説明

高温強度と靭性に優れた耐火構造用溶接継手

【課題】 溶接方法によらず、溶接継手全体として、700〜800℃までの温度における耐火性に優れ、かつ、構造物の安全性を確保し得る靭性を有する耐火構造用溶接継手を提供する。
【解決手段】 鋼材と溶接金属の化学組成を適正範囲に限定した上で、溶接金属の化学組成について、Nb当量=Nb%+0.47Mo%+0.25W%+0.65V%+0.4Ta%+0.2Zr%の式で定義されるNb当量を0.05〜1%とし、かつ、固溶Nbと固溶Vとの合計量を0.005〜0.1%とすることにより、溶接継手全体として、700〜800℃までの高温強度と低温靱性とを同時に確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に建築鋼構造物に適用され、特に700〜800℃の温度における耐火性に優れた耐火構造物用溶接継手に関するものである。なお、本継手は溶接方法によらず、溶接入熱10〜200kJ/cmの溶接継手に適用されるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物などに使用される鋼材は、火災時の鋼構造物の安全性を確保するために、火災時における鋼材表面温度が350℃以下で使用するように耐火基準が定められており、鋼材表面にロックウールなどの耐火被覆をする必要があった。しかし、建築鋼構造物の建設において鋼材表面の耐火被覆施工に要する費用低減、その施工工程省略、さらには景観上の点からも、耐火被覆施工を完全に省略したいという要求は非常に高まっている。
【0003】
このような背景を踏まえ、昭和62年の防耐火総プロの成果を受けて(38条認定により)、鋼材の耐火性能を考慮した建築鋼構造物の設計が可能となり、鋼材の高温強度と、実際の建築鋼構造物に加わっている荷重とを考慮して耐火被覆施工の必要性を決定し、場合によっては無耐火被覆で鋼材を使用することも可能となった。
【0004】
こうした状況から、600℃での高温降伏強度が常温時の2/3以上となる耐火性能に優れた鋼材(以下、600℃耐火鋼という場合もある)が開発された(例えば特許文献1、参照)。また、700℃あるいは800℃での高温降伏強度を保証する耐火性能に優れた鋼材(700℃耐火鋼あるいは800℃耐火鋼という場合もある)も提案されている(例えば特許文献2、3、参照)。一般に600℃耐火鋼では、無耐火被覆で使用できる範囲は、比較的可燃物量が少ない立体駐車場や外部鉄骨に限られているため、今後、その使用範囲を建築鋼構造物まで拡大するため、さらに、700℃および800℃耐火鋼の実用化が望まれている。
【0005】
一方、700℃および800℃耐火鋼を用いて建築構造物を建設する上で、鋼構造物の溶接部にもその安全性を確保するために溶接部(溶接金属及び溶接熱影響部)にも高い高温降伏強度が要求される。
【0006】
従来の従来耐火鋼では、高温降伏強度が常温時の2/3となるように耐火性能を定めており、700℃耐火鋼の溶接継手においてもこの基準を適用していた。しかし、800℃耐火鋼では、鉄骨構造物の実設計を勘案して溶接継手の高温降伏強度の基準を決定する必要がある。耐火設計では火災継続時間内で高い強度を維持すればよく、従来の耐熱鋼のように長時間の強度を考慮する必要はない。また、800℃耐火鋼では鉄骨構造物で作用応力の小さな部位に溶接部が設けられる。これらを考慮し、溶接継手(溶接金属および溶接熱影響部)の高温降伏強度は、具体的には、保持時間が30分程度の比較的短時間で、700℃では217MPa以上、800℃では70MPa以上の高温降伏強度が維持できれば十分と考えられる。
【0007】
また、鋼構造物の安全性を確保する上で、溶接継手として、上記高温降伏強度とともに高い靱性が要求される。一般的な構造物であれば0℃における2mmVノッチシャルピー衝撃試験の吸収エネルギー(vE0)は27J以上必要であるが、耐震特性も考慮すれば、70J以上有する方が好ましい。
【0008】
上記700℃または800℃の耐火鋼の高温強度を確保するためには、Cr、Moなどの合金元素を添加する方法が一般的である。しかし、このような鋼材成分設計のみで、700℃または800℃での耐火性能を確保するためには、高温での組織変態や、炭化物等の析出物の粗大化または消失を十分抑制するため、600℃耐火鋼に比べて多量の合金元素を添加する必要があるため、溶接性の低下や建築構造用鋼で規定される室温降伏強度の上限を上回るなどの問題があった。こうした事情で、従来800℃まで無耐火被覆での設計が可能な耐火性能を有する建築構造用途の400MPa級鋼、490MPa級鋼の実用化はなされていなかったが、最近になって、合金元素、熱間圧延の条件の適正化、Ac1変態温度の向上等により、700℃、さらには、800℃までの高温においても耐火性に優れた高温耐火建築構造用鋼が実用化されつつある。
【0009】
一方、700℃または800℃の耐火鋼を用いて耐火建築構造用鋼構造物の建設する場合には、その溶接継手特性として、鋼材と同様に高い高温降伏強度に加えて、高い靭性が要求される。
【0010】
従来、600℃耐火鋼の溶接する際に優れた耐火性能を有する溶接部を得るためのアーク溶接ワイヤ、溶接棒、フラックスなどの溶接材料が多数開発、提案されている(例えば特許文献4〜12、参照)。また、近年、800℃耐火鋼のサブマージアーク溶接方法およびそのための溶接ワイヤとフラックスが提案されている(例えば特許文献13、参照)。
【0011】
溶接部は、鋼材および溶接材料が溶融・凝固して形成された溶接金属と、溶接入熱により組織変化した鋼材の熱影響部とからなるが、700℃または800℃の耐火建築構造用鋼構造物では、鋼材および溶接金属中には高温降伏強度を確保するために、靱性に有害な元素、例えばMo、Nb、V等の合金元素を多量に含有するため、高温降伏強度を維持しつつ靭性を向上することは困難であった。また、700または800℃耐火鋼の熱影響部では、溶接入熱により組織が変化するため、高温降伏強度も鋼材に比べて低下する可能性も生じる。さらに、700または800℃耐火鋼の溶接金属には、Mo、Nb、V等の合金元素を多量に含有するため、700℃前後において溶接金属の粒界が脆化して延性が極端に低下する高温脆化あるいは再熱脆化の問題も生じやすい。
【0012】
以上のように、700または800℃の耐火建築構造用鋼構造物の安全性を確保するために、用溶接継手として、700℃では217MPa以上、800℃では70MPa以上の高温降伏強度を維持し、かつ0℃における2mmVノッチシャルピー衝撃試験の吸収エネルギー(vE0)で70J以上を確保できる汎用、包括的な技術の開発が望まれている。
【0013】
【特許文献1】特開平2−77523号公報
【特許文献2】特開平9−209077号公報
【特許文献3】特開平10−68015号公報
【特許文献4】特開平2−52196号公報
【特許文献5】特開平2−217195号公報
【特許文献6】特開平2−205298号公報
【特許文献7】特開平2−274394号公報
【特許文献8】特開平2−63698号公報
