説明

高温での脱硝の間揮発性放射性核種を安定化させる方法およびシステム

【課題】揮発性元素を含む廃棄物形態等の、投入廃棄物形態からNOxを除去するための方法を提供する。
【解決手段】この方法は、投入廃棄物形態、還元添加剤、流動気体および鉱化添加剤を流動床反応器に添加することを含む。反応器は複数の部分からなり、少なくとも1つの部分は、還元雰囲気中で操作される。床は、800℃より上の温度で操作される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は広く、廃棄物生成物、化合物および廃水からNOx化合物を除去するための1工程プロセスであって、加工処理の間の揮発性元素の放出を制限しつつ、得られる廃棄物形態は、適当な浸出抵抗性を有する、プロセスに関する。より詳細には、本発明は、適当な浸出抵抗性を有する最終廃棄物形態を提供する一方で、爆発性で、有害および/または放射性の物質からNOx化合物を高温にて除去する、流動床接触器を使用する1工程プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
窒素酸化物は、多くの廃棄物生成物および化合物において一般に見出すことができる。窒素酸化物(本明細書においては「NOx」と称する)は、硝酸、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、硝酸カリウム、亜硝酸塩等のような化合物を包含する。
【0003】
NOxを除去する旧来の取組みは、固体および気体状硝酸塩化合物のための乾式接触還元プロセスならびに、気体状NOxのための湿式吸収プロセスを含む。乾式接触還元プロセスは、触媒によるか、または触媒によらないことができ、選択的または非選択的であり得る。選択的還元プロセスは、酸素の存在下での気体状窒素酸化物の選択的還元およびそれによるそれらの除去によって特徴づけられる。気体状NOxのための一般的な選択的還元剤はアンモニアである。しかしながらアンモニアは、高温では、酸化して望まれない窒素酸化物を形成する。さらに、過剰のアンモニアはそれ自体汚染物質である。他の選択的還元法は、イリジウムのような触媒を使用する。触媒還元を用いる問題は、粒子、亜硫酸気体および他の毒物の存在が触媒の効力および寿命を低下させ、それによってコストを増加させることである。
【0004】
非選択的還元プロセスは一般に、還元剤を気体状NOx含有物質へ添加すること、燃焼による全ての遊離酸素の消費および、残留する還元剤によるNOxの窒素への還元を含む。これらのプロセスにおいて、典型的には触媒が使用される。これらのプロセスにおいて有用な還元剤および触媒は希少であり、かつ高価である。
【0005】
湿式吸収プロセスは典型的には、大きく高価な装置、例えば吸収塔を必要とする。湿式吸収プロセスの例は、水またはアルカリ溶液による窒素酸化物の吸収である。湿式吸収プロセスの別の欠点は、気体状廃棄物流中のNOx濃度が5,000ppmより上の場合、この方法が経済的に有効でないことである。
【0006】
原子力産業においては、放射能汚染された塩ケーキ、イオン交換媒体、スラッジおよび溶媒として分類される有意量の廃棄物の年々の生成がある。これらの放射性廃棄物は窒素酸化物を含むか、またはこれらの廃棄物の処理の一部として窒素酸化物が生成される。特に、硝酸を用いる核燃料再処理は、高放射能の硝酸および硝酸ナトリウム廃棄物副生成物を生じる。
【0007】
固体またはスラリーのNOx廃棄物および化合物について、NOx分解のために、種々のプロセスが試みられてきた。ロータリーか焼炉および流動床加工処理装置が使用され、典型的な結果は、固体硝酸塩の気体状NOxおよび窒素への転化率90%未満を生じる。気体状NOxは一般に10,000ppmを超え、これは、先に述べたような大規模な気体状NOx除去法の追加を必要とする。さらに、加工処理装置中に重大な凝集が生じ、ならびに加工処理装置中には、硝酸塩および還元剤の可燃性もしくは爆発性の混合物が存在する。
【0008】
従来技術の廃棄物処理法に関連する別の問題は、硫黄含有化合物を含む。ガラス化溶融装置中のそのような硫黄化合物の存在は、溶融した硫黄塩溜まりを、溶融した無機残渣(ガラス)の上部に蓄積させ得る;この溜まりは、溶融装置の腐食速度を速くせしめる。この溜まりはまた、高い電気導電性を有し得る。これは、溶融装置中で加熱電極の短絡を引き起こす。さらには、大量の水が溶融硫黄塩溜まりと接触したら、可能性として爆発性の条件が生じ得る。
【0009】
