高温炉壁撮像装置
【課題】炉内が高温であり炉壁が輻射光で発光している炉壁を、観察窓を通して炉外から連続観察が可能であり、かつコントラストのある炉壁画像を取得して炉壁の凹凸や亀裂を判別することができる高温炉壁撮像装置を提供する。
【解決手段】炉内が高温であり炉壁1が輻射光で発光している炉壁を遠隔から撮像するために観察窓2の外側に設置される高温炉壁撮像装置10。輻射光3より強くかつ必要最小限の視野角と同等の広がり角を持つパルスレーザ光4を炉壁の観察部分(十分小さい一部)に向けて照射するパルスレーザ装置12と、パルスレーザ光4の照射部分を遠隔から必要最小限の視野角で撮影する撮影装置14と、撮影装置と炉壁の間に位置しパルスレーザ光4の照射時間に同期して開く高速シャッター16とを備える。
【解決手段】炉内が高温であり炉壁1が輻射光で発光している炉壁を遠隔から撮像するために観察窓2の外側に設置される高温炉壁撮像装置10。輻射光3より強くかつ必要最小限の視野角と同等の広がり角を持つパルスレーザ光4を炉壁の観察部分(十分小さい一部)に向けて照射するパルスレーザ装置12と、パルスレーザ光4の照射部分を遠隔から必要最小限の視野角で撮影する撮影装置14と、撮影装置と炉壁の間に位置しパルスレーザ光4の照射時間に同期して開く高速シャッター16とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉内が高温であり炉壁が輻射光で発光している炉壁を撮像する高温炉壁撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄用高炉に高温の熱風を供給する熱風炉は、地上より約50mの高さと10m以上の内径を有しており、内壁温度は、運転時約1600℃、休風時約1400℃に達する。
【0003】
このような熱風炉は、長期間(例えば約20年)連続的に使用され、かつ大型設備のため建設期間も長期間(例えば約3年)かかる。そのため、1基でも使用不可能となれば長期間の高炉減産操業を引き起こすおそれがある。このため、従来から長期使用の熱風炉については、炉内診断の一貫として、休風時に炉内耐火物の損傷状況観察が行われてきた。
しかし熱風炉の炉内観察は、高炉の休風時という限られた時間内に行われるため、炉内温度は高く、かつ高温炉内での撮影となるため環境は苛酷であった。
【0004】
このような過酷な環境下において熱風炉のような高温炉壁を観察する手段として、特許文献1、2が既に提案されている。
【0005】
特許文献1の「熱風炉炉内観察装置」は、製鉄用熱風炉の炉内耐火物の損傷状況を嫁働状態に近以した条件下で観察することを目的とし、図5に示すように、撮像管または撮像素子50の前に光電子倍増管51を設け、該光電子倍増管51の前にその分光感度に適した透過度をもつレンズを有した遠隔操作可能なズ−ム装置53を取付け、該撮像装置全体を波長2μ以上の赤外線を反射する窓ガラス55を有した冷却箱56に内蔵したものである。
【0006】
特許文献2の「炉壁観察装置」は、カーボン付着物が入り込んでいない開口クラックのみを検出することを目的とし、図6に示すように、照明装置61を用いて炉壁面に対して光を照射し、反射光によって形成される炉壁を撮像装置62によって観察する。また、高温の炉壁が発する自発光は赤色側に偏したスペクトル分布を有しているので、炉壁面に照射する光を青色の光とし、撮像装置で撮像するに際して青色側のみを透過するフィルタを介することにより、自発光の影響を抑えて反射光の情報を優先して撮像するものである。
【0007】
【特許文献1】特開平5−34080号公報、「熱風炉炉内観察装置」
【特許文献2】特開2005−146164号公報、「炉壁観察装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した熱風炉のように、炉内が高温(例えば約1400℃)であり炉壁が輻射光で発光している場合、短時間であれば覗き孔を通して炉壁を目視観察することができる。しかし、特許文献1の装置では、炉内温度が均一であり炉壁の材料(例えば耐火レンガ)が同じ場合、どの位置からも同じ強さ、同じ波長の輻射光が発光しているため、炉壁に凹凸や亀裂があっても、まったくコントラストのない画像しか得られない問題点があった。
【0009】
また、特許文献2の装置では、壁面に青色光を照射し、反射光を青色側のみを透過するフィルタを介して撮像するので、暗い炉内であればコントラストのある画像が得られるが、発光している炉内では、輻射光の明るさが勝り、コントラストのない画像しか得られなかった。
さらに、照明装置の照射範囲及び撮像装置の撮影範囲が広い(例えば立体角が30度前後)ため、観察窓を通して高温炉壁から入射する輻射熱が過大であり、観察時間が極端に制限される(例えば5分間以内)問題点があった。
【0010】
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、炉内が高温であり炉壁が輻射光で発光している炉壁を、観察窓を通して炉外から連続観察が可能であり、かつコントラストのある炉壁画像を取得して炉壁の凹凸や亀裂を判別することができる高温炉壁撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、炉内が高温であり炉壁が輻射光で発光している炉壁を遠隔から撮像するために観察窓の外側に設置される高温炉壁撮像装置であって、
輻射光より強くかつ必要最小限の視野角と同等の広がり角を持つパルスレーザ光を炉壁の観察部分に向けて照射するパルスレーザ装置と、
前記パルスレーザ光の照射部分を遠隔から必要最小限の視野角で撮影する撮影装置と、
前記撮影装置と炉壁の間に位置し前記パルスレーザ光の照射時間に同期して開く高速シャッターとを備える、ことを特徴とする高温炉壁撮像装置が提供される。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記パルスレーザ装置と撮影装置の光軸は互いに平行、或いは炉壁位置近傍において交差する。
【0013】
また、前記観察窓の外側に設置され、前記パルスレーザ光のみが通過可能な大きさの照射孔と、前記照射部分のみを撮影可能な大きさの撮影孔とを有する熱遮蔽板と、
前記撮影孔と撮影装置の間を遮断しパルスレーザ光の波長のみを通す光学フィルタとを備える。
【0014】
また、前記照射孔と撮影孔を前記パルスレーザ光の照射時間に同期して開く耐熱シャッターをさらに備える、ことが好ましい。
【0015】