【特許文献9】特開平2−274394号公報
【特許文献10】特開平2−75494号公報
【特許文献11】特開平2−200393号公報
【特許文献12】特開平2−268994号公報
【特許文献13】特開2003−311477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は溶接方法によらず、溶接継手全体として、700〜800℃までの温度における耐火性に優れ、かつ、構造物の安全性を確保し得る高い靭性を有する耐火構造用溶接継手を提供することを目的とする。さらに、具体的には、本発明は、耐火鋼の継手特性として、溶接金属及び溶接熱影響部ともに、700℃で217MPa以上、800℃で70MPa以上の高い高温強度を有し、かつ2mmVノッチシャルピー衝撃試験の吸収エネルギー(vE0)で70J以上の優れた靭性を有することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
溶接継手は、鋼板(母材)と、溶接熱影響部(HAZ)及び溶接金属(WM)とからなる溶接部とで構成される。本発明者らは溶接継手全体におけるそれぞれの部位の耐火特性および靭性と成分組成の支配因子を詳細に調査した。その結果、(a)母材と熱意影響部の高温強度と靭性に関しては、鋼材の成分組成そのもので性能はほぼ決定づけられるが、溶接金属については、凝固まま組織であるため、母材、HAZに比べて高温強度を確保することが困難であること、(b)溶接金属の高温強度と靭性の両方を確保するためには、高温強度発現元素である、Mo、W、Nb、V、Ta、Zrの個々の含有量だけでなく、その合計量を規定し、かつ、特にNb、Vはその固溶量も同時に厳密に規定する必要があることを新たに知見した。
【0016】
本発明は上記知見に基づいて発明に至ったものであり、その要旨は下記の通りである。
【0017】
(1) 質量%で、
C:0.005〜0.15%、
Si:0.005〜1%、
Mn:0.1〜2%、
P:0.02%以下、
S:0.01%以下、
O:0.01%以下、
Al:0.002〜0.1%、
N:0.001〜0.01%、
を含み、さらに、
Mo:0.1〜1%、
W:0.01〜1%、
Nb:0.005〜0.2%、
V:0.01〜0.5%、
Ta:0.005〜0.5%、および、
Zr:0.005〜0.5%
のうちの1種または2種以上含有し、かつ、残部がFeならびに不可避不純物からなる耐火構造用鋼材と、溶接部とからなる耐火構造用溶接継手であって、
該溶接部に形成された溶接金属が、質量%で、
C :0.01〜0.15%、
Si:0.1〜1%、
Mn:0.3〜2.5%、
P:0.02%以下、
S:0.01%以下、
Al:0.001〜0.1%、
N:0.001〜0.015%、
O:0.005〜0.06%、
Nb:0.01〜0.5%、および、
V:0.01〜0.7%
のうちの1種または2種を含有し、
さらに、
Mo:0.02〜2%、
W:0.02〜2%、
Ta:0.01〜0.5%、および、
Zr:0.01〜0.5%
のうちの1種または2種以上含有し、下記(1)式により定義されるNb当量が0.05〜1%を満足し、かつ、固溶Nbと固溶Vとの合計量が0.005〜0.1%であり、残部がFeならびに不可避不純物からなることを特徴とする高温強度と靭性に優れた耐火構造用溶接継手。
Nb当量=Nb%+0.47Mo%+0.25W%+0.65V%+0.4Ta%
+0.2Zr% ・ ・・・(1)
但し、上記Nb%、Mo%、W%、V%、Ta%、Zr%は、それぞれ溶接金属中のNb、Mo、W、V、Ta、Zrの含有量(質量%)を示す。
【0018】
(2) 前記鋼材に、さらに、質量%で、
Cu:0.005〜1.5%、
Ni:0.01〜6%、
Co:0.01〜6%、
Cr:0.005〜1.5%、
Ti:0.002〜0.1%、
B:0.0002〜0.003%、
Ca:0.0005〜0.005%、
REM:0.0005〜0.01%、および、
Mg:0.0002〜0.005%
のうちの1種または2種以上含むことを特徴とする前記(1)項に記載の高温強度と靭性に優れた耐火構造用溶接継手。
【0019】
(3) 前記溶接金属に、さらに、質量%で、
Cu:0.005〜1.5%、
Ni:0.01〜6%、
Co:0.01〜6%、
Cr:0.002〜0.5%、
Ti:0.002〜0.1%、
B:0.0002〜0.005%、
Ca:0.0005〜0.005%、
REM:0.0005〜0.01%、および、
Mg:0.0002〜0.005%
のうちの1種または2種以上含むことを特徴とする前記(1)または(2)項に記載の高温強度と靭性に優れた耐火構造用溶接継手。
【0020】
(4) 前記溶接金属中のCとNとの含有量の合計が0.01〜0.06%であることを特徴とする前記(1)〜(3)項のいずれかに記載の高温強度と靭性に優れた耐火構造用溶接継手。
【0021】
(5) 前記溶接金属中のCとNとの含有量の合計とNbとVとの含有量の合計との関係が下記(2)式を満足することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の高温強度と靭性に優れた耐火構造用溶接継手。
0.3≦(Nb%+V%)/(C%+N%)≦5 ・・・(2)
但し、上記「Nb%」、「V%」、「C%」、「N%」は各々溶接金属中のNb、V、C、Nの含有量(mass%)を示す。
【0022】
(6) 前記溶接金属は、溶接入熱が10kJ/cm〜200kJ/cmの条件で形成されたことを特徴とする前記(1)〜(5)項のいずれかに記載の高温強度と靭性に優れた耐火構造用溶接継手。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、700〜800℃までの温度における耐火性に優れた高温耐火構造において有用な高温強度と靱性に優れ、溶接欠陥が少ない溶接継手を提供することができ、産業上の効果は顕著である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
溶接継手の全体的な特性を確保するためには、特に、溶接金属の特性と溶接熱影響部(HAZ)の特性とをともに確保する必要がある。鋼材の溶接熱影響部の特性を確保するためには、ほぼ鋼材の化学組成を限定することで達成できる。一方、溶接金属については、溶接金属は溶接材料と鋼材が溶融・凝固して形成されるため、溶接材料の成分組成だけでなく、鋼材の化学組成からの希釈分を考慮する必要がある。一般的は、溶接金属の鋼材の化学組成からの希釈は、溶接方法によってその希釈率が変化し、さらに、溶接金属中のO量も数十ppm〜数百ppmまで大きく変化するため、溶接方法ごとに溶接材料の成分組成を調整することが行なわれる。
【0025】
