説明

高水圧浄水装置

【課題】長時間にわたり連続浄水可能な高水圧浄水装置を低コストで提供する。
【解決手段】濾過運転開始時に清水が満たされる浄水槽22内は、濾過精度の異なるフィルタ221A、221Bにより、連続した室221〜223に仕切られている。最上流の室221には、両端が開口された液体サイクロン226が収容されている。液体サイクロン226内には、一次濾過水W2が低圧供給されるとともに、殺菌作用等を有するオゾンガスAの気泡群を含む高圧のジェット水流W4が内周方向に噴射され、比重の小さい異物を含むオーバーフローF1が浄水槽22から溢れ出して排水路224へ排出される。オゾンガスAの気泡群を含む高圧のジェット水流W4は各フィルタ225A、225Bの上流面にも噴射され、各フィルタ225A、225Bのケーキを除去するとともに、各フィルタ225A、225Bに水を圧力で強制的に通過させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、より長時間にわたり連続浄水運転可能で、かつ低コストの高水圧浄水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体サイクロンを利用して廃水を浄化する技術として、例えば特許文献1記載の廃水浄化設備が知られている。
【0003】
この廃水浄化設備において、雨水、生活廃水等の原水は、一次濾過箱内のごみ除去スクリーンを通過した後、液体サイクロン装置に供給され、さらに三次濾過室内の浄化マット及び殺菌マットで濾過される。これにより、原水が清浄な水に浄化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−135500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、不純物を含む原水を液体サイクロン内で十分な速度で旋回させるためには、液体サイクロンに原水を高圧で送り込む高性能なポンプが必要となる。このため、その分、製造コストが高くなる。
【0006】
また、上記従来の廃水浄化設備は、例えば三次濾過層内の浄化マットの目詰まりによって濾過能力が低下する可能性がある。このため、定期的に濾過を中断して、濾過能力を再生するための逆洗浄が行う必要がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、より長時間にわたり連続浄水運転可能な高水圧浄水装置をより低コストで提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明においては、浄水槽に収容された液体サイクロンに、原水を供給しながら、オゾンガスを含む気泡を巻き込んだ水流を原水よりも高圧で噴射する。さらに、浄水槽の内部を仕切るフィルタを設けて、液体サイクロン側から、このフィルタに対して、オゾンガスを含む気泡を巻き込んだ水流を、原水よりも高圧で噴射する。
【0009】
例えば、本発明は、処理対象水から異物を除去する高水圧浄水装置であって、
原水供給口及び高圧水流供給口を有する液体サイクロンを収容し、当該液体サイクロンの下端開口部からのアンダーフローを貯水する浄水槽と、
前記浄水槽から溢れ出る、前記液体サイクロンの上端開口部からのオーバーフローが流入する排水路と、
前記処理対象水を前記原水供給口から前記液体サイクロンの内部に供給する処理対象供給手段と、
前記高圧水流供給口に取り付けられた第一のエジェクタノズルを有し、オゾンガスを含む気泡を巻き込んだ水流を、前記第一のエジェクタノズルから、前記液体サイクロンの内部に、前記液体サイクロンの内周方向に、前記処理対象水よりも高圧で噴射するジェット水流噴射手段と、を有する。
【0010】
このような高水圧浄水装置において、
前記浄水槽の内部を、前記液体サイクロンを含む第一の室と前記液体サイクロンを含まない第二の室とに仕切るフィルタをさらに有し、
前記ジェット水流噴射手段は、