さらには、無機残渣中の重金属の存在は、最終的な廃棄物生成物を危険なものにし得る。それによって、処分前の残渣のさらなる加工処理または高い処分費用を必要とする。また、無機残渣は、加工処理後に水性溶液を形成し得る可溶成分を含み得る:これらの溶液は、処分後に環境の汚染を生じ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
廃棄物流および化合物から窒素酸化物を除去するための、上記した従来の方法の限界および欠点を有さないプロセスが非常に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
主要な態様に従い、簡単に述べると、本発明は、800℃以上の温度で単一の水蒸気-改質容器を使用する、窒素酸化物を直接窒素に転化するための方法および装置である。硝酸塩化合物または廃棄物は、水蒸気および任意的に酸素から成る流動気体と一緒に単一容器に送られる。単一容器は、高密度媒体、例えば直径3000ミクロンまでの無定形アルミナビーズから作られた不活性な媒体床を含む。流動気体は、1秒当たり800フィートまでの範囲の比較的高い速度で注入される。
【0012】
本発明の1つの態様において、窒素酸化物を除去するための方法が提供される。この方法は、次の段階を含む(特定の順序はない):(1) 窒素酸化物を含む液体、スラリー、スラッジもしくは固体の廃棄物物質を供給する段階;(2) 下方部分、中間部分および上方部分を有する反応床を含む流動床反応容器を供給する段階;(3) 流動床反応容器を800℃より上の操作温度に加熱する段階;(3) 流動気体、還元剤、鉱化(mineralizing)添加剤および廃棄物物質を流動床反応容器反応床に添加し、流動気体を、廃棄物物質を撹拌し、反応床からの微細固体を水簸(elutriate)する速度で注入する段階;ならびに(4) 最終廃棄物形態からの元素の低い浸出を達成し、かつ廃棄物物質中の実質的に全ての窒素酸化物を破壊するのに十分強い還元状態下で、少なくとも反応床の下方部分を操作する段階。
【0013】
本発明の別の態様において、先に述べた方法はさらに、反応床の下方部分が、強い還元状態よりも酸化性が増しているが、なお全体的に還元状態下で稼働するように、過熱された水蒸気と共に酸素を下方部分に共注入する段階を含む。
【0014】
本発明の別の態様において、先に述べた方法はさらに、上方部分が、より酸化性が増すが全体的にはなお還元状態下で稼働するように、酸素を上方部分に注入する段階を含む。
【0015】
本発明の別の態様において、先に述べた方法はさらに、上方部分が完全に酸化状態下で稼働するように、酸素を上方部分に注入する段階を含む。
【0016】
本発明の別の態様において、先に述べた方法はさらに、中間部分がより酸化性が増すが全体的にはなお還元状態下で稼働するように、酸素を中間部分に注入する段階を含む。
【0017】
本発明の別の態様において、先に述べた方法は、廃棄物物質が硫黄、塩化物、フッ化物もしくはヨウ化物化合物を含むときに、鉱物性添加剤が粘土、ゼオライト、シリカゲル、シリカ、ケイ酸塩、リン酸塩化合物、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、チタン化合物、鉄化合物およびアルミニウム化合物から成る群より選択される方法である。
【0018】
本発明の別の態様において、先に述べた方法は、反応床が不活性ビーズから成る方法である。
【0019】
本発明の別の態様において、先に述べた方法は、還元状態が、廃棄物物質中の実質的に全ての窒素酸化物を破壊するのに十分である方法である。
【0020】
本発明の別の態様において、先に述べた方法は、流動気体が、水蒸気、酸素、水素、メタン、二酸化炭素、一酸化炭素、炭化水素蒸気、窒素およびアンモニアのうちの1種以上を含む方法である。
【0021】
本発明の別の態様において、先に述べた方法は、鉱化添加剤が、粘土、ゼオライト、シリカゲル、シリカ、ケイ酸塩、リン酸塩化合物、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、チタン化合物、鉄化合物およびアルミニウム化合物から成る群より選択される方法である。
【0022】
本発明の別の態様において、先に述べた方法は、最大操作温度が、この方法から得られる廃棄物形態の最小溶融温度に等しい方法である。
【0023】
本発明の別の態様において、先に述べた方法はさらに、少なくとも1種の共-反応体を反応容器反応床に注入して、窒素酸化物の還元を促進する段階を含む。
【0024】
本発明の別の態様において、先に述べた方法は、共-反応体が、固体炭素質物質、可溶性炭素質物質、気体状炭素質化合物、水素、アンモニアおよび金属化合物から成る群より選択される方法である。