本発明者らの確認試験による検討結果によれば、溶接入熱10〜200kJ/cmの条件で溶接する場合には、溶接方法によらず、溶接金属中の高温強度発現元素である、Mo、W、Nb、V、Ta、Zrの含有量を最適化し、かつ特に溶接金属の高温強度と靭性の両方を確保するために重要なNb、Vの固溶量を最適化することができることを確認した。その結果、従来、700または800℃耐火鋼では困難であった、溶接熱影響部と溶接金属における高温強度と靭性の両方の特性を十分に向上することが可能とし、700〜800℃耐火構造用溶接継手の安全性を向上させることが可能となった。
【0026】
つまり、本発明の耐火構造用溶接継手は、後述する成分組成を有し、700〜800℃の高温降伏強度が優れた特性を有する耐火鋼を母材とする耐火構造用溶接継手であって、溶接部に形成された溶接金属が、以下に示す成分組成を有することを特徴とする。なお、耐火構造用溶接継手とは、少なくとも一方が700〜800℃の耐火鋼を母材とする溶接継手を意味する。
【0027】
つまり、本発明の耐火構造用溶接継手は、溶接金属の成分組成が、質量%で、C:0.01〜0.15%、Si:0.1〜1%、Mn:0.3〜2.5%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Al:0.001〜0.1%、N:0.001〜0.015%、O:0.005〜0.06%を含み、Nb:0.01〜0.5%、および、
V:0.01〜0.7%
のうちの1種または2種を含有し、
さらに、
Mo:0.02〜2%、
W:0.02〜2%、
Ta:0.01〜0.5%、および、
Zr:0.01〜0.5%
のうちの1種または2種以上含有し、下記(1)式により定義されるNb当量が0.05〜1%を満足し、かつ、固溶Nbと固溶Vとの合計量が0.005〜0.1%であり、残部がFeならびに不可避不純物からなり、さらに必要に応じて、Cu:0.005〜1.5%、Ni:0.01〜6%、Co:0.01〜6%、Cr:0.002〜0.5%、Ti:0.002〜0.1%、B:0.0002〜0.005%、Ca:0.0005〜0.005%、REM:0.0005〜0.01%、および、Mg:0.0002〜0.005%のうちの1種または2種以上含むことを特徴とする。これにより、溶接入熱が10〜200kJ/cmの条件であれば溶接方法によらず、優れた高温強度と靱性とを兼ね備えた溶接金属を有する溶接継手を達成できる。
なお、より好ましくは、溶接金属のCとNとの含有量の合計は0.01〜0.06%とする。
Nb当量=Nb%+0.47Mo%+0.25W%+0.65V%+0.4Ta%
+0.2Zr% ・ ・ ・(1)
但し、上記Nb%、Mo%、W%、V%、Ta%、Zr%は、それぞれ溶接金属中のNb、Mo、W、V、Ta、Zrの含有量(質量%)を示す。
なお、上記溶接金属が確実に耐火構造用継手として確実な効果を安定して発揮するためには、溶接方法は全く問わないが、後述するように溶接入熱としては10〜200kJ/cmの範囲内であることが好ましい。
【0028】
以下に、本発明の耐火構造用溶接継手を構成する鋼材および溶接金属の成分組成の限定理由を詳細に説明する。
【0029】
先ず、耐火構造用溶接継手鋼材(700〜800℃耐火鋼)の化学組成の限定理由を示す。
【0030】
なお、以下に示す「%」は特段の説明がない限り、「質量%」を意味するものとする。
Cは、鋼材の室温強度を確保する上で最も有効な元素であり、該効果を発揮するためには、鋼材中に0.005%以上含有させる必要がある。一方、0.15%を超えて過剰に含有させると、溶接性が劣化し、かつ母材およびHAZの靱性確保が困難となる。また、鋼材中のC含有量が0.15%超であると、溶接方法によっては溶接金属中のC量も過大となって、溶接金属の靱性、高温特性に悪影響を及ぼす可能性があり、好ましくない。
Siは脱酸元素であり、鋼の健全性を保つために、少なくとも0.005%以上の含有が必要である。ただし、1%を超えて過剰に含有させると、HAZを硬化させてHAZの靱性、低温割れ性を劣化させて好ましくないため、本発明においては、Siの含有量を0.005〜1%に限定する。
【0031】
Mnは、焼入性を確保して強度を高めるために、また、一定量以内であれば、組織を微細化して靱性向上にも有効であるために、鋼材に必須の元素である。強度向上、組織微細化効果を確実に発揮するためには、0.1%以上鋼材に含有させる必要がある。一方、2%超含有させると、粒界脆化感受性が増加して靱性劣化、耐溶接割れ性劣化の可能性が高くなるため、本発明においては、鋼材中のMn含有量は0.1〜2%に限定する。
【0032】
Pは不純物元素であり、靱性を阻害するため極力低減する必要があるが、鋼板中の含有量が0.02%以下では靱性への悪影響が許容できるため、本発明では鋼板中のP含有量は0.02%以下とする。
【0033】
Sも不純物元素であり、鋼板中に過大に存在すると靱性と延性とをともに劣化させるため、極力低減することが好ましい。鋼板中の含有量が0.01%以下では靱性、延性への悪影響が許容できるため、本発明では鋼板中のS含有量は0.01%以下とする。
Oも鋼材においては、不純物元素であり、0.01%を超えて過剰に鋼材中に含有させると、延性と靱性とを劣化させて好ましくないため、本発明においては、鋼材中のO含有量は0.01%以下とする。
【0034】
Alも脱酸元素であり、Siと同様、鋼の酸素含有量を低減して健全性を確保するために有効な元素であり、そのためには0.002%以上含有させる必要がある。一方、0.1%を超えて過剰に含有させると、鋼材中に粗大な酸化物を形成して、靱性を阻害する場合があるため、本発明においては、Al含有量を0.002〜0.1%に限定する。
【0035】
Nは、微量では鋼片の加熱時に微細な窒化物を形成して加熱オーステナイト粒径を微細化して靱性に寄与する。そのためには鋼中の含有量として0.001%以上必要である。一方、0.01%を超えて含有させると、窒化物が粗大化したり、固溶N量が増加して却って靱性を劣化させるため、本発明においては、鋼材中のNの含有量を0.001〜0.01%に限定する。
【0036】
高温強度を発現するためには、鋼材中にさらに、固溶あるいは/および析出状態で高温強度向上に効果のある、Mo、W、Nb、V、Ta、Zrのうちの1種または2種以上を以下の範囲で含有することが必須要件である。
【0037】
Moは、鋼材の耐火特性発現に最も重要な役割を果たす元素の一つである。固溶および析出状態で高温での転位の移動を妨げて高温強度を高めるが、効果を発揮するためには0.1%以上含有させる必要がある。一方、1%を超えて含有させると、母材およびHAZにおける靭性が大きく劣化する可能性が大きいため、本発明においては、鋼材中のMo含有量を0.1〜1%に限定する。
【0038】
Wは、鋼材の機械的性質に対してはほぼMoと同様の効果を有する。従って、本発明におけるWの含有量の限定範囲もMoと同様、0.01〜1%とする。
【0039】
Nbは比較的微量で高温強度を向上させることが可能な元素である。本発明に用いる鋼材中に含有させる場合、高温強度、特に700℃以上での高温強度向上のためには0.005%以上必要である。一方、0.2%を超えて鋼材中に過剰に含有させると、粗大析出部を形成して高温強度向上効果が飽和し、かつ、母材ならびにHAZの靭性を著しく劣化させるため、好ましくない。従って、本発明においては、鋼材中のNb含有量を0.005〜0.2%とする。