また、前記パルスレーザ装置によるパルスレーザ光の照射部分と撮影装置による撮影位置を炉壁の観察部分に沿って移動する撮像走査装置を備える。
【0016】
また、前記撮影装置による複数の撮影画像を記憶する記憶装置と、
複数の撮影画像を炉壁の観察部分に沿って貼り合わせる画像処理装置とを備える。
【発明の効果】
【0017】
上述した本発明の構成によれば、炉壁の観察部分に向けて炉壁からの輻射光より強くかつ必要最小限の視野角と同等の広がり角を持つパルスレーザ光を照射し、その照射部分を遠隔から必要最小限の視野角で撮影装置で撮影するので、強いパルスレーザ光により炉壁の凹凸や亀裂による影を形成しコントラストのある炉壁画像を取得して炉壁の凹凸や亀裂を判別することができる。
また、必要最小限の視野角と同等の広がり角を持つパルスレーザ光を炉壁の観察部分に向けて照射するので、炉壁の照射部分から出射口に入射する輻射光も少なく、パルスレーザ装置を安全な温度範囲に容易に維持することができる。
また、照射部分を遠隔から必要最小限の視野角で撮影するので、炉壁の照射部分から撮影装置に入射する輻射光も少なく、撮影装置を安全な温度範囲に容易に維持することができる。
さらに、高速シャッターが撮影装置と炉壁の間に位置し、パルスレーザ光の照射時間に同期して開くので、炉壁の照射部分(十分小さい一部)から撮影装置へ入射する輻射光を高速シャッターが開く短時間に制限することができ、撮影装置を安全な温度範囲に容易に維持することができる。
【0018】
また、パルスレーザ光のみが通過可能な大きさ(例えば直径1mm程度)の照射孔と、照射部分のみを撮影可能な大きさの撮影孔(例えば直径10〜20mm程度)とを有する熱遮蔽板を備えることにより、炉壁からの輻射光の入射を照射孔と撮影孔のみに抑制することができる。
さらに、撮影孔と撮影装置の間を遮断しパルスレーザ光の波長のみを通す光学フィルタを備えることにより、相対的に大きい撮影孔からの輻射光の入射をパルスレーザ光の波長のみ制限することができる。
従って、この構成により、炉内が高温であり炉壁が輻射光で発光している炉壁を観察窓を通して炉外から連続観察が可能となる。
【0019】
さらに照射孔と撮影孔をパルスレーザ光の照射時間に同期して開く耐熱シャッターを備えることにより、パルスレーザ装置の出射口と撮影装置の高速シャッターに入射する輻射光を低減し、これらの過熱を防止することができる。
【0020】
また、パルスレーザ装置によるパルスレーザ光の照射部分と撮影装置による撮影位置を炉壁の観察部分に沿って移動する撮像走査装置を備えることにより、輻射光の入射量増大を防止しながら、広範囲の観察部分を撮影することができる。
【0021】
さらに、複数の撮影画像を記憶する記憶装置と、複数の撮影画像を貼り合わせる画像処理装置とを備えることにより、広範囲の観察部分を連続した画像として表示し、炉壁の凹凸や亀裂の判別を容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明する。なお各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0023】
図1は、本発明の高温炉壁撮像装置の全体構成図である。この図に示すように、本発明の高温炉壁撮像装置10は、炉内が高温であり炉壁が輻射光で発光している炉壁1を撮像するために観察窓2の外側に設置される。
【0024】
輻射光で発光している炉壁1は、後述する実施例では、高炉用熱風炉の炉壁であり、休風時において約1400℃の高温に加熱されている。この場合、炉壁1からの輻射光3は、赤外域の波長2〜3μmに発光ピークを有する光である。また、波長の長い可視光も含まれており、可視光域では赤色で発光した状態である。
なお、本発明は高炉用熱風炉の炉壁に限定されず、約1000℃以上の高温に加熱されている炉壁を有する炉、例えばコークス炉、転炉等にも適用することができる。
【0025】
図1において。本発明の高温炉壁撮像装置10は、パルスレーザ装置12、撮影装置14、高速シャッター16及び撮像制御装置18を備える。
【0026】
パルスレーザ装置12は、発光している炉壁1の輻射光3より強くかつ必要最小限の視野角と同等の広がり角を持つパルスレーザ光4を炉壁1の観察部分に向けて照射する。この広がり角は、離れた位置(例えば8m程度)の炉壁位置において照射部分が十分小さい(炉壁位置において直径50cm程度)になるように、十分小さく設定する。
パルスレーザ装置12は、この例では、パルスレーザ発振器12a、電源装置12b、照射光学系12cからなる。パルスレーザ発振器12aは、例えばNd:YAGレーザであり、1.06μm、又は0.53μm(第2高調波)を用いる。なお、本発明は、Nd:YAGレーザに限定されず、輻射光3のピーク波長2〜3μmから十分離れた波長、好ましくは可視光域(0.38〜0.77μm)であるのがよい。
【0027】
また、この例では、パルスレーザ発振器12aと照射光学系12cとの間を光ファイバ12dで接続し、パルスレーザ発振器12aから照射光学系12cへパルスレーザ光4を導き、かつパルスレーザ発振器12aに対し照射光学系12cを可動にしている。
なお、本発明はこの構成に限定されず、光ファイバ12dを省略してパルスレーザ発振器12aと照射光学系12cを直接接続してもよい。
【0028】
照射光学系12cは、この例では、共焦点レンズであり、パルスレーザ発振器12aで発振した極細(例えば直径1mm程度)のパルスレーザ光4を、離れた位置(例えば8m程度)の炉壁位置において直径50cm程度の十分小さい一部を照明するように設定する。
なお、レーザ光の直進性から、広がり角が十分小さい場合には、照射光学系12cを省略してもよい。
【0029】
撮影装置14は、パルスレーザ光4の照射部分を遠隔から必要最小限の視野角で撮影する。視野角は、パルスレーザ光4の照射部分を含み、それ以外の部分をできるだけ含まない大きさに設定する。
撮影装置14は、この例において、CCDカメラ14aと望遠レンズ14bからなり、離れた位置(例えば8m程度)の炉壁位置において直径50cm程度の十分小さい一部を望遠レンズ14bを通してCCDカメラ14aで撮影するようになっている。
【0030】
パルスレーザ装置12と撮影装置14の光軸は、平行である方が調整しやすいが、炉壁位置近傍において交差するように、傾いていた方が影が大きくなり、コントラストが良くなることもある。
この構成により、パルスレーザ装置12で照射した照射部分を、撮影装置14で確実に撮影することができ、かつ同一画像に含まれる照射以外の炉壁部分の比率を小さく抑えることができる。
【0031】