【0025】
本発明の別の態様において、先に述べた方法は、金属化合物が、鉄化合物、ニッケル化合物、銅化合物およびコバルト化合物から成る群より選択される方法である。
【0026】
本発明の別の態様において、先に述べた方法はさらに、少なくとも1種の添加剤を反応容器反応床に注入して、より高い融点のアルカリ金属およびアルカリ土類化合物を形成する段階を含む。
【0027】
本発明の別の態様において、先に述べた方法は、廃棄物を反応容器反応床に注入する前に、添加剤が投入廃棄物と混合される方法である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の好ましい実施態様に従い、廃棄物流もしくは化合物からNOxを除去するためのシステムの概略的説明図である。
【図2】図2は、典型的なプロセスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、適切な浸出特性を有する最終廃棄物生成物を製造し、かつさらに加工処理中に揮発性元素の放出を制限しながら、硝酸塩を有する化合物および廃棄物生成物供給物からNOxを除去するための装置およびプロセスである。本発明の装置およびプロセスは、特に放射性廃棄物に関して記載されるが、任意の窒素酸化物含有廃棄物もしくは生成物流を、以下のプロセスに従い、かつシステムの構成要素に従って加工処理することができる。
【0030】
プロセスは、流動化のために水蒸気を使用する、単一の流動床反応容器に基づき、反応容器は、強い還元状態下または酸化状態と組み合わせた強い還元状態下で操作され得る。他の流動気体または添加剤を使用して、反応器中の酸化もしくは還元状態を修飾することができる。典型的な他の流動気体は、水素、酸素および/または空気(より強い酸化状態か、または完全な酸化状態が望ましいとき)、メタン、他の有機蒸気、二酸化炭素、一酸化炭素、アンモニア等を包含する。他の添加剤、例えば木炭、炭素質物質、糖、過酸化水素等を添加して、床における還元もしくは酸化状態をさらに修飾することができる。本発明に従い加工処理することができる廃棄物は、イオン交換樹脂の分解から生じるNOx含有廃棄物流だけでなく、核再処理、爆発物およびエナジェティクス(energetics)、肥料および気体状オフガス流等から生じるNOx含有廃棄物流を包含する。
【0031】
ここで図1に言及すると、本発明に従い、一般に参照番号10により示されるシステムが示される。システム10は、単一の反応容器12を含む。液体スラリーおよびスラッジ14ならびに/または固体16から成り得る廃棄物供給物は、反応容器12に供給される。液体スラリーおよびスラッジ14の場合には、ポンプで送ることができる流体を反応容器12に送るために、気圧ポンプ、せん動性ポンプ(peristaltic pump)または連続的空洞(progressive cavity)18を使用することができる。固体16の場合には、らせんオーガー20を使用して、固体廃棄物流を反応容器12に送ることができる。
【0032】
反応容器12において、不活性または反応性の媒体22が流動床に使用される。媒体22は好ましくは、ヒートシンクとして役立ち得る不活性な物質、例えばシリカ、焼結粘土のような物質またはアルミナビーズであり、最も好ましくは、直径が少なくとも100ミクロン、好ましくは250〜600 1000ミクロンのものであるが、直径5,000ミクロンまでの無定形アルミナビーズを使用することができる。そのような大きさのビーズは容器から容易には水簸されず、したがって、キャリーオーバー(carryover)を最小にする。無定形アルミナまたは焼結粘土の別の利点は、共融塩/ガラスを形成しないことであり、共融塩/ガラスは、通常のシリカ砂が使用されるときのように反応器効率に影響を及ぼす有害な集塊を形成し得る。無定形アルミナおよび焼結粘土はまたことのほか強く、硬く、かつ床の摩擦および衝撃による摩耗に耐性である。
【0033】
廃棄物供給物中に存在する水を蒸発させ、熱源として働かせるために、木炭、石炭、糖および/または他の炭素質物質を反応容器12に添加し、任意的に、他の還元剤または触媒、例えば鉄もしくはニッケルのシュウ酸塩、酸化物もしくは硝酸塩を使用することができる。脱硝プロセスをさらに改善するために、これらまたは他の金属を含むように、反応床物質を変更することができる。例えば、2〜5%の酸化鉄を反応床媒体に添加すると、NOx還元を2倍超改善することができ、重金属、例えばCrおよびNiを水不溶性スピネル中に結合させるように働く。流動媒体(気体)は、入口24を経て反応容器12へと導入される。流動媒体としての燃焼気体には水蒸気が好ましい。というのは、より反応性であり、炭素質物質の水蒸気改質によって非常に還元性であるCOおよびH2を生じるからである。気体状NOx化合物は、入口24を通って、流動気体と共に注入され得る。