前記フィルタを介して前記第二の室側に向けられた第二のエジェクタノズルをさらに有し、オゾンガスを含む気泡を巻き込んだ水流を、さらに、前記第二のエジェクタノズルから前記フィルタに向けて噴射するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、より長時間にわたり連続浄水運転可能な高水圧浄水槽をより低コストで実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1(A)は、本発明の一実施の形態に係る濾過システムの概略構成図であり、図1(B)は、図1(A)に示す高水圧浄水ユニット2の全体構成を説明するための図である。
【図2】図2(A)は、図1(B)の高水圧浄水ユニット2に含まれる浄水槽22の上面図であり、図2(B)は、気泡群を含む高圧のジェット水流の噴射によって、フィルタからケーキが除去される様子を概念的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態について説明する。
【0014】
まず、本実施の形態に係る濾過システムの全体構成について説明する。
【0015】
図1(A)に、本実施の形態に係る濾過システムの概略構成を示す。
【0016】
図示するように、本実施の形態に係る濾過システムには、原水タンクからの原水(井水、潅水、排水等)W1が供給される前処理ユニット1と、前処理ユニット1の後段に連結される高水圧浄水ユニット2と、を有する。なお、最終的な濾過水に要求される水質に応じて、高水圧浄水ユニット2の後段に、高水圧浄水ユニット2で濾過された濾過水W5をさらに高度濾過する高度濾過ユニット(限外濾過膜(UF)、ナノ濾過膜(NF)、逆浸透膜(RO)等)を連結してもよい。
【0017】
前処理ユニット1は、原水タンクから原水W1を送り出す原水供給ポンプ(不図示)と、原水供給ポンプにより供給される原水W1から粗大懸濁物質(SS)を除去するウエッジスクリーン除塵装置11と、を有する。また、ウエッジスクリーン除塵装置11は、貯水タンク111と、一端(以下、上端)側よりも他端(以下、下端)側が低くなるように貯水タンク111上に斜めにかけ渡されたウエッジスクリーン112と、ウエッジスクリーン112の下端側に配置されたSS収集タンク113と、を有する。
【0018】
このような前処理ユニット1において、原水供給ポンプからの原水W1がウエッジスクリーン112の上端側からウエッジスクリーン上面に供給されると、ウエッジスクリーン112を通過した一次濾過水(粗大懸濁物質が除去された水)W2が貯水タンク111に蓄えられる。また、ウエッジスクリーン上面を残りの原水W1とともに流れ落ちた粗大懸濁物質(SS)が、SS収集タンク113に排出される。
【0019】
一方、高水圧浄水ユニット2は、濾過運転開始時に清水が満たされる浄水槽22と、ウエッジスクリーン除塵装置11の貯水タンク111から一次濾過水W2を低圧で浄水槽22に送り出す低圧ポンプ21と、オゾンガスAを含む気泡群を巻き込んだジェット水流W4を高圧で浄水槽22内に噴射するジェット水流噴射装置23と、を有する。
【0020】
図1(B)に、高水圧浄水ユニット2の概略構造を示し、図2(A)に、浄水槽22の上面図を示す。なお、図1(B)及び図2(A)においては、浄水槽22に対して、深さ方向をZ方向、幅方向をX方向、長さ方向をY方向と定義している。
【0021】
図示するように、浄水槽22の内部には、濾過精度の異なる2枚のフィルタ(荒目フィルタ225A、細目フィルタ225B)と、両端部(下端部、上端部)が開口された2本の液体サイクロン226と、が収容されている。また、浄水槽22のY方向側壁各々の外部に、対向するY方向側壁の縁に沿って排水口付き排水路224が設けられている。
【0022】
浄水槽22の内部は、2枚のフィルタ225A、225Bにより、Y方向に連続した3つの室(一方のX方向側壁と荒目フィルタ225Aとの間の遠心分離室221、荒目フィルタ225Aと細目フィルタ225Bとの間の濾過室222、細目フィルタ225Bと他方のX方向側壁との間の貯水室223)に仕切られている。各室221〜223の底面には、それぞれ、浄水槽22内の水を抜くための出水口221A、222A、223Aが設けられている。
【0023】