高速シャッター16は、撮影装置14と炉壁の間に位置し、パルスレーザ光4の照射時間に同期して開く。
高速シャッター16は、この例では、CCDカメラ14aと望遠レンズ14bの間に位置する電子シャッターである。高速シャッター16のシャッター速度は、例えば開時間が0.1〜1msec(1/1000〜1/10000秒)であり、パルスレーザ光4の照射時間に同期して開くようになっている。電子シャッターの開時間は、レーザのパルス幅と同じであるときが最も背景光を除去できる。
なお、高速シャッター16は、CCDカメラ14aと一体でもよく、CCDカメラ14aに内蔵してもよい。また、高速シャッター16は、画像をデジタル的に切り取るデジタルシャッターでもよい。
【0032】
撮像制御装置18は、この例では、シンクロコントローラ18aとコンピュータ18b(PC)からなる。
シンクロコントローラ18aは、コンピュータ18bからの指令に対応して、パルスレーザ装置12と高速シャッター16を制御し、パルスレーザ光4の照射と高速シャッター16の作動を同期させる。
コンピュータ18bは、シンクロコントローラ18aに指令信号を出力するとともに、CCDカメラ14aから撮影画像を受信する。
コンピュータ18bは、記憶装置と画像処理装置とを備える。記憶装置は、撮影装置による複数の撮影画像を記憶する。また、画像処理装置は、複数の撮影画像を炉壁の観察部分に沿って貼り合わせる機能を有する。
【0033】
図1において、本発明の高温炉壁撮像装置10は、さらに、光学フィルタ20、21を有する。光学フィルタ20、21は、例えば干渉フィルタであり、パルスレーザ光の波長のみを通し、それ以外の波長をカットする。
この例において、光学フィルタ20は、照射光学系12cと炉壁1との間に位置し、炉壁1からの輻射光3の大部分(パルスレーザ光の波長以外)をカットする。
また、光学フィルタ21は、望遠レンズ14bと炉壁1との間に位置し、同様に炉壁1からの輻射光3の大部分(パルスレーザ光の波長以外)をカットする。
【0034】
本発明の高温炉壁撮像装置10は、さらに、熱遮蔽板22、耐熱シャッター24を備える。
熱遮蔽板22は、断熱性能の高い断熱板であり、観察窓2の外側に設置される。またこの熱遮蔽板22は、パルスレーザ光4のみが通過可能な大きさの照射孔22aと、炉壁1の照射部分のみを撮影可能な大きさの撮影孔22bとを有する。照射孔22aの大きさは例えば直径1〜3mm程度である。また、撮影孔22bの大きさは例えば直径10〜30mm程度である。
【0035】
上述した光学フィルタ20は、照射孔22aの大きさが小さく、この孔から入射する輻射光3の影響が少ない場合には省略してもよい。
また、上述した光学フィルタ21は、熱遮蔽板22の撮影孔22bよりは大きき、かつ撮影孔22bと撮影装置14の間を遮断する位置に位置するのがよい。
【0036】
耐熱シャッター24は、この例では、モータ24aで高速回転する耐熱円板25であり、耐熱円板25には照射孔22aと撮影孔22bとそれぞれ対応する位置に設けられた照射孔25aと撮影孔25bを有する。
また、モータ24aの回転速度は、シンクロコントローラ18aにより、パルスレーザ光4の照射と照射孔25aと撮影孔25bの開口(照射孔22aと撮影孔22bとの整合位置)とが同期するように制御される。
この構成により、照射孔25aと撮影孔25bがそれぞれ照射孔22aと撮影孔22bと一致して開口する瞬間以外は、耐熱シャッター24で照射孔22aと撮影孔22bからの輻射光3の入射を防止することができる。
【0037】
本発明の高温炉壁撮像装置10は、さらに、撮像走査装置26を備える。
撮像走査装置26は、この例では、支持台26aと揺動アクチュエータ26bからなる。
支持台26aには、上述したパルスレーザ装置12、撮影装置14、高速シャッター16、光学フィルタ20、21、熱遮蔽板22、及び耐熱シャッター24が固定されている。
また、支持台26aは、球面軸受26cで図示しない固定台に支持されており、揺動アクチュエータ26bで支持台26a全体を水平垂直方向に移動または回転できるようになっている。
この構成により、パルスレーザ装置12によるパルスレーザ光4の照射部分と撮影装置14による撮影位置を炉壁1の観察部分に沿って移動することができる。
【0038】
図2は、本発明における炉壁の輻射光とパルスレーザ光との関係図である。この図において、横軸は波長、縦軸は光の強度、図中の3,4は、炉壁1からの輻射光3とパルスレーザ光4である。
この図に示すように、炉壁1からの輻射光3は、赤外域の波長2〜3μmに発光ピークを有する光である。また、波長の長い可視光も含まれており、可視光域では赤色で発光した状態である。
また、パルスレーザ光4は、輻射光3のピーク波長2〜3μmから十分離れた好ましくは可視光域(0.38〜0.77μm)の波長である。さらに、本発明において、パルスレーザ光4は、発光している炉壁1の輻射光3より強い強度に設定されている。
なお、この図からわかるように、輻射光3の波長は可視光から赤外域に及ぶブロードな光であり、ピーク波長2〜3μm付近に比較すると可視光域での輻射光3の強度は小さくなっている。
従って、2〜3μmから十分離れた波長、好ましくは可視光域において、例えばNd:YAGレーザを用いて、輻射光3より強いパルスレーザ光4を照射することができる。
【0039】
また、本発明では、パルスレーザ光4の波長のみを通し、それ以外の波長をカットする光学フィルタ21を備えるので、撮影装置14の望遠レンズ14b及びCCDカメラ14aに入射する輻射光3の大部分(パルスレーザ光の波長以外)を常にカットして撮影装置14への入熱を大幅に低減することができる。
【0040】
図3は、本発明におけるパルスレーザ光の照射と高速シャッターの作動との関係図である。この図において、横軸は時間、縦軸は、レーザのON/OFFとシャッターの開/閉を示している。
上述したように、高速シャッター16は、パルスレーザ光4の照射時間(ON)に同期して開くので、CCDカメラ14aに入射する輻射光3をこの開時間内に低減することができる。
【0041】
上述した本発明の構成によれば、炉壁1から観察窓2を通して本発明の高温炉壁撮像装置10に達する輻射光3の大部分は、熱遮蔽板22で熱遮蔽される。従って、熱遮蔽板22の外側(炉外側)を冷気等で冷却することにより、本発明の高温炉壁撮像装置10を正常作動に支障のない温度(例えば30℃以下)に保持することができる。