【0034】
炭素質および/または他の還元気体と窒素酸化物および/または酸素投入物(input)との反応によって生じる熱は、反応容器を、窒素酸化物の還元のために必要とされる温度で操作することを可能にする。この内部熱生成の方法は、床において自動熱温度制御を提供する。本発明の方法は例えば、鉱化によって、硫酸塩、例えばNa2SO4を不揮発性の硫黄化合物、例えばノゼアン(nosean)または硫酸カルシウムに転化する。硫黄を鉱化することによって、腐食性硫黄気体、例えばH2Sの存在は最小にされ、これは、システムの腐食を受容可能なレベルに下げた。ハロゲン気体、Cl、FおよびIが同様に鉱化され、不揮発性の鉱物性化合物、例えば方ソーダ石および塩化カルシウム、フッ化カルシウム等になる。
【0035】
流動媒体は不活性気体であることができるが、好ましくは改質気体であり、酸素が存在していてよい。最も好ましくは、媒体は過熱水蒸気である。流動速度は、床媒体に依存して約0.5フィート/秒以上、好ましくは床媒体の大きさに依存して0.8〜1.5フィート/秒(FPS)の範囲であり得る。流動気体分配器は、標準より高い気体/開口部速度を提供するように設計される。典型的な気体分配器速度は、100〜200FPSであるが、気体速度は20〜800FPSの範囲であり得る。
【0036】
高い流動気体噴射速度は幾つかの利点を有する。垂直に配置された床における高速流動気体噴射は、媒体へ噴出衝撃を提供して、柔らかい、もろい供給物を壊すのを助け、集塊を粉砕する。さらに、媒体ビーズは、流動気体分配器の周りの高衝撃領域における摩滅により、自己清浄することになる。
【0037】
反応容器12は好ましくは、水簸する方式で操作される。ナトリウム塩および他の低融点共融塩はそれによって、低い濃度(2%未満)でしか存在せず、速やかに床から運び去られる。媒体ビーズは、摩耗により自己清浄する。転化していない硝酸塩またはナトリウム化合物の低さ(low inventory)は、集塊の可能性を大いに最小化する。あるいは、床は、分離した床媒体が使用されないように、積み上げられた粒状無機生成物固体から成り得る。
【0038】
先に論じたように、反応容器12は、4つの方法のうちの1つを用いて操作することができ、第1の方法において、媒体床の下方部分は、より酸化性の条件下で操作される。この条件を達成するために、酸素が水蒸気と混合され、入口24を経て反応容器12へと導入され、任意的に過熱され得る。反応容器12中の圧力は好ましくは約13〜15psiaである。反応容器12は好ましくは、800℃より上で操作される。媒体床の深さは、好ましくは約3〜8フィートであり、拡げられる。反応容器12における媒体床の中間部分は、強い還元状態下で操作され、媒体床の上方部分は、入口25を経て酸素に富んだ空気または空気または窒素と混合された酸素を添加することによって、より酸化性の条件下で操作される。反応容器12内の温度は、床への酸素投入濃度を調整することによって、および/または、特に立ち上げ中に、必要に応じて補助的エネルギーを提供する流動気体を過熱することによって、維持される。NOxが窒素に還元されたとき、窒素、水蒸気および他の合成気体は、ポート28を経て反応容器12を去る。混入された粒子を含む小さくされた改質残渣はまた、ポート28を経て去る。より重い固体は、ポート30を経て去り、らせんオーガー32によって生成物収集装置34へと運び去られる。オーガー32は好ましくは気体により冷却される。収集装置34から固体は、安定化プロセスまたは処分または貯蔵(示されず)へと向けられてよい。
【0039】
窒素気体、水蒸気、他の合成気体および微細粒子は、フィルター40を通過する。フィルター40に集められた非気体状の残渣もしくは粒子はいずれも、生成物収集装置34に向けられる。フィルター40からのフィルターを通された気体は次に、限定されないオフ処理(off treatment)系50において、慣用の手段によって処理される。
【0040】
先に記載した方法1の条件下で、プロセス処理は、NOxが非常に低く、COおよびH2の放出がない、最終の気体状排出物を生じる。このシステムは一般に、低い補助的エネルギー追加を必要とする。このシステムは、反応器12を出ていくNOx濃度が通例的に<25ppmなので、オフガス処理系においてNOxの除去を必要としない。オフガス処理系における熱酸化剤の添加も必要とされない。
【0041】