2本の液体サイクロン226は、遠心分離室221に、下端側の開口部(アンダーフロー口)2261を浄水槽22の底面に向けた状態でX方向に並べられて配置される。各液体サイクロン226には、低圧ポンプ21の出水口に接続される一次濾過水供給口2262とは別に、ジェット水流噴射装置23のエジェクタノズル(後述)が接続されるジェット水流供給口2263が設けられており、浄水槽22の底面に面したアンダーフロー口2261に近づくにしたがって徐々に内径が狭くなるように、一次濾過水供給口2262及びジェット水流供給口2263よりも低位置からテーパがつけられている。また、各液体サイクロン226の上端側の開口部(オーバーフロー口)2264からのオーバーフローF1が遠心分離室221内の水面付近の水とともに排水路224へ溢れ出るように、各液体サイクロン226のオーバーフロー口2264は、浄水槽22のY方向側壁よりも適当な距離だけZ方向に低い位置に設けられている。
【0024】
ジェット水流噴射装置23は、適当な濃度のオゾンガスAを発生するオゾン発生器231と、清水タンクから清水W3を高圧(例えば約8Mpa)で送り出す高圧ポンプ232と、オゾン発生器231からのオゾンガスA及び高圧ポンプ232からの清水W3が送り込まれるエジェクタノズル233群と、を有している。
【0025】
ここで、エジェクタノズル233は、絞り付近で、高圧ポンプ232から高圧で送り込まれる清水W3に、オゾン発生器231からのオゾンガスAを混入させ、これにより、殺菌、脱臭、脱色作用を有するオゾンガスAを含む気泡群を巻き込んだジェット水流W4を吐出口から噴射する(図2(B)参照)。このようなエジェクタノズル233のうち、2つのエジェクタノズル233は、各液体サイクロン226のジェット水流供給口2263に接続される。また、その他のエジェクタノズル233は、一部が遠心分離室221内の水を濾過室222に圧送するように荒目フィルタ225Aに向けてX方向に配列され、残りが濾過室222内の水を貯水室223に圧送するように細目フィルタ225Bに向けてX方向に配列される。なお、遠心分離室221内及び濾過室222内のエジェクタノズル233列は、オゾンガスAを含む気泡群を巻き込んだジェット水流W4が水中で圧力を保ちながらフィルタ225A、225Bを通過可能な水深で、かつ浄水槽22内の水が比較的清浄な位置(例えば、水深の浅い位置)に配置されていることが望ましい。
【0026】
このような高水圧浄水ユニット2において、浄水槽22に清水を満たしてから、低圧ポンプ21、オゾン発生器231及び高圧ポンプ232を駆動すると、遠心分離室221内の水に浸された各液体サイクロン226の内部に、一次濾過水W2が低圧で供給されるとともに、オゾンガスAを含む気泡群を巻き込んだ高圧のジェット水流W4が液体サイクロン226の内周方向に噴射される。これにより、異物を含む一次濾過水W2が高圧のジェット水流W4とともに各液体サイクロン226の内部で旋回するため、比重の小さい油等の異物を含むオーバーフローF1が、オーバーフロー口2264から旋回しながら溢れ出して、遠心分離室221内の水面付近の水とともに浄水槽22のY方向両側壁の外部に設けられた排水路224に排出される。一方、比重の大きな異物を含むアンダーフローF2がアンダーフロー口2261から遠心分離室221内の水中に放出されるが、比重の大きな異物は遠心分離室221の底面に沈殿するため、遠心分離室221内の上部には、オゾンガスAで殺菌・脱脱臭等された清浄な水が残留する。
【0027】
また、荒目フィルタ225Aの上流側の面(上流面)にも、オゾンガスAを含む気泡群を巻き込んだ高圧のジェット水流W4がエジェクタノズル233から噴射されるため、図2(B)に示すように、遠心分離室221内の水が、高圧のジェット水流W4によって荒目フィルタ225Aを介して下流側の濾過室222へ強制的に送り込まれる。これにより、濾過室222には、荒目フィルタ225Aにより処理され、かつ、オゾンガスAで殺菌・脱臭等されたより清浄な水が蓄えられる。また、遠心分離室221内の水の濾過によって荒目フィルタ225Aの上流面に残留した異物のケーキ30が、キャビテーションによって粉砕・除去される。
【0028】
同様に、細目フィルタ225Bの上流側の面(上流面)にも、オゾンガスAを含む気泡群を巻き込んだ高圧のジェット水流W4がエジェクタノズル233から噴射されるため、図2(B)に示すように、濾過室222内の水が、高圧のジェット水流W4によって、細目フィルタ225Bを介して下流側の貯水室223に強制的に送り込まれる。これにより、貯水室223には、細目フィルタ225Bにより濾過され、かつ、オゾンガスAで殺菌・脱脱臭等されたより清浄な水が蓄えられる。また、濾過室222内の水の濾過により細目フィルタ225Bの上流面に残留した異物のケーキ30が、キャビテーションによって粉砕・除去される。