また、熱遮蔽板22の照射孔22aと撮影孔22bを通して入射する輻射光3は、耐熱シャッター24が開口するとき(撮像時)以外の大部分の時間は、耐熱円板25で熱遮蔽される。従って、時間的にも撮像時を除き輻射光3を遮断してパルスレーザ装置12及び撮影装置14に直接達する輻射光3を大幅に低減することができる。
さらに、パルスレーザ光の波長のみを通しそれ以外の波長をカットする光学フィルタ20、21により、限られた波長以外の大部分の波長を常時カットするので、パルスレーザ装置12及び撮影装置14に直接達する輻射光3のエネルギをさらに大幅に低減することができる。
【0042】
また、必要最小限の視野角と同等の広がり角を持つパルスレーザ光4を炉壁1の観察部分(十分小さい一部)に向けて照射するので、炉壁1の照射部分から出射口に入射する輻射光も少なく、パルスレーザ装置をより安全な温度範囲に容易に維持することができる。
また、照射部分を遠隔から必要最小限の視野角で撮影するので、炉壁1の照射部分から撮影装置に入射する輻射光も少なく、撮影装置を安全な温度範囲に容易に維持することができる。
さらに、高速シャッター16が撮影装置16と炉壁1の間に位置し、パルスレーザ光4の照射時間に同期して開くので、炉壁1の照射部分(十分小さい一部)から撮影装置へ入射する輻射光3を高速シャッター16が開く短時間に制限することができ、撮影装置をより安全な温度範囲に容易に維持することができる。
【0043】
上述したように本発明の構成によれば、炉壁1の観察部分の十分小さい一部に向けて炉壁1からの輻射光3より強くかつ必要最小限の視野角と同等の広がり角を持つパルスレーザ光4を照射し、その照射部分を遠隔から必要最小限の視野角で撮影するので、強いパルスレーザ光4により炉壁1の凹凸や亀裂による影を形成しコントラストのある炉壁画像を取得して炉壁の凹凸や亀裂を判別することができる。
従って、この構成により、炉内が高温であり炉壁が輻射光で発光している炉壁を観察窓を通して炉外から連続観察が可能となる。
【0044】
また、パルスレーザ装置12によるパルスレーザ光4の照射部分と撮影装置14による撮影位置を炉壁1の観察部分に沿って移動する撮像走査装置26を備えることにより、輻射光の入射量増大を防止しながら、広範囲の観察部分を撮影することができる。
【0045】
さらに、複数の撮影画像を記憶する記憶装置と、複数の撮影画像を貼り合わせる画像処理装置とを備えることにより、広範囲の観察部分を連続した画像として表示し、炉壁の凹凸や亀裂の判別を容易にすることができる。
【0046】
従って、従来は炉内が高温であり炉壁が輻射光で発光している炉壁を、長時間安全に観察できる手段がなかったが、本発明によりこれが可能となり、炉を少なくとも炉内温度が1400℃付近まで下がる休風時において、コントラストのある炉壁画像を基に炉壁の凹凸や亀裂を正確に判別して、炉を限界まで安全に使用できるようになる。
【実施例1】
【0047】
上述した本発明の装置により、休風時において炉内温度が約1400℃付近まで下がった状態の高炉用熱風炉の炉壁の一部を、観察窓2の外側から撮影し、画像処理装置により、複数(この場合5×7−1の34枚)の撮影画像を炉壁の観察部分に沿って貼り合わせた撮影画像を作成した。撮影画像は省略する。
従来は、どの位置からも同じ強さ、同じ波長の輻射光が発光しているため、炉壁に凹凸や亀裂があっても、まったくコントラストのない画像しか得られなかった。
これに対して、本発明の撮影画像では、亀裂はないが、耐火レンガが密に積み上げられている状態が正確に判別できることが確認された。
従って、このコントラストのある炉壁画像を取得して炉壁の凹凸や亀裂を判別することができ、炉を限界まで安全に使用できる。
【0048】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変更することができることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の高温炉壁撮像装置の全体構成図である。
【図2】本発明における炉壁の輻射光とパルスレーザ光との関係図である。
【図3】本発明におけるパルスレーザ光の照射と高速シャッターの作動との関係図である。
【図4】特許文献1の「熱風炉炉内観察装置」の模式図である。
【図5】特許文献2の「炉壁観察装置」の模式図である。
【符号の説明】
【0050】
1 炉壁、2 観察窓、3 輻射光、4 パルスレーザ光、
10 高温炉壁撮像装置、12 パルスレーザ装置、
12a パルスレーザ発振器、12b 電源装置、
12c 照射光学系、12d 光ファイバ、
14 撮影装置、14a CCDカメラ、14b 望遠レンズ、
16 高速シャッター(電子シャッター)、18 撮像制御装置、
18a シンクロコントローラ、18b コンピュータ(PC)、
20、21 光学フィルタ、22 熱遮蔽板、
22a 照射孔、22b 撮影孔、
24 耐熱シャッター、24a モータ、
25 耐熱円板、25a 照射孔、25b 撮影孔、
26 撮像走査装置、26a 支持台、
26b 揺動アクチュエータ、26c 球面軸受
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉内が高温であり炉壁が輻射光で発光している炉壁を撮像する高温炉壁撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄用高炉に高温の熱風を供給する熱風炉は、地上より約50mの高さと10m以上の内径を有しており、内壁温度は、運転時約1600℃、休風時約1400℃に達する。
【0003】
このような熱風炉は、長期間(例えば約20年)連続的に使用され、かつ大型設備のため建設期間も長期間(例えば約3年)かかる。そのため、1基でも使用不可能となれば長期間の高炉減産操業を引き起こすおそれがある。このため、従来から長期使用の熱風炉については、炉内診断の一貫として、休風時に炉内耐火物の損傷状況観察が行われてきた。
しかし熱風炉の炉内観察は、高炉の休風時という限られた時間内に行われるため、炉内温度は高く、かつ高温炉内での撮影となるため環境は苛酷であった。
【0004】
このような過酷な環境下において熱風炉のような高温炉壁を観察する手段として、特許文献1、2が既に提案されている。
【0005】
特許文献1の「熱風炉炉内観察装置」は、製鉄用熱風炉の炉内耐火物の損傷状況を嫁働状態に近以した条件下で観察することを目的とし、図5に示すように、撮像管または撮像素子50の前に光電子倍増管51を設け、該光電子倍増管51の前にその分光感度に適した透過度をもつレンズを有した遠隔操作可能なズ−ム装置53を取付け、該撮像装置全体を波長2μ以上の赤外線を反射する窓ガラス55を有した冷却箱56に内蔵したものである。