あるいは本発明の第2の方法において、反応容器12中の媒体床の下方部分は、先に論じたように、より酸化性の条件下で操作されることができ、媒体床の中間部分および上方部分は強い還元状態下で操作される。方法2は、方法1に比べて、反応器12を出ていくNOxが低いが、反応器12の放出物中のCOおよびH2ならびに他の痕跡揮発性有機物は増加された濃度を有する。反応器12において追加の補助的エネルギーが一般に必要とされ、オフガス処理系は、熱酸化剤を必要とする。
【0042】
方法3において、反応容器12は、強い還元状態下でのみ操作される。方法3は、低いNOx、増加されたCOおよびH2を生じ、より多くの自動熱エネルギーおよびオフガス処理系における熱酸化剤の使用を必要とする。
【0043】
方法4において、反応容器12の媒体床の上方部分のみが、より酸化性の条件または完全に酸化状態下で操作される。方法4は、低いNOxを生じ、COおよびH2の放出がなく、増加された補助的エネルギーとなる。この方法の実施において、オフガス処理系の熱酸化剤は必要とされない。
【0044】
とりわけ、気体状NOxはまた、他の廃棄物供給物と共に反応器12へ直接導入することによって、加工処理されることができる。例えば、ガラス化溶融室または熱脱硝プロセスからの高NOxオフガスは、廃棄物流および流動気体の両方として使用することができるが、しかし、反応床を通る全気体流を20%水蒸気より上に維持し、均一な流動気体速度を提供するために、水蒸気が共に注入される。
【0045】
実験は、NOxの還元および、重金属の危険でない金属スピネルへの安定化を促進するための、床への金属の添加の有用性を証明した。金属添加剤は、いつも必要とされるわけではないが、NOxの窒素気体への転化を最大にするのに有用である。使用することができる典型的な金属は、銅、コバルト、鉄もしくはニッケルのシュウ酸塩もしくは硝酸塩を包含し、これらは、0.5%未満の濃度で廃棄物供給物と共に注入することができる。重金属のスピネルへの鉱化のために、鉄に基づく添加剤を、粒子として、または廃棄供給物中の微細粒子として、または可溶性の鉄として、床に添加することができる。
【0046】
直径0.75インチまでの範囲の大きさでの木炭、石炭または炭素質固体の床への添加は、好ましい実施態様に特有である。炭素の大きな粒子は、一定の炭素量(inventory)を維持し、これは、硝酸塩還元を促進するのに以前に使用された典型的な細かい糖、有機固体もしくは液体、または液体化学物質によっては不可能である。蟻酸、糖等の形態での可溶性炭素の添加と一緒の大きな炭素固体の存在は、優れた硝酸塩還元を提供する。床における炭素化合物の存在は、水蒸気改質により床において大きく低下するCOおよびH2を生じる。
【0047】
さらには、ある種の添加剤、例えばアルミニウム金属およびリン酸塩もしくは酸化物を添加して、アルカリ土類元素を有する高融点の塩を形成することができる。例えば、リン酸ナトリウムは、比較的低い融点を有するナトリウム共融塩と比べて、高融点のナトリウム塩である。これらの結合する元素は、床において集塊の形成を最小にするのを助ける。アルカリ金属と結合することができる追加の添加剤は、シリカ、シリカゲル、粘土、カルシウム、マグネシウムおよびチタン含有物質を包含する。
【0048】
本発明の方法において、フッ化物、塩化物もしくはヨウ素化合物を含む、硫黄およびハロゲンを含む廃棄物は、鉱化添加剤、例えばカルシウム、マグネシウム、粘土、シリカ等の添加によって、不揮発性の無機生成物へと鉱化することができる。
【0049】
さらには、本発明の方法は、得られる無機残渣の溶解性を調整するための添加剤を使用することができる。先に論じたように、残渣中の可溶性成分は、処分後に環境汚染を生じ得る水性溶液を形成し得る。本発明の方法における残渣の溶解性のそのような調整の例は、硝酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウムをナトリウム含有廃棄物に添加することであり;正しい割合では、この添加剤は、水に不溶性であるナトリウム-アルミニウム酸化物を生じる。好ましくは、鉱化添加剤は粘土であることができ、これは、アルカリ金属を、非常に水に不溶性であるアルカリ-アルミノ-シリケートへと転化する。粘土を用いると、他の揮発性の硫黄、塩素、フッ素、ヨウ素を、高融点の水不溶性の鉱物質、例えば方ソーダ石無機物、ノセアン(nosean)等へと転化することができる。そのような可溶性揮発性成分を、不溶性不揮発性の鉱化された誘導体へ転化することによって、本発明の方法は、窒素酸化物含有廃棄物流の還元に昔から伴うこの問題を回避する。
【0050】