【0040】
VもNbと類似の元素であるが、効果を発揮させるためには鋼材中に0.01%以上含有させる必要があり、0.5%超では靭性劣化が顕著となるため、本発明においては、鋼材中にVを含有させる場合、0.01〜0.5%に限定する。
【0041】
TaもNb、Vと類似の元素であり、高温強度向上に有効である。鋼材中に含有させる場合には、効果を発揮するためには0.005%以上必要であり、靭性を顕著に劣化させないために上限は0.5%とする必要がある。
【0042】
ZrもNb、V、Taと類似の元素であり、高温強度向上に有効である。鋼材中に含有させる場合には、効果を発揮するためには0.005%以上必要であり、靭性を顕著に劣化させないために上限は0.5%とする必要がある。
【0043】
以上が、本発明における溶接継手に用いる700〜800℃耐火鋼材の基本成分の限定要件であり、700〜800℃での高温降伏強度を確保し、かつ特に鋼構造物用鋼材としての常温降伏強度、靭性などの基本特性を十分に備えた鋼材となる。
また、本発明では、本願発明が目的とする基本特性の中で、特に強度・靭性の調整や延性改善のために、必要に応じて、さらにCu、Ni、Co、Cr、Ti、B、Ca、REM、および、Mgのうちの1種または2種以上を含有させることができる。
【0044】
Cuは、鋼材の焼入性を高め、また、析出強化により強度を向上する効果を有する。強化しろの割に靭性劣化が顕著でない点で好ましい元素であるが、効果を発揮するためには鋼材中に0.005%以上含有させる必要がある。一方、1.5%を超えて含有すると鋼片の高温割れを生じたり、靭性劣化が明確となるため、好ましくない。
【0045】
Niは、焼入性を高めて強度を高めると同時に靱性を向上させる効果を有する唯一の元素であり、靱性を重視する用途の鋼に対して非常に有効であるが、効果を発揮するためには、0.01%以上含有させる必要がある。ただし、6%を超えて多量に含有させると、Ac1変態点が極端に低下して、700℃以上で無視できない程度に逆変態が生じ、高温強度を著しく低下させる恐れがあるため、耐火特性確保の観点からは好ましくない。従って、本発明においては、鋼材中にNiを含有させる場合、含有量を0.01〜6%に限定する。
【0046】
Coは他の合金元素量が多く、硬質相が生じて靭性が劣化する場合に含有させると、変態点を高めて硬質相の生成を抑制して靭性劣化を防止する上で効果がある。該効果を発揮するためには最低限0.01%含有させる必要がある。一方、6%を超えて含有させても効果が飽和し、逆に組織が粗大化して靱性を劣化させる可能性があるため、本発明においては、鋼材中にCoを含有させる場合の上限を6%とする。
【0047】
Crは、強度を高めたり、耐食性を向上させる場合に有効な元素である。効果を発揮するためには0.005%以上含有させる必要がある。一方、1.5%超含有させると、靱性が劣化するため好ましくない。従って、本発明においては、鋼中に含有させる場合のCr量の範囲は0.005〜1.5%とする。
【0048】
Tiは主として鋼材組織を微細化して靭性を向上する上で有効な元素である。析出強化により弱いながらも高温強度向上効果も有する。これらの効果を発揮させるためには鋼材中に0.002%以上含有させる必要がある。しかしながら、0.1%を超えて含有させると、粗大な窒化物や酸化物を形成して、鋼板疵の原因となったり、母材およびHAZの靭性劣化原因にもなるため好ましくない。そのため、本発明において、鋼材中にTiを含有させる場合は、0.002〜0.1%の範囲とする。
【0049】
Bは、ごく微量含有させることで鋼の焼入性を高めて強度を向上できる有効な元素であるが、そのためには0.0002%以上の含有は必要である。一方、0.003%を超えて過剰に含有させると、鋳造中の鋼片の割れが生じる恐れが増加し、また、焼入性向上効果が過大となって脆化相が生じて母材ならびにHAZ靱性を劣化させるため、好ましくない。従って、本発明においては、鋼材中にBを含有させる場合は、鋼板中のBの含有量を0.0002〜0.003%に限定する。なお、鋼材中にBが含有されると、HAZの再熱割れ感受性が高まるため、構造によって拘束や残留応力が大きく、再熱割れが生じる恐れがある場合は、B含有量は0.002%以下がより好ましい。
【0050】
また、本発明おいては、上記鋼材成分に加えて、さらに、鋼材の延性向上やHAZ靱性向上の目的で、必要に応じて、質量%で、Ca:0.0005〜0.005%、REM:0.0005〜0.01%、および、Mg:0.0002〜0.005%のうちの1種または2種以上を含有することができる。
【0051】
Ca、REM、Mgはいずれもほぼ同様の効果を有し、効果を確実に発揮するためには、Ca、および、REMは0.0005%以上、また、Mgは0.0002%以上含有させる必要がある。上限は粗大な介在物を形成して、延性、靱性をともに劣化させる含有量から決定され、本発明においては、Ca、および、Mgの含有量の上限は0.005%、REMの含有量の上限は0.01%とする。
【0052】
以上が、本発明の耐火構造用溶接継手を構成する鋼材(700〜800℃耐火鋼)の化学組成の限定理由である。
【0053】
次に、上記成分組成を有する700〜800℃耐火鋼を母材とする溶接継手の溶接部に形成された溶接金属の成分組成の限定理由を以下に詳述する。
【0054】
先ず、溶接金属中のC含有量は0.01〜0.15%とする。これは、C含有量が0.01%未満であると、溶接金属の強度が十分でなく、一方、C含有量が0.15%を超えると、溶接金属が硬化し、靭性や耐割れ性が劣化し、かつ炭化物を多く形成して固溶Nb、V量が過小となって高温強度確保が困難となるためである。
【0055】
Siは脱酸元素であり、溶接金属の清浄性を確保する上で必須の元素である。また、固溶強化により強度を高める効果も有する。溶接金属中のSi含有量が0.1%未満であると、脱酸が不十分でなく、溶接金属中に欠陥が生じる恐れがあるため好ましくない。一方、溶接金属中のSi含有量が1%を超えると、溶接金属中の硬化組織や粗大な酸化物が増加して溶接金属の靱性を劣化させるため好ましくない。そのため、本発明においては溶接金属のSi含有量を0.1〜1%に限定する。
【0056】
Mnは溶接金属の焼入性を高めて組織の微細化に寄与する範囲では強度、靱性をともに向上させる点で好ましい元素である。溶接金属に含有して効果を発揮するためには溶接金属中に0.3%以上含有させる必要がある。ただし、溶接金属中に2.5%を超えて過大に含有させると、溶接金属が過度に硬化して靱性や低温割れ性が劣化するため、好ましくない。従って、本発明においては、溶接金属中のMn含有量を0.3〜2.5%に限定する。
【0057】
Pは溶接金属の靱性を大幅に劣化させる不純物元素であり、極力低減することが好ましいが、0.02%以下であれば、靱性劣化は許容できる程度であるため、本発明においては溶接金属中のP含有量は0.02%以下に限定する。