【0006】
特許文献2の「炉壁観察装置」は、カーボン付着物が入り込んでいない開口クラックのみを検出することを目的とし、図6に示すように、照明装置61を用いて炉壁面に対して光を照射し、反射光によって形成される炉壁を撮像装置62によって観察する。また、高温の炉壁が発する自発光は赤色側に偏したスペクトル分布を有しているので、炉壁面に照射する光を青色の光とし、撮像装置で撮像するに際して青色側のみを透過するフィルタを介することにより、自発光の影響を抑えて反射光の情報を優先して撮像するものである。
【0007】
【特許文献1】特開平5−34080号公報、「熱風炉炉内観察装置」
【特許文献2】特開2005−146164号公報、「炉壁観察装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した熱風炉のように、炉内が高温(例えば約1400℃)であり炉壁が輻射光で発光している場合、短時間であれば覗き孔を通して炉壁を目視観察することができる。しかし、特許文献1の装置では、炉内温度が均一であり炉壁の材料(例えば耐火レンガ)が同じ場合、どの位置からも同じ強さ、同じ波長の輻射光が発光しているため、炉壁に凹凸や亀裂があっても、まったくコントラストのない画像しか得られない問題点があった。
【0009】
また、特許文献2の装置では、壁面に青色光を照射し、反射光を青色側のみを透過するフィルタを介して撮像するので、暗い炉内であればコントラストのある画像が得られるが、発光している炉内では、輻射光の明るさが勝り、コントラストのない画像しか得られなかった。
さらに、照明装置の照射範囲及び撮像装置の撮影範囲が広い(例えば立体角が30度前後)ため、観察窓を通して高温炉壁から入射する輻射熱が過大であり、観察時間が極端に制限される(例えば5分間以内)問題点があった。
【0010】
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、炉内が高温であり炉壁が輻射光で発光している炉壁を、観察窓を通して炉外から連続観察が可能であり、かつコントラストのある炉壁画像を取得して炉壁の凹凸や亀裂を判別することができる高温炉壁撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、炉内が高温であり炉壁が輻射光で発光している炉壁を遠隔から撮像するために観察窓の外側に設置される高温炉壁撮像装置であって、
輻射光より強くかつ必要最小限の視野角と同等の広がり角を持つパルスレーザ光を炉壁の観察部分に向けて照射するパルスレーザ装置と、
前記パルスレーザ光の照射部分を遠隔から必要最小限の視野角で撮影する撮影装置と、
前記撮影装置と炉壁の間に位置し前記パルスレーザ光の照射時間に同期して開く高速シャッターとを備える、ことを特徴とする高温炉壁撮像装置が提供される。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記パルスレーザ装置と撮影装置の光軸は互いに平行、或いは炉壁位置近傍において交差する。
【0013】
また、前記観察窓の外側に設置され、前記パルスレーザ光のみが通過可能な大きさの照射孔と、前記照射部分のみを撮影可能な大きさの撮影孔とを有する熱遮蔽板と、
前記撮影孔と撮影装置の間を遮断しパルスレーザ光の波長のみを通す光学フィルタとを備える。
【0014】
また、前記照射孔と撮影孔を前記パルスレーザ光の照射時間に同期して開く耐熱シャッターをさらに備える、ことが好ましい。
【0015】
また、前記パルスレーザ装置によるパルスレーザ光の照射部分と撮影装置による撮影位置を炉壁の観察部分に沿って移動する撮像走査装置を備える。
【0016】
また、前記撮影装置による複数の撮影画像を記憶する記憶装置と、
複数の撮影画像を炉壁の観察部分に沿って貼り合わせる画像処理装置とを備える。
【発明の効果】
【0017】
上述した本発明の構成によれば、炉壁の観察部分に向けて炉壁からの輻射光より強くかつ必要最小限の視野角と同等の広がり角を持つパルスレーザ光を照射し、その照射部分を遠隔から必要最小限の視野角で撮影装置で撮影するので、強いパルスレーザ光により炉壁の凹凸や亀裂による影を形成しコントラストのある炉壁画像を取得して炉壁の凹凸や亀裂を判別することができる。
また、必要最小限の視野角と同等の広がり角を持つパルスレーザ光を炉壁の観察部分に向けて照射するので、炉壁の照射部分から出射口に入射する輻射光も少なく、パルスレーザ装置を安全な温度範囲に容易に維持することができる。
また、照射部分を遠隔から必要最小限の視野角で撮影するので、炉壁の照射部分から撮影装置に入射する輻射光も少なく、撮影装置を安全な温度範囲に容易に維持することができる。
さらに、高速シャッターが撮影装置と炉壁の間に位置し、パルスレーザ光の照射時間に同期して開くので、炉壁の照射部分(十分小さい一部)から撮影装置へ入射する輻射光を高速シャッターが開く短時間に制限することができ、撮影装置を安全な温度範囲に容易に維持することができる。
【0018】
また、パルスレーザ光のみが通過可能な大きさ(例えば直径1mm程度)の照射孔と、照射部分のみを撮影可能な大きさの撮影孔(例えば直径10〜20mm程度)とを有する熱遮蔽板を備えることにより、炉壁からの輻射光の入射を照射孔と撮影孔のみに抑制することができる。
さらに、撮影孔と撮影装置の間を遮断しパルスレーザ光の波長のみを通す光学フィルタを備えることにより、相対的に大きい撮影孔からの輻射光の入射をパルスレーザ光の波長のみ制限することができる。
従って、この構成により、炉内が高温であり炉壁が輻射光で発光している炉壁を観察窓を通して炉外から連続観察が可能となる。
【0019】
さらに照射孔と撮影孔をパルスレーザ光の照射時間に同期して開く耐熱シャッターを備えることにより、パルスレーザ装置の出射口と撮影装置の高速シャッターに入射する輻射光を低減し、これらの過熱を防止することができる。
【0020】
また、パルスレーザ装置によるパルスレーザ光の照射部分と撮影装置による撮影位置を炉壁の観察部分に沿って移動する撮像走査装置を備えることにより、輻射光の入射量増大を防止しながら、広範囲の観察部分を撮影することができる。
【0021】
さらに、複数の撮影画像を記憶する記憶装置と、複数の撮影画像を貼り合わせる画像処理装置とを備えることにより、広範囲の観察部分を連続した画像として表示し、炉壁の凹凸や亀裂の判別を容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明する。なお各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0023】