先に記載した実施態様は、揮発性放射性元素および他の揮発性化学元素および化合物の存在の故に限定され得る他のプロセスの600〜800℃の操作温度に限定されない。例えば、放射性テクネチウム(Tc)およびセシウム(Cs)は一般に、通常の熱処理プロセスにおいて非常に揮発性である。しかしながら、粘土および他の鉱化添加剤、例えば水酸化アルカリ(水酸化ナトリウムもしくはそれと同等のもの)の添加によって、または硝酸アルカリの存在中で、TcおよびCsは、高融点の不揮発性の方ソーダ石無機物へと鉱化され得る。当業者は、ある種の放射性廃棄物中に存在し得るテクネチウムおよびセシウムのような元素は、800℃より上の温度で気化することを予想する。例えば、そのような気化は、放射性廃棄物のガラス化(800℃より上の温度で起こる)中にみられ、このことは、同じ気化が本発明のプロセスについてみられるであろうことを示唆する。
【0051】
流動床反応器内のある廃棄物成分の完全な酸化を可能にし、かつ高められたNOx還元およびプロセス処理速度を提供するために、上記したプロセスをより高い温度で操作する必要性が生じた。上記した実施態様が800℃より高い温度で操作されたとき、本発明は予想されない結果に遭遇した。詳細には、投入廃棄物物質が流動床反応器内で鉱化されるとき、予想される気化が起こらなかった。投入廃棄物が、液体スラリー、スラッジもしくは固体廃棄物として、鉱化添加剤、例えば粘土、ゼオライト、シリカゲル、シリカ、ケイ酸塩、リン酸塩化合物、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、チタン化合物、鉄化合物およびアルミニウム化合物と一緒に、流動床反応器に添加されるとき、投入廃棄物形態は、反応器内部で鉱化形態へと変わる。この鉱化された最終廃棄物形態は、残りの処理プロセス中揮発性元素を保持する。投入廃棄物形態を鉱化するのに使用できる他の鉱化添加剤は、ケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、カルシウム化合物、リン酸塩、マグネシウム化合物、マグネシウム/鉄ケイ酸塩、ナトリウム、マグネシウム/鉄ケイ酸塩リン酸塩ならびに、他のもの、例えばナトリウムがカリウムもしくは他のアルカリ金属で置換された化合物を包含する。典型的には、鉱化された廃棄物形態の溶融温度は、1100℃より高く、これは、温度操作の上限を示す。
【0052】
800℃より高い温度で操作するとき、ある種の添加剤、例えば木炭もしくは石炭の量は、600〜800℃の温度で操作するときに使用される量と比べて増加されて、より還元性が増した環境で反応器を稼働させることになる。この調整は、プロセスから得られる廃棄物形態の浸出抵抗性を増す。例えば、ある種の元素、例えばテクネチウムは、800℃未満の温度でのプロセスにより生成される最終廃棄物形態に比べて高い(800℃より上の)温度で生成される最終廃棄物形態中でより可溶性であるように、酸化状態を変え得る。典型的には、最終廃棄物形態の性能目標は、周囲環境を保護するように、放射性核種を包含するある種の元素の浸出速度を最小にすることである。それだけで、反応器中の還元環境のレベルが増加されて、より良い浸出特性を有する廃棄物形態を生じる。この高められた還元雰囲気はなお、より高い温度でのこれらの元素の揮発性を増加しなかった。当業者は、「より還元性が増した環境」は、廃棄物中に存在するNOxを転化するのに必要なレベルと比べてより大きい還元性を意味することを理解するであろう。もちろん、還元雰囲気のレベルは、投入廃棄物物質および得られる廃棄物形態の所望の特性に基づいて必要なように調整することができる(おそらく、調整することが必要であろう)。という訳で、異なる投入廃棄物および所望の最終の廃棄物形態特性のために、還元環境は、全ての気化したNOxが破壊され得るわけではないようなものであってよい。床においてより小さい還元状態、すなわちより酸化性条件での操作可能性の必要性を緩和するために、操作温度は好ましくは950℃未満に限定して、800℃より上で操作されるときにプロセスにおいて熱生成されるNOxの形成の可能性を減らすことができる。
【0053】