【0058】
Sも溶接金属の靱性および延性を大幅に劣化させる不純物元素であり、極力低減することが好ましいが、0.01%以下であれば、靱性劣化は許容できる程度であるため、本発明においては溶接金属中のS含有量は0.01%以下に限定する。
【0059】
Alは強力な脱酸元素であり、溶接金属の酸素量が過剰になるのを防いで溶接金属の清浄性を保つために重要である。効果を発揮するためには0.001%以上必要であるが、0.1%を超えて過剰に含有させると粗大な介在物を形成して靱性を阻害するため、本発明においては、溶接金属中のAl含有量を0.001〜0.1%に限定する。
【0060】
Nは微量であれば、TiやAlと窒化物を形成してオーステナイト粒径を微細化して靱性向上に寄与し得る。そのためには、溶接金属中に0.001%以上含有させる必要がある。しかしながら、0.015%を超えて過剰に含有させると、窒化物が粗大化して破壊の起点になり、また、固溶Nが増加して靱性を劣化させるため、好ましくない。故に本発明においては、溶接金属中のN含有量は0.001〜0.015%に限定する。
【0061】
Oは、溶接金属には不可避的に含まれ、また、溶接方法ごとにその含有量範囲がある程度限定される。溶接金属の化学組成に関する要件を満足することにより、溶接方法によらず、溶接金属の特性を確保するためには、O量を一定範囲内に限定する必要がある。溶接金属中のO量は母材ほどに低減することが困難な上、O量が過小であると組織微細化に有効なアシキュラーフェライト生成核が極端に減少して、靱性に有害な粗大ベイナイトが生成するため、好ましくない。溶接金属中のO量が0.005%以上であれば、溶接方法、溶接入熱によらず、必要最低限のアシキュラーフェライトは生成し得ることから、O量の下限を0.005%とする。一方、溶接金属中のO量が0.06%を超えると、酸化物量が増加し、かつ粗大化し、他の要件を満足しても、特に溶接金属靱性の劣化が避けられないため、本発明においては、溶接金属中のO量の上限を0.06%とする。従って、溶接金属中のO量を0.06%以下とすることができない溶接方法は本発明の対象外となる。
【0062】
NbおよびVは、本発明における溶接金属の高温強度発現に重要な元素であり、NbおよびVの1種または2種を以下の範囲で含有する。
Nbは、溶接金属中に比較的微量で含有することで高温強度を向上させることが可能な元素であり、本発明における溶接金属の高温強度発現に重要な元素である。Nb単独で溶接金属の、特に700℃〜800℃での高温強度を十分に向上させるためには溶接金属中にNbを0.01%以上含有させる必要がある。一方、Nbを溶接金属中に0.5%を超えて過剰に含有させると、溶接金属中に粗大析出部を形成して高温強度向上効果が飽和し、かつ、母材ならびにHAZの靭性を著しく劣化させるため、好ましくない。従って、本発明においては、溶接金属中のNb含有量を0.01〜0.5%とする。
【0063】
なお、後述するように、溶接金属の700℃〜800℃での高温強度と靱性とを両立させるためには、固溶Nbと固溶Vとの合計量が0.005〜0.1%とする必要があり、溶接方法によらずに、溶接入熱が10〜200kJ/cmの比較的広い溶接入熱範囲で溶接金属の高温強度と靱性とを確保するために、溶接金属中の全Nb量は0.01〜0.5%の範囲でNb析出物と固溶Nbとのバランスを調整するのが好ましい。
【0064】
Vは、上記Nbと同様な作用を有し、本発明における溶接金属の高温強度発現に重要な元素である。V単独で溶接金属の、特に700℃〜800℃での高温強度を十分に向上させるためには溶接金属中にVを0.01%以上含有する必要がある。一方、Vを溶接金属中に0.7%を超えて過剰に含有させると、溶接金属中に粗大析出部を形成して高温強度向上効果が飽和し、かつ、母材ならびにHAZの靭性を著しく劣化させるため、好ましくない。従って、本発明においては、溶接金属中のV含有量を0.01〜0.7%とする。
Vも上記Nbと同様に、後述するように、溶接金属の700℃〜800℃での高温強度と靱性とを両立させるためには、固溶Nbと固溶Vの合計量が0.005〜0.1%とする必要があり、適正量の固溶V量を溶接方法によらず、溶接方法によらずに、溶接入熱が10〜200kJ/cmの比較的広い溶接入熱範囲で溶接金属の高温強度と靱性とを確保するために、溶接金属中の全V量は0.01〜0.7%の範囲でV析出物と固溶Vとのバランスを調整するのが好ましい。
【0065】
本発明において、溶接金属中のMo、W、Ta、Zrも、上記Nb、Vに比べて効果の寄与度は低いが、上記Nb、Vと同様に溶接金属の高温強度発現に作用する元素である。本発明において、これらの元素は、700℃または800℃耐火鋼材中に含有するため、溶接材料中にこれらの元素を含有させなくとも耐火鋼成分の希釈により溶接金属中に必然的に混入する。しかし、特に本発明のように(1)式で定義されるNb当量および固溶Nb、固溶Vの存在下で、700℃〜800℃での高温降伏強度を高める効果を発揮するためには、Mo、W、Ta、Zr、Moの1種または2種以上を溶接金属中に含有させる場合にその含有量を以下に示すように限定する必要がある。
【0066】
Moは、耐火鋼材と同様、溶接金属においても耐火特性発現に最も重要な役割を果たす元素の一つである。
溶接金属中のMoは、固溶および析出状態で高温での転位の移動を妨げて安定的に高温降伏強度を高める作用を有し、特に本発明のように(1)式で定義されるNb当量の条件および固溶Nb、固溶Vの存在下で、高温降伏強度を高める効果を発揮するためには、Moは溶接金属中に0.02%以上含有させる必要がある。一方、Moは溶接金属中に2%を超えて含有させると、溶接金属が過度に硬化して、靱性、耐低温割れ性が著しく劣化するため、本発明においては、溶接金属中のMo含有量を0.02〜2%に限定する。
【0067】
Wは、溶接金属の機械的性質に対してはほぼMoと同様の作用効果を有する。従って、本発明における限定範囲もMoと同様、0.02〜2%とする。
【0068】
Taも溶接金属中で析出強化により高温強度を高めるのに有効な元素である。溶接金属中に含有させる場合、700℃以上での高温強度向上のためには0.01%以上必要である。ただし、0.5%を超えて過剰に含有させると溶接金属の靱性劣化が著しくなるため、本発明においては、溶接金属中にTaを含有させる場合、その範囲を0.01〜0.5%に限定する。
【0069】
ZrもTaと同様、析出強化により高温強度を高めるのに有効な元素である。溶接金属中に含有させる場合、700℃以上での高温強度向上のためには0.01%以上必要である。ただし、0.5%を超えて過剰に含有させると溶接金属の靱性劣化が著しくなるため、本発明においては、溶接金属中にZrを含有させる場合、その範囲を0.01〜0.5%に限定する。
【0070】