図1は、本発明の高温炉壁撮像装置の全体構成図である。この図に示すように、本発明の高温炉壁撮像装置10は、炉内が高温であり炉壁が輻射光で発光している炉壁1を撮像するために観察窓2の外側に設置される。
【0024】
輻射光で発光している炉壁1は、後述する実施例では、高炉用熱風炉の炉壁であり、休風時において約1400℃の高温に加熱されている。この場合、炉壁1からの輻射光3は、赤外域の波長2〜3μmに発光ピークを有する光である。また、波長の長い可視光も含まれており、可視光域では赤色で発光した状態である。
なお、本発明は高炉用熱風炉の炉壁に限定されず、約1000℃以上の高温に加熱されている炉壁を有する炉、例えばコークス炉、転炉等にも適用することができる。
【0025】
図1において。本発明の高温炉壁撮像装置10は、パルスレーザ装置12、撮影装置14、高速シャッター16及び撮像制御装置18を備える。
【0026】
パルスレーザ装置12は、発光している炉壁1の輻射光3より強くかつ必要最小限の視野角と同等の広がり角を持つパルスレーザ光4を炉壁1の観察部分に向けて照射する。この広がり角は、離れた位置(例えば8m程度)の炉壁位置において照射部分が十分小さい(炉壁位置において直径50cm程度)になるように、十分小さく設定する。
パルスレーザ装置12は、この例では、パルスレーザ発振器12a、電源装置12b、照射光学系12cからなる。パルスレーザ発振器12aは、例えばNd:YAGレーザであり、1.06μm、又は0.53μm(第2高調波)を用いる。なお、本発明は、Nd:YAGレーザに限定されず、輻射光3のピーク波長2〜3μmから十分離れた波長、好ましくは可視光域(0.38〜0.77μm)であるのがよい。
【0027】
また、この例では、パルスレーザ発振器12aと照射光学系12cとの間を光ファイバ12dで接続し、パルスレーザ発振器12aから照射光学系12cへパルスレーザ光4を導き、かつパルスレーザ発振器12aに対し照射光学系12cを可動にしている。
なお、本発明はこの構成に限定されず、光ファイバ12dを省略してパルスレーザ発振器12aと照射光学系12cを直接接続してもよい。
【0028】
照射光学系12cは、この例では、共焦点レンズであり、パルスレーザ発振器12aで発振した極細(例えば直径1mm程度)のパルスレーザ光4を、離れた位置(例えば8m程度)の炉壁位置において直径50cm程度の十分小さい一部を照明するように設定する。
なお、レーザ光の直進性から、広がり角が十分小さい場合には、照射光学系12cを省略してもよい。
【0029】
撮影装置14は、パルスレーザ光4の照射部分を遠隔から必要最小限の視野角で撮影する。視野角は、パルスレーザ光4の照射部分を含み、それ以外の部分をできるだけ含まない大きさに設定する。
撮影装置14は、この例において、CCDカメラ14aと望遠レンズ14bからなり、離れた位置(例えば8m程度)の炉壁位置において直径50cm程度の十分小さい一部を望遠レンズ14bを通してCCDカメラ14aで撮影するようになっている。
【0030】
パルスレーザ装置12と撮影装置14の光軸は、平行である方が調整しやすいが、炉壁位置近傍において交差するように、傾いていた方が影が大きくなり、コントラストが良くなることもある。
この構成により、パルスレーザ装置12で照射した照射部分を、撮影装置14で確実に撮影することができ、かつ同一画像に含まれる照射以外の炉壁部分の比率を小さく抑えることができる。
【0031】
高速シャッター16は、撮影装置14と炉壁の間に位置し、パルスレーザ光4の照射時間に同期して開く。
高速シャッター16は、この例では、CCDカメラ14aと望遠レンズ14bの間に位置する電子シャッターである。高速シャッター16のシャッター速度は、例えば開時間が0.1〜1msec(1/1000〜1/10000秒)であり、パルスレーザ光4の照射時間に同期して開くようになっている。電子シャッターの開時間は、レーザのパルス幅と同じであるときが最も背景光を除去できる。
なお、高速シャッター16は、CCDカメラ14aと一体でもよく、CCDカメラ14aに内蔵してもよい。また、高速シャッター16は、画像をデジタル的に切り取るデジタルシャッターでもよい。
【0032】
撮像制御装置18は、この例では、シンクロコントローラ18aとコンピュータ18b(PC)からなる。
シンクロコントローラ18aは、コンピュータ18bからの指令に対応して、パルスレーザ装置12と高速シャッター16を制御し、パルスレーザ光4の照射と高速シャッター16の作動を同期させる。
コンピュータ18bは、シンクロコントローラ18aに指令信号を出力するとともに、CCDカメラ14aから撮影画像を受信する。
コンピュータ18bは、記憶装置と画像処理装置とを備える。記憶装置は、撮影装置による複数の撮影画像を記憶する。また、画像処理装置は、複数の撮影画像を炉壁の観察部分に沿って貼り合わせる機能を有する。
【0033】
図1において、本発明の高温炉壁撮像装置10は、さらに、光学フィルタ20、21を有する。光学フィルタ20、21は、例えば干渉フィルタであり、パルスレーザ光の波長のみを通し、それ以外の波長をカットする。
この例において、光学フィルタ20は、照射光学系12cと炉壁1との間に位置し、炉壁1からの輻射光3の大部分(パルスレーザ光の波長以外)をカットする。
また、光学フィルタ21は、望遠レンズ14bと炉壁1との間に位置し、同様に炉壁1からの輻射光3の大部分(パルスレーザ光の波長以外)をカットする。
【0034】
本発明の高温炉壁撮像装置10は、さらに、熱遮蔽板22、耐熱シャッター24を備える。
熱遮蔽板22は、断熱性能の高い断熱板であり、観察窓2の外側に設置される。またこの熱遮蔽板22は、パルスレーザ光4のみが通過可能な大きさの照射孔22aと、炉壁1の照射部分のみを撮影可能な大きさの撮影孔22bとを有する。照射孔22aの大きさは例えば直径1〜3mm程度である。また、撮影孔22bの大きさは例えば直径10〜30mm程度である。
【0035】
上述した光学フィルタ20は、照射孔22aの大きさが小さく、この孔から入射する輻射光3の影響が少ない場合には省略してもよい。
また、上述した光学フィルタ21は、熱遮蔽板22の撮影孔22bよりは大きき、かつ撮影孔22bと撮影装置14の間を遮断する位置に位置するのがよい。
【0036】