【0029】
以上述べたように、本実施の形態によれば、一次濾過水W2とは別途、オゾンガスAの気泡群を含む高圧のジェット水流W4を液体サイクロン226の内部に噴射するため、一次濾過水W2を液体サイクロン226内に高圧で送り込まなくても、液体サイクロン226内部の旋回流の速度を確保することができる。したがって、異物を含む原水を高圧で噴射可能な高性能のポンプを設ける必要がなく、その分、製造コストを低減できる。
【0030】
また、オゾンガスAを含む気泡群を巻き込んだ高圧のジェット水流W4がフィルタ225A、225Bの上流面に向けて噴射されるため、浄水運転中、フィルタ225A、225Bの上流面に残留した異物のケーキ30がキャビテーションによって絶えず粉砕・除去される(図2(B)参照)。したがって、フィルタ225A、225Bにケーキ30が固着しないため、フィルタ225A、225Bの逆洗浄を実施しなくても、フィルタ225A、225Bの濾過能力の低下を防止することができる。このため、より長時間にわたる連続浄水運転が可能となる。
【0031】
また、高圧のジェット水流W4によって濾過対象の水がフィルタ225A、225Bに圧入されるため、濾過速度を向上させることができる。
【0032】
さらに、浄水槽22内の各室221〜223に噴射されるジェット水流W4の気泡群にはオゾンガスAが含まれているため、最終的に、よりクリーンな濾過水W5を生成することができる。
【符号の説明】
【0033】
1:前処理ユニット、2:高水圧浄水ユニット、11:ウエッジスクリーン除塵装置、21:低圧ポンプ、22:浄水槽、23:ジェット水流噴射装置、111:貯水タンク、112:ウエッジスクリーン、113:SS収集タンク、221:遠心分離室、222:濾過室、223:貯水室、224:排水路、225A:荒目フィルタ、225B:細目フィルタ、226:液体サイクロン、231:オゾン発生器、232:高圧ポンプ、233:エジェクタノズル、2261:アンダーフロー口、2262:一次濾過水供給口、2263:ジェット水流供給口、2264:オーバーフロー口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象水から異物を除去する高水圧浄水装置であって、
原水供給口及び高圧水流供給口を有する液体サイクロンを収容し、当該液体サイクロンの下端開口部からのアンダーフローを貯水する浄水槽と、
前記浄水槽から溢れ出る、前記液体サイクロンの上端開口部からのオーバーフローが流入する排水路と、
前記処理対象水を前記原水供給口から前記液体サイクロンの内部に供給する処理対象供給手段と、
前記高圧水流供給口に取り付けられた第一のエジェクタノズルを有し、オゾンガスを含む気泡を巻き込んだ水流を、前記第一のエジェクタノズルから、前記液体サイクロンの内部に、前記液体サイクロンの内周方向に、前記処理対象水よりも高圧で噴射するジェット水流噴射手段と、を有する
ことを特徴とする高水圧浄水装置。
【請求項2】
請求項1記載の高水圧浄水装置であって、
前記浄水槽の内部を、前記液体サイクロンを含む第一の室と前記液体サイクロンを含まない第二の室とに仕切るフィルタをさらに有し、
前記ジェット水流噴射手段は、
前記フィルタを介して前記第二の室側に向けられた第二のエジェクタノズルをさらに有し、オゾンガスを含む気泡を巻き込んだ水流を、さらに、前記第二のエジェクタノズルから前記フィルタに向けて噴射する
ことを特徴とする高水圧浄水装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−235214(P2011−235214A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107078(P2010−107078)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(391049840)ショウワ洗浄機株式会社 (2)
【Fターム(参考)】