本発明では、溶接金属の高温降伏強度の発現に重要な役割を果たすNbおよびVの1種または2種、さらに、Mo、W、Ta、および、Zrの1種または2種以上をそれぞれ上記範囲で含有するとともに、当該高温降伏強度を維持しつつ靱性を向上するために、下記(1)式で定義されるNb当量と、固溶Nbと固溶V量の合計量を以下のように限定する必要がある。
すなわち、本発明では、溶接金属の高温降伏強度と靱性を両立するために、溶接金属中のNb、V、Mo、W、Ta、Zrの含有量を、これらの合金元素の高温降伏強度と靭性に対する寄与度を勘案した下記(1)式によって定義されるNb当量を0.05〜1%に限定する必要がある。
Nb当量=Nb%+0.47Mo%+0.25W%+0.65V%+0.4Ta%
+0.2Zr% ・ ・ ・(1)
但し、上記Nb%、Mo%、W%、V%、Ta%、Zr%は、それぞれ溶接金属中のNb、Mo、W、V、Ta、Zrの含有量(質量%)を示す。
溶接金属中のNb、V、Mo、W、Ta、Zrの含有量により上記(1)式で定義されたNb当量が0.05%未満であると、個々の元素の含有量が上述した本発明範囲内であっても、溶接金属の700℃〜800℃における高温降伏強さを十分に向上することが困難となる。一方、個々の元素の含有量が本発明範囲内であっても、上記(1)式で定義されたNb当量が1%超になると溶接金属の靱性劣化の程度が許容できなくなる。そのため、本発明においては、上記Nb、V、Mo、W、Ta、Zrの含有量の限定に加えて、上記(1)式で定義されたNb当量を0.05〜1%に限定する。
【0071】
また、本発明者らの確認試験などによる検討の結果、上記Nb、V、Mo、W、Ta、Zrはいずれも、溶接金属中で固溶あるいは析出強化により高温強度を高める作用を有する元素であるが、一方、これらの元素中、特にNb、VはNb析出物、V析出物の形態で溶接金属中に存在すると、溶接金属の靱性を大きく劣化させることが判明した。そのため、本発明では、NbおよびVの1種または2種を溶接金属に含有する場合には、溶接金属の高温降伏強度を高めると同時に靱性を確保するために、溶接金属中でのNbおよびVの析出を抑制し、固溶Nbと固溶Vとの合計量を0.005〜0.1%の範囲になるようにする必要がある。
【0072】
溶接金属中の固溶Nbと固溶Vとの合計量が0.005%未満になると、NbとVの各々の含有量および/または上記(1)式で定義されるNb当量が低くなるか、或いは、溶接金属中のNbとVの大部分が析出物で存在することになり、高温降伏強度が低くなるか(前者の場合)、靱性が著しく劣化する(後者の場合)恐れが生じる。
【0073】
一方、溶接金属中の固溶Nbと固溶Vとの合計量が0.1%を超える場合は、通常の溶接入熱が10〜200kJ/cmの条件であれば溶接金属の熱履歴から、固溶Nb、固溶Vとともに、Nb析出物とV析出物の量も必然的に過大となるため、大幅な靱性劣化が避けられない。
【0074】
従って、本発明において、溶接金属の高温強度と靱性とを両立させるために、固溶Nbと固溶Vとの合計量を0.005〜0.1%とする。
【0075】
なお、本発明において、溶接金属中の固溶Nb量、固溶V量とは、例えば非水溶媒電解法によりNb析出量、V析出量を測定し、溶接金属中に含有される全Nb量、全V量から、前記Nb析出量、V析出量を各々差し引いた量と定義する。
【0076】
溶接金属中の固溶Nb、固溶V量を規定することによる溶接金属の高温降伏強度と靭性の両特性の向上効果は、溶接方法、条件は問わず、発揮されるが、溶接金属の固溶Nbと固溶Vの合計量を上記本発明の範囲内に確実に満足させるためには、溶接金属中でNb、Vの炭窒化物の析出に影響が大きいCおよびNの含有量の合計を0.01〜0.06%に限定することが好ましい。CとNの含有量の合計が0.01%未満であると、析出強化により高温強度を発現する元素の析出量が十分でなく、安定的に高温強度確保を確保することが容易でない。一方、CとNの含有量の合計が0.06%超であると、Nb、Vの析出量が過大となって靱性を劣化させる恐れがあり、また、C、N自体による靱性劣化も大きくなるため、好ましくない。
【0077】
さらに、好ましくは、溶接金属中のCおよびNの含有量を、全Nb量、全V量との関係から下記(2)式を満足するようにすることが好ましい。
0.3≦(Nb%+V%)/(C%+N%)≦5 ・ ・ ・(2)
但し、上記「Nb%」、「V%」、「C%」、「N%」は各々溶接金属中のNb、V、C、Nの含有量(mass%)を示す。
【0078】
上記(2)式において、溶接金属中のCとNとの含有量の合計とNbとVとの含有量の合計との比である、(Nb%+V%)/(C%+N%)が0.3未満であると、溶接金属中でNb、Vが炭窒化物を形成しやすくなり、固溶Nb,固溶Vの確保、制御が難しくなる。一方、(Nb%+V%)/(C%+N%)が5超となり、Nb、VがC、Nに比べて過剰になると、固溶Nb、固溶Vが過剰となり、これによって溶接金属の靭性を劣化させるようになるため好ましくない。
したがって、本発明では、溶接金属中でより安定的に必要十分な固溶Nb、固溶Vが確保できるため溶接金属中のCとNとの含有量の合計とNbとVとの含有量の合計との関係が、上記(2)式を満足させることが好ましい。
【0079】
溶接金属の固溶Nb量と固溶V量の合計量を上記本発明の範囲内に確実に満足させるために、さらに好ましくは、溶接入熱を10kJ/cm〜200kJ/cmに限定することがより好ましい。
【0080】
溶接入熱が10kJ/cm未満であると、多層盛溶接により各溶接ビードが前の溶接パスにより比較的高温の再熱を受けるために固溶Nb、V量を確保することが困難となる。一方、溶接入熱が200kJ/cm超では、溶接金属の凝固後の冷却速度が小さくなり、全Nb、V量が多い場合に、固溶Nbと固溶Vとの合計量が過大になる場合が生じる。また、溶接入熱が200kJ/cm超では溶接金属のミクロ組織が過大となって靱性確保も容易でなくなるため、好ましくない。
【0081】
また、本発明においては、上記溶接金属の基本成分に加えて、さらに、溶接金属の強度調整、延性改善等の目的で、必要に応じてCu、Ni、Cr、Co、Cr、Ti、B、Ca、REM、および、Mgのいずれか1種または2種以上を以下の範囲で選択的に含有させることが可能である。
【0082】
Cuは、溶接金属の焼入性を高め、また、析出強化により強度を向上する効果を有する。強化しろの割に靭性劣化が顕著でない点で好ましい元素であるが、効果を発揮するためには鋼材中に0.005%以上含有させる必要がある。一方、1.5%を超えて含有すると溶接金属の高温割れを生じたり、靭性劣化が明確となるため、好ましくない。
【0083】
Niは、焼入性を高めて強度を高めると同時に靱性を向上させる効果を有する唯一の元素であり、靱性向上効果が大きい。該効果を発揮するためには、0.01%以上含有させる必要がある。ただし、6%を超えて過剰に含有させると、Ac1変態点が極端に低下して、700℃以上で無視できない程度に逆変態が生じ、溶接金属の高温強度を著しく低下させる恐れがあるため、耐火特性確保の観点からは好ましくない。従って、本発明においては、溶接金属中にNiを含有させる場合、含有量を0.01〜6%に限定する。