耐熱シャッター24は、この例では、モータ24aで高速回転する耐熱円板25であり、耐熱円板25には照射孔22aと撮影孔22bとそれぞれ対応する位置に設けられた照射孔25aと撮影孔25bを有する。
また、モータ24aの回転速度は、シンクロコントローラ18aにより、パルスレーザ光4の照射と照射孔25aと撮影孔25bの開口(照射孔22aと撮影孔22bとの整合位置)とが同期するように制御される。
この構成により、照射孔25aと撮影孔25bがそれぞれ照射孔22aと撮影孔22bと一致して開口する瞬間以外は、耐熱シャッター24で照射孔22aと撮影孔22bからの輻射光3の入射を防止することができる。
【0037】
本発明の高温炉壁撮像装置10は、さらに、撮像走査装置26を備える。
撮像走査装置26は、この例では、支持台26aと揺動アクチュエータ26bからなる。
支持台26aには、上述したパルスレーザ装置12、撮影装置14、高速シャッター16、光学フィルタ20、21、熱遮蔽板22、及び耐熱シャッター24が固定されている。
また、支持台26aは、球面軸受26cで図示しない固定台に支持されており、揺動アクチュエータ26bで支持台26a全体を水平垂直方向に移動または回転できるようになっている。
この構成により、パルスレーザ装置12によるパルスレーザ光4の照射部分と撮影装置14による撮影位置を炉壁1の観察部分に沿って移動することができる。
【0038】
図2は、本発明における炉壁の輻射光とパルスレーザ光との関係図である。この図において、横軸は波長、縦軸は光の強度、図中の3,4は、炉壁1からの輻射光3とパルスレーザ光4である。
この図に示すように、炉壁1からの輻射光3は、赤外域の波長2〜3μmに発光ピークを有する光である。また、波長の長い可視光も含まれており、可視光域では赤色で発光した状態である。
また、パルスレーザ光4は、輻射光3のピーク波長2〜3μmから十分離れた好ましくは可視光域(0.38〜0.77μm)の波長である。さらに、本発明において、パルスレーザ光4は、発光している炉壁1の輻射光3より強い強度に設定されている。
なお、この図からわかるように、輻射光3の波長は可視光から赤外域に及ぶブロードな光であり、ピーク波長2〜3μm付近に比較すると可視光域での輻射光3の強度は小さくなっている。
従って、2〜3μmから十分離れた波長、好ましくは可視光域において、例えばNd:YAGレーザを用いて、輻射光3より強いパルスレーザ光4を照射することができる。
【0039】
また、本発明では、パルスレーザ光4の波長のみを通し、それ以外の波長をカットする光学フィルタ21を備えるので、撮影装置14の望遠レンズ14b及びCCDカメラ14aに入射する輻射光3の大部分(パルスレーザ光の波長以外)を常にカットして撮影装置14への入熱を大幅に低減することができる。
【0040】
図3は、本発明におけるパルスレーザ光の照射と高速シャッターの作動との関係図である。この図において、横軸は時間、縦軸は、レーザのON/OFFとシャッターの開/閉を示している。
上述したように、高速シャッター16は、パルスレーザ光4の照射時間(ON)に同期して開くので、CCDカメラ14aに入射する輻射光3をこの開時間内に低減することができる。
【0041】
上述した本発明の構成によれば、炉壁1から観察窓2を通して本発明の高温炉壁撮像装置10に達する輻射光3の大部分は、熱遮蔽板22で熱遮蔽される。従って、熱遮蔽板22の外側(炉外側)を冷気等で冷却することにより、本発明の高温炉壁撮像装置10を正常作動に支障のない温度(例えば30℃以下)に保持することができる。
また、熱遮蔽板22の照射孔22aと撮影孔22bを通して入射する輻射光3は、耐熱シャッター24が開口するとき(撮像時)以外の大部分の時間は、耐熱円板25で熱遮蔽される。従って、時間的にも撮像時を除き輻射光3を遮断してパルスレーザ装置12及び撮影装置14に直接達する輻射光3を大幅に低減することができる。
さらに、パルスレーザ光の波長のみを通しそれ以外の波長をカットする光学フィルタ20、21により、限られた波長以外の大部分の波長を常時カットするので、パルスレーザ装置12及び撮影装置14に直接達する輻射光3のエネルギをさらに大幅に低減することができる。
【0042】
また、必要最小限の視野角と同等の広がり角を持つパルスレーザ光4を炉壁1の観察部分(十分小さい一部)に向けて照射するので、炉壁1の照射部分から出射口に入射する輻射光も少なく、パルスレーザ装置をより安全な温度範囲に容易に維持することができる。
また、照射部分を遠隔から必要最小限の視野角で撮影するので、炉壁1の照射部分から撮影装置に入射する輻射光も少なく、撮影装置を安全な温度範囲に容易に維持することができる。
さらに、高速シャッター16が撮影装置16と炉壁1の間に位置し、パルスレーザ光4の照射時間に同期して開くので、炉壁1の照射部分(十分小さい一部)から撮影装置へ入射する輻射光3を高速シャッター16が開く短時間に制限することができ、撮影装置をより安全な温度範囲に容易に維持することができる。
【0043】
上述したように本発明の構成によれば、炉壁1の観察部分の十分小さい一部に向けて炉壁1からの輻射光3より強くかつ必要最小限の視野角と同等の広がり角を持つパルスレーザ光4を照射し、その照射部分を遠隔から必要最小限の視野角で撮影するので、強いパルスレーザ光4により炉壁1の凹凸や亀裂による影を形成しコントラストのある炉壁画像を取得して炉壁の凹凸や亀裂を判別することができる。
従って、この構成により、炉内が高温であり炉壁が輻射光で発光している炉壁を観察窓を通して炉外から連続観察が可能となる。
【0044】
また、パルスレーザ装置12によるパルスレーザ光4の照射部分と撮影装置14による撮影位置を炉壁1の観察部分に沿って移動する撮像走査装置26を備えることにより、輻射光の入射量増大を防止しながら、広範囲の観察部分を撮影することができる。
【0045】
さらに、複数の撮影画像を記憶する記憶装置と、複数の撮影画像を貼り合わせる画像処理装置とを備えることにより、広範囲の観察部分を連続した画像として表示し、炉壁の凹凸や亀裂の判別を容易にすることができる。
【0046】
従って、従来は炉内が高温であり炉壁が輻射光で発光している炉壁を、長時間安全に観察できる手段がなかったが、本発明によりこれが可能となり、炉を少なくとも炉内温度が1400℃付近まで下がる休風時において、コントラストのある炉壁画像を基に炉壁の凹凸や亀裂を正確に判別して、炉を限界まで安全に使用できるようになる。
【実施例1】
【0047】