図2は、典型的なプロセス200を示す。図2によれば、段階210において、下方、中間および上方部分を含む反応床を有する流動床反応容器は、800℃より上の操作温度に加熱される。図2において破線の囲みとして示される段階212は、廃棄物物質および反応体を流動床反応容器中に添加する段階を示す。段階212は、実質的に同時に、段階215、220および225に分けることができる。段階215において、還元剤、鉱化添加剤および投入廃棄物物質は、流動床反応容器反応床の中間部分へ添加される。還元剤、鉱化添加剤ならびに、NOxおよび揮発性元素を含む投入廃棄物は、流動床反応容器に添加される前に一緒に混合することができる。あるいは、鉱化添加剤および投入廃棄物を、流動床反応器中へ混合物を注入する前に混合することができ、還元剤は、鉱化添加剤および投入廃棄物の混合物と実質的に同時であるが、別途、添加することができる。段階215と実質的に同時に、段階220において、流動気体、例えば過熱水蒸気が、投入廃棄物物質を撹乱し、及び、反応床からの微細な固体を水簸する速度で流動床反応容器に注入される。流動気体は、流動床の下方部分に注入される。還元剤の添加は、反応床の少なくとも中間部分を、最終廃棄物形態からの元素の低い浸出を達成するのに十分な強い還元状態下で稼働させる。
【0054】
段階215および220と実質的に同時に、段階225において、酸素および過熱水蒸気が任意的に反応床の3つの部分のいずれか、または全部に注入され得る。反応床の下方部分に添加されるとき、酸素は流動気体と共に含まれる。あるいは(または追加的に)、酸素は空気と一緒に流動床の中間部分に添加されて、廃棄物投入物を霧状にすることができる。また酸素は、あるいは(または追加的に)、他の希釈気体、例えば窒素と一緒に、流動床の上方部分へ添加されることができる。流動床へ添加された酸素は、床における自動熱発生および温度維持を提供する。プロセスへの酸素投入の量を調整して、床における酸化還元状態を強い還元(酸素添加なし)から通常の還元(「強い還元」より酸化性が増しているが、なお還元性である(遊離の酸素はないが、より低濃度の還元性気体がある))まで、完全に酸化(反応器中に過剰の酸素がある)まで、要求に合わせて変えることができる。最終廃棄物形態は、段階230において生成される。
【0055】
本明細書に記載される異なる実施態様についての、可能な投入廃棄物、還元剤、鉱化添加剤および流動気体は、上に定義したのと同様である。
【実施例】
【0056】
一連の実験室規模の試験を行って、種々の操作条件で最終廃棄物形態を生成させて、操作条件が最終廃棄物形態の特性に及ぼす影響を調べた。変更した操作条件は次のものを含む:操作する床の温度、石炭比(床内部の還元状態を作るために使用される石炭の量対投入廃棄物物質の量)ならびに、粘土比(アルカリ金属の鉱化に必要とされる鉱化添加剤の量対投入廃棄物物質の量)。還元状態のレベルは、酸素添加および還元添加剤(この場合、添加される石炭)の量の関数である。より高い石炭比または添加速度は、より強い還元状態を生じる。各試験の最後に、最終廃棄物形態生成物を集め、水中で浸出試験を行って、廃棄物形態生成物中のナトリウム(Na)およびレニウム(Re)保持の濃度を決定した。ナトリウム濃度を使用して、廃棄物形態生成物固体の全体にわたる浸出抵抗性を測定し、レニウム濃度を使用して、固体中の潜在的に揮発性レニウムの浸出抵抗性を測定した。これらは、床における還元状態もしくはREDOxのレベルの尺度である。このようにして、ナトリウムおよびレニウムは、他の不揮発性および揮発性元素の浸出特性ならびに床におけるREDOx条件についての指標として役立った。カギとなる試験についての浸出試験データを以下の表に挙げる。
【表1】

【0057】
表から幾らかの傾向がみられる。試験データは、高温で生成される廃棄物形態生成物は比較的浸出可能性が大きいことを示す(FB-1B対FB-15)。データはまた、高い石炭比で生成される廃棄物形態生成物は比較的浸出抵抗性が大きいことを示す(FB-15対FB-16)。例えばFB-16におけるように、石炭比が適切に増加されるなら、高温でさえ、浸出抵抗性の無機物生成物を生じることができ、このことは、680〜725℃の操作温度(先行試験が行われた操作温度範囲である)で反対のことが起こることからは、予想されない結果であった。
【0058】
これらの操作上の挙動は、石炭比が、NOx還元を制御するのでなく、むしろ揮発性元素の低い浸出を達成するために、反応器操作の間、石炭比を厳密に監視し、制御すべきであることを示す。驚くべきことに、単にNOxをN2に還元するために使用されるより非常に高いレベルに石炭比が増加された場合、800℃より高い温度で運転されるとき、低いレニウム浸出速度が維持される。
【0059】
添付される特許請求の範囲によって規定される本発明の意図および範囲から離れることなく、上記した好ましい実施態様に対して、多くの変更および置換を行うことができることは、廃棄物供給物からNOxを除去する当業者には明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素酸化物を除去する方法であって、
