である。
【0026】
[実施例6]
実施例1で使用したものと同じアラビアゴム250g、実施例1で使用したものと同じキラヤサポニン150g、実施例5で使用したものと同じβ−シクロデキストリン112.5gと実施例4で使用したものと同じマンニトール200gを精製水2900gに溶解させ、約60℃に調温しておいた。ついで、この中に、実施例1で使用したものと同じCoQ10400gをあらかじめ約60℃まで加熱して融解させた融解液を分散させ、ホモジナイザー(4000rpm,5分間)により乳化させ、さらに高圧ホモジナイザー(処理圧力750kg/cm,2回)を通過させ、微細かつ均一なエマルジョンを得た。
ついで、このエマルジョンを実施例5で使用したものと同じスプレードライヤを用いて噴霧乾燥(入口温度:170℃、出口温度:110℃)し、橙黄色の40質量%CoQ10含有高水分散性粉末を得た。
この例における各成分の質量比率は、水難溶性成分(CoQ10):保護コロイド高分子(アラビアゴム):サポニン類(キラヤサポニン)=100:62.5:9.4である。
【0027】
[実施例7]
実施例3で使用したものと同じHPC15g、実施例1で使用したものと同じキラヤサポニン5g、β−シクロデキストリン(塩水港精糖(株)製、商品名:イソエリートP)163.75gを常温の精製水180gに溶解した。ついで、これに実施例3で使用したものと同じビタミンE20gを添加して混合し、さらに冷却しながら高圧ホモジナイザー(処理圧力500kg/cm,2回)を通過させ、微細かつ均一なエマルジョンを得た。
ついで、このエマルジョンを実施例5で使用したものと同じスプレードライヤを用いて噴霧乾燥(入口温度:170℃、出口温度:110℃)し、淡黄白色の10質量%ビタミンE含有高水分散性粉末を得た。
この例における各成分の質量比率は、水難溶性成分(ビタミンE):保護コロイド高分子(HPC):サポニン類(キラヤサポニン)=100:75:6.25である。
【0028】
[比較例1]
約60℃まで加温した精製水50gに、実施例1で使用したものと同じアラビアゴム12gを溶解した。ついで、この温度を維持しながら、これに実施例1で使用したものと同じCoQ1010gを添加して混合し、さらに高圧ホモジナイザー(処理圧力750kg/cm,2回)を通過させエマルジョンを得た。
ついで、実施例1で使用したものと同じ流動層造粒装置を用いて実施例1で使用したものと同じデキストリン78gを流動させた流動層中に、得られたエマルジョンを噴霧し、橙黄色の粉末〜顆粒状のもの(粉末)を得た。
この例における各成分の質量比率は、水難溶性成分(CoQ10):保護コロイド高分子(アラビアゴム):サポニン類=100:120:0である。
【0029】
[比較例2]
実施例3で使用したものと同じHPC5gを常温の精製水165gに溶解した。ついで、これに実施例3で使用したものと同じビタミンE20gを添加して混合し、さらに冷却しながら高圧ホモジナイザー(処理圧力500kg/cm,2回)を通過させエマルジョンを得た。
ついで、実施例1で使用したものと同じ流動層造粒装置を用いて実施例1で使用したものと同じデキストリン75gを流動させた流動層中に、得られたエマルジョンを噴霧し、淡黄白色の粉末〜顆粒状のもの(粉末)を得た。
この例における各成分の質量比率は、水難溶性成分(ビタミンE):保護コロイド高分子(HPC):サポニン類=100:25:0である。
【0030】
[比較例3]
実施例1で使用したものと同じキラヤサポニン80g、実施例2で使用したものと同じリンゴ酸(扶桑化学工業(株)製、商品名:リンゴ酸フソウ)15g、実施例5で使用したものと同じβ−シクロデキストリン445gを精製水3000gに溶解させ、約60℃に調温しておいた。ついで、この中に、実施例1で使用したものと同じCoQ10400gと保護コロイド能を有さないポリグリセリンモノラウレート(理研ビタミン(株)製、商品名:ポエムJ−0021)120gとを約60℃まで加熱して融解させた融解液を分散させ、ホモジナイザー(4000rpm,5分間)により乳化させ、さらに高圧ホモジナイザー(処理圧力750kg/cm,2回)を通過させ、エマルジョンを得た。
ついで、このエマルジョンを実施例5で使用したものと同じスプレードライヤを用いて噴霧乾燥(入口温度:170℃、出口温度:80℃)し、橙黄色の粉末を得た。
【0031】
[比較例4]
実施例1で使用したものと同じキラヤサポニン10g、実施例7で使用したものと同じβ−シクロデキストリン177.5gを常温の精製水160gに溶解した。ついで、これに実施例3で使用したものと同じビタミンE20gを添加して混合し、高圧ホモジナイザー(処理圧力500kg/cm,2回)を通過させ、エマルジョンを得た。
ついで、このエマルジョンを実施例5で使用したものと同じスプレードライヤを用いて噴霧乾燥(入口温度:170℃、出口温度:110℃)し、淡黄白色の粉末を得た。
この例における各成分の質量比率は、水難溶性成分(ビタミンE):保護コロイド高分子:サポニン類(キラヤサポニン)=100:0:12.5である。
【0032】
<試験例>
各実施例および各比較例で得られた粉末約0.5gを水50mlに加え、スパーテルで攪拌し、攪拌直後、30分後、1時間後、24時間後、7日後の乳化状態を目視観察した。その結果を表1に示す。評価は◎、○、△、×の4段階で表した。
◎:油相の浮き、分離や沈殿が見られず、均一な分散状態である。
○:均一な分散状態ではあるが、極微量の油層の浮き、分離や沈殿が見られる。
△:分散状態は保っているが、若干の油層の浮き、分離や沈殿が見られる。
×:ほとんど分散せず、2層ないしそれ以上の分離、多量の油層の浮きや沈殿が生じている。
【0033】
【表1】

【0034】
表1から明らかなように、各実施例で得られた高水分散性粉末は、水に加えた際に、いずれも高水分散性を示し、しかも高水分散性が経時的に安定であることが示された。一方、各比較例のものは、攪拌直後から水への分散性が良好ではないか、攪拌直後は高水分散性を示すものの経時的に分散性が低下してしまうかのいずれかであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水難溶性成分と、保護コロイド能を有する水溶性高分子と、サポニン類とを含有することを特徴とする高水分散性粉末。
【請求項2】
前記水難溶性成分100質量部に対して、前記保護コロイド能を有する水溶性高分子が15〜200質量部で、前記サポニン類が4〜30質量部であることを特徴とする請求項1に記載の高水分散性粉末。
【請求項3】
保護コロイド能を有する水溶性高分子とサポニン類との存在下で、水難溶性成分を水性溶媒中で乳化して、エマルジョンを調製する乳化工程と、前記エマルジョンを乾燥する乾燥工程とを有することを特徴とする高水分散性粉末の製造方法。

【公開番号】特開2008−94806(P2008−94806A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−281323(P2006−281323)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(000112912)フロイント産業株式会社 (55)
【Fターム(参考)】