【0084】
Coは他の合金元素量が多く、硬質相が生じて靭性が劣化する場合に含有させると、変態点を高めて硬質相の生成を抑制して靭性劣化を防止する上で効果がある。不安定な残留オーステナイトによる靱性劣化を抑制する効果もある。該効果を発揮するためには最低限0.01%含有させる必要がある。一方、6%を超えて含有させても効果が飽和し、逆に組織が粗大化して靱性を劣化させる可能性があるため、本発明においては、鋼材中にCoを含有させる場合の上限を6%とする。
【0085】
Crは、強度を高めたり、耐食性を向上させる場合に有効な元素である。効果を発揮するためには0.002%以上含有させる必要がある。一方、0.5%超含有させると、靱性が劣化するため好ましくない。従って、本発明においては、鋼中に含有させる場合のCr量の範囲は0.005〜0.5%とする。
【0086】
Tiは溶接金属中に適量存在すると、その酸化物、窒化物が粒内変態核となって、微細なアシキュラーフェライト生成させて組織微細化に寄与するため、溶接金属の靱性向上に寄与する。該効果を発揮するためには、溶接金属中に0.002%以上含有させる必要がある。一方、溶接金属中の含有量が0.1%超になると、酸化物、窒化物が粗大化して靱性を劣化させるため、本発明においては、溶接金属中のTi含有量を0.002〜0.1%に限定する。
【0087】
Bは、ごく微量含有させることで鋼の焼入性を高めて強度を向上できる有効な元素であるが、溶接金属において該効果を発揮させるためには0.0002%以上の含有は必要である。一方、0.005%を超えて過剰に含有させると、焼入性向上効果が過大となって脆化相が生じて靱性を劣化させるため、好ましくない。従って、本発明においては、溶接金属中にBを含有させる場合は含有量を0.0002〜0.005%に限定する。
【0088】
Caを溶接金属中に適量含有させると、介在物の形態制御により組織を微細化して靱性向上や延性向上に効果がある。該効果を発揮させるためにCaを溶接金属中に含有させる場合、0.0005%以上含有させる必要がある。一方、含有量が0.005%超になると粗大な酸化物を形成し、靱性を劣化させるため、好ましくない。従って、本発明において、Caを溶接金属中に含有させる場合の含有量は0.0005〜0.005%に限定する。
【0089】
REMもCaと同様の効果を有し、溶接金属の靱性、延性改善が明確となるためには0.005%以上含有させる必要がある。ただし、0.01%を超えて過剰に含有させると粗大な酸化物、硫化物を形成して機械的性質を阻害するため、REMを溶接金属中に含有させる場合は、0.0005〜0.01%の範囲とすることが好ましい。
【0090】
Mgも微量で溶接金属の組織微細化に寄与する。溶接金属中にMgを含有させる場合、0.0002%以上であれば、靱性、延性向上効果が明確となる。一方、溶接金属中の含有量が0.005%超であると粗大な酸化物、硫化物を形成して機械的性質を阻害するため、Mgを溶接金属中に含有させる場合は、0.0002〜0.005%の範囲とすることが好ましい。
【実施例】
【0091】
以上の、本発明の効果・作用を実施例によりさらに詳細に説明する。本発明の基本的効果は溶接方法や溶接入熱によらないが、実施例では、溶接法としてサブマージアーク溶接とAr+5%CO溶接を用いた。
【0092】
継手に用いた鋼板の化学組成と母材特性を表1に示す。鋼板の板厚は25mm一定とし、その組成に応じて製造方法を種々変化させて鋼板を製造している。鋼板番号1〜7は鋼板の化学組成が本発明を満足しているため、室温強度だけでなく700、800℃高温強度が十分高く、靱性も十分高い。一方、鋼板8〜11は鋼板の化学組成が本発明を満足していないため、後述する溶接継手の特性も劣るが、鋼板自体の特性も本発明に比べて劣っている。
【0093】
【表1】

【0094】
すなわち、鋼板番号8は、鋼板中のC量が過大であるため、鋼板(母材)の靱性が劣る。また、加熱変態点が低くなり、800℃における高温強度も低い。
【0095】
鋼板番号9は、鋼板中のP量が過大であるため、特に鋼板の靱性の劣化が著しい。
【0096】
鋼板番号10は、鋼板中Mn量が過大であるため、鋼板(母材)の靱性が劣る。また、加熱変態点が低くなり、800℃における高温強度も低い。
【0097】
鋼板番号11は、高温強度発現元素が全く含有されないため、700℃、800℃とも鋼板の高温強度が低く、700℃、800℃用耐火鋼として好ましくない。
【0098】
Ar+5%CO溶接については、表2に示す溶接ワイヤを用い、表3の溶接条件で、種々の鋼板、溶接ワイヤ、溶接入熱の組み合わせで継手を作製した。
【0099】
【表2】

【0100】
【表3】

【0101】
サブマージアーク溶接については、表4に示す溶接ワイヤ、表5に示すフラックスを用い、表6の溶接条件で、種々の鋼板、溶接ワイヤ、フラックス、溶接入熱の組み合わせで継手を作製した。Ar+5%CO溶接、サブマージアーク溶接とも図1に示す開先形状で多層盛溶接した。
【0102】
【表4】

【0103】
【表5】

【0104】
【表6】

【0105】
溶接継手の化学組成を表7に示す。固溶Nb、V量は、溶接金属の余盛り部分を除いた部分の平均含有量から同一の領域の抽出残渣分析により求めた析出量を差し引いた量とした。
【0106】
【表7】

【0107】
表8は、表7の溶接継手の機械的性質を示している。機械的性質としては室温〜高温引張特性と、2mmVノッチシャルピー衝撃特性を調査した。引張特性は丸棒引張試験片を用い、図2に示すように、鋼板板厚中心部から一つは溶接ビード長手方向に直角に、平行部が母材、溶接熱影響部(HAZ)、溶接金属全てを含むように採取し(継手引張特性調査用)、他方は溶接ビード長手方向に平行に採取した(溶接金属特性調査用)。2mmVノッチシャルピー衝撃試験片は図3に示すように、鋼板板厚中心部から溶接ビード長手方向に直角に採取した。継手評価用はノッチを溶融線(Fusion Line)に導入し、溶接金属評価用はノッチを溶接金属中央に導入した。
【0108】
【表8】

【0109】
表8のうち、継手A1〜A18は本発明の要件を満足している継手であり、700℃、800℃用耐火鋼構造用溶接継手として十分な高温強度とともに、継手靱性も全て0℃の吸収エネルギーで100J以上を安定的に達成できており、本発明によれば、700℃、800℃用の耐火構造用溶接継手として極めて良好な特性が得られることが明らかである。
【0110】
一方、表8のうち、継手B1〜B11は本発明の要件を満足していない継手であるため、継手としての特性が700℃、800℃耐火構造用として十分でない。
【0111】
すなわち、継手B1は、鋼板のC含有量が過大なため、前述したように母材の靱性が劣るのはもちろん、溶接熱影響部の靱性も著しく低く、また母材と同様、継手の800℃における高温強度も低い。
【0112】
継手B2は、鋼板のP含有量が過大なため、前述したように母材の靱性が劣るのはもちろん、溶接熱影響部の靱性も著しく低く、好ましくない。