窒素酸化物を含む液体、スラリー、スラッジもしくは固体の廃棄物物質を供給する段階;
下方部分、中間部分および上方部分を有する反応床を含む流動床反応容器を供給する段階;
流動床反応容器を800℃より上の操作温度に加熱する段階;
流動気体、還元剤、鉱化添加剤および廃棄物物質を流動床反応容器反応床に添加し、流動気体を、廃棄物物質を撹拌し、反応床からの微細固体を水簸する速度で注入する段階;及び
最終廃棄物形態からの元素の低い浸出を達成し、かつ廃棄物物質中の実質的に全ての窒素酸化物を破壊するのに十分強い還元状態下で、少なくとも反応床の下方部分を操作する段階
を含む方法。
【請求項2】
反応床の下方部分が、強い還元状態よりも酸化状態が増しているが、なお全体的に還元状態下で稼働するように、過熱水蒸気と共に酸素を下方部分に共注入する段階をさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
上方部分が、より酸化性が増すが全体的にはなお還元状態下で稼働するように、酸素を上方部分に注入する段階をさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項4】
上方部分が完全に酸化状態下で稼働するように、酸素を上方部分に注入する段階をさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項5】
中間部分がより酸化性が増すが全体的にはなお還元状態下で稼働するように、酸素を中間部分に注入する段階をさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項6】
廃棄物物質が硫黄、塩化物、フッ化物もしくはヨウ化物化合物を含むときに、鉱物性添加剤が粘土、ゼオライト、シリカゲル、シリカ、ケイ酸塩、リン酸塩化合物、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、チタン化合物、鉄化合物およびアルミニウム化合物から成る群より選択される請求項1記載の方法。
【請求項7】
反応床が不活性ビーズから成る請求項1記載の方法。
【請求項8】
還元状態が、廃棄物物質中の実質的に全ての窒素酸化物を破壊するのに十分である請求項1記載の方法。
【請求項9】
流動気体が、水蒸気、酸素、水素、メタン、二酸化炭素、一酸化炭素、炭化水素蒸気、窒素およびアンモニアのうちの1種以上を含む請求項1記載の方法。
【請求項10】
鉱化添加剤が、粘土、ゼオライト、シリカゲル、シリカ、ケイ酸塩、リン酸塩化合物、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、チタン化合物、鉄化合物およびアルミニウム化合物から成る群より選択される請求項1記載の方法。
【請求項11】
最大操作温度が、この方法から得られる廃棄物形態の最小溶融温度に等しい請求項1記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1種の共-反応体を反応容器反応床に注入して、窒素酸化物の還元を促進する段階をさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項13】
共-反応体が、固体炭素質物質、可溶性炭素質物質、気体状炭素質化合物、水素、アンモニアおよび金属化合物から成る群より選択される請求項12記載の方法。
【請求項14】
金属化合物が、鉄化合物、ニッケル化合物、銅化合物およびコバルト化合物から成る群より選択される請求項13記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1種の添加剤を反応容器反応床に注入して、より高い融点のアルカリ金属およびアルカリ土類化合物を形成する段階をさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項16】
廃棄物を反応容器反応床に注入する前に、添加剤が投入廃棄物と混合される請求項15記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−103220(P2013−103220A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−71844(P2012−71844)
【出願日】平成24年3月27日(2012.3.27)
【出願人】(512054919)スタズビック, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】