上述した本発明の装置により、休風時において炉内温度が約1400℃付近まで下がった状態の高炉用熱風炉の炉壁の一部を、観察窓2の外側から撮影し、画像処理装置により、複数(この場合5×7−1の34枚)の撮影画像を炉壁の観察部分に沿って貼り合わせた撮影画像を作成した。撮影画像は省略する。
従来は、どの位置からも同じ強さ、同じ波長の輻射光が発光しているため、炉壁に凹凸や亀裂があっても、まったくコントラストのない画像しか得られなかった。
これに対して、本発明の撮影画像では、亀裂はないが、耐火レンガが密に積み上げられている状態が正確に判別できることが確認された。
従って、このコントラストのある炉壁画像を取得して炉壁の凹凸や亀裂を判別することができ、炉を限界まで安全に使用できる。
【0048】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変更することができることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の高温炉壁撮像装置の全体構成図である。
【図2】本発明における炉壁の輻射光とパルスレーザ光との関係図である。
【図3】本発明におけるパルスレーザ光の照射と高速シャッターの作動との関係図である。
【図4】特許文献1の「熱風炉炉内観察装置」の模式図である。
【図5】特許文献2の「炉壁観察装置」の模式図である。
【符号の説明】
【0050】
1 炉壁、2 観察窓、3 輻射光、4 パルスレーザ光、
10 高温炉壁撮像装置、12 パルスレーザ装置、
12a パルスレーザ発振器、12b 電源装置、
12c 照射光学系、12d 光ファイバ、
14 撮影装置、14a CCDカメラ、14b 望遠レンズ、
16 高速シャッター(電子シャッター)、18 撮像制御装置、
18a シンクロコントローラ、18b コンピュータ(PC)、
20、21 光学フィルタ、22 熱遮蔽板、
22a 照射孔、22b 撮影孔、
24 耐熱シャッター、24a モータ、
25 耐熱円板、25a 照射孔、25b 撮影孔、
26 撮像走査装置、26a 支持台、
26b 揺動アクチュエータ、26c 球面軸受
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉内が高温であり炉壁が輻射光で発光している炉壁を遠隔から撮像するために観察窓の外側に設置される高温炉壁撮像装置であって、
輻射光より強くかつ必要最小限の視野角と同等の広がり角を持つパルスレーザ光を炉壁の観察部分に向けて照射するパルスレーザ装置と、
前記パルスレーザ光の照射部分を遠隔から必要最小限の視野角で撮影する撮影装置と、
前記撮影装置と炉壁の間に位置し前記パルスレーザ光の照射時間に同期して開く高速シャッターとを備える、ことを特徴とする高温炉壁撮像装置。
【請求項2】
前記パルスレーザ装置と撮影装置の光軸は互いに平行、或いは炉壁位置近傍において交差する、ことを特徴とする請求項1に記載の高温炉壁撮像装置。
【請求項3】
前記観察窓の外側に設置され、前記パルスレーザ光のみが通過可能な大きさの照射孔と、前記照射部分のみを撮影可能な大きさの撮影孔とを有する熱遮蔽板と、
前記撮影孔と撮影装置の間を遮断しパルスレーザ光の波長のみを通す光学フィルタとを備える、ことを特徴とする請求項1に記載の高温炉壁撮像装置。
【請求項4】
前記照射孔と撮影孔を前記パルスレーザ光の照射時間に同期して開く耐熱シャッターをさらに備える、ことを特徴とする請求項2に記載の高温炉壁撮像装置。
【請求項5】
前記パルスレーザ装置によるパルスレーザ光の照射部分と撮影装置による撮影位置を炉壁の観察部分に沿って移動する撮像走査装置を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の高温炉壁撮像装置。
【請求項6】
前記撮影装置による複数の撮影画像を記憶する記憶装置と、
複数の撮影画像を炉壁の観察部分に沿って貼り合わせる画像処理装置とを備える、ことを特徴とする請求項1又は5に記載の高温炉壁撮像装置。
【請求項1】
炉内が高温であり炉壁が輻射光で発光している炉壁を遠隔から撮像するために観察窓の外側に設置される高温炉壁撮像装置であって、
輻射光より強くかつ必要最小限の視野角と同等の広がり角を持つパルスレーザ光を炉壁の観察部分に向けて照射するパルスレーザ装置と、
前記パルスレーザ光の照射部分を遠隔から必要最小限の視野角で撮影する撮影装置と、
前記撮影装置と炉壁の間に位置し前記パルスレーザ光の照射時間に同期して開く高速シャッターとを備える、ことを特徴とする高温炉壁撮像装置。
【請求項2】
前記パルスレーザ装置と撮影装置の光軸は互いに平行、或いは炉壁位置近傍において交差する、ことを特徴とする請求項1に記載の高温炉壁撮像装置。
【請求項3】
前記観察窓の外側に設置され、前記パルスレーザ光のみが通過可能な大きさの照射孔と、前記照射部分のみを撮影可能な大きさの撮影孔とを有する熱遮蔽板と、
前記撮影孔と撮影装置の間を遮断しパルスレーザ光の波長のみを通す光学フィルタとを備える、ことを特徴とする請求項1に記載の高温炉壁撮像装置。
【請求項4】
前記照射孔と撮影孔を前記パルスレーザ光の照射時間に同期して開く耐熱シャッターをさらに備える、ことを特徴とする請求項2に記載の高温炉壁撮像装置。
【請求項5】
前記パルスレーザ装置によるパルスレーザ光の照射部分と撮影装置による撮影位置を炉壁の観察部分に沿って移動する撮像走査装置を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の高温炉壁撮像装置。
【請求項6】
前記撮影装置による複数の撮影画像を記憶する記憶装置と、
複数の撮影画像を炉壁の観察部分に沿って貼り合わせる画像処理装置とを備える、ことを特徴とする請求項1又は5に記載の高温炉壁撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2008−157559(P2008−157559A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347792(P2006−347792)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000198318)石川島検査計測株式会社 (132)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000198318)石川島検査計測株式会社 (132)
【Fターム(参考)】
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