【0113】
継手B3は、鋼板のMn含有量が過大なため、前述したように母材の靱性が劣るのはもちろん、溶接熱影響部の靱性も低く、また母材と同様、継手の700℃および800℃における高温強度も低い。
【0114】
継手B4、B11は、各々、Ar+5%CO2溶接、サブマージアーク溶接の比較例であるが、どちらも、高温強度発現元素である、Mo、W、Nb、Ta、V、Zrのいずれも鋼板中ならびに溶接金属中に含有されないため、母材、溶接熱影響部、溶接金属、全ての継手部位において700℃、800℃の高温強度が低く、耐火構造用溶接継手として不十分である。
【0115】
継手B5は、溶接金属の化学組成において、高温強度発現元素である、Mo、W、Nb、Ta、V、Zrは全て含有されているものの、いずれもその含有量が過小で、かつ、Nb当量も本発明の下限を下回っているため、溶接金属の高温強度が十分でなく、結果、継手高温強度も溶接金属の影響で高温強度が低く、好ましくない。
【0116】
継手B6は、溶接金属中にMo、Nb、Vが本発明の下限以上に含有されているものの、Nb当量としては過小であるため、溶接金属における高温強度が本発明に比べて劣り、700℃、800℃用耐火構造用溶接継手として不十分である。
【0117】
継手B7は、溶接金属における高温強度発現元素の含有量やNb当量は本発明を満足しているが、固溶Nbと固溶Vとの合計量が過小であるため、溶接金属の700℃、800℃高温強度が低く、また、高温強度が低い割に溶接金属の靱性が低く、好ましくない。
【0118】
継手B8およびB9は、溶接金属中のMo含有量が過大で、Nb当量も過大であるため、溶接金属の靱性が本発明に比べて大きく劣る。
【0119】
継手B10は、溶接金属中のNb含有量が過大で、Nb当量も過大であるため、溶接金属の靱性が本発明に比べて大きく劣る。
【0120】
以上の実施例の結果から、本発明によれば、溶接継手全体として、700〜800℃までの温度における耐火性に優れ、かつ、構造物の安全性を確保し得る靭性を有する耐火構造用溶接継手を提供することが明白である。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の実施例に用いた溶接開先形状を示す模式図である。
【図2】溶接継手からの引張試験片採取要領を説明するための模式図である。
【図3】溶接継手からの引張試験片採取要領を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0122】
1 鋼板
2 開先
3 裏当金
4 溶接ビード
5 溶接金属引張試験片
6 継手引張試験片
7 2mmVノッチシャルピー衝撃試験片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、
C:0.005〜0.15%、
Si:0.005〜1%、
Mn:0.1〜2%、
P:0.02%以下、
S:0.01%以下、
O:0.01%以下、
Al:0.002〜0.1%、
N:0.001〜0.01%
を含み、さらに、
Mo:0.1〜1%、
W:0.01〜1%、
Nb:0.005〜0.2%、
V:0.01〜0.5%、
Ta:0.005〜0.5%、および、
Zr:0.005〜0.5%
のうちの1種または2種以上含有し、かつ、残部がFeならびに不可避不純物からなる耐火構造用鋼材と、溶接部とからなる耐火構造用溶接継手であって、
該溶接部に形成された溶接金属が、質量%で、
C :0.01〜0.15%、
Si:0.1〜1%、
Mn:0.3〜2.5%、
P:0.02%以下、
S:0.01%以下、
Al:0.001〜0.1%、
N:0.001〜0.015%、
O:0.005〜0.06%
を含み、
Nb:0.01〜0.5%、および、
V:0.01〜0.7%
のうちの1種または2種を含有し、
さらに、
Mo:0.02〜2%、
W:0.02〜2%、
Ta:0.01〜0.5%、および、
Zr:0.01〜0.5%
のうちの1種または2種以上含有し、下記(1)式により定義されるNb当量が0.05〜1%を満足し、かつ、固溶Nbと固溶Vとの合計量が0.005〜0.1%であり、残部がFeならびに不可避不純物からなることを特徴とする高温強度と靭性に優れた耐火構造用溶接継手。
Nb当量=Nb%+0.47Mo%+0.25W%+0.65V%+0.4Ta%
+0.2Zr% ・ ・ ・(1)
但し、上記Nb%、Mo%、W%、V%、Ta%、Zr%は、それぞれ溶接金属中のNb、Mo、W、V、Ta、Zrの含有量(質量%)を示す。
【請求項2】
前記鋼材に、さらに、質量%で
Cu:0.005〜1.5%、
Ni:0.01〜6%、
Co:0.01〜6%、
Cr:0.005〜1.5%、
Ti:0.002〜0.1%、
B:0.0002〜0.003%、
Ca:0.0005〜0.005%、
REM:0.0005〜0.01%、および、
Mg:0.0002〜0.005%
のうちの1種または2種以上含むことを特徴とする請求項1に記載の高温強度と靭性に優れた耐火構造用溶接継手。
【請求項3】
前記溶接金属に、さらに、質量%で
Cu:0.005〜1.5%、
Ni:0.01〜6%、
Co:0.01〜6%、
Cr:0.002〜0.5%、
Ti:0.002〜0.1%、
B:0.0002〜0.005%、
Ca:0.0005〜0.005%、
REM:0.0005〜0.01%、および、
Mg:0.0002〜0.005%
のうちの1種または2種以上含むことを特徴とする請求項1または2に記載の高温強度と靭性に優れた耐火構造用溶接継手。
【請求項4】
前記溶接金属中のCとNとの含有量の合計が0.01〜0.06%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高温強度と靭性に優れた耐火構造用溶接継手。
【請求項5】
前記溶接金属中のCとNとの含有量の合計とNbとVとの含有量の合計との関係が下記(2)式を満足することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の高温強度と靭性に優れた耐火構造用溶接継手。
0.3≦(Nb%+V%)/(C%+N%)≦5 ・ ・ ・(2)
但し、上記「Nb%」、「V%」、「C%」、「N%」は各々溶接金属中のNb、V、C、Nの含有量(mass%)を示す。
【請求項6】
前記溶接金属は、溶接入熱が10kJ/cm〜200kJ/cmの条件で形成されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の高温強度と靭性に優れた耐火構造用溶接継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−107055(P2007−107055A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−299436(P2005−299